蓮華
静寂のフロアーに響くその声は、暗い暗黒からの帰還の叫び。
巡り合った温もりに、溶け出した漆黒の闇。
抱かれながら拭われていく、そして導き出された挑戦者の顔を見ていた。
魔女が落ち着いたのを見て、ユリさんが私に微笑んだ。
「じゃあ源氏名をお願いしますね、エース」と言って薔薇で微笑んだ、魔女も私を見た。
私は歩きながら、和尚の話を思い出し決めた。
『今日来ていた和尚に昔聞いた事がある、蓮の花は泥水を浄化しながら水面に上るんだ。
地中の根から伸びた茎が、暗い暗黒の泥水を突き抜けて、水面に出るんだよ。
そして大輪の美しい花を咲かせる、暗黒を通っても美しく咲く。
その蓮の文字を絡めて、【一蓮托生】と言う言葉があるんだ。
暗い闇を恐れることは無い、そこから上がり大輪の花を見せて欲しい』と言って魔女を見た。
『魔女は暗闇すら恐れず進み咲かす花、蓮と書いて・・レンでどうかな?』と魔女に微笑んだ。
「ありがとう、その名前も腕を掴んでくれたことも」と言って私に微笑んだ。
「素敵な名前ね、本当にあなたは」と言って私を見て、薔薇で微笑んだ。
「じゃあレンちゃん、明日私10時から用事が有るから、9時にここに来れるかしら?」とレンにユリさんが微笑んだ。
「はい、分りました」とレンも可愛い笑顔で返した。
「その時に細かい事を決めましょう、お金も用意しますから」と薔薇で語った、レンは立ち上がり。
「本当にありがとうございます、絶対頑張ってみせます」と頭を下げた。
「これで、今夜は帰ってよく寝るんじゃよ」とマダムがタクシーチケットを渡した、レンはもう一度頭を下げて受け取った。
「じゃあエース、タクシーまで送ってあげて」とユリさんが私に薔薇で微笑んだ。
『了解』と言って、魔女の手を握り、エレベーターに向かった。
エレベーターに乗ると、レンが笑顔を向けた。
『良かったね、がんばって』と微笑んで返した。
「色々教えてねエース」と言ってレンも18歳の輝く笑顔を私に向けた。
『俺、未経験だから聞いた話と、雑誌の情報しかないよ』とニヤで返した。
「うん」と言ってレンが笑った、レンをタクシーに乗せて手を振って見送った。
TVルームに戻ると、全員揃っていて、カスミもいた。蘭が大きく頬を膨らませていた。
『どうした蘭?』と恐る恐る聞いた。
「良すぎる、ハルカもレンも一生忘れられない名前付けた」と笑顔で睨んだ。
『俺は蘭って名前が一生忘れられなくなった』と微笑んで返した、蘭が満開になって。
「うん、かえろ~」と言って立ち上がり、「どっちが10歳上なのだか」とカスミが不敵を出して蘭を見た。
全員で笑っていた。
エレベーターでユリさんが、マリアを抱く私を見て。
「あなたも明日9時に来れる?」と薔薇で聞いた、『もちろん』と笑顔で返した。
「今のレンにとって、あなたがいるのが心強いでしょうから」と優しい薔薇で言った。
「蘭姉さんも心配が絶えませんね~」とカスミが蘭に不敵を出した。
「本当に、変な物頭に乗せる人がいるから」と蘭がカスミにニヤで返した。
「カスミちゃんありがとう、そしてお願いしますよ、引っ張って下さいね、焦らずに」とユリさんが薔薇で微笑んだ。
「全力でやってみます」と言ってカスミが目を潤ませた、「泣くな多分」と蘭がニヤをした。
「やめて、泣かし屋さん」とカスミが蘭を見て必死に不敵を作った。
私がカスミを見たら。
「とどめ刺すなよ、又添い寝させるぞ」と不敵を出した。
「蘭、私が熱を出したときも、貸してね」とユリさんが薔薇で蘭に微笑んだ。
「それは無理です、ロボットが制御不能になります」と言ってユリさんにニヤした。
「やっと私にニヤしてくれました」とユリさんが私を見て泣き真似をした。
『良かったなユリ、頑張ったから良い事あったんだぞ』とニヤで返して、全員で笑った。
ユリさんとマリアを見送り、カスミに手を振って別れて、蘭とタクシーに乗った。
蘭が肩に乗ってきて。
「よくやった、頑張ったね」と囁いた。
『四天女や蘭なら必ずそうすると思ったから、無意識にできたよ』と囁いて返した。
