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      【冬物語第六章・・無限のリング④】 

砂漠の神殿の中にある、大きなテントの中は笑顔が溢れていた。

女性達は緊張を感じながらも、楽しい気分になっていた。


ジャングルは夜の闇が支配していたが、昼間の熱気が冷めて爽やかだった。

恭子はラジコンを持って、小型モニターの映像を見ながら操作していた。

久美子がその横で映像を見ていた、シオンとカレンは2人の後ろに立っていた。


そして少女の喜びの声が無線から響く、探し物を見つけた喜びの声だった。


「あれですね~・・ありました~」とミサの声が響いた。

「悪い人ですね~・・変な隠し方をして~」とレイカもモニターの前で笑顔で言った。


「えっ!・・どれ?・・どれが鍵なの?」と恭子が小型モニターを見ながら無線で言った。


「左の木の根っこの所です、もう少し左の」とミサが無線で返した。


恭子はラジコン戦車を操作して、左の木の根の出ている場所に向けた。


「これか~・・上手いこと隠すね~」と恭子は二ヤで言って、マジックハンドを操作した。


「良し・・子供班も出発しよう」と北斗が笑顔で言って、子供達も笑顔で頷いた。


恭子は慎重に木の枝で出来た鍵をマジックハンドで取って、戦車を引き上げていた。

久美子は二ヤでその映像を見ていた、静寂の夜がジャングルを包んでいた。


「私が鍵を受け取って、ルミを迎えに行きます」と幸子が笑顔で言って、本部を出て行った。


シズカとマキは濾過装置を通り抜けて、壁を貫いている透明の円柱の中を泳いでいた。


「ここから井戸に入るんだね?」とマキが二ヤで言った。

「そのようだね~・・罠かも知れないからね」とシズカが二ヤで返して、先に壁の中に入った。


マキがシズカの後を追うと、石造りの井戸の中に抜けた。

井戸の底のチェーンの上に2人は出た、チューンは動力でゆっくりと動いていた。


2人が頭上を見上げると、精巧に組まれたギアもゆっくりと動いていた。


「この入口は、前は無かったんだよね?」とマキがシズカに言った。

「無かったよ・・この入口も、あの排出口も」とシズカが上を見上げて二ヤで言った。


「あれが排出口なのか~・・どうする?」とマキが二ヤで返した。


「ここの映像は映ってるから、排出口には私が入るよ。

 マキは最上部を確認して、沙紀が改造をしたみたいだから。

 脱出口が有るかも・・鍾乳洞まで水路を確認して来るよ」


シズカが二ヤで返して、マキも二ヤ継続で頷いて上を目指した。


シズカは排出口に入り、暗い円筒の水路をライトで照らしながら進んだ。

地下に通された透明の水路は、第一の門の方向に続いていた。


マキはギアの組み込みと井戸の壁との狭い空間を通り、回転する循環装置の下まで来た。

マキはそこで止まって、腕時計のモニターにシズカの画像を出した。


シズカはゆっくりと水路を泳いでいた、マキはそれを確認してハルカの映像に切り替えた。


ハルカとミサキは鍾乳洞に入って、穏やかな流れに逆らって歩いていた。

暗く狭い洞窟の中を膝まで水に浸かり、2人は笑顔で歩いていた。


マキはそれを確認して、排出口まで下がってモニターを見ていた。


オババのリビングのモニターだけに、ミホの運転するジープが映されていた。

ミホはジープのまま竜巻に入って、神殿側に戻ってきた。


ミホがジープを降りて見上げた夜空に、美由紀の車椅子が飛ぶ光が見えていた。

ミホはその光を見て、後部座席のドアを開けてボンビを降ろした。


「ミホがボンビを連れて来た!」とアンナが本部のモニターの前で叫んだ。


女性達はモニターを見た、ミホは砂漠に降りたボンビを抱きしめていた。

ミホは何かを伝えたのだろう、ミホが体を離すとボンビが笑顔になった。


「ミホちゃん、了解です・・私が行って来るね、フーの匂いを追いかけて」とボンビが笑顔で言った。


