3.少女キサメル
窓からの光が眩しい。どうやらもう太陽は高く昇っているようで、分厚い雲のわずかな切れ目から空が見える。しかしまだ眠気はある。三度寝もできるだろう。
当たり前のことであるが、どうも寝起きと言うのは頭の回転が遅く、外を一度見てから時計の短針が11を指していると気付くまで・・・11時!?
そんなにも寝ていたのか!
てっきり起こしてくれるものかと… いくらなんでもそんなに甘くないか。
とにかく起きると目に入ってくるのは、昨日や早朝と同じく、豪華な飾りつけの広い部屋だった。
朝は少々寝ぼけていたのでそこまで気にしていなかったが、やはり見慣れた自分の部屋ではないというのは慣れない。二日三日ではどうしても印象は他人の部屋だ。
だが、いつかこの部屋にも慣れる時が来てしまうのだろう。
* * *
ともかくベッドから降りて部屋を出ることにした。起床したのを伝えなければ。
忘れていたが今の自分は正真正銘少女の体だ。手足の感覚が違うので歩きづらいかも知れないが、朝歩けたのできっと行けるだろう。
どうやら寝過ごしたせいで朝ごはんを抜かしてしまった。結構お腹が減っているようだ。
昼食の元へ早く行こう。
「っとと…ベッドから降りるだけでも新鮮な感じだ… よし、行こう。」
一人で呟きながら部屋の扉を開ける。 …ちなみに今の服装は、男性が恥ずかしくならない様な服で、
早い話普通の味気ない寝間着といったところか。
お世辞にも女の子らしいとは言えないし、少し寒い。
寝間着といい、手足の感覚といい、よく寝ぼけた状態で朝は動けたものだ。
部屋から出ようとすると誰かが… って
「やあ、スウ。早朝ぶりだね。出てくる時間からするに二度寝かい?随分と長く寝ていたんだね。やっぱり調子悪いんじゃないのかい?」
姉のミサンラ…… 廊下で待っていたのだろうか?
「まあ、ね。寝過ごしましたねえ。二度寝で。そういう姉さんはわざわざ待っていてくれたんですか?」
「そうだよ。せっかく目覚めた可愛い可愛い妹の寝起き姿、見てみたいじゃないか。それにしても… さては鏡を見ずに出てきたのかい?」
え。 何か凄いことになっているのだろうか。
頭の違和感がないから、特に言われるほどの寝ぐせも無いと思うけど。
「え、どこか変ですか?寝ぐせは無いと思いますけども… って言うか寝起き姿なんて朝見たばっかでしょうそっちは」
「はは、まあ寝起きどうこうは置いといて。ほほだよ、キミのほほ。泣いたのかい?あくびの涙なら君も乾かないうちに拭くだろう。白い筋が二本、三本…」
「ああー。それはぁですねぇ。そのぉ…えっとねぇ、うーんとそう!昨日悪夢を見たんですよ!怖いのを見ちゃったんです!」
なんという下手な言い訳。これはばれたか。
こんなに見え透いた嘘が揚げ足取りの感じがする人にに分からない訳が無い。
「いや……君朝に会った時はそれなかった、っていうか考えてるの隠す気ないでしょ。君。まあ追及はしないけども……」
「すいません…」
「いや、良いんだよ別に。ただ辛いことがあったら言いなよ?これでも私姉やってんだからさ。」
「はい…」
良かった。泣いてた理由問い詰められたら多分結構不味い事になっただろう。
一昨日まで違う世界にいたんです。なんて言ったらさすがの彼女にも引かれるかも知れない。
