涙の痛み
真夏の夜風が狭い通りを吹き抜けて、ユリカを抱き歩く私は道化師の心。
ユリカを抱く私を見つけた、頬を染めた中年の集団に冷やかされてた。
私が抱くユリカは笑顔で私を叱ってくれる、そして優しく包んでくれた。
深海の深い瞳から流れた涙が、私には何よりも痛かった。
エレベーターの前でも、ユリカは降りなかった。
「駄目~、上まで」と腕に力を入れて、私の首筋に顔を付けた。
『わりと挑戦的だね・・ユリカ』と言って、エレベーターに若い男2人と乗った。
「何階かな、羨ましい少年?」と少し酔った感じのスーツを着た、20代であろう男が微笑んだ。
『すいません、最上階で』と照れて頼んだ。
「最上階の女なのか、凄いな~」ともう一人の連れが酔った笑顔で言った。
最上階にはユリカの棲家と、もう一軒しかないのだ、その二軒とも有名店だった。
3階で降りた2人に礼を言って、最上階が開いた、ユリカの店に行こうとして固まった。
大ママとマダムと徳野さんが待っていた。
「あんたは、私があれほど言ったのに」と大ママが真顔で言った。
『ごめんなさい、リアンの顔見たら・・つい』と言って反省の表情を作った。
ユリカは私にしがみついて離れない、私はユリカに申し訳なくてたまらなかった。
ユリカが俺を守ってくれていたんだと感じていた、今も抱かれながら守ってくれていると。
「どうするかね~徳」とマダムが笑顔で言った、その笑顔で少し落ち着いた。
「次は俺に相談しろよ、ユリカちゃんに免じて返せとは言わないから」と徳野さんが私の所に近づき真顔で言った、私は真顔で頷いた。
「あの望月という懐の深い男に感謝しろよ・・しかしお前は面白いな~」と徳野さんが笑った。
『すいません、ご心配かけました』と謝った、徳野さんが私の肩を叩いて頷いた。
「ユリカにちゃんと詫びて、マミの時間までには帰れよ」とマダムも笑顔でエレべーターに乗った。
「残念だったよ、PG追い出されると思ってたのに」と大ママも笑顔で言った。
3人でエレベーターに乗ると。
「ユリカ、ありがとうな感謝してるよ」とマダムがユリカに声をかけた、ユリカがマダムを見て微笑んだ。
その時に扉が閉まり、私は頭を上げてユリカを見た。
『ごめんね、ユリカ』と心から謝った。
「もう、嫌い」と言ってユリカが顔を逸らした。
その言葉に心が潰され動揺して焦った、ユリカの横顔を見ていた。
「動揺するんだ~」とユリカが爽やかに笑って、私はウルで頷いた。
「蘭も言ったんでしょ、生き方は曲げるなって・・でも無茶過ぎるぞ」と笑顔で睨んだ。
『分ってるよ、ユリカには嘘つかないよ』と微笑んで返した。
「なぜ最初に望月って人呼ばなかったの?」とユリカが真顔の深い目で聞いた。
『呼べないよ、自分が何もしないで呼ぶなんて、出来ないんだよ』とユリカに真顔で返した。
「豊が見てたよ、私は感じた・・最後は笑顔だったよ」とユリカが微笑んだ。
私は嬉しくて腕に力を入れて引き寄せた。
「豊はあなたに追われることを期待してる、そして信じてるよ、私が初めて男で測れなかった、あなたと豊はね」と言って微笑んだ。
『ユリカのあの行動に驚いたよ、嫉妬したよ、豊兄さんに』と優しく耳元に囁いた。
「知ってるよ、私はユリカよ、だからわざとした」とユリカもニヤで囁いた。
『ユリカ意地悪3個分』とウルで囁いて返した。
「頑張るわ、カスミにあと5に迫ったから」と爽やかに笑った。
『なぜ知ってる、日記も読めるのかな~ユリカ』とニヤで言って笑った、ユリカは可愛く舌を出した。
ユリカを降ろし、エレベーターを待っていた。
「明日、私もローズに行く・・唇奪われたらいけないから」と可愛いニヤで微笑んだ。
『ユリカ・・ありがとう守ってくれて』と真顔で言ってエレベーターに乗った。
笑顔のユリカに手を振って別れた、ユリカの笑顔が私に反省を迫っていた。
PGに戻り指定席のマダムに、もう一度謝った。
「もういいかい、ワシはお前の生き方は嫌いじゃないかい、徳もそう思っちょる」と真顔で言って。
「但し、愛する者を悲しませるなよ」と笑顔で言った。
『もう、無茶はしないよ、反省した』と真顔で答え、マダムを見送った。
私が座ると蘭が歩いて来た、深い目が青い炎を湛えていた。
「私には話してくれるんでしょう?」と真顔で言った、炎を燃やしながら。