ミホはボンビを見て、微かに微笑んで頷いた。

ボンビはそれを見て、第一の門の方向に走り出した。

ミホはボンビを見送り、美由紀を見上げて神殿に向かい歩き出した。


ボンビは本部の横を走り抜け、ジャングルを走っていた。


「ユリカ・・いよいよだね、湖が見えてきた」とリアンが静かに言った。

「そうだね~・・あの丸太小屋は罠だろうね~」とユリカが二ヤで返した。


ユリカ達はジャングルの出口に立っていて、遠くに大きな湖の湖面が見えていた。

その手前の草原に、丸太小屋が建っていた。


丸太小屋の窓から光が漏れていて、何かが存在する雰囲気だった。


「リアンは四季とハチ公とマリアを連れて、湖を目指して・・子供班が来るから。

 私が小夜子とネネとセリカで、あの罠の丸太小屋を確認してくる。

 丸太小屋で何があっても、戻る必要は無いよ・・湖が重要だから」


ユリカは二ヤで言った、リアンも二ヤで返した。


「了解・・まぁ頑張りな」とリアンは言って、四季を連れて丸太小屋の横の小道に向かった。


ハチ公は先頭をマリアを抱いて歩いていた、マリアは熟睡状態だった。


「さて・・あの丸太小屋が、私達の舞台かな?」と小夜子が二ヤで言って。

「攻撃的な敵をお願いしたいな~・・スカッと出来るような」とネネが二ヤで返して。

「それが良いですね~・・派手な相手が良いな~」とセリカが強力な流星二ヤで言って、ユリカの横に並んだ。


「夜空の下で見ると、流星は幻想的だね~」とユリカがセリカに二ヤで返して、丸太小屋に向かった。


ネネと小夜子は2人の後ろに付いて、丸太小屋の明かりを見ていた。


「何かここは・・何も無いという、罠なんじゃないの?」とナギサが華やかウルで蘭に言った。

「そんな気がするよね・・同じ場所を回ってる感じだよね、景色が変化しないし・・緑色の映像だから」と蘭が満開ウルで返した。


「そっか・・だから飽きるんだ、スコープを外そうよ・・暗さに目を慣らそう、そうすれば何か見えるかも」とナギサが笑顔で言った。

「なるほどね~・・それは面白いかも」と蘭が二ヤで返して、2人はスコープを外した。


真っ暗な夜のジャングルを、星の明かりだけが照らしていた。

月はソフトクリーム型の雲に包まれて、まだその姿を出せないでいた。


「ユリ・・あの可愛い雲、動かないよね~」とミチルが獣道を歩きながら無線で言った。

「そう言えば、そうね・・ナギサが正解かしら、あの雲は罠って感じね」とユリさんが薔薇二ヤで返した。


「月明かりを遮って、スコープを使わせる・・夜の暗さに目を慣らさせない」とミチルが二ヤで言ってスコープを外した。

「そうでしょうね~・・ナギサ、よく気付きましたね・・レンとケイコはスコープで見てて、私達が外しますね」とユリさんが薔薇で言ってスコープを外した。


「褒められた~・・それもユリ姉さんにだよ、隊長にだよ~」とナギサが蘭に華やか笑顔全開で言った。

「頑張ったね、ナギサ」と蘭も満開笑顔で返した。


「なるほどね~・・千春と千秋はスコープで見てて、他のメンバーはスコープを外そう」とリアンが二ヤで言った。

「了解」と四季が返して、スコープを外した。


「フーが止まったぞ」と和尚の声が無線から響いた。


女性達がモニターを見ると、フーが木陰に隠れていた。


フーの見ている方向に、ヘンセルとグレテルの背中があった。

2人の兄妹は立ちすくんでいた、2人の前には大きなホワイトタイガーが威嚇しながら立っていた。


「マリアの敵の白虎!・・奴は開放してたのか~」とフネが言って。

「鍵が近いんだね、虎なら鍵の守りだろうね」と律子が二ヤで言った。


本部のメンバーは二ヤでフーを見ていた、フーは蜂蜜を出してチュパチュパしながら2人を見ていた。


「猫じゃないよね?」とグレテルがウルで言った。

「猫じゃないよ・・大き過ぎる」とヘンセルが必死の笑顔で返した。


