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      【春物語第二章・・封印の鍵④】 

土曜の夕暮れは期待感を連れてくる、休日前の開放感がそうさせる。

夜の街はそれを感じて動き出す、幻想の宴に向かって。


女性達が食事を終えて、土曜の夜の準備に向かった。

私は子供達と夕食を食べながら、エミの鋭い質問を笑顔でかわしていた。


私は夕食を済ませて、PGの開演の響きを聞いて、魅宴を目指して歩いた。

少し寒さの残る春風が心地よく、私は笑顔で挨拶しながら通りを歩いた。


魅宴のフロアーを裏から覗くと、大ママにニヤで腕を組まれた。

私はウルで拉致されて、小さな事務所で大ママと向き合った。


『大ママ・・今日見た場面まで見せるね、そして見終わったら許可を下さい』と私は笑顔で言った。


「許可ね~・・内容によるね」とニヤで返されて、両手を握られた。


『PGのフロアーに入って・・立体映像を楽しんでね』と私は笑顔で返して目を閉じた。


私はPGのフロアーに入り、立体映像装置の横に作った映写機の準備をしていた。

マリが映像をビデオテープで作ってくれていて、私はそれをデッキに入れた。


「これはまた、楽しめそうだね~」と大ママが笑顔で入ってきた。


私は大ママを正面の席に座らせて、映像を入れた。


PGのTVルームに、モモカが入る場面からの立体映像だった。

大ママは時折笑顔を見せながら、映像に入り込んでいた。


伝説の真希の登場場面で、大粒の涙を流し。

そして自分の路面を睨む映像を、大ママは強い眼差しで見ていた。


映像が終了して、私は大ママの横に笑顔で座った。


「ありがとな、エース・・嬉しかったよ」と大ママは笑顔で言った。


『続きを全員で見ても良いよね?』と私も笑顔で返した、大ママは笑顔で頷いた。


私は映像を切り、大ママに挨拶して魅宴を出た。


そして4店を巡回して、女性達のワクワク笑顔にニヤで対抗した。

PGの終礼の後、蘭と帰宅して、添い寝して眠った。


翌日の日曜日に、蘭と買い物に出かけて、私は中2に上がる準備を整えた。


翌日の月曜日は、飛び石連休の開放感で教室は盛り上がっていた。

私は昼休みに小春日和の日差しが照らす、本校舎の屋上に呼び出された。


ノリ番長とバルタンが笑顔で待っていて、その周りを3年の十数人の男女の悪が取り囲んでいた。

3年の集団の前に、2年の悪頭のトキオが向き合って立っていた。


私はウルウルでトキオの後ろに隠れた、3年の悪達はニヤニヤで私を見た。


『トキちゃん・・何やった、早く侘びを入れろよ』と私はトキオの後ろからニヤで囁いた。


「小僧・・家出したから、なんか久しいな~」とトキオが振り向いてニヤで返してきた。


『俺はヤンキーとは関わらない、真面目な少年だからね』とニヤで返した。


「小僧・・○中の纏め役を、トキオに譲ろうと思うんだ・・どうかな?」とノリ番長が真顔で言った。


『纏め役と表現するのか~・・俺は良いと思うよ』と笑顔で返した。


「小僧・・相談には乗ってくれよな」とトキオが笑顔で言った。


『情報なら提供するよ・・応援するよ、トキオ先輩』と私も笑顔で返した、トキオも笑顔で頷いた。


「よし・・決まりやな」と巨体のキングが笑顔で言った、私はキングの笑顔を見ていた。


巨体のキングは中学で柔道に打ち込み、優しい瞳になっていた。

