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      【冬物語第六章・・未踏の舞台⑦】 

薄暗い深い森にある、大きな木の下に建っていた。

怪しさの演出をする館の中に、温もりの暖炉が有った。


生活感のあるリビングで、私達は老女を囲んでソファーに座っていた。


「ここ!・・この場面から見せて」と10年後の居住区で、琴美が笑顔で言った。

『いよいよ、由美子の世界だね・・懐かしいよ』と私は早送りしていた手を止めて、笑顔で返した。


「由美子ちゃんは、アントワープの駅で見送られたんだね・・ミロとパトリッシュに」と琴美が嬉しそうな笑顔で言った。

『うん・・ミロもパトリッシュも元気そうだろ』と私は笑顔で返して映像を見ていた。


モニターの映像には、由美子が汽車に乗る映像を見ている、オババの館の私達が映されていた。

由美子は蒸気機関車の客車の、ヒノキオの前に座り、ミロとパトリッシュに笑顔で手を振っていた。


一方、本部ジープの女性達は、1人の指名の検討に入っていた。


「私です~・・リストに無いのは、大根役者の美由紀です~」とウルウルで美由紀が強く主張した。


「分かったから・・美由紀も検討するからね」とユリカが無線で二ヤで返した。

「ユリカお姉様~・・よろしくです~」と美由紀が返した。


「あの時のメンバーで、可能性が高いのは?」と律子が笑顔で聞いた。


「北斗姉さんと、蘭とカスミとマキだったですね・・それに年代別で選ばれるなら、哲夫君でしたね」とユリさんが薔薇で返した。


「えっ!・・そうなの?」と子供ジープの中で、哲夫が驚いて言った。

「良いな~、哲夫兄さん」とレイカが笑顔で言って、哲夫はウルで頷いた。

「ウルですね~」とミサが言って笑って、子供達が笑っていた。


「年代別の設定なら、リアンも危ないよね・・だからリアンは外して」とフネがメンバーの名前が書かれた紙に横線を引いた。

「問題は10代後半、マキの上のランクだよね~」とアンナが二ヤで言った。


「シオン、カレン、レン、ハルカですね・・難しいですね~」とユリカが爽やか二ヤで言った。

「シオンの可能性は無いぞ、奴には絶対にシオンが読めん・・だからシオンが1人目の候補だよ」と和尚が笑顔で言って、女性達が笑顔で頷いた。


シオンはジープの中でニコちゃんになっていた、美由紀はただウルウルを継続していた。


「絶対に指名されないのであるのなら、シズカもでしょう・・奴はシズカに嫌なイメージしか持ってないから」と大ママが笑顔で言って、シズカも笑顔で頷いた。


「それに・・経験者の恭子とヨーコも指名されないから、候補者になりますね」とユリさんが笑顔で言って。

「そしてユリカだね・・奴が絶対に選ばないから」と律子がユリカに二ヤで言った、ユリカも二ヤで頷いた。


「それに一応・・一応だけど、美由紀も入れて検討しよう」とアンナが言った時だった。


「ユリさん・・私、感じたんですけど・・小僧のユリさんとユリカ姉さんへの問題・・これじゃないかと」とシズカが二ヤで言った。


「えっ!・・確かにこれだったのかも・・エースの私への問題の意味は・・エースは無意識に感じていたのかも」とユリさんが呟いた。

「確かに、そんな気もしますね~」とユリカが二ヤで返した。


「小僧がユリに、どんな問題を出したんだい?」と律子が二ヤで聞いた。


「作戦会議の時に、私は提案できなかったんです・・・・」とユリさんがマリア提案の話をした。


「なるほどの~・・それじゃね、100%奴はマリアの指名は無いよの。

 マリアには弱点など存在しないし、奴には何も読めないだろう。

 マリアの全ては白い純粋で覆われている、奴は近づく事も出来ないからの~。

 他のメンバーは絶対に100%じゃない、99%という所じゃろう。

 100%ならマリアを出すべきだよの・・それが鉄則じゃろう。

 由美子の世界の成功を望むのならば、判断は常にベストを尽くす。

 それがさっきの小僧の言葉、由美子の【言葉の羅針盤】に続くラインじゃろう。

 マリアがベスト・・100%勝利する・・だからベストじゃろうね」


和尚が笑顔で言った、女性達も笑顔で頷いた。


ウルウルの美由紀の腕を、隣に座るマリアが叩いた。

美由紀がマリアをウルで見ると、最強天使不敵で返した。


「ひどいです~、あんまりです~・・マリアが不敵攻撃しました~・・生臭、白い純粋は間違えです~」とまで美由紀が言った時に。


「美由紀・・それ以上は絶対に言うなよ、マリアの対応が怖いから」と沙織が無線で強く言って。

「マリアは誘ったんだよ、自分に向けられる美由紀のその言葉を・・だから不敵だったのよ」と秀美が二ヤで言った。


「私を誘導したの!・・悪い子、マリア」と美由紀がウルで言うと。

「みゆき・・おわらいたんとう・・まりあ、じょゆう」と天使二ヤで返された。


「ひえ~・・いきなりのピンチです~・・マリアが私を追い込みました~・・美由紀、ピ~ンチ」と美由紀がウルウルで叫んだ。


その時ジープの映像に、リリーに抱かれるフーが映された。

フーは二ヤ二ヤで頷いた、それを見て女性達が大爆笑をしていた。


「ん~・・沙紀は凄いの~・・フーの存在は、奴にとっては未知の領域じゃよ」とオババがフーの映像を見ながら笑顔で言った。


『生命じゃ無い物に、生命を吹き込んだから?』と私は二ヤでオババに聞いた。


「温度に1番敏感な、小僧なら感じてるだろ・・フーは進化をしてるよな?」とオババに二ヤで返された。

『確かに進化してるよ、出会った時には温度を感じなかった』と笑顔で返した。


「そうじゃろ・・それ以上は言えんよ、ヒントになるからの」とオババは強烈な二ヤで言った。


私はその強力シワシワ二ヤに違和感を感じて、直感的にある事を感じた。


『ヒントになる?・・おかしな表現だね、フーの進化がヒントになるならば。

 もしかして、フーにも言葉の羅針盤があるのかな?