「蟻塚の方から出てきたね、蟻塚の番人かもね」とヘンセルは呟いた。

「蜜蟻の蟻塚なの?・・襲われるから近づくなって、魔女のお婆さんが言った」とグレテルが返した。


「そうだよ、蜜蟻の蟻塚だよ・・今は蜜を溜め込んでる時期だから、攻撃的なんだよ」とヘンセルが返した時に、2人の前に現れた。


小さな黄色い小太りの熊が、2人の前に立って両手を広げた。


「蜜に鋭く反応したね~」とサクラさんが二ヤで言って。

「それも溜め込んでると聞いて飛び出した、今のフーは最強だよ」とアイさんが二ヤで返した。


「何!・・この子?」とグレテルがフーに驚いて言った。

「多分・・正義の味方とか」とヘンセルがフーの背中を見ながら返した。


フーは振り向かずに強く頷いた、それを見て2人に笑顔が戻った。


フーがニヤニヤしていると、ホワイトタイガーが飛び出してフーの右腕に噛み付いた。

フーは右手の蜂蜜のチューブを泥水の中に落として、ウルウルで虎の顔を見た。


虎は必死の形相で顎に力を入れた、フーはウル状態で左手で蜂蜜のチューブを虎に示した。

虎は右の前足で、フーの赤丸を猫パンチで攻撃した。


フーは攻撃を受けたが、ニヤニヤで返していた。


「それは色を塗ってるだけ、元々フーにはダメージという感覚が無いよ~」とヨーコが二ヤで言って。

「蜂蜜のチューブの仇なら、あの虎ちゃんが心配です~」と沙紀が心配顔で言って。

「確かに、危険です~・・早く逃げるのです~、シロトラちゃ~ん」とシオンがニコちゃんウルで言って、女性達は久々に笑っていた。


フーは右腕を振って、ホワイトタイガーを投げた。

ホワイトタイガーは大きな木に激突して、驚いた表情で体制を立て直した。

フーはトコトコとホワイトタイガーに駆け寄って、目の前で背の高い草を引き抜いた。


その草をホワイトタイガーの目の前に翳して、左右に大きく振った。

ホワイトタイガーは本能に逆らえずに、草の動きに合わせるように体を振った。

フーは草を振りながら、森の奥に入って行った。


「マリアの作戦を盗んだね~、猫ジャラシ誘導」と蘭が満開二ヤで言って。

「蟻塚に向かったね~、蜂蜜チューブの代償を取りに」とナギサが二ヤで返した。


女性達がニヤニヤしていると、ハルカとミサキの驚きの声が響いた。


「有った!・・赤の間です」とミサキが叫んで。

「円形の空間、そして屋根の彫刻は・・言葉の羅針盤の彫刻に、柔らかい感じが似てます」とハルカが屋根を見上げて強く言った。


円形の空間は水の流れる底も、岩に囲まれた壁も、そして彫刻が施された屋根も赤い色だった。

その赤は沙紀の世界で現れた、赤い月と赤い塔と言葉の羅針盤と同じ色だった。


屋根の彫刻は動物だと思われたが、何の動物なのか分からなかった。

それほどに柔らかく優しい表現で描かれた、可愛い感じのする彫刻だった。

そして水の底に沈む突起の周りの彫刻は、象形文字のような不思議な模様だった。


「ダイヤルです・・ダイヤル錠ですね、底に突起があります」とハルカが言って。

「屋根の彫刻に底のダイヤルを合わせる、そうすれば何かが起こる感じですね・・羅針盤の鍵ですかね~」とミサキが二ヤで言った。


女性達はその音声も映像も見ていたが、2人には無線は通じなかった。


「無線が通じない、2人で考えるしかないよ」とミサキがウルで言ってハルカを見た。


ハルカはニヤニヤで屋根を見上げていた。


「ユリア・・ここで待っててくれたの、本部にも検討をよろしくって伝えて」とハルカが笑顔で言った。


2人はユリアの返事の波動を感じたのだろう、笑顔になって頷いた。


「ユリア・・ハルカが屋根を見て、ミサキが底の突起を見てと伝えて」と律子が笑顔で言った。


ハルカとミサキは瞳を閉じて波動を感じて、笑顔で頷いた。


「了解です・・映しますね」とハルカが言って2人は屋根と底を見た。


「突入はこれを解決してからにしよう、シズカがいないんだから・・セリカ、頼むよ」と丸太小屋の横でユリカが言った。

