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      【冬物語第六章・・無限のリング⑬】 

空港建設反対の赤い文字の看板が並ぶ国道を、空港に向けて走っていた。

助手席に乗る友人は、真っ白い歯を見せて笑っていた。


「反対するよね、空港はうるさいからね・・イギリスでも反対運動があったよ」とサムは真顔で外を見ながら言った。

『そうだろうね・・その他にも色々と、反対理由はあるんだろうけど』と私はその話題に触れずに空港の敷地内に入った。


屋根のある有料駐車場に車を止めて、ターミナルビルに向けて2人で歩いていた。


「ビザ申請、早かったな」とサムが二ヤで言った。

『観光ビザだからね・・取得方法は聞くなよ』と二ヤで返した。


搭乗手続きをカウンターで、窓口の女性に2度も荷物はこれだけかと聞かれた。

私は二ヤで2度、それだけだと伝えた。


サムと空港のカフェで朝食を食べて、飛行機に乗り込んだ。

私は飛行機に乗ると眠るという癖がついていて、離陸したらすぐに眠りに落ちたようだった。

サムは窓際で雲しか見えない、窓の外をずっと見ていた。


私とサムはお互いに、飛行機の中ではシリアスな話題は避けていた。

長いフライトを終えて、イギリス特有の曇り空が覆う午後に、ヒースロー空港に到着した。


私は入国の税関でも荷物の少なさが怪しまれ、訛りの強い英語で質問をまくし立てられた。

私は全く英語が分からない日本人をウルで演じて、税関職員のオヤジを諦めさせた。


税関を抜けて空港のロビーに入ると、サムがニヤニヤで待っていた。


「だから言っただろ、荷物が少ないって」とサムが二ヤ継続で言った。

『なぜ少ない事を怪しむんだ、違和感なのか?・・奴も姿無き男に挑戦してるのか?』と私はウルで返した。


「運び屋と思われたのさ・・違法者は、常に矛盾の中に隠すんだから」とサムが二ヤで言って、2人で空港を後にした。


「鉄道・タクシー・バス・レンタカーと有るけど・・何が良い?」とサムは笑顔で聞いた。

『レンタカーなら、お前は便利なのか?』と二ヤで返した。


「そりゃ~便利だよ」とサムが笑顔で返してきた。

『ならそれ・・ドイツ車にしろよ』と二ヤで返した。


「高級ですぜ、旦那」とサムが笑顔で返してきた。

『ヨーロッパで他のどの車に乗るんだ?・・フェラーリかランボルギーニとでも言うのか?』と私も二ヤで返した。


「ミニとか・・律子スペシャルの」とサムがウルで言った。

『お前が首を曲げて運転するならね』と私は二ヤで返して、レンタカーの看板を見ながら歩いた。


サムがレンタカーの手続きをして、私が支払った。

古い紺のBMWの助手席に乗り込んで、ウキウキ顔のサムを見た。


『ご機嫌だな~・・事故るなよ』と私が二ヤで言って。

「了解しました~・・発車しま~す」とサムが笑顔で言って出発した。


「エース・・ロンドンは初めてだよな?」とサムが笑顔で言った。

『うん・・噂に聞いた、重い空だな』と私は空を見上げて言った。


「軽い方さ・・あれなら雨は降らないよ・・解決して時間有ったら、どこに行きたい?」とサムが言った。

『ストーン・ヘンジ・・そこしかない・・俺は宮殿も教会にも興味が無い』と私は二ヤで返した。


「そうだよな・・とりあえず、ビッグベンの前を通るよ」とサムが笑顔で言った、私は二ヤでメモを渡した。


「何だよ?」とサムはメモ受け取って開いた。


『そのホテルに行ってくれ、明日の10時に迎えに来いよ。

 それまでに自分の結論を出しとけ・・俺は古い友人に会う。

 明日、お前の可愛い妹に会うよ・・楽しみにしてるよ』


私は二ヤで言った、サムは真顔で前を見ていた。


「了解・・エース・・俺は」とまでサムが言った時に。