私はあの仲良し公園で、キングに殴られる場面を映像で見ていた。

キングの精神的な成長を感じて、自分は成長できたのだろうかと思っていた。


3年前の瞳とは別人のような、キングの優しい瞳を見て嬉しかった。

そして卒業という別れを感じて、私は感謝と同時に、淋しさも感じていた。


『キング・・あの時の俺は生意気だった、許してくれ』と私は真顔で言って頭を下げた。


「小僧・・ありがとな・・その別れの言葉が、何よりも嬉しいよ」とキングは笑顔で返してくれた。


「在校生代表・・小僧・・送辞」と後ろから美由紀が叫んだ。


振り向くと屋上の入口に、車椅子に乗る美由紀の後ろに清次郎が立っていた。


私は2人に笑顔で頷いて、3年の悪の方に振り向いた。


『時は全ての生命に平等に流れる、俺は夜街でそれを学んだ。

 10代で社会に反抗した人間も、数多く見てきた。

 その反省も後悔も感じたし、辛い現実も感じてきた。

 だが・・それでもこう言おう・・好きなようにやってみろ。

 【良】ではない先輩達も・・あの校舎を作り上げた。

 傾斜板を作り、全ての教室を繋げたんだ・・全員の手で作り上げた。

 俺はその事実だけで感謝できる、ありがとう・・【良】を拒絶する者。

 大切な教えを繋いでくれて・・ありがとうございました』


私は正直な気持ちを叫んで、深々と頭を下げた。


「ありがとうございました」と美由紀が強く叫んで、泣きながら頭を下げた。


ミチコが美由紀に駆け寄り、美由紀を抱きしめた。


「ありがとう、美由紀・・いつも応援してくれて」とミチコは泣きながら美由紀に言った。


3年の悪達が私の肩を叩いて、トキオに笑顔を向けた。

そして美由紀と握手をして、清次郎に深々と頭を下げて、校舎に戻って行った。

最後にトキオが美由紀に笑顔を向けて、清次郎に頭を下げて出て行った。


ミチコはずっと美由紀を抱きしめていた、美由紀はミチコを見ていた。


「ミチ先輩の生き方は、これからも見ています」と美由紀は笑顔で囁いた。


「うん、見ててくれよな・・そして注意してくれよな、美由紀が」とミチコが笑顔で返した。


そしてミチコは清次郎を見た、清次郎は笑顔で頷いた。

ミチコはそれで立ち上がり、私の方に振り向いた。


「小僧・・私の卒業と就職の、最初の試験は?」とミチコは真顔で言った。


『今日の放課後付き合え、病院まで・・俺は今、ミホに会ってる・・そしてヒトミと同じ病の、5歳の少女と関わってる』と私は真顔で返した。


ミチコは凍結していた、その時が来たのだと感じたのであろう。

ミチコは私がミホに会ってる事は知っていた、だが由美子の存在は知らなかったのだ。


「ミホに会えるのか!・・それにヒトミと同じ病の少女に・・小僧、受けるよ・・大切な卒業試験を」とミチコは喜びを笑顔に出して強く言った。


私は美由紀に歩み寄り、美由紀を抱き上げて、ミチコの笑顔を間近で見た。


『その子は、由美子・・由美子が試験官だよ』と笑顔で言った、ミチコは強く頷いた。


私は清次郎に車椅子を頼み、美由紀を抱いて階段を降りた。

清次郎はミチコを誘って、屋上に戻って行った。


『美由紀、いつ気づいてた?・・バルタンの目指す就職先を』と美由紀にニヤで言った。


「ミチ先輩・・私に対して、夜街の情報を収集したんだよ・・だから1月には気づいてた」と美由紀にニヤで返された。


『そっか・・バルタンはゴールドの面接を受けるよ』と笑顔で返した。


