【春物語第二章・・封印の鍵②】
黒雲が青空を隠すような、そんな暗さを表現した無垢な瞳。
4人の少女は曇る瞳を見ていた、笑顔で青空を呼び込むように。
アイカはステージの中央に浮き上がり、徐々に鮮明になっていた。
アイカの座る場所だけが、ゆっくりと回転していた。
「小僧・・クリアーしても、この装置は渡せないんだよ。
ここにそっちから誰かが入り、アイカを連れ出さないとね。
だからその準備はしとけよ、この結界を越えれる者をね」
コーリーは私にニヤで言った、私はコーリーの不鮮明な瞳を見ていた。
『了解、コーリー・・繋げてみるよ』と私はニヤで返した。
コーリーはニヤで頷いて、視線をアイカに戻した。
アイカは鮮明な映像になっていた、青白い炎が静かに消えた。
「えっ!・・モモネェ・・ミサネェ・・レイカネェ・・アンナネェ」とアイカは回転しながら、嬉しそうな笑顔で言った。
「アイカ・・お座り上手になったね」とミサが笑顔で言って。
「でも・・お相撲さんみたいな、座りかたですね~」とレイカがニヤで言って。
「どすこい、アイカですね~」と安奈が言って笑った。
「でもね・・でもね・・7ヶ月は誰でもこんな感じなんだよ、小僧ちゃんがそう言ったもん」とアイカが慌てて返した。
「アイカの大好きなマリアも、そんな感じだったよ」とミサが笑顔で返すと、アイカは嬉しそうな笑顔になった。
「ここはステージなの?・・また呼ばれたの?」とアイカはモモカに聞いた。
「そうだよ、アイカ・・これはステージなんだよ」とコーリーがステージに上がり笑顔で言った。
「コーリー!」とアイカが驚いて叫んだ。
「やっぱり覗いてたね、アイカ・・ステージの後の由美子の世界を」とコーリーはニヤで言った。
「アイカは凄いな~・・もう覗けるんだ~」と安奈が笑顔で言った。
「だって・・私はまだ自分で動けないし、小僧ちゃんもフーの場所以外には連れて行ってくれないから・・がんばった」とアイカは笑顔で返した。
「それで・・捜す方法を小僧が教えてくれたのか?
アイカはステージの前に、由美子に会ってたよね?
小僧に何か口止めされてるのか?・・由美子との事を?」
コーリーはアイカを抱き上げて笑顔で言った、アイカも笑顔でコーリーを見ていた。
「寝たきりで動く方法なら、由美子ちゃんに教えてもらえって。
小僧ちゃんじゃ分からないって、由美子を捜せってニヤで言われた。
だから由美子ちゃんに会いたくて、ずっと会う方法を探してたんだよ。
私はリアルでは寝たきりだから、沢山時間が有ったの。
それが小僧ちゃんが教えてくれた、寝たきりでの楽しみなんだよ。
私はお昼寝を沢山して、夜に起きて探したの。
小僧ちゃんが入る時を、ユリアちゃんが空気の波で教えてくれたから。
イメージの世界で空気の波を追いかけたら、フーの場所までは入ったよ。
モモカネェの教えてくれた、雲に乗る方法で入ったの。
でも雲から降りられなかった、自分で動くイメージが弱かったから。
ハイハイのイメージでも、まだ強く持てなかったから・・動けなかったの。
私は沢山の場所が見たくて考えたの、そして雲を変えてみたんだよ。
沙紀ちゃんがレイカちゃんに作った雲にしたの、小さな雲に。
レイカ悟空の乗る小さな雲に変えたの、行きたい場所に行けるから。
その雲に乗ったら、追いかける事が出来たんだよ。
ヒノキオも追いかける事が出来たの・・天文台のドアも出れたよ。