 それとも、フーこそが進化の過程を進んでいる・・だから契約は無い。

 面白くなってきたね~・・だから奴は、1番にミホを選んだのか。

 言葉を出さないミホならば、ここでのヒントは伝わらない。

 そう思ったんだね・・ミホの1番指名には、違和感を感じてたよ』


私は二ヤで言った、オババは素知らぬ振りでモニターを見ていた。


由美子の列車は【天文台】の駅に到着した、ヒートが由美子を迎えて抱き上げた。

由美子は嬉しそうに笑顔で抱かれて、ヒートは由美子を抱いて天文台への階段を上がっていた。


「由美子が入るね・・オババ、こっちの指定は・・マリアだよ」とユリカが二ヤで言った。

「了解した・・ありがとな、楽しみが増えたよ」とオババも二ヤで返した。


「それでは・・由美子が天文台に辿り着いた、始めてくれ・・ステージで待ってるよ」とオババが二ヤ継続でで言った。

「了解・・待ってなよ、楽しいひと時を」とユリカが爽やか二ヤで返した。


女性達が装備のチェックをしていて、緊張感が漂っていた。

オババは奥の部屋に消えて、私達はお菓子を食べながらモニターを見ていた。


天文台の由美子は、ワクワクな感じでヒノキオとモニターを見て話していた。

天文台のモニターには、女性達の姿が映っていた。


「それでは・・1班に中1トリオがいるので、天文台は任せます。

 2班と本部のチームで、ステージまでの安全を確認しましょう。

 律子姉さんと、フネさんで・・子供達をよろしくお願いします。

 シズカとヨーコは天文台のフォローに入って、この体制で行きましょう。

 神殿の安全を確認したら連絡します・・全員準備は良いですね?」


ユリさんが美しい真顔で言った。


「了解」と女性達も真顔で返した。


「哲夫・・出ろよ、お前は北斗さんのコンビだろ」と美由紀が後ろを見て二ヤで言った。

「もちろん行くよ・・天文台のドアを開けろよ」と哲夫が二ヤで返した。


「生意気な・・ウルはするなよ」と美由紀も二ヤで返して、運転席を降りた。


哲夫とハチ公も降りて、女性達の元に歩いていた。


「哲夫、止まれ!・・その先に何かいる、砂の中だよ」とハチ公が叫んだ。


哲夫は慌てて止まった、哲夫の前の砂が微かに動いていた。

哲夫とハチ公が砂を見てると、《バン》と音がして砂が吹き飛んだ。

美由紀がニヤニヤで、銃で動いてる部分を撃っていた。


「砂の中なら敵だろう、躊躇するなよ」と美由紀が二ヤ継続で言った。


哲夫とハチ公は頷きながら、動いていた砂の部分を見ていた。

次の瞬間に砂の中から現れた、真黒なサソリだった。

体調が50cmはある、巨大なサソリが尾を曲げて哲夫を威嚇していた。


「でか過ぎだよ、これがサソリなの・・でもお前はどうやって、この赤丸を攻撃するんだ?」と哲夫が胸の赤丸を突き出して、サソリに二ヤで言った。

「それは難しいだろうね・・でもサソリの赤丸も見えないね~」と美由紀が二ヤで言った。

「赤丸がお腹なら、作為的ですね~」とハチ公も二ヤでサソリを見ながら言った。


女性達も興味津々でサソリに近づいた、緊張が少し解けて二ヤ顔だった。


「このサソリ・・視覚的な効果だけだろ、赤い正方形の時に出た・・カニみたいな」とシズカが二ヤで美由紀に言った。


「確認します~」と美由紀が二ヤで返して、サソリの背中を踏みつけた。


サソリは美由紀の右足に、尾の突起を刺して毒攻撃を出した。

美由紀は二ヤで、サソリを蹴り飛ばした。

サソリは腹を見せたが、どこにも赤丸は無かった。


「これは義足なんだよ、刺されても痛くも痒くもないの」と美由紀は二ヤでサソリに言った。

