カスミ
心を閉じていたら何も感じない、開いていても感じてこない。
わかりたい、そう思わなければ。
決して理解してやる事など、できないだろう。
しかし、それが大切な【者】なら。
出来ないからと、諦める事ができない。
終焉が近づいたフロアーを見下ろす、浮いているような錯覚さえする小船。
3番の美しい挑戦者は、ただ黙ってみている。
その祖父ほど離れた世捨て人を。
「お前は良い子じゃな、本当に芯の優しい子じゃ」生臭はカスミを見て、優しく囁いた。
「だから、自分が許せんのじゃ・・近いうちに寺などにこんかい」と和尚が優しく言った。
「はい、お伺いします」とカスミが、顔を上げて微笑んだ。
「そこの小僧に案内してもらえ」と言って、「今夜は楽しかった」と笑顔になった。
カスミも輝く笑顔になった。
キングと生臭の後を、ユリさんとカスミが続いた。
「和尚ここは私が」とキングが言った、。
いいんかい」と和尚が笑顔で言った。
「これくらい、和尚に受けた恩にくらべれば」とキングも笑顔だった。
「リン、ありがとう」とキングが言って。
「ありがとうございます」とリンさんが、頭を上げるのを待っていた。
和尚とカスミはエレベーター前で話している、カスミには笑顔が出ていた。
「今夜は、ユリと蘭とカスミ、それとあの四季という四人と、ユメちゃんウミちゃんを指名したから」と微笑んだ。
「それと和尚の分」と言ってリンさんに近づき小声で。
「和尚が次から来ても基本料金だけで、他の分は全部俺に回してくれ」と笑顔で頼んだ、リンさんは笑顔でなずいた。
キングが支払うと、蘭と四季とユメ・ウミコンビが送りに出てきた。
キングが最後の客だった。
「和尚様、また来てくださいね」と蘭が言うと。
「来るなと言っても、くるよ」と笑顔で返した。
キングと和尚がエレベーターに乗ると。
「あっ、小僧の指名料忘れた」と私にキングが笑顔で言った。
『やっぱり、女がいいんだ。浮気者』と笑顔で言った。
「そんなに怒るなよ、今度どこでも連れて行くから」とキングが笑った。
『ハワイでよろしく』と頭を下げて、全員の笑顔で見送った。
「なぜあんな返しがができるかね~」と美冬が言った。
『それは、キングが懐が深いからです』と笑顔で言った、本心だった。
「あなた達もこれからが、本当の自分との勝負です」ユリさんが言って。
「梶谷さんの指名を勝ち取ったんですよ全員」と薔薇で微笑んだ。
四季とユメ・ウミが飛び上がり喜んだ。
「自信を持って頑張って」とユリさんが笑顔で言うと。
「はい」と6人が笑顔で答えた。
蘭とカスミは6番席に座って話していた、カスミの話を聞く蘭は真剣だった。
ユリさんがそれを、優しく見ていた。
私はTVルームに戻り、サクラさんをミサを抱いてタクシーまで見送り。
帰っても、6番の2人は話していた。
私がTVルームに帰ると、マダムもユリさんもハルカも来ていた。
「お前は本当に怖いわい」とマダムが笑顔で言った。
『キングが仕事で嫌な事があったて言うから』と笑顔で言うと。
「その前に私に四季のサイン聞いたくせに」とハルカが笑顔で返した。
『ハルカ姉さん、わりと胸大きいんだね』とハルカの隣に座りながら聞いた。
「えっ」とハルカが私を見た。
『先が思いやられる』とニッで言った。
「あ~、難しい」と照れて笑った。
「ユリ、蘭になんかしてやりたいが・・金は受け取らんよの~」とマダムがユリさんを見た。
「それは絶対に受け取りませんよ・・あの子は」と言ってマダムを見た。
「あの子は、本当に自然にしているんです・・それに対し感謝される事を望みません」と薔薇の笑顔で言った。
「そうなんじゃよ」とマダムも言って考えた。
「遅くなってすいませ~ん」と蘭が慌てて入ってきた。
「ユリさん帰られてよかったのに」と満開笑顔で言った。
「帰れませんよ、誰かがお店の女の子の事を想って行動してる時は」と薔薇で微笑んだ、蘭もユリさんを見て微笑みを返した。
「ダ~リン帰ろ」と笑顔で言った。
『俺の悪口2人で言ってたろ』と笑顔で返した。
「聞こえたの!」と言って笑った。
「ダ~リン、私とのスペシャルサインは?」とエレベーターで蘭が後ろから聞いた。
『俺達はどんなに離れていても、心で会話できるだろ』と振向いて笑顔で言った。
「うん」と蘭も満開笑顔で返した。
『なんで聞こえるかな~、謎だ』と呟くと、皆が笑っていた。
マダムがタクシーチケットをくれたので、タクシーに乗り家路に着いた。
「カスミが和尚の所行く時は、よろしくね」と私の肩に顔を乗せて蘭が微笑んだ。
『了解・・俺は子供だと、また確認させられたよ』と微笑で返した。
「あなたは、カスミがけれられてた魔法をといたわ・・私の時と同じように」と静かに言って目を閉じた。
私はその言葉を考えていた、蘭の髪の香りを感じながら。
部屋に着き、蘭がいつものようにパジャマを着て、ベッドに入り話し始めた。
