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未来図

あの時、夜空を見上げ話した。

今でもそこに行くと、空を見上げる。

幼い姉弟のように手を繋ぎ、見上げて描いた未来図を。


南国の夏の開放感と楽しい予感で、3人の可愛い少女は自然に笑顔になっていた。

松さんが珍しく2時過ぎには来た、マダムと何か打ち合わせしていた。

「チャッピー、ハルカを早く空けたいから予約確認してこい」とマダムが私を見て言った。

『了解』と言って出ようとした時に、ウミが覗いた。

『ちょうどよかった、3人娘お願いできる?』とウミに笑顔で聞いた。

「えっ、いいの?」とウミが嬉しそうに笑顔で返した。

『頼んでるんですけど』とニッで返した。

「うん」と可愛い笑顔で返してくれた。

「ウミ、いつもすまんね、助かるよ」とマダムがウミに笑顔で言った、ウミも笑顔で返していた。


フロアーでハルカを見つけて声をかけた。

『予約確認しましょ、マダムが早くハルカを空けろって』と笑顔で言った。

「なんか、変なんだよね~皆」とハルカが私を探るように見て微笑んだ。

《わりと勘が鋭いか》と思いながら、顔はとぼけていた。

『夜はもう・・・今夜で少女らしい思い出が出来ないかもって、マダムは思ってるんだよ』とハルカを真顔で見て。

『今日はご好意に甘えなさい、強情娘』とニッで返した、必死だった。


「うん、マミともゆっくり話せるから・・嬉しいの」と微笑んだ。

『最大のライバルやね~、十数年後どっちが女帝と呼ばれるのやら』と私は笑顔で言った。

「そんな事にはなりません・・私が女帝・・無理」と自分で確認して笑顔になった。

だか、この私の冗談のような言葉が現実になる。

しかしその時もハルカとマミは【無二の親友】だった。

私にはそれが本当に嬉しかった。

その競い合いは常に相手を認めていた。

二卵性双生児のような関係は現在も、静かな生活で続いている。

同じ時代に産まれ、同じような環境を選択し、同じ道で違うやり方で登った。

だが登頂した先で、2人は再び出会って抱き合うのだ。

私はその光景を見ることが出来た、幸せ者である。


ハルカと予約確認が終わり、ハルカが早出のカズ君を見つけて近づき。

「カズ兄さん、今日はすいません。後、よろしくお願いします」とハルカが頭を下げた。

「心配せんで、楽しんで来いよ」と優しい笑顔でハルカの肩を叩いていた。

《カズ君と美冬、素敵なカップルだな~》と私はカズ君の笑顔を見ながら思っていた。


私はハルカとTVルームに戻ると、ユリさんも来ていた。

「ワシとユリで、ハルカと3人娘に浴衣を着せてホテルに送るかい」マダムが私を見て言って。

「お前は6時半に魅宴にマミを迎えに行って、連れて来てくり」とタクシーチケットを差し出した。

『了解、良い役や~』と笑顔で受け取った。

私が荷物を持って、ウミがマリアを抱いてタクシーに乗せて。ウミと見送った。


「ありがとう」とウミが笑顔で私に言った。

『こちらこそ、助かってますよ』と笑顔で返して、『ウミ姉さんに頼みがあります』と言って2人でPGに戻った。


フロアーに行き、色紙の乾きを確認して。

2枚の色紙と3人娘の色紙を、ウミに差し出した。

『一枚はユリさん以外のトップ4と、四季とウミ・ユメ・カスミの分で、もう一枚に他の女性と、バイトも含めて今夜いる全員を書いてもらって』とエミの字を見ているウミに笑顔で頼んだ。