「それは想定済だよ」と美由紀にニヤで返された。


私が教室に向かう廊下に入ると、音楽室の前で沙織と秀美がニヤで待っていた。

私も2人にニヤで返して、誰もいない音楽室に美由紀を抱いて入った。


私が美由紀を抱いて座ると、私の右肩を沙織、左肩を秀美が掴んだ。


『説明は難しいから・・映像を見せる、PGのTVルームに入って・・フロアーに出て』と私はニヤで言った。


「今日の小僧、何の集中かね~・・自然に入った感じだよね~」と美由紀が私を見上げてニヤで言って。


「楽しみだね~」と沙織もニヤで言って。


「かなりの事だろうね~・・小僧の今の集中は」と秀美もニヤで言って、3人は瞳を閉じた。


私は映像を3人に見せた、美由紀が人質指名でウルウルを出していた。

映像を見ながら、沙織も秀美も強い集中に入った。


映像を見終わり音楽室に戻ると、沙織と秀美は真顔で私を見た、美由紀はウルウルで私を見上げた。


「聞くなよ、小僧・・当然、参加する」と沙織が美由紀にニヤで言って。


「もちろん・・コーリーの指名だしね」と秀美も美由紀にニヤで言った。


「覚悟が足りないよ・・そんな覚悟じゃ、アルプスも越えられない」と美由紀は真顔で強く返した。


「わかってるよ、美由紀・・50日で到達する」と沙織も真顔で返して、秀美も強く頷いた。


チャイムの音がスピーカーから響いて、私は美由紀を抱いて廊下に出た。

清次郎が待っていて、美由紀を車椅子に乗せて体育館を目指した。


午後は卒業式の予行練習だけで、3時前には下校になった。

私は美由紀を家に送り、沙織と実家を目指した。


沙織は私の手を繋ぎ、黙って空を見ながら歩いていた。

私は沙織の心を自由にさせる為に、沈黙して歩いていた。


沙織と私の実家の前で別れて、勝手口から入るとリビングに律子の姿が見えた。

私はニヤでリビングに入り、律子と向き合って座った。


『律子は真知子の事を、どこまで知ってたのかな?』とニヤで探りを入れた。


「あの映像の続きで出るだろうけど、真知子が5歳の時から知ってたよ」と律子はニヤで返してきた。


『真知子はあの時、5歳だったのか・・じゃあ沙紀の父親もその位だね?』と笑顔で聞き返した。


「そうだよ・・沙紀の父親は、3歳だった・・だから私の事は覚えてないよ」と律子は静かに返してきた。


『美鈴は龍谷の娘と呼ばれてるなら、沙紀の家に近い分家なの?』と真顔で返した。


「そう・・沙紀の祖父の弟の子供だよ、沙紀の祖父は男3人兄弟だった。

 長男が絵描き、次男が沙紀の祖父、そして3男が沙紀の家の側に住んでいた。

 沙紀の家の裏山に祠が有ったろ、あの祠の手前に分かれ道がある。

 その分かれ道を入り、山に向かい歩くと・・お前と話したあの谷が有るんだよ。

 あの谷が龍谷と呼ばれてる、だがどこまでが龍谷なのかは謎なんだ。

 私は少し調べてみたが、他の土地では竜谷とは呼ばれていない」


律子はニヤで言った、私もニヤで返した。


『煽ったね・・俺の好奇心を』と私はニヤ継続で返した。


その時呼び鈴が鳴って、律子はニヤのまま立ち上がって玄関に向かった。

私は自分の部屋に行き、宮崎と九州の地図を取り出した。


リビングに戻ると、律子がミチコと笑顔で話していた。

私は地図を上着の内ポケットに押し込んで、ミチコの横にニヤで座った。


「小僧・・色々と世話になる、よろしくたのむ」とミチコは真顔で言った。


