【冬物語第六章・・無限のリング⑥】
入口は隠されている、絶対に見つからない場所に。
五感で判断する限り、絶対に探し出せない場所に。
美由紀は夜空を見てるようで、視点は目の前に照準を合わせていた。
美由紀の二ヤ顔が、何かを見つけた事を表現していた。
「美由紀・・何が見えてるんだ?」とマサル君が無線で言った。
「本部が映像で確認してると信じて話します・・奴が復活した。
それで空間が少し動いた、それを感じたら見えました。
この重力の境界地点も変わった、隠されていた姿が現れた。
黒い渦が見えています・・あの沙紀の暗黒の世界への入口のような。
ブラックホールのような黒い渦が・・今から突っ込みます。
羅針盤をよろしくです・・秀美、五平のプレゼントをよろしく。
マサルさん・・行って来ます、絶望の淵を目指して」
美由紀は最後に二ヤを出した、マサル君も二ヤで返した。
「映像がブラックホールなら間違いないね・・美由紀、行って来い・・ヒロインになって来い」とマサル君は笑顔で言った。
「了解」と美由紀は二ヤで返して、前に向かって飛んだ。
美由紀の姿は一瞬で消えた、全員がその映像を見ていた。
「あ~れ~」と叫んだ美由紀の声が遠くなって行った。
「羅針盤・・円盤の下に入ります」とミコトが無線で言った。
赤い円形のステージが、円盤の下にゆっくりと入った。
そして湖に着水して、蓮の葉のように水面に浮いていた。
リアン達一行にミコトと千鶴が合流して、ユリカ達も合流し、湖から沙織が上がってきた。
リアンの目の前には、湖との間に真赤な境界線が走っていた。
ヨーコと沙紀でモニターを出して、前線本部を境界線の前に作った。
ユリカとリアンに北斗が揃い、それにミコトと千鶴が加わった。
「羅針盤は、沙紀とエミは決定してるが・・円盤からは、由美子だよね?」とリアンが言った。
「そうだよ・・最後の一人、扉の設定は分からない・・だからその3人に、経験者の沙織までが決定だよ」とユリカが返した。
「羅針盤の通路が出ませんね・・通路を出すのにも、何かの試験がありそうですね」と千鶴が二ヤで言って。
「有りそうだね~・・マリが蟻塚に向かったし」とミコトが二ヤで返した。
「フーが、リリー姉さんを温めています」と映像が浮かび上がったモニターを見て千秋が言った。
全員がモニター前に集まった、フーはリリーの頬に両手を当てていた。
凍り付いているリリーの頬に、いくつもの水滴が現れていた。
「フーちゃん・・取引しましたね、何かを背負いました・・それで強い温度を手に入れましたね」と沙紀が笑顔で言った。
「何かを背負った・・フーのあの呼吸の乱れだね」とセリカが笑顔で言った。
「確かに・・フーの呼吸が乱れてる」とユメが真顔で言って。
「エミ・・フーは何を背負ったの?」と真剣にモニターを見ているエミに、恭子が笑顔で聞いた。
「疲労を感じさせられるリスクを背負いましたね・・氷を融かす為に。。
フーは体温を高めたいと望んで、人間の体温変化の方法は知っていましたね。
体を動かせば体温が上がる、人間がそうである事は知っていた。
だから走ったんですね・・そして走りながら望んだんですね。
リリーちゃんを何とか助けたくて、自分が生き物でない現実を乗り超えた。
疲労を感じるかもしれないという、そんなリスクを受け入れて。
運動による体温上昇を手に入れた・・フーはまた進化しましたね。
そんな所で止まるなって言った・・母である沙紀ちゃんの叫びで。
私達の守り神であるフーは・・リスクなど恐れない、恐怖など持たない。
灼熱のフーが生まれましたね・・フーがそれを望んで、それを求めて。
変化を恐れない・・フーが覚醒しました・・次のステージに上がりました。
エースと美由紀ちゃんの想定した、高いステージにフーは上がりました。
そうだよね?・・オババ」
エミは最後に羅針盤のステージに向かい、二ヤで言った。
女性達が羅針盤を見ると、オババが笑顔で立っていた。
「そうかも知れないね~・・それでは羅針盤の説明をする。
第一段階は・・通路の確保だよ、3本の通路のね。
もちろん通路自体は、このステージの中に入っている。