『花火が終わるまでに、よろしくウミ姉さん』と微笑んだ。

「了解・・・ねぇ時間外はウミって呼んで」と可愛い笑顔を見せた。

『頼んだぞ、ウミ』とニッで返した。

「よしっ、あなたが帰ったらこっそり渡すね」と言って笑顔になった。


私はタバコを買いに行き、花屋に寄った。

千恵さんという店員さんが店番をしていた。

『配達頼めるかな?』と声をかけた。

「あら、PGのエース」と振向き微笑んだ。

「もちろん出来るよ、ご要望は?」と笑顔で返された。

『真っ赤な開いてない薔薇を17本、12時にPGの俺まで届けて』と笑顔で頼んだ。

「ケイ、今日なの!」と千恵さんが驚いていた。

『内緒だよ』と微笑んだ。

「了解、現金?」と微笑んで聞いた。

『もちろん』と笑顔で返した。

千恵さんが格安にしてくれた、私は笑顔の千恵さんに礼を言ってPGに戻った。


TVルームに松さんがいて、色紙をテーブルに置いて考えていた。

真剣な顔だったが、私を見て笑顔になった。

「難しくってね、マダムもユリも私に先に書けって言うから」と照れ笑いを見せた。

『俺が言い出したんだけど、俺も書けないよ』と笑顔で返した。

松さんが思考を色紙に戻したので、指定席に戻って準備の整った、静寂のフロアーを見ていた。


静寂の中、私は目を閉じて瞑想に入った。

広い空間で、揺り篭に揺られながら。

ケイと初めて話したときに、ケイは自分の事を話してくれた。

見ず知らずのガキを元気づけようと、自分の過去まで話してくれた。

【自分の悲しみや、寂しさを内側に潜ませ。他人の悲しみや辛さと真摯に向き合える人】

ユリさんのケイを初めて見た時の言葉が蘇ってきた、ケイの実像が浮かんできた。

家出をして以来、蘭を除けばケイが一番近くにいた。

常に微笑み、仕事を教えてくれた。

その真直ぐな生き方に、どれだけ助けられただろう。

その全力で生きる姿に、どれだけ勇気をもらったのだろう。

《ありがとうケイ、がんばれハルカ》と心で叫んで、目を開けて。

受付のカウンターで、千恵さんに貰ったメッセージカードに、こう書いた。


一番街でしゃがんでいる少女へ。

【7年後の花火大会の夜、PGの3番席で待っている】

あの夜空に未来図を描いた仲間として。若草公園のベンチより。


そう書いて、ポケットに入れた。

振向くとケイの指定席の丸椅子が、寂しげにそこにあった。


時間は6時になっていた、私は着替えようとTVルームに向かっていると。

廊下に離れて美冬と千秋が立って考えていた、素敵な姿だった。

『やってますな~』と笑顔で言って、『誰か書いた?』と美冬に聞いた。

「まだ、最初は難しいよね」と微笑み、「ケイになんて言ったらいいのか、多すぎてまとまらないよ」と笑顔で言った。

『やっぱり、最初は蘭が書かないと無理か~』と言いながら、TVルームに入った。


松さんが書き終わったらしく。

「書けたよ」と笑顔で言いながら、「さっ、私も久々に今日は忙しいからね~」と色紙を持って出て行った。

私は皇帝ルックに着替えて、TVルームをでた。


「おい、ホストどこに行く?」と千秋がニヤで言った、その後ろで美冬もニヤをしていた。

『魅宴のマミが同伴してくれって煩くてね、たまには機嫌取らないと。NO1は大変なんだよ』と笑顔で返して背を向けた。

「大ママに喧嘩を売るとは、たいした度胸だ」と言った美冬の声に、右手だけ上げて裏階段に出た。


カスミが東の手摺りにもたれて、考えていた。

絵になる後姿に見惚れていた。

『悩んでる姿も可愛いな』と後ろから声をかけた。

「当然だ」と振向かずに言った。

「ケイに感謝って、どんなにしてもしきれないんだよ」と空に向かい言った。

『ハルカは競えるなら最高の相手だって言ってたよ、カスミを』と背中に囁き。

『同伴行ってくる』と声をかけて階段を向くと。

「ありがとう、今夜も報告会、楽しみにしてるよ」と後ろからカスミの声がした。

私は振り返らずに右手を上げた。


私は、呼込みさん達に冷やかされながら、魅宴に向かった。

魅宴の入口にいたボーイさんに、PGから来たことを告げると、フロアーに案内された。

20代後半位の綺麗な女性3人が談笑していた、私は魅宴のフロアーを見ていた。


「どうしたエース、ホストに転身か?」と明るい大ママの声がした。

振向くと大ママの後ろに、紺地の可愛い浴衣を着たマミが見えた。

『天職だって気付いてね、大ママも指名に来てね』と言いながら頭を下げた。

「いくよ~、お前なら楽しそうだ」と笑顔で返した、談笑していた3人が不思議そうに見ていた。

『で、手始めにマミを同伴しようと思ってね』ニッで返した、大ママもマミも笑顔だった。

「マミが見込みがあるって言うのかい?」と大ママがニヤで言った。

『将来的には、ハルカとマミの女帝争いだろうからね』とニヤで返した。

「本当に追い出されておいでよ」と嬉しそうな笑顔で大ママが、マミの背中を押しながら言った。

「頼んだよ」と言った大ママに。

『女帝修行をみっちりと』と微笑んでマミとでかけた。

大ママと3人の女性の笑い声に見送られて。


『浴衣、可愛いな~』とエレベーターでマミを見ながら言った。

「ジロジロ見ないでよ~、恥ずかしいから」と可愛いい笑顔で睨んだ。

私はエレベーターの中で、わざとジロジロ見てマミに優しくぶたれていた。

『待ちきれなくて早くきたよ、ごめんね』と通りに出た時にマミに言った。

「全然大丈夫だよ、ねぇ早いから歩いて行かない?」とマミが少女の香りが強い笑顔で聞いた。

『いいけど、条件がある』と私はニヤで言って、手を出した。

「いいよ~、喜んで」と手を繋いでくれた。

私は得意になって、呼込みさん達の視線の中、ホテルに向かった。


私は花火大会の始まりを心待ちにしている、若いカップルを見ながら。

マミを自慢するように、手を繋いで歩いた。

PGの話をマミが聞きたがり、面白おかしく話しながら歩いていた。

空は最高の曇天、風も重く湿度が高かったが、気分は爽快だった。

ケイと3人娘が待っている、そして蘭が私の帰りを首を長くして待ってるから。


曇天の空の下には、マミの不思議な魅力の笑顔があった。


曇天の空の彼方に、遥かなる高原が見えるようだった。


その高原にどんな強風にも、積雪にも俯かないで咲く。


強く優しい一輪の花も見えるようだった・・・。





                   

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