表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/454

予知

どこまでの変化に気付くのだろう、小さく微かな変化でも感じたい。

そうしないと遅れる、絶対に後悔したくないのなら・・感じるしかない。


深くなりゆく夜に蝉達の声だけが響いている、時折窓を叩く南風が誘っている。

開放の夏が来ていると、生命が産まれた場所を目指せと誘う、南国の夏。

私はカスミの復活してきた横顔を、飽きもせず見ていた。

時計は11時を回っていた、カスミがゆっくりと目を開けた。

私を見た瞳には、はっきりと復活の光が現れていた。

『復活したな、心配かけやがって』と微笑んで、その輝きを見ていた。

「まだ、充電足りてない・・添い寝して」と少し照れた、可愛かった。

『激しく抱きついたりするなよ』と言って笑顔を返した。

「しないから、少しの時間でいいから・・腕枕して」と甘えた。


私はカスミのタオルケット越しに横になり、腕を首から通し少し引き寄せて腕枕をした。

カスミは私の方を向き、顔を胸に付けて静かになった。

その顔の小ささに改めて驚いていた、体に対するバランスが小さい事に。

「何考えてる?」と私の胸に向かってカスミが言った、目を閉じたまま。

『顔っていうか頭が小さいと、再確認してた』と素直に答えた。

「蘭姉さんも小さいぞ」と口だけ少し微笑んだ。

『うん、でも体のバランスから言ったら、カスミのは小さいよ』と囁いて返した。

「脳みそも少ないって聞こえる」と口だけニヤをした。

『カスミは頭いいだろ、あれだけの会話ができるんだから』と思ったまま言った。

「ギュするから、覚悟しな」と上を向き私に不敵を出した。

『やっと本当の不敵がでたね、涙出そうになった』と微笑んで返した。

「そんなに泣かせたいのか」と言って顔を下げて、強く抱きついた。

豊満な胸が私の腹筋で潰れていた、カスミの香りが漂っていた。


カスミはそのまま静かになった、私はカスミの頭と背中を支えていた。

何も考えていなかった、ただカスミが可愛くてそうしていた。

「私、やれるかも・・そう思ってるよ」とカスミが私の胸で言った。

『あんまり、急ぐなよ』と囁いて後頭部を撫でた。

「うん、響いたよ今日の言葉も、さっきの話も」と囁いて。

「私のこと・・好き?」とそこだけ少女のように小さな声で聞いた。

『好きだよ、勝手な言い方だけど・・カスミも特別なんだよ』と囁いて想いのままを話した。

『カスミが西橘で揺れた時、怖かった・・凄い恐怖に自分が驚いた。

 もちろんその前から、カスミが特別だって思ってたけど。

 自分の気持ちがそれほど強いことを、再確認させられて動揺したよ。

 もちろん蘭を愛してる、心の底から。

 俺さっき混乱してたんだ、未熟だから・・でも蘭の言葉を思い出して楽になった。

 蘭がどんなに好きな人を想っていたとしても、生き方を変えてほしくないっ言ったんだ。

 本心を言うと、俺はカスミともう一人特別な存在が、今は心にいる。

 でも絶対に蘭を悲しませる事だけはしない、でもその2人との関係も切らない。

 俺は身勝手な人間だと思ってる、でもそれが俺の生き方なんだと思ってる。

 だからはっきり言える、俺はカスミが大好きだよ』

カスミは静かだった、圧倒的静寂が2人を包んでいた。


「ありがとう、嬉しくて喋りたくなかった、私にとっても特別だよ」と静かに言って。

「今ので全部埋めてくれた、私の後悔していた未熟な時期も」と囁いてまた強く抱かれた。

「体を求めない男に初めて本当の意味で抱かれた、お前が初体験の男になったよ」と囁いた。

その声が、カスミの復活を主張して響いて、私は嬉しさに包まれていた。

「やっぱり、ユリカさんも特別か~」とニヤで私を見た。

『うん、贅沢な男だろ』と照れてる心を隠して、微笑んで返した。

