【冬物語第六章・・未踏の舞台⑧】
後悔とどう向き合うのか、難しい事である。
自分を正確に分析する、自分の真実だけを見極める。
それが最も大切で、最も難しい事なのだろう。
私自身は今でもそれが出来ているという自信が無い、完璧に出来る者を知っているから。
美由紀という圧倒的な存在がいるから、自分はまだまだだと感じてしまう。
美由紀はヒトミを見送って、ずっと心の準備をしていた。
精神的な準備を徹底的にやった、それは悔しさの反動だったのだろう。
美由紀がヒトミと過ごした時期は、美由紀は自分の現状を乗り越える時期だった。
だから美由紀自身は、ヒトミに対して何も出来なかったと感じていた。
美由紀はヒトミから、障害を乗り越えるのに大切なものを沢山受け取った。
しかし美由紀はヒトミに頼るばかりで、何も返せなかったと強く後悔した。
事実はそうでなかった、ヒトミは美由紀を心から親友だと感じていた。
そして共に戦う仲間だと感じていた、ヒトミにとっても美由紀との出会いは貴重なものだった。
美由紀はヒトミを見送り、加速するように精神的な成長を始める。
まるでヒトミとの二人三脚のように、障害を乗り越えて目標設定をする。
その目標こそが、普通の公立中学に入学するという、美由紀にとっても辛い決断だった。
現在の公立の小・中学校には、車椅子の生徒は珍しくないという。
バリアフリーという環境も整備されて、介助者を職業にする人も出てきた。
だがこの時代は、車椅子の子供を目にする事があまりなかった。
私は小児病棟に通っていたので、違和感無く車椅子の子供を見ていたが。
学校で目にする事が無いので、一般的には中々出会えない存在だった。
だからこそ、小学生位の子供達は、興味本意の好奇の目で見てしまう。
その視線に悪意など無かった、要は経験不足だったのだ。
車椅子という存在に、慣れていなかったのが最大の原因である。
この時代は、障害を持つ子供もその両親も、一般社会と離している傾向にあった。
それは障害のある事で傷ついた、子供の心を守る為の行為だっただろう。
だがその行為が、周りの子供達の経験を奪っている、美由紀はそれを理解して挑戦を決意した。
美由紀の公立中学への入学は、障害を持つ後輩達への強いエールだったのだろう。
事実として、美由紀が車椅子で中学に通う事が、小学生にまで強い影響を与えた。
私の中学の校区内には、大きな小学校が2校有った。
両校とも生徒数が1000人を超える学校で、中学はその中間に有った。
2校の小学生は全員美由紀を知っていただろう、美由紀はそれ程の有名人だった。
美由紀が1人で車椅子で登校していると、小学生が集まり、遠回りしてでも美由紀を押していた。
この2校の小学校の生徒は、誰も車椅子の子供に対して好奇の目を向けなかったであろう。
それが美由紀の与えた経験である、美由紀を見て車椅子の存在に慣れたのだ。
「両足が無い私を見てれば、足が有るのに車椅子に乗る子供なんて・・可愛いと思うだろ」と美由紀は二ヤで言っていた。
そして美由紀はシズカの意志を追い求め、難関高校の理数科に入学する。
美由紀は将来設計を高校生で模索する、節子に毎日車で送迎をさせている自分を感じて。
自立の道を探した、机の上で出来る自立の道を。
美由紀は高校の教師に、大学進学はしないと高校1年で明言する。
そして机の上でやれる仕事を探し出す、教師が提案した出始めのPCに触れるのだ。
私達が高校の頃は、PCとは雑誌の中の夢の商品だった。
しかし美由紀はPCの将来像を、リンダとマチルダから情報を得ていた。
そして美由紀にその道に進むのを確定させるのが、リリーのフィアンセである科学者だった。
美由紀は高校在学中に、PCの研究に没頭していた。
