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晴れときどき雨  作者: 蟻
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始まりを告げる暁風

私立梓倭高校、俺はここに通う学生である。俺は毎日遅刻ギリギリで学校に登校している。そして俺はいつも遅刻寸前に学校に着くのである。

「はぁはぁ、危ねぇ」

息切れしながら俺は呟いた。

「悠はいつもギリギリだね」

と微笑しながら俺に声を掛けてくるのは幼少時代からの幼馴染である忽那愛華(くつなあいか)である。恥ずかしい話ではあるが俺はこの学校の生徒と馴染めなく彼女が、俺の唯一の友達とでも言うべき存在なのである。

「おっす」

「おはよー悠くん」

と当たり触りのない挨拶をいつも通り交わす。

「そんなに走らないと学校間に合わないなら早く起きたらいいのに」

「お前も知ってるだろ?俺が朝めちゃめちゃ弱いってこと」

「あぁ確かにそうだねぇ、昔からずっとギリギリに登校してたよねー」

と苦笑しながら2人で話す。周りからは恋仲ではないか、と噂されたりしているらしいが勿論恋仲ではない。俺がこの16年生きてきた中でも告白されたことすら0という脅威的?な人生を送っている。

「お前らチャイム鳴るぞー、さっさと席に着けー!!」

忠告するように俺たち1-Bの担任の須田信(すだのぶ)が声を掛ける。それに反抗するかのようにクラスの女子が声を挙げる。

「のぶっちー、チャイムまであと3分もあるじゃーん。じかんげんしゅー」

「じゃあチャイム鳴った時に座ってない奴が居たら宿題倍にしてもらうからなー」

笑顔で言っているがこの言葉は本当だろう。実は前例があるのだ。

「ほらほら鳴るぞ、3、2、1」

『キーンコーンカーンコーーン』

幸いチャイムが鳴った時に座ってない人は居なかったので、今日も倍にならずに済みそうだ。毎日こんな事が繰り返されているので倍にならないかこっちは不安で仕方がない。

「これで今日の授業は終わるぞー。気を付け、礼」

「「ありがとうございましたー」」

「ふー終わった終わったー、さて飯食うかー」

御世辞にも夢のように早かったとは言えないが、さっきの号令で4時限目が終了したのである。

「お昼の時間だけ気分がいいね、ホント」

「わりぃかよ」

「まぁ悠らしいっちゃぁらしいよね」

「それ褒めてんのか?」

「さぁどうでしょー」

互いに付き合いが長いからか愛華と話してると自然と笑みが零れてくる。

「食べよっか」

「そうだな」

俺は枯杷に作ってもらった弁当を、愛華は自分で作った弁当を開ける。

「わぁすごいね。それ枯杷ちゃんが作ったの?」

と愛華が絶賛したのは弁当の中にある、ミートボールであろう。形はどれも大小バラバラなので枯杷が自分で作ったのがわかる。

「そうだよ。なんか昨日市販のより安く作れるからとか言いながら作ってたよ」

「枯杷ちゃんに愛されてるんだね」

「そ、そうか?」

「普通お兄ちゃんのために、手作り弁当なんて作ってくれるの枯杷ちゃんくらいだよ」

そんなことを言われて顔が熱くなった気がしたが、愛華はなんも言ってこないので赤面してはないのだろう、と信じたい。

「そういえばさ、悠って部活とか同好会入らないの?」

「んーあんまり興味ないしね」

「へぇそっか」

「愛って確かチア部だっけ?」

「うん、先輩とかも優しくて楽しいよ」

「頑張ってるのな」

「まぁね、チアの服とか可愛いからやってみたかったんだけど中学にはチア部なんてなかったからさぁ。もう張り切りまくりだよっ」

「この学校ってチア部なんか賞取ってたっけ?」

「確か、去年県大会まで行ってた気がする」

「すごいなぁ」

この学校は文武両道がモットーらしく部活動は殆ど何かしらの賞を取っているのである。それはチア部も例外ではなかったようだった。お昼時間が終了し6時限目が終わるのは早く感じた。