「で、ちゃんと私は用があってここに来た訳でね。キミには食事がてら妹と友達を紹介しようと思う。本当は母さんや父さんもいる予定だったんだけれれど、母さんは出かけていてね。父さんは今朝の件で遅くなるだろうし、キミも腹が減ってるだろう?」
「ええ。朝は食べてないので。それにしても姉さんの友達ですか。どんな方なんですか?」
…多分少し変わった人だろうな。ミサンラと意気投合する人だし。良い人だろうけど。
「おいおい、妹にも興味を持ってあげなよ…。 友達の方は…
まあ、見た目は可愛い女の子、ってところかな。それだけに会ったらびっくりすると思うよ。でもそこは会ってからのお楽しみというやつだ。楽しみにしててくれて良いよ。」
「じゃあそうさせてもらいます。もちろん妹ちゃんにも興味はありますよ?」
「なんで疑問形なんだい? …まあいい。早速食卓に行こうか。ついてきなよ。」
ミサンラがびっくりする人って言ったからな… 相当な人なんだろうか。
少しはまともな人だと良いんだけれど…
そう考えつつも姉さんことミサンラの後を行く。食卓に行くのはこれが初めてで、廊下も心なしかさっきまでの廊下と
違う感じがする。
窓から見えるハーピドナの街は依然として大雪が降っており、窓からは雪が積もったヨーロッパ調の町と雪に埋もれかけている石畳が僅かに見えるばかりだ。
自分は南の方に住んでいたので、ヨーロッパのような街並みはもちろんの事、積もるほどの雪と言うのは
生まれてこの方見たことが無い。ついつい立ち止まって見てしまいそうだ。
北の地方と言うのはこんなにも雪が降るのか。
色々思考を巡らせながら階段を下り、廊下を歩いていくと両開きの大き目の扉の前でミサンラは立ち止まった。
「ここが食卓というか食堂だよ。二人とも中に居るだろうし入ろうか。」
「はい。」
そういってミサンラは食堂の扉を開け、『待たせたね』と言いたげな調子で中に入っていった。
自分も続くようにして中に入って行く。
* * *
もうすぐ正午になろうかという時間。食堂は三人の姉妹とその友人の会話で盛り上がっている。
「彼女が昨日目覚めた私のもう一人の妹のスウだよ。どうだい。キサメル。可愛らしいだろう?」
「おお。こりゃまた随分と別嬪さんじゃねえか。年頃の女の子っぽくて可愛いじゃないの。
リネラとはまた違った感じだな。」
「リネラちゃんも可愛いですー?」
「おう。リネラも可愛いともよ。」
「はは、キサメル。リネラ。私達古代系エルフ族は大体の人が美男美女じゃないか。
それにスウはキミと同じ歳だよ。私の二歳年下。ほら、スウ。簡単でいいからキミも自己紹介。
頼んだよ。」
…えっ?
「いやそんな急に自己紹介って言われても何も考えてませんっていや本当に昨日目覚めたばかりで自分の事ですらうろ覚えなのに困りますって—————
「分かった。分かったから少し落ち着いて。ほら深呼吸ー。」
「まあそんなに急かさんでもいいだろうしな。落ち着こうぜ。今は」
「大体のことはリネラちゃんもキサメルちゃんも教えて貰ってるしー大丈夫っ!」
「だからちゃん付けで呼ぶなって。」
ふう。…まあこの人達も自己紹介するだろうし取りあえず分かる事を言っておこうか。
「あ、落ち着いたんで簡単に自己紹介します。 えっと、スウです。三姉妹の次女で、歳は、えー歳は何才ですか」
「14だよ」
「……14です。えっと、昨日目覚めました。…すみません、以上です。」
内容は薄いけど仕方ないか。一応質問が無いということは事情も分かってくれているのだろう。