『まぁ俺の出来る事はするけど、採用されるかはミチ次第だよ』と笑顔で返した、ミチコも笑顔で頷いた。


私はミチコを律子の車の後部座席に乗せて、助手席に座った。

律子はミチコと思い出話をしながら、病院に向かって車を走らせた。

ユリカだけの、弱いワクワク波動が繰り返し来ていた。


病院に着いて4階に上がると、ミチコは少しの緊張感を出した。


「小僧・・どっちからだい?」と律子がニヤで言った。


『ミチなら当然、由美子からだよ』と笑顔で返して、ミチコの真剣な顔を見た。


「行こう、小僧・・早く会いたい」とミチコは笑顔で言った。


《さすがバルタン、もう戻ったか》と私は心に囁いた、強烈な波動が吹いてきた。


私はずっと感じていた、ユリアが波動を出さない事を。

ユリアはワクワクでタイミングを狙っていた、ミチコが集中するタイミングを。


ユリアはミチコの何かを感じて、集中する場面まで待っていた。

ユリアは私の側に常にいるのだから、当然リアルなミチコを感じていた。

私も初めてユリカの波動を感じた時に、こう思っていた。


《ミチコなら、この波動をどう感じ取るのか》と思っていた。


ミチコの持つ感覚ならば、波動を感じるのではないかと思っていたのだ。

そして美由紀がリアルで波動を感じ取った時に、ミチコなら感じると確信していた。


ミチコは波動の流れを視線で追いかけた、私は驚いてミチコを見ていた。


「何・・今の・・空調が入った?・・違う、そんなんじゃない」とミチコが真顔で呟いた。


強烈な驚きを乗せた、ユリカとユリアの波動が吹き荒れた。


「何!・・小僧、これは何?」とミチコが驚きを言葉に出した。


『それは律子の専門分野』と私はニヤで律子に振った。


波動は強烈に吹き続けていた、ユリアの喜びが乗っていた。


「ミチコ・・考える事じゃないでしょ、恭子の教えを忘れたの?

 あんたには髭が有るんだろ・・見えない変化を捉える髭がね。

 私は楽しみなんだよ・・あんたとハチの出会いがね」


律子はそう言って、楽しそうに笑いながらミホの病室に向かった。

律子の言葉を聞いて、驚きを乗せた波動が繰り返し来ていた。


「そっか・・この感じ、忘れてたよ・・こんにちわ、私はミチコです」とミチコは笑顔で言って、私の手を掴んだ。


喜びの波動が何度も来て、ユリアは自己紹介をしているようだった。

私は波動の事は何も言わずに、ミチコの手を引いて由美子の病室の前に立った。


ミチコを見ると、ワクワク笑顔で頷いた。

私はそのミチコの笑顔で、ワクワク感が溢れてきた。


由美子の病室に入ると、由美子が左手を高く上げていた。

私は由美子の祖母に笑顔で頭を下げて、ミチコを由美子のベッドに誘った。


ミチコは笑顔で由美子を見ながら近づいて、喜びの笑顔を出した。

由美子の黒目がミチコを追いかけて、ミチコを見ていたのだ。


「由美子ちゃん・・目が開いたの、目で追えるの・・凄いね、素敵だよ~」とミチコは叫んで由美子に駆け寄った。


ミチコは由美子の左手を握り、由美子の顔を優しい笑顔で見ていた。

そしてミチコらしい強い瞳になって、静かに由美子の横に座った。


「違うだろ、由美子・・それは違うだろ。

 確かに由美子は何年も、産まれてからずっと・・5年間も。

 我慢してたんだよね、1人の世界でずっと探してたんだよね。

 でもね由美子・・それをやっと得たからって、忘れるなよ。

 由美子・・それがゴールなのか?・・それが目指した到達地点なのか?

