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      【春物語第一章・・春の予感⑦】 

羽田空港のターミナルを出ると、五月晴れの青空が広がっていた。

ゴールデンウィーク特有の、少しの開放感を感じる快晴だった。


私はリアンを連れて、成田直行のシャトルバスに乗り込んだ。

リアンを窓側に座らせて、私は飲み物を用意して隣に座った。

シャトルバスは大勢の乗客を乗せて、ゆっくりと成田に向け出発した。


リアンは黙って車窓に映る東京の景色を見ていた、私も何も話さずに正面のTVを見ていた。


「2年ぶりの東京だよ・・どんな時代でも変化が激しいよな、この街は」とリアンが呟いた。


『そうだよな・・何かが増殖してる感じだよ』と私もリアンの見ている景色を見ながら返した。


「あれがスカイツリーか・・あの高さと大きさは・・少し怖いな」とリアンはニヤで呟いた。


『間近で見ると・・かなりの怖さだよ』と私はニヤで返して、仮眠を取る為に目を閉じた。


日差しの強さを感じながら、サムとシオンの事を考えないようにしていた。

映像が出ると眠れないので、意識してそうしていた。


私はリアンの同行者であるのだから、このバスで少しでも眠りたかったのだ。

リアンはそれを察して、車窓に流れる景色を静かに楽しんでるようだった。


成田に到着して、私は大手旅行会社で航空券と必要な書類を受け取った。

出発まで時間があったので、リアンと食事をして、2人でワインを少し飲んだ。

リアンは終始穏やかな表情で、すでに自分の中での処理は終わってる雰囲気だった。


私はリアンが言葉に出さない限り、サムの話題を出さなかった。

昔話を夜空の上で話して、2人で声を殺して笑っていた。


ユリアの波動が優しくリアンを包んでいた、私もリアンもいつのまにか眠りに落ちていた。


シオンに向かう夜空には、無数の星が瞬いていた。


「ここ・・ここから見せて」と眠っている私に女性の声が聞こえた。


私は覚醒しきれない意識の中で、それが眠りの中の夢なのか、映像なのかさえ分からなかった。

その声の主を、目を開けて視覚で捉えているのかも分からない状態だった。


《琴美か・・若いな・・映像なんだ》と少し覚醒した私は呟いた。


私が見ているのは、20代前半の私と琴美が、おとぎの国の居住区で大型モニターを見る映像だった。

琴美が指定した大型TVの映像は、豪雨の中を雷の閃光に照らされて歩く少女の姿を映していた。


「重要な場面だよね・・これこそが未来の記憶」と琴美が笑顔で言った。


『そうだよな・・ミホの次段階の為の、過去からのメッセージ』と20代の私はニヤで返した。


「エースはこの時、小4の頃の自分に同調してる時・・どこまで思い出してたの?」と琴美もニヤを出して探りを入れてきた。


『先入観になるから、言わない』と私はニヤニヤで返した。


その時、居住区の扉が開いて大男が入ってきた。

私も琴美も笑顔になって、その黒い顔に真っ白い歯を浮かべて笑うサムを見ていた。


「サム・・駄目だろ、仕事さぼったら」と琴美が笑顔で言った。


「琴美・・元気そうだな・・安心したよ」とサムは優しい笑顔で返して、琴美の隣に座った。


「ありがとう、サム・・その笑顔が嬉しかった」と琴美も笑顔で返した。


サムも笑顔で頷いて、モニターを見て固まった。


「幼いミチコ姫!・・雷雨・・まさか面接?

 それはないだろ~、エース・・この映像も出せるのかよ。

 これはミチコ姫の間接面接だよな?・・雷雨なら。

 13歳のエースが強引に同調させられた、カリーの試験だよな?

