感性Ⅱ
思い出の中の女性は優しい目をしている、寒い上野駅で出された白い手。
ずっと繋いでくれた温かな手、そして私の背中を押した綺麗な手。
瞑想の中の私は手ばかりを思い出しながら、眠りに落ちた。
翌朝暗いうちに目が覚めて、日記を書いてから、洗面所に行った。
蘭が朝食もカレーが良いと言っていたので、カレーを温めて目玉焼きを乗せた。
「おはよ~、やっぱ寂しかったよ、寝る前に泣かすから」と満開で言いながら洗面所に消えた。
朝食を見て、満開になり。
「この一工夫が泣かせるんだよね~、又カスミに自慢しよ」と言いながら食べはじめた。
『やっぱりカレーは2日目だな~』と私が笑顔で感想を言うと、蘭も満開で頷いた。
「私の本名聞きたい?」と食べ終わった時に蘭が言った。
『俺、思ってる事がある、蘭が実家に帰るときは絶対に付いていく、あの浜で待ってるから』と蘭を見た、深い目で頷いた。
『その時に教えて、名字は知ってるから』と笑顔で言った。
「うん・・じゃあ私もあなたの家に行く時に、名前教えてね」と満開で返した。
『うん・・俺、ずっと蘭に会って思ってたよ、名前なんて重要じゃないってね』と微笑んで返した。
「うん、嬉しいよ」と満開で微笑んだ。
蘭を見送って、朝の仕事をして、腕立てと腹筋をして出かけた。
一番街に入ると可愛いワンピースを着た、綺麗な女性が出口に向かって歩いて来た。
一瞬見て、綺麗な人だな~と思ってすれ違う時に、声をかけられた。
「私がなんかしたか、無視するとは良い度胸だな」とカスミの声がした。
『カスミ!・・うそ!』と言ってワンピースの女性を直視した、可愛い感じのカスミだった。
「可愛いだろ~」と一回転してみせた、輝く笑顔で。
『初対面がそれなら、夢中になってたよ』と感じた事を口にして、見惚れていた。
「今は夢中じゃないのかい?」と不敵をだした。
『夢中です・・でも不敵はやめろよ』とニヤで返した。
「楽しくてね~サクラさんの店、頑張ってくるよ~」と言って手を振った。
『カスミ可愛いぞ、浮気するなよ』とニヤして手を振った、カスミが舌を出して背中を向けた。
PGを通り越して、ユリカの店に着いたが鍵がかかっていた、私は合鍵で開けて入った。
ユリカは奥のBOXで裁縫をしていた、逆光で浮かぶシルエットが《まるで絵画のようだ》と思った。
『おはよう、ユリカ今日も可愛いね』と笑顔で声をかけた。
「おはよう、言葉より絵画の方が嬉しかったよ」と可愛く微笑んだ。
『逆光で裁縫してる姿が、絵になってるからね』と微笑んで返して隣に座った。
「お嫁さんの方が似合うからね」と可愛いニヤで返された。
『うん、でも土曜日の夜お店で見たら、案外様になってると感心したよ』とニヤで返した。
ユリカの綺麗な手が通す針を見ていた、その器用な動きに見惚れていた。
『ユリカ用心深いね、鍵いつもかけてるし』と真横のユリカに微笑んだ。
「か弱い乙女が夜街に一人で居るんだから、かけるよ」と笑顔で返した。
『危険が迫ってるって、なんとなく感じないの?』と素直に思ったままを聞いた。
「自分の事は全然駄目なの、好きな人の事はかなりの部分、分る時もあるけどね」と微笑んだ。
《ありがとう、俺も好きだよユリカが》と心で言って、ユリカに微笑んだ。
「それ素敵過ぎるよ、今キュンとした」と爽やかに笑った。
『近いとなるんだね、良い事発見した』とニヤで返した。
「距離じゃないよ、嘘は分らないから、本心だけだからね」と深い目をして爽やかに笑った。