「おう、おっしゃ。次は俺だな。お前ら姉妹はもう皆分かってるだろうしいいだろ。
で、俺の名前は分かるだろうがキサメルだ。14才な。
口調で分かるだろうが俺は男のつもりでいる。
小さいころから生まれてくる性別を間違えてるだの言われてきたが、
多分本当に間違えて生まれてきたんだろうな。俺みたいなのを指す言葉もあるらしいし。
よろしくだ。スウ。仲良くしようぜ。」
・・・! ひょっとするとこの人は俺と似たような人かもしれない! 変わった人ってミサンラは言って
いたけれど、この人なら通じ合えそうな気がする。
「はい!こちらこそよろしくお願いします! キサメルさん!」
「おー。随分と元気になったな。あとさん付けはいいぞ。同い年だし。俺も年上のミサンラの事呼び捨てにしてるしな。」
「そういう問題なのかい? まあいいけどね。でもスウ。
キサメルは自分でも言ってるが中身は男だからね。あんまり懐いて何言われても知らないよ。」
いや… 俺も男だし、キサメルさんとは友達としてうまく行けると思う。
「おいおい、俺は一目惚れで将来の伴侶は決めないつもりなんだよ。スウとも友達の関係さ。
まあ将来的に俺と付き合う相手は女性だろうがな!」
「よく宣言出来るよそんな事。そこだけは凄いと思うよ。」
「俺はこれが普通なんだよ。俺は男だ。男が女と結婚して何が悪い?」
凄いなあ、キサメルさん。俺にはとてもそんな宣言は言えないな。
言えたとしてもきっと社会的な意味で実現は出来ないだろうし…
「はいはい。出来たらいいね。そんな相手。期待せずに応援しとくよ。」
「リネラちゃんも期待せず応援するよ!」
「期待せずってなんだよ… まあいい。話はこれぐらいにしてそろそろ昼メシ食おうぜ!」
お、調度よく話を切ってくれた。さすがと言うべきか。
「お昼ご飯はどんな感じなんですか姉さん。」
「ん。いつものパンとパステスの類さね。もうちょっとでミーラが持って来てくれるよ。」
パステス?何だそれ。異世界の料理は全く分からないし、名前を聞いたこともない。
昨日のご飯は偶然見慣れたものだっただけなのかもしれない。
「えー、パステスってどんな感じの料理でしたっけ。」
「お?パステスってのはな…、まあ簡単に言ったら麺類だ麺類。麺になんかソースみたいなのをかけた
料理だな。美味いぞ。んでもってこの国じゃ知らん奴はおらんだろ。俺はよくこの家でご馳走になるん だ。」
…らしい。まあ出てこれば分かるだろう。大人しくミーラさんを待とうっと。
* * *
「でね。今回私は。なんと! この町の謎を一つ解き明かしたかもしれないんだよ!
どうだい!称えてくれてもいいんだよ!」
「わかったからさっさと内容を説明してくれ。称えようにも批判しようにも内容が分からないようじゃなあ。」
「リネラちゃん、ずっとその話待ってました!」
あの後、ミーラさんが運んできたパスタをゆっくりと食べようとしたものの、どうにも騒がしい。ミサンラが急に興奮して喋りだしたかと思えば、リネラはどうもそれを知っていたようで待ってましたと言っている。
本当はもう少し静かにと言いたいところなのだが…
都市伝説ならではのミステリーの香り漂う話は大好物です。もっとやれ姉よ。
地球にいた時はそんな話あんまり出来なかったけど、何かここに来て話の合いのできそうな人がいたんだ。異世界のこの話に乗らずにはいられ無い!