「うん、嬉しかった~」と言って瞳を閉じた、疲れてる蘭の顔を見ていた。
タクシーが着き、蘭を抱っこした。
『日曜日休み?』と微笑んで聞いた、「うん」と蘭が微笑んだ。
『じゃあ蘭の時間を俺にくれない?』と囁いた、「いいよ、何するの」と囁いて返した。
『しっかり休んで、今は蘭の休息が一番の望みだから』と囁いた。
「うん」と言って満開で笑った。
蘭が化粧を落とし、パジャマでベッドに入った。
私は電気を消して、いつもの位置に座り話した。
『昨日カスミにした話をしとくね』と蘭の嬉しそうな顔を見ながら、話した。
話終わると、蘭が涙を見せて微笑んで。
「お願い、今夜だけ背中合わせして」と甘えた、『ちゃんと寝るんなら』と微笑んだ。
「うん」と微笑んで背中を向けた、私も背中をつけて手を握った。
5分もしないで目を閉じたまま蘭が私を向き、腕枕をして蘭の寝息を聞きながら眠りに落ちた。
翌朝蘭の手が顔に当たり目が覚めた、ゆっくりと腕を抜き洗面所に向かった。
歯を磨き、顔を洗って腹筋をチェックした、正拳の痕跡は無かった。
トーストを焼いて、スクランブルエッグとロースハムとトマトにした。
「ねえ、この幸せはいつまで続くの」と蘭が微笑んだ。
《やっぱり気付いたか俺の変化に》と思って、笑顔を向けた。
『蘭、夏休みが終わったら、親父の所に詫びに行く。
そしてここに帰ってくる、学校にも行くし成績も上げてみせるから。
ここに居させてくれないかな、出来るだけ迷惑はかけないから』と真顔で言った。
「朝からなぜ泣かす、出て行けなんて言うわけないよ」と満開で笑って洗面所に消えた。
この時の私の嬉しさは表現できない、泣きそうだった。
ご機嫌の蘭と朝食を食べていた、蘭のご機嫌が嬉しかった。
「レンちゃん、話済んだら靴屋に連れてきて」と蘭が微笑んだ。
『了解、何かあるの?』と笑顔で返した、「入店祝いをね」と満開で笑っていた。
ご機嫌蘭を見送って、急いで朝の仕事をして、日記を書いて出かけた。
靴屋はまだシャッターが閉まっていて、PGに向かうと下でレンと制服を着た、可愛い女子高生が話していた。
『おはよう、レン姉さん』と声をかけた、レンが振向き女子高生が頭を下げた。
『何してるの?』と言いながら妹であろう女子高生を見た、透明感のある爽やかな美少女だった。
「妹がどうしても行きたいって言うから」と困った顔でレンが言った。
『いいじゃん連れてくれば』とレンを見て微笑んだ。
「ありがとう、妹の久美子です」と微笑んだ、可愛いな~と思っていた。
『美人姉妹って言われてるでしょう』と久美子にニヤしながら言った。
「やめとけよ、絶対口じゃかなわん中学生だぞ」とレンが久美子に笑顔で言った。
『ひどい、レン一晩で変った』とウルで言いながら階段で上がった。
TVルームにはマダムとユリさんにハルカとマリアがいた。
レンは挨拶して、久美子を紹介した。ユリさんが久美子も招き入れた。
「時間が無いから始めるわね、夜は8時から終了までで大丈夫?」レンが「はい」と頷いた。
「レンちゃん、その分自給出すから13時から準備の方にも入ってくれないかしら」とユリさんが微笑んだ。
「やらせて下さい」とレンも笑顔で答えた。
「良かった~誰かさんが学校は行くでしょうから、丁度よかったのありがとう」とユリさんが私を見て微笑んだ。
「それではこれが約束のお金、どうします自分で管理する自信がありますか?」とユリさんが真顔でレンを見た。
「できれば25万で今はお願いして、本当に厳しくなった時に残りをお願いできますか」とレンが言った。
「分りました、無理せずいつでも言って下さいね」と薔薇で微笑んだ。
「すいません、お願いします皿洗いでも何でもします、私にも何かさせて下さい」と久美子が土下座した。
必死の訴えだった、私はその背中を見て感動していた。
「頭を上げてちょうだい・・・そうね、困ったですね」とユリさんがマダムに言った。
「こういう時のエースじゃろ」と私に振った。
『久美子は制服からして女子高だね、もしかして音楽科?』と聞いてみた、昨夜のレンの【優秀】と言った言葉があったのでそう思ったのだ。