そしてアントワープの森のドアも、雲に乗ってたら入れたよ。
由美子ちゃんの森に入れて、由美子ちゃんに会ったんだよ。
由美子ちゃんが沢山の事を教えてくれたの、アイカにだけは話せるって。
私がまだ何も出来ない赤ちゃんだから、話せるって言ったよ。
由美子ちゃんの教えてくれた言葉は、とても分かりやすかったよ。
イメージの世界で体を動かす方法を、言葉で教えてくれたんだよ。
由美子ちゃんの教えてくれた言葉は、私には話せないんだよね。
それを小僧ちゃんに言ったら・・そうなんだよって言ったよ。
そして小僧ちゃんが言ったのよ、コーリーに聞かれたから話せるね。
小僧ちゃんはこう言ったの、中立の場所以外では内緒だって言って。
アイカが由美子に、イメージでの体の動かし方を教えてもらったのなら。
アイカも何かを由美子に返さないとね、それが出来れば強く繋がるからね。
それはリアルでの体の動かし方にしよう、アイカにしか教えられないから。
今から少しずつ体を動かす段階に入る、アイカにしか伝える事は出来ないよ。
アイカ・・それを由美子に教えて、アイカが感じた事を全部ね。
どんな事が難しかったのか、そしてそれをどう解決したのか。
寝返り、お座り、ハイハイ、つかまり立ち・・そしてたっち・・あんよ。
その全ての段階で感じた事を、由美子に全部話してね。
それが出来るのはアイカだけなんだよ、リアルを教えられるのは。
産まれる前から知能と言葉を持ってた、アイカにしか出来ないんだよ。
こう言ったよ・・これが私と由美子ちゃんに対する策略なんだよね。
今のフーの1番好きなこの言葉・・一石二鳥の倍プッシュなんだよ。
私は・・嬉しくて、嬉しくて・・由美子ちゃんに返せる事が。
大切な事を教えてくれた、由美子ちゃんに返せるから。
だからリアルでの寝返りもお座りもハイハイも・・全部伝えたよ。
自分が感じた難しさや、分かった時の感じまで・・言葉で伝えたよ。
由美子ちゃんが凄く喜んでくれて、アイカも嬉かったよ」
アイカは笑顔で言った、コーリーも笑顔で聞いていた。
女性達の笑顔が咲き乱れ、私も嬉しくて笑顔になっていた。
「そうか・・それがアイカの意味なのかもね」とコーリーは優しく返した。
「コーリー・・何のステージなの?・・どんな勝負なの?」とアイカが聞いた。
「アイカ・・お前の迷いに対するステージだよ・・4人の姉がその迷いに、自分の気持ちを伝えるんだよ」と言って、コーリーはアイカを降ろした。
ステージの中心に座るアイカは、ゆっくりと回転していた。
4人の少女は笑顔でアイカを見ていた、アイカは安奈に向き合って止まった。
「アイカちゃん・・私からだね・・何が聞きたいの?」と安奈が笑顔で言った。
「安奈からなの!・・安奈が西風出したら、私の出番ないかも」とレイカがウルでミサに言って。
「出し惜しみして、安奈・・西風の叫びを出すなよ~」とミサがニヤで安奈に言った、安奈はニヤを2人に返した。
「西風の叫び!・・さすがミサとレイカ、何かを感じてたんだ・・安奈、やっちゃいな・・ヒトミちゃんが見てる、西風に乗って・・あの時の龍に乗って」とユリアが強く言葉にした。
「あの時の西風は龍だったの!」とユリカが驚いて返した。
「龍だった・・私も波動を出す方向なんて、分からなかった。
あの時・・ヒトミちゃんが側にいたけど、ヒトミちゃんも分からなかった。
波動の出す方向なんて、誰にも分からなかったの。
