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      【冬物語第六章・・未踏の舞台⑭】 

鍾乳洞を縫うように流れる水は、切り立った崖から落ちる滝になっていた。

その滝が作り出す川下に、1軒の可愛い家が建っていた。


女性達はその家を見て、複雑な表情を浮かべていた。

美由紀はそれを感じて、美由紀らしい表現で緊張を解いた。


「見事な描写ですから、沙紀の描いた家ですよね?」と幸子が呟いた。

「間違いなく、沙紀の描いた家でしょう・・でも侵入させたのは、沙紀じゃないですね」とユリさんが真顔で返した。


「沙紀でもなければ、奴でもない・・他の人間で、この世界に侵入できるのは・・小僧だけど、それも違う」と律子がモニターを見ながら言って。

「美由紀の想定が正解でしょね・・沙紀の絵を侵入できる、唯一の存在が実行した・・絶対に重要な場所ですね」とシズカが二ヤで言った。


「本部は全員無線を切って・・シズカ、美由紀の想定を話しなさい」と律子が二ヤで言った。


本部と罠班の女性達が二ヤで頷いて、無線を全員が切った。


「エミ・・あの家を侵入したのは、誰かな?」とシズカがサルボーグと笑顔で話しているエミに聞いた。


「美由紀ちゃんは、見た瞬間に想定したよね・・その可能性は1人だから。

 だから不思議の国のマキ物語の、第三章って言ったんだよね。

 あのお菓子の家は、ヒトミちゃんが侵入した・・それしか考えられない。

 そうなら重要な何かが隠されてる場所だよね、だからみんな何も言わない。

 マキ姉さんに先入観を持たせない為にでしょ、感情移入させる為にだよね。

 でも・・沙紀ちゃんは、絶対に日本の絵本で読んだんだよね。

 私・・律子母さんの言葉を聞いて、西洋の昔話を少し調べてみたの。

 確かにそうだった、西洋の昔話の原作は・・残酷な物語が多かった。

 ヘンゼルとグレーテルの原作も、口減らし・・親が子を捨てるお話だよね。

 それが農耕が発展する前の世界を描いている、時代的な背景なんだよね。


 沙紀ちゃんは多分、お菓子の家だけを好きになって・・描いたんだと思うよ。

 ヘンゼルとグレーテルを描いたのかな~?・・多分、誰かがモデルになってるね。

 あのお菓子の家は、あそこにマキ姉さんを誘う招待状だよね。

 ヒトミちゃん・・ラピヨン3世の招待状だよね、そして滝が舞台の幕。

 美由紀ちゃんはそれを瞬時に想定して、素敵な言葉で表現した。

 緊張感を和らげるという、一石二鳥も加えた凄い表現だった。

 私の限界トリオ、中1トリオは凄いよね・・瞬時に判断し言葉に出来る。

 言葉の達人のエースの相棒、中1トリオはその事に喜びを感じてるよね。

 無線を切ってる状態だから、今話して欲しい・・シズカちゃんの想いを。

 中1トリオに対する、シズカちゃんの想いを・・聞かせて欲しい」


エミは笑顔で強く言った、女性達に期待の笑顔が溢れた。


「そうだよね・・そしてさすがエミだよ、集中してるね。

 エミこそが小僧の心の相棒だろ、小僧は絶対にそう思ってるよ。

 だからエミの事を信頼して、【言葉の羅針盤】に挑ませてる。

 そして私も期待してる、最後の勝負はエミと沙紀なんだってね。


 あのお菓子の家は、絶対にヒトミが侵入した。

 それが出来るのはヒトミだけなんだ、沙紀の世界から何かを抜き取る事は。

 ヒトミにしか出来ない・・お菓子の家は、確かにヒトミの招待状。

 ガラスの平均台の下、あの滝から流れる川の場所は目指さなかったと思う。

 手前のガラスの平均台に心を奪われて、あの空間の奥の滝に興味を持てなかった。

 ハルカ姉さんが違和感を感じた滝を、忘れる程にガラスの平均台が主張した。

 強いアイテムが惑わせた、奴の得意の作戦だったね・・さすがヒトミだよ。


 あの滝からお菓子の家までの間に、絶対に重要な何かがある。

 でもヒトミの招待状がマキ宛なら、マキに詳細を教えてはならない。

 マキの力は・・感情移入の速さと強さで発揮されるからね。

 だから恭子も久美子も何も言わない、そして美由紀は遠回しな表現を選んだ。

 笑いを取る方向で、緊張を緩和する表現を選んだ・・フーの存在も加味してね。

 中1トリオは凄いんだよ・・一人一人の個性が別物で、全員が知識的にも優れてる。

 それも得意な分野が全員違うんだよ、その事を3人は楽しみ・・武器だと思ってる。


 沙織は文系の人間で、言葉遊びのレベルをあそこまで上げた。