近い将来PCが一家に一台の時代が来るのを確信し、インターネットの可能性に心躍らせていた。
美由紀がプログラマーになった頃には、企業にはPCが入っていた。
会社員のオヤジ達が、ウルウルでキボードと格闘していた時代である。
美由紀はそんな時に、ある基盤を作り出す。
それを大きな会社が権利を買い取りに来るのだ、美由紀はキングに相談して、使用権だけの契約をする。
その会社は大きな遊技機メーカーだった、簡単に言えばパチンコ機のメーカーである。
「あの頃の私のプログラムなんて、だれも興味を示さなくてね。
あの会社の研究者の人だけが、興味を持って訪ねて来たよ。
実はね・・あのプログラムの発想は、シズカ先輩の発想なのよ。
確立を制御するという発想そのものは、シズカタイムの呟きなの。
確立は同じ条件なら、絶対に同確立になる・・それは幻想なんだよ。
確立が変動するから、人は一喜一憂するんだよね・・奇跡を求めるから。
競馬は馬の血統や騎手の実力、競艇や競輪は選手の力量だよね。
パチンコはチューリップを狙う時代は、個人の技術介入部分が強かった。
卓越した技術者、職人と呼ばれるプロまでいたらしいよ。
そして釘師と呼ばれる、釘打ちの職人もいたんだよ。
でもね・・より多くの人の娯楽にするには、技術介入部分を緩和するしかない。
それがセブン機と呼ばれる機械なの、私達が高校の頃に出たんだよ。
それでパチンコは一般人の娯楽になった、そこから模索が始まるんだよ。
次の時代を模索してたんだよね、そして私のプログラムが目に止まった。
今考えると、出来損ないの欠陥品だったよ・・恥ずかしいシステムだった。
でもそれを高額な契約料で買い取った、あのメーカーはそれを基盤にした。
それが確立を制御する、確立変動プログラムなんだよ・・私の初期型とは別物。
確立を制御する事で、パチンコは主婦や老人にまで裾野を広げた。
誰でも同確立で勝てる可能性がある、そんな娯楽になったんだよね。
私は今でもパチンコ業界と関わって、守秘義務を背負ってるけど。
パチンコで老人や主婦が借金を作ってるなんて話を聞くと、良い気分はしない。
いい大人が自分で判断して、その結果で借金したんだから関係ないけどね。
でもね・・パチンコ関係の攻略なんて話が、CSの番組や雑誌に出てるけど。
回転率の良い台を狙え、これはまぁ当然の事だよね・・投資に対する確立だから。
攻略法の中での大間違いは、期待値なんだよ・・期待に値なんて無いよね。
日本語としても間違ってる、ゲームオタクの考えそうな作為の言葉だよ。
期待値を追え・・こんな詐欺師の言葉はない、期待は追うものじゃない。
勝つ期待をしたいなら、パチンコなんてしたら駄目だよ。
何百分の1しかない、そんな確立に何を期待するの・・娯楽として楽しんで欲しい。
奇跡なんて起こらない・・一瞬の奇跡を経験しても、トータルでは絶対に勝てない。
不正をしない限り、今のパチンコでトータルで勝つことは不可能なんだよ。
私が言えるのはここまで、お前が書けるのもここまで・・それがメッセージ。
お前の東京の頃の悪友の、麻雀打ちの○○さんが言ってたよね・・ウルウルで。
自動卓の時代が来て引退を決めた、技術と経験が通用しない世界になった。
そう言ったよね、リアルなプロの言葉だったよ・・怪しい男で好きだった。
今はCSで名人戦なんてのに出てるよね、真面目な顔して・・笑っちゃうよ。
制御を機械がすると、技術介入部分が緩和される・・それは感覚を失う事なんだ。
1番分かり易いのが、車の電子制御技術・・私でも車に乗れるようになった。
今の車は・・スポーツカーでも、多くの部分でCPが操作のフォローをしてるよね。
GTRなんてその代表だよ・・お前は32Rでスポーツカーを降りたよね。