あの時・・声だけが聞こえたの、《乗って!》って叫んだ声が。
だから私とヒトミちゃんは、その方向に行ったの。
そしたら乗せてくれた・・西風に乗せてくれた。
あれは綾からの風・・龍谷から吹いてきた、龍の風だった。
安奈はそれを感じてたんだ・・だからエースに要求したのね。
呼び出しの封印の言葉を、エースに要求したんだね。
自分の心を西風で伝える為に・・龍谷の美鈴さんを呼び出したんだ」
ユリアは強く表現した、女性達は安奈の笑顔を見ていた。
「何でも聞いて良いの?」とアイカが安奈に言った。
「アイカ・・何でも聞いて良いよ」と安奈が優しい笑顔で返した。
「モモネェ・・話したの?」とアイカがモモカを見て言った、モモカは笑顔で頷いた。
「新しいパパとママのお誘いがあるんでしょ?・・知ってるよ」と安奈が笑顔で言った。
「うん・・だから3人に会いたかったの・・アンナネェは、パパの事覚えてないよね?」とアイカが聞いた。
「うん・・写真でしか知らないよ、自分で顔は覚えてないの・・でも臭いは覚えてるよ」と安奈は笑顔で返した。
母親のアンナは会場から、ステージの安奈を優しい笑顔で見ていた。
「臭いは覚えてるの?・・何歳でお別れしたの?」とアイカが聞いた。
「1歳になった頃だって聞いてるよ・・でも臭いは覚えてるの。
その臭いはね、すこしツーンとするような臭いなの。
アイカは嗅いだことないかな~・・スプレーの絵の具のような臭い。
あっ!・・そうそう、哲ニィにたまにその臭いがするよ」
安奈は笑顔で言って、アイカの顔を見ていた。
「それならわかる~・・お鼻の奥が、チュンって感じる臭いでしょ?」とアイカが笑顔で返した。
「それそれ・・鼻の奥がチュンとする、その臭いなの。
エースに聞いたら、シンナーって言う物なんだって。
安奈のパパは、ビルを作る人だったの・・高い場所でお仕事してたのよ。
だからお仕事すると、ビルを塗る絵の具が服や体に付くんだって。
それをエースのお父さん、勝也パパが教えてくれたよ。
勝也パパも同じ臭いがするから、安奈が聞いたら教えてくれたよ。
安奈はその臭いを嗅ぐと、パパの大きな手を思い出すよ。
とても嬉しい気持ちになるから、それがあるから出来たんだよ。
黙って我慢する事が出来たの・・それは良くない事だったけど。
悲しい時・・いつもあのチュンの臭いがするの。
そして大きな手で抱っこしてくれるの、それが嬉しいんだよ。
アイカ・・私は忘れないと思うよ、会えなくなってもね。
私はアイカと会えなくなっても、絶対に忘れたりしないよ。
大切な人は忘れたりしない、必ず何かで覚えてる・・エースはそう言ったよ。
エースはね・・チサちゃんを音で、ヒトミちゃんを温度で覚えてるの。
お別れしたお友達、全員を・・何かで覚えてるんだって。
私は難しい事はまだ分からないけど、でも・・分かってる事もあるよ。
私は温度で覚えてる、日向ぼっこのような温度で・・大好きなアイカの事を。
だから太陽がお空に有れば忘れない・・絶対に忘れないよ。
ポカポカ温度の、大切な妹・・アイカのことだけは」
安奈の言葉は強烈だった、私はただ喜びを感じていた。
母親のアンナは笑顔で安奈を見ていた、安奈も笑顔でアイカを見ていた。
女性達も喜びの笑顔になって、アイカと安奈を見ていた。
「アンナちゃん、ありがとう・・嬉しかった」とアイカは笑顔で返して、ハッとした表情になった。