「了解です・・やってみます」とセリカが笑顔で返した。


「ミコトも千鶴もいないんだ、四季も解読に加わろう」とリアンが止まって言って、四季が笑顔で頷いた。


マキもシズカも腕時計のモニターを見ていた、シズカはそれを見て泳ぐスピードを上げた。


「屋根の模様は、針の指す場所がフクロウですね・・それから右に。

 コウモリ・ツバメ・ペリカン・ネズミ・イタチ・ヤモリで。

 次が・・・多分・・狼・ライオン・ヤギ・馬・象・蟻だと思います。

 狼だけが分からないです、犬なのかも・・でも、不思議なのは・・蟻です。

 蟻だけが動いてるように描かれてる、他の動物は止まってるのに。

 蟻だけが動いていると思います・・変ですね」


沙紀は笑顔で言った、女性達は驚きながら聞いていた。


「蟻だけが動いてるの?」と律子が笑顔で無線で聞いた。

「はい・・蟻だけが、何かを目指して動いてる感じです・・他の模様は写真のように止まってる感じです」と沙紀が笑顔で返した。


「沙紀・・下の模様は分かる?」とフネが聞いた。


「それは文字ですから、私には分かりません・・ただ、円が3つ重なる模様だけが、他のと違うと思います・・文字じゃないような」と沙紀が無線で返した。


女性達はその言葉で、水の底のダイヤルを取り囲む模様を見ていた。

ハルカとミサキは集中して波動を聞いていた、沙紀はダイヤルの映像を見ていた。


「蟻が道を示すんじゃろう・・フーが辿り着いた、巨大な蟻塚に」と和尚が言った。


女性達はフーの映像に視線を移した、フーはホワイトタイガーを猫ジャラシで誘って、蟻塚の前まで来ていた。


フーの足元から無数の蟻が、フーの体を攻撃しながら上っていた。

フーはそんな事は気にならないようで、草の猫ジャラシをジャングルの奥に投げた。

ホワイトタイガーはそれを追いかけて、ジャングルの奥に消えた。


フーは全身を蟻に包まれながら、蟻塚に駆け寄った。

そして右腕を蟻塚の穴に差し入れて、ゴソゴソと動かして引き抜いた。

フーの右手には無数の蟻と、琥珀色の蜜がベッタリと付いていた。


フーはニヤニヤになって蜜を舐めて、強烈なフー二ヤを出して夢中で舐め始めた。

フーは時折《プッ、プッ》と口から蟻を吐き出しながら、何度も蟻塚に手を入れた。


フーは全身が真っ黒になるほど蟻に囲まれていた、蟻は必死に攻撃していたのだろう。

しかしフーは痛みを感じる事はなかった、ニヤニヤ全開で蜜を舐めていた。


蟻塚の蟻達は、フーを止められないと感じたのだろう。

一列になってジャングルの奥に進みだした、フーはニヤニヤでその列を見ていた。

その時蟻塚から、巨大な蟻が姿を現した。


その蟻は周りの蟻の10倍位の大きさがあり、真赤な色をしていた。


「あの女王蟻の赤の色・・同じですね」とサクラさんが呟いた。

「アイコとリリーに無線が通じない、あの2人が蟻の進む方向に興味を持つか・・そこが勝負だね」と律子が二ヤで言った。


フーの体からも蟻達が離れて、蟻塚から伸びる列に合流した。

フーはニヤニヤで蟻を見送りながら、蜜を夢中で舐めていた。

蟻塚から出てくる蟻は、無限に湧き出すように流れが止まることは無かった。


「それでミホはボンビを用意したのか、マリの開放の鍵をここに届ける為に」と大ママが笑顔で言った時だった。


「そうだと思います・・あの円形の空間は、蟻の示す進路に合わせるんでしょう。

 奴は羅針盤のヒントを蟻塚に隠した、人間なら近づくのにも苦労するから。

 そして女王蟻を赤く染めた、それが隠す時のルールだからでしょうね。

 マリの伝言は・・全ての母親は女王である、どんなに多くても一家族。

 DNAが同じなら、目指す場所も同じ・・その場所が隠された場所。

 マリはそう言いました・・マリは開放されますので、本部に置きます。

 問題は水に沈むダイヤルをどこに合わせるのか・・その意味と理由です。

