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      【冬物語・・春を待つ季節】 

聞こえてくる笑い声に混じる、癖の強い発音の外国語。

タバコの煙と酒の匂いが充満した空間で、私は開放の時間を楽しんでいた。


Jもリリーも笑顔で話していた、私はビールを飲みながら相槌を打っていた。


「サムの妹は難しい状況なのか?」とJが私の表情を見ながら真剣に聞いた。


『簡単じゃないよね・・俺も東京で何人か経験したけど、薬から抜けるのは難しいよ』と真顔で返した。


「そうだよね・・副作用を克服したら、環境を変えないと・・また戻ってしまうよね」とリリーも真顔で返してきた。


「その方法しかないぞ、ロンドンにいたら同じ事の繰り返しだよ。

 ベストは何年か東京で暮らすのが良いよな、少なくとも手に入り難いからね。

 イギリスや特にアメリカは駄目だ、薬局で買うのと同じ程度の感覚で手に入る。

 エースも知ってるだろうが、あの魔の手から抜け出すのは難しいんだ。

 辛い状況になると思い出す、どうしてもそこに逃げ込んでしまうからね」


Jが真剣な口調で強く言って、リリーの表情を見ていた。


「エースの判断に任せる・・そんな感じだったよ、シオンがね。

 シオンがサムの妹に会ってきて、そんな表情だったからね。

 難しいと感じてるのか?・・妹が東京でサムと暮す事が」


リリーが最後にニヤを出した、私もニヤで対抗した。


『妹に強い意志が有るなら、留学は難しい事じゃないよ』と私はニヤで返した。


「なるほど・・留学という段取りで想定してるのか?」とJがニヤで返してきて。

「初めて人脈を使うんだね?・・東京での人脈を」とリリーもニヤで言った。


「楽しそうだよな~、エース」とJがニヤニヤで言って。

「楽しいに決まってるでしょ、難問に巡り会うとイキイキするんだよ・・それもサムの事だしね」とリリーもニヤニヤで言った。


『書類上の面は何とかなるけど・・問題は経済的な話だよ。

 実は日本語の話せるサムでも難しいんだ、黒人留学生がバイトで働く事は。

 日本で留学生がアルバイトをするには、法務省の許可がいるんだよ。

 まぁ許可と言っても、そう難しい申請じゃないらしいけどね。

 前科前歴が無ければ、多分許可は簡単に出ると思う。

 

