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      【冬物語第六章・・未踏の舞台⑫】 

純粋という武器には、何の制限も制約も無い。

諦めるという事を知らない、知る必要がないのだから。


快晴の砂漠の空の下、神殿に作られた大きなテントの中に、女性達の笑顔が咲き乱れていた。


女性達は沙紀の言葉を受けて、罠の作戦会議に入った。


シズカが嬉しそうな笑顔でモニター席にに戻っていると、モニターの前に本部の大御所が揃っていた。

映像には暗い世界を光で照らす光景と、もの凄いスピードで木々を飛び越える映像だった。


サルボーグのスパイカメラの映像は、仲間の元に向かっているサルボーグの映像だった。


「ありました!・・水の流れ込む小さな入口、罠の看板があります」とホノカが照明で照らしながら言った。


鍾乳洞班の全員が集まり、その水の流れる方向を見ていた。

鍾乳洞の内部は、歩ける場所は行き止まり、女性達は周りの状況を確認していたのだ。


ホノカの見つけた水の流れ込む入口の上には、石に文字がこう刻み込まれていた。


【未踏の舞台 入口】と強い文字で刻まれていた。


「泳いで入れって事ですね」とセリカが真顔で言って。

「泳いで入るなら、危険な罠ですよね」とレンが真顔で言った。


「罠だとしても・・入るしかないですね、俺が泳ぎが得意だから行きます。

 ヒノキオと・・ヒノキオは沈まないから、大丈夫だよな?」


マサル君が笑顔でヒノキオに言った、ヒノキオも笑顔で返した。


「大丈夫だよ・・道の安全を確認するのが、道案内の役目だから」とヒノキオはリアンを見て笑顔で言った。


「泳ぎの得意な、私とハルカで同行します」とミサキが笑顔で言って。

「未踏の舞台に向かうなら、道の安全確認が必要ですね」とハルカも笑顔でリアンに言った。


「良いだろう・・任せるよ、私達は入口班に合流する。

 そのまま奥を目指して進むから、4人が外の世界に戻った時は。

 1度本部に戻って、本部の指示に従え・・期待してるよ。

 罠かどうか確認しろ・・本当に未踏の舞台の入口なら、モモカと誰かが目指す。

 だから・・大変だろうが、水の中の安全も確認してくれ」


リアンは真顔で強く言った、全員が集中して美しかった。


「了解」と4人が笑顔で返した。


4人は装備の確認をして、ヒノキオの額にも照明用のライトを装着した。


「未踏の舞台か~・・罠っぽいね~」と大ママがモニターを見て言った。


「あの暗い世界の水に入るのは、怖いだろうに・・ミサキもハルカも成長しましたね、責任感が芽生えてます」とミチルが笑顔で言った。

「本当だよね~・・あの噂の16歳のコンビが、2年でこんなに成長してる」とフネも嬉しそうな笑顔で言った。


「2人とも、成長せざる得ない状況だから・・下の世代に最強が登場したから」と大ママが二ヤで言って。

「ミサキとハルカにヨーコとマキのコンビ、将来が楽しみな4人ですね」とユリさんが薔薇の笑顔で返した。


「なんせ・・噂の夜街のエースが、同世代だと感じて煽る4人だから・・将来像が少し怖いよね~」とミチルが律子に二ヤで言った。


「小僧はそうだろうね、ハルカとミサキには特別な感情が有るよ。

 小僧は限界カルテットに育てられた、私はご飯を用意しただけだから。

 小僧の実質的な経験も、勉強も人間関係の構築も・・全て4人が叩き込んだ。

 そして男の生き方を、豊が行動で見せ続けた・・小僧は幸運な男なんだよね。

 だからこそ同世代には思い入れが強い、ハルカとミサキは当然それに入る。

 小僧が上に対して同世代だと感じるのは、豊までだと思うからね。

 豊の1つ下で、限界ファイブの1つ上・・正に同世代の象徴だろうね。

 その将来像に小僧は賭けてるんだろうね、自分の想定する夜街の将来像を。

 そして東京PGの想定にも、その存在が重要な鍵になるんだろうね。

 小僧はすでに4年後を想定してる・・奴はその部分には抜かりがないよね」


律子は二ヤでシズカに言った、シズカも二ヤで頷いた。