「私は、カスミやユメ・ウミちゃんには、特別の想いが有るの」と私を見ている目は深かった。
「20歳というその年齢で苦しんでいる、その時期に私も苦しんだから」と静かに言った。
「私にはユリさんがいたから、もがき苦しんでもここまで来れたの」と優しい笑顔で言った。
私は蘭を見ながら頷いた。
「だから、その大切な季節を心から楽しんでほしいの」蘭は天井を見ている。
「カスミは、男性恐怖症なの。それもかなり強い」と蘭が真顔で言った、私は衝撃だった。
「それだけは気付いていたの、会った時から」と深い目で、私を見た。
「私達、女には何も出来ないのよ・・何かが出来るなら、きっかけを与えられるのは」私を見ていた、優しい目で。
「あなただと思ったの、そしてあなたは100点以上の答えを出したわ」満開の微笑で。
「本当に嬉しかった、でもまだ足りないのカスミ自信が踏出せない」と深い目で伝えてくれた。
「今夜、生臭さんが歩いてるカスミを見て。
強い子じゃ、自分が一番辛い場所で働いておる。
そして自分と戦っている、そう呟いたから、カスミを会わせたの。
この人なら、優しく背中を押してくれると思ったから」
蘭は真剣な目で私を見た、私も真顔で頷いた。
「お願い、その時にカスミに最も必要なのは」私を深く優しい目で見た。
「カスミの魔法をといた、あなたが側にいる事なの」と優しく微笑んだ。
『蘭、俺は何も出来ないけど・・その時はカスミの側にいるよ、それで蘭が笑顔になるなら』と蘭のおでこに手を当てて。
『もう、お休み』と囁いた。
「ありがとう、でもやきもち凄いからね」と目を閉じながら囁いた。
『知ってる』と私も囁きで返した。
大切な蘭を見つめる時間を楽しみながら、気分は深く落ち込んでいた。
私は全く予想もできなかった、あれだけ近くでカスミを見ていたのに。
あの拒絶のオーラの意味が分からなかった、いや正確には見ようともしなかった。
未熟だと実感させられていた。
部屋に戻り、瞑想の時が来た。
すぐにあの、至極の逸品の姿が現れた。
【近寄り難いの?】何度も何度も聞き返す、あの強い瞳が。
その苦しみなど考えもしなかった私は、何も言えなかった。
【私の内面には誰も迫ってこない】と叫んで。
その大きな瞳から、涙をとめどなく流すカスミが愛おしくて。
手を伸ばすが、遠すぎて届かない・・・。
私は眠ったのかどうか分からないまま、早朝目が覚めた。
静かに起きて、歯を磨き顔を洗って。
目玉焼きを焼いていた。
「素敵」と言って、蘭が起きたばかりの顔で微笑んだ。
『おはよ、寝起きも可愛いよ』と笑顔で返した。
蘭はびっくりするほどの、寝癖だらけの髪だった、私は必死に笑いを我慢していた。
「寝起きのこの状態が、一番男が冷める時なんだって」と蘭が言いながら洗面所に行った。
「あ~」と言って飛び出してきて、「正直に言いなさい、冷めたでしょ」と睨んだ。
『可愛いって言ったでしょ』と私は必死に笑いを堪えて言った。
「本当に?」と笑顔になった。
『可愛いよ、どんな時も』と笑顔で返した。
「当然」と笑って洗面所に消えた。
少し焦げた目玉焼きとトーストを食べながら。
「修行が足りんね、美味しいけど」と蘭が笑顔で言った。
『朝からあんなに可愛いもの見て、動揺したんだよ』とニッで返した。
「今度どっかに、写真撮りに行こうね」と満開で微笑んだ。
『いいよ、でも俺は蘭の写真は欲しいけど・・でも必要はないよ、もう目を閉じれば実像が浮かぶから』と言って少し照れた。
「胸、もっと大きいよ」と蘭は嬉しそうに笑顔で返した。
『相当大きく描いたのに』とニッで返した。
「見せるよ」とニッで返された。
『失神するからご勘弁を』とウルで言った。
蘭を見送り、朝のお仕事を終わらせたのが、9時15分だった。
私が部屋で爪を切っていたら。
【ファン・ファン】と懐かしい、間の抜けたクラクションが響いた。
窓を開けて見ると、可愛いスバル360の横に、至極の逸品が立っていた。
夏の輝きを跳ね返し、自らが輝きを放出しながら。
対向車の男達の視線を独り占めにして。
その強い眼差しで微笑み、手招きをした。
私は目を逸らさずに、笑顔で見ていた。
部屋を出ながらカスミも違う意味で、私にとって特別な存在だと思っていた。
もう目を逸らさずに、豊兄さんが一目で感じた世界を、感じたいと思っていた。
【あんたの幸運に嫉妬したよ】階段を降りながら、その声が響いてきた。
夏の熱が、全ての水分を空に返そうと、背景を揺らしていた。
しかしカスミの、意思を反映するするその姿は、揺れていなかった。
私を見て、鮮やかに微笑んだ・・・私はただ追いかけるように走っていた。
私の成長を試される、第二試験のベルが鳴った。
ただ私は問題を解くのではなく、答えを探すのではなく、感じたいと思っていた。
【不正解を教えて】とカスミが微笑むから・・・。