 そんなもの・・ただの通過点だろ、ただの1歩だろ。

 由美子・・絶対に忘れるな、理想としてる到達地点を。

 小さな喜びで忘れるなよ・・瞳が開いたなんて、ただの1歩だろ。

 由美子・・それは単なる通過地点だろ・・私が思い出させてやるよ。

 由美子が描いた到達地点を・・由美子の目指す理想の地点をね。

 次の由美子の世界で、私が手を繋いで連れて行くよ。

 ヒトミが目指した到達地点を・・必ず由美子に見せてやるから。

 だからね、由美子・・私とお友達になってね。

 私はミチコ・・由美子は私を、バルタンって呼んでね。

 私は由美子のバルタンになる・・大切な由美子だから」


ミチコは最後に優しい笑顔で言った、由美子の黒目はずっとミチコを見ていた。

強烈な波動が吹き抜けて、由美子の瞳は力を増した。


「そう・・私は由美子のバルタン・・敏感な髭のある、最強の戦士だよ」とミチコは言って、楽しそうに笑った。


私はそれで由美子に近づいた、ミチコはそれを背中で感じた。


「じゃあ、明日から来るからね・・由美子に会いに」と言って、ミチコは振り向いて私を見た。


私はミチコの横に立って、由美子の左手を握った。


「バルタンに後で伝えて・・卒業おめでとうって・・最高点での合格です」と由美子が強く言った。


『了解・・由美子、少しおやすみ』と私は笑顔で返して、由美子の左手を胸の上に戻した。


私はミチコを笑顔の祖母に紹介して、由美子の病室を出た。

小児病棟の廊下の先に、ミホの姿が見えた。

ミホは無表情の強い眼差しで、私の横のミチコを見ていた。


「ミホ・・また強くなったね」とミチコは呟いて、笑顔でミホに手を振った。


ミチコは走らないように気をつけながら、足早にミホを目指した。

私はその後ろを歩きながら、ミチコの喜びを映す背中を見ていた。


ミホはミチコを見ながら右手を前に出した、パーのように開いた手を。

ミチコはミホの目前で止まり、ミホの手を見ていた。


ミチコも右手でパーを作り、ミホの手の横に出した。

そして強くミホの手を握り、ミホを引き寄せて抱きしめた。


「ミホ・・ごめんね、待たせたね・・やっと辿り着いたよ、大切な妹の場所に」とミチコは優しく囁いた。


ミホは無表情で、ミチコを強く抱いていた。

私はミホの喜びを感じていた、強い波動に押されながら。


ミホとミチコを病室に戻し、私は理沙と話していた。

ミチコはミホの手を握り、嬉しそうな笑顔で話していた。


理沙は顔色も良く、元気な声で話してくれた、私は理沙の瞳の輝きを見ていた。


『理沙・・無理は駄目だよ』と私は理沙の耳元に言った。


「わかってる・・でも、理沙は絶対に行く・・ミホちゃんの世界だから」と理沙は私の耳元に強く返してきた。


「力が入り過ぎだよ、理沙だっけ・・笑い飛ばせ、理沙・・小僧の作為的な煽りなんて」とミチコがニヤで言った。


「そうでした~・・私はミチコさんを、なんて呼べば良いのですか?」と理沙が笑顔で返した。


「由美子と同じで良いよ、理沙もね」とミチコはニヤで理沙の感性を試した。


「はい・・そうします・・バルタン」と理沙もニヤで返した。


強烈な波動が吹いてきて、ミチコも理沙も波動の方向にニヤを出した。


「理沙・・また来るよ」と私が立ったのを見て、バルタンが笑顔で言った。


「待ってますね、バルタン」と理沙も嬉しそうな笑顔で返した。


私はミチコと廊下に出て、婦長と話す律子を待っていた。


「それで・・試験官はなんて言った?」とミチコがニヤで言った。


『ギリギリで合格だって・・良かったね、バルタン』と私もニヤで返した。


「最高得点だろ・・嘘つき、小僧」と言ってミチコは笑った。


『チッ、つまんね~・・バルタン対策を考えようね、ユリア』と私はミチコの笑顔を見ながら返した。


《了解で~す》とユリアも笑いながら、強い波動で返してきた。


「ユリアって言うの・・良いな~、可愛い名前で・・私はバルタンなのに~」とミチコがウルで言った。


波動が爆笑しながら吹いてきて、ミチコも笑っていた。


《ミチコは全くの別者でしょ、ユリカ・・楽しくなりそうだね》と私は心に囁いた。


強烈な同意の波動が返ってきて、私はワクワク感を1人で楽しんでいた。

律子が戻って、3人で病院を後にした。


律子が赤玉駐車場に止めたので、ミチコが再び緊張した。


「ミチコ、今日は緊張しなくて良いよ・・本面接は明日だから、今日は1人だけ感じろ」と律子がニヤで言った。


「はい・・でも母さんと小僧だから、今から会うのも凄い人なんですよね?・・緊張します」とミチコが車を降りて笑顔で返した。