映像は水に入る4人の姿が映されていた、4人とも笑顔で水に入って手を振った。


「ハルカ、ミサキ・・映像と音声を、本部が拾ってると仮定して。

 言葉でも流れる時の状況を伝えて、深さや水温や流れの速さもね。

 そうすれば本部が判断するから、ボートで行けるのかの判断が出来るからね」


セリカが4人に笑顔で言った、4人は水面から顔だけを出して頷いた。


「了解です・・水は少し冷たいけど、気持ちの良いレベルです・・行って来ます」とハルカが笑顔で返して、4人は流れに沿って泳ぎはじめた。


「さすがセリカ姉さん、指示に無駄が無い」とシズカが笑顔で呟いた。


「シズカ・・先輩に対しての無駄が無いの、深い意味は?」と幸子が無線を使い二ヤで聞いた。


「シズカ・・無線で話してね」とユリカが無線で言った。


「4人は笑顔で水に入ってますが、絶対に緊張感を背負ってますよね。

 特にリーダーになっている、ハルカ姉さんとミサキ姉さんは。

 そんな状況の人に指示を出す時には、要点と意味だけを伝えるんです。

 期待してると言うのは、リアン姉さんが許可する時に言ってますから。

 だから負担を軽減するように指示を出すのが、ベストな選択だと思います。

 セリカ姉さんは、言葉でも伝えろと言いました。

 映像だけでは伝わらない部分が重要ですから、それを提案しましたね。

 そしてそれが一石二鳥になると判断してますね・・さすがですよ。

 言葉に出す行為で緊張感が和らぐし、状況判断は必要ないと伝えた。

 状況判断は本部がすると言った言葉で、その部分の重責を外しました。

 モモカと誰かが目指す場所ならば、安全確認が最重要ですから。

 かなりの重責を感じてるのは明白です、それを外す言葉を選んだ。

 全ての責任を背負う必要は無いと伝えました、最も強く伝わる場面で。

 水に入った瞬間の、最も緊張感が高まる場面を狙って伝えた。

 今でも在校生の最大の伝説、開校以来の最強のマドンナと言われた少女。

 現3年生の男子が今も追い求める存在であり、忘れ得ぬ足跡を残した少女。

 女子に【進学校の反逆者】と言われ、男子に【生き急ぐ幻】と言われた。

 そして後輩達が愛情と憧れを込めて、後輩である誇りを感じてこう呼んでいる。

 光の速度、光速のマドンナと言われる・・それが、セリカ姉さんです」


シズカは強い言葉で表現した、愛情のある言葉だった。


「そうなんだね・・生き急ぐ幻、光速のマドンナか~・・正にセリカだね~」と幸子が二ヤで言って。


「そのセリカにブレーキを付けました、エースは加速力に絞りました。

 常時全開でなく、ペースを覚える事に重点を置きました。

 ユリカとエースの夜街最強コンビは、その方向を目指させる事にした。

 打ち合わせも何もせずに、2人は同じ方向に舵を切った。

 そして若手女性達にセリカの事を、こう強く表現しました。

 その時の加速力を感じろ、絶対に最新型のエンジンだと感じると。

 行き急ぐ幻を、現実世界に戻し・・肉眼で捉えられる存在にしましたね。

 エースは絶対にリアルに感じてます、東京PGに流れる流星を」


ユリさんがモニターを見ながら、薔薇の微笑で言った。


モニターには、ハルカのスコープ映像が流れていた。


「水深は・・足は届かないが、そんなに深くないと思える」とミサキが言って。

「水温も快適な状態・・しかし狭まるので、水流は速い」とハルカが言った。


4人は石版の下に入り、狭い洞窟を流れていた。

マサル君が球体の照明装置を、20m程度の間隔で岩に貼り付けていた。


「球体照明・・製品番号、M-0028・・マリの依頼品だね~」とシズカが装備一覧表を見て二ヤで言った。

「それをマサルに持たせたね、マリは本当に凄い子だね~」と大ママが笑顔で返した。


「シズカの個人的な見解として・・マリは何をどう感じてると思ってるの?」と幸子が又も無線を使い二ヤで聞いた。


「当然、無線で述べよ」とユリカが二ヤで付け足した。


「マリは相手の想定を読む達人です・・これは小僧の表現ですよね。