その気持ちは私も車を運転するようになって、少し分かった気がするよ。
蘭姉さんのケンメリ城嶋スペシャル、豊君が手を入れたユリスペシャルZ。
そして何より・・シズカ先輩が自分の全てを注ぎ込んだ、リンダスペシャル。
あの3台は別物だった・・機械というカテゴリーじゃなかったよね。
もうあんな車を見る事は出来ないのかもね・・私だからそう思うのかな。
どんなに望んでも、私では絶対に運転できない車だった。
繊細なクラッチ操作を要求する、機械が乗り手の人間に沢山の要求を出す。
乗り手が1つ間違えば、壊れてしまう繊細さ・・それを要求する機械。
人間の感覚を高めろと言い続けるような、そんな意志すら感じる機械だったよね。
人は制御されてはいけない、制御という言葉こそが・・人間のおごりだよ。
あの津波の映像を見て・・そう実感したよ、人間は絶対に自然を制御できないとね。
私はボランテァに行けない辛さをまた感じたよ、阪神大震災以来の辛さを」
先日久々に美由紀と2人で食事をして、少し酔った美由紀が笑顔で言った。
美由紀語録にはその時代の、大切なメッセージが込められている。
今後も折を見て紹介します、両足の短い美由紀の感じた【時代】と呼ばれるものを。
集中の中にいる美由紀の場所に、話を戻そう。
女性達は二ヤ顔で美由紀を見ていた、美由紀も二ヤで対抗していた。
美由紀の横には最強の相棒である、フーが二ヤ顔で立っていた。
天文台の由美子もヒノキオも、ワクワク笑顔でモニターを見ていた。
「ヒノキオちゃん・・あの時、どうしてマキ姉さんを選んだの?」と由美子が笑顔で聞いた。
「ミロのためだよ・・ウララだけなら、美由紀さんだったよ・・でもミロの事が気になったから、マキさんにしたんだよ」とヒノキオは笑顔で返した。
「そうだよね・・ウララちゃんだけなら、美由紀姉さんだったよね」と由美子も笑顔で返して、モニターに視線を戻した。
天文台の前に女性達が、美由紀を囲んで円を描いて立っていた。
シズカとヨーコに沙織と秀美が少し離れて、ステージを見ながら話していた。
「美由紀の今の話を考慮して・・奴の設定をどう読むかだね?」とユリカが爽やか二ヤで言った。
「誰に何を伝えるのか、そこが勝負だね・・制限時間は、10分位だろうから」とリアンが二ヤで言った。
「由美子ちゃんもヒノキオも出たいと思ってるなら、2人ではないですよね」とユリさんが言って。
「オババは7人のステージで会おうと言ったから、ステージにいるから関係ないし」と律子が言って。
「それなら、奴自身とか・・でもそれはフェアーじゃない気がする」とリリーが言った。
その時、オババの館のモニターにも、女性達のモニターにも、由美子のモニターにも映像が現れた。
大海原を漂流する少年の映像だった、イカダのような木材の上に座っていた。
少年は一人で荒れた海を漂流していた、少年の姿に衰弱が色濃く映っていた。
「アルコ!」とマキが叫んだ、全員がその言葉で少年を理解した。
「こんな卑劣な問題なのか!・・どこまでも卑劣な奴だ」と美由紀が叫んで。
「衰弱してるね、漂流して何日か経ってる」と蘭が静かに呟いて。
「絶望しかけてる、荒れた大海原で・・たった1人で」とナギサが映像を睨んで言った。
沙紀はモニターのアルコを見ていた、そして律子を見た。
「律子母さん、天文台まで一緒に行って下さい・・私とモモカと」と沙紀が強く言葉にした。
無線から響いた沙紀の強い言葉を聞いて、女性達の集中は増していた。
「良いよ、行こうかね」と律子が二ヤで返して運転席を降りた。
「1番バッター、モモカ・・行って来ま~す」とモモカが笑顔で言った。
「頑張って~」と子供達が笑顔で見送った。