だがそれを引き出すには、湖の足りない部分を埋めないといけない。
その部品がこの世界のどこかにある、それを探し出し埋めなければならない。
足りない部品は当然3つ、通路を出す試験には制限時間は無い。
それと・・この世界の設定変更が1つ、飛ぶという設定が変わった。
ミホが木の高さまでという設定を打ち破ったから、高さ制限は無くなった。
まずは通路を出せ・・通路が出なければ、挑戦は出来ない」
オババは二ヤで言って、ステージの上に出た机の椅子に座った。
「よし・・作戦会議だね」と北斗が笑顔で言って、女性達は笑顔で頷いた。
「本部・・中央突破の女性達に、止まって作戦会議に加わるように言って下さい」とユリカが言った。
「了解、報告します」とアンナが返した。
「ユリカ・・まずは湖の足りない物の確認からだね?」と大ママが笑顔で無線で言った。
「そうですね・・オババが付け足した設定変更。
空からの映像が撮れますね、それで探しましょう。
今からヨーコと沙紀を入れて、撮影方法を検討します」
ユリカが笑顔で言って、ヨーコと沙紀が笑顔で頷いた。
ヨーコはポケットに手を入れて、沙紀は絵筆を湖に向けて翳した。
「ヨーコ・・出せそうか?」とポケットに手を入れたヨーコに、恭子が二ヤで言った。
ヨーコは瞳を閉じて集中していたが、ウルウルで目を開けた。
「勉強が足らなかった、空飛ぶ物はまだ私には無理です」とヨーコがウルで言った。
沙紀も絵筆を出していたが、首を横に降った。
女性達が対策を考えてると、天使の声が響いた。
「しゅ~ぱ~まりあま~ん」とマリアの声が響いた。
女性達が声の方向を見ると、マリアがスーパーマリアマンの衣装に変身していた。
マリアはハチ公の横に浮いて、最強天使二ヤを出していた。
「マリア!・・行ってくれるの?」と北斗が笑顔で言った。
「あい」とマリアが笑顔で頷いた、女性達に笑顔が溢れた。
「カメラは?・・有るの?」とリアンが言った時だった。
《パン》と乾いた銃声が響いた。
女性達が銃声の方を見ると、恭子が二ヤで銃を撃っていた。
恭子が右手に持つ銃の銃口は、マリアに向いていた。
「きょうこ・・くるうこ」とマリアが天使全開不敵で言った。
「そうだよ~・・スパイカメラは装着した、不要な物を破壊して来い・・マリア」と【狂子】が二ヤで返した。
「あい、きょうこ」とマリアは天使全開で言って飛び立った。
「なるほどね~・・スパイカメラか~」とミコトが二ヤで恭子に言って。
「恭子が教えたんだよね~・・マリアに破壊の言葉を」と千鶴が二ヤで言った。
女性達が二ヤで頷いて、モニターの前に集まった。
マリアはゆっくりと湖の上を飛んでいた、湖面は星の光を跳ね返して輝いていた。
「マリア・・そこ、その銀の長方形に降りてみて」とユリカが言った。
「あい・・ゆりか」とマリアが言って、映像が銀の長方形をアップで映した。
湖に大きな銀の金属板が浮いていた、その長方形の金属板にはこう書かれていた。
【題名 】と題名の後に空白が有った。
空白の部分に3つの細長い窪みが出来ていた。
「題名?」とサクラさんが呟いた。
「作品の題名って事かな?」とアイさんが笑顔で言った。
「この世界は奴の作品だから、その題名を答えろって感じですかね~?」と沙織が二ヤで言って。
「この世界全体の題名ですか?・・3つの言葉にしては、あの窪みは細長いですね・・【題名】の文字と比べると」とエミが笑顔で言って考えていた。
「それだね!・・オババは湖で足りない部分を探せと言った。
少し違和感のある表現でした、湖で足らない部分という表現が。
それが文字ならば・・作品名ならば、それは【湖】の漢字です。
3つの部品で完成させるなら、【水】と【古】と【月】ですね。
だからミホは月の復活に行ったんです、残りは【水】と【古】がヒント。
あの銀の台座は、題名を完成させろと言っている。
3つの窪みに、【水】と【古】と【月】を入れて・・湖を完成させろと
完成させるのは、湖という漢字・・そうだと思います」
セリカが流星群を流して、笑顔で言った。
「なるほどね~・・シズカがいないと覚醒するね、理数科のセリカ」とミコトが笑顔で言って。