「絶対その気持ち蘭姉さんは気付いてる、そしてあの人はそれを喜んでいると思うよ」と真顔で言った。

『俺もそう思う、素敵だよ蘭は』と心のままを口にした。

「お昼の仕事してみたいのは、蘭姉さんに近づきたいから」カスミは胸に顔を戻して囁いた。

「あんな風に生きてみたい、優しさも愛情表現も全て憧れてる」と静かに言って。

「土曜日の一番街のラッパ飲み、感動した心がブルブル震えたよ」と言って体を離した。

「ありがとう、また疲れたらしてくれるんだろ」と光が戻った瞳で微笑んだ。

『カスミがどんなに嫌だって言っても、その時は一人には絶対にさせないよ』と真顔で返した。

「楽しんでるだろ、泣かすの」と言って涙を流した。

私はカスミを氷枕に寝かせて、横に座り涙を拭いて額に手を当てて。

『お休みカスミ、ここにいるから』と優しく囁いた、カスミはゆっくり瞳を閉じた。

静寂の中、カスミの寝息だけが聞こえていた。私は楽になっていた。


カタンとドアの音がして目覚めた、私はベッドにもたれて寝ていた。

目を開けると、目の前に蘭がいて微笑んでいた。

私は無意識に蘭を抱きしめた、蘭も抱きしめてくれた。

「そっから押し倒すんだろう、寝たふりしといてやるよ」とカスミが後から言った。

「カスミちゃん、復活したね」と蘭は抱きしめたままカスミに言った。

「ありがとう、蘭姉さん」と言った言葉が優しく響いた。

「魔法いくつかけた」と少し離れて、私を笑顔で睨んだ。

『かけてないよ』と微笑んで返すと、「4つ」とカスミが言った。

「多い、ちょっと多すぎ~」と満開で言ってまた抱きついた。


蘭が化粧を落とし、パジャマで帰ってきた。

『俺はどこに寝るのだろう?』とウルで蘭に聞いてみた。

「ここで私と背中合わせで寝るんだろ、カスミが何かあったら私じゃ抱けないよ」とニヤで返した。

「なんか急にめまいが」とカスミが不敵で私を見た。

『カスミはやっぱり良い子だね』とニッで返した。2人が笑っていた。

蘭が布団に入り、私も背中合わせで横になった。蘭の背中とお尻が当たってた。

「それは我慢なのか?」とカスミが聞いた。

『添い寝する前は、我慢との戦いだって思ってたけど、現実には我慢しなくてよかった』と素直に話した。

「カスミに添い寝した時は?」と蘭が言った、『同じだよ』と誰にも見えないがニヤで答えた。

「それなんだよな~、その隠さない気持ちが魔法なんだよな~」とカスミが言って。

「私もそう思う・・・・」と蘭がカスミにミノルが語った話をした。

「蘭姉さん、今日のお礼に今度ご馳走するから、そこに連れてって」とカスミが言った。

『カスミも絶対好きになるよ、ミノルさん。カスミも聞き魔だから』と私が返して。

「よし、来週の靴屋が休みの日に3人で行こう」と蘭が言った。

「楽しみ~」とカスミが言って。

「うん、カスミもう寝ようね、今が一番大切な時間だよ」と蘭が言うと。

「はい、お休みなさ~い」とカスミが言って、お休みをした。


蘭が私の腰を手で優しく叩いた、私も手を伸ばして腰の上で繋いだ。

蘭が背中が暖かくて、最高の気分に包まれていた。

私がウトウトと眠りに入りかけた時、蘭が手を離し私の方を向いた。

目は閉じてて、眠ってる感じだった。私は優しく腕枕をして、軽く抱きしめた。

《恥ずかしがりやの、やきもちやきめ》と思いながら、多分意識があるだろう蘭を優しく抱いていた。

私は睡眠不足だったのか、いつ寝たのか記憶がなかった。

ただ2人の輝く女性の香りに包まれて、幸せに眠っていた。


翌朝、陽の光で目が覚めた、快晴だった、蘭は腕の中にいた。

《蘭、寝相いいよな~》と思いながら、ゆっくりと腕を抜き、静かにカーテンを閉めた。

朝陽に照らされたカスミは、完全復活を予感させる輝きを放ちながら眠っていた。

洗面所で歯を磨き顔を洗い、ご飯がかなりあったので、3人分の朝食を用意した。

ハムエッグにレタスとトマトの皿に乗せ、上出来のカニさんタコさんを乗せた。

