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      【冬物語第六章・・無限のリング⑫】 

少しの不安を映した瞳が、大きなバッグに荷物を積めていた。

準備が一段落したのか、古いアルバムを出して開いていた。


サムは嬉しそうな笑顔で、幼い自分と妹の写る写真を見ていた。

ユリアも笑顔になっていて、私もサムの笑顔を見ていた。


それから早送りのように時が流れて、早朝の新宿駅に映像に変わった。

サムが視線で追う私は、小さな銀のジュラルミンケースだけを持って、東口からアルタ方向に歩いていた。

21歳の私はニヤニヤ顔で、白に近い薄いミルク色のサマースーツを着て、その当時流行していたパナマ帽を被っていた。


「出ました・・怪しさ満点、あの当時の新宿であれじゃ・・危険な売人にしか見えないよ~」とユリアが言って笑って。

『若気の至りです』と現代のオヤジの私はウルで返した。


私はサムとの待ち合わせだけはアバウトな場所で良かった、長身の黒人はすぐに発見できるのだ。

携帯電話が無い時代である、待ち合わせの場所の重要性は現代と大きく異なるのだ。

相手が遅れて現れない時には、段々と不安になっていた。


仕事や男同士でもそうなのだから、付き合い始めの異性との待ち合わせは、期待と不安がミックスされていた。

だが待ち時間という【時】は大切な【間】だったと思う、その間ずっと相手の事を想っているのだから。

冷静に分析も出来たし、自分の本心の再確認も出来た気がする。


私自身は蘭と13歳で出会って、私が先乗りで東京に出た1時期を除けば、ずっと一緒にいた。

だからそういう想いはあまり体験しなかったが、美由紀や沙織や秀美が、待ち合わせの心情を話してくれた。


その事はいつか書きます、現代の携帯に頼る私達には、大切な過去からのメッセージだから。


私は消えているアルタ画面を見ながら右に方向を変えた場所で、サムの存在にはすぐに気づいたようだった。

私はサムにスーツを着て来いと言っていたので、サムはPGの正装である黒いスーツを着ていた。

サムの視線の映像は私を見つけて、その少ない荷物に少しの驚きを出しながら手を振った。


「エース・・熱海に行くんじゃないぞ」とサムは二ヤで言った。

『たいして変わらんだろ・・ロンドンなら』と私は二ヤで返して、駅を離れて2丁目方向に歩き出した。


「おい、待ってくれよ~・・バスに乗るんじゃないのか?」とサムが慌てて私を追いかけた。

『バスなんかに乗ってられるかよ、短い旅で』と私は振り向いて二ヤで返した。


サムは私に追いついて腕を組んで、ニヤニヤで私を見た。


『何だよ、気持ち悪い』と私は二ヤで返した。

「2丁目じゃないから大丈夫、でも俺は日本人のゲイに好かれるよ・・ビッグマグナムを持ってるからね」とサムはおどけた笑顔で返してきた。


新宿2丁目は今でもそうだが、その嗜好を持つ人間達の社交場だった。


「リンダスペシャルが拝めるかな?」とサムは探るような目で私を見た。

『見たいのか?・・シズカが新たに手を入れて・・名前の通りの、ジャジャ馬になったよ』と私はウルで返して、大きなビルの駐車場に入った。


駐車場の警備員のオヤジと二ヤで挨拶をして、契約金を支払ってエレベーターの乗った。

サムはワクワク笑顔を継続しながら、英語の歌を口ずさんでいた。


『なぁサム・・ライク・ア・ヴァージンって、どんな感じで取れば良いんだよ?』とサムに二ヤで聞いた。

「マドンナですね旦那、旦那もお好きですね~」と風俗の呼び込み口調で返してきた。


『うん・・ブロンドで良い子いる?』と私はサムに二ヤで乗ってやった。