 春雨の叫びに続く、ミホの準備の映像だよな?」


サムは私を見てウルで言った、私はニヤで頷いた。


「サム・・エースが自分から見せるわけないだろ・・春雨の叫びだぞ」と琴美がニヤで言って。


「そうだよな~・・おっ!・・映像が病室に変る」とサムがモニターに向かってニヤで言った。


その言葉で琴美がモニターを見て、20代の私もモニターを見た。

そして現在の私の映像は、大型モニターの映像になった。


映像はミホの病室に変っていた、13歳の私はその後の展開を必死に思い出そうとしていた。

小4の私はミホの震えが治まって、ミホをベッドに寝かせて添い寝していた。


ミホは私の方に体を向けて、窓の外の閃光を見ていた。


『ミホ・・雷だよ・・怖くないよ』と私はミホの無表情な顔に向かって笑顔で囁いた。


ミホは私の表情を見て、体を起こして私の手を引いた。

私はミホに起こされるように、上半身を持ち上げた。


ミホはベッドから降りて、棚の絵本の中から【はなさかじいさん】を手に取った。

そしてページを捲って、後半の部分を開いて私に見せた。


ミホは挿絵の満開の桜のような木を指差して、私を指差した。

そして私の手を引いてベッドから降ろして、強く私の背中を押した。


『ミホ・・どうしたの?・・行けって言ってるの?』と私は顔だけで振り向いてミホを見た。


ミホは無表情で私を見ていた、私は凍結してるようだった。


《ミホの瞳に感情が出てる》と私は心で呟いた。


この呟きはTVの音声でも流れた、女性達は沈黙して見ていた。

幼い小4の私は喜びの笑顔でミホの瞳を読んでいた、13歳の私も喜びがこみ上げていた。


「ミホはやっぱり、自分で壁を壊したんだ・・ミチコの何かを感じて、瞳に意思を出した」とマキが呟いて。


「ミホには響いてたんですね・・コーリーの問いかけが」とユリさんが薔薇の微笑で言って、若手女性達はハッとした表情になった。


「人間の本当の強さって何なんだろうね?・・このコーリーの問いかけが、自分に向けられたと感じたんだね」と北斗が笑顔で言って、女性達は静かに頷いた。


映像の私はミホの瞳を見ながら、笑顔をミホに向けた。


『わかったよ、ミホ・・妹桜だね・・行ってくるね』と私は笑顔で言った、ミホは私の背中を強く押した。


私が病室から出ようとすると、恭子がミホの夕食を持って入ってきた。


「小僧、何した?・・ミホに出て行けって言われてるのか?」と恭子はニヤで言った。


『ミホに頼まれた、おつかいに行ってくるよ・・恭子、ミホが食べるのを見ててね』と私は笑顔で返した。


「ミホ・・そっか、いよいよだね・・ミホ、何も怖くないぞ・・破壊しろ、ミホ・・そうしないと、新しい何かは得られないよ」と恭子はミホを見ながらニヤで言った。


ミホは恭子の瞳を見ながら、恭子を追ってベッドに向かった。

私はミホの背中を見て、病室から出て足早に歩いた。


「なんて奴だ、恭子・・ミホの何で何を感じた?・・何で読み取った?」と幸子が呟いた。


「あの空母の屋上から、恭子がミホに言った言葉・・1000mから飛び降りるミホに語りかけた、あの言葉・・深かった」とケイコが呟いて。

「できるよな、ミホ・・それがお前の笑顔の記憶、7歳の時の未来の記憶・・だったね」とレンが呟いて。


女性達は沈黙してTVの映像を見ていた、マリだけが俯いて集中していた。


映像の小児病棟の廊下は、入院患者の夕食が配られていて混雑していた。

私は非常階段に方向を変えて、非常階段のドアの取っ手を握った。


その時に小4の私の視界に映像が映し出された、小4の私は取っ手を握り立ち尽くしていた。

同じ場所で外を見ている、ヒトミの最後の言葉を聞いた自分の映像が流れていた。


《1月15日の映像だ、ヒトミと最後に話した後だ・・俺は何も考えずに外を見てたよな》と小4の私は心に囁いた。


「何も考えなかったか?・・そう思ってるのか?・・小僧」と女性の声が映像に響いた。


映像の1月15日の私が見る非常階段の窓の外に、老婆が立っていた。


13歳のリアルな私は凍結していた、映像を見ている4年生になった私はハッとしていた。

