姿勢
常に準備をする・・危機管理。仕事や日常生活だけではない。
想定している、最悪の状態まで。そうしないと生きていけない。
生きる事に不慣れで、下手な・・私などは。
【リンリン】と優しく響く、可愛い目覚まし時計の音で、爽やかに目覚めた。
蘭は私の腕の中にいた、私は静かに腕を抜き洗面所に向かった。
歯を磨き、顔を洗おうと鏡を見ると、両頬と額に僅かにキスマークが残っていた。
《もったいないな、ユリカのが》と思っていた。
蘭は当然だが、リアンもあの性格ならまだ何度か頬キスはあるだろう。
しかしユリカは生涯一度かもしれないと思っていた、少しの寂しさがあった。
意を決して顔を洗い、キッチンに向かった。
祖母が二日酔いの人によく作っていた、お粥を思い出して、ご飯を確認すると2人分あった。
《朝和定食がお気に入りだな》と思いニヤしながら作った。
塩加減が分らないので、梅干を入れて爽やか風味で誤魔化した。
蘭の部屋に戻ると、蘭が足を広げて爆睡状態だった。
『女の子が駄目ですね~』と蘭の横に座り、額に手を当てて囁いた。
蘭が目を開けて、微笑んで返した。元気な瞳に安心していた。
『二日酔いは?』とニヤで聞くと、「あんなに楽しかったら、ならないよ」と笑顔で返した。
蘭が洗面所に行き、戻って朝食を見て満開になった。
「どうしてだろう、涙が出そう」と座りながら私に微笑んだ。
『ユリカの技を盗んでるからね』とニッで返した。
「ありがとう、昨夜のユリカ姉さんを見て本当に嬉しかったよ・・魔法使いさん」と微笑んで返してきた。
朝食を食べながら、笑顔の蘭に聞いてみた。
『なんで休みの日に、早起きするのかな?』とニヤで聞いた。
「母さんが宮崎に、10時の汽車で出てくるの」と蘭が嬉しそうに微笑んだ。
『俺、散髪してスーツ買ってくるよ』とニヤで返した。
「うちの母親を殺す気なの、今のあなたが挨拶したら倒れるよ」とニヤニヤで返された。
『娘さんをくださいって、言おうと思ったのに』と笑顔のウルで返した。
「うん、必ず言ってね・・いつか」と満開の笑顔で笑っていた、私も嬉しくて笑った。
蘭が準備をして、ケンメリで出かけた。ユリカのビルの前で車を止めた。
「ユリカ姉さん疲れてるだろうから、頑張って」と蘭が微笑んだ。
『お袋さん、お泊り?』とウルで聞いてみた。
「3時位の汽車で帰るって、晩御飯食べに行く?」と蘭がニヤした。
『もちろん』と笑顔で言って、車を降りてケンメリを見送った。
《ユリカ、さすがにまだ来てないよな~》と思いながら、ビルを見上げて。
エレベーターで店の前まで来て、ドアを押してみた。鍵がかかっていた。
私は合鍵で店に入った。そして見つける、人形のように眠る可愛いユリカを。
ユリカは奥のBOXで大きなバスタオルをかけて寝ていた。
素顔のまま、洋服は着替えていたので、1度は帰ったなと思い寝顔を見ていた。
朝の陽が少しづつ窓から侵入してきて、素顔のユリカは美しく輝いていた。
私はソファーの横の床に座り、ユリカを至近距離で見ていた。可愛い寝顔を。
ユリカの額に汗が光り、暑くなってきた思い。空調のスイッチを探してONにした。
そして元の位置に座り、ユリカの額に手を当てたままユリカを見ていた。
「気持ちいい」とユリカは目を開けずに微笑んだ。
『ユリカ、疲れてるんだろ・・もう少し寝なさい』と優しく囁いた、手を当てたまま。
「時間まで居てくれる?」と目を閉じて静かに言った言葉が、子守唄の響きを連れてきた。
『もちろん、・・ねぇユリカ・・俺、上手く表現できないけど・・ユリカが好きだよ』羊水の揺り篭のに揺られて。