安奈が笑顔ではなかったから、アイカは驚いたのだ。
真顔の安奈の瞳は強く輝いて、アイカの曇る瞳を見ていた。
「アンナちゃん・・そうじゃなかったの?・・新しいお父さんを、嫌いじゃなかったの?」とアイカは強く問いかけた。
女性達の強い瞳が、安奈の真剣な顔を見ていた。
母親のアンナの震えを、北斗が肩を抱いて支えていた。
「嫌いじゃなかったのよ、アイカ・・私は嫌いじゃなかった。
優しい時も有ったし・・それにチュンの臭いもしたから。
新しいパパは、私とどう接して良いのか分からなかったの。
子供と触れ合った事が少なくて、難しくて・・出来なかったの。
これはハルカちゃんが教えてくれた、自分も同じだって言って。
愛情を表現しようとしても、上手く出来ない大人がいるんだよ。
大人だから難しいんだって、ハルカちゃんが教えてくれたよ。
だから安奈も考えてみたの、新しいパパとの事を。
そうしたら・・嫌いじゃなかったって思ったよ。
新しいパパも安奈も、どうして良いのか分からなかった。
それだけだったと思って・・それをエースにだけ話したの。
エースはこう教えてくれたよ、それが大切な事だって言って。
安奈・・それが未熟という、大切な時間なんだよ。
その時に自分の足りないものを感じて、次に進まないといけない。
そうしないと、自分の中での置き場所を間違ってしまう。
俺もそれに最近気づいたよ、シオンに出会って気づいたんだよ。
安奈・・無理に嫌いになる必要はない、嫌いを探さないで。
安奈、シオンはね・・子供の頃に仲間外れにされたんだ。
普通と違うシオンは、お友達に入れてもらえなかった。
それでもシオンは、誰の事も嫌いにならなかったんだよ。
安奈・・嫌いを探さないで・・好きを探してね。
エースは少し難しい言葉で、こう教えてくれたの。
それで安奈は新しいパパの事を、自分の中に置けたんだよ。
アイカ・・私はあの新しいパパを、嫌いじゃないよ。
好きの中の、ごめんねなんだよ・・アイカ。
何も話さなくて、何も伝えなくて・・ごめんねって人なの。
自分が未熟だったって分かったから、だから大切な人なんだよ。
忘れてはいけない人なの・・そうしないと行けないから。
私が行かなくちゃいけないの、エースも絶対そう思ってるの。
自分で扉を閉めている、大好きな姉の世界に。
ミホちゃんの世界には、安奈が必ず行くの・・そう決めたの!
今決めたのよ、アイカ・・大切な妹の言葉で、そう決めたの。
私にしか伝える事が出来ないの、自分で閉めてるミホちゃんだから。
ミホちゃんの世界に入るには、置き場所を決めないといけないの。
大切な人を置く・・心の置き場所を、自分の中に部屋を作って。
好きの中の何?・・その【何】という、部屋を作るのよ。
アイカ・・何も心配しなくて良いよ、人は人を嫌いにならないよ。
新しいパパもママも、アイカは嫌いになんてならないよね。
アイカは私達の大切な妹だから、誰かを嫌いになったりしないよね。
アイカ・・自分の気持ちを表現して、自分の気持ちをお話ししてね。
アイカがどこにいても、どんな時でも・・私達は分かるからね。
アイカ・・私達には、秘密基地が有るでしょ。
会えなくなんて、絶対にならないでしょ・・秘密基地が有るんだから。
沙紀ちゃんの作ってくれた、おとぎの国に有るんだから。
会えなくなんてならないでしょ・・淋しくなんてないでしょ!