『凄い人だよ・・ミチコなら衝撃さえ受ける、その感性に』と私はニヤで言った。


ユリカの波動が沈黙した、それを感じて律子がニヤを出した。

ユリカが集中に入ったと感じて、私のワクワクは強まっていた。


3人でユリカの店に歩いていると、ミチコが突然止まった。

私たちの前方から、リアンが歩いてきた。


リアンはミチコに気づき、猛烈な炎を上げてミチコを見ていた。

ミチコも強い瞳でリアンの炎を見ていた、ミチコの表情に喜びが出ていた。


リアンはミチコの正面に立った、ミチコはリアンの瞳をずっと見ていた。


リアンはミチコの顔の前、5cm程に顔を近づけた。


「名前と呼び名は?」とリアンは静かに言った。


「名前はミチコ・・呼び名は、バルタンです」とミチコも目を逸らさずに笑顔で返した。


「ミチコ、楽しみにしてるよ・・必ず合格しろよ。

 私と出会った時に、この距離で向き合った少女は2人目だよ。

 最初は恭子という奴だった、ミチコは恭子と同じ臭いがするね。

 私はリアン・・バルタンの挑戦なら、いつでも受けるよ」


リアンは笑顔でそう言って、ミチコが笑顔で頷くのを見ていた。

そして律子にニヤを出して、ビルの中に入って行った。


ミチコはリアンの影が見えなくなって、俯いて一筋の涙を流した。

私はミチコの微かに震える背中を見ていた、出会いの喜びに震える背中を。


「ミチコ・・お前は幸運だね、挑戦のゴングをリアンが鳴らした・・お前はリアンに誘われたんだよ」と律子が強く言った。


「はい・・嬉しかった・・そして強く感じました、今の私では絶対に届かない女性だと」とミチコは笑顔に戻して返した。


『さて・・ならばリアンの相棒はどうかな?・・対極をどう感じるかな?』と私はニヤで言ってユリカのビルに向けて歩いた。


「対極!・・リアンさんの対極になる人がいるの?・・想像も出来ない」とミチコが笑顔で言った。


「ミチコ・・心の履歴書は書いたか?・・試されるよ、その本気度を」とエレベーターに乗って律子がニヤで言った。


「母さん!・・空気の人なんですね?」とミチコが驚いて返した。


強烈な驚きの波動が吹き抜けて、ミチコは波動の方を見ていた。


「ユリア・・お願い、アドバイスをしてよ」とミチコは瞳を閉じて呟いた。


《瞑想》とユリアが強く波動で返してきた。


「そっか・・素直な自分だね、ユリア」とミチコは瞳を開いて笑顔で言った。


ワクワク波動が返ってきて、ミチコも笑顔になった。


私はご機嫌な律子と、ワクワク笑顔のミチコを連れてユリカの店に入った。

ユリカは窓際のBOXで、春の日差しを浴びて座っていた。


瞳を閉じたユリカを、春の穏やかな光が照らしていた。

ユリカの周りだけ別次元のように、完全な静寂の世界が広がっていた。


私は感動しながらその光景を見ていた、静寂が支配する空間を。

律子ですら固まって見ていた、絵画のような空間を感じていた。


ミチコは完全なる凍結状態で、ユリカの横顔を見ていた。


『ミチコ・・1人で行って挨拶して来い・・名前はユリカ』と私はニヤで言った。


ミチコは静かに頷いて、ゆっくりとユリカに向かって歩いた。

ミチコの背中は微かに震えていた、私はユリカを見ていた。


ミチコがユリカの正面に立つと、ユリカがゆっくりと瞳を開いた。


「自己紹介は必要ないよ、ユリアに聞きました・・そこに座って・・母さんもエースも」とユリカが爽やか笑顔で言った。


ミチコが笑顔で頷いてユリカの正面に座り、私がミチコの横に座った。


「集中した姿を久しぶりに見たけど、ユリカは反則だね・・空間を支配できるなんて」と律子がニヤで言って、ユリカの横に座った。


「空間の支配!・・正にそうだった」とミチコが驚いて言った。


「ミチコ、素敵ですね・・ヒトミが気づかせた感性と向き合い、上げてきましたね?」とユリカが笑顔で返した。


「上げれたのでしょうか・・私にはその自信がありません」とミチコは素直に返した。


「そうなんですね・・でもそれは実感する事じゃないわ・・ユリアをどう感じたの?」とユリカが優しい笑顔で問いかけた。


「実感は求めません、私も和尚の弟子ですから・・ユリアの存在を感じて、ただ嬉しかっただけです」とミチコは笑顔で返した。


「その感覚に対して、怖さというのを最初から持たなかったの?」とユリカが真顔で問いかけた。


「私はマキ先輩のように、視覚的にも聴覚的にも感じる事はありませんでした。

 だから世界の違いと言うのでしょうか?・・次元の違いと言うのでしょうか?