 サムはPGに来る以前に、子供の英会話教室にバイトで行っていた。

 でも子供達は怖がるんだよ、なんせ大きな黒人だからね。

 東京とは言っても子供達は慣れていない、だから怖さを持ってしまう。

 これはどうしようもない事なんだ、子供にとって悪役に見えるから。

 仮面ライダーとかの悪役と重なるんだろうね、その事は今は解決できない。

 それに大人相手の英会話教師には、黒人は避ける風潮が有るらしい。

 サムは東大生だよ・・それでも難しい状況は有ったんだよね。


 妹は女の子だから問題無いだろうけど、日本語が出来ないからね。

 そんな状況になっったら、なんか考えるよ・・打開策は有るだろうから。

 3ヶ月も暮らせば言葉は覚えるよね、特に若い子は早いから。

 2人が言ったように、ここにいたら難しいと思う。

 両親もそう言ってると聞いた・・その事だけシオンが電話してきたから。

 妹はまだ軽度みたいだから、タイミング的には今しかないだろうね。


 実は俺はワクワクしてるんだ、誰にも言ってないけど会うのが楽しみなんだよ。

 先日マリが東京PGの回廊を夏バージョンにチェンジに来て、俺にニヤで言った。

 《最高硬度・・ブラックダイヤ・・楽しみだね》・・こう言ったんだ。

 同調を入れながら、居住区で無意識に出た言葉だった。

 それがどういう意味なのか、2人には説明の必要は無いよね。

 次の日にサムの妹の話をシオンに電話で聞いて、それからワクワクが止まらない。

 最高硬度とマリが表現した、ブラックダイヤに会えるからね。

 俺は俺のやり方を貫くよ、それはどんな国でも変わらないし・・変えられない。

 最高硬度のブラックダイヤなら研磨する、どの方向から見ても輝くように。

 ブリリアントカットのブラックダイヤに仕上げる・・東京という場所がね』


私はワクワク感を笑顔に出して強く伝えた、2人は驚きながら聞いていた。


東京物語の最強の挑戦者、その登場シーンをこのタイミングで書ける。

私はその事に不思議な感覚を覚えている、【黒豹】と言われ愛された女との出会いだから。


それを現代の私に再認識させた、ロンドンの映像は続いていく。

マリとリンが引き出してくれた、サムと私の記憶の映像をユリアと見ていた。


ゴールデンウィーク真っ只中の、2012年の東京で。

私はヒトミとサムの存在を感じながら、Jとリリーの笑顔を見ていた。


話を30数年戻そう、緊張感の和らいだあの場所に。

朝日を浴びながらジャングルを歩く、素敵な女性達の元に。


私はシノに透明の扉の前で見送られ、シノ&ヒトミに手を振って銀の扉から出た。

出た場所にセリカとシズカはニヤニヤ顔で、ミホが無表情で私を見ていた。


「お帰り、エース・・楽しんだね?」とセリカが強烈な流星ニヤで言った。


『うん・・楽しかった』とニヤで返した。


ミホが私の側に歩いてきて、私の首に両手を回した。

私は嬉しくて、ミホを笑顔で見て優しく抱き上げた。

ミホは瞳を閉じていた、私はミホの疲労を感じていた。


『ミホ・・怖かったね・・良く頑張ったね・・最後まで自分を信じたね』と優しく囁いた。


ミホは眠ってるように静かだった、女性達が笑顔で帰ってきた。

全員が集合して、居住区まで戻った。


私が眠っているミホを抱いていたので、誰も私に突っ込まなかった。

私は居住区で映像を切り、リアルでも眠っているミホを抱いてTVルームを目指した。

哲夫と沙紀とモモカに、4人娘がおやつを食べると言ってついて来た。


私がTVルームのマダムに子供達を頼み、恐る恐るフロアーに戻った。

当然のように、女性達のニヤニヤ光線を浴びた。 

私がウルで対抗していると、1本の電話で救われた。


マダムが電話だと北斗に伝えに来て、北斗は受付の電話をとった。

電話の相手は沙紀の母親だった、病院から北斗に電話してきたのだ。

沙紀の母親は沙紀のお迎えの前に、由美子に会いに病室を訪ねていた。


沙紀の母親が由美子の左手を握っていると、由美子の両目が突然開いたのだ。

凍結し号泣する祖母に左手を握らせて、沙紀の母親は公衆電話に走った。

そして北斗に連絡する為に、PGに電話をかけてきた。


北斗は受話器を取って凍結していた、その異変を全員が気づいて静寂が支配していた。

崩れ落ちるように屈む北斗を見て、私は慌てて駆け寄った。


「みんな・・本当にありがとう・・由美子が・・瞳を開いたらしい」と北斗は叫んで号泣した。


私は駆け寄ったユリさんに受話器を任せて、北斗を抱き上げて女性達の元に歩いた。


「知ってたね!・・経験者達は全員知ってたんだね?・・最初に来る変化を?」とユリカが泣きながら言って。

「過度な期待をさせない・・その作戦だったのか?」とリアンも号泣しながら強く言葉にした。


『自分の身体感覚に確信を持てれば、最初に瞳を開くんだよ。

 それはカリーの母親の手紙に有ったんだ、でもシズカはそんな部分を削除した。

 和尚と律子に相談して、変化の事はレポートから削除したんだ。

 ヒトミにはそれが望めないから、ヒトミの両親の事を考えたんだろう。

 もちろん今回北斗に渡したレポートにも、その部分は削除されている。

 人の成長は個人個人で違うだろうから、その部分は北斗にも楽しんで欲しい。

 シズカとマリと俺は3人でそう結論を出した、他の経験者はそれを感じていた。


 確かにリアンの言ったように、過度な期待になるから。

 それが由美子の負担になるのを恐れた・・期待に応えようとするからね。

 その部分を恐れたから、削除したままのレポートを北斗に渡した。

 これからも渡すつもりは一切ない、自分の想定を楽しんで欲しい。

 カリーはリンダと羅針盤のステージをクリアーして、鍵を回して言葉を得た。

 その後の最初の変化は・・瞳を開き、目で動くものを追うという行動だった。

 その行為が劇的な変化をもたらす・・それは今後のお楽しみだよ。

 