『蘭に隠し事は絶対にしない、寝物語で話すよ』と真顔で返した。
「うん」と満開になって笑った、私も笑顔で返して見送った。
フロアーの熱を感じながら、蘭に心から謝っていた、そして考えていたそれが生き方なのかと。
そんな事で利用するために、幅広い人間関係を作ったのではないと思っていた。
私が考えていると、パンチだ飛んできた、優しいマミのパンチが。
「時間だよ、悩み多き少年」とマミが微笑んだ、私はそのパンチが嬉しくて微笑んで返した。
『女性関係の悩みだから、マミじゃ無理だな』とマミにニヤして返した。
「ど~んと任せなさい」とマミが胸を叩いたので。
『ど~ん』と言って胸に飛び付こうとしたら、焦って逃げられた。
『まだまだだな、マミ姉さん』と言って、優しいパンチを浴びながら、裏階段を出て手を繋いだ。
「かなりやばかったんでしょ?」とマミが私を見てニヤをした。
『何の事か分かりませんね~』とニヤでとぼけた。
「ユリカ姉さんがあんな顔して来て、徳野さんが出て行けば皆分るよ」とマミが笑顔で言った。
『ユリカ来たの!』とマミに驚きながら返した。
「大事にしなよ、蘭姉さんもユリカ姉さんも」とマミが真顔で言った。
『うん、頑張ってみるよ、ありがとうマミ姉さん』と真顔で返した。
「店以外では姉さん禁止」とマミが微笑んだ。
『マミ、最近本当に綺麗になったね、巣立ちが近いのかな・・少し寂しいよ』と真顔で言った。
「見ててくれるんでしょ、私とハルカ」とマミも真顔で返した。
『もちろん、俺はマミを最初に指名した男だよ』と微笑んだ、魅宴の裏扉の前に立ったマミが振返り。
「源氏名の命名者にもなるしね」とニヤで言った。
『引っ掛からないよ』とニヤで返した、マミが笑顔で手を振った、私も笑顔で手を振って別れた。
ユリカのビルの下にはユリカはいなかった、私は寂しくてビルを見上げた。
《ユリカ本当にごめんね、もうユリカを絶対に心配させたりしないから》と囁くと。
「ねっ可愛いでしょう~」とユリカの声がした、見ると横にユリカとリアンが立っていた。
「なぜ、ユリカにだけ特別なんだい」とリアン獄炎の微笑で言った。
『リアン怖い、さっきまで可愛かったのに』とニッで返した。
「ほら、やっぱり可愛いリアンにやられてる~」とユリカがニヤした。
「やられて、あんたの女なんだろ」とリアンが3倍不敵を出した、ユリカも爽やかに笑っていた。
リアンに腕を強く組まれて、笑顔のユリカにウルで手を振って別れた。
『お店は?』と腕を組むリアンに聞いた。
「気分が乗らないから、店の女の子に小遣いやって閉めた」とリアンがニカで返した。
『復活したねリアン、どこに行くのかな?』と笑顔で聞いた。
「ユリ姉さんと蘭には私から話す、その筋は通す、大切な人達やからね」と真顔で言った。
リアンをTVルームに送り、指定席に戻った。
閉店前で、客も5割程度に落ちていた。
「さっき来た人が、会わせたい人なの?」レンが笑顔で言った。
『そうだよ、ユリカ・・水のユリカって呼ばれてる』と微笑んで返した。
「凄かったよ、歩いて来るだけで、優しい何かを強く感じた、楽しみにしてるね」と微笑んで扉に消えた。
《レンあがりか、リアンに遭遇するな》とニヤをしていた。
「気持ち悪いぞ、思秋期がニヤニヤすると」とカスミが不敵を出した。
『想像がいやらしいぞ、カスミ』とニヤで返した。
「お礼に1つ教えてやる、顔は洗っとけよ、それじゃあ蘭姉さん泣くぞ」と不敵全開で微笑んだ。
『ありがとう』と私は焦って言って、トイレに走った。
唇に薄く口紅が滲んでいた、《カスミ鋭いな~》と思って洗った。
私が指定席に戻った時に閉店を迎えた、9人衆が集まり10番に座った。
レンとユメ・ウミは着替えていた、蘭が満開で手招きをした。
「報告せよ」と満開でニヤした。
『カスミと添い寝した』と言うと。
「当たってたのかい?」と美冬がニヤで聞いた。
『お腹で潰れてました』とニヤで返した。
「よし」と美冬が笑顔で言った。
『レンと久美子と手を繋いで、ユリカを毎日抱っこして、小百合さんとも腕を組みました』と笑顔で答えた。
「なんか大きな事がないね~、なぜ顔を洗ったんだい」と蘭が最大級のニヤで見た。
