記録
自分に正直でありたい、難しいことだ。
誤魔化したり、言訳したりはできる。でも嘘はつけない、自分にだけは。
街路樹の影がオアシスのように見える、灼熱の道を車体を熱しながら走っていた。
低い車体が路面の熱を浴びても、運転する薔薇は涼しげだった。
「今夜は遅くなるから、明後日にしましょう」と私見て薔薇で微笑んだ。
『了解です。ユリさんも水着、着ますか?』と私は初めてユリさんにニヤを出した。
「もちろん。私、泳ぐの上手いのよ」と前を見ながら微笑んだ。
『楽しみや~』と私も前を見ながら、ニヤを出していた。
「ハルカと、できればウミちゃんにも手伝ってもらいますね」と私を薔薇の微笑で見た。
『ウミは喜んで、泣きますよ』と私はウミの泣顔を思い出していた。
車は橘通りで止まり、準備に帰るユリさんと別れた。マリアは眠ったままだった。
TVルームには誰もいなかったので、フロアーに行った。
ハルカが日南デートの時のワンピースを着て、背中を向けて立っていた。
『ケイ』私がそう呼ぶと、ハルカが驚いて振向いた。
『やっぱり、その服が一番のお気に入りだったね、可愛いね~』とニッで言った。
「偶然よ、数あるコレクションの中から偶然なっただけよ」とニヤで返した。
『も~照れ屋さんなんだから~』とニヤで返した。
予約確認をしながら、ハルカから漂う微かな香水の匂いを感じていた。
『そんな娘に育てた覚えはないよ、香水なんか10年早いよ』とマダムを真似た。ハルカは私の顔の前に手を広げて。
「それだけはやめてって、言ってるじゃない」と必死に笑いを我慢していた。
私はタバコを買いに出て、ユリカのビルの前で行きと帰り、2回見上げて呟いた。
それからハルカと消耗品を買いに出かけた。
私はトイレットペーパーを両手に持たされて、一番街を歩いていた。
「ちょっと靴屋に寄るね」とハルカがニヤで私を見た。
『俺、帰っていい?』とウルで返した、ハルカがニヤをやめずに。
「まだ終わってないから、駄目~」と足早に靴屋に入った。
私は靴屋の外で、蘭と楽しそうに靴を選ぶハルカを見ていた。
ハルカが靴の袋を持って、蘭と一緒に出てきた。
「今日は夕方寄る暇ないから、自白するなら今述べよ」と蘭が笑顔で私を睨んだ。
私はニヤを出しながら、キーホルダーの鍵を見せた。
「何・・どこの鍵?」と蘭が鍵を見ながら聞いた、ハルカも鍵を見ていた。
『ユリカさんの店、早く街に来たら使っていいって』と全開のニヤを出した。
「えっ!」とハルカが驚き、蘭は満開の笑顔になった。
「ハルカごめん、私PGを辞めないといけなくなった」と蘭がハルカをニヤで見て。
「店を持つよ、合鍵がいるから」と笑顔で言った、「残念です」とハルカも笑顔で返した。
「今夜、ここだけの話だから誰にも言うなよ」と蘭が私にニッを出して。
「今夜のローズは四天女が揃うからね、覚悟しな」と蘭が全開ニヤで微笑んだ。
『俺の地獄絵図なの?』と私がウルで返すと、「ピンポ~ン」と笑った。
俯いた私は、ハルカに引かれるように靴屋を後にした。
「楽しみ~、なんで毎日がこんなに楽しいの~」と言う、蘭の弾む声に送られながら。
「皆、驚くよ~四天女揃いなんて」と楽しそうにハルカが笑った。
『リアンとユリカが怖い、蘭のやきもち面白がって、多分意地悪する』とウルでハルカを見た。
「ユリカさんも?」とハルカが聞いた。
『あんなに可愛いのに、やる時はやる・・水のユリカ』とニヤで返した。
「でも合鍵見て、蘭姉さん嬉しそうだったね」とハルカが私に微笑んだ。
私も蘭の合鍵を見た時の、予想通りの満開の笑顔が嬉しかった。
私はハルカの後を、執事のように付いて回り。呼込みさん達に、大声で応援されていた。
「怖いんだけど、顔が広すぎて」とハルカが私を見た。
『エースと呼ばれていますから、命名は大ママだよ』とニヤで返した。
帰り道で、またユリカの店の前に来て、見上げながら呟いていた。
「どうしたの?」とハルカが見上げる私に聞いた。
『ちょっと待って、これしないと落ち着かないの』と見上げながら言った。
「4回目、ありがとう」とユリカの声が聞こえた。
「おはようございます、ユリカさん」とハルカが慌てて頭を下げた。
「おはよう、ハルカ。デビューおめでとう、遅くなったけどご祝儀」と笑顔でハルカに差し出した。
「ありがとうございます、本当に嬉しい」と笑顔で頭を下げて、受け取った。