『サム・・それ以上言うなよ、それは2人の関係を愚弄する行為だぞ』とシズカの決め台詞で返した。


サムは強く頷いて、前を見て運転していた。

サムは私をホテルの前で降ろして、私は笑顔で手を振って見送った。


「ここから、エースの映像になるんだ・・凝ってるね~」と現在のユリアが笑顔で言った。

『この日のサムと妹の再会は、プライベートな事だからだね』とオヤジの私は笑顔で返した。


私は古い建物の可愛い感じのホテルに入り、フロントで手続きをしていた。

鍵を受け取り振り向くと、リリーが二ヤで立っていた。


29歳のリリーは美しく、周りの男達の視線を集めていた。


「久しぶりだね、エース」と瞳のリングを回転させて笑顔で言った。

『熟れたね、リリー・・あの時、押し倒しとけば良かったよ』と二ヤで返した。


「意気地なし・・お腹空いた、私が」と二ヤで言って腕を組んできた。

私はウルで頷いて、鍵をそのままフロントに預けた。


「何食べる?」とホテルから出て、腕を組み歩きながらリリーが言った。

『ロンドンぽい物』と私は笑顔で返した。


「OK」とリリーが言って、私を先導するように歩いた。


小さなレストランにリリーが引っ張り、私は興味津々で入った。

リリーに注文を任せて、私は店内の雰囲気を楽しんでいた。


「ロンドンなんだ、味は期待するなよ・・日本人好みじゃないぞ」とリリーが二ヤで言った。

『大丈夫・・何でも食べるから』と私は二ヤで返した。


ローストビーフ以外は、名前の知らない料理を食べて。

私が宮崎の女性たちの近況、リリーがロンドンでの生活を話していた。


店を出てテムズ川の辺まで、腕を組んで散歩した。

セントポール大聖堂の歴史ある建物を遠くに見て、河川沿いの公園のベンチに座った。

ブロンドの3歳位の可愛い少女が、母親に連れられて遊んでいた。

重い空に夕暮れが近づいていた、私はリリーの話を頷きながら笑顔で聞いていた。


『そろそろ・・リリーのお祝いの話がありそうだな?』と私は二ヤで言った。


「うん・・結婚する覚悟を決めたよ、同棲して1年以上経ったし・・早く子供が欲しいしね」とリリーは笑顔で返してきた。


リリーはNYで知り合った科学者と共に、当時はイギリスで暮らしていた。


『リリー・・この国の、階級社会を感じるか?』と私はマキ聞いた話で気になってる部分を聞いた。


「そりゃ~、住めば嫌でも感じるよ・・日本人には理解できない。

 まぁ、日本にも差別的な考えは有るよな、無い国なんて無いよね。

 でもその差別は・・例えば人種とか色の問題とか、宗教とかだよな。

 イギリスは産まれなんだよね、産まれた場所の問題なんだよ。

 階級社会は家柄で決定してる、確かに階級が上がるシステムも有るけど。

 人間の階級って何だよ・・私達はそう思うよな、特にお前は。

 どんな基準でどんな判断で、それが決定されるのか・・理解できない。

 子供には関係が無い話だよな、子供には基本的に階級は無いけどね。

 でも階級社会だから、親の子供への指導もそうなるんだ。

 サムっていう奴が、イギリス人の黒人なら・・アメリカよりも苦労したかもね。

 リンダもマチルダも当然嫌っていたよ、階級社会的な考えをね。

 それが歴史なんだろうけど、私には受け入れられないよ。

 旦那も来年にはアメリカに帰るって言ってる、イングランドは疲れるってね。

 私は美しいけど、美しいけど・・階級社会の壁は感じるよ」


リリーは美しいを2度繰り返して、シリアスさを消そうとしたが、消す事は出来なかった。

私はテムズ川の流れを見ながら、サムと出会ってからの思い出を映像で見ていた。


話を戻そう、女性達の笑顔の中に。

必死で扉を探す、女性達の世界に。


私はオババの館のリビングで、真っ暗なマキの映像を見ていた。

そのモニターの画面が、突然白く発光した。