 ユリさん、北斗を連れて病院に行って下さい・・今日はユリさんだけです。

 ここにいるメンバーには、今から順番を決めさせます・・1日1人限定です。

 もちろん子供達と哲夫まで、それにマリとルミと俺は限定から外します。

 中1トリオも限定に入るからね・・それが次の俺の由美子に対する作戦です。

 由美子に興味という部分を強く自覚させる、今まで精神面が全てだった由美子に。

 これからの由美子は、精神的に感じていた事の確認を始めるんだ。

 個々の女性達に感じていた内面に対し、肉眼で見る外見のイメージはどうなのか。

 それを照らし合わせる・・由美子はそれで望む美も、憧れる美にも気づくだろう。

 だから1日1人が限定・・その代わり1日1時間は触れ合って良いよ。


 いよいよ始まるね、女性達の世紀の一戦・・内面をどう外見で表現出来てるのか。

 試験官は内面を感じる最高峰、由美子だよ・・そして試験結果は沙紀が発表する。

 沙紀が描いてくれる・・由美子が目指す美と、憧れる美を描いてくれる。

 全てを開放して由美子と触れ合って欲しい・・由美子に休息を与えない。

 俺は中1トリオと限界ファイブで、今後の緻密な作戦を作る。

 由美子の身体能力覚醒の補助・・関口医師にも相談して作戦計画を作るからね。


 女性達は春まではこの勝負を楽しんで・・絶対に誤魔化せない相手だよ。

 それも北斗を常に感じていたレベルだ・・北斗の美を感じて成長した感性だ。

 由美子が憧れる美、目指したいと思う美に選ばれたと思わないか?

