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夜雨

その目には何かが潜んでいる、表現し難い何かが、ある一部の人は強く惹かれる。

燃えるような時を過ごしたいと、炎に飛び込むようにその世界を目指す。


週のスタートの準備が整ったフロアーが待っていた、笑顔の女優が来ることを。

5時過ぎに蘭が迎えに来た、ご機嫌は継続中だった。

私は蘭と手を繋ぎ駐車場まで歩き、ケンメリに乗って家路についた。

『今日素敵な人に会って、お昼焼肉ご馳走になった』と笑顔で蘭に報告した。

「ほほ~最近自白が多くて、関心やね~」とニヤで笑い、「誰?」と聞いた。

『炎の女』とニヤで返した。

「きた~会ったのか~、リアン姉さんに」と蘭も笑顔で返した。

「ゆっくりと、夕食を食べながら聞こうか」とニヤニヤした時にアパートに着いた。


蘭がトンカツを揚げている後に座り、事情聴取を受けていた。

「一番だよね、あなたの好みで言ったら?」とニヤで蘭が聞いた。

『誤解されないように先に言っとくけど』蘭が振り返り頷いた。

『前も言ったけど、俺は蘭と誰かを比べた事は無いよ』蘭は振り返らずに頷いた。

『俺は蘭の美しい姿も勿論好きだけど』と言ったとき、蘭が振り返り満面の笑みで何度も頷いた。

『上手く言えないけど、蘭の生き方や、考え方、優しさ、そして心の奥深さが好きなんだよ』と背中に語りかけた。


蘭の反応が無い、黙っていると。

トンカツを盛り付けて、食事の用意を2人でした。

食べようと座ると、蘭が私を見て笑顔で。

「ありがとう、今まで噛みしめてたよ」と微笑んで、「続き」と催促した。

『それを前提に聞いてね』と食べながら言った、蘭は笑顔で頷いた。


『衝撃だった、そして分った俺の外見的な好みはリアンさんだと。

 確かにユリさんやカスミにも衝撃は受けた。

 でも、リアンさんは全然違うんだ、勿論性格とか何も知らないから分らないけど。

 蘭という存在が無かったら、追い求めていたんじゃないかと思った。

 どんなに焼かれてでも、追うんじゃないかって。

 少し話して、それが確信になったよ』と言って照れた。


「うん、正直な回答だね」と微笑んで、「私も、あなたはそうなんだと思ってた」と笑顔になった。


「私をPGに誘ってくれたのは、リアン姉さんなんだよ」

「19の時、私の19ってあなたなら説明いらないよね」と真顔で言った、私も真顔で頷いた。

蘭の19とは、弟を亡くした歳である。

「リアン姉さんは、靴のお得意さまで気が合って、仲良くしてもらってたの」蘭の深い瞳が出て、回想の時が来たと思って聞いていた。


「勿論、ユリさんもお得意様だったけど、19の私には遠い人だったから。

 その事があって、私が1週間休んで。

 靴屋に復帰した日にリアン姉さんが昼間来て。

 私を見て、靴屋の仕事終わりに又来てくれて。

 強引に引っ張られるように、PGに連れて行かれたの。

 やってみろって、とにかくやってみろって。

 リアン姉さんとユリさんが言ってくれたの。

 それで私は気分的にも自信が無かったけど、やる事にしたのよ。

 私はね、勿論ユリさんにも、リアン姉さんにも感謝してる。

 そしてPGにも水商売にも、お客さんにも感謝してるの。

 崖にいた私を引き戻してくれたから、だから今でもPGで働いてるのよ」と最後は笑顔になった。


『最高の副職・・リアンさんに聞いたよ、良い言葉だね』と蘭の目を見て笑顔で言った。

「それは良く言いすぎなの、私はただのアルバイトなんだから」と笑顔で返した。

蘭の深さにまた触れて、私は嬉しかった。

自分を曲げない、その生き方に憧れていた。


蘭とタクシーでPGに行き、蘭が準備に行った。

TVルームにマミが来ていた。

『マミ姉さん、おはよう』と挨拶をした。

「おはよう、よろしくね」と可愛い笑顔で返してくれた。

「今夜から、3日はリンにマミを付いて貰うから」とマダムが私を見て。

「お前は忘れずに11時半になったら、マミを魅宴まで送ってくれ」と言った。

『了解です、魅宴の入口までだね』と返した。

「当然、ドアに入るの見届けてるんや」とマダムが笑った。

「そこまでしてもらわなくても」とマミが遠慮したので。

『マミ姉さんに何かあったら、俺、一生後悔するからやらせてね』とマミに笑顔で言った。

「ありがとう」とマミが嬉しそうに微笑んだ。


「マミ、ホストの言うこと信じるなよ、この業界の鉄則やぞ」とマダムが笑った。

「はい、早くも1つ勉強になりました」と私に微笑んだ。

『ひどい』と言って私は大袈裟に泣き真似をした、マダムとマミの笑い声を聞きながら。


「今夜が勝負やな、雨の月曜日」とマダムが私に言った。

『満席記録か~、確かに怖い雨だ』と私もマダムを見て返した。

満席記録は明日で並び、明後日で新記録のところまできていた。

マミを連れてリンさんの所に案内し、指定席に座った。

静寂のフロアーにはまだ誰も入っていなかった、私はフロアーを見ていた。

「なんだい、マミちゃんはリンさん付きかい。報告会の材料がないね~」とカスミが後から言った。

『そう毎日はないですよ』と振り返り笑顔で返した。