 私もそう思っています、マリは奴の想定してる部分を読んでいる。

 それは漠然とした感じだと思います、今の鍾乳洞なら暗いイメージのような。

 そんな感じを掴んで、必要だと感じた物を小僧に発注する。

 小僧は何も聞かずにそれを製作し、マリはそれをその人だけに伝えます。

 持って行ってと言うだけです、使用方法などは何一つ言いません。


 マサルはマリに託されて、ワクワクだったでしょうね・・仲良しですから。

 マサルは中学の頃、障害者の世界では、一目置かれる存在だったそうです。

 今でもそうでしょうけど、今はマリとルミもいますから。

 マサルは強い男です、普通の公立学校に通いました。

 小学校も中学校も、普通の公立学校の普通クラスに通いました。

 それがどんなに大変な事なのか、私には想像も出来ません。

 マサルは絶対に、マリに出会って覚醒した・・記憶を引き出す範囲が広がった。

 私はその事は強く感じました、一時期マサルの研究に没頭してましたから。

 記憶という私の求めるテーマに対して、マサルは圧倒的な力を持ってます。

 マサルと触れ合い感じる事で、私は沢山の自分の間違いに気付きました。


 記憶させる事に重きを置いても無駄なんだと、問題は引き出し方だと。

 そう感じましたね・・この結論の根拠は、マリが私に伝えてくれました。

 マリが小僧の記憶を引き出す事で、それを強く感じました。

 小僧自身でも鮮明に覚えてない部分まで、鮮明な映像として引き出す事が出来た。

 強い思い出なら、脳は鮮明に記憶してる・・それだけの情報処理能力はある。

 マリがそれを私に確信させてくれました・・マリは想定の達人です。

 マリの読む事とは・・時間軸に囚われない、記憶に残された部分。

 脳が記憶した、未来の想定を読めると思います・・想定なら読めるんです。


 マリが小僧に提示した、小僧が悪乗りで予言と言ってる言葉。

 あれはマリが小僧に感じた、小僧が無意識に想定している部分だったのでしょう。

 私の個人的な考えで言いますね、マリの成長を近くで感じていた者として。

 あの時の小僧は、小学生の期間は小児病棟に通うと決めていた。

 マリはその小僧の気持ちを読み取った、それが小僧の構想であり想定だった。

 その想定通りに進んだ場合の重要な部分を、マリは無意識に読み取った。

 それがマリの中に文字が現れた、マリはその文字を小僧に伝えた。


 その提示が・・ヒトミとミホの名前や、蘭やユリが香りのような部分です。

 マリ本人も何の事だか分からない、でも小僧の未来の想定だと感じた。

 マリも小僧も、この提示を誰かに伝えると記憶から消えると言う。

 これは最近マリ本人から聞きました、マリは探ってみたんだそうです。

 自分が小僧に提示した言葉を、小僧が和尚に伝えて忘れたという言葉を。

 マリは小僧に内緒で、小僧の記憶の中を探した・・無かったそうです。

 絶対に強い思い出だったはずなのに、記憶の中には何も無かったそうです。


 マリはそれを感じて、段階をまた1段上げましたね。

 マリは自分の言葉に従順です、その想いに対して真摯に向き合える。

 マリは自分の望みだった契約を拒否してまで、自分の力を存続させた。

 その想いはマリの言葉に表れています、幸子姉さんもそれを聞かれましたよね。

 マリは自分の力の意味を確信してる、そしてそれを無駄にしない。

 マリはその力の使用方法を、ヒトミで感じました・・ヒトミが伝えた。


 生命の為にだけ使う、善良な子供に対する、悪質なシナリオに対してだけ使う。


 このマリの言葉に、微塵も嘘は無いでしょうね。

 この言葉は・・マリの誓いの言葉です、ヒトミに誓った言葉なんです。

 ヒトミに会いに行けなかったマリ・・その真意は愛情と優しさでした。

 これは私の想定ですが・・和尚の言葉で、ヒトミの力を想定しました。

 小僧は無意識に感じてたはず、マリは確信的に感じてたと思います。

 ヒトミは取り込む力が有った、他人の感性まで取り込む力が有ったと思います。