「うん」と久美子が頷いた、『専門は?』と聞いた、「ピアノだよ」と少し笑顔で答えた。
『夕方でいいから、1年生と年中さんに基礎位は教えられるよね?』と言った時に、マダムとユリさんとハルカの笑顔が出た。
「それなら、出来るよ」と久美子も笑顔が出た、『家にピアノあるの?』と微笑んだ。
「今は無いよ」と答えた、凄い子だと思っていたピアノがなくて音楽科であることが。
『じゃあ、俺が母親に頼んでみるからOk出たら頼むね』と言うと、「うん」と笑顔で答えた。
『ただし条件がある、フロアー準備してる時音が無くて寂しいから』
『久美子が空いてる時間は来て練習して、自分の課題曲でいいから思いっきり弾いてよ、そうすれば準備もはかどるよねハルカ』とハルカを見た。
「お願いします、素敵」と言ってハルカも久美子を見て微笑んだ。
『いいよねマダム』と言ってマダムに微笑んだ。
「そんな提案を却下するほどモウロクしてないよ、頼んだよ」とマダムも久美子を見た。
「お前が本物のエースだって今気付いたよ、本当にありがとな」とまたレンが泣いていた。
『レン、俺が初めて連れてきたんだから、仕事で見せてね、頑張って』と笑顔で言った。
『じゃあ久美子ピアノ案内するから行こう』と言って久美子に微笑んだ、久美子が笑顔で立ち上がった。
「調律は今日きてもらいますね」とユリさんが薔薇の笑顔で言った。
TVルームを出ると、久美子が近寄って。
「ありがとう」と言った、『お礼して』とニヤして手を出した、久美子が笑顔で繋いでくれた。
『あれだよ』と私の言葉に、白いグランドピアノを見た、久美子の輝く瞳があった。
「本当にこれを弾いていいの」と言いながら近づいて、嬉しそうに見ていた。
「お礼、手を繋ぐだけでいいの?」と久美子が微笑んだ。
『久美子の最初の単独リサイタルの一番良い席』とニッで返した。
「うん、約束する」と嬉しそうに笑い、ピアノを触っていた。
久美子とTVルームに戻ると、ハルカを紹介していた。それが終わるのを待って。
『久美子、この人がハルカ姉さん、久美子の1歳年上だから姉さんって呼ぶと泣くはず』とニヤでハルカを見た。
「よろしくお願いします、ハルカ姉さん」と久美子が頭を下げた。
「よろしくおねがいね、初めて女の子から姉さんって言われた」と嬉しそうにハルカが笑った。
「じゃあアパートは月曜日に探しましょう」とユリさんがレンに微笑み、レンがまた泣きながら頭を下げた。
「いつから出れますか?」とユリさんが聞くと、「今日からやらせて下さい」とレンが頭を下げた。
「じゃあハルカお願いね」とユリさんが微笑んだ。
『久美子いつから弾けますか?』と私が久美子を見ると、「今日から」と嬉しそうに笑った。
マリアが起きたので、抱き上げた、久美子がマリアを見て笑顔を見せた。
「その子には、まだ無理かしら」とユリさんが薔薇で微笑んだ。
「やらせて下さい、少しずつ」と久美子も笑顔で返した、皆の笑顔の真ん中に天使の笑顔があった。
私はレンと2人で靴屋に行った、久美子は楽譜を取りに帰った。
「本当にありがとな」とレンが言った、『もう聞いたよ、何もしてないよ』と微笑んで返した。
「いや絶対に忘れない、私も久美子も」と言って微笑んだ。
靴屋で蘭を呼ぶと、満開でレンを招きいれハイヒールを履かせいた。
私は一番街を足早に歩いた、サクラさんのブティックまで、もうすぐユリカも来ると思いながら。
忙しい日々を楽しんでいた、必要とされる場所と、帰る場所のある喜びに溢れていた。
レンの加入でPGが又変化するのはもう少し先である。
先に影響を与えるのが久美子の奏でるピアノだった。
その必死に練習する姿が全員の心を掴む、集中の中にある輝く光が魅了する。
16歳の輝きに女性達が振返り、そして前を向くのだ自分達も集中する輝きを見せようと。
私自身もこの夏物語での自分の評価として、最も高いのはこの久美子への提案である。
その音色をが拍車をかける、夏は終わらないと。
熱は冷まさないと言いながら・・・。