「いますぜ~旦那・・旦那の縁遠い、豊満爆弾が」と二ヤで返してきた。


『蘭に報告・・サム、多分解雇だよ・・残念だよ』と二ヤで返した。

「それだけはご勘弁を~・・後生ですから~」とウルウルになったサムとエレベーターを降りた。


降りた正面に妖しく輝く赤い車体が待っていた、私は何気に近づいていた。

サムはエレベーターを降りた所で止まっていた、私は二ヤで振り向いた。


「リンダスペシャル!・・正にスペシャル」とサムが凍結しながら呟いた。

『乗らないのか?・・サム』と私は二ヤで言って左の運転席に乗った。


サムは我に帰り駆け出して、ゆっくりと助手席に乗り込んだ。

私はサムのワクワク笑顔を確認して、エンジンを指導した。


重厚なエンジン音と、大音響のマフラーからの排気音に包まれた。

BOSEのスピーカーから、セクシーなマドンナの声が響いてきた。

サムはそれだけで興奮していて、私は二ヤで発進した。


「翻訳は・・ヴァージンのように・・ヴァージンのような気持ちでって感じかな」とサムは笑顔で言った。

『なら・・少しの反省を込めた、誘うようで挑戦的な歌詞だな?』と私は少し意外に感じて聞いた。


「エースなら、だいたいの歌詞は分かってるよな・・ただ歌の歌詞には、表現的なひねりが有るからね・・マドンナが好きなのか?」とサムが二ヤで言った。


『似てるんだよ・・セクシーじゃない時のマドンナが。

 ショートヘアーで、モノクロ写真のマドンナが。

 髪を両手でかき上げて、挑戦的な瞳で見ているポスターが。

 挑戦しろと誘うような・・あのマドンナがそっくりなんだ。

 別れた当時の・・このジャジャ馬に』


私は青空を見ながら返した、サムは私の顔を見ていた。


「そうか・・やっぱり、素敵な人だったんだな~・・会いたいよ」とサムも空を見ながら呟いた。


『サム・・状況は?・・複雑か?』と私は仕事口調でサムを現実に戻した。


「普通の日本人から見れば、かなり複雑・・まぁエースならそう思わないよ。

 下の妹なんだ、今年18歳・・ハイスクールを途中でリタイヤした。

 状況はかなり深刻らしい・・お袋に聞いたんだけどね。

 俺の生まれて育った場所は、今でもそれに対する誘惑が多いんだ。

 売人も多いしね・・でも中々引っ越す事は出来ないんだよ。

 金銭的な問題だけじゃなくて・・引っ越す先が難しいんだ。

 イギリスだからね・・アメリカなら、ブラックが多いけどね。

 日本とは比べられないけど・・目立つんだよ、それに悪いイメージが有る。

 それはどうしようもない現実だから、簡単には変わらない。

 ブラックには・・今はまだ・・黒い影が付きまとうんだ」


サムは正直に言った、私は黙って聞いていた。


『妹は今、何してるの?』と私は笑顔で返した。


「アルバイトをしながら、イラストの勉強をしてるよ・・ポップなイラストが得意なんだ」とサムも笑顔で返してきた。

『素敵じゃないか・・無駄に東大に行くより』と私は二ヤで返した。


「でもね・・ポップなイラストとは言っても、絵だから・・芸術的な分野だから、勉強するのは難しいよ」とサムは真顔に戻して言った。


『その難しさは・・ブラックだからの部分も大きいのか?』と私はストレートに聞いた。


「卑屈な感じの話になるけど・・まだ開放の扉は、開ききってないよ」とサムは表現を回して言った。


私は早朝の車のいない直線で、アクセルを踏み込んだ。

サムはその加速で笑顔になった、リンダの鼓動がマドンナの歌に重なって響いた。


《マテリアルガール・・・》マドンナはそう歌っていた。