 ヒトミは置き換えの達人だと、小僧も美由紀も言っています。

 相手の話を聞きながら、その相手に自分を重ねてしまうような。

 だから美由紀も哲夫も、誰にも話せなかった苦悩までヒトミに話した。

 ヒトミが自分に重なっていて、自然に言葉に出来た・・美由紀はそう言いました。


 だからマリはヒトミに会いに行けなかった、ヒトミがマリを感じたら重ねるから。

 そうすればヒトミはマリの力を得る、それは絶望なのだとマリは知っていた。

 マリはヒトミの終焉を確信していた、それでもマリは必死にヒトミの為に戦った。

 その強い想いが、マリをヒトミの世界のオババ館まで連れて行った。

 マリの言葉で最も自分を表現してるのが、子供達にも響いているあの言葉。

 沙紀にも由美子にも響いている、ミロにもアルコにも響いている言葉。


 シナリオは無い、シナリオは自分で書く・・この言葉です。


 マリはヒトミの終焉を、小僧の想定上の未来で感じ取った。

 でも・・シナリオは書き換えられると信じて、最後まで戦いました。

 そしてヒトミを見送り、ルミに出会い・・沙紀と由美子に出会った。

 その全ての出会いと経験で出した結論が、シナリオは無いという言葉。

 未来は存在しないと強く言うマリ、それを煽り続ける親友のルミ。

 私達に敗北の設定は無いでしょう、私達には最強の2人が寄り添っている。

 由美子の未来は、由美子自身が書き綴るシナリオだと・・2人が強く言うから。

 それを妨害する悪質なシナリオに、戦いを挑むと強く表現するから。

 自らも悪質なシナリオに翻弄された、最強の2人が強く伝えてくれるから。

 私達も共に戦う・・許されないシナリオを、白紙に戻す戦いなら」


シズカは笑顔で一気に語った、珍しく感情的なシズカの言葉だった。

シズカは沙紀の言葉に感動していた、可能性を加えたと言った言葉に。

理想の心が求めるものが何なのか、知りたいと言った沙紀の言葉に。


本部の女性にも、洞窟前の女性達にも笑顔が溢れていた。


私はマリの涙を感じていた、マリは俯いて泣いていた。

マリの右手を強く握って、ルミも嬉しそうに泣いていた。

ミホはシズカの顔を見ながら、強い集中の中にいた。


「和尚の感じたヒトミの力は?・・言わないよね~」と律子も無線を使い二ヤで言った。


和尚は椅子に座り、モニターをニヤニヤで見ていた。


「ヒトミは感性が外にあった、そんな感じを受けたよ。

 小僧に紹介されて初めてヒトミに会った時に、ワシは泣きそうだったよ。

 その豊かな感性が溢れ出していて、それが病室を包んでいた。

 分かり易く言えば、ヒトミにもユリアがいたような感じじゃよ。

 もちろん、分身じゃない・・ヒトミ自身の感性だけが浮遊していた。

 だからあれ程の温もりを感じる空間だった、ヒトミの感性が包み込んでたからの。

 由美子が今回賭けに出した、生体離脱は・・ヒトミの教えじゃろうな。

 体を動かす自由を奪われたなら、感性を自由に動かす技を持つよ。

 ワシがヒトミに出会った夜、十数年ぶりに仙人が寺に来てそう言った。

 ワシはただ嬉しかったよ、ヒトミが人間の可能性を広げてくれたから。

 ワシは自分の間違いを悟ったよ・・人間の感性は未知数だとね」


和尚は無線で二ヤ顔で言った、女性達は笑顔で返した。


「よし・・良い話だったね・・ユリカ、行こうか」とユリカのの後ろからリアンが笑顔で言った。

「そうだね・・その前に、サルボーグの映像を見てよ・・本部、映像をよろしく」とユリカが二ヤで返した。


「了解・・出します」とシズカが笑顔で返して、サルボーグの映像を出した。


リアンと鍾乳洞突入班は、二ヤでサルボーグと美由紀とフーの映像を見ていた時だった。


「水流が変化します・・大きな空間が見えて来ました」とハルカが強く言った。


女性達の視線がモニターに移った、2班の女性達もモニター前に集まった。


小さな地下水流の流れが、大きな空間で池のように溜まっていた。

池の右側に鍾乳洞に囲まれた大きな空間があった、マサル君が先頭で球体照明を岩壁に付けながら上陸した。