「それがあるんだな~」と後から蘭がニヤで言った。

「それは楽しみだ」とカスミが不敵をだした。


ハルカが恥ずかしそうに、可愛いピンクのドレスで出てきた。

『ハルカ可愛いよ・・・ドレスが』とニヤで言った。

「もう、緊張してるんだから、本当の事言ってごらん」とニヤで返された。

『着太りして見えるから、カスミみたいなの着ればいいのに、スタイル良いんだから』とニヤで返した。

「明日から、そうしよう」と笑顔で返して、フロアーに行った。


ユリさんが早目に入り、女性が円になった。

「今夜から、ハルカが本格始動します、遠慮なく鍛えて下さい」とユリさんが言って。

「よろしくお願いします」とハルカが頭を下げた。

「それでは今夜も開演しましょう」の声に「はい」のブザーが鳴った。

1番目の客はキングだった、3番席に座り案内したカズ君に何か告げた。

カズ君はサインを出した。【3番 指名 ハルカ】

それを見たハルカはキングに嬉しそうに微笑んで、その場で深々と頭を下げた。

《やっぱり格が違うな~》と思っていた、その優しさに。

キングはハルカの緊張を取りに、早く来たのかと思っていた。


ハルカは3番席まで行き、挨拶をして隣に座り楽しそうに話ていた。

マダムの心配は、完全に裏切られた。

客は8時を過ぎると続々と入り、8時45分で満席を記録した。

9時を過ぎたときに、キングが席を立ったので挨拶に行った。


「おう、頑張ってるな」と私に笑顔で言った。

『流石はキングだね、ハルカの緊張取りに来てくれて』と笑顔で返した。

「たまたまだよ」と私の肩に手を置いた、絶対的安心感があった。

「今度行きたい所あるんか?」とエレベーターに向かいながら聞いた。

『リアンさんの所が見てみたい』と笑顔で返した。

「本当に末恐ろしい奴だな・・今週中には連れて行くよ」と言いながらエレベーターに乗った。


ユリさんとハルカが見送りに来ていた。

「ハルカ楽しかったよ、ありがとう」とキングは笑顔で帰って行った。

頭を上げたハルカに。

『さっ今からが本当の自分との勝負だぞ、頑張れよハルカ』とニヤで言った。

「生意気~、見てなさい私の実力を」と笑顔でフロアーに戻って行った。

ユリさんも薔薇で微笑んでいた。

《がんばれよ》とハルカの背中に囁いた。


雨の月曜、最悪の状況を物ともせず。熱気は上昇をやめなかった。

私も雨で滑らないように、エレベーター周辺のモップがけがあり忙しかった。

ハルカはユリさんか蘭に付いて回って、そつなくこなしてるようだった。

外の雨は勢いが増しているようだが、フロアーの熱は下がることが無かった。

「6番 アフターってしつこい」と美冬が言って来た。

『仕方ないな、美冬が可愛いから』と笑顔で返した。

「やっぱり、最近女見る目できたじゃない」と嬉しそうに笑った。

『良い情報あるんだけど、聞きたい?』とニヤで美冬の耳元に囁いた。

「うん」と少し緊張した。

『美冬の思いは今4分の1の確立です』と囁いてニッをした。

「うそ・・・4分の1って?」と嬉しそうに聞き返した。

『今の調査段階では、四季の中の誰かまでしか判明してないよ』とニヤで囁いた。

「本当に~・・・ありがとう、継続調査よろしく」と楽しそうな笑顔で銀の扉に消えた。

《世話がやけるナイスカップルだな》と思っていた。


「さっき、囁きで美冬になんか魔法をかけたろ」と千秋が来た。

『うん』と言って千秋を手招きして、千秋の耳元に『マハリクマハリタ』と囁いた。

「うん、効いてきた」と笑顔で言って銀の扉に消えた。

この囁きマハリクを千春と千夏にもかけた。

熱は11時を過ぎても冷めなかった、11時25分にマミを迎えに行った。

マミはリンさんと、徳野さんに挨拶をして、2人で裏階段に向かった。


『マミ姉さん、傘持って来たの?』と階段の踊場で聞いた。

「もちろん、降ってたから」と笑顔で返して、「なぜ?」と聞いた。

『危険だから、相合傘がいいかと』と照れて笑った、マミも笑っていた。

通りに出る時、マミが傘をささずに私のに入ってきた。笑顔が可愛かった。


「蘭姉さんって、どうして一言目に、あんなにお客さんの笑顔が作れるんだろう」と私に微笑んだ。

『蘭は自分も楽しんでるから、客にも感染するんだよ』と私の思ってることを正直に話した。

「そっか~、分った気がする」と笑顔で返してくれた。

『ホストの言うことは真に受けるなよ』とニッで返した。

「分ってるよ」と私に微笑んだ、可愛かった。

魅宴の裏階段から上がって、マミにお休みをして別れた。


振り返ると夜街の夜景が雨で霞んでいた。


この狭い空間にいったい何人の女性が働いて、笑って・泣いているのだろう。


裏階段の手摺りに落ちる雨粒を見ていた。


【水のユリカ】私は全く想像が出来なかった。人を水に例えれるのだろうか。


ユリカに出会うのはもう少し先である、その時に私は感じる。


評価とは世界の大きさに比例するのだと、小さな枠組みでは理解できない存在もあると。


世界を広げないと楽しめないと、感じさせられる。


水の女・・・ユリカ・・・透明な女神。











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