純白の世界だった、マキとヒノキオが落ちて来なければ、上下すら分からない純白の世界だった。

マキは落とされて体を上げて、ヒノキオを心配げに抱き上げた。


「大丈夫・・ビックリしただけ」とヒノキオが笑顔で言った。

『良かった・・凄い世界だね、床や屋根の境も無い・・何も無い世界だね』とマキは周りを見回して言った。


「由美子の部屋だね」とヒノキオが呟いた、この言葉で探索中の女性がモニターを見た。


「純白の部屋!・・部位の位置!・・羅針盤なんだ」とヨーコが立ち尽くして呟いた。


「そっか・・ヒトミもそうだと言ったよ、右とか左とか無いんだって」とマキが笑顔でヒノキオに返した。


「マキ姉さん、方位って何?」とヒノキオが笑顔で聞いた。

「ん~・・シズカなら、上手く言えるんだろうけど・・要するに、人に場所を教える時の目安だよ」とマキはマキらしい表現で言った。


「ふ~ん・・それが由美子にも必要なんだね」とヒノキオは笑顔で返した。

「必要なのか?・・将来、体を動かす為に?・・必要かな~?」とマキは呟いて考えていた。


マキの声は全員に届いていたが、女性達から伝える事は出来なかった。


「少し止まろう・・マキの状況の想定を、全員で決めとこう・・残る3つも、同じ可能性が強いから」と律子が言って、女性たちがそれぞれモニターの前に集まった。


「まず・・ヒトミの世界を参考にしたいから、ヨーコの感じた事を言って・・1つの答えを見つけたんだよね?」と律子が無線で強く言った。


女性達が涙を流して俯いて立つ、ヨーコを見ていた。


「確かにヒトミは自分の世界を、小僧に純白な世界だと表現しました。

 そして心の塔に、ヒトミの部屋がありました・・そこが純白でした。

 私はヒトミに誘われて、2人でその部屋に入りました。

 ドアを開けて入ると、無限を感じる・・何の仕切りも無い空間でした。

 ヒトミは私にこう言いました・・私は右と左が分からなかった。

 ヨーコ姉さんが覚えててね・・私が右と左がリアルで意識できた時のことを。

 ヒトミは純白の部屋の中で、真剣に私にそう言いました・・そして。


 ベッドに寝て動けない私は、天井が上なんだという体内感覚しか持てなかった。

 確かにイメージの世界は描けてましたが、リアルで理解できないと駄目なんです。

 右と左・・方向的な理解が出来てないと、自分の部位の位置が分からないんです。

 脳からの行動の信号は送れる、それは何度も何度も確認しました。

 でも送ってる信号が、各部位に正確に伝わっているか。

 それに自信が持てなかった、各部位の位置に対する自信が無かったんです。

 体内感覚で自分の部位の位置に自信が持てない、表現し難い感覚です。

 健常者には分からない感覚でしょうけど、自分で確定してないといけないんです。

 でも体を動かせない、純白の世界の私は・・それに自信が持てなかった。

 この話をしたら、小僧が天井の右側に熊さんの絵を張ってくれた。

 そして左側にウサちゃんの絵を張ってくれた、だから右と左がリアルで理解できた。

 そして自分の左手の位置が分かったんです、左右の認識で伝わった。

 位置を理解できないと、伝えてくる言葉も分からないんです。

 位置は言葉でしか伝えてもらえない、だから言葉の示す位置の理解が必要なんです。

 私は右を示す部屋に熊さん、左を示す部屋にウサちゃんを描いたんですよ。

 この事をヨーコ姉さんが覚えてね、その時は小僧は館にいるから。


 ヒトミはそう強く言いました、当然私は館の意味は分からなかった。

 この今の状況ですね・・やはり、ヒトミはマリの影響を受けてましたね。

 私は・・忘れないよ・・そう強く約束しました、ヒトミの笑顔に。

 私は由美子に初めて会った時に、由美子の見る天井を見ました。

 そこには何も無かった、だから小僧に・・由美子の左右の理解は?