『そっか~、でもその方が好都合』と言ってニヤで返した。
裁縫が終わりユリカと掃除をした、エプロン姿が可愛かった。
グラスを洗いBOXでコーラを飲んでると、ユリカが化粧道具を持ってきて化粧をはじめた。
『俺の試験が来るとか、どんな感じで分るの?』と真横のユリカに聞いてみた。
「全然分らないよ内容とかは、強い意志が出るみたいな感じが分るの」と私に微笑み。
「覚悟が必要みたいな感じだよ、あなたのしか分らないけどね」と爽やかな笑顔を見せた。
《ユリカ可愛いな~》と無意識に思った。
「うん」とユリカがニヤをだした、『いいかも~』と私も笑った。
ユリカが化粧を終えると、私を可愛い笑顔で見た。
「今日は沢山じゃなかったっけ」とニヤで言った、私が立ち上がるとユリカが首に腕を回した。
『ユリカ、シャンプー変えたな』と言いながら、抱き上げた。
「泣かすの趣味になったって、本当だね」と嬉しそうにユリカが私を見た。
『ユリカみたいに鋭い感性持ってないから、ユリカの事いつも見てるからね』と微笑んで返した。
「ありがとう、あなたがそう思ってくれるのが嬉しいよ」と言って、首に近寄り静かになった。
私はこの時は何も考えない、ただユリカの香りと温度と重みだけ感じていた。
「あなたは私を特別視しないから、最初に会った時に嬉しかったよ」とユリカが微笑んで。
「私に好意を持ってくれる男では、珍しいんだよ、興味本意が多いからね」と少し寂しげだった。
『最初の時俺は混乱してたんだよ、分らなくて、なんか生きてる人間と話してる感じじゃなかった』と正直に答えた。
「かまえてたからね、でも抱かれた事考えたら少し楽になって、それから見ようと思ったよあなたを」と言ったユリカは揺り篭に乗せてくれた。
私は揺り篭を楽しんでいた、本当に最高の時間なのだ、表現出来ない自分が悔しい。
『俺、ユリカだった聞いて、2回目抱っこして、水の意味だけ知りたかったんだ』とユリカに微笑み。
『それ以外はユリカの感性は個性だと思ってる、俺がユリカを好きなのには、それは関係ないから』とユリカの深い目を見ていた。
「本当に速度が速くなったね、元々も驚くほど早くてビックリしたけど」と優しく深い目で囁いた。
『何となく分るけど・・何が』と少し照れてユリカを見た、ユリカは腕に力を入れて、私の耳元に。
「心を言葉に変換する速度だよ、輪唱の歌を聴いてるみたいで嬉しいの」と言って、静になった。
私も嬉しくて、子守唄が気持ち良くて、何も考えずにユリカを抱いていた。
その頃である、靴屋に大きな男が来店してスニーカーを選んでいた。
蘭は店の奥から出てきて、男を見て最大級の満開を出して近づいた。
「今日はお休みかな?、豊君」と声をかけた、豊は振返り笑顔を返した。
「誰かと思いましたよ、休み取れて、今市役所に行って来た帰りです」と微笑んだ。
「スニーカーかしら?」と蘭も満開で微笑んだ。
「はい、ここが一番サイズも豊富だから」と少し照れながら、「最近28じゃ少し小さくて」と微笑んだ。
「なるほど、それは凄いね~」と蘭は微笑みながら、28以上の在庫がある靴を出して見せていた。
豊が靴を決めて、蘭が社員価格で売って、礼を言う豊かにこう言った。
「お昼食べる時間無いかな~」と笑顔で囁いた。
「いいですね、俺も小僧の近況聞きたいと思ってました」と豊は微笑んで返した。
「5分待ってて、本当にいい男やね~近くで微笑むと怖いよ」と満開で蘭が言って、奥に消えた。
3分で蘭が準備して、豊に近寄り思い切って腕を組んで微笑んだ。