 それ自体に恐怖は無かったですね・・ただヒトミを捜していました。

 ヒトミの存在を感じたい、それだけでした」


ミチコは素直な心を表現した、ユリカと律子は笑顔で聞いていた。


「ミチコ・・残念な事に私はまだ、現世問答を感じていません」とユリカが鋭く返した。


「そうなんですか・・現世問答こそが、私の間違いを気づかせてくれました」とミチコは笑顔で返した。


「それならば・・私にミチコの言葉で教えて、ミチコの感じてる事を」とユリカが優しく問いかけた。


ミチコは嬉しそうな笑顔になって強く頷いた、ユリアの波動がワクワクMAXで吹いていた。


「ユリカさんもご存知でしょうが、私はヒトミの世界には入れませんでした。

 時の部屋に5人が必要だと聞いて、その当時の全てを賭けて挑戦した。

 でも入口すら探せなかった、私は足りないのだと強く感じました。

 その事に対して、強い無力感と挫折感を感じました。


 マキ先輩もそうだったと思います、だから自分の感性に挑戦した。

 ヒトミを見送って、マリの勝負を経験して・・自分に挑みました。

 これは私が感じた事ですけど、その意志は強く感じました。

 マキ先輩も自分のステージを目指した、私はそう思っています。

 その行為により、マキ先輩の感覚が上がった。

 それにより霊感と呼ばれる部分が現れて、マキ先輩は恐怖を感じた。

 そこまでの感性を強く望んだんでしょうね、灼熱のマキですから。


 限界カルテットもマリも美由紀も沙織も哲夫も・・そして私も。

 シズカレポートのカリーの伝言を、心に刻み込みました。

 ヒトミが繋ぐ、答えを出すべき少女というメッセージを。

 その事に対して、シズカ先輩は何も言わなかった。

 それで感じました、自分で準備するしかないんだと感じました。


 そして最初に動いたのが、圧倒的な感性のマリでした。

 マリのステージの話を聞いて、私の心は震えました。

 そして強く自分に対して望みました、自分の武器を持ちたいと。

 でも、どうやれば良いのか・・それが全く分からなかった。

 だから私は小僧に執着しました、ヒントを引きずり出そうと思って。


 そんな時でした、私の友達が心霊スポットの話をしてました。

 肝試しに行こうなんて、軽い感じで話してて・・私は怖さを感じました。

 現世問答を聞いた私は、友の話に理由無き怖さを感じました。

 その事を小僧に話したんです、その解答こそがヒントになりました。

 小僧なら、覚えてるよな?・・再現するよ」


ミチコはニヤで言った、私はニヤで頷いた。

ユリカの期待の笑顔と、ユリアのワクワク波動に囲まれた、律子はニヤで入口を見ていた。


その時、ユリカの店の扉を誰かがノックした。

その静かな音で、ミチコはビクッと反応した。


「マリ!・・どんだけ上げたんだ」とミチコが入口に向かいニヤで言った。


その言葉で導かれるように、マリがニヤで姿を見せた。


「ミチ先輩、お久しぶりです・・さすが使者ですね~」とマリが笑顔で言った。