 そう聞きました・・それに対する小僧の解答が素敵でした。

 沙紀が絵で教えたから、由美子は斜めまで理解してるよ。

 小僧はサラッとそう言いました、それで私は安心してました。


 今回のルール・・オババは方位を探せと言った、どの方位に何が有るのかと。

 由美子には方位・・東西南北の世界を要求してきた、それだけで凄い。

 すでにリアルで身体的に、ヒトミのレベルを超える要求をしてきた。

 今の由美子の世界に方位は何も無い、方位的には純白な世界なんです。

 だから私達は扉を見つけて、熊さん・ウサちゃんの様な目印を描けば良い。

 由美子の覚えやすい、記憶しやすい・・可愛いイメージを。


 そうすれば・・由美子は自分の位置まで理解できる、飛躍的な変化が始まる。

 そう確信的に私は思いました・・言葉の復活など目指してなかった。

 策略男の今回の策略は、これでした・・奴は今二ヤ二ヤしてる。

 小僧の今回の策略でしたから・・マキは大丈夫、必ず思い出します。

 小僧は私かマキが最初に入ると想定した、由美子の純白の部屋に。

 だから由美子のフォローの話の時にこう言いました、私達2人だけに。


 由美子は上下左右、それに斜めまで感覚的に分かってる。

 それは沙紀が由美子の絵で伝えてくれた、俺はホットしたよ。

 由美子の純白の沢山の部屋の目印を、何にしようかと考えていた。

 ヒトミには熊さんウサちゃん、2つだけで良かったけど。

 由美子の部屋は多そうだから、分かりやすい物を探すのに苦労してたよ。

 そう言ったんです、策略男が・・ニヤニヤ顔で・・悔しいけど。


 小僧は絶対に想定が完成していた、【羅針盤】に対する想定が。

 カリーさんがギリギリの表現で伝えた、【言葉の羅針盤】の想定が。

 その【羅針盤】に込めた想いこそが、方位を探せと言ったオババの言葉。

 カリーさんも同じ試験を出された、あのステージの上で。

 でも1人だからどうにもならなかった、だからどうしても伝えたかった。

 4つの方向を示せと言われた、それを表現したのが【羅針盤】です。

 【言葉】の復活を要求すると現れる、その次の段階の提示。

 カリーさんは言葉の復活のように表現して、次段階のヒントを出した。

 それこそが・・その強いメッセージこそが、【羅針盤】なんです。


 そう確信したのは・・沙紀の言葉の復活です。

 沙紀の言葉の羅針盤は、鍵を回しただけでした・・それで復活した。

 言葉の復活に、【羅針盤】の表現は関係ない・・今そう確信しました。

 絶対に次の挑戦への提示です、それが【羅針盤】に込められた方位。

 銀河が探してるアイテムこそ、言葉の復活の鍵です。

 カリーさんは、自分より高い地点を目指せと言った。

 その世界を見せてと切望した・・それを【羅針盤】で表現した。

 ヒトミを経由して・・由美子に贈った愛のメッセージ。

 4方の方位を暗に示した言葉・・それが【言葉の羅針盤】なんです」


ヨーコは震えながら言葉にした、私のニヤが自然に笑顔に変わっていた。


「ヨーコ・・ありがとう、それが正解だと思うよ。

 カリーは私が気にする事を恐れて、その事実を言わなかった。

 表現も制限されたんだろうね・・私はあの時ルール提示が無かったから。

 羅針盤に乗ってしまった、その反則行為でその場に凍結させられた。

 それはルール違反だとオババが奴に抗議した、真剣だったから重要だった。

 私がいれば・・扉が探せたのに、ルール・・悪意に負けたんだね。

 奴がルール提示をしない・・その悪意に負けたんだよ。

 ありがとう、ヨーコ・・これで私も完全復活出来るよ。

 悪意の意味に気づいたから、2度とそれに対して・・敗北を認めないから」


リンダは笑顔で強く言った、ヨーコも嬉しそうな笑顔になった。

北斗は俯いて泣いていた、女性達は北斗の映像を見せられていた。


「北斗・・泣いてる場合じゃない、まだ何も達成していない・・絶対に探すよ、残り3枚の扉を」と律子が強く言葉にした。


「はい」と女性達の強い言葉が響いた、北斗は涙を拭いて強く頷いた。

 