律子は沙紀の手を繋ぎ、モモカを抱いて天文台を目指した。
「沙紀がモモカと来るのなら、あのアルコを・・絶望の淵から救わないといけないんだね?」と北斗が言って、女性達が頷いた。
「陸は見えないな~・・喉が渇いたね、周りは水だけなのに・・飲めないんだ、ごめんねアメジオ」とアルコの声がモニターから響いた。
アルコの服の胸元で、白いサルのアメジオがぐったりとしていた。
「アメジオ・・限界がきてる、設定は最悪の状況なんだ」と千秋が呟いた。
「ミロの時と同じ・・砂時計が無いだけだよ」と美冬が悔しそうに呟いた。
「アルコも見ていたから・・ミホがいれば、1発で勝負がついたのに・・マキ、至急ここにおいで」とユリカが強く言った。
「了解」とマキが返して走り出した。
「アルコも知っている、砂時計を反転したミホがいない。
マキと沙紀で最初の勝負をする、そして最後は・・美由紀だよ。
アルコは美由紀を遠目に見てる、美由紀・・任せるよ」
ユリカは真顔で強く言った、美由紀も真顔でユリカを見ていた。
「了解です・・必ず希望を持たせます」と美由紀は返して、フーを抱き上げて女性達から離れた。
律子が沙紀とモモカを連れて、天文台の女性達が囲む円の中に入った。
「沙紀・・どうやろうと思ってるの?」とユリカが笑顔で聞いた。
「アルコは限界なんでしょ、それを元気付ける言葉をかけるんですよね。
言葉だけしか届かないのは、フェアーじゃないと思うから。
映像を送ります・・モモカがミロの場所に行けるから。
モモカの小島にモニターを出します、それをアルコに見せる。
それは反則じゃないと思うって、モモカが言ったから。
大丈夫だと思います・・でも、1度聞いてみますね」
沙紀が笑顔で言って、モモカの手を握った、そして絵筆を天に向けて瞳を閉じた。
「オババ・・質問です~」とモモカが瞳を閉じて叫ぶと。
大岩の前の円形ステージの上に、オババの映像が映った。
女性達は凍結して見ていた、それは実像でなく下からの立体的な映像のようだった。
「沙紀・・そこまで、そこまで辿り着いてたのか!・・由美子の為に」とオババも凍結状態で言った。
沙紀は集中が解けないのか、黙って瞳を閉じていた。
その沙紀を見て、ユリカが映像のオババを見た。
「オババには説明は不要だよね・・今の沙紀の提案は、反則行為じゃないよね?」とユリカがオババに言った。
「もちろん、反則行為じゃないよ・・ルールが無いものに、反則など何も無いだろ・・どっかにルール説明が有ったかね」とオババは二ヤで返した。
「サンキュー、オババ・・もう少し待っててね」とユリカは嬉しそうな笑顔で返した。
「あぁ・・急がんで良いよ、私も楽しみに見てるからね・・沙紀、遠隔映像を切れ・・体力が最後まで持たんぞ」とオババ言った瞬間に映像が消えた。
「沙紀・・大丈夫?」と律子が笑顔で、目を開けた沙紀に聞いた。
「はい・・私、小僧ちゃんの映像に遠隔で入る為に、体を鍛えてますから」と沙紀が笑顔で返した。
女性達は沙紀を見て、嬉しそうな笑顔で頷いた。
「さてと・・ルール説明が無いか、四季とツインズでもう1度チェックしてきて」とリアンが二ヤで言った。
「了解」と6人が二ヤで返して、天文台の方に走った。
「ルールが無いのなら、作戦は簡単ですね」とホノカが二ヤで言って。
「走って来たのに、私の出番は無さそうですね」とマキも二ヤで言って。
「気配を消してる4人が、もはや準備出来てるようですから~」とセリカがシズカとヨーコを二ヤで見ながら言った。
「ルール説明が無い時点で、その方向の作戦を立てたのか~・・さすがシズカ」と恭子が二ヤで無線で言って。
「作戦を聞きましょう・・あのヨーコのニヤニヤ顔の作戦を」と久美子が笑顔で言った。