 選ばれれば何かに気付く、自分に対する賛辞として心に残るだろう。

 もちろん五天女も参戦するが、有利だとは言えないと思うよ。

 ユリさんやミチルだって、母親の北斗に近い歳だしね・・だから条件は変わらない。

 ユリカだってリアンだって・・由美子には遠い存在だろうからね。

 若手の方が有利かも知れないよ・・だから限界ファイブに負けるなよ。

 夜街の女性が、この自己満足の称号を得ると期待する・・以上』


私は号泣する女性達に、ニヤニヤで強く言った。


「その勝負・・貰う・・私が絶対に自己称号を勝ち取る」と言ったのは、私の想定通り美由紀だった。

「美由紀・・やめとけ・・この自己称号だけは、私が取る」とマキがニヤで返して。

「何言ってるの・・ヨーコ伝説の幕開けなのに」とヨーコが清楚ニヤで返した。


「まぁまぁ・・夜街のマキとヨーコ、久美子に敗北するなよ~」と久美子が3人にニヤで言った。


「やばい・・この勝負なら圧倒的にやばい相手がいた・・久美子がいるんだ!」とカスミが最強不敵で言った。

「まったく、困ったこった・・でも、当然銀河で両方取るよ」とリョウがニヤで言って。

「もちろんよ・・19歳トリオには絶対に負けれないよ、最強の相手だけど」とホノカがニヤで言った。


「か~・・カレンとシオンとセリカか!・・考えるだけで強敵だよ」とリリーが笑顔で言って。

「余裕あるね~・・リリー」とユリカがニヤで突っ込んだ。


「若手の最大の相手はユリカだよ・・28歳でもあの容姿、由美子がそれをどう捉えるのかね~」とリアンがニヤで言って。

「完璧な目指したい美ですよね・・でも、私が取る」と蘭が満開ニヤで言って。

「いや・・私が取る・・それが感謝の証だから」とナギサが華やかニヤで言った。


私は盛り上がるフロアーを離れて、北斗を抱いてユリさんと歩いていた。


「エース・・本当にありがとな」と北斗が私にしがみつき耳元で言った。


『お礼はいらないよ、北斗・・俺も嬉しかったよ』と囁いて返して、裏扉前で北斗を降ろした。


私はユリさんからマリアを受け取り、2人を笑顔で見送った。


「きんりゅうがね・・だいちにはないって」とマリアが言った。


私は驚いてマリアを見た、天使全開で充電してくれた。

私はそれ以上は聞かなかった、ただマリアの不思議な力に包まれていた。


ミホ沙紀と哲夫に4人娘が、TVルームでおやつを食べていた。

私はマリアをエミにあずけて、異様な盛り上がりのフロアーに向かった。


女性達はワイワイと盛り上がっていて、私は気配を消して幸子の横に座った。


「エース・・ありがとう・・楽しかったし、嬉しかったよ」と幸子が笑顔で言った。


『うん・・俺も嬉しかったよ・・幸子、次は中心的な存在だと期待してるよ』と笑顔で返した。


「任せなさい・・私もそれを切望してる」と幸子は嬉しそうな笑顔で返してきた。


「エース・・1つだけ白状して、コーリーの存在を知っていたの?」とユリカが爽やかニヤで言った。


私がウルを出して答えようとすると、横からマリの声がした。


「知ってるも何も・・小僧はコーリーの孫かと思えるほど、仲良しですよ~」とマリが強烈なニヤで言った。


「マリも知ってたの!」と蘭が驚いて聞いた。


「存在はオババから聞いてました・・でも、会ったのは初めてです」とマリが笑顔で返した。


「ほほ~・・それで孫としての、コーリー分析は?」とリアンがニヤで私に言った。


『実は俺はオババよりもコーリーと親しい、それは認めるよ。

 ヒトミの時には、中立の場所での勝負はあまりなかったからね。

 マリはオババの館に入ったから、オババの孫みたいに親しいよね。

 今はモモカがオババの館に誘われてるし、次はマリアだろうね。

 オババは中立の審判だから、理解できない幼い子にしか話せない。

 そういう立場だと思ってる・・今までの経験から、そう確信してるよ。


 俺がコーリー婆さんと初めて会ったのは、ヒトミに映写機を貰った次の日。

 その日ヒトミに会いに行ったら、ヒトミは眠ってたんだ。

 俺はその日から自分の中の映写機に挑戦した、ヒトミの塔を目指したんだ。

 ヒトミの手を握って、自分の映写機を出して・・ヒトミとの同調に挑戦した。

 俺もまだまだの時期で、中々ヒトミを探せなかったんだ。

 ヒトミから聞いていた、何の境も無い純白の世界を出して探していた。


 どうにも見つからないで、純白の世界に座って考えていた。

 そうしたら目の前に黒いドアが現れたんだ、それが開いて魔女が出てきた。

 俺は驚いて魔女を見ていた、怖いという感覚は持ってなかったよ。

 魔女はニヤニヤの唇で俺の前に座って、自分はコーリーだと言ったんだ。

 そこからの部分は、はっきりと覚えてるよ・・俺には大切な経験だったから。

 この時の経験が・・ミホの時にも、ユリカの羊水の揺り篭の時にも役立った。

 だから俺はこの時の事を、記憶の中に強く留める事が出来てると思う。

 コーリーとの会話はこうだった、俺は問答みたいで楽しかったんだ。


 俺・・・・・コーリーはヒトミの世界の住人なの?

 コーリー・・そうじゃないよ、ヒトミだけじゃないからね。

 俺・・・・・自由に飛べるの!・・それが出来るの?

 コーリー・・私は今の人間が作ったのではないからね。

 俺・・・・・今の人間じゃない・・昔の人なの?・・未来の人なの?

 コーリー・・大昔の人間だよ・・お前が想像も出来ないほどのね。

 俺・・・・・そうなんだ~・・それでヒントを教えてくれるの?

 コーリー・・何のヒントが欲しいんだい?

 俺・・・・・ヒトミが眠ってるから、ヒトミの世界の扉が分からないんだよ。

 コーリー・・それは難しいよね・・起きるまで待てば良いだろう。

 俺・・・・・ヒトミが寝てる時にも、探したいと思ったんだよ。

 コーリー・・なぜだい?

 

 俺・・・・・ヒトミは怖がらないけど、本当は怖い事もあるんだと思って。

       コーリーを見た時だって、ヒトミは怖がるかも。

       俺はヒトミの世界なら、何も怖い事は無いよ。

       知りたいだけなんだ・・だから1人でも調べてみたい。

       コーリーは魔女でしょ?・・なら知ってるよね。

       ヒントで良いんだよ、ヒトミの部屋・・塔を探すヒント。

       それを出して欲しいんだ、今は何も方法が浮かばないから。


 俺は正直に言葉にした、必死だったと思う・・打開策の欠片も探せなくて。

 コーリーは笑顔で聞いていた、今日と同じ服を着た魔女だった。

 顔の輪郭の確かな線も分からなくて、俺はコーリー瞳の光を見ていた。

 色の無い唇と怖いような光を出す瞳は、しっかりと確認できていた。

 その色の無い唇が笑っていて、俺はその笑顔で知ってると思ったんだ。


 コーリー・・お前は探そうとしてる、ヒトミを感じようとね。

 俺・・・・・そうしないと出来ないでしょ?