「奥さん、やきもちさん?」と豊にニヤをした。
「かなりの、でもあなたには妬きませんよ、俺は楽しいし」と微笑んで返した。
「お昼お弁当でいい?会って欲しい人がいるの、小僧の最高指導者」と満開で微笑んだ。
「それは是非、会いたいですね」と言いながら弁当を買った、豊が支払ってPGに向かった。
蘭がTVルームを除くとマダム・ユリさん・ハルカ・マリアがいた。
「私の彼氏を紹介しま~す」と満開で微笑んで豊を引っ張りいれた。
全員の最高の笑顔を蘭が見て、豊が挨拶をした時に衝撃を受けた。
マリアが駆けてきて、豊に飛びつき抱っこをせがんだのだ。
豊は嬉しそうに抱き上げて、天使全開のマリアを見ていた、笑顔で。
「そっか~、君が最高指導者か・・ありがとうね」と豊がマリアに微笑むと、マリアが豊の頬にキスをした。
「やっぱり分るの、マリアちゃんって言うの」と蘭も満開で微笑んだ。
「名は体を表す、この子はまさにそうですね」と豊はユリさんを見た、ユリさんは最高の薔薇で微笑みで返した。
「さっ、はよう、座りなさい」とマダムも笑顔で招いた。
豊がマリアを抱いたまま、蘭と座ると、ユリさんが薔薇で微笑みながら。
「ありがとうマリアの事、あなたから言われると、本当に嬉しかったわ」薔薇で少し目を潤ませていた。
「どう感じたの?」と弁当を開けながら、蘭が興味津々光線を発射した。
「子供だけは分りますね、面倒見てきたから、でもこんなに白い子は初めて見ました」と蘭に微笑んだ。
「すごいの~、一瞬でそこまで分るか、面倒を見てもらった子達は幸せやの~」とマダムが笑顔で言った。
「感覚だけですよ、ほとんどの子供を見ても分りません」と豊は照れていた。
「何人位面倒みたんですか?」とハルカが微笑んだ。
「100人位ですか俺は」と微笑んで返した、「100人!」と驚くハルカを見て。
「小僧は1000人以上関わりを持ってるはずですよ」と笑顔で返した。
「あ奴は、やりそうだ」とハルカも笑顔を返した。
「でも驚きました、女性は短期間でこんなに美しくなるんですね」と豊はハルカを笑顔で見つめた、ハルカは本気で照れて、少し俯いた。
「ハルカ本気で照れるなよ、奥さんいるんだぞ」と蘭がハルカにニヤニヤした。
「知ってます、でも・・嬉しくて」と豊を見て舌を出した、皆で笑いながら食事をしていた。
「なぜマリアが最高指導者って、分ったのかしら?」とユリさんが薔薇で豊に微笑んだ。
「小僧は俺より感性が広いから、マリアには絶対服従でしょうね、奴はそれができるから」とユリさんを見て。
「奴自信は気付いてないけど、奴は白くありたいと常に思ってます、その人並外れた探究心の為に。
俺が人とこんな風に話が出来るようになったのは、奴が注意してくれたからです。
こうやって話したほうが伝わるって、いつも教えられましたよ。
奴は常に見たいんです、【事実】でなく感情も含めた【真実】を、そこが俺の好きなところです。
だから、奴は白い心に憧れてますよね、そして圧倒的な純白です、このマリアは」
とユリさんに微笑んで、腕の中で天使の笑顔で眠るマリアを見た。
「あなたの幸運に嫉妬した、カスミの言葉が分るよね~」と蘭が満開で微笑んで。
「私、和尚様に聞いて、豊君のあの一発の見解・・凄く感動したの」と豊に言った。
「生臭に会われましたか」と豊は少し照れて笑った。
「今、よくいらして下さいますよ」とユリさんが薔薇で言って、「蘭、独り占めはいけないわ、教えて」と蘭に微笑んだ。
蘭は和尚が言った、怨みを背負う話をした。