 私はどうしても羅針盤が見たいので、子供班を追いかけます」


本部の女性達の後ろから、ルミの声が響いた。

女性達が振り向くと、笑顔の幸子とルミが立っていた。


「了解です、ルミ・・羅針盤を頼みますね」と律子が笑顔で返した。

「はい・・やってみます」とルミは笑顔で返して、無線機とスコープだけ持って一人で本部を出た。


「ルミには、武器は何もいらないんだね・・自分に対して、不信感など微塵も無いんだね」と大ママが笑顔で言った。

「幸子・・ルミに同行するのを断られたね」とフネが二ヤで幸子に言った。


「はい・・今じゃないと言われました・・私でも怖いですよ、ルミとマリは」と幸子は嬉しそうな笑顔で返した。


「ハルカ、ミサキ・・そこで待っていて、蟻の行く場所を確認してからダイヤルを回そう」と律子が言った。


ハルカとミサキは波動を聞いて、笑顔で頷いた。


「ミホが天文台に入った」とサクラさんが言って、女性達はミホの映像を見た。


ミホは天文台に入って、屈んで金属の床を両手で触っていた。

そして立体パズルの床から、細長い円柱を引き抜いた。


「マキ・・ミホが天文台の床に穴を開けたからね、重要かも」とアンナが笑顔で言った。


「了解です・・覚えときます」とマキも笑顔で無線で返した。


ミホは床に出来た穴を覗き込み、納得したように立ち上がった。

そして螺旋階段をを上り、2階の青い扉の前に立った。


ミホは瞳を閉じて集中した、右手はドアノブに置かれていた。


「開けられるのか?・・あのドアを」と私の横でマリが呟いた。

「開けられるんだろうね・・ミホだから」と私は二ヤで返した。


ミホは目を開けてドアを睨んだ、そしてドアノブを回して引いた。

青い扉はゆっくりと開いて、ミホの前髪が高原を吹き抜ける風で揺れた。

ミホは微かな微笑を出して、美しい夜の高原を見ていた。


「天文台のドアを開けたね~・・本当に凄い子だよ、ミホは」とフネが笑顔で言って。

「フーにしか開けられない、由美子の世界の扉を開けた・・準備なんだろうね、最後の問題を解決する」と大ママも笑顔で呟いた。


ミホはドアを開けたまま、螺旋階段を下りて天文台を出た。

そして神殿の入口に向かって歩きながら、腕時計のモニターを見ていた。


「あの子達だね」と言ったアイコ声で、女性達が視線を移した。


アイコとリリーは木陰から、幼い兄妹の背中を見ていた。


「何を覗いてるんですかね~・・私達はあの2人とは、関わらない方が良いですよね?」とリリーが笑顔で返した。

「そうだよね・・2人の視線方に回り込もう」とアイコが笑顔で返して、2人は左の方向に回り込んだ。


「グレテル・・あの熊は大丈夫だね、帰ろう」とヘンセルが笑顔で言った。

「うん・・素敵な正義の味方の熊さんだったね」とグレテルが笑顔で返した。


「底無し沼に入った、あの人の仲間なんだろうね・・経験が大事だと言った、素敵な人だったね」とヘンセルが笑顔で返して、グレテルの手を握った。

「私達は不運じゃなかったんだね・・運命じゃなかったんだよね・・魔女は嘘を言ったんだね」とグレテルは笑顔で返した。


「魔女の厳しさが経験なのかもね・・魔女は悪い人じゃないよ、厳しいだけだよ」とヘンセルが言って、グレテルも笑顔で頷いた。


2人は手を強く繋いで、お菓子の家に向けて歩いていた。

映像は小さな2人の背中を映していた、暗い夜道を星の光が照らしていた。


「フー・・ここにいたの」とアイコが笑顔で言って、蟻塚の前に座るフーに駆け寄った。

「お前・・蟻さんが困って、引越ししてるだろ~」とリリーが二ヤで言って、蟻の行進を見ていた。


「フー・・止まって、動かないでね~」とアイコが優しく言って、フーの前に屈んだ。


アイコはフーの顔を見て、嬉しそうな笑顔を出した。


「フー、良くやった・・これが鍵だね」とアイコは笑顔で言って、フーの口元に張り付く木の枝で出来た鍵を取った。