 コーリー・・それはヒトミが起きてる時、お前を探してる時ならね。

 俺・・・・・そっか!・・相手も探してるから、感じる事が出来るんだ。

 コーリー・・お前の意識が探すという感覚だからね。

 俺・・・・・探すんじゃないんだ・・じゃあ何だろう?

 コーリー・・探すってのは、平面的な感じだろ・・リアルな世界の。

 俺・・・・・平面的?

 コーリー・・平べったい世界だよ・・学校の校庭とか、体育館のような。

 俺・・・・・うん、そうだよ・・段階の時と同じ感じ、歩いて探す感じかな。

 コーリー・・相手の意識が自分に向いてない時、その時は深みに隠れてる。

 俺・・・・・深さなんだ!・・ありがとう、コーリー。


 俺は打開策を確信できて、笑顔で礼を言った。

 コーリーも笑顔で、最後にこう教えてくれた。


 コーリー・・忘れるなよ、相手の心が自分に向いてない時は・・深さに潜む。

       お前の知りたいという気持ちが純粋なら、相手の隠れ場所を探せる。

       探そうと思うな・・潜ろうと思うんだ、知りたいとだけ思うんだよ。

       探すとは答えを求める心なんだ、それは純粋じゃない気持ちも入る。

       私の最初のヒントは出したよ、次はもっと難しい場面で会おう。


 コーリーはそう言って、黒い扉から出て行った。

 コーリーが出た瞬間に扉が消えて、俺は自分のやり方で深さを感じようとした。

 その事自体は表現できない、ただ探すという気持ちは自分の中で無くなった。

 これ以降・・ヒトミが左手に入るまでに、俺は何度もコーリーに会った。

 その度にコーリーは大切なヒントをくれた、俺にとっては使者の魔女なんだ。

 コーリーの存在意味は分からない・・ただ何も無いとは思えない。

 俺としてはそんなとこかな、まぁ絶対に嫌いじゃないよ・・仲良しだからね』


私はニヤで話を締めた、女性達は笑顔で聞いていた。


「底なし沼から出た、赤い線の女・・あれはコーリーだったよな?」とマキが真顔で言った、女性達が驚いてマキを見た。


『そうだろうね・・俺もそう思ったよ』とニヤで返した。


「しかしコーリーは奴に雇われていたんだろ?・・なぜマキにヒントを出した」と大ママがニヤで言った。


『奴が雇ったのは、最後の勝負の場面だけだろうね・・由美子の帰還を妨害する役だから、コーリーは引き受けたと思うよ』と笑顔で返した。


「ヒントが有ったの!・・あのコーリーの行動の中に?」とユリカが驚いて言った。


『有ったと思うよ、それは個人個人が感じる事だと思う。

 ミホは絶対に感じてるよ、次の勝負の時の大切なヒントだと思ってね。

 俺もどんなヒントなのか分からない、正直な話をすると・・次の事は謎なんだ。

 誰も経験したことの無い、カリーすら届いていない世界の話だから。

 全ての人にとっての未踏の舞台だよ・・でも今回は収穫が多かった。

 美由紀が絶望の淵を測って、絶対的な使者・・竜に出会った。

 次の勝負はその場所から始まる、全員が同じ経験値で想定できる。

 俺は本当に楽しみだよ・・多分、由美子が1番楽しみにしてるだろうね』


私はニヤで言った、女性達のニヤに囲まれていた。


女性達はワイワイと順番を決めて、日曜なので仲の良いグループで夕食に出かけた。

私は律子と和尚と哲夫とモモカを見送って、ユリカとリアンと蘭とナギサと5人で食事をした。

リアンが緊張感から開放されたのか、ご機嫌で酔いが早かった。


食事が終わり、私は3人と笑顔で手を振って別れて、蘭と帰って添い寝して眠った。

翌日、学校が終わり美由紀と下校して、ダッシュで準備して病院に向かった。

自分の心が急いているのを楽しんで、私はチャリを漕いで病院に向かっていた。


由美子の病室の扉を開ける時に緊張していた、私は深く深呼吸をして入った。

由美子にゆっくりと近づくと、由美子の可愛い黒目が私の方を見た。

私はその場で立ち止まり、由美子を笑顔で見ていた。


そして駆け寄って由美子の左手を握った、強い温度が感謝を示していた。


『沙紀は本当に凄いね・・見えてたんだね、由美子の瞳を開いた顔を』と私は言葉と温度で伝えた、興奮を抑える事が出来なかった。


《うん・・ママに鏡見せてもらって、嬉しかったよ》と由美子が返してきた。


