羊水
なぜその道を選んだのか今でも分らない、寂しくないからと言って微笑んだまま。
きっかけは聞いたそして歩んだ道も、長い時間を一緒に過ごした。
でも最後まで分ってやれなかった、その深い本質は。
夏の暑さを涼しく感じる熱さに包まれていた、昼下がりの繁華街で。
強く大きな熱を受け止めて立っていた、薔薇の笑顔を見ながら。
リアンが体を離し、2人でユリさんの立っている所まで歩いた。
「1つだけ聞かせて、ユリカの水は何だと思ったの?」とユリさんが薔薇の微笑で聞いた。
リアンも私を優しく見た、炎を湛えたまま。
『今感じたのは、ユリカにも言ったけど・・母親のお腹に居る時に包まれる水じゃないのかと感じた』と少し照れて言った。
ユリさんは最高の薔薇の笑顔で、リアンは熱い情熱の笑顔で私を見ていた。
「羊水って言うのよ、やっと謎が解けたわ、ありがとう」とユリさんが薔薇のまま微笑んだ。
「そっか、良かった~それなら納得できるよ」とリアンも熱を高めて笑った。
『水と呼んだ人が凄いよ、それにさっきエミにヒントを貰ってたから、そう感じたんだ』と笑顔で返した。
「梶谷さんよ水と呼び始めたの、漠然と水って感じたって言ってたわ」とユリさんが教えてくれた。
『流石だな~キング、漠然と分るのが凄い』と本音で感心していた。
「その問題を解いたお前もやるじゃない」とリアンが笑顔で、私の肩を叩いた。
『本当の親友なんだね、リアンとユリカ、炎と水、素敵やな~』とリアンに笑顔を返した。
リアンは私を見ながら、頷いた。優しい瞳だった。
「近いうちに、一人でいいから遊びに来て、ゆっくり話し聞かせてね」とリアンが優しく微笑んだ。
私がユリさんと帰ろうとすると、ユリさんが腕を組んできた。
私は驚いてユリさんを見た。
「カスミにもハルカにもリアンにもするんでしょ」と悪戯っ子を出していた。
『困ったな~、本当に皆甘えん坊で』と笑顔で返した。
「いくつ伝説作るのやら」とリアンが笑顔で手を振った。
「ユリカちゃん、自分でも悩んでいたの。でも女性には分らない感覚なのよ」と真横のユリさんが言った。
『俺はユリカを最初感じたとき混乱した、そして考えるのやめた時に感じたよ』
『エミがお風呂に浸かってると言った言葉が有ったし、ユリカの声が子守唄みたいに響いていたから』と笑顔で返した。
ユリさんは腕を組んだまま、沢山の人に挨拶しながら微笑んでいた。
「でもこんなに素敵な回答は、想像もしてなかったわ」と私を見た、圧倒的な美しさを再確認しろと、言うように薔薇で微笑んだ。
『まだ、全然分らないことだらけだけど、ユリカさんの魅力は分ったような気がする。
帰りのエレベーターで理由無く寂しかった。
今別れたばかりのユリカに会いたいと思った』
蘭がいなけりゃ、危なかったよ』と照れながら言った。
「それが分るお酒を飲む大人なら、絶対に足を向けるでしょう、さすがねユリカ」とユリさんも嬉しそうに微笑んでいた。
2人でTVルームに帰ると、マダムがいてエミが勉強、ミサとマリアはお昼寝中だった。
『エミ、ありがとう、お前は本当に凄い子だね』と言ってエミを抱き上げた。
「何、どうしたの?」と少し照れながら、嬉しそうに笑った。
「あれ、やってほしいの」とエミが私の耳に囁いた。私はエミを見て微笑んで。
『特別サービス』と言って、お姫様抱っこをしてやった。
エミは少女の笑顔で笑っていた。
「して、問題は解けたのかな」とマダムがユリさんに聞いた、ユリさんは微笑んで。
「羊水らしいですよ」とマダムに笑顔で答えた。
「そうかい、それだったか・・うんうん」とマダムも私を笑顔で見て、頷いた。
「梶谷さんが聞いたら喜びますよ、アフターは確実だわね」とユリさんも私を見て微笑んだ。
私はエミを降ろして、頭を大袈裟にかいて照れた。
でも羊水の答えには自信があった。
私はフロアーに行きハルカを探した、私の席でフロアーを見ていた。
集中した素敵な姿だった、私は声をかけずにハルカを見ていた。
「私に見惚れてるんでしょう」とハルカが前を見たまま微笑んだ。
《しまったハルカの視野は常人じゃなかった》と思い。
『寝てるのを、起こしちゃ悪いからね』と言いながら近づいた。
「ユリカさんの感想を述べよ」と振り返りニヤを出した。
私は、ユリカに話した独り言をハルカに教えた。
『羊水って言うんだって』と最後にそう言って、ニッを出した。
「羊水ぐらい知ってます、私も女よ」とニヤで返した。
「でも、なるほどって感じね、ユリさん喜んだでしょう」とハルカが微笑んで言った。
『真昼間、ユリさんと西橘を腕組んで帰ってきた』とVサインを出した。
「なんか、夜街にとどめを刺した感じね、四天女制覇したし」とハルカが笑顔で返した。
『その伝説の男が、最初に贈った源氏名を持ってるんだ、頑張れよ』とニヤで返した。
「なんか素敵に響くから、怖いよ」とハルカは笑っていた。