「マリ・・由美子なんだよね?・・私もそう感じたよ」とミチコは強く返した。


「私もそう感じています・・いよいよですね」とマリは真顔で返した。


「羅針盤は終わったんだね?・・由美子を見て感じたよ」とミチコも真顔で返した。


「まだでしょうね、まだダイヤルを合わせて方位を決めただけ・・そこまでですから」とマリは強く返して、律子の横に座った。


「そうなのか・・短剣は?」とミチコが真顔で返した。


ユリカは深海の瞳でミチコを見て、マリを見た。


「短剣は探し出しました・・区切りの線を引いた、赤い短剣は」とマリが静かに返した。


「やっぱり、短剣は有ったのか・・キヨ、ありがとう」とミチコは呟いた。


「ミチコ・・キヨも近くにいますよ、由美子の傍に」と律子が笑顔で言った。


「そうなんですか!・・導きましたね・・風の龍が」とミチコは喜びの言葉で返した。


ユリカはミチコを見ていた、喜びが笑顔に出ていた。

ユリカがニヤで私を見た、私はウルで返した。


「エースも知らないの!」とユリカが気付いて、驚きの声を上げた。


私はウルウルを出して頷いた、マリが強烈なニヤを私に出した。


「小僧も知りません・・キヨのままごとの独り言は、私とミチ先輩しか聞いてないから」とマリがユリカにニヤで言った。


「やっぱり重要な事だったんだね、マリ・・あのお人形のリンダと話してた、キヨの言葉が」とミチコが笑顔で言った。


「そうです・・私もそれが繋がった時に、感動しました。

 そして土曜日に完璧に繋がりました、キヨの言葉が繋げてくれた。

 明日、ミチ先輩にも小僧が見せます・・風の龍の正体を。

 キヨを守り続けた風の龍、その素敵な正体を。

 キヨの言葉は重要なヒントです、ミチ先輩が伝える事だと思います。

 キヨはミチ先輩に伝えたんだから、カリーのヒントを」


マリは笑顔でそう言った、ミチコも笑顔で頷いた。


「赤い短剣を小僧は知らなかった、そして知ろうとしなかった・・想定したからだろうね~」と律子がニヤで言った。


ユリカもミチコもマリも、ニヤで私を見た。


『何も想定はしてないよ・・ただマリの言葉は、1つの意味だけじゃない・・それは知ってるよ』と私もニヤで返した。


「1つの意味じゃないね~?・・どう言う意味ですかね~」とユリカがニヤで律子に言った。


「天然変換もあるんだって事だろうね~」と律子もニヤで返した。


「天然変換!・・ミチを繋げなの・・それでもあったの?」とユリカが驚いてマリに言った。


「はい・・ミチ先輩がヒントを持ってますから」とマリはニヤで返した。


私は自分の想定が正解して、ニコニコちゃんでユリカを見ていた。


ユリアのワクワク波動で、律子も感染したようにワクワクだった。


ユリカはミチコを見ていた、ミチコは深海の瞳を見ていた。


「対極・・透明・・水ですか」とミチコが笑顔で呟いた。


ユリカは爽やか笑顔で頷いた、その瞳にバルタンを映しながら・・。











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