「マリちゃん・・由美子の段階の時の前の、麻雀のヒント・・あの【白】と【東西南北】は、提示でもあったのですね?」とユリさんが薔薇で微笑んだ。


女性達がハッとして、マリの笑顔を見た。


「心に浮かんだ映像を、現実に表現しました・・私も今、その事に気づきました」とマリが笑顔で返した。


「全てが揃ってる、由美子のこの挑戦には」と北斗が笑顔で言った。

「そうです・・だから扉を探しましょう・・私達も今出来ることを、ベストを尽くして」とリアンが強く言葉にした。


女性達は強く頷いて、集中の中に戻ろうとした時だった。


「しまった~・・二ヤ二ヤされてる~・・策略だった~」とマキがウルで叫んだ。


女性達はその声を聞いて、二ヤを出した。


「策略?」とヒノキオが不思議そうな顔をマキに向けた。


「ヨーコ・・もう説明しただろうね?・・そう信じるよ。

 ヒノキオ・・この白い世界はね、何か目印がいるんだよ。

 由美子が覚えやすい、可愛い感じの絵が良いんだよね。

 それを描いてやれば良いんだよ・・この白い世界にね。

 でも、描くって・・どうやれば良いんだろう?」


マキは笑顔で言って、最後にウルを出した。


「目を閉じて、イメージで描くんでしょう?・・沙紀姫様はそうするよ、他の人のイメージの中でも」とヒノキオが笑顔で言った。


「なるほどね~・・ありがとう、ヒノキオ」と笑顔で返して、再びウルを出した。


「今度は何のウル?・・小僧みたいだね」とヒノキオが笑顔で言った、女性達が笑っていた。


「私ね・・絵が苦手なの・・何も見ずに犬や猫の絵を描くと、宇宙人って言われるのよ・・どうしよう、参考になる絵が無いのに」とマキはウルで返した。


女性達はその言葉で、爆笑モードに入った。


「笑い事じゃないよ、マキの絵は・・絶対に由美子には理解できない」と恭子が二ヤで言って。

「どうしよう・・西のイメージが~」とヨーコが返して、爆笑を煽っていた。


「それでか・・来る時に、これを使ってって・・絵を貰ったんだ」とヒノキオが言って、胸のポケットから折りたたまれた白い紙を出した。


マキは嬉しそうな笑顔で受け取って、絵を見て凍結した。


「ヒノキオ・・この絵は沙紀じゃないよね?・・誰に貰ったの?」とマキは真顔で聞いた。


「汽車に乗る前に、ミロがくれたよ」とヒノキオが笑顔で返した。


「ミロ・・良くぞ乗り切った、砂時計の悪意を・・良くぞこの才能を守り抜いたね」とマキは白い世界に向かって笑顔で言って。


「何とか転写してみるよ、ミロ・・確かにこれが、由美子の中の西の世界だね」とマキは言って瞳を閉じた。


マキの目の前には、一気に絵が描かれた。

それは圧倒的な迫力の聖母大聖堂だった、聖母大聖堂の奥に夕日が沈んで行く場面だった。

絵画的な表現が強い、下から見上げた感じの大聖堂だった。


女性達は息を呑み、その映し出された絵を見ていた。

沙紀は感動の笑顔で、由美子は喜びの笑顔で見ていた。


「由美子・・あれは何だい?」とオババが笑顔で聞いた。


「アントワープの聖母大聖堂です・・西です」と由美子が笑顔で答えた。


「マキ・・西の方位、クリアー」とオババが言った、この言葉はマキにもヒノキオにも聞こえたようだった。

マキはヒノキオと笑顔で抱き合った、女性達も笑顔で拍手した。


「まさか・・由美子が絵を見て答えられないと、失格なの?」とカレンがウルで言った。


「当然そうだよ・・このステージは、今はそっちの言葉は伝わってないからね・・ウルのカレン」とオババが二ヤで返した、カレンはウルで頷いた。


何人もの女性が自信が無いのか、ウルを出していた時だった。


「東の扉、発見しました~」とシズカの声が無線から響いた。


女性達が慌ててモニターを見た、シズカとマサル君は井戸の中で二ヤを出していた。

井戸の歯車の横の石壁に、青い扉が現れていた。

青い扉に【東】という文字が掘り込まれていて、水の中に沈んでいた。


「ルールは、人間は1人しか入れないので・・絵なので、今からマサルを入らせます・・あと2枚です」とシズカが二ヤで言った。