そして映像の1月15日の私は、オババの顔を見ながら動きが停止していた。

映像全体は停止状態だったが、オババの表情だけ動いていた。


『オババ・・そうだったね、オババが会いにきてくれたんだったね』と映像を見ている小4の私が、映像に向かって言った。


「まったく・・お前がコーリーを呼び出したりするから。

 私も出たくなったじゃないか、お前に思い出させるために」


オババはニヤで言った、停止画像を見ている小4の私も笑顔になった。


『負けず嫌いだね、オババも・・コーリーはライバルだからかな?』と小4の私は笑顔で返した。


「当たり前だよ、私はコーリーだけには負けたくないんだよ・・コーリーに先にミホを感じさせやがって」とオババはニヤ継続で言った。


『俺はオババの呼び出し方は知らないから、ミホの中立の場所が分からないからね』と私は正直に返した。


「だから特別サービスで出てきたんだ、お前が引き出せないようだから。

 マリはまだ時間がかかるし、沙織は知らない事だしね。

 小僧・・大サービスだよ、お前の記憶を見せてやるから。

 隠された記憶を見せてやるから、今度はきちんと残せよ」


オババは真顔で言った、小4の私は笑顔で頷いて。


『オババ・・記憶が隠されたの?・・マリは何かを得るの?・・他人の記憶を導き出すような』と私は好奇心が溢れ出したのだろう、一気に質問を繰り出した。


「ほほ~、ヒトミを失ったのに・・また速くなったね、変換速度が」とオババが笑顔で返してきた。


『変換速度?』と私はウルで聞き返した。


「言葉の変換速度だよ・・思った事を言葉にするスピードさ」とオババはニヤで言った。


『あぁ・・それならいつも練習してるからね、次にヒトミと話す時の為に・・速くしとかないと、怒られるよ』と私はウルで返した。


「だろうね~・・お前には大切な事さ」とオババはニヤ継続で言った。


『なんか楽しんでるね、オババ・・自分だけ知ってて、ずるいぞ』と私もニヤで返した。


「先入観になるから言わないよ・・お前の決め台詞だろうが」とオババはニヤニヤで返してきた。


『オババ・・今少し思い出したよ、この時の事を・・オババがそこにいたんだよね・・でも話の内容は思い出せない』と私はウルで言った。


「それが隠されたという事さ・・それがルールなんだよ」とオババが真顔で返してきた。


『また出たね・・ルールという言葉が』と私はニヤで返した。


「お前は9歳だったからね、理解できる可能性があったから・・ルールが適応されたのさ」とオババが真剣に言った。


『ねぇオババ・・ルールを作ったのは誰なの?・・人なの?』と私も真顔で返した。


「私も知らないが、人じゃないだろうね。

 ルールと言っても、何かに書かれてる訳じゃないよ。

 お前にこの話をするのは2度目だが、私の考えを教えてやるよ。

 私はこのルールとは、繋がりの継続の為のルールだと思ってるんだ。

 生命を守るために作られた、自然の掟みたいな物だと感じてる。

 生命は全てが繋がらないと、維持継続する事は出来ない。

 何らかの力が突出した生命は、その繋がりの障害になる可能性がある。

 その突出した生命体の誕生を恐れて、繋ぐためのルールは出来上がった。

 私の今の考えはそんなとこかな、お前には今でも難しい話だろうが。


 この地球にしても、最初に誕生した生命は人間ではないよな。

 最初の生命はなぜ産まれたのか?・・地球がその環境になったからか?

 偶然の重なりで、奇跡的に産まれたのか?・・それは無茶な想定だろ。

 どこからか来たと仮定する方が、現実的な想定だと言えるよな。

 その生命体はなぜ宇宙の旅に出たんだろうね、故郷を捨てて。

 最初の生命が分離して、様々な生命に変化していった。

 人間もその中の1つの生命体であって、人間は知識を得た。

 それは進化の歴史だよな、人間は知識を得たことで特別な生命体になったのか?

 ただ何かが突出した、危険な生命になったと言えないのかな?」


オババは小4の私には難しい表現を選んだ、小4の私は考えていた。


『突出って・・あまり良い表現じゃないよね?

