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情熱

人は自分自身をどれだけ分っているのだろう?

結局全てを理解する事は出来るのだろうか?

私はこの歳になっても、かなり理解不能な人間である。


あの夏も暑い夏だった、でも今よりも爽やかで快適だった。

私はもう一度日記を開き、可愛い蘭の一言一言を思い出しながら書いていた。

一人でニヤニヤしながら、蘭は背中を向けタオルケットを被ったまま、寝てしまったのだろう。

私は書き終わり部屋に日記を持って行き、蘭の部屋に戻ると蘭がベッドに起きていた。

「私、お酒臭い?」と蘭が笑顔で聞いた、確かに蘭は酒臭かった。

『ラッパ飲みした時に首筋まで垂れたからね~』とニッで返した。

「シャワーしてくる、それからご飯食べにいこ~」と言って部屋を出て行った。


蘭がシャワーして、支度をしていた。薄化粧で、輝いていた。

『どこで、食べるの?』と笑顔で聞くと。

「決まってるでしょ、水槽」とニヤできた。

『そう来たか』とニッで返した、蘭は酒が抜け復活していた。

「それで、映画を見るのだ~」とニヤで言った。

蘭は元気になっていた、嬉しかった。


ケンメリで出かけ、水槽で食事をしていた。

『映画何見るの?』と蘭に聞いた。

「ローマの休日をまたやってるのよ、私好きなの」と嬉しそうに微笑んだ。

2人でローマの休日を手を握って見ていた、蘭が意外なところで涙をポロポロ流した。

《なぜここで泣くんだ》と思いながら蘭を見ていた。

映画館を出たら蘭はご機嫌だった。


「さぁ食材買って帰ろう」と繋いだ手を振って、マルショクに歩いた。

パスタコーナーで、屈んで蘭が悩んでいた。

『今夜は、イタリア料理ですね』と蘭に声をかけた。

「当然、でもイメージが掴めないのよ」と又パスタの袋の説明書きを、真剣な表情で読んでいた。

《すぐ感化されるんだから》と思い横に屈んで蘭を見ていた。


私は両手に食材の袋を持たされて、それでも手を繋がれて駐車場に歩いていた。

「ちょっと待ってて」と蘭が微笑んで、酒屋に入って行った。

私は人通りの多い路上に放置されていた。

暫くして蘭が満面の笑みで酒屋から出てきた。

「シャンパンが無いとね~」と言いながら、腕を組んできた。


部屋に帰り、蘭はエプロンをつけて、鼻歌混じりでキッチンに立っていた。

「ねぇ、ダーリンお風呂はいちゃって~」とご機嫌も最高潮で言った。

『は~い』と私も調子を合わせた。

《度が過ぎて少し怖いな》シャワーを浴びながらそう思っていた。


蘭の部屋には豪華な食卓が出来ていて、蘭がニコニコして待っていた。

ジャンパンで乾杯して、食べながら蘭のご機嫌な顔を見ていた。

『なんか少し怖いんですけど』と蘭を上目使いで見て微笑んだ。

「あぁ、私、お祝いよ~」と楽しそうに笑った。

『何のかな?』と恐る恐る聞いてみた。

「私、あなたを拾った時に決めてたの、15日で帰そうって」と蘭は真顔になった。

『まさか・・・送別会とか』私はかなり焦っていた。

「バカね~それなら泣くよ・・あなたの合格祝いでしょ」と満開になって笑った。

『そっか、合格したんだ』と私は何に合格したのかも分らずに、喜んでいた。


蘭は楽しそうに笑っている、私はそれ以上聞かずに蘭にシャンパンを注いでいた。


「酔わせて、何するのかな?」と蘭に笑顔で痛いところを突かれた。

『昨夜は本当に楽しかった、蘭が可愛くて・・でも少し心配になった』私は正直に話した。

『蘭の体が心配だから、あまり無茶はするなよ』と真顔で言った。

「うん、靴屋休みの前しか酔いません、ストレート一気はもうしません」と笑顔で誓い。

「でも・・・今夜はもう遅いかも~」と甘えて微笑んだ。

『知ってる』と笑顔で返した。

結局蘭がシャンパンを飲み干して、私が止めたのにシャワーを浴びてパジャマで帰ってきた。

私の横に座り、腕を組んで一人でニヤニヤしている。


「今夜まで、特別だからね」と蘭が囁いた。

『恥ずかしくないのかな』と囁いて返した。