マサル君はシズカに二ヤで頷いて扉を開けて入って、暗い世界に落とされた。


「シズカ・・探す為の想定を確立してるでしょ?」と恭子がシズカの顔を見ながら二ヤで言った。


「確立はしてないけど・・絶対に重要な場所に1枚有る、そう思った。

 奴は応用の利かない回路なんだから、同じ方法で隠すと思った。

 4枚の扉・・4という数字なら、人質解放の鍵と同じ。

 ならば・・2枚は簡単な場所に隠し、残り2枚は難易度を上げる。

 だから神殿の簡単な場所に有る、そう思った根拠は奴の作った光の壁。

 あの壁は境界線の壁と違った、奴が製作した光の壁だった。

 人間では絶対に地上から抜ける事は出来ない、それは無理だったと思う。

 私は水中で抜けたけど、必死だった・・水中でも困難だった。

 でも・・シンデルラは認識できなかった、自然に超えたんだよ。


 あの壁は神殿内でないと消す事は出来なかった、奴は神殿に誰も残らせない。

 そう設定して・・あの光の壁の発生装置を、天文台の屋根に装着した。

 その装置を・・違和感を沙紀が感じて、その場所を矢印で示していた。

 奴はあのタイミングを狙った、あの光の壁は3人目の開放に合わせた。

 3人目がマリだったから、それに無意識に気付いて駆け出した。

 走らなかったら、すぐに門を目指さなかったら・・神殿の外側に隔離された。

 光の壁を発生させるのに、時間がかかった・・だからマリもミホも抜けた。

 あの時間がかかる設定こそ罠だった、神殿から逃げ出すように仕向けた。

 私とマキは水路にいたから、どうにもならずに残った・・ラッキーだった。


 奴の設定は3人目が開放されれば、神殿に誰も残さないという設定。

 だから神殿に方位の扉は有る、それも簡単な場所に隠したと思った。

 私とマサルの想定の根拠はそこ、あの作為的な光の壁がヒントだった。

 だから私とマサルは、迷い無く水路に入った・・神殿の井戸にね。

 第一の門の中か美由紀の場所の、難解な場所に2枚の扉が隠されてる。

 私の想定はこれです・・違和感を探して下さい、無意味な場所を。

 門の中で・・今までに何の意味も持たない場所、近くに強い意味があった。

 そんな場所だと思います・・奴は応用が利かない、あの赤い塔と同じ作戦。

 強く認識させられる場所の近く・・そこに難解な扉の場所があります」


シズカは笑顔で言った、女性達が笑顔で頷いた。


「全員集中・・自分で感じて、コンビで話して・・そしてその場所に向かって・・夜空が少し明るくなりました・・自分の感性に賭けて」とユリさんが強く言った。


女性達は少し明るくなった夜空を見上げ、瞳を閉じて自分の違和感を探していた。

そしてコンビで話し合い、それぞれの想定の場所に駆け出した。


「痛くないな~・・さてと・・東は当然これだね・・アントワープの反対側・・日の昇る場所なら」とマサル君が純白の部屋で二ヤで言った。


マサル君は瞳を閉じて、由美子に対する【東】のイメージを描いた。


純白の世界に由美子の天文台が現れて、その後方から太陽が昇ってくる場面だった。

マサル君は目を開けて天文台を見て、納得するような笑顔を出した。


「由美子・・あれが東だよ、西の反対側・・あれは何だい?」とオババが優しく聞いた。


「天文台です・・太陽が昇る天文台が、太陽の沈む聖母大聖堂の反対・・西の反対の東です」と由美子が笑顔で答えた。


「東の扉・・マサル・・クリアー」とオババが笑顔で言った。


マサル君は笑顔で頷いて、天文台の絵を見ていた。


女性達は自分の想定の場所に走りながら、笑顔で拍手した。


美由紀は高原を探して、虹の池に来ていた。


ロッキーチックとホリーとラシカルに、新しい扉は無いかと聞いていた。


3匹は知らないと答え、一緒に探すと笑顔で言った。


美由紀は喜びの笑顔を出して、3匹を交互に抱いていた。


私は映像の夜空を見ていた、朝を感じさせる星空を・・。











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