フーはニヤニヤ顔で自慢して、アイコに両手を広げた。

アイコは笑顔でフーを抱き上げて、フーのお腹に付いた蜜を拭いていた。


「リリー・・鍵が有ったよ、行こう」とアイコがリリーの背中に声をかけた。


リリーは蟻の行列を追いかけて、ジャングルの中に入っていた。


「アイコ姉さん・・この蟻はどこに行くんでしょうね?」とリリーは振り向いて笑顔で返した。

「方向的には・・湖の方だよね・・重要かもね・・鍵を届けたら、ここに戻ろう」とアイコが蟻の行列を見ながら笑顔で返した。


「鍵は私が届ける役目です」とアイコの後ろから声が聞こえた。


アイコはリリーの嬉しそうな笑顔を見て、ゆっくりと振り向いた。

そこには可愛いボンビが立っていた、アイコは笑顔で近づいた。


「ボンビが届けてくれるの?」とアイコが笑顔で言った。

「はい・・ミホちゃんに頼まれました」とボンビも笑顔で返した。


「ミホが頼んだの!・・やっぱり、この蟻の進む場所が重要なんだ」とリリーが高速リングの二ヤで言った。

「間違いないね・・ボンビ、よろしくね」とアイコが笑顔で言って、鍵を差し出した。


「はい・・マリちゃんを解放します・・フー、2人を守ってね」とボンビは笑顔で言って、鍵を口に銜えた。


フーはボンビに笑顔で頷いた、それを見てボンビは振り向いて走り出した。


「さぁ・・行きましょう」とリリーがワクワク笑顔で言って、アイコも笑顔で頷いた。


「小僧・・クライマックスを楽しみなよ、行って来る」とマリが笑顔で言って立ち上がった。

『マリ、よろしく・・楽しませてもらうよ』と二ヤで返してマリを見送った。


「さて・・後ろにも応援が来たし、羅針盤も出そうだから・・やっちゃいますか?」とリョウが二ヤで言った。

「そうだね~・・奴が復活すする前に」とカスミが二ヤで言って、ロケットランチャーを担いだ。

「動き出したら、一気にけりをつける・・多分、赤丸は口の中だよ・・応用の利かない回路が考えたのなら」とホノカが二ヤで言った。


「運動能力だけの奴だよ・・チョロイな」とリョウが言った時に、カスミのロケットランチャーが火を噴いた。


小さなロケット型のミサイルは、ボスボーグの首筋に命中し爆発した。

ボスボーグは体制を崩しながら、銀河の3人に向けて右腕を振り下ろした。


銀河は左右に分かれて、ボスボーグの行動を見ていた。

カスミはリョウと右側に走りながら、ボスボーグの速さを感じていた。


「速い!・・来るよ」とリョウが叫んだ時には、カスミの体はボスボーグに掴まれていた。

「やはり・・私がヒロイン」とカスミは二ヤでリョウに言った。


ボスボーグはカスミの腰を掴んで、自分の顔の前まで持ってきた。


「口をあけてごらん・・赤丸を見せて」とカスミは間近にあるボスボーグの巨大な顔に向かい、最強不敵で言った。


ボスボーグはカスミを緑に光る目で見ていた、リョウとホノカはライフルでボスボーグを狙っていた。

カスミは唯一自由に動かせる右足で、ボスボーグの鼻を蹴り上げた。

ボスボーグはそれで怒りのボルテージが上がったのか、大きな口を開けて夜空に吼えた。


星空に向かって吼えたボスボーグの雄叫びが、ジャングルの中に響き渡った。


「ボスボーグ・・怒ってますね~」とシオンがニコちゃんで言って。

「カスミ姉さん・・怒らせるのは得意だよな~」とカレンが二ヤで返した。


「ここからは狙えない!」とホノカが叫んで。

「こっちも無理だよ・・カスミ、さようなら~」とリョウがウルで言った。

「なんだって~・・頼りにならない奴らだ~、久美子~」とカスミがウルで叫んだ時に銃声が響いた。


《ドン》と響いた銃声の方向に、久美子の二ヤ顔があった。


カスミはボスボーグが消えて、かなりの高さから落下しながら久美子を見ていた。

久美子はカスミに二ヤを出していた、カスミが二ヤを出そうとした時に地面に叩き付けられた。


「痛くないけど衝撃は有るな~・・マキはあの高さから、よく戻されなかったな~」とカスミは地面に寝転んだまま、星空を見て呟いた。