「正にこの車だな・・マテリアルガール・・官能的な曲線美だ」とサムが呟いた。


空港に向けて疾走する赤いジャジャ馬を、呟きが追いかけていた。


話を戻そう、沙紀がたどり着いたステージに。

女性達の感動が覚めやらぬ、あの空間に戻ろう。


オババがエミと由美子を呼んで、2人はゆっくりとステージに歩いていた。

シズカとマキは腕時計の映像を見ながら、天文台の外周を回って調査していた。


「あれだね・・違和感の塊」とマキが屋根を見上げて二ヤで言った。

「さすが沙紀・・矢印で示すとは」とシズカが笑顔で返した。


天文台の銀の屋根に、赤い矢印が描かれていた。

その矢印が示す上部に、赤と緑の光が点滅する装置が付けられていた。

装置から長いアンテナが、空に向かって突き出していた。


「マキ・・やりな、撃ち落とせ」とシズカが二ヤで言った。


マキは二ヤで腰の銃を取って、何発か撃ち込んだ。

装置の点滅が消えると同時に、光の壁が消えた。


マサル君が笑顔でタンボに乗って、天文台の方に飛んできた。


「楽しそうだな、マサル」とシズカが二ヤで言った。


「シズカ!・・無線が入ったね」とアンナの声が無線から響いた。

「はい・・光の壁を消しました」とシズカが笑顔で返した。


「よし・・由美子の帰る準備は、OKみたいだね」と律子が羅針盤を見ながら呟いて。

「さて・・ステージはどんな難問やら」とフネも羅針盤を見ながら呟いた。


マサル乗ったタンボは、シズカとマキの前に降りた。

シズカが少女のような笑顔でタンボの顔に抱きついて、体を離してマキに場所を空けた。

マキがタンボの顔に抱きつこうとすると、タンボが長い鼻をマキの腰に巻きつけた。

そしてマキを持ち上げて背中に乗せて、夜空に舞い上がった。


「まだ何か有るんだね?・・タンボ」とシズカが空を見上げて呟いて。

「第四章の予感がするね」とマサルはシズカに二ヤで言った。


2人で天文台の2階に上がると、天文台の外で美由紀がウルウルで待っていた。


「嫌な予感だね?・・美由紀」とシズカが二ヤで言った。


「油断してました~・・もう羅針盤だけだと・・オババが3人を座らせました~・・何かあります、嫌な予感がします~」と美由紀がウルウル継続で返した。


映像に映る羅針盤のステージの上で、沙紀とエミと由美子はニコニコ笑顔で椅子に座っていた。

シズカとマサルは二ヤで返して、美由紀の見るモニターの前に座った。


「由美子の羅針盤は、まだ迷いを示している・・アイテムが足りない、重要なアイテムを探し出せ」とオババは強く言って、机に座って二ヤを出した。


オババは3人に話しかけ、3人の少女と笑顔で話していた。

不思議な光景だった、最も重要な羅針盤の上だけに緊張感が無かった。


「シズカ・・アイテムを探すのに、どこか違和感があるかい?」と大ママが笑顔で聞いた。


「はい・・沙紀の話したヒトミの話、三角形を探す遊びですね。

 それを聞いた美由紀が、ニヤニヤしてたから追求しました。

 小僧は精度の高い地元の地図を作って、正三角形を探し出した。

 そして中心点を探り当て、何かの想定を確立しました。

 私達の住んでる場所の中心点は、【無の石碑】と呼ばれる場所です。

 誰も何の石碑か分からない、文献も言い伝えも無い石碑です。

 小僧は地図上の正三角形を3つ見つけて、それの中心点を探った。

 そして何らかの【無の石碑】に対する、想定を確立した。

 これは想定の段階ですから、今はまだ美由紀にも話していません。

 ヒトミが沙紀に、今回は三角形を探す遊びだと言った。

 それならば・・中心点にこそ何かがある、私はそう思います。