「水と古いの【古】を表すもの、それを探すんだね」と北斗が笑顔で返した。
「誰か・・【水】と【古】で何かを感じた?」と大ママが無線で全員に聞いた。
女性達は考えていた、マキはシズカの二ヤ顔を見ていた。
境界線内の神殿の中の2人は、映像だけが出ていて音声は入っていなかった。
私のいるオババのリビングのモニターにだけ、2人の音声が入っていた。
そしてリビングのモニターにだけ、暗黒の世界で木の葉のように回転している、美由紀の二ヤ顔が映し出されていた。
「シズカ・・分かったの?」とマキが二ヤで聞いた。
「【水】はね・・奴の設定は小僧の世界だろ、小僧の世界で【水】のイメージだったら・・1人だろ」とシズカが二ヤ継続で返した。
「人なの!・・そっか・・水のユリカなんだ」とマキが驚きを表して返した。
シオンはその2人の映像を見ていて、ニコちゃん二ヤを出した。
「シオン・・何を気付いたの?・・二ヤが出てるよ~」とカレンが二ヤで言った。
「シズカちゃんの解答を口の動きで読みました~、素敵な解答です」とシオンが二ヤで返した。
シオンが口の動きで言葉を読める事を知らない女性達が、驚きながらシオンを見た。
シオンはニコニコ全開で返していた。
「シオン・・シズカの解答を述べよ」とリアンが二ヤで言った。
「シズカちゃん・・【水】の事をこう言いました。
奴は設定は小僧の世界なんだから、【水】のイメージならば1人だろって」
シオンはニコちゃんで言った、女性達はハッとしてユリカを見た。
「そうだよね・・エースの中で【水】のイメージなら、絶対にユリカだね」と北斗が二ヤでユリカに言った。
「私が【古】を示す物を、あの罠の銀の台座に持って行けば良いんですね~」とユリカも二ヤで返した。
「残るは【古】ですね・・エースの中の、古いというイメージか~」とカスミが言って。
「エースの中の古いイメージね~」とリョウも考えていた。
「奴隷契約・・エースがそう言ったんです」と強く言ったアイコの声が無線で響いた。
「リリーの開放の時の春雨の叫びの、奴隷契約だね?・・アイコ、詳細を述べよ」と千鶴が真顔で言った。
「エースがリリーを開放して、轟社長の依頼を受けた初日。
ユリカ姉さんが降臨してくれた日に、私はエースに聞いたんです。
エースに・・奴隷契約に対して怒りを持ってたね?・・私はそう聞きました。
その時のエースの解答が、エースの中に持つ【古】でした。
俺は奴隷契約は許せないんだ、許す訳には絶対にいかないんだよ。
今の俺が生き方を追い求めてる、リンダという女性がいるんだけど。
そのリンダが世界中の理不尽と戦ってる、だから俺も勉強したんだよ。
世界中にどんな理不尽が存在するのか、調べられる範囲で調べてみた。
その中に奴隷も存在するんだ、今でも奴隷制度が残る世界が有るんだよ。
奴隷制度なんて・・俺にとっては、過去の歴史的事実だと思っていた。
人間が過去に犯した過ちだと思ってたんだ・・でも現在でも存在する。
その国に行けば、黄色人種の日本人でも差別されるんだ。
俺はどんな奴隷契約も認めない、俺にとって奴隷解約とは過去の事実なんだ。
過去の反省すべき事実なんだよ・・俺の中ではそう確定してる。
今はそれしか出来ないから、リンダの手助けさえも出来ないから。
だから俺は自分の中で葬るんだ、世界中に今も存在する理不尽をね。
俺の中では・・奴隷契約こそが、古い歴史の象徴なんだよ。
そうやって戦うんだ・・憧れのリンダの生き方を目指して。
自分の中で過去に葬る事から始めるんだ・・それしか出来ないから。
エースはそう強く言いました、私は本当に嬉しかった。
エースの叫んだ奴隷契約という言葉に、深い想いが込められていたと確信して。
あの叫びが私達もボーイさんも、そして轟社長をも撃ち抜いたから。
事実を知っていて、それを黙認していた・・私を破壊してくれたから。
自分の中で認めたら駄目だと、強い春雨の叫びが伝えてくれたからここにいる。
私も幻海の女性達も自らが望み、この場所に来れました・・真実が知りたいから。