『そうだね・・由美子、焦るなよ・・徐々に出来るようになるからね・・赤ちゃんだって、1年かかるんだから』と私は優しく伝えた。


《了解です・・焦らずに頑張るね》と由美子が返してきた。


『よし・・約束守ったら、俺がマリを連れてくるよ・・ママとお爺ちゃんとお婆ちゃんで、またフーに会いに行こうね』と笑顔で伝えた。


《うん、絶対に守るよ・・約束だよ、小僧ちゃん》と由美子が返してきた、私は笑顔で頷いた。


その時、病院の扉が静かに開いた、私は誰が入って来たのかすぐに気付いた。

女性達は最初に由美子に会いに行くのを、全員一致で指名していた。

ユリカが私に近づいて来るのを、私は背中で揺り篭を感じながら待っていた。


《ユリカちゃん、泣いてる・・喜んでくれてる、由美子も嬉しいよ》と由美子が言った。


『そうだよ、由美子・・ユリカは嬉しくて泣いてるんだよ』と私は笑顔で返した。


ユリカが私の横に立ち、由美子の顔を覗き込んで泣いていた。

私はユリカを座らせて、ユリカに左手を握らせた。


私は祖母の感謝の言葉を聞きながら、ユリカの別世界の雰囲気を見ていた。

外は冷たい風の吹く1月の冬空で、陽は西に傾こうとしていた。


女性達は由美子に会えるのを指折り数えながら、楽しんで仕事をしていた。

私はマリーレインに四季を投入した、本当に見事な四季のコンビネーションだった。


四季の影響でマリーの女性達の中に、自分を誤魔化している事を自覚した者が何人も出た。

そして私は間髪入れずに、ベストメンバーの打順で投入した。

ユリさんとユリカはさすがだったが、マリーの女性達に1番影響を与えたのはミコトだったであろう。


ミコトはマリーの女性の中から、現役No1を含む5人のエース候補を探し出した。

その5人を競わせる方法を提案してくれ、加々見もフネもそれに賛同した。


私はミコトの提案を受けて、その提案をリリーに託した。

リリーは5人を煽り続けて、2月中旬には良い緊張感を店に作り出してみせた。


私はコンパニオン派遣の仕事に取り組み、1月の月末にプロ野球球団のキャンプ前の優勝報告会に16人を派遣した。

五天女は大ママがミコトに振ったので、千鶴も自ら参加して完璧な対応をみせた。

PGには有名な選手が顔を出して、客の視線も選手に向けられていた。


この当時の野球選手は私生活でも豪快な人が多かった、店を貸切で豪遊するのも珍しくなかったのだ。

球団も選手の私生活の管理をあまりしておらず、今よりずっと自由な空気が漂っていた。

キャンプの練習休みの前夜には、夜町で体の大きな男をよく目にしたものだった。


この頃の宮崎の夜街には、球界のスターの豪遊伝説も、ほろ苦い恋の物語も多数存在した。

今現在では皆無に近い話である、今はJリーグのサッカー選手が伝説を作っている。

私が知りえる野球界最後の豪傑は、私と同世代の【番長伝説】で終わってしまった。


ストイックだと言われるアスリートが、酔ってウルを出す仕草に親近感を覚えた。

ゴルフのトーナメントの時に来る、一流プロゴルファーの豪傑達も見てて楽しかった。


プロのアスリートと言われる者は、どこか【普通】や【常識】の外側にいた。

醸し出す雰囲気自体が違った、それは遠くからでも後ろからでも感じた。

私が最も異質性を感じたのは、やはり圧倒的に長嶋茂雄だった。

その抱えるオーラが別世界だった、只者ではないと遠くから感じていた。


私は順調に仕事と学校をこなして、激動の中1時代の終わりを迎えようとしていた。

暖かさが期待を包み込み運んでくる、春物語が幕を上げようとしていた。


春を呼び込むのは、やはり春風の少女・・モモカの問いかけ返しが幕開けのブザー。

緩んだ気持ちに釘を刺す、強い春一番が迫っていた。


満開の桜の中に、最新型が潜んでいた。


バブルを予感させる女、不純物に対し破壊を強く提示する心。


不純物を嫌い除去し続けていた天然素材、その柔らかさが無加工の証。


溶かせばどんな形にも容易に変化する、それが純度の証明。


純粋からは遠い存在、しかし不純物は存在しない。


激流に逆らい現れる姿・・魅惑の春物語がスタートする・・。












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