 漢字が分かるからそう思うけど、突き出てるって感じだよね。

 人間が危険な生命体であるって言うのは、和尚の話で感じてた。

 戦争の話を聞いて、そんな感じで思ってたよ・・少し怖かった。

 オババの言うルールって話を聞いて、ヒトミの時に色々考えたんだ。

 なぜヒトミは動けないのか?・・ヒトミは指令は出せてるって言った。

 マリも言葉の指令は出せてるって言った、マリは機能障害じゃない。

 それはシズカと2人で確認したよ、機能障害の子供と触れ合ってね。


 オババ・・ルール違反なんだろ、マリの力はルール違反。

 だからマリは言葉も文字も持てない、それは伝える道具だから。

 マリは伝えたらいけない、ルール違反の能力だから。

 でも・・オババ、それが生命を繋ぐためのルールなら。

 マリにはどんな危険があるの?・・マリは絶対に生命を傷つけたりしない。

 ならばヒトミは!・・ヒトミのルール違反は何だったの?

 ヒトミが生命の繋がりに対して、危険な力を持ってたの?

 嘘つくなよ、オババ・・ヒトミだけには、危険という事は絶対に無い。

 ルールがあるのなら・・ルールが間違ってる。

 カリーが言った、契約があるのなら・・その契約が間違ってる。

 体を動かせない罰を受けるのは、ヒトミやカリーじゃない。

 だからそんな契約は破棄できる、俺は絶対に破棄出来ると思ってる』

 