「起立、気を付け、礼」

「「さよーならー」」

須田信の掛け声と共に生徒が挨拶をする、学校が終わったのだ。俺は今から帰宅してネトゲに張り付いて、飯を食べて、寝るといういつも通りに過ごす予定だ。愛華は部活動があるので勿論一緒には帰れない。

「また明日な」

「バイバーイ」

愛華と挨拶を交わして教室を出る。そして校門を出て、右へ曲がり、目の前に公園が見えた直後俺は後ろから声を掛けられた。

「ちーっす」

と言ってくるのは1-Aの超が付く美少女と名が高い十二月三十一日弥生(ひづめやよい)だった。クラスメートすら覚えてない俺ですら記憶してるのだから学年一の有名人であろう、なんせ十二月三十一日と書いてひづめと読むものだからインパクトがすごいというのもあるのだろう。

「えっと、ひづめさんですよね?」

「うむ、私の名前知ってるんですね。飯ヶ谷悠」

「なんで俺のこと知ってるんすか?」

純粋な疑問だった、俺はクラスメートにすら認知されてるかすらわからない人間だ、なのになぜ彼女が知っているのであろうか。

「まぁちょっと色々有ってねー、ここで話すのもなんだし公園に寄ろうか」

「は、はい」

完全に相手のペースに巻き込まれホイホイ付いて行ってしまった。

「まぁ単刀直入に言うけどさ、私の作った同好会入ってくれない?」

「はい?ていうかどうして俺の名前知ってるんです?」

「私の作った同好会、文化交友の会に君が必要なんだよね」

「いやあの名前どうして知ってるんです?」

「ん?簡単だよ。私が出席名簿見たからだよ」

「あぁそういうことですか」

「まぁそんなことはどうでもいいんだけど入ってくれるよね?」

「すいませんが、部活にも同好会にも興味がないんで」

「ふぅんいいんだそんなこと言って」

刹那俺の耳にイヤホンが入れられた。

「ちょ、なにすんですかいきなり」

「まぁまぁ、ポチッとな」

耳に入れられたイヤホンから流れたのは、自分の声だった。自分の声と言っても今のではない、中学時代の俺の声だ。

「なんでこの曲があるんですかあああああ!!!」

ほぼ発狂していた。俺は中学の頃歌い手というのに憧れて動画を投稿していた。最初は再生回数は伸びないものの、いつか伸びると信じ24個ほど投稿し続けた。結果再生回数は伸びなかった、それもその筈だ後に自分の動画を聞いてみたところもの凄い音痴だったのである。それで恥ずかしくなり即行動画全削除、アカウント消去したはずで今この曲が流れるのは可笑しいのだ。

「なんでこの曲が入ってるか気になるっしょ?」

「はい。。。」

「ふふ、絶望してんねぇ。まぁMP4で全部保存してるのよ。君の歌全部ね」

一瞬だが今目の前で満面の笑みをしている彼女が悪魔に見えた気がした。

「なんでそんなの持ってるんですか」

「なにとなくそこはかとなくかな」

「意味が分からないです」

「んで同好会入る?入らない?」

「入らないって言ったらどうなるんです?」

「放送部に頼んで全校生徒に聞かせようかなぁ」

「同好会入ります、是非とも入らせてください!」

こう答えを考えるのにコンマ1秒要らなかった、なんていったってあの歌はかなりというか人が気を病むレベルで凄まじいのだ。

「オッケー、話が分かってくれて助かるよー概要とか諸々は明日話すからね」

「は、はい」

「んじゃーねー」

と言いながら走っていく十二月三十一日弥生の背中を見ながら絶望した。

「文化交友の会、か」

刹那、俺の日常が狂風(きょうふう)に吹かれて崩壊していく気がした。

「どんな活動するのだろうか、明日行ってみないとわからないな」

ため息交じりに呟いた時、なぜか夕方であるのに暁風(ぎょうふう)が吹いた気がした。。。

To Be Continued

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