「この町の秘密とは一体何なんですか姉さんッ!ぜひとも教えてください!」
「やれやれ… やっぱり姉妹だな、お前ら…」
「おおお!?スウも興味あるのかい?ならば教えてあげよう!私の追っている謎とはなぁ、
…この町の謎の城壁の事だ!詳しく解説するとだな…」
やはりといっては何だが、話が長くなったので簡単にまとめると、
この町には旧市街をぐるっと囲むように城壁があるらしい。だがそれは何のためにあるのか全く分からないんだそう。なぜならこの列島にはスエルイシ以外の国は無いし、海のほうには城壁のない町がある。
国内に砦は全くと言っていいほど存在して居らず、城や塔も景色を楽しんだり、豪華な暮らしをしている人の為にあるらしい。
つまり城壁は不必要なのだ。
おまけにこの国は国力も高いほうで、現在の領土内で内戦が勃発したことは一度もない。
城壁は文献も残っていない謎の存在なんだとか。
そして話は本題に入る。
「私がこの間見た古代文の翻訳書で導き出した自分の仮説を当てはめてみるとね。
これがスッキリ解決したんだよ!」
「一体どんな仮説なんですそれは? 敵はいないんでしょう?」
「『敵がいない』 …これがミソなんだなあ。実は。」
「どういう事なんだよそれって。敵がいないんなら城壁は必要無いんだろうが。」
その通りだ。『敵がいない』のがミソってどういう事なのか分からない。
「違う違う。逆だって。その翻訳書にはね、幻想の生き物が存在したかも知れないっていう事が書かれてたんだ!私が言いたいのは無数に存在する魔物達から町を守るために作られたかも、と言うことだ。軍じゃないから砦は必要ないし、北の港町も最近になって人が増えたばかりだろう?」
「馬鹿言え。それなら魔物とやらは何で今いなくて、遺骸も見つかって無いんだよ。」
「いや、魔物は魔力の具現化だって説が本に書いてあった。魔物の正体と存在は、他にもそう記された古文書がたくさんあるらしいんだ。存在は間違いないよ。
きっと正式に存在が認められてないだけなんだと思う。」
あれ?この世界には魔物がいないのか。ファンタジー感を物凄く感じるだけに意外だ。ファンタジー筆頭のエルフが居るんだから居そうな感じだけど。
オークとか、ゴブリンとか。
「じゃあ全部古代の人々が無数の魔物を駆逐したってことか? それともお伽チックな勇者サマが悪の根源的なものを仲間とともに打倒して魔物共々消滅しましたってか?そんな夢物語有るはず無いだろ。」
「そうなんだよねえ。そこを言われると弱い。だけどね、魔物は存在していたと私は言いたい。
多くの文献があるし、何より魔物がいればこの謎は綺麗に解決するんだ。」
「じゃあどうするよ。また証拠探しにいくか?そんな物が残ってそうな所、ここらには無いぞ。それともまたエレフシスに新遺跡の発掘に行くか?」
「…よし、早速行こう。エレフシスに行こう。一番近い遺跡はあの町から少し北にあったから。そこに行こう」
「え。 …えっ。ちょっ、ちょっと待って姉さん。明日って幾らなんでも急すぎるでしょう。せめて父さんが帰ってくるまで待ちましょうよ。この町もよく分からないし、外も出たことすら無いんですよ?」
鉄道運転見合わせなんて待てば復旧するのに。天候次第だけども。
すると妹リネラは、
「いーや、こんな感じで遅れたら復旧する頃にはまたギカイが始まって、父さんは結局帰れなくなるんだもん。リネラちゃん知ってるよ。」
と一言。
「そうそう。それに父さんは事実上の国の最高議会議員だよ?そもそも休めるほうが可笑しいんだ。」
国会議員というのは忙しいなんて言葉で言い表せる物じゃなく、移動移動の日々と言うのを何かで聞いたことがある。この国も王が居るとはいえ議員としての日々に心休まる時はそうそう無いだろう。
「あ… そうですね。そうかもしれません。」
「まあ仕方ないって。俺もここにかなりの頻度で来るけど、かれこれ前見てからもう4年ぐらいみてないからな。それにセヴィリアも隣の地域の町だしそこまで長くならんと思うぞ。3日ぐらいだな」
「…三日も?許可とれるんですか?」