ハルカと予約確認して、タバコを買いに出た。気分は快晴だった。
私は夕食を3人娘とハルカと食べて、指定席に座ったのが7時30分だった。
準備を済ませた蘭が来て、ハルカの椅子を持って私の横に座った。
『指名したっけ?』とニヤで聞いた、蘭は笑顔で睨んで。
「私の他に誰を指名するんだい」とニッを出して、「ユリカを聞かせて」とフロアーを見て言った。
私はハルカの時と同様に、ユリカに言った独り言を蘭に話した。
「ありがとう、そして隠しててごめんね」と言って肩に乗ってきた。
『蘭が言ったんだろ、色んな女を感じろって・・俺はその度に気付かされるよ、愛するのは誰なのかを』と私もフロアーを見て言った。
「泣かすなよ、仕事前に」と静かに言って、目を閉じた。
四季が出てきて、カスミが出てきた時に蘭が目を開けた。
立ち上がり私に微笑んでフロアーに向かった。
蘭がフロアーに歩く背中を見送りながら。
《蘭は最高の副職だよ》囁いた。
女性が円になり、ユリさんが出てきた。
「今夜が満席記録に並びます、リアンがいた時の記録を皆さんで破りましょう」と薔薇の笑顔で言った。
「はい」と全員の気持ちが1つになった。
「今夜も開演しましょう」の声に、「はい」のブザーで答えた。
開演して30分で8割の席が埋まった、マミはリンさんの所に来ていた。
マミは経営まで覚えるのかと関心していた、そしてハルカもそれを勉強していたと気付いた。
9時を過ぎたときカズ君が私の所に来て。
「よっしゃー」とVサインを出した。
満席タイ記録をマークした瞬間だった、私も笑顔でカズ君にVサインを返した。
それで女性に伝わったのだろう、全体の熱が上がり上昇をやめなかった。
その時マダムがやってきた。
「同伴の指名だよ」と笑顔で言った。
『えっ、俺?』と聞き返した。
「マミを送る時間までには戻りなよ、ローズリップで梶谷さんの指名や」と嬉しそうに微笑んだ。
『了解』と笑顔で返して、蘭にサインで自分を指差し、【指名】、を出して頭の上に王冠の形を指で書いた。
蘭は満開で微笑み、頷いた。
私はマダムに席を譲り、ローズリップに向かった。
ローズリップの重いドアを開けると、カウンター内の可愛い女性が微笑んだ。
「なにかしら?」と笑顔で言った。
『キングに呼ばれたの』と笑顔で返した。
「キング?」と可愛く考えた。
「もう、すぐそうやって問題出すんだから」とリアンが来て私に微笑んだ。
私の腕を取り、そのまま組んで。
「梶谷さんよ」とその子に微笑んだ。
「まぁキングなの、素敵ね」と私に微笑んだ顔が可愛かった。
『俺の、今夜の指名は君で決まりだ』と笑顔で返すと。
「10年早い」とリアンが笑顔で引っ張った。
私は手前のBOXの、お客と女性の笑い声を受けながら。
奥の一番眺めが良いBOXに座る、キングの所に連れて行かれた。
「今晩は、キングご指名ありがとう」と頭を下げると。
キングが笑顔で、キングの隣の可愛い女性が驚いていた。
「おう、よく来たな、店は大丈夫か?」とキングが笑顔で返した。
『ユリにしっかり頼むって、言ってきたから大丈夫』とキングの前に座りながら、笑顔で返した。
キングとリアンが楽しそうに笑っていた。
「ユリってまさか?」と私をキングの隣の女性が見た。
『あぁ、PGのユリだよ最近頑張ってるんだ』とニヤで返した。
「どう返して良いのか、分らない」と可愛く笑った。
その顔を見て、皆笑っていた。
私のコーラがきて、4人で乾杯した。
「さっそくで悪いが、聞かせてくれよユリカの事、リアンが教えてくれなくてな」とキングが聞いた。
『うん、まずキングが漠然と水と感じたことに凄いと思った、お世辞じゃないよ』キングが笑顔で頷いた。
私は再びユリカに言った独り言を、帰りのエレベーターの事まで話した。
『羊水って言うの俺知らなかったよ、でも素敵だなって思ったよ』と話し終わった。
キングが優しい笑顔で、右手を私に差し出した。
私も右手で強く握った、暖かく大きな手だった。
「ありがとう」と言ってリアンが私の頬にキスをした、私は動揺を隠して。
『俺に惚れると』まで言った時に。
「もう、火傷したよ」と熱い笑顔で返された。
「やっと引っ掛かりが取れたよ、さすが小僧だな」とキングも楽しそうに笑っていた。
キングの後ろにユリカの店の明かりが見えた。
《ユリカ元気かな》と思っていた。
夜街を見下ろす天空の要塞で、笑顔に囲まれながら。
どうしてだろう、私はユリカ事は書きながら、感情的になってしまう。
日記を何度も読み直し、その時の感情になると震える。
私がユリカと最後に会ったのは、それから5年後の大晦日だった。
冬の宮崎駅のホームでユリカが笑顔で囁いた、「忘れないでね」と言った言葉が今も響いている。
ごめんねユリカ何も返答出来なくて、寂しくて寂しくて言葉が出なかった。
でもね、ユリカ、今でもあの場所に行くと思い出すよ。
ユリカの可愛い笑顔だけは。