「そんなに、恰好の良い話じゃないですよ、和尚は大袈裟ですから」と豊は照れて微笑んだ。
「私は今、本当に嬉しい、自分もまだまだだと思えて、そこまでは分らなかった」とユリさんが嬉しそうに薔薇で微笑んだ。
「絶対あなたは感じてたよ、私は和尚の話を聞いて確信したよ、小僧はその時に気付いていたし」と蘭が満開で微笑んだ。
「ありがとう、皆さんに言われると、本当に嬉しいです」と豊は笑顔を見せた。
蘭の休憩時間が少くなり、蘭と豊が挨拶して立った。
「近くに来たら、マリアちゃんに会いに来ていいですか?」と豊がユリさんを笑顔で見ながら、マリアを渡した。
「今、それをお願いしようと思ってました」とユリさんが薔薇で微笑んで受け取った。
「お前さんは、フリーパスだよこの店は、待ってるから」とマダムも笑顔になった。
その時にレンと久美子が入って来た。豊を見て久美子が驚いて。
「豊さん!」と声を上げた、「知り合いなの?久美子」と蘭が久美子に微笑んだ。
「一方的に・・私達の年代の宮崎の女子で、知らない人はいませんから」と蘭を見て照れながら。
「伝説に近い憧れの人ですから、奥様は同学年のやはり伝説的存在ですから」と微笑んで返した。
「握手でもしてもらえば」と蘭が久美子にニヤをした。
「いいんですか~」と久美子が頬を染めながら豊を見た、豊も微笑んで返した。
「それは全然かまわないけど、噂を信じたらいけませんよ」と豊が笑顔で手を出した、久美子は嬉しそうに緊張して握った。可愛い少女の笑顔だった。
ここまでを、1年後に蘭から聞いた、嬉しかった。
TVルームを出て、通りに出た所で遭遇した。
食事を済ませてPGにユリカと腕を組みながら歩く私と、蘭と腕を組む豊兄さんと。
私の驚きに、豊兄さんの笑顔と蘭の満開があり、ユリカの深い瞳が豊兄さんを見ていた。
「贅沢な生活をしてるな、悪ガキ」と言って右手の拳を出して微笑んだ。
私も右手の拳を出して当てた、笑顔で。
「靴買いに来て、会っちゃってPGで食事したの~、私の彼氏と」と蘭が全開ニヤで言った。
「ねぇ、早く私を紹介してくれないかな~」とユリカが爽やかに私に微笑んだ。
私は豊兄さんにユリカを紹介した、その時に衝撃を受けた。
「私、少し遠いビルなの、一人で歩くの怖いの」とユリカが豊兄さんに、目を見ながら腕を組み微笑んだ。
「いいですよ、あなたなら守らないと」と豊兄さんも深い瞳を見ながら、微笑んで返した。
私と蘭は嬉しそうな2人に、別れの挨拶をした。
そして唖然としながら、腕を組み歩く2人を見送った、その楽しそうに話す後姿を。
蘭が私に腕を組んできて、私に満開で微笑みながら。
「あんたの幸運に嫉妬したよ」と不敵を出した、私も笑顔で返して蘭を靴屋に送った。
蘭と手を振って別れ、ユリカの笑顔を思い出しながら。
《同種族なんだ、豊兄さんもユリカとマリアと》と確信的に思い、そして緊張した。
《豊兄さんに、今会うんなら今度の試験は、相当の覚悟がいるんだな》と感じていた。
真夏の光が照りつける、西橘通りで。
試験開始はもう少し後である、豊の存在の大きさを再確認して嬉しかった。
ユリカの初対面の男に対する行為としては、信じられなかった。
そしてその夜聞くユリカの感想に感動する、その研ぎ澄まされた感性に。
ユリカとの会話の仕方を、私は見つけつつあった。
その絶対に嘘がつけない相手が、私の成長に大きく関与する。
蘭との関係を継続する上で、最も大切な事を教えてくれる。
その研ぎ澄まされた、ユリカの感性とは思えぬ何かが・・・。