「ルールが無いのなら、あのアルコの世界は中立な場所ですね。
ヒノキオが天文台にいるのなら、沙紀はヒノキオ使えますよね。
ヒノキオサンタと、美由紀竜でやらせましょう・・アルコに希望の選択を。
アルコはあの人形劇を、嬉しそうな笑顔で見てましたから。
絶対に強く心に残ってます・・だから美由紀竜に選択させます。
その選択内容は、全て美由紀に任せます・・絶望に対する選択だから。
このメンバーの中では、美由紀にしか出来ないでしょう。
幼い時に、何度も何度も絶望した・・美由紀にしか出来ません。
アルコが強く希望を望んだら、最後にウルトラアンナに行かせて。
陸まで一気にアルコを送る・・それでOKでしょう。
問題はアルコの心でしょうから、アルコに希望を選択させる。
3つの箱を選択させます・・美由紀竜が選択を迫る。
その側に三択を拒絶した、三択ロースのヒノキオが空から見てる設定。
この三択ロースの存在が、私の優しさです・・大好きなアルコだから。
私は少し設定を甘めにしました・・これが私とヨーコの作戦です」
シズカは二ヤで言った、女性達に笑顔が溢れた。
美由紀は真顔でシズカを見ていた、自分に対する強烈なシズカの試験だと感じていた。
「OK・・それで行きましょう、準備して」とユリカが笑顔で言った。
「了解」と女性達が笑顔で返した。
「私が安奈を迎えに行きます」とマキが言ってジープに向かった。
「ヒノキオには聞こえてるよね?」とリアンがユリカに聞いた。
「こんな時の為に、策略家が準備したのよ」とユリカが二ヤで返して。
「ユリア・・由美子に聞いて、今の話を聞いてたのかどうかを?」とユリカが笑顔で言った。
強烈な波動が、《了解》と返してきた。
「なるほどね~・・小僧はミロの時、天文台で映像を見てたね」と律子が二ヤで言って。
「天文台が結界じゃないのかを、チェックしてたんだ」とホノカが二ヤで言って。
「それを確認して、ユリアを連絡係りにした・・人質の自分から離したんだ」とセリカが二ヤで言った。
「この時の為に全ての準備をした・・小僧の真実の言葉じゃったよ」と和尚が笑顔で無線で言って。
「それを律子姉さんも感じて、あの時に若手女性に強く伝えたんですね」とユリさんが薔薇で微笑んで。
「凄い親子だよ・・律子姉さんと、シズカとエースは・・何の打ち合わせもしてない、奴に読まれない為に」と大ママが笑顔で言って。
「そんなエースの心を感じてるんだ・・沙紀はエースの心を感じてる」とカスミが笑顔で言って。
「エミとミホと沙紀は、エースの言葉の意味の裏までを感じるんだ」とリョウが笑顔で言った。
「和尚様・・でもシズカの今の提案は、美由紀に対するものですよね?」とアイコが笑顔で聞いた。
「私もそう思いました、ルールが無いのなら・・もっと簡単で安全な方法がありますよね?」とシノブも笑顔で聞いた。
女性達が興味津々光線を、和尚に発射した。
「小僧は策略家ではない、仕方なく覚えたんだよ。
ヒトミの時に、自分の未熟さを痛感させられての。
それを全て感じ取ったのが、美由紀と沙織なんじゃよ。
沙織と秀美が今は動かないのは、美由紀に対する試験だからじゃね。
シズカなら、アルコを助ける作戦など・・もっと簡単に作り出せた。
しかし美由紀の心の成長を感じて、この状況で試験を出した。
シズカは絶対にこう考えた、小僧ならここで試験を出すと。
小僧なら・・アルコと美由紀の一石二鳥を狙うとな」
和尚は二ヤで言った、女性達に二ヤが咲いた。
「なるほど~・・アルコと美由紀の一石二鳥か」とリリーが二ヤで言って。
「限界に近い状況、絶対に間違えられないという重圧・・この時しかないのか~」とカレンが笑顔で言って。