ユリカも優しくハルカを見ていた。
『ユリカはやっぱり、超能力者だね』とユリカにニッで言った。
「うん、スプーンも曲がるよ」と可愛いニヤで返された。ハルカが不思議そうに見ていた。
『よし、その芸で俺と世界中で稼ぐか』とユリカに近寄ると、爽やかな笑顔で。
「優しく教えてね」とユリカがニヤで来た。
『ゆっくりと時間をかけるよ』と大きな目を見てニヤで返した。
ユリカの楽しそうな顔と、ハルカの驚いた顔を楽しんで。ユリカに手を振って別れた。
「本当に今夜、地獄絵図だね~」とハルカがニヤで私を見た。
『作戦なんだよ』とニヤニヤで返した、「なんの?」とハルカに突っ込まれた。
『それだけは言えない、蘭の靴屋休み前日しかチャンスがないんだから』と真顔を作った。
夕食をハルカと3人娘と食べて、指定席に座った。
フロアーはいつもより緊張感に溢れていた、静寂の中目を閉じて瞑想に入った。
マリアを想っていた、蘭の泣いた時・ウミの号泣の時、そして今日の子猫を眠らせた時。
どうしてだろう、マリアは絶対に考えずにやっている。
マリアの可愛い天使の笑顔が浮かび上がると、《何も考える必要はない》と思えた。
「誰の事考えてるの?」と隣で蘭の声がした。
『マリア、今日またマリアの不思議な力を見たから』と目を開けて、蘭を見て微笑んだ。
「合鍵、凄いね~」と私に微笑んだ、「嬉しかったんだよ、本当は」と言いながら肩に乗ってきた。
『今夜のローズは思いっきり飲んでいいよ、必ず俺が連れて帰るから』と優しく囁いた。
「うん、最後は私に帰るもんね」と蘭が優しく囁いた。
『蘭以外に俺の帰る場所なんかないよ』と私も蘭に囁いて返した。
「うん」と微笑んで、静かに目を閉じた。
静寂のフロアーに円を作った女性達は、全員集中していた。ユリさんが来て、全員を見た。
「今夜PGの新しい歴史が刻まれます、でも・・いつも通りでいきましょう」と微笑み。
「今夜も開演しましょう」の言葉に、「はい」のブザーを鳴らした。
客足は順調で、9時前には3番を残すだけとなった。3番は相当の客じゃないと案内されない。
そして9時になった時現れた、キングが和尚を連れて来たのだ。
私は全員に見えるように、Vサインを出した。熱が一気に上がった。
3番にはカスミとハルカが付いて、和尚がまたカスミの胸を堂々と覗いていた。
「やったね」とユメが来て微笑んだ、『皆凄いよ、誰がかけても出来なかったね』と微笑んで返した。
「うん、6番の若者泥酔気味、チェック」と笑顔で言って戦線復帰した。
PGの8月伝説の1つ目が今達成された、しかし熱は冷めることを認めない。
走り出した挑戦者は、止まる事を認めない。全員が集中をしている、その姿が美しかった。
小さく狭い世界の、大きな偉業を成し遂げても、それは通過点だと笑っていた。
キングと和尚が帰るとき、挨拶に行った。
「ユリカに会ったよ、ユリカをどこまで連れて行くんだ」とキングが笑顔で囁いた。
「ユリカが望む、俺が出来る最高の地点までは、やってみるよ・・ユリカも特別な存在だから」と笑顔で返して、笑顔のキングを見送った。
バルコニーに出ると、熱帯夜の夜空に星が瞬いていた。
何万年も旅をして届く光を見て、気分が高まった。
《残り日数を数えるのはやめよう、意味が無いから・・今を全力で生きよう》そう誓っていた。
南風が吹いてきて、潮の香りがしてきた。寂しさは無かった。
私には帰る場所があった、蘭と呼ばれる暖かく優しい場所が。
指定席に歩きながら、全員の姿が確認できた。そして蘭を見つけて手だけを出して、サインを出した。
自分を指差し、【指名 蘭】を出して、【OK?】を出した、皆が見える位置で。
蘭は満開の笑顔で手を上げて、指で大きく【OK】のサインを出した。
8人衆が全員【了解】のサインを出した、見るとユリさんも薔薇の微笑で【了解】を出していた。
蘭の満開の笑顔に、《愛してる》と囁いた、嬉しくて。
蘭はどんな時も自分に正直に生きていた、私も蘭には一度も嘘をつかなかった。
私は蘭を絶対に傷つけないように、そればかりを必死に考えていた。
他の事は何度も日記を読み直すが、蘭との事は最初の一行で今も鮮明に思い出す。
私は生きている実感を楽しんでいた、必死に集中して。
大切な時は進行していく、満開の笑顔を道連れにして・・・。