『すごく勝手な言い方だけど、蘭に対する感情とは別の意味で、ユリカが大好きなんだ』とユリカの耳元に囁いた。
「勝手じゃないよ、凄く嬉しい・・蘭をきちんと愛して、それで私を好きだと言ってくれる事が」
「私も、あなたが好きだよ」と子守歌の響きで囁いた
「今、分ったよ・・羊水の響き・・自分で感じてるよ」とユリカが可愛く微笑んだ。
『素敵だろ、水のユリカ・・永遠に忘れない響きだよ』と静かに囁いた、ユリカが愛おしくて。
ユリカが静かになって、深い眠りに落ちた。
私も継続している揺り篭が気持ち良くて、ユリカの眠るソファーにもたれて眠っていた。
「よし、頑張ろうか」とユリカの声が耳元で響き、目を開けるとユリカの顔が5cm位の近さにあった。
『可愛い顔で、脅かすなよ』と必死で動揺を隠して言った。
「練習しようと思ってたのに」とユリカがニヤで来て、少し離れた。
『俺なんか朝、顔洗いながら寂しくなってたんだから』とニヤで返した。
「何が、寂しかったの?」と立ち上がりながら、ユリカが笑顔で聞いた。
『ユリカのキスマーク、リアンはあの性格だから何度でもありそうだからね』とニッで返した。
「知らないの、私意外と挑戦的よ」とソファーに立ってバスタオルをたたみながら、ユリカがニヤで返してきた。
私は床のユリカのスリッパを手にとって、立ち上がり思いっきり遠くに投げた。
『掃除前の床を素足で歩けますか、姫』と全開ニヤでユリカに迫った。
「姫は歩けぬ、抱っこを所望する」と笑顔で言って、私の首に腕を回した。
私はユリカを抱き上げて、笑顔でユリカを見た。可愛いユリカが笑っていた。
ユリカが掃除機をかける方向の、椅子やテーブルを動かしながら笑顔でユリカを見ていた。
《ユリカ、お嫁さんの方が似合うよな~》とエプロン姿のユリカを見て思っていた。
ユリカがグラスを洗い、私が厳しく注意されながら拭いて。店の準備が終わった。
私がBOXでコーラを飲んでいると、ユリカが化粧道具を持って私の横に座った。
鏡をテーブルに置いて、化粧をはじめた。
『男に化粧する姿見せるの、初めてかな?』とアイシャドーを塗るユリカにニヤで聞いた。
「もちろん、光栄に思いなさい」とニヤで返してきた。
『ユリカの初めての男記録、1つ追加~』とニヤニヤでユリカを見ていた。
「100まで頑張ってね」とユリカが微笑み、鏡に顔を戻した。
『100までか~・・ごめん今いやらしい事考えた』とユリカの可愛い横顔に言った。
「分ってる、私を誰だと思ってるの」と鏡に映る私に、ニヤを返した。
ユリカと腕を組み、昼食をホテルのレストランでバイキングを食べた。
ユリカが沢山食べるのを、驚きながら見ていた。
『どこに入っていくのだろう』とコーヒーを飲むユリカを見て笑顔で言った。
「私もそう思う、背が伸びなかったし」と可愛く少し照れて笑った。
『でも胸は大きいよね、意外に』と私はニヤで返した。
「どれで測ったの?それ正確な数字?」と楽しそうに可愛く笑った。
私はTVで見た、丹波哲郎を真似て。キーホルダーをテーブルに出して。
『今日部屋を取ってあるんだ、帰さないよ』と真顔で言った。
「駄目、私には主人がいるの」とユリカがウルで返した。
『旦那と俺のどっちが好きなんだい?』と言いながら、ユリカの手を両手で握った。
「駄目よ、絶対駄目・・これ以上苦しめないで」とユリカがウル全開で来た。
『さぁ、全てを捨てて俺に飛び込んでおいで』とユリカをウルで見た。
「全部受け止めてね」とユリカも爽やかな笑顔で言った。2人で笑っていた。
周りの客もサービス係りの視線も無視して、楽しんでいた。
ホテルを出て、ユリカのビルの下で別れた、笑顔の可愛いユリカが手を振った。