 小僧が想定を確立したのなら、それは強い記憶でしょうから。

 千春姉さん・・その地図の三角形の、中心点を探して下さい」


シズカはモニターを見ながら、強く言葉にした。

千春がそれを受けて、沙紀の正三角形の3つの角から内側に向かい線を引いた。

北斗とリアンと四季に、ネネと小夜子とシオンとカレンが真剣に見ていた。


3つの線が重なった部分を、女性達が考えていた。


「サルボーグの前線基地より、僅かに後ろって感じだね」とリアンが言って。

「ボスボーグ!・・奴の立ってた場所だ!」とネネが言った。


「奴は動かなかったよね?・・移動はしなかった」とリョウが二ヤで言って。

「そうだ!・・動かなかった・・動けなかったんだ」とカスミが叫んで。

「なぜあの時に感じなかった、私達はまだまだ未熟だ・・行くよ」とホノカが返して駆け出した。


カスミとリョウが、慌ててホノカの後を追った。


「セリカも行って、あの3人だけじゃ心配だから」と律子が二ヤで言った。

「了解です~・・お待ちになって~」とセリカが嬉しそうに流星郡を流しながら、3人の背中を追いかけた。


「やっぱり、パズルだね?」とレイカの声が響いた。

「そうだね~・・なら、三日月が満月になるのかな~?」とミサが笑顔で返した。


2人は地面に座って、木の箱の彫刻の部分を触っていた。

フーが2人の横に座ってシロトラにもたれて、蜂蜜をチュパチュパしていた。


マリとルミが2人の横に屈んで、2人の手元を笑顔で見ていた。

律子とフネが駆け寄って、女性達が集まった。


レイカが三日月の雫の部分を動かして、ミサが三日月自体を動かした。

立体的な動きになって、三日月の下の模様が少し見えてきた。


「あぁ・・これだから、あの人見知りさんは開けられなかったんだね」とレイカがミサに笑顔で言って。

「やつは・・おうようのきかない、ただのカイロだ~!」とミサが威張って言った。


「ブッ・・ミサ、上手いよ・・エースみたい、春雨ウルは?」とレイカが笑いながら返すと。

「マリア~・・誤解だよ~、4階じゃないよ~」とミサが私の真似で、ウルウルで言った。


女性達が当然のように、大爆笑モードに入った。

シズカだけが、箱の新たに見えている彫刻の一部を見ていた。


「よし・・取ったね、笑い」とレイカが二ヤで言って。

「美由紀ちゃんの代打が出来たね・・良かった」とミサが笑顔で返した。


女性達はその言葉で凍結した、2人はフーとハイタッチをしていた。


「安奈が言ったよね・・エースは自分の得意な事をしろって、子供達に言ったんだ」とウミが笑顔で言って。

「美由紀ちゃんがいないこの状況で、緊張感を感じて笑いを取った・・あの2人も純度が違うね」とユメも笑顔で返した。


「ミサ・レイカ・・三日月の下には、奴の気づかない何が有ったの?」とシズカが優しく聞いた。


「人見知りさん・・これの【いみ】って言うのかな・・意味に気づかなかったと思うよ」とミサが笑顔で返して。

「そうだよ・・私達は大好きな話だから・・すぐに気づいたよ・・【月影の星】だから」とレイカが三日月を真横にずらした。


三日月の下には、1つの星が彫られていた。

女性達はそれを見て笑顔が溢れた、ステージの3人も嬉しそうな笑顔になった。


「月影の星に隠したなら・・相当に重要だね」とシズカが呟いた。


「月影の星のその箱を、どうやって開けれると思うの?」とルミが笑顔で聞いた。


「えっ!・・月影の星なんだから、星に願えば良いんでしょ?」とミサが驚いた顔で返した。

「違うの?・・ルミちゃん」とレイカも真顔で言った。


「そ・・そうだよね、それしかないよね」とルミは必死の笑顔で返した、2人は二ヤになった。