アイカ・・挑戦して欲しい・・私達は4人はそう思ってる。
エミネェもマリアも・・そして由美子ちゃんもそう思ってる。
沙紀ちゃんも理沙ちゃんも・・そして誰よりも、ミホちゃんが。
アイカ・・私には分かる・・今・・ここに立ってる。
ミホちゃんがいる・・アイカの目の前に、遠くを見て立ってる。
挑戦しろって言ってるよ・・ミホちゃんがそう言ってるよ。
アイカ・・アイカが心とお話しして決めて・・何も怖がらないで。
何も淋しくなんてない・・私達はそこに行けば会えるから。
その扉を自分で開けば、必ず会えるから・・扉を開いて、アイカ。
挑戦の扉を開いて・・そこにいるから、ヒトミちゃんが。
必ずそこで待ってるから・・アイカを待ってるから」
安奈は最後に笑顔で言った、強烈な言葉が響いていた。
アイカは安奈を見ながら笑顔になった、曇り空切り裂いて青空が顔を出すように。
陽だまりの、暖かい光がアイカを照らしていた。
安奈はそれを感じて顔を上げた、その時に安奈の前髪が風に揺れた。
「見ててくれて、ありがとう・・金龍ちゃん・・美鈴ちゃん」と安奈は笑顔で呟いた。
「この風は、金龍ちゃんなの!・・ミユネェの時の、空の谷を上った・・あの金龍ちゃんなの?」とアイカが驚いて言った。
『空の谷』と私は無意識に呟いた、オババの凍結を感じながら。
「そうだよ、アイカ・・明後日小僧ちゃんが見せてくれるよ・・春雨の叫びを」と安奈が笑顔で返した。
「そうなの、嬉しい~・・ありがとう、安奈ちゃん・・自分で決めるね」とアイカは無垢な笑顔で言った。
「うん・・その時に聞くね・・春雨の叫びを見た後に」と安奈は笑顔で返した、アイカも笑顔で頷いた。
「安奈だけでクリアー・・ミサ、レイカ、そしてエミ・・良くやった、良くぞ安奈をここまで連れて来た」とコーリーが笑顔で言った。
エミが泣きながら拍手して、全員が拍手で称えた、安奈の強い想いを。
私は笑顔で安奈を見ていた、マリの喜びの温度を感じながら。
「魔女に褒められて、嬉しいけど・・でもね~・・安奈の意地悪、全力出して」とレイカが笑顔で言って。
「まぁ、しかたないか・・モモカのあんな顔を見れば、全力出るよね~」とミサがモモカを見ながら笑顔で言った。
モモカは安奈を見ながら、嬉しそうに泣いていた。
安奈は嬉しそうな笑顔で、モモカの泣き顔を見ていた。
「安奈とモモカで、未踏の到達か・・安奈、アイカ・・少しヒント出しすぎだよ」とコーリーがニヤで言って振り向いた。
「さて・・小僧、準備は完了したか?」とコーリーが私にニヤで言った。
『うん・・もう繋げたよ・・でもエレベーターが初めてみたいで、夢中で遊んでやがる』とニヤで返した。
「まったく・・マリア、七海とエレベーターまで迎えに行って来い」とオババがマリアに笑顔で言った。
「あい・・まったく」とマリアが天使ニヤで返した。
エミの横に座る七海が勢い良く立ち上がって、マリアに向かって駆け出した。
女性達は不思議そうに、マリアのニヤを見ていた。
「マリア・・早く~」と七海が呼んだ。
「せっかち、ななみ~」とマリアがニヤ継続で返して、2人でエレベーターまで歩いた。
「これからどうするの?・・コーリー」とアイカが言った。
「アイカは今、このステージしか見えてないよね・・ここからアイカを出せる、おバカさんを待ってるんだよ」とコーリーは笑顔で返した。
「おバカさんなんだ」とアイカはワクワク笑顔で返した。
「そのおバカさんにしか出来ないんだよ、ステージに上がってアイカを連れ出すのはね」とコーリーが笑顔で返した。
マリアは七海と手を繋いで、エレベーターの前に立っていた。
七海はワクワク笑顔で、その扉が開くのを待っていた。
扉がゆっくりと開くと、七海が飛び込んだ、マリアはそれを天使全開で見ていた。
そして黄色い姿が登場した、泣き顔の七海を抱いたお惚け顔が。
「ふ~・・あそんでたね~」とマリアが天使ニヤで言った。
フーはウルで首を横に振って、必死で何か言い訳していた。