TVルームに行くと、ハルカがいて、エミとミサが可愛いビキニの水着を着ていた。
「ほら~」とミサが私に駆け寄って自慢全開の笑顔を出した。
『可愛いね~ミサもエミも』と言って2人を見ていた、少女の笑顔で輝いて見えた。
『ハルカは赤いの試着しないの?』とニヤで聞いた。
「出し惜しみしてるのよ、明日のお楽しみ~」とニヤで返してきた。
『楽しみや~マミとウミ』とニッで返した、ハルカは笑顔で睨んでた。
ユリさんとマリアが来て、昨夜のお礼を言った。薔薇の微笑みで返してくれた。
「あい」とマリアが袋を持って来た、私が中を見ると可愛い水着が入っていた。
『マリアも可愛いの良かったね~』とマリアに微笑むと。
「チャー、あい」と天使の笑顔で万歳をした。
『マリア、やきもちだね。私も着替えさせろって』と思わず言ってしまった、《しまった!》と思ったが遅かった。
「まぁ、蘭のお着替えまでしてくれてるの」とユリさんが悪戯っ子を出して。
「お着替えだけでしょうね~」とハルカが全開ニヤで私を見た。
『真っ暗にして、手探りで』とマリアの服を脱がしながら、照れた。
「変なところ探らなかった?」とハルカがニヤを継続しながら言った。
「ハルカ、少し進歩しましたね」とユリさんがハルカに微笑んだ。
『まだまだ、3段階は遠いけどな』とハルカにニヤを出し返した。
「教官、3段階目は何ですか?」とハルカが笑顔で返してきた。
『決まってるだろ、ハルカが一番免疫が無い・・男の口説き文句』とニヤニヤで言った。
「それもあるのか~」とハルカが笑顔で呟いた。ユリさんが笑顔でハルカを見ていた。
『はい、出来上がり。マリアも可愛いね~』と笑顔でビキニのマリアを見た。
マリアはブラが嫌ならしく、取ってしまった。
『マリアオッパイ見えるから、駄目だよ~』と優しく言うと。マリアが私を見て天使になって。
「チャー、うえし?」と首を傾けた。ユリさんとハルカが爆笑していた。
「絶対、嬉しいんだよマリア」とハルカが脇腹を押さえて、うずくまり笑っていた。
『マリア、チャーは嬉しいけど、着ないと駄目だよ』と言いながらブラを着せて、ハルカを笑顔で睨んだ。
「明日は1時にバスが迎えに来ますから、短い時間だけどよろしくね」とまだ余韻が残る笑顔でユリさんが私を見た。
『了解です』と言いながら、照れた笑顔を返した。
ハルカと予約確認をして、タバコを買いに行き。
ユリカのビルを見上げると、夏の空に飛行機雲が線を描いていた。
後から南風が吹いてきた、強烈な潮風を感じたいと思っていた。
見上げた最上階のユリカの棲家を見ていた、窓に入道雲が映っていた。
《聞こえるだろうユリカ、俺も頑張ってみるよ皆の近くにいたいからね》と心で呟いた。
8月の風が狭い通りに強く吹き抜け、背中を押されたが揺れる事はなかった。
雲の上に親父の顔が見えた。
《待ってろよ、もうすぐ答えと、侘びの言葉と、策略と、愛する人を心に持って行くから》
そう呟いて、前を見た。熱に揺れる風景の先に見えた。
霞むことが絶対にないカスミが、強烈な輝きを連れて、美しく立って手を振っていた。
カスミとの次の章の幕開けを、喜ぶように笑っていた。
この時のカスミの輝きは強烈で、今でもはっきり覚えている。
後に私が【光りのカスミ】と称号を付けたのも、この時の輝きからだった。
カスミは常に闘う、自分自身とも世間という者とも。
強いのではない、弱い自分に対し負けず嫌いなのだ。
その立姿は圧倒的な美だった、モデルの経験からだろう歩き方も美しかった。
【姿勢】というものに、強くこだわり続けた。
身体的にも、精神的にも・・・。