マサル君の後を、ヒノキオ・ハルカ・ミサキの順で上陸した。


「奥が少し明るいですね、外に出る空間が有るんですかね~?」とマサル君が鍾乳洞の奥を覗いて言った。

「そうみたいだね・・調査しよう」とミサキが笑顔で返した。


「マサル君・・この池の奥の音、やっぱり滝だと思う?」とハルカがウルで言った。

「滝でしょうね・・それもかなり落差のある」とマサル君が二ヤで返した。


「滝が有るなら、ボートでは無理だね」とハルカがウルで言って。

「そうだね・・まずはこの奥の光の調査からだね」とミサキが二ヤで返して、先頭を歩いた。


「鍾乳洞は敵がいないね」とミサキに並んで、ハルカが笑顔で言った。

「水の中の、黒いのは何だったの?」とヒノキオが笑顔で聞いた。

「あっ!・・ヒノキオ、言わなくていいのに」とマサル君が二ヤで言った。


「何!・・黒いのって、何?」とハルカが振り向いて言った。


「体長30cm位の、ヒルの大群がいましたよ」とマサル君が二ヤで返した。

「うっそ!・・全然感じなかった」とミサキがウルで返した。


「セリカさんの作戦でしたね、2人は流れや環境に集中してました・・ヒルはスーツを着てれば問題無いですよ、視覚的な効果です」とマサル君は笑顔で返した。


「そうなんだ~・・さすがセリカ姉さん」とハルカが笑顔で言って。

「○校の理数科出身だよ・・凄いよね~」とミサキも笑顔で返した。


セリカは鍾乳洞の入口で、ニコニコ笑顔になっていた。


4人は笑顔で話しながら、奥の光を目指していた。

その光はスポットライトのように、巨大な鍾乳石を照らしていた。


「1番大きな鍾乳石を照らしてる、日光だよね?」とハルカが光の方を見て言った。

「日光だと思うよ、外と繋がってる感じだよ」とミサキが返して。

「空気も澄んでますよね、洞窟の特有の空気の淀みが無い」とマサル君が返して、光の入っている場所に近づいた。


「小さな穴が外まで空いてます、そこから日光が入ってる・・穴の直径は55cmです」とマサル君が測って言った。

「55cmしかないの、入るのは無理だね」とミサキが返した。


「私達じゃ無理ですね・・でもヒノキオなら、モモカ位の体なら入れます」とマサル君が二ヤで言った。

「うん・・行って来るよ、外の世界を見に」とヒノキオが笑顔で返した。


「頼んだよ、ヒノキオ・・外の空間に出れば、本部と無線交信できるかも。

 やってみて、外の状況を伝えてね・・それと鍾乳洞内を、映像で確認できるのか。

 それを聞いてね・・気を付けてね、ここで待ってるから」


ハルカが笑顔で言った、ヒノキオは笑顔で頷いた。

マサル君がヒノキオを抱き上げて、小さな穴の入口に頭から入れた。

ヒノキオはスムーズに、少し上向きの傾斜の小穴を上って行った。


「未踏の舞台が罠なのか?・・重要な場所なのか?・・外に何かが有りそうだね~」と律子が二ヤで言って。

「子供しか入れない穴、それが罠なら悪意だね~」とフネも二ヤで言った。


メインモニターの映像は、ヒノキオのスコープの映像だった。

狭い空間をスムーズに進んでいた、出口が近づいていた。

ヒノキオは出口から顔を出して下を見た、断崖の足場まで30cm程の高さだった。


ヒノキオは慎重に出口から出た、断崖絶壁に囲まれた場所だった。

眼下には広大なジャングルが見えていた、その遥か先に大き湖の奥に大きな門が見えていた。


「ヒノキオ、ご苦労さん・・そのまま、首だけをゆっくりと回して」とシズカが無線で言った。

「了解です・・左から回しますね」とヒノキオは無線が通じて嬉しかったのか、笑顔で返した。


ヒノキオのスコープの映像は、広大な緑のジャングルを映していた。

湖と門以外は、全てが緑で覆われていた。


「OK・・ありがとう、頑張ったね・・鍾乳洞内の、映像も音声も捉えてるからね」とシズカが優しく言葉にした。

「了解です・・この崖の道を奥に進んでみます」とヒノキオが笑顔で返した。

「気をつけるんだよ、罠かも知れないから」とシズカが返した、ヒノキオは強く頷いた。