マリアはニヤ継続でエレバーターに乗って、すぐに出てきた。
エレベーターのドアが閉まり、階数表示の電光が下がりはじめた。
「しゅやくなのに・・できないの~」とマリアがエレベーターのドアに向かい強く叫んだ。
階数表示は1階で止まっていた、フーはニヤで扉を見ていた。
マリアと七海がニヤで階数表示を見てると、電光が上がりだした。
そして3階で止まり、ゆっくりと扉が開いた。
「できるじゃない・・こたつなくても」とマリアが天使ニヤで飛びついた。
「ありがとう、マリア姫・・強く呼んでくれたから、扉の中に入れました」と笑顔で言って、ハチ公がマリアを抱き上げた。
「ねこちゃん、はちこう」と返して、マリアは天使全開で抱かれていた。
女性達の笑顔に迎えられ、フーとハチ公はフロアーに歩いた。
七海の喜びの笑顔を、私も笑顔で見ていた。
フーはエミの横に七海を降ろして、ハチ公はマリアを抱いたまま、エミの横に座った。
フーは沙紀の氷像の前に立って、ニヤニヤで氷像を見ていた。
「あ~・・フーちゃん、私が氷だから笑ってるのね・・遠隔で入れないから~」と沙紀の声が響いた。
フーはニヤニヤ継続で、右手を口元に持っていき《ククク》という感じで笑った。
「もう、フーに笑われた・・絶対にできるようになる!」と沙紀が叫んだ。
その時には、フーはリンダに飛び込んで、胸にスリスリしていた。
そして氷像を飛び越えて、マチルダに飛び込んで、再び豊満スリスリを発動していた。
『フー・・そこまでだ、ここに来い』と私はニヤで言った。
マチルダがフーを立たせて、優しくお尻を押した。
フーはオババと律子を見ながら、私にウルウルで近づいた。
「何のウルなんだい?・・フー」とオババがニヤで言った。
フーは指の無い右手で、律子を指差してウルを強めた。
律子はニヤニヤでフーを見ていた、フーはそれを見て駆け出して、私の背中に隠れた。
『フー・・何した?・・それも律子に気づかれたなら、罰が怖いぞ~』と私はフーにニヤで言った。
フーはウルウルで私に両手を伸ばした、私は笑顔で抱き上げた。
フーは強い温度で言い訳していた、私はニヤで聞いていた。
『困った奴だな~・・分かった、律子には俺が侘びを入れとく。
だからフー・・アイカを迎えに行って、あの場所に連れて行って。
アイカが自分と話せる場所に、フーが連れて行ってくれよ』
私は笑顔で言った、フーはステージのアイカを見ながら強く頷いた。
私がフーを降ろすと、フーはウルで私の足に強く抱きついた。
私が不思議に思ってフーを見ると、フーはウルで私の足にスリスリしてきた。
そして温度で強く要求してきた、私は嬉しくて笑顔でフーを見た。
『フー・・俺に惚れるなよ、火傷するぜ』とフーにニヤで強く言った。
フーはそれで私の足から離れて、ニヤでステージに向かった。
コーリーは真顔でフーを見ていた、フーはコーリーを見ながらお惚け顔で近づいた。
そしてフーは何の躊躇も無く、ステージに飛び乗った。
コーリーは驚きを口元に出した、フーの自然な行動に驚きを示した。
フーはコーリーの驚きを無視して、アイカに笑顔で近づいた。
「フーちゃん!」とアイカは喜びの笑顔で叫んだ。
フーはアイカの前に背中を向けて屈んだ、誰かがアイカをフーの背中に乗せた。
アイカを囲む4人の少女も、会場の全員も、そしてコーリーまで凍結していた。
アイカを後ろから抱きかかえ、フーの背中に優しく乗せたのは、ミホだったのだ。
「ミホ!・・フーが入った瞬間に、遠隔で入ったのか?」とコーリーが驚いて叫んだ。
アイカが慌てて振り向いた、ミホは無表情でアイカを見ていた。
ミホはアイカを見ながら、エレベーターを指差した。
「うん・・行ってくるね、ミホネェ」とアイカは喜びの笑顔で返した。
フーはその声を聞いて、ステージを降りてエレベーターに向かった。
アイカは女性達に気づき、無垢な笑顔を向けた。
女性達は嬉しそうな笑顔で、アイカに手を振っていた。
私もエレベーターまで歩き、アイカを見ながら扉を開けた。