春雨の叫びの真実が知りたいから、生命の真実が知りたいと思いました。
エースの中の【古】のイメージとは、世界中の理不尽な設定です。
奴のこの世界の中では・・奴隷契約を背負っていた、リリーだと思います」
アイコは夜空を見上げながら、強く言葉にした。
「エースはやっぱり感じながら、その言葉を選んだんだね・・夜街の過去に叫んだんだ」とフネが笑顔で律子に言った。
「律子姉さん、教えて下さい・・律子姉さんの感じる、【奴隷契約】という春雨の叫びの解釈を」とサクラさんが強く言葉にした。
「それはどうしてもお願いします、あの罠の台座に行く・・私も聞きたい」とユリカも真顔で強く言った。
「小僧が春雨で叫ぶ時は、常にヒトミを側に感じてるんだよ。
春雨の叫びと言われるその時は、奴はヒトミと2人なんだよ。
その2人の背中に、見送った子供達も乗ってくるんだ。
響かない訳がないんだよ、ヒトミという圧倒的存在が叫んでるんだから。
同じ想いの人々を誘って、ヒトミが小僧の手を握ってるんだよ。
最初の春雨の叫び・・あの日に覚醒したんだろう・・小僧とヒトミは。
あの最初の春雨の叫びには、強引に乗ってきた・・強く叫びたくて。
最強の魂が強引に乗り移った感じだった・・ミホが乗っていたんだよ。
そのミホの行為で、ヒトミは気付いたんだろう・・誘う方法をね。
そして奴隷契約と叫んだ時は、リンダとマチルダも乗っていた。
私がリンダに初めて会った時に、リンダがこう表現してくれた。
自分の映像が突然浮かんで、そこに小僧が侵入してきたと。
小僧の背中に乗ってる感じの映像で、小僧の言葉を聞いていた。
日本語だったから理解できないでいたら、隣にマチルダが入ってきた。
マチルダは凍結していて、リンダが通訳してって叫んだんだ。
そしてマチルダの言葉を聞いて、リンダも凍結した・・【奴隷契約】
小僧はそう叫んでいた、リリーの開放の時だったんだよね。
小僧の轟社長に対して言った決め台詞、リンダはそれを聞いて泣いたらしい。
【日本で唯一奴隷解約を持つ、あんただから】・・小僧のこの言葉でね。
怒りに満ちた春雨の叫びが、リンダにもマチルダにも深く響いた。
小僧は自分の中で過去にしている、だから絶対に許さないんだと感じて。
戦う方法を感じたとリンダは言った、嬉しそうな笑顔でね。
小僧の春雨の叫びには、常にヒトミの心が乗っている・・だから響くんだ。
偽り無き、無欲である唯一の存在・・ヒトミの叫びだから。
だから美由紀は切望するんだ・・いつか自分も春雨を浴びたいと。
ヒトミの心を感じるから・・限界ファイブも中1トリオも待っている。
春雨を浴びる事を・・ヒトミの心を感じる事を、いつまでも待っている」
律子は笑顔で言った、律子らしい表現で。
「そうであるのなら・・月は蘭なのか?・・この壁は何なんだ?」とナギサが言った。
ユリさん達一行は、円形を描く高いコンクリートの壁の前に立っていた。
「違うんだよ、ナギサ・・この壁が月の意味なんだよ。
私はあ奴の中のイメージでは、【青い炎】なんだよ。
あ奴の中の【月】のイメージは、【月下の雫】なんだ。
【月下の雫】がこの場所に入るには、絶対に月からしか入れない。
だからミホは月を開放しに行ったんだよ、この壁の中に降臨させる為に。
あ奴の【月】のイメージは唯1人、夜の海で春雨の叫びで贈った称号。
【月下の雫、月のマチルダ】だけなんだよ」
蘭は壁に両手を付けて、満開笑顔で言った。
「そうなんですよね・・これはベルリンの壁ですね」とユリさんが真顔で言って。
「壁を越えろマチルダ、それだけが望みだ・・マチルダの父親のメッセージだね」とミチルも壁を見ながら返した。
「さて・・フネにしか出来ないね、この蓋を開けるのは」と律子がクレーターに囲まれた場所で二ヤで言った。
「マリのご指名だから、何とかするよ」とフネが二ヤで返して、両手を地面に付けた。
「私達は、この壁って事ですね」とレンが笑顔で言った。
「そうです・・この壁が作る円形の空間の開放ですよ、マチルダの開放です」とユリさんが薔薇で返した。
「私らはあれだね・・銀の台座の番人を退治する」とホノカが二ヤで言った。