私はオババを睨みながら、強く言葉にした。


「小僧・・私もそう思ってるよ」とオババは静かに返してきた。


その静けさで、小4の私も13歳の私も、本心だと感じる事が出来た。


『オババ・・俺が間違って考えてたんだね・・それを正しにこの場面で出たんだね・・この時、俺は何か宿題を出されてたよね?』と小4の私は少し思い出して笑顔で言った。


「そうだよ・・この時にヒトミから宿題が出た・・その答えを聞こう・・答えを聞くという行為だから、私は今ここに来れたんだよ」とオババがニヤで言った。


『OK・・オババ、約束だったね・・映像を見せてよ、答えを出す・・今の俺の答えを』と私もニヤで返した。


「楽しみだよ・・マリ、録画してるよね?」とオババはニヤで言った。


『マリが録画するの!』と小4の私は驚いて叫んだ。


「してるよ、オババ・・私は忘れてないよ・・自分の記憶は全て引き出した」とTVルームのマリは強烈なニヤで返した。


凍結する女性たちの中で、マリだけが強烈なニヤを出していた。

映像のオババはそれを見てるように、ニヤを出して強く頷いて、小4の私を見た。


「先入観になるから言わん・・これがミホへの道だからね」とオババは真顔で言った。


『知る必要無し・・ミホの道ならば、俺は自分で辿り着く』と小4の私はニヤで応戦した。


「はじめるぞ、小僧」とオババがニヤで言った、私もニヤで頷いた。


映像は小4の私が見ている停止映像のアップになった、1月15日の私はオババの顔を驚いた表情で見ていた。


『オババ!・・外にも出れるの!』と映像が動き出して私が叫んだ。


「出れるよ・・今だけは・・最後の時だけはね」とオババが真顔で返してきた。


私を見るオババの瞳は優しかった、【最後の時】と言う言葉を聞いた私は、オババを睨んでいた。

私はオババの瞳を見ていた、13歳の私は良い集中だと思っていた。


『オババ・・ヒントだね・・成すべき事の』と私はオババの瞳を読み取って、笑顔になって返した。


「ヒントなど出せんよ、未来など決まってないからね。

 ただ・・ヒトミに最後の願いで頼まれたんだよ。

 ヒトミの最後の願いだから、私には断る事は出来なかった」


オババは優しくそう言った、私はオババの瞳を見ていた。


『問答?・・何?・・ヒトミ問答なの?』と私はオババの瞳を読んで返した。


「そうだよ・・ヒトミ問答だよ・・小僧が切望した、ヒトミ問答さ」とオババがニヤで言った。


『受けましょう、ヒトミ・・教えてやるよ、俺の方が上だって』と私はニヤで返した。


「小僧・・答えを探せ、これだけは答えを探すんだ・・良いね?」とオババは真顔で言った。


『よかろう・・答えの有る問題であるのならば』と私は和尚の真似で返した。


オババは私の表情を見て真剣な顔になった、1月15日の私はそれで緊張したようだった。


「小僧に問う・・ルールが守る事とは何ぞや、何を守る為に作られたのか?」とオババは強く言葉にした。


『えっ!・・俺が間違ってるの?・・ヒトミ、俺の考えは間違いなの?』と私はその問いかけに驚いて、自然に呟いた。


「小僧・・探せ・・この問答の記憶を隠されても、探し出すんだよ・・解答は必ず私が聞きに来るからね」とオババは真顔で言った。


『また記憶を隠されるの?・・時の部屋の場所のように』と私は真顔で返した。


「小僧・・お前、気づいてたのか?・・時の部屋が隠された事を」とオババが驚いた表情で返してきた。


『気づくだろ、オババ・・俺は時の部屋の映像は残したよ、ただその場所が思い出せなかった』と私はニヤで返した。


「映像で残せたのか・・お前は出会うのかもな、絵筆を持てる少女に」とオババはニヤで返してきた。


『また1人で楽しんだな・・良いよ、聞かない・・先入観になるからね』と私はニヤで返した。


「小僧・・婦長が来た・・必ず記憶と答えを探し出せ・・それがヒトミの望み」とオババが真顔で言った。


『了解・・必ず解答を聞きに来いよ、オババ』と私はニヤで返した。


オババも強烈なニヤで頷いて、次の瞬間には消えていた。


「小僧・・会って欲しい子がいるんだよ」と婦長の声が背中から響いた。


『ん?・・新しい入院患者なの?・・楽しみだな~』と私は笑顔で返して、婦長に連れられて歩いて行った。


小4の私が映像の自分の背中を見送っていると、映像が突然切れた。

そして目の前には取っ手を握っている、非常階段の扉の窓が見えた。

その窓の外にオババがニヤで立っていた、小4の私も必死のニヤで応戦した。


「解答を聞こうか、小僧」とオババはニヤで言った。


『オババ・・その前に1つだけ質問・・この解答の場面も隠されるのかな?』と私はニヤで聞いた。


「もちろんそうなるかもね、それも強力な隠し方で・・お前の解答が隠すべきレベルなら」とオババはニヤ継続で返してきた。


『なるほど~・・それで分かるんだね、俺の解答のレベルが・・いつかマリが解答用紙を出してくれるね』と私もニヤで返した。


「どうだろうね・・それはマリの問題だからね」とオババは真顔で返してきた。


『俺はマリを信じるよ・・オババ、俺の解答を出すよ』と笑顔で返して、非常階段のドアを開けた。


そしてオババに近づいて、オババの左手を握った。


『ラッキー、温度を感じるよ・・オババ、俺は温度で残す・・オババの温度で思い出してみせる』と私は間近なオババの顔にニヤで言った。