ヒノキオは断崖絶壁の崖に沿う道を、慎重に歩いていた。

崖の道幅は50cm程度で、その下に見えるジャングルは遥かに下だった。

身がすくむような高さの崖を、ヒノキオは歩いていた。


「展望台がある!・・罠じゃないのか?」とリアンが強く言った。

「観光地でもないのに・・展望台?・・危ないね~」とユリカが二ヤで返した。


ヒノキオは2人の言葉を無線で聞いて、慎重に歩を進めた。

ヒノキオの目の前には、外に突き出た部分があり、そこに看板が立っていた。


「俺・・まだ字が読めないから、誰か読んで下さい」とヒノキオがウルで言って、看板の前に立った。


「未踏の舞台に続く、ガラスの一本橋・・高度300m、制限重量25kg未満・・そう書いてあるんだよ」とシズカが言った。


「ヒノキオ・・その先端に行って見て、ガラスの一本橋があるかも」とユリカが言った。

「了解」とヒノキオは返して、ゆっくりと先端に向かった。


「有りました・・映像で分かるかな~?・・透明の橋です、ずっと向こうまで続いてます」とヒノキオが言った。


映像には何も映っていなかった、遥かなるジャングルが霞んで映っているだけだった。


「ヒノキオ・・映像じゃ確認しずらい・・橋の先端に、足元の砂をかけてみて」とシズカが言った。

「了解」とヒノキオが返して、屈んで砂を掴み橋の先端にかけた。


「透明の平均台!」とシズカが叫んで、静寂が流れていた。


正に透明の平均台だった、その幅の細さが静寂を連れて来た。


「ほら~・・私だったね、未踏に一緒に行くの」と静寂を破ったのは安奈の可愛い声だった。

「そうだね~・・あれは安奈にしか渡れないよ~」とモモカがルンルン笑顔で返した。


本部の女性達は、嬉しそうに笑う2人を見ていた。


「安奈・・あそこは飛べないんだよ、それでも大丈夫?」とミチルが笑顔で聞いた。

「はい、大丈夫です・・安奈・・高い所、大好きです」と安奈が笑顔で返した。


「行かせましょう、安奈とモモカに・・透明の平均台に」と母親のアンナが笑顔で言った。

「そうですね・・2人に託しましょう」とユリさんが薔薇の微笑で返した。


「作戦を練りましょう・・ヒノキオは1度戻って、この状況を3人に話して・・そしてまたそこに戻ってきて、作戦を伝えるから」とシズカが言った。


「了解です」とヒノキオが返して、戻り始めた。


「よし・・私達は、このサルボーグの白点を追いかけよう・・行こうかね」とユリカがレーダーの点を指差して言った。

「了解」と鍾乳洞の入口の女性達が返して立ち上がった。


「ヒノキオ・・頑張れよ」と美由紀が無線で言った。

「任せて・・美由紀も頑張れよ」とヒノキオが二ヤで返した。


「生意気だよ・・鼻が伸びるぞ」と美由紀は二ヤで返して、車椅子に乗った。

「帰りは楽で良いや、滑り台みたい」とヒノキオは二ヤで言って、小穴を滑っていた。


「フー・・羨ましそうに見るな、お前には無理だ・・直径55cmだぞ」と美由紀はモニターを見る、フーのお腹を摘んで二ヤで言った。


フーはウルウルで返した、そのウルウルを見て女性達が笑っていた。


「本当に凄いコンビだ・・簡単に緊張を緩和する」と蘭がモニターを見ながら二ヤで言って。

「フーはもしかして、計算して狙ってる?・・美由紀の対応を予想して?」とナギサが二ヤで返した。


「そんな想定はよそう、子供達の夢を壊すから」とミコトが二ヤで小声で言って。

「自分の中だけで想定して、ニヤニヤして楽しもう」と千鶴が二ヤで返した。


4人は二ヤで頷いて、作戦会議を再開した。


モモカと安奈を、透明の平均台まで到達させる作戦を練り始めた。


崖の上から伸びる、ガラスの一本橋。


自分を信じるしかない、進むべき道は見えない。


未来も将来も確定していない、それを示す一本橋の先にある。


未踏の舞台に立つために、モモカと安奈は笑っていた・・。




 

 




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