「少し、でも大丈夫かな」と私を見た。

『じゃぁ約束、今夜は早く寝るって』と蘭を見て微笑んだ。

「うん、お休み」と言って私にもたれて目を閉じた。

時計を見ると8時40分だった。


私はかなり無理をしていた、蘭の体が心配なのは事実だったが、本心は嬉しくてたまらなかった。

私は蘭を抱き上げてベッドに寝かせ、窓を開け電気を消して蘭の横に腕を首に通しながら寝た。

蘭の寝息が聞こえていた、私は蘭のまだ乾ききらない髪から、蘭の香りがしてきて。

蘭の香りに包まれて、幸せに眠りに落ちていた。


翌朝は車のクラクションで目が覚めた、蘭は私の胸に顔を当て眠っていた。

私はゆっくりと手を抜き、静かに洗面所に向かった。雨の降る音が聞こえていた。

私が真剣に卵焼きの、焼き加減を見ていると、蘭が起きてきた。

「おはよ~、やっぱりよく寝ると、気持ちがいい~」と元気に洗面所に消えた。

私の自信作の朝食を見て。

「なんか、段々進歩しますな~旦那」と嬉しそうに食べ。

バタバタと準備して出かけた、私は見送り昨夜と朝食の食器を洗い、掃除機をかけた。


蘭の予備の赤い花柄の傘をさして出かけた、

靴屋の前で蘭に赤い傘をニヤで見られ、PGに早く着き過ぎ入れなかった。

1階の倉庫から箒と塵取りを出してビルの1階を掃除してたら声をかけられた。

「あなたがエースかしら」明るい女性の声に振り返り固まった。

真っ赤なミニスカートに真っ赤なシャツの襟を立て、胸のボタンを上から3番目まで開け。

豊満な胸元にはくっきりと谷間があり、セミロングのクルクルのパーマの髪を濡らして。

燃えるような瞳が、確実に得体の知れない何かを放っていた。

真っ赤な唇の右上の小さなほくろが、セクシーだった。

TVで見た南米系の雰囲気で、リオのカーニバルをイメージさせた。


『そう呼ばれてるみたいですね』と見惚れながら微笑んで返した。

「若いのね~」と言いながら歩み寄ってくる姿に、少し押された。

『ジャパニーズOK?』と笑顔で返した。

「日本語で話してるっ」と言って笑顔で睨んだ。

「純粋で生粋の日本人です」と手を両脇に持って行き威張って笑った。

私は何かに押される感じがしている。

『オ~・マイ・ガット!』と大袈裟に両手を肩まで上げて、必死で何かを押し返しながら微笑んだ。


私の目の前に立った時、誘惑の香りが鼻をくすぐった。

『凄い危険な香りがするんですけど、なんか変な液体出してます?』と燃える目を見て微笑んだ。

「危険な液体出してるのよ」と言って楽しそうに笑う姿にまた押された。

『何かに押されるんですけど、胸じゃなくて』と思ったままを言葉にした。

その女性は楽しそうに濡れた髪を、頭を傾けて搾った。

その時に胸元に、綺麗な蝶の刺青が見えた。


「押されるうちは駄目よ、外見だけで見てるんだから」と楽しそうに笑った。

『動かないで、いま捕まえますから、怖くないですよ~』と言いながら胸の蝶を捕まえる振りをした。

「ほいっ」と言いながら、胸元を広げた。

黒いブラジャーが丸見えになり、豊満な胸が全て見えた。

『やっぱり黒が素敵だ、もしかして大人ですね』と必死で返した。

どう見ても30歳前後の女性に。

「28ちゃいでちゅ」とニカって感じで笑った、その異質さに驚いていた。


家出をして蘭、ユリさん、カスミと衝撃的な美を見てきたが、彼女の美は私には異質だった。

その醸し出すエネルギー押されながら、強い何かに惹かれた。

『朝から、雨だったのにどうちて傘わちゅれたんでちゅか?』と幼児語で返した。

「ブッ」と笑い、「自分で傘さすの嫌いなのよ~」と言ってウィンクをした。

顔が近いこともあり、そのウィンクで倒れそうだった。


『人にさしてもらうのは?』とニヤで聞いた。

「好きよ」と言って私の腕を掴んで組んだ。

『仕方ないな~、特別サービスで送ってあげます』と笑顔で返した。

「ありがと~素敵~」と抱きついたその危険な香りに、私は動揺を隠すだけで精一杯だった。

『○○劇場でしょ』とストリップ劇場を言った。