 沙織は作文で賞状を何度も取ってるし、読書感想文は感動さえ与える。

 小僧が幼い頃、言葉の修行をしてる時に、沙織はずっと側にいた。

 沙織も達人なんだ・・言葉で想いを表現する達人なんだよ。

 秀美は物理系の人間で、感覚的には私に近い・・機械工学とかが好きなんだ。

 今は機械を動かすという事に興味を持ってる、それは片腕になる前からね。

 実は秀美は最近・・整備工場に何度も来て、車椅子の研究にも参加してる。

 自分の義手も研究してるし、その発想力で私にアドバイスをしてくれる。

 今は車の整備やパワーアップにも興味を持っていて、過激な発想をしてくれる。

 その過激さが気に入られて、今では整備工場のアイドルなんだ。


 美由紀は理数系の能力が突出してる、数式や計算のスピードなんて凄いよ。

 その面では中1の時の私の、遥かに上の世界にいるんだよ。

 美由紀は小僧が外の世界に連れ出すまで、ずっと家の中に閉じ篭っていた。

 机の上で何かをして遊ぶ、その方法をずっと模索していた。

 だから・・美由紀は素敵な絵を描くし、読書量も常人を遥かに超えている。

 数学的な勉強も、美由紀は暇潰しのようにやった・・同じ子供の何倍も。

 数学は解ける問題、答えのある問題だから・・暇潰しには最適だった。

 美由紀は今でもそう言ってるが、美由紀自身は理数系な自分を求めていない。

 美由紀は全ての望みを外してる、足があればとか・・そういう望みを。

 美由紀が求めるものは、たった1つなんだ・・小僧が関わる命の未来。

 それを手助けする、その為に日夜自分と戦ってる・・障害と言われる現実と。

 美由紀の出す答えは・・数式での計算で出す、平均値でも確立でも無い。

 圧倒的な経験値が搾り出す、命に対する解答なんだ・・美由紀にしか出せない。

 小僧はそう思ってる・・それを表現した言葉が、美由紀や秀美に響き続けてる。


 過酷な状況で生きれる事に嫉妬してる、俺はそれ程の強い言葉を持てないから。


 この言葉こそが、小僧の正直な気持ちなんだよね。

 でも普通の人間は、美由紀や秀美に向かって・・絶対に言えないよね。

 言えないのはなぜか?・・それを考えると、自分の狭さを感じてしまう。

 小僧は当事者に言える、面と向かって・・正面から言葉に出来る。

 この言葉こそが・・小僧が障害者に対して叫ぶ、春雨の叫びなんだ。

 小児病棟で経験した全ての現実と、見送った仲間達の言葉なんだよ。

 中1トリオはずっとそれを聞いて来たし、見てきたんだよね。

 最強になって当然・・他を求めない3人だから、辿り着いた世界なんだ。

 幸せも満足も求めなかった子供が辿り着いた・・挑戦と言う世界なんだ。

 そして3人は繋ぐ相手を決めてるんだよ・・それは間違いなく、エミだよ。

 何の疑念も持たずに、繋げる事に誇りを持って・・エミに繋ぐんだよ。

 エミなら次の段階に上げれる、そう信じて・・楽しみにしてるよ」


シズカは強く言葉にした、エミは強い瞳で憧れのシズカの言葉を聞いていた。

エミはシズカの笑顔を見て、少女の輝きを振り撒いて頷いた。


「何!・・小さいよね」とマキの緊張した声がモニターから響いた、全員がモニターに視線を戻した。

「子猿・・子サルボーグだね」と恭子が二ヤで言って。

「かなり小さいし、それも1匹だね・・迷子かな?」と久美子が二ヤで言った。


3人の視線の先、岩場の入口に小さなサルボーグが立っていた。

大きさはモモカ位で、可愛い小猿という感じだった。


3人は銃も構えず、子サルボーグの行動を注視していた。

子サルボーグは岩場に入り駆け出した、そのスピードに3人は固まっていた。

子サルボーグは3人の横をすり抜け、鍾乳洞に入った。


「誰か追って!・・奴は透明の一本橋を破壊に来たのかも」とシズカが叫んだ。


「そういう事か!」と恭子が叫んで振り向いて。

「しまった・・小ささに油断した」と久美子が叫んだ。


「私が行く!・・絶対に透明の平均台には行かせない。

 恭子は沙紀のコンビだし、久美子はライフルの切り札だろ。

 私は泳ぎも得意だし・・私が行って来る」


マキは一気にそう言って、子サルボーグを追って走り出した。


「始まりました~・・嫌な予感炸裂です~」と美由紀がウルウルで言って。

「美由紀・・静かに、見えたよ」とリアンが小声で言った。


リアンの視線の先に、サルボーグの前線基地の緑色のテントが見えていた。

1班の女性達は、双眼鏡を取り出してサルボーグの基地を見ていた。