「わかってるよ、小僧ちゃん・・アイカが自分で決める事だよね?」とアイカが言った。
『そうだよ、アイカ・・いっといで』と私は笑顔で返した、アイカも笑顔で頷いた。
エレベーターの扉が開き、私はアイカとフーを見送った。
扉が閉まって、階数表示が下がるのを見ていた。
「この立体映像装置は、小僧の世界に入った・・映像の続きを楽しめ・・極寒のステージで待ってる」とコーリーが強く言ってミホを見た。
ミホはコーリーを正面から見て、強烈なミホニヤを出した。
コーリーも口元に強烈なニヤを出して、ミホの瞳を見ていた。
「時は5月5日・・端午の節句に、挑戦の扉が開かれる・・検討を祈る」とオババが笑顔で言って。
次の瞬間に2人は消えていた、ミホも消えて、ステージも消えていた。
私がフロアーに歩くと、リンダとマチルダと沙紀の氷像の姿も無かった。
律子が私に追いついて、2人でフロアーに立って女性達を見た。
「小僧・・最後にアドバイスをしろ、ステージに影響が出ない程度に」と律子がニヤで言った。
『極寒の世界に対し、アドバイスなど何も無い。
想定や想像は無駄だよ、遥かに越えてくる。
1つだけ言うなら・・体力的な自信というのは、絶対に必要になる。
その部分を調整しながら、自分と向き合い準備するしかない。
自信の持てない者は、俺が挑戦権を剥奪する。
今回はそれほどに強力なんだ・・氷河の世界は』
私は真顔で強く言葉にした、若手女性達も真顔で頷いた。
私はそれを確認して、映像を切った。
私が目を開けると、女性達も瞳を開いた。
私は座って眠っている、マリを抱き上げた。
ハルカが簡易ベッドを準備して、私はそこにマリを寝かせた。
穏やかなマリの温度を確認して、TVルームに戻った。
「エース・・今後の予定をお願いしますね」とユリさんが薔薇で微笑んだ。
私は笑顔で返して、蘭とユリカの間に座った。
『挑戦する若手女性は、体力強化をしないとね。
俺はその場所も準備するけど、自分でも考えてやってね。
最新鋭の装備の情報を、リンダが提供してくれると言ってくれた。
多分・・世界中から集めてくると思う。
その装備の説明を、ユリさんとミチルで聞いて下さい。
シズカにも聞かせますから、3人で検討して下さい。
それだけで・・それだけしか出来ない。
俺は今から、清次郎とある場所に行ってきます。
ミチコの準備に入ります・・千鶴、明後日結果を聞くね。
今の段階で結論を出さないで、充分納得してから出して。
律子・・明日、実家に帰るよ・・よろしく』
私は笑顔で言った、全員が笑顔で頷いた。
「了解・・ありがとう、エース・・私もこんなに気分が高揚してるのは、久しぶりだよ」と千鶴が笑顔で返してきた。
私は千鶴の笑顔を見て、セリカを見てニヤで頷いた。
セリカは強烈な流星ニヤで返してきた、私はその流星を見ていた。
「さて・・今から、スポーツ用品店に行く人~」とユリカがニヤで言った。
「は~い」と若手女性達が笑顔で手を上げた。
「エース・・他の共同体のメンバーに、この話をして良いのか?」とカスミがニヤで聞いた。
『もちろん・・概要は話して欲しい、そして明後日の午後の事もね』と笑顔で返した。
「よし・・可愛いの買ってから、話に行こう」と蘭が満開で言って。
「私も、たまには可愛いのにするか」とリアンが極炎ニヤで言って。
「靴は蘭姉さんですね、よろしくです」とリリーが笑顔で言った。
若手女性がワイワイと出て行って、私はそれをニヤで見送った。
「小僧・・どこに行くのかね?」と清次郎が真顔で問いかけた。
『○○デパート・・ミチコの母親に会いに行く』とニヤで返した。
「良し・・良い緊張感だよ、小僧」と清次郎が笑顔で言った。
私は不安の方を多く抱えていた、清次郎の笑顔を見ながら。
全てが凍る極寒の世界を、映像で見ていた。
《眠ってしまおう》と吹雪の中で呟く、小4の自分の映像を。
氷点下の世界に、強風が吹いていた。
封印された氷河の門は、開放の時を待っていた・・。