「ルミちゃん誤魔化したね・・嘘つくの下手だね」とミサが二ヤでレイカに言って。

「そうてい出来てなかったんだよ・・その時はあんな顔だよ・・マリちゃんも」とレイカが二ヤで返した。


「まいりました」とルミがウルで頭を下げて、マリもウルで頭を下げた。


女性達は楽しい笑いの中にいた、私はミサとレイカを見て本当に嬉しかった。


「まだ開けない方が良いよね?」とミサがレイカに言って。

「駄目だよ・・秘密兵器だから・・今回は開けたくないよね」とレイカが笑顔で返した。


「そうなの!」と律子が驚いて言った。


「母さん・・驚いたね・・嬉しいね」とレイカが二ヤでミサに言って。

「俺はそれが何よりも嬉しい」とミサが私の真似で威張って言った、女性達は爆笑モードに入っていた。


「強敵コンビです~・・笑いの担当まで危険な状況です~」と美由紀が嬉しそうに笑いながら言った。


シズカとマサルは美由紀を見てニヤニヤで頷いた、美由紀はウルウルで返した。


「そうだね・・今回は使わないように頑張ろうね・・次回の強力な武器になるから」とマリが笑顔で言って、ルミも笑顔で頷いた。


「じゃあ・・フーちゃんが、この世界で箱を守っててね」とレイカが彫刻を戻してフーに差し出した。

「人見知りさんが何も出来ないのは、フーちゃんだけでしょ・・由美子ちゃんの大切な物だよ」とミサが強くフーに言った。


フーは立ち上がり強く頷いて、両手で箱を持った。

そして持ったままヨーコの前まで歩いた、ヨーコはフーの雰囲気で箱を受け取った。


フーは次の瞬間に、ヨーコのポケットに右手を入れた。


「あっ!・・フー・・くすぐったい、ゴソゴソしないの~・・こら~」とヨーコが箱を両手で持って、体をくねらせた。


フーは二ヤ二ヤになって、ポケットから腕を引き抜いた。

フーの腕には何かを担ぐような、木で出来た物が握られていた。


フーはそれを地面に置いて、ヨーコから箱を奪い取った。

そして荷台の部分に箱をしっかりと縛り付け、2本の布の帯に腕を通し背負った。


女性達は笑顔でそれを見ていた、フーはニヤニヤでヨーコのポケットに手を入れて、すぐに引き抜いた。

フーは何かを取り出して、隠すように装着した。


女性達は凍結して見ていた、フーは丸い眼鏡をかけていた。

そして背中を丸めて、本を出して読みながら歩いた。


「金次郎ちゃん!」と沙紀が立ち上がり笑顔で叫んだ。


フーは羅針盤の方向に向かい、右手を突き出した。


「うん・・分かってるよ、フー・・学校に行くの楽しみだよ・・ありがとう」と沙紀が大声で叫んだ。


フーはそれで笑顔になって、フーは由美子を見ていた。


「分かってるよ、フー・・私も学校を目指すよ・・必ず行くよ~」と由美子が立って叫んだ。


フーはそれで飛び跳ねながら2人の側に行き、ミサとレイカと腰を振って踊っていた。


「泣けば良いの?・・笑えば良いの?・・感情の制御が利かないよ」と美冬が言って泣いた。

「沙紀の最高の作品は・・間違いなく、フーだね」と千秋が泣きながら言った。


女性達は嬉しそうに泣きながら頷いて、楽しそうに踊っている3人を見ていた。

北斗は沙紀を見ていた、愛情と感謝が強く瞳に溢れていた。


「久美子~」と叫んだマキの声が響いた、全員がモニターを見た。


タンボに乗ったマキが久美子の側に降りていた、久美子はタンボに抱きついた。

マキがヒノキオを抱き上げて、五角形の空間を上から覗いた。


下から哲夫とシノが笑顔で手を振った、マキも笑顔で手を振った。


タンボは久美子を背中に乗せてマキを見た、マキも笑顔で頷いて、ヒノキオを久美子挟んで背中に乗った。