「ここに前線基地を作ろう、エースの新しく作った簡易テントを出そう」とユリカが二ヤで言って、女性達が頷いた。


マキは子サルボーグを追って、鍾乳洞の行き止まりの場所まで来ていた。

子サルボーグは水に入るのが怖いのか、慎重に水に入っていた。


「泳げないね~、水が怖い?・・てことは、呼吸してる?」とマキは岩陰で見ながら二ヤで呟いた。


「確かに、呼吸してるよね~」とエミが二ヤで捕虜のサルボーグに言った。


「ミコト・・サルボーグの兵隊が出発の準備をしてる、半分はそっちに任せる。

 基地のサルボーグの数が減ったら、基地は壊滅するので・・よろしく」


リアンがテントの中で二ヤで言った、テントの外側はガラスの素材で出来ていた。

シズカが新しく考案した、周りに同化するガラスの繊維で出来ていた。


「了解です・・お任せを」とミコトが二ヤで無線で返した。


「さぁ・・これでゆっくりと、不思議の国のマキ物語が見れるね」とユリカが美由紀に二ヤで言った。

「先制攻撃が、勝利の鉄則だと思います~」と美由紀がウルで返すと、女性達が二ヤで却下した。


マキは子サルボーグの行動を見ていた、子サルボーグは意を決して泳ぎだした。

その姿は泳いでると言うよりも、溺れてるという表現だった。


「あっ!・・世話のやける奴だな~」とマキは慌てて言って、走って川に飛び込んだ。


子サルボーグは必死に腕を動かして、沈まないようにもがいていた。

マキは石版の下で追いついて、子サルボーグを後ろから抱きしめた。


「暴れるな!・・暴れると、2人とも沈むよ」とマキは暴れる子サルボーグに強く言った。


子サルボーグはその声で、静かになってマキに後ろから抱かれていた。


「私はあんたを、消し去ることは出来ない・・サイボーグでも子供だから。

 でもね・・あんたをガラスの一本橋には、行かせられないよ。

 だからこのまま滝に向かう、怖くないからね・・滝壺は深いんだ。

 生臭和尚がそう言ってた、落差が大きいほど深いってね。

 大丈夫・・私が支えてるから、溺れないよ・・絶対に手を離すなよ」


マキは流れながらそう言った、子サルボーグは小さく頷いた。


「そういう展開なら、千鶴達8人を船で戻しましょう・・沙紀が重要でしょうから」とユリさんが幸子に言った。

「了解です・・ヒノキオにそう伝えます」と幸子が返した。


幸子がヒノキオに報告すると、ヒノキオは透明の一本橋の袂で笑顔で頷いた。

ヒノキオは小さなモモカの背中を笑顔で見て、小穴に向かい歩き出した。


「赤を追いかけて」とサブモニターからモモカの声が響いた。


映像には高い場所に慣れた、モモカのルンルン笑顔が映っていた。

安奈とモモカはかなり進んでいた、モモカは安奈の真後ろに運ばれた。


「モモカ・・あれがゴールだね」と安奈が前を見て言った。

「透明のUFOですね~・・湖の真上ですね~」とモモカが後ろからルンルン笑顔で返した。


安奈の正面の遥か先に、透明の円盤型の物体が見えていた。

それは第二の門の手前の湖の上に浮いていた、ガラスのUFOという感じだった。


「あれが未踏の舞台か~」とルミが呟いた。

「透明の円盤・・想定できなかった」とマリも静かに呟いた。


「安奈・・慎重にね、焦らないでね」と幸子が優しく言った。

「了解です・・遠いけど、ゆっくり進みます」と安奈が笑顔で返して、前に向かい歩き出した。


マキと子サルボーグは、鍾乳洞の空間を通り越し流れていた。

滝の音が大きく響いていた、マキは子サルボーグを抱く腕の力を強めた。


照明も無い暗黒の空間を、マキと子サルボーグは流されていた。

映像はマキのスコープの、暗闇を緑で映す赤外線映像だった。


「もうすぐ滝だね、こっちを向いて」とマキが優しく子サルボーグに囁いた。


子サルボーグはマキの腕の中で、ゆっくりと体を回した。

マキは子サルボーグの顔を見て、優しい笑顔になった。


「怖くないよ・・大丈夫」とマキが言った瞬間に、2人は激しい水流に飲まれた。


マキのスコープの映像は、水中をグルグルと回転していた。

そして急に明るくなり、落下している空を映す映像になった。

落下時間の長さが、その落差を表現していた。


快晴の青空の映像が、一気に水中の映像に変わった。

着水の衝撃で、子サルボーグがマキの腕から離れていた。

マキは着水時の衝撃で、動けないようだった。


「マキ!・・しっかりしな」とシズカが叫んだ。


その声を聞いたかのように、映像は水面を目指して泳ぎだした。