「赤丸は無いですね、視覚的サソリですね」とユリさんが薔薇で微笑んで、女性達が二ヤで頷いた。


「美由紀・・行くぞ~」とリアンが笑顔で言って、2つの班に分かれて目的地を目指した。


子供達のジープには、律子とフネが乗り込んだ。


天文台担当の1班は、リアンとユリカとハチ公が先頭を歩き、最後部を四季が歩いていた。

神殿の庭には、敵の姿は無かった。


「一応・・スコープを装着しよう、金属の罠があるかも知れないから」とユリカが言って、全員がサングラス型のスコープを装着した。


「ユリカさん・・ちょっと待って下さい、ここの距離が変わってる・・何かおかしい」とマサル君がユリカの背中に声をかけた。


全員が止まってマサル君を見た、マサル君は遠くにある天文台を見て、左横の神殿の遺跡を見た。


「敵ですね・・多分、あの木の影にいます・・微妙に風景が変わってる、相当大きな敵です」とマサル君が天文台の手前の大きな木を見て言った。


「確かに・・あの木の場所だけ、風景に馴染んでいない・・違和感があります」とハチ公も真顔で言った。


「了解・・全員武器の安全装置を解除、集中しろよ」とリアンが二ヤで言った。

「了解」と女性達が返して、武器の準備をした。


ハチ公の横にマサル君が並び、先頭を歩いていた。

そして2人で顔を見合わせて止まった、2人の表情は緊張していた。


「何だろうね?・・ハチ公」とマサル君が二ヤで言った。

「純粋な生命体じゃないです・・多分、半分が機械のような」とハチ公が真顔で返した。


「偵察に行かせよう・・正義の味方の、フーを」と美由紀がフーに笑顔で言った。


フーは美由紀を見て、胸に両手を当ててウルを出した。


「何のウルだよ・・胸がどうかしたのか?」と美由紀が二ヤで言った。

「自分だけ赤丸が無いから、スネてるんじゃなの?」と青猫ヨーコが二ヤで言って、フーに自分の赤丸を見せた。


フーはヨーコを見て、ウルで頷いた。


「必要ないだろ・・お前は痛みや、ダメージなんて感じないだろ」と美由紀が二ヤ継続で言った。


フーは美由紀に背を向けて、屈んで土に【の】の字を書くような素振りで、傷ついた心を表現した。


「小僧から盗んだね、【の】の字か書きはやめろよ・・スネスネフー」と美由紀が二ヤでフーの背中に言った。

「美由紀・・コンビに意地悪言うなよ・・ヨーコ、なんとかして」とセリカが笑顔で言った。


ヨーコはフーの前に屈んで、ポケットを探って笑顔になった。


「消えないマジック~」とヨーコが言って、太目の赤い油性マジックを出した。


フーはそれで笑顔になって、ヨーコの前に立った。

ヨーコはフーの胸の真ん中に、赤い丸を綺麗に描いた。


フーはそれを見て納得したのか、美由紀に自慢げに赤丸を見せて、美由紀の予備の銃を腰のベルトから引き抜いた。

そして大きな木に向かい走り出した、あまりの早業に美由紀は動けなかった。


「フー・・お前がどうやって銃の引き金を引くんだ、指が無いくせに~」と美由紀がフーに向かって叫んだ。


フーは美由紀の言葉に反応せずに、木に向かって走っていた。


「距離の違和感じゃない、あれは鏡だ!」とマサル君が叫んだ時だった、フーの目の前の空間が粉々に割れた。


鏡の破片が砕け散り、フーはキョトンとした顔で止まった。

鏡の奥から出てきたのは、大きな人型サイボーグだった。


古代ローマ帝国の戦士のような、右肩から下がる白い衣装を着て。

右手に大きな剣を持ち、左手に見事な獅子の彫刻が施された鉄の盾を持っていた。

身長は3m近くあり、腕だけが人と同じ強靭な筋肉で武装されていた。

顔と上半身は金属製の銀色で、目は赤い人工的な光で発光していた。