「かなりの人数だね、ゴールドのサルボーグ」とリョウが二ヤで言って。
「正面突破・・私達にはそれしかない」とカスミが二ヤで返した。
湖の手前の銀の台座に続く通路の前に、ゴールドのサルボーグが整列して立っていた。
正面突破の女性達は、二ヤでサルボーグを見ていた。
「後方を支援します、銀河が消えても大丈夫だよ」とシノブが二ヤで言った。
「心おきなく、突っ込んで良いよ~」と幻海の女性が笑顔で言った。
「高級店の女性は、性格に問題有りだな」とリョウが魔性二ヤで言って。
「楽しみだ~、高級店」とホノカが華麗二ヤで言って。
「私はどこに行っても、生意気な女・・カスミだよ」とカスミが最強不敵を出した。
「ヨーコ・・私に同行して」とユリカが爽やか笑顔で言った。
「了解です」とヨーコが嬉しそうな笑顔で返した。
「マリアが・・蟻塚に降ります」とユメが叫んだ、全員がモニターを見た。
マリアが蟻塚の横に降りて、蟻の行列を笑顔で見ていた。
「マリアは自分で判断してるね、さすがマリア」と恭子が笑顔で言って。
「不必要な物を破壊しろって、絶対に意味のある言葉だったよね~?」とユメが恭子に二ヤで言った。
「ユメ姉さんと、ウミ姉さんの本質が出てて・・怖い」と恭子がウルで返した。
「それは怖いね~」とネネが二ヤで突っ込んだ。
「ネネ姉さんが、1番怖いです~」とウミがシオンの真似でウルで言って、女性達が笑っていた。
「リリーの顔の氷が解けた、リリーが目覚める」とアンナが言った、全員がリリーの映像を見た。
リリーの顔の氷が融けていて、生気の有る肌の色が出ていた。
フーはリリーの周りを走っていた、リリーはゆっくりと瞳を開いた。
フーはリリーが瞳を開いたのを見て、リリーに駆け寄り抱きついた。
「フー・・熱いね、助けてくれたんだね・・ありがとう、フー」とリリーは笑顔で言った。
フーも笑顔で頷いて、リリーの両手を温めていた。
「リリーの枷はどうやって外す?・・手と足の枷を外さないと、リリーは動けない」とアイさんが言って。
「そうだね・・蓋はフネ姉さんが開くとして、枷をどう外すのか・・そして地上まで、どうやって上るのかだね」と大ママが真顔で返した。
「お待たせ、マリア・・蟻さんは全部出たみたいだね」とマリの声が響いた。
マリと幸子が蟻塚に到着して、マリアに笑顔を向けていた。
「あい、まり・・やゆよ」とマリアが天使不敵で言った。
「蟻塚だけだよ、マリア」とマリが二ヤで返した、マリアは不敵継続で頷いた。
マリアは息を吸い込んで、蟻塚を見た。
「じゃま~・・あっちいけ~」とマリアは叫んだ。
蟻塚に爆風が当り、蟻塚が吹き飛んだ。
蟻塚の無くなった場所に、木製の箱が現れていた。
マリはその箱を開けた、箱の中から真赤な短剣が出てきた。
マリはその短剣を手に取って、二ヤで幸子に差し出した。
幸子は真顔で受け取り、マリを見ていた。
「私が今回1番強くイメージできた短剣です、羅針盤で重要なアイテムです。
幸子姉さんが届けて下さい・・幸子姉さんも羅針盤の経験者です。
今でも通路は渡れます・・幸子姉さんが助けて下さい、3人を。
沙紀とエミと由美子を・・この短剣で、助けて下さい」
マリは強くそう言った、幸子は短剣を見ていた。
「了解、マリ・・絶対に守ってみせるよ」と幸子が笑顔で返した。
「それでは、幸子姉さんの乗り物をお願いね・・マリア」とマリが二ヤで言った。
「あい・・しろとら~」とマリアが呼んだ。
ジャングルの奥の草むらから音がした、幸子は慌ててその方向を見た。
大きなホワイトタイガーが、マリアの声に反応して出てきた。
「しろとら~」とマリアが天使全開で言って、ホワイトタイガーに抱きついた。
「この白トラちゃんが、私の乗り物なの?」と幸子がウルで言った。
「はい・・自分で走ったら間に合いませんよ。
マリアはまだ仕事が有りますから、白トラが送ります。
大丈夫ですよ、この白トラは・・マリアのペットですから」
マリは二ヤでそう言った、幸子はウルで頷いた。
「しろとら、よろしく~」とマリアが笑顔で言うと、ホワイトタイガーは頷いた。
幸子が恐る恐るホワイトタイガーの背中に乗ると、湖に向けて駆け出した。