タンボは大空に舞い上がって、ガラスの一本橋の袂に降りた。


「あれは・・何だろう?」とマキが呟いた。

「扉だね・・それもあの赤の」と久美子が呟いた。


「オ~・マイ・ガット・・嫌な予感が、確信に変わりました~」と美由紀がウルで叫んだ。

シズカとマサルは、二ヤで映像を見ていた。


透明の平均台が繋ぐ300m程先に、あの赤で塗られた扉が現れていた。

女性達は沈黙して扉を見ていた、オババが静かに立ち上がった。


「辿り着いたね、マキ・久美子・・方位のルール説明をする。

 由美子の言葉の羅針盤の向きの決定、その方位を指さねばならん。

 方位こそが鍵になる・・だからどの方位に何が有るのかが需要。

 この世界には北の極限と、南の熱は示されている。

 そして陽の昇る場所もある・・この世界のどこかに、それを探せ。

 方位は扉で繋がっている、その中に入れ・・結界じゃない。

 扉の中の映像は見られる・・だから扉を開けて入るのだ。


 その赤い扉こそが、最後の方位・・入って確認するしかない。

 それが門に閉ざされた、日の沈む西を示す方位になる。

 どの場所に何が存在するのかを・・4つの方位を知り解答を出す。

 ここにいる3人の代表が・・4つの方位のダイヤルを合わせる。

 その為にお前達が、4方位の全ての情報を伝えねば・・解答者は間違うよ。


 赤の扉は南京錠がかかってる、壊すしかない・・壊して5秒だよ。

 扉が開くのは・・鍵を壊して5秒間だよ、久美子・マキ。

 透明の一本橋はすぐに崩れたりしない、長い時間留まらなければ。

 25kg以上の重みが掛かっても、消えて無くなる訳じゃない。

 これが方位の問題のルール説明だよ・・制限時間は夜明けまで。

 神殿から昇る太陽が、全てを晒すまでが・・制限時間だ。

 その時にアイテムを揃えて、解答を出さねば・・4つ目の通路は出ない。

 それが羅針盤の問題・・解答者はここの3人で決めた、エミだよ。

 探し出せ・・4方の問題に対する、エミへのヒントを」


オババは強くそう言った、女性達は強い集中に入った。


「リアン・・そっちの方向は任せます、その人員で左サイドと門の周辺を」とユリさんが言った。

「了解・・任せて下さい」とリアンが返して、女性達が集まった。


「本部・・神殿と岩場までを、お願いします」とユリさんが言った。

「了解・・和尚様とサクラだけを残して、捜索するよ」と大ママが返した。


「レン・ケイコ・・そしてマリア・・あなた達しかいません、ミホの抜け殻はリンダに任せて・・蟻塚の跡とお菓子の家の近辺を頼みます」とユリさんが強く言った。


「了解です・・リンダ姉さんもマリアも、OKをくれました」とレンが強く返した。


「残る場所をここにいる全員で探します、銀河とセリカも聞いてますね?」とユリさんが言った。

「はい・・聞いてます、今辿り着きました・・アイテム発見後、ここから本部の方向を探します」とカスミが返した。


「了解です・・ここは3班に分かれましょう。

 律子姉さんとフネ姉さんと私がリーダーで、マリとルミは別々に入って。

 そしてミサとレイカがマリとルミの別の班、ミサとレイカの班にフーが入って。

 時間はあまり無いと思ってやりましょう、班編成をしましょう」


ユリさんが意識して笑顔で言って、女性達が頷いた。


「久美子・・5秒だからね、タイミングを合わせろよ」とマキが二ヤで言った。

「やる気満々だね、マキ・・この平均台を走れるのかな?」と久美子が二ヤで返した。


「目標物が有ると良いんだけどね・・何とかするさ」と二ヤで返して、マキはヒノキオを見た。