マキは一気に水面に顔を出した、滝壺の轟音がマキの耳に飛び込んできた。


「ミニボーグ・・どこ?」とマキは子サルボーグを呼んだ。


「ミニボーグ!・・簡単に命名しました~、安易です~」と美由紀が笑顔で言って、女性達が笑っていた。


「滝壺は無線が届かないね~」とユリカがモニターを見ながら言って。

「そうみたいだね~・・マキが美由紀に何も返さない」とリアンが二ヤで返した。


マキは滝壺に何度か潜って、ミニボーグを探した。

マキが水面に顔を出した時に、視界の隅にミニボーグの姿を捕らえた。

ミニボーグは滝壺の側面の岩場を歩き、滝の裏に入って行った。


「待って~・・私も行くから~」とマキは言って、滝壺に向かい泳ぎだした。


「それでか・・おらんと思ったわい」と和尚がモニターを見ながら言った。


「和尚・・おらんって?」とシズカが二ヤで聞いた。

「ワシの相棒、ユリアがね・・行って来ると言って、出て行ったきりじゃよ」と和尚が二ヤで返した。


「マキの連絡係・・やはりヒトミの招待状ですね~」とフネが二ヤで言って。

「凄いコンビネーションですよね、ヒトミとユリアは」と大ママが笑顔で言った。


マキは岩場に上がり、滝の裏を目指していた。

滝壺の轟音に包まれながら、マキは濡れながら滝の裏の空間に入った。

そこには大きな洞窟が口を開いていた、マキはそれを見て二ヤになった。


「また洞窟か~・・懲りない奴だ」とマキは二ヤで呟いて、腰のベルトから額に付けるライトを出した。


マキはライトを額に付けて、点灯状態を確認して奥に進んだ。

洞窟は奥に行くほど狭まり、怪しい雰囲気が漂っていた。


マキはワクワク笑顔で歩いていた、楽しそうなマキの笑顔だった。


「さすがマキ先輩、あの空間が楽しいんだ~」と沙織が二ヤで言った。

「普通なら怖いよね・・どうして楽しいの?」と秀美が聞いた。


「沙織・・無線で話してね」と幸子が二ヤで無線で言った、沙織は笑顔で頷いた。


「マキ先輩は、霊感の強い少女でした・・私もそれは幼心に感じてました。

 ヒトミを見送った12歳の頃がピークだったと、マキ先輩自身が言っています。

 それから寺に通い、瞑想して自分と向き合い・・制御するようになりました。

 制御を覚えた時に、小僧はマキ先輩と問答をしたんです。

 それが現世問答と呼ばれる、老人達が喜んだ・・伝説の空想問答です。

 限界カルテットと私と美由紀と哲夫に、当然和尚が聞いてます。

 それに老人会の集まりがあって、老人達がニヤニヤで聞き入っていました。


 とても面白い問答でしたけど、私はには完璧に再現する自信がないです。

 この問答こそが、あのマキ先輩のワクワク笑顔の理由です。

 霊界というものが存在するのならば、絶対に次元の扉がある・・そう言った小僧。

 この空想問答でマキ先輩が気付いた、恐怖に関する答えこそがあの笑顔です。

 違和感を感じる場所に扉は無い、扉は隠されている・・それが掟。

 ならば隠し場所は・・風景に溶け込み、違和感を与えない場所にある。

 自然に受け入れる場所、そんな矛盾の場所にある・・小僧はそう強く言いました。

 墓標には意味が無い・・この和尚のタブーの言葉を、小僧はこう解釈してます。

 墓地には扉は無い・・そこには何も存在しない、愛された証の場所だからと」


沙織は笑顔で言った、女性達は真剣に聞いていた。


「面白い話になってきたね~・・誰なら完璧に再現できるの?」とやはり霊感が強いと感じていた、美冬が笑顔で聞いた。


「それは・・マキか小僧でないと無理だよね?・・ヨーコ」とシズカが二ヤでヨーコに聞いた。

「うん・・美由紀が手を上げないなら、2人にしか無理だよ」とヨーコが二ヤで返した。

「今記憶を辿ってたけど、無理ですね~」と美由紀が無線で返した。


「それなら、終わった後の1つ目の楽しみにしましょう・・私も楽しみだ~」と幸子が言って、女性達が笑顔で頷いた。


「やばい!・・無線交信が出来ないのに、難解な問題が出た」とマキが洞窟内で呟いた。


映像には洞窟が2つに分かれる場所に立つ、マキの困った顔が映っていた。

2つの洞窟の入口の真ん中に、問題の書かれた立て札が立っていた。


その立て札にはこう書かれていた。


【1本の道が鍵に続き、もう1本はリアルに繋がる。

 失う事は許されない、失いは洞窟の消滅を意味する。

 右の洞窟は、マカイの道

 左の洞窟は、ミカイの道・・選択せよ       】


「なんだこりゃ・・マカイって、魔界なのか?