「おしい」と楽しそうだった。

『OX倶楽部か~』と怪しいSM倶楽部を言うと。

「そこ、前の前にいた」とニカを出した。

私はやっと調子が出てきた、彼女の胸が私の腕で潰されるほど触れていた。


『てゆうか、なんかPGに用があったのでは?』と聞いた。

「うん、ケイがデビューしたって聞いたから、あなた何時出勤なの?」と聞き返された。

『基本は13時です、暇だから早く来てます』と笑顔で返した。

「じゃぁお昼食べに行こう、ご馳走するから」と引っ張った。

私は傘を持って、腕を組んで引かれながら出かけた。

「なに食べる?」とニカで聞いた、『肉』とウルで答えた。

「よし、男は肉を食べんと駄目やからね~」と言いながら、西橘通りに出た。

一番街の逆方向に向かったので、ほっとしていた。

報告会の恰好のネタになるのは間違いないからだ。

雨の西橘を相合傘で歩きながら、名前を聞いた。

「リアンで~す」とニカで微笑んだ。

何かに強引に心が惹かれていた。


【情熱の女 リアン】私には何かに撃たれたような、衝撃の出会いだった。

私は歩きながら気付いていた、蘭という絶対的な存在がいなければ危なかったと。

ユリさんもカスミも私がそれまでに出会った事のない、美しい女性だったしPGの女性も皆美しかった。

しかし私の外見的嗜好は、この人だと思っていた。

腕を組んで笑顔で歩く、その目と真っ赤な唇を見ていた。


「私に何か付いてる?」とニカを出して聞いた、私はもうこのニカが好きになっていた。

『俺、ガキだから初めて見る雰囲気なんで、珍しくって』と照れて笑った。

「いいね~噂通りで、蘭が言うとおりやね~」と私を見てニカを出した。

『知り合いか~』と笑顔で返した。内心ほっとしていた。

「私、PG卒業生だし、蘭だけは可愛い後輩だからね」と言いながら、高級焼肉店に入った。


向かい合って座ると、緊張した。必死に笑顔を作っていた。

『卒業して、今は踊り子さんですか?』とニッで聞いた。

「まだ、そのイメージが抜けないか~、今はまぁスナックみたいなのをしてるよ」と髪を縛りながら笑顔で返してきた。

『みたいなのって所が怖い』とニヤで返した。

「そんなに怖い?」と肉を焼きながらニカで聞いた。

『うん、蘭がいなかったら、完全に追い掛け回してる自分がいるから・・怖い』と照れた。

「そうなんだ~、追い掛け回してよ~」とカスミの3倍位の不敵を出した。

『怖い旦那の子分とかに、囲まれたりしません?』とニヤで言った。

「旦那も、今は彼氏もいません」と舌を出してイッとした。

『ヨチヨチ』と言葉だけで返した。

「で、蘭を追い掛け回してるの?」とニカで来た。

『同棲してるよ、片思いだけど』と泣き真似をした。

「ヨチヨチ」と返された。

「でも、蘭がそんなこと出来るのは絶対に好きなんだよ、あの子は違うから」と少し真顔になった、美しかった。

『違うって?』と真顔で聞き返した、私を見るリアンの目は何かが違う。

私は見つめながらその何かを探っていた、必死になって。


「蘭は絶対に流されない、今までも大きなクラブや、金持ちの男の誘いも全て丁寧に断っている」

「あの子は心がそこを指してないと、絶対にそれ以上はないのよ」リアンの強烈な何かに私は動けないでいた、押えつけられ焼かれるように。

「今は、ユリさんとPGとあなただと思ったわ」と最後は綺麗な笑顔だった。


俺は蘭の何かに合格した、でも蘭の心は俺を指しているのだろうか。


だが、蘭は気まぐれで自分の決めた15日を破ったりしない。


リアンの強烈な熱の言葉に焼かれ、それが私を第二の成長に押し上げていく。


この、ユリさんと正反対の個性に触れて、気付くのだ自分に足りないものを。


【動のアスカ(大ママ)・情のユリ・炎のリアン・水のユリカ】

私はまだ、こう呼ばれる四天女の、夜街伝説すら知らなかった。


ただ、その強烈な何かに焼かれるのを、楽しんでいた笑顔で。






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