「よかろう・・小僧に問う・・ルールが守る事とはなんぞや?・・何を守る為に作られたのか?」とオババは強く言葉にした。


『ルールとは・・突出した能力を得た、危険な生命体を滅ぼすルール。

 その滅びのルールの意味を解き明かせる力、それを得た者に罰が下る。

 このルールは滅びのルール、危険な生命体と認識された証。

 滅びのシナリオを探し出せる、その可能性のある力は徐々に奪われた。

 永い進化の歴史の中で、気づかれないようにゆっくりと奪われた。

 進化の歴史が、危険な生命体だと認知すると同時に奪っていった。

 危険度が高まるほど、滅びのルールが適応された。

 進化の契約というシナリオで、滅びのシナリオが進行していく。


 その契約違反をした者、契約前の能力を持つ者に罰が下る。

 伝える事が出来ないという罰が、その力を有する者に下される。

 このルールは排除のルール、生命を繋ぐための排除の掟。

 突出した力を得た生命体が、危険な生命体ならば・・適応されるルール。

 誰が作ったのでもない・・繋ぐ為の全体のルール。

 滅ぼす事で守るしかない・・滅びの道は、進化という道。

 強い力を持つ生命体を滅ぼす唯一の方法は、同種族での殺し合い。

 その設定を成就させる為に作り出された、それこそが破滅のルール。

 破滅の執行は得た力に託される・・人間ならば・・それは知識。

 知識をつかさどる脳に託された、【欲】という破滅の爆弾が。


 そのルールの意味を知る者・・欲の意味を探り当てる可能性のある者。

 それこそが・・唯一無二の無欲の存在・・それこそがヒトミ。

 排除のルールを提示する事の出来る、ヒトミこそがルール違反。

 俺はそうだと思ってる・・今の俺は・・そうだと思ってるよ。

 未来の俺・・必ずこの想定を思い出せよ・・中立の勝負の時に。

 カリーの伝言をヒトミが繋ぐ・・成すべき者の勝負の時に。

 オババに再会した時に、負けれない勝負の場所で思い出せ。

 オババの温度で思い出すんだ・・この自分の解答を』


私は強く言葉にした、オババは真剣な瞳で私を見ていた。


「小僧・・死ぬなよ」とオババがニヤで言って消えた。


次の瞬間に落雷の爆発的な轟音が鳴り響いて、鉄骨の非常階段に電気が走った。

私は電気を浴びたショックで、その場に倒れこんだ。

映像は非常階段の踊り場で、気を失い雨に打たれる、小4の私の姿が映されていた。


「今の相当近かったよね」と階段の下からヨーコの声がして。

「耳がガンガンする・・避雷針はないのかね~」と返すシズカの声が聞こえた。


2人の鉄階段を上ってくる音が近づいて、2人の傘が見えてきた。

2人は踊り場で倒れる私を見て、慌てて駆け寄った。


「小僧!・・睡眠不足か?」とヨーコが一瞬驚いて、私の額に手を当ててニヤニヤで言って。

「それにしても、この豪雨の中・・よくもまぁ眠れるもんだ」とシズカがニヤで言って、私の顔を少し持ち上げて手首を掴んだ。


「生きてるの?」とヨーコがニヤ継続でシズカに言って。

「本当に残念だが・・・生きてる」とシズカもニヤ継続で返した。


「な~んだつまんない・・それでどうやって起こす?」とヨーコは強烈なニヤで言った。

「喝を入れるしかないね・・シゲ爺の方法で」とシズカがニヤニヤで返して、ヨーコもニヤニヤで頷いた。


「私は先週、彼氏は10年は出来ないねって小僧に言われたから・・私が入れる」とヨーコがウルで言って。


「待って、私は一昨日・・恋愛には方程式は無いから、シズカには無理だよってニヤで言われたから・・私だろ」とシズカがウルで返した。


「シズカ、それは事実でしょ・・だから私~」とヨーコがニヤで返して。

「ヨーコこそ事実だろ・・いや真実だろ~・・だから私~」とシズカがニヤで返して・


2人は主張は、異様な盛り上がりを見せていた。

女性達も久々に笑っていて、マキは大爆笑していた。


結局2人はジャンケンで決める事になり、シズカが私の頭を踊り場に置いた。

シズカはかなり早目に手を離したのだろう、私の頭が鉄の床に激突する【ガン】という音が響いた。


私はそれで我に返り、飛び起きて体のチェックをした。

2人はウルウルで起きた私を見ていた、私は生きていると感じて笑顔で2人を見た。


「なぜ起きるんだ・・もう1度寝ろ」とヨーコがニヤで言って。

「早くしろよ・・今から決めるから」とシズカもニヤで私に言った。


『2人とも、雷にやられなかったの?・・俺は死ぬかと思ったよ』と私はウルウルで返した。


「お前・・やっぱり馬鹿だな・・落雷がこんな建物に落ちるかよ」とシズカがニヤで言って。

「それもここは総合病院だぞ・・落ちる訳ないだろ」とヨーコがニヤで言って、2人で笑いながら病棟に入って行った。


私はウルウルで見送って、非常階段を駆け下りた。


小4の私は豪雨の中に走り出した、ニヤニヤ顔の全力疾走で。


『春雨じゃ、濡れてまいろう』と呟きながら、妹桜を目指していた。


マリは俯いて強い集中の中にいた、初めて過去を想定していた。


自分の解答を落雷のショックで隠された私は、春雨に撃たれていた・・。











 





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