 ミカイって、未開なのか?・・それとも天然変換かな」


マキはウルで考えていた、女性達も真剣に考えていた。


「あっ!・・ユリア、私に付いて来てたの~・・ありがとね、嬉しいよ~・・本部に連絡できる?」とマキが嬉しそうな笑顔で聞いた。


マキはユリアの波動の返事を聞いて、笑顔が溢れていた。


「それなら、本部での検討もよろしくって伝えてね・・私も考えながら、解答を待ってるって」とマキが笑顔で言った。


本部に強い波動が吹いたのだろう、本部の女性達に笑顔が溢れた。


「ユリア、ありがとう・・マキに了解と伝えてね」と幸子が嬉しそうな笑顔で言った。


幸子はユリアの波動を強く感じたのだろう、本当に嬉しそうな幸子の笑顔だった。


「マカイとミカイね~」と沙織が言って。

「言葉の惑わしだよね?・・言葉にしたら、難解になるような」と秀美が二ヤで返して。

「漢字変換は危険だよね、そこが罠なんだよ」と美由紀が二ヤで言った。


「さてと、頑張らないと・・中1トリオに先を越されるよ~、エミ」とミコトが二ヤで言った。

「はい・・頑張ります」とエミが笑顔で返した。


「もちろん私も~」と蘭が鍾乳洞の入口の2人に合流して言って。

「私が解答を出して、お褒めの言葉を貰います」とナギサが華やか二ヤで言った。


「残念ですが・・エミは想定できた笑顔です」とシズカが二ヤで返した、女性達も中1トリオも凍結した。


「シズカちゃん・・この問題には、次があるよね?」とエミが笑顔で言った。

「次があるね・・その根拠は?」とシズカが二ヤで返した。


「これは表記の作為なんだよね・・カタカナの【カ】の部分が。

 カタカナの【カ】が平仮名だと仮定したら、こんな問題になるよ。

 右が【マ】か【イ】に進む道で、左が【ミ】か【イ】に進む道。

 どっちを行っても、次の分かれ道で・・【イ】には進めるんだよ。

 そしてここの表現が違和感でしょ・・失いは消滅を意味する。

 この前の言葉は、失う事という自然な表現なのに。

 それに続く言葉が、【失い】ってなってるから違和感だよね。

 この【失い】が違和感だから、ヒントなんだよね・・いつもの事だよ。

 【失い】という普段使わない表現も、文字の表記が違うと仮定できる。

 【失い】の平仮名の【い】は、実はカタカナの【イ】なんだよ。


 出さなければならないヒントがある、奴は応用が利かないから出来ない。

 ヒントの違和感を隠すことが出来ない、応用が利かないただの回路でしょ。

 失いがヒントなら・・【イ】を失ったらいけない、そう考えれば良い。

 この段階での分かれ道に意味は無い、どっちも【イ】には繋がる。

 【イ】を選択すれば良い、【イ】を失わなければ鍵に繋がる。

 私の解答はこうだよ・・これがエース式、作為の方程式です。

 X=違和感なんだよ・・求めるべき答えは、奴の単純な思考なんだよね」


エミは嬉しそうな笑顔で言った、シズカが強烈な二ヤで返した。

女性達がエミの凄さに感動して、嬉しそうな笑顔を出した。


「中1トリオ・・今のエミの解答に、同意するかい?」とシズカが二ヤ継続で言った。


「何も言う事はありません、完璧な解答でした」と美由紀がウルで言って、沙織と秀美がウルで頷いた。


「エミ・・凄すぎるよ」とミコトが笑顔でエミに言った。


エミはミコトに言われて嬉しいのか、照れた笑顔で頷いた。


「凄いよね~、エミ」とルミも嬉しそうな笑顔で言って。


「エミのこの集中を引き出す為にも、そして今回の最大の策略として。

 小僧はサクラさんとアイさんに、何か特別任務を依頼したよな。