「それも・・自分的には甘めの設定だと言って、言葉を締めた・・恐るべしシズカ、狙われると怖い相手だよ」と幸子が二ヤで言った。
天文台の女性達は、美由紀と沙紀とモモカを囲んで、打ち合わせを念入りにしたいた。
ユリアが天文台の由美子と交信して、ヒノキオも準備をしていた。
「モモカ・・アルコの場所に行くのに、相当の体力を使うのか?」とリアンが心配して聞いた。
「全然大丈夫ですよ・・アルコのいる場所は、ベッドの上ですから。
あの状況はアルコの夢に出ている映像ですから、アルコのイメージだから。
もう駄目だ~って思ったら目が覚める、悪夢って言う夢ですね。
だからあれはアルコのイメージです、中立の場所じゃない。
アルコの場所ですから、それが見えてるんですから・・入るのは簡単です。
アルコを生み出した、沙紀ちゃんがいますから・・モモカはお手伝いです。
ミユ竜とヒノキオサンタとウルトラアンナを飛ばすのが、モモカの役目です」
モモカはルンルン笑顔で言った、沙紀が笑顔で頷いた。
「そっか・・あの漂流の映像は、アルコの夢なのか・・見せられてるだけ」と千夏が笑顔で言って。
「良い夢になるか、悪夢になるかの勝負・・その結果次第で、アルコの今後に影響が出るかもね~」と千春が美由紀に二ヤで言った。
「母親までの遠い道程の、1つの道標を提示してこい・・美由紀」とマキが強い言葉で言って。
「信念を貫く意味を伝授してこい・・美由紀」とヨーコが強く言って。
「お前が美由紀だろ・・誰が何と言おうが、お前が美由紀だ」とシズカが強く言って、3人は円形ステージの前に向かった。
美由紀は女性達に囲まれて、静かな微笑を出していた。
追い続けている憧れの先輩達に、強く言葉をかけられて嬉しかったのだろう。
美由紀はフーを見ながら妖しい二ヤを出した、フーも二ヤで返した。
「よし・・やるか」とリアンが言って、全員が笑顔で頷いた。
女性達が円形のステージに向かう後姿の映像を、私はオババの館のリビングで見ていた。
「覚悟を決めて設定した時の、妖しい二ヤだったね~・・美由紀の奴」とルミが二ヤで言って。
「美由紀の中の、3つの部分・・知力・発想力・経験、この中の発想力で設定したよ」とマリが二ヤで返した。
『とんでもない事を、やらかすんだろう・・それが美由紀だからね。
シズカもマキもヨーコも、最後にそれを確認させたよ。
美由紀は完全に飛び越えてくるよ、その提案は美由紀にしか出来ない。
あの妖しい二ヤは・・完全な集中の中でしか出ない。
俺でも見たのは、3度目だよ・・あの静かな妖しさの二ヤは』
私はワクワク感が充満していて、二ヤで言った。
ミホは集中を切らさずに、モニターをじっと見ていた。
「まだ準備に少し時間があるね、ここで7人目の想定を出し合おうか?・・たこ焼きを賭けて」とルミが二ヤで言った。
「不良の溜まり場の、○○屋でしょう・・小僧がご馳走してくれた」とマリが笑顔で返した、ルミも笑顔で頷いた。
「出す順番を、ジャンケンしよう・・負けた人からね」とルミが笑顔で言って、3人でジャンケンをした。
このジャンケンが、凄いバトルに発展した。
私は本気のジャンケンでは、それまで負けた事が無かった。
私はここ一番の勝負なら、相手の瞳を読んでいたのだ。
その事を美由紀や沙織は知っていて、私との本気のジャンケンの時は目を閉じてしていた。
3人での最初のジャンケンは、7回の連続で3人が同じ手を出した。
そこでルミとマリが気付いて、2人は二ヤで目を閉じた。
当然のように8回目で私が負けた、私はウルウルを出した。
ミホは私達のジャンケンを無表情で見ていた、楽しそうな感じだった。
そして始まる世紀の一戦、マリ対ルミの本気のジャンケン勝負。
2人は互いを見て止まっていた、静かなる駆け引きが展開されていた。