フーはお惚け顔でそのサイボーグを見ていた、サイボーグはフーに向かって歩いた。


「動きは鈍い、視覚で反応してるね・・武器は剣だけど、赤丸が確認できないね」とシズカが二ヤで言った。

「接近戦じゃないと、赤丸が狙えない設定だね・・接近戦の作対応だね」とホノカが二ヤで言って。

「パワー勝負なら勝ち目は無い・・そうなのかな~」と沙織が二ヤで言った。


「パワー勝負なら・・フーの勝ちだよ・・ヨーコ先輩、フー用の剣と盾を出せますか?」と美由紀が聞いた時だった。


フーの横の地面から、小さな剣と盾が浮き出てきた。

フーはそれを二ヤで見て銃を投げ捨てて、右手に剣を握り左手で盾を持った。

フーの盾には、可愛いタンボの彫刻が施されていた。


「沙紀だね・・獅子に対するのが象か~、沙紀は素敵だよ~」とリアンが笑顔で言って、女性達が笑顔で頷いた。


子供のジープの中では、沙紀が赤く発光する絵筆をモニターに向けていた。


サイボーグはゆっくりとフーに近づいていた、フーはニヤニヤで盾を構えた。

サイボーグはフーの目の前に立って、剣を振り下ろした。

フーは二ヤで剣で受け止めた、《ガン》という大きな金属音がして、サイボーグの力の強さを表現した。


しかしフーは全く動じなかった、軽々とサイボーグの剣を受け止めていた。


「さすがフー・・パワー負けはしてないね」と千夏が笑顔で言って。

「そしてフーはパワーだけじゃない・・スピードもある」と美冬が二ヤで言った。

「問題は赤丸の場所だね」と千秋が言った時に、ハチ公がフーに向けて駆け出した。


ハチ公は初めて見せる、4本足で走っていた。

女性達と同じスーツを着た、ハチ公の筋肉が躍動して、猫と言うよりチーターのようだった。

女性達はそのスピードの速さにに、固まって見ていた。


ハチ公はフーの3mほど後ろに立って、サイボーグを見ていた。


「フー・・奴の赤丸、左手・・盾を持ってる手の平に有る」とハチ公が二ヤで言った。


上から振り下ろされた剣を受け止めているフーは、二ヤで強く頷いた。


「盾を持つ手の平にある赤丸、それをどう狙うのかな~」とユメが二ヤで言って。

「多分・・人間の発想を超えてくるよ、フーちゃんだから」とウミも二ヤで言った。


フーは思いっきり剣を振り払った、サイボーグはそのパワーに押されて少し下がった。

フーの動きは恐ろしく速かった、サイボーグが下がった瞬間に盾を投げ捨て、剣を目の前の土に突き刺した。

そして突き刺した剣を両手で握り、剣を反らせるように手前に引いた。


フーは剣を弓なりに反らせて、力を解放した。

フーは剣の反動を利用して、サイボーグの胸元に飛び込んだ。

フーは左手でサイボーグの白い衣装を掴み、右手でサイボーグの左腕を掴んだ。


「正に圧倒的なスピードと、魅惑のパワー」とセリカが笑顔で言って。

「強引に奴の盾を引き剥がすのか!・・素敵な奴だな~」とホノカが笑顔で言って。

「しかしフーは不思議な奴だ、指が無いのに掴む力は凄いんだから」と秀美が二ヤで言った。


フーはサイボーグの左腕を引っ張っていた、サイボーグは必死にパワーで抵抗していた。

サイボーグは右手の剣をフーに向けた、フーは剣の刃の部分を掴んだ。


「あ~・・フー、そんな方法じゃ破れるでしょ」と美由紀の肩に乗ったサーがウルで言って。

「ほんとに、少しは考えてよね」と秀美の肩に乗ったシーが言って。

「でも・・フーはまた変化したよね、剣の反動を利用したよ」と沙織の肩に乗ったスーが笑顔で言った。


「確かに・・反動を利用するのは、考えた行動だよね」と秀美が笑顔で返した。


フーはサイボーグの剣の刃を掴み、それをサイボーグの左手に向けた。

フーは強引だった、相手の左手しか考えてなかったのだろう。