「さぁ・・マリア、行こうか」とマリは笑顔で言って、マリアを抱き上げた。
「あい」とマリアが天使全開で返して、マリを連れて飛び出した。
フネは地面に両手を付けて、瞳を閉じて集中していた。
そして瞳を開き、二ヤで地面を見た。
「真実の姿に戻れ・・空間を出せ」とフネが強く言った。
フネの両手の下の地面が消えて、円形の穴が現れた。
フネと律子がその穴を覗いていると、空から声が聞こえた。
「マリアが入ります」と空からマリの声が聞こえた。
2人は空を見上げて二ヤを出して、穴の入口を指差した。
マリアはマリを律子の横に降ろして、穴の中に飛び込んだ。
「問題はマチルダだね」と律子がマリに二ヤで言った。
「はい・・ミホですから、大丈夫でしょうね。
今回のこの世界の想定で、私は氷の世界のリリーさんを感じました。
ルミは透明の円盤と、ユリカ姉さんの台座への招待を感じてました。
でもそれが【湖】という文字の完成だとは、想定できませんでした。
今回1番ラッキーだったのが、人質にミホも選ばれた事でした。
ミホは私とルミが感じていない部分を探して、それを想定した。
奴が現れない、設定を変更できない状況で・・全ての準備を整えましたね。
ミホはこの世界の想定で、月を感じていました・・だからムーンを用意した。
ミホは必ず月を開放するでしょう・・マチルダ姉さんの降臨の為に」
マリは笑顔で返した、律子もフネも笑顔で頷いた。
その時、夜空で大爆発が起きた。
一瞬空が明るくなり、全員が夜空を見上げた。
爆発した煙が引くと、大きな月が現れた。
その月光で女性達の笑顔が照らされた、アンナはモニターを見ていた。
「空から落下物・・透明のカプセル・・中身は・・マチルダ!」とアンナが叫んだ。
女性達はモニターを見た、透明のカプセルが急降下していた。
「マチルダ、意識が無い・・危険だ」とミコトが叫んで。
「アンナ、映像を出来るだけアップにして」と大ママが言った。
落下するカプセルの映像がアップになった、マチルダは眠るように瞳を閉じていた。
「マチルダが背負ってるの、パラシュートじゃないですか?」とセリカが言って。
「そうだね、パラシュートだ・・カプセルからマチルダを出さないと、地面に激突する」と千春が言った。
「有った・・開放の赤いボタン、カプセルの中央」と美冬が言った。
マリアが飛び上がろうととした時に、久美子の声が響いた。
「アンナ姉さん、レーダーで私とカプセルの距離を測って・・5000m以内に入ったら、教えて下さい」と久美子が二ヤで言った。
久美子はマキの飛び込んだ、断崖の上にヒノキオと立っていた。
そして断崖の先端で腹ばいになり、ライフルのスコープを覗いていた。
「了解・・頼んだよ、久美子」とアンナが返して、レーダーに視線を戻した。
「今回は落下物・・難しさは増してるね」とマキがシズカに二ヤで言った。
「難しいよね・・落下物なら、落下スピードを計算しないといけない。
弾丸が到達するまでの時間に対する、落下距離の計算が必要になる。
この世界では、風は考慮しなくて良いけど・・落下は考慮しないといけない。
弾丸は射程距離まで真っ直ぐに飛ぶ設定だけど、他の物には重力がかかる。
かなり難しいよ・・5000m先の落下物」
シズカも二ヤで返した、マキは久美子の横顔を見ながら頷いた。
「猫踏んじゃった・・猫踏んじゃった」と久美子の鼻歌が無線で響いていた。
静寂の夜空から、透明のカプセルが落下していた。
幸子はホワイトタイガーの背中にしがみつき、夜空の月を見ていた。
銀河はモニターを見ていた、4人が揃う事を待ちわびていた。
ユリカはヨーコと歩きながら、夜空を見上げていた。
マリアはリリーとフーの場所を、天使全開で目指していた。
私は1人で凍結していた、意識を失った美由紀を見ながら。
美由紀は石柱の頂点に叩き付けらて、意識を失ったように動かなかった。
石柱は雲海に蔽われていて、下の世界を想像できないほど高かった。
円形の石柱の頂上で、美由紀は眠るように静かだった。
私は凍結しながら、雲海に蔽われる世界を見ていた・・。