 そして女性達が誰も2人の名前を出さない、それも凄い事だよね。

 これまでの経験がレベルを上げてるね、裏付けのあるレベルを」


マリが二ヤで言った、私も二ヤで返した。


『サクラさん・・おめでただからね、安全で重要な役を引き受けてもらったよ・・お楽しみに』と二ヤで返した。


「私とマリに、先に悟られないようにね・・楽しみが減るから」とルミが二ヤで返してきて。

「まぁ頑張るでしょ・・私達に悟られたら、奴にも悟られる可能性が高いからね~」とマリも二ヤで言ってモニターに視線を戻した。


メインモニターには、ユリアの報告を笑顔で聞いてるマキが映っていた。


「さすが、エミ・・1番頼りになるね~・・美由紀より」とマキが二ヤで言って、左の洞窟に入って行った。


「煽りました~・・今、強烈に煽られました~・・サルボーグの基地に、1人で突っ込んで良いですか?」と美由紀が立ってウルウルで強く言った。


美由紀のウルウルで震える足を、フーがツンツンと突いた。

美由紀がフーにウル顔を向けると、フーは右手を口元に持ってきて。

《ククク》という感じで笑った、美由紀はそれをウルで見て、黙って背中にマシンガンを背負った。


女性達はその映像を見て、大爆笑モードに入った。


「美由紀・・フーに煽られたら、ダメでしょ」と沙織が二ヤで美由紀の背中を抱いて。

「今からだよ・・今からが、私達が主役になる物語だよ」と秀美も二ヤで美由紀を抑えた。


「前回も前々回も、アントワープも・・そう思ってる内に終わった」と美由紀がウルウルで主張した。


「美由紀は今回・・ミロを助けたじゃない、みんなの心には強く残ってるよ~」と沙織が笑顔で返して。

「そうだよ~・・それに最初の敵、サソリも蹴飛ばしたでしょ・・素敵だったよ~」と秀美が笑顔で返した。


美由紀はウル顔のまま、近くのセリカを見た。


「そんな事もあったね~・・昔話みたいだね~」とセリカが強烈な流星二ヤで言った。


「流れました~・・流星群が尾を引いて流れました~・・行って来ます」と言った美由紀が行こうとするのを、フーが左手一本で押さえていた。


「まぁ、美由紀・・座りなよ・・今からだよ、今から」とリアンが笑いながら自分の横に引っ張った。

「そうだよ・・決戦は?」とユリカが二ヤで美由紀に聞いた。


「闇夜の決戦・・そこで主役になる」と美由紀が強く返して、リアンの横に座ってモニターを見た。


「問題は何の鍵なのか?・・ですね」と千春がユリカに言った。

「そうだと思うよね・・人質の解放の鍵なら、ミホが戻ってくる」とユリカが笑顔で返した。


「戻ってくると聞くだけで、ワクワクしますね・・ミホの場合は」とホノカが笑顔で言って。

「絶対に決戦には必要ですよね、ミホという存在は」と美冬が笑顔で言って、全員が笑顔で頷いた。


マキは深い洞窟を進んでいた、ユリアと何かを話しながら。


子サルボーグは鍵の側で待っていた、マキとユリアの登場を。


安奈とモモカは、楽しそうに透明の平均台を歩いていた。


ミホは集中を全く切らさずに、モニターを見ていた。


由美子の世界が動き出していた、沙紀は鍾乳洞の入口から本部を目指していた。


ジャングルは夕暮れに進んでいた、しかし熱も湿度も高かった。


女性達は、乾いた風を懐かしく感じていた・・吹いて欲しいと願っていた。


ジャングルに吹き付ける、乾燥した砂漠からの・・灼熱の風を・・。











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