『理由は言えないけど、リアンがお礼のチュウをしてくれました』と蘭を反省の目で見た。
「ど・こ・に?」と蘭がニヤニヤで聞いた。
『く・ち・び・る・・・に』と緊張して目を閉じて答えた。
柔らかい何かが唇に触れた、私が目を開けた時には、満開の蘭の微笑があった。
『何があったの?』と蘭に聞いた、蘭も9人衆もニヤで見ていた。
「罰として教えない」と蘭が微笑んだ。
「よかったね~」と後からリアンの声がした。
9人衆が慌てて立って、頭を下げた。
「お疲れ様でした、今夜のキスは感謝の意味で贈りました」と蘭を見て獄炎で微笑んだ、蘭も満開で返した。
「今夜久々にフロアーを見たけれど、素晴らしいですね、さすが満席記録更新するだけあります」と9人衆を見てリアンが言った。
9人衆は嬉しそうに笑っていた、ユリさんが来たのを見て察したらしく。
リアンに頭を下げて、控え室に戻った。
ユリさんと蘭とリアンが、10番に座り話し始めた。
私は指定席で元気になったリアンを見て、心は蘭に謝っていた。
話しが終わり蘭が私の方に歩いて来た、真剣な目に緊張した。
「バカ、本当に大バカ」と私を睨んだ目には涙が光っていた、私は自然に蘭の顔に両手を当てて。
『ごめんね、蘭』と優しく囁いた、蘭は震えていた。
「謝らなくていい、でも謝れ、でも謝らなくていい」と言って蘭が涙を流した。
私は蘭を抱きしめた、それしか出来なかった、蘭の涙を直視できなかったのだ。
蘭の涙を見て、その強烈な痛みで心が張り裂けそうだった。
「ユリカ姉さんには謝ってきたの?」と蘭が抱かれながら囁いた。
『うん、ちゃんと謝ったよ』と囁いて返した。
「厳しい罰を与える・・今夜背中合わせで寝ること」と蘭が優しく囁いた。
『かなり厳しい罰だけど、がんばります』と囁いて返した。
蘭が着替えに消えて、TVルームに戻るとマダム・ユリさん・松さん・ハルカがいた。
マリアが起きいて駆けてきた、マリアを抱き上げた。
私を顔をマリアが見て両手で私の両頬に、【ペチ】をして天使で笑った。
『ごめんよマリア、反省してるよ』とマリアに微笑んだ、マリアは私に天使全開をして目を閉じた。
「まぁ今回は、マリアの両手ペチでよしとしますか」とユリさんが薔薇で微笑んだ、私は真顔で頭を下げた。
蘭が来て、ユリさんとマリアを見送り、蘭とタクシーに乗った。
蘭が肩に乗ってきて、私を見て満開で微笑んだ。
「怒ってないよ、ただ怖かっただけ・・ユリカ姉さんをもう2度と怖がらせるなよ」と囁いた。
『うん、凄く反省した・・バカだったよ』と囁いて返した、蘭は微笑み瞳を閉じた。
アパートに着いて、タクシーを降りて蘭を抱き上げた。
蘭の疲れの見える顔を見て、胸が締め付けられた。
「もう、気にしないでいいよ、私はリアン姉さんの為にした事を、怒ったりしないよ」と蘭が満開で微笑んだ。
『選択肢は沢山あったのに、自分でやることしか考えなかった、未熟だよ』と蘭に微笑んだ。
「知ってる、だから私の側にいなさい」と満開で笑った、私も嬉しくて笑顔で頷いた。
部屋に入り、蘭が化粧を落としパジャマで帰ってきて、満開で微笑んだ。
「それでは罰を下す、絶対に離れることを禁ずる」と言ってベッドに入り背中を向けた。
私は嬉しくて、電気を消して蘭に背中を当てて、腰の上で手を繋いだ。
蘭の背中が微かに震えていた、私はその震えがたまらなくなり言った。
『蘭、寝た振りしてね』と囁いて、手を離して蘭を自分に向けて腕枕で抱きしめた。
『蘭、ゆっくりおやすみ、離れないから』と囁いて、蘭を抱きしめていた。
蘭が静かになっていくのが、嬉しかった。
蘭の鼓動と香りだけの世界で、反省を迫られていた。
夏の夜風が爽やかに吹き、未熟な私は最も大切な鼓動を聞きながら眠りに落ちた。
翌日から関わる、魔性の冷たも知らないで、蘭の世界で幸せを感じていた。
新たに関わりを持つ、新しい教師ミチル【氷の女神】
その凍てついた心に触れて震える、人を愛することの恐ろしさに。
全てを賭ける事の意味を教える、私の覚悟など戯言だと微笑みながら。
心に触れてみろと誘う、凍死すら覚悟するならと。
私が目指す、前人未到の標高にはその覚悟がいると、極寒にも耐える心が。
立ち止まれば・・全てを失うと。
諦めたら、何も残らない・・無為な氷の世界だと・・。