「カスミ・・死んだか?」とリョウが二ヤで覗き込んだ。

「南無~・・成仏してね」とホノカの祈りの声が聞こえた。


「死んでないし・・戻されてない・・それよりも、また久美子に取られたぞ」とカスミは二ヤで言って立ち上がった。


「久美子ちゃん、狙って撃つまでが早かったよ~」と3人の後ろからシノブが笑顔で言って。

「流れるような感じだった、さすが久美子だよ」と幻海の女性が二ヤで言った。


「揃いましたね~、正面突破のメンバーが」とリョウが魔性二ヤで返して。

「主役の舞台が、正面の道程に有りますように」とホノカが華麗二ヤで返して、銀河が先頭で湖に向かい歩き出した。


「サルボーグは終了したね・・ミホは又、おとぎの国に戻るのか?」と大ママがモニターを見ながら二ヤで言った。

「ミホも今回は準備に余念がないね~・・前回の反省をしてるね」とフネが言って。

「多分・・ミホが興味を持つ程の強い敵が、現れてないからだろうね」と律子が二ヤで返した。


ミホは小型ジープの横に立って、境界線の3人の方向に両手を振った。


「ミホちゃんが、手を振ってる」と秀美が気づいて、両手を振って応えた。


「ミホは、何か伝えてるんじゃないのか?」とマサル君が言って。

「そうみたいですね・・あの手の動きは、誰かを迎えに来るって言ってるんですね」と沙織が返して。


ミホに向かってマサル君を指差した、ミホは首を横に振った。

沙織は秀美を指差した、ミホは又もや首を横に振った。

沙織は二ヤで自分を指差した、ミホは大きく頷いて運転席に乗り込んだ。


「まずいです~・・私は次元の入口を探せないのに・・沙織の指名が入りました~」と美由紀は飛びながらウルウルで言った。


「美由紀、頑張ってね・・秀美、五平ちゃんのプレゼントを探してね・・私はヒロインになってくる」と沙織は二ヤで言って、戻ろうとした。

「沙織・・ここにいれば良いんだよ、ミホはおとぎの国に帰ったよ」とマサル君が二ヤで言った。

「本当だ・・もういないよ」と秀美も笑顔で言った。


私だけがミホの映像を見ていた、美穂はおとぎの国に入った場所でUターンした。

そしてアクセル全開で、竜巻を目指して走り出した。


ミホの運転する小型ジープは砂埃を巻き上げて、激しく上下に揺れていた。

ミホは揺れる運転席でハンドルを握り、アクセルを踏んだまま夜空を見ていた。

月はソフトクリームの雲に隠れていた、しかし無数の星が砂漠を照らしていた。


ミホは全速で竜巻の前まで走り、竜巻の寸前でジープを止めた。

そして運転席から降りて、竜巻の方に歩いていた。


私はミホの瞳を見ていた、ミホは何の躊躇も無く竜巻の中に入った。


満点の星空に向かい、ミホの体は巻き上げられた。


リリーとアイコは凍結して立っていた、2人の目の前には巨大な穴が現れていた。


クレーターのような3つの穴が、静寂の世界に存在した。


シズカは止まって、そのクレーターの映像を見ていた。


ハルカとミサキは、自分達のダイヤル錠の想定を話していた。


ユリカ達4人は、丸太小屋の中の誰もいないテーブルを見ていた。


5人分の食事の用意が出来ていた、歓迎のような豪華な料理だった。


白いテーブルクロスがかかるテーブルが、3本のロウソクの火で灯されていた。


リアンは暗く静かな夜の湖の、湖面を横目に見ながら湖畔を歩いていた。


湖の奥に大きな門が見えていて、その手前に透明の円盤が浮いていた。


ミホはゆっくりと上昇しながら、右手を伸ばした。


ミホの右手はムーンアタッカーの左翼を掴んだ、ミホはその時に出した。


強烈なミホ二ヤを出したのだ、私はその顔で成功を確信した。


ミホは全ての準備を整えた、悪意に対する全ての準備を・・。









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