「行くんだろヒノキオ、由美子の道案内なんだから・・背中に乗りなよ、落ちるなよ」とマキは二ヤでヒノキオに言って、ヒノキオの前に屈んだ。


ヒノキオは強く頷いて、マキの背中に飛び乗った。

久美子は寝そべって、ライフルのスコープを覗いた。

赤いドアの取っ手の下に、小さな南京錠が見えていた。


マキは夜空の中に浮かぶ透明の平均台を見ていた、夜空に溶け込むような感じだった。

マキが走るのは厳しいと思った瞬間に、平均台の上に黒い小さな背中が現れた。


「黒丸!・・まだいたの、最後まで見ててくれたの・・先導してくれるの?」とマキは喜びの笑顔で言った。

黒丸はマキに向かい強く頷いて、前を見た。


「久美子・・行くよ」とマキは静かに言った、久美子はスコープを覗きながら頷いた。


「タンボ、ありがとう・・行って来るね・・GO、黒丸」とマキが言って、黒丸がスタートした。


マキは黒丸を見ながら、平均台の上を走り出した。

マキの足の乗った場所に亀裂が走り、ガラガラと崩れだした。

マキは走っていたので、崩れる前に次の場所に踏み込んでいた。


「絶対に止まれない!・・扉まで走りきれ、黒丸」とマキは叫んだ、黒丸は少しスピードを上げた。


映像のマキの後ろは、崩れていく平均台が輝いていた。

崩れる速度が上がっているように見えた、マキに追いつきそうだった。

女性達は息を殺して、マキの映像を見ていた。


マキは黒丸だけを見て走っていた、黒丸はマキを感じながら扉を見た。

黒丸が扉の取っ手に向かってジャンプした瞬間に、背後から銃声が響いた。


黒丸が取っ手に手をかける、その直前に南京錠が吹き飛んだ。

黒丸が取っ手を掴んでぶら下がると、赤い扉がゆっくりと開いた。

次の瞬間に、マキがヒノキオを背負って扉の中に駆け込んだ。


マキの映像は暗い世界を落ちていた、女性達はそれを見て覚悟を決めた。


「哲夫君とシノちゃんだけは動かないでね、姿無き男がルールを破らないように」とユリさんが薔薇で言った。

「了解です・・準備万端です」と哲夫が二ヤで返して、シノも笑顔で頷いた。


「さぁ・・私達の最大の仕事です・・必ず探し出しましょう・・出来ますね?」とユリさんが強く無線で言った。


「はい」と女性達が強く返して、完全な集中の中に入った。


「大ママ・・神殿は私とマサルで大丈夫です」とシズカが無線で言った。

「了解・・任せる」と大ママが準備をしながら返した。


「美由紀・・その扉はミホが開けたんだ、その意味を今感じてる。

 美由紀、1人で探せ・・その広大な高原から。

 あの大切なアントワープという場所までを、お前に任せる」


シズカは真顔で強く言った、美由紀はシズカの顔を見ていた。


「了解・・全てをチェックしてみます」と美由紀が二ヤで返して、高原に向かい飛び立った。


「行こう、シズカ・・水路に」とマサル君が二ヤで言った。

「そうだよね・・あの水路の意味を、まだ感じていない・・水源を探そう」とシズカが二ヤで返した。


夜空はまだ朝の気配は無かった、私はナギサの顔を見ていた。


何かに気付いているが、表現できないナギサの顔を。


《秀美・・感じろ、ナギサに問いかけろ》と私は心に囁いた。


そして私は気付いた、ユリアの存在がどこにも無い事に。


『ヒトミとユリア・・どこにいるのかな?』と二ヤで呟いた。


波動の来ない淋しさを感じて、ユリアの存在の大切さを感じていた。


ユリカと蘭の、集中した顔を見ながら・・。











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