「ねっ良いでしょ~」と蘭が言って、「欲しい~」とカスミが元気な声で笑った。

2人が洗面所に消えて、私が布団を片付けテーブルを戻して、朝食を準備した。


「なんで、どうしてこんなに感動できるんだろう」と言いながらカスミが座り。

「あげないよ」と蘭がカスミにニッをしながら言った。

3人で朝食を笑顔で食べていた。

「今日はユメ・ウミ・マミの水着見るのか~」と蘭がニヤニヤで私を見た。

「残念だ~、私こんな調子じゃなかったら行こうと思ってたのに」とカスミが不敵で私を見た。

『カスミはもう青島じゃ有名人みたいだよ、それに1番の楽しみはその3人じゃない』とニヤで2人に返した。

「えっ、ハルカちゃんの見たんでしょ?」と蘭が突っ込んだ。

『君達みたいに、成熟してない体は見飽きた』とニヤニヤで返した。

「まさか!ユリさん水着・・着るの?」と蘭が驚いて返した、私はニヤで頷いた。

「蘭姉さん、靴屋休まないと危険だ」とカスミが蘭をニヤで見た。

「そうする、でも付いて行っても勝てない気がする」とニヤで私を見た。

『俺は蘭と誰かを比べないって言ってるでしょ』と微笑んで返した。

「うん」と言って蘭が笑った、「新婚さんみたいだ」とカスミが笑っていた。

私も蘭もその笑顔が嬉しくて、カスミを見ていた、輝きが完全に戻った姿を。


蘭とカスミが一緒にでかけた、玄関でカスミが振返り。

「お礼、今夜ね」と私を見て蘭にニヤした、「謹んでお断りします」と蘭がニッで返した。

私はウルしながら2人を見送って、朝の仕事を済ませて、日記を書いた。

10時少し前には出掛けた、靴屋に入って蘭の背中に。

『綺麗な店員さん、ビーチサンダルありますか?』とニヤで声をかけた。

「もう少し大きい声で、もう一度」と蘭がそのまま要求した。

『宮崎で一番美しい靴屋のお嬢さん、ビーチサンダルありますか?』と少し声を大きくして言った。

「いや~ん、正直なお客さん、ありますよ」と満開で振返り、差し出した。

『それ下さい、綺麗なお姉さん』と言って返した。

「ありがとうございます、正直な坊や」と楽しそうに言って、袋に入れてくれた。

お金を渡し、お釣りを持ってきて耳元で。

「今日も夕方お迎え無理なの、私も充電がいる、仕事前に抱っこしてね」と囁いた。

私は指のサインで【OK・OK】と2回出して微笑んで返した。

満開の笑顔の蘭と手を振って別れて、ユリカの店に向かった。


途中で立ち止まって見ていた、カスミが揺れた場所を。

絶対に忘れてはいけないと、俺は前日もカスミを抱いて、深夜まで一緒に過ごした。

それなのに疲れてるとしか感じなかった事を、強く反省していた。

《抱き上げたのに、感じなかった》一番近くに体を寄せたのに。

俺は未熟だ、逆に俺が昨日カスミのような事になったら。

《絶対に蘭もユリカもカスミも前日に気付くだろう》と思いながらアスファルトを見ていた。


「まだなの、そんなに道路が好き?」とユリカの声がして、横を見ると可愛いユリカが微笑んだ。

『昨夜はごめんね、見上げてやれなくて』とユリカに笑顔で返した。

「うん、じゃあこれで勘弁してあげる」と言って手を繋いだ。

灼熱のアスファルトの上を歩いていた、もう少し全てに対し敏感になろうと。

そうしないと後悔する、それだけは避けよう。

ユリカの手の温もりと、可愛い笑顔を見ながら誓っていた。


結局私は、この関係の明確な何かをこの時には求めなかった。


確かに蘭に甘えていた部分も大きい、そしてこの2人との関係は続く。


ユリカが冬のホームで汽車に乗るまで。


蘭に、この私の複雑な感情を話すのは2年後である。


その時の蘭の言葉に私はまた撃たれる、その限りない深さに。


どこまでも底が見えない、光輝く深海のような心に・・・。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