「それで良いんだね?」とルミが二ヤでマリに言った。
「そうだよ・・私はこれに決めた、だからルミはそれだよ」とマリも二ヤで返した。
「動きに淀みを出すなよ、未熟者」とルミが強烈な二ヤで返して。
「怖いのか・・初めて負ける事に、恐怖を感じてるね・・ルミ」とマリも強烈な二ヤで返した。
その時だった、ミホが2人に向かってピースサインのようにチョキを出した。
2人は凍結してミホを見ていた、ミホは2人を見ずにモニターを見ていた。
「まぁ・・勝負は引き分けとして、小僧の想定から聞こうか」とルミがウルで言って。
「そうだね・・ミホも入れて、引き分けという事にしよう・・小僧、よろしく」とマリもウルで言った。
『な~んだ・・2人ともミホに負けたのか』と二ヤで言うと、2人はウルで頷いた。
『俺の想定は、第一候補がね~・・誰でしょう?』と私は二ヤで問題を出した。
「生意気な・・マリ、紙に書くよ」とルミが二ヤで言って席を立った。
「もう・・ルミの負けず嫌いに点火して、責任取れよ」とマリが私に二ヤで言った。
ルミがメモ用紙とペンを探して来て、マリに渡し私にも差し出した。
「自分の名前と予想を書こう・・小僧は正解を書くんだよ」とルミが二ヤで言った。
私とマリは二ヤで頷いて、メモ用紙に書いた、私はもう一人の自分を出していた。
それをテーブルの上に置いて、ルミが少しかき混ぜた。
「それでは、1枚目を開きま~す」とルミが笑顔で言って、1枚目を開いた。
そのメモ用紙には、こう書かれていた。
【マリ・・小僧の第一候補・・豊】と描かれていた。
「豊君とくるか~・・私もその可能性を考えたよ・・最強の敵を出せるしね」とルミが笑顔で言って、マリは二ヤで返した。
私は正解がばれないように、もう一人の自分で必死に真顔を作っていた。
「よし・・次だね」とルミが二ヤで言って、メモ用紙を開いた。
そのメモ用紙には、こう書かれていた。
【ルミ・・小僧の第一候補・・クコ】と書かれていたのだ、これには私が1番驚いた。
「クコか~・・確かに同調できるし、小僧は最近までかなり気にかけてたね」とマリが驚いて言った。
「そこなんだよね~・・小僧はクコの事を考えてくれた、それも哲夫を使い・・自分でも行動したからね・・ありがとう、小僧」とルミが私に笑顔で言った。
『礼はいらないよ・・クコに貰ったから』と笑顔で返した、ルミも笑顔で頷いた。
「じゃあ正解を見ようかね・・どうせ、沙紀か理沙だろうね・・大穴で幸子さんかな?」とルミは二ヤで言ってメモ用紙を開いた。
そのメモ用紙には、こう書かれていた。
【小僧・・第一候補・・アイカ】と私は書いていた。
マリとルミがハッとして私を真顔で見た、私はニヤニヤで返した。
「陽だまりのアイカ!・・生後5ヶ月で、7人目なのか」とマリが呟いて。
「敵はどんな奴なんだ・・生後5ヶ月の敵は」とルミが呟いた。
私はニヤニヤを出して、想定の達人の2人を見ていた。
7人のステージで私が最も迷った誘導は、アイカだったのだ。
私はアイカが選ばれる可能性を強く感じながら、アイカに何も伝えなかった。
モモカにも何も言わなかった、私はモモカに賭けたのだ。
伝えなくてもモモカなら感じてくれる、その信頼が武器だった。
私がモモカに伝えるのかは、絶対に奴は読んでくる。
どんな状況でも読まれる可能性があると思って、私は賭けに出た。
同調できる生後5ヶ月のアイカが、何も知らないのならば、絶対に奴は狙う。
私はそう確信していた、そしてアイカなら絶対に勝利すると思っていた。
陽だまりのアイカ・・その心は無垢の温もり。
辛い現実や過酷な試練で疲労した、人々の心にを温める・・無垢な温もり。
無垢なる生命、生後五ヶ月の炎・・陽だまりのアイカ・・。