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ジュリエットは力持ち  作者: 瑞希
『過去の恐怖』
13/23

『どんな君も』

私はリミッターを外して能力レジを使い全速力で走り、そのままドアをバタンッ!と開けた


「エミヤさんが轢かれたって本当?!!!?!!

 轢き逃げ犯誰!!!!!!」


そんな私を、セツナと心平先生は軽く目を見張ってから、

「ハンナ、私用に能力は使うものではありません」

「あ、ごめん。

 ってそうじゃなくて!!!」

全く的はずれな答えに危うく力が抜けるところだった。


「轢かれたわけでも轢き逃げされたわけでもないぞ」

「…えっ、そうなの?!

 ちょっとケイ~?!!」

情報元であったはずのケイの姿を探したが、まだ見えもしなかった。


「ちょっと…なんで一緒に居たのに居ないわけ?」

「で・す・か・ら」

あ…っ………そうでしたぁぁぁあ。

見なくたって分かるよ、長い付き合いなんだからさ…


セツナが鬼の形相してるのがねぇぇぇぇえ!!!

逃げよっ!



「あれっ、ハンナ?

 セツナ!?」

「逃げよっ」

私はニカッと笑みを浮かべ、ケイの腕を掴んで走り出した。






怯えていたハンナは、正直かわいかった。

人として最低だってのは分かってるし、言ったらハンナ怖がるだろうから絶対言わないよ。

でも、心のなかで思うのは自由だろう?

だからまだ見ていた気持ちも無かった訳ではないけど。

他の男のために怯えているのは、すごく不愉快だった。

もちろん、ハンナに対してじゃなくて男に対してね。

さっきも言った通り怯えてるハンナもかわいい。


ただ、怯えてる姿も不安がる姿も泣いてしまう姿も、僕にだけ見せてくれれば、それでいい。

他の人に対して、他の人のせいでそんな気持ちになる必要はない。

まあ、そんなところも、また好きなんだけど。


でもやっぱり、僕に向けて笑ってるハンナが最高に愛らしいと思うんだ。

それは誰だって思うことだろう?

もっと言うと、怯えるのを隠しながら誤魔化しながら、僕のためにって笑うハンナがかわいい。


とどのつまり、どんなハンナもかわいいんだよね。

軽蔑した顔とか絶望した顔にも興味がないわけでもないけど……、だけどハンナが泣いてるのはちょっと見たくない。かな。

嬉し泣きは大歓迎だけどね。

でも、二度と笑えなくなったりしたら、本当に悲しくなってしまうよ。

僕はどんなハンナの事も好きだけど、やっぱり君には笑顔が似合うと思う。

幸せにしたいと、心から、思うんだ。

思ってるんだ。

今も昔も。ずっとね。


ところでハンナ


「いひゃいよ(痛いよ)」

「嘘ついてたでしょ?!」

嘘…?

嘘?


「ほふがひみにうほつふはへないひゃないは

(僕が君に嘘つくわけないじゃないか)」

「そっ…れはそうだけど……?」

いや、わりと嘘ばっかりだと思うけど。

けど怒られるような嘘をついた覚えはないよ。断じてね。

マキリ先輩じゃないんだから。


そうじゃなくて、気に入ったのか分からないけど頬を引っ張らないで…。

怖いのはどこに行ったの…?

あんまり触られても困るんだけど…。


…なんで難しい顔をして僕の頬を引っ張るの?!


「ハンナは、エミヤさんが車に轢かれた、とケイさんから聞いたそうですよ」

ああ、なんだそう言うことか。


「ひみはひょひゅうへはひりはひはんひゃよ

(君が途中で走り出したんだよ)」

「あっ!そうだった!」

ハンナはパッと明るい顔に戻って、ついでに僕の頬も解放してくれた。

うーん。痛い。

ていうか、さっきのでよく会話成立してたね。

愛の力だね。


「…ん?

 イヤ駄目じゃん!

 入院してるんでしょ?!!」

ハンナはガラッと心平先生の方へ振り返った。

入院って…過保護すぎるんだよ。

まあ、確かに打ち所が悪かったら危なかったろうけど。

にしても無様だよね~

赤の他人助けて、自分が入院って。


ちょっとハンナに似てて困るよ。

違いは、考えなしかどうかだよね。

いや…ハンナも、もしもの時は考えなしになっちゃうかもな。

そのときに、せめて側に居られるようになろう。

その為には、多少嘘をついてでも信用して貰わなくっちゃね


「じゃあ、明日にでもお見舞いに行こうか

 心配だもんね」

「うん!」

僕の言葉に、ハンナは満面の笑みを浮かべてくれた。

心配なんてそんなにしてないけど、それでハンナの笑顔が見れるんなら易いものだ。


「そうですね

 今日は、中学生組が集まっていることでしょうし」

セツナの穏やかな言葉に、ハンナはちょっとムッとした。


「ハヤテ先輩ばっかりズルい。」

やっぱり、ムッとした顔もかわいいな。

…かわいいと思うんだから仕方がないだろ?

心のなかで思うんなら自由じゃないか。

顔にだって出してないよ。

ポーカーフェイスは得意なんだ。

………………………できない人も居るけど。


「ふふっ。

 家族には敵いませんね」

セツナの珍しいからかうような言葉にハンナは更に頬を膨らませた。

やっぱり、ハンナと一番付き合いが長いのはセツナだ。

互いに互いがきっと特別に大切なんだろう。

セツナがもしも男だったら呪い殺してたね。

嘘だけど。

リューに何もしないのが証拠だろ?

ハンナにとって必要なら、仕方がないよ。


「ケイ!

 明日!ぜっっっったい行こうね!!」

突然手を握られたから、すっごくビックリした。

けど、僕は慌てて平静を取り戻して微笑を浮かべた。

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