「大丈夫だね。母さんも今こうやって家空けてんだからさ。許さんのは理不尽だと思わないかい。地元案内は帰ってきたらしてあげるから、スウもセヴィリアに行ってみないかい?」
「俺は初めての外が遠出でも別に良いと思うけどな。三日何て寿命考えたら塵みたいなモンだろ。」
と、ミサンラ達が言う。確かにエルフの寿命は長いんだろうけどそういう問題かどうかは置いておいて、リネラはともかくキサメルさんも行く様なことを言っている。確かにそう言われると行く場所なんて何処でもいい。遺跡も本心は興味あるし俺が行っても構わないと言うのであれば、遠慮なく行かせてもらおう。
…少なくともこの場で一人違う事を言うだけの勇気は無い。俺は気弱な男なのだ。
「分かりました。私も北のエレフシスの遺跡とやらに着いていきます。
怒られる様な事じゃ無いんですよね。」
「ああ、大丈夫だとも。チャネルカ地方は俺とミサンラの第二の地元みたいな所だからな。」
キサメルさんが言う。チャネルカ、とは多分エレフシスがある地方だろう。
第二の地元と言うのならそれなりの道慣れはしているだろうし心配はない。
エールン母さんも良いと言ってくれるだろう。
そうして話している間に、既にリネラの姿は無く、キサメルさんは荷物をまとめていた。
「決定だね。じゃあ明後日の朝8時に駅前広場ね。雪が止まなくても鉄道はきっと止まらないから。」
「それなら俺は準備をするから帰らせてもらう。久しぶりの列車旅だ。準備は万全じゃないとな。」
そういって二人は席を立つ。どうやらもう帰るようなので、見送りの為に玄関に行くのだろう。当然俺も席を立つ。食堂の出口はいつの間にかリネラが出ていった時のままなのかどうか、開いたままでその先にはメイドさんの姿もある。
「お帰りでしょうか。」と初めて見るメイドの方が言い、はいとキサメルさんが返事をするとそのメイドさんは門を開けに行った。
「ああ、スウはもう部屋に戻っても良いよ。雪も降っているし外に出るのは明日にしといて。
見送りはいいから。」
…ほんの少し庭を歩く程度で外に出ないほうが良い、と言うだろうか。小さい頃は親に言われたこともあるが、あいにく今は少し若返ったとはいえ十四歳の少女だ。体調が悪そうにも見えないはずだが、
そこは何か隠したい事でもあるのだろうか。追及しないほうが良いことは触れないでおこう。
蛇に出てこられたらたまったものでは無い。
「……ええ、そう言うのであれば戻りましょう。ではまた明日会いましょう、キサメル。」
「おう!じゃあまた明日な!」
そう言ってキサメルさんは長い金髪を翻して外に出ていった。
* * *
「毎度毎度一般市民の俺にここまでしてくれて、何か申し訳ない気分になってくるよ。門を開けるぐらい十六歳のミサンラにも出来んだろ。」
「そう言われてもそういう事をするのがこういう仕事だからねえ。それに一昔前の奴隷何て目も当てられ
ない程酷かったらしいからね。今でこそマシになってきたけれどね。」
この国には人権を保障する法があるものの、未だ奴隷制度が導入されており、何らかの原因で生活が困難になった者が自らその様な身分に身を落とす。自ら望まないと奴隷にはなれないので人権にも引っ掛かりはしないのだ。
「…まあ本気出しゃあ廃止ぐらい出来たと思うがね。俺は。」
「さあ、議会の意見はまとまるか分からないし、王は拒むだろうね。その意見を。地位向上に漕ぎつけただけ良くやった方だと思うよ。廃止されたら生活困難な人を養うのは国だからね。それなら奴隷を認めたほうが効率的だろうから。良い意味でも悪い意味でも合理的なのが国ってもんだと思うよ。」
「今はそうかもしんねえな。俺だってただ廃止ってのが一概に良いとは言えないって事ぐらい分かってるさ。」
こういった奴隷の話題が出てくるも、門までの距離はさほど長くなく、二人は既に門に着いていた。
* * *
「それじゃあ、キサメル。また今度。」
「ああ、また今度。明後日に駅前な。」
空はほんのりと橙へと色を変え、今日という日の終わりが近づいていた。
2月20日 旧4部 統合しました。