フーは二ヤ二ヤで剣の先端を、盾を持つサイボーグの手の平の方に引き寄せた。

サイボーグは入力されていないフーの対応に、混乱していたのだろう。

入力に無い事に対処が出来ない、応用力の欠如している、最大の弱点を曝け出していた。


フーは強引に剣を引っ張って、サイボーグの左手首に突き立てた。

サイボーグは盾を手放して、左腕を剣から遠ざけた。

フーはそれを見てニヤニヤで飛び降りて、サイボーグ男の前に仁王立ちになった。


そして左手を突き出して左足を踏み込み、少し破れて綿の出ている右手を頭の後ろに回した。


「ミホの必殺技、鶴の舞!」とユリカが笑顔で叫んで。

「やるね~・・フー」とリアンが笑顔で言った。


サイボーグはフーに向かい、剣を振り下ろした。

フーはその剣の動きを見ながら、余裕でかわした。


そして目にも止まらぬスピードで、前に踏み込んだ。

フーの右腕の懇親のパンチが、《ポコン》という感じで炸裂した。


サイボーグはそのパンチを、反射的に左手で受け止めた。

フーは二ヤ二ヤだった、サイボーグは瞳の色が青に変化して、ウルのような色になり消滅した。


「優秀賞・・勲章授与、勲章名・・古代サイボーグ戦士・・フー」とリアンが二ヤで言って、女性達が笑顔で拍手した。


フーは少し照れた感じで、ガッツポーズを作っていた。

妖精達がフーに飛び乗り、フーは妖精達に怒られて、ウルウルで謝っていた。

天文台の女性も、神殿の女性達もそれを見て笑っていた。


「フーの進化ね~・・確かに面白いよね~」とリビングのルミが笑顔で言った。


「生命体じゃないフーに、生命を吹き込んだ・・だから進化する、なのかな?」とマリが二ヤで聞いた。


「うん・・フーの全てが、由美子の為に作り出されたのなら。

 その進化の全ては、由美子の為だと思うよね・・温度も思考もね。

 あの剣の反動を利用したのは、確実に思考で判断したよね。

 でもフーには脳は無いよね、沙紀はぬいぐるみに命を吹き込んだんだから。

 脳の無いフーが、考える行動に出た・・それは心に従ったんだよね。

 沙紀はフーをぬいぐるみとして生命を吹き込んだ、ぬいぐるみのままで。

 そして由美子の為に心の設定をした、優しく強く勇気のある設定を。

 由美子の手助けになるように、全ての描写力を駆使して描いたんだろうね。

 だからフーには心が入った、フーの行動の全ては心が動かしている。

 その心が強く憧れた、それがミホの鶴のポーズを真似た理由だろうね。

 フーの進化は、全て心の進化だろうから・・本物の心の強さに憧れた。

 奴になど想像も出来ないよね・・フーは全てが愛で出来てるんだから。

 天文台の前で邪魔をする敵など、フーが許す訳がないよね。

 天文台で待ってるんだから・・フーが扉を開けるのを待ってるんだから。

 フーの生きる全ての意味である、由美子が待ってるんだから」


ルミはモニターのフーを見ながら笑顔で言った、マリも私も笑顔で頷いた。

ミホもフーを見ていた、強く優しい愛情が瞳に出ていた。


フーはウルウルで謝りながら、妖精達に右手の平を縫ってもらっていた。

女性達はそれを横目に、天文台の前に立った。


巨大な岩が天文台の入口を塞いでいて、その岩の前に直径2m程の円形ステージが出来ていた。

巨大な岩には、消灯してる電光掲示板が備えられていた。


「この円形ステージが鍵かな?・・電光掲示板は、時間が出るのかな?」とセリカがステージの前で二ヤで言った。

「乗ったら制限時間が出るんだろうね・・電光掲示板の表示は2段あるから、もう1つは何かな~」と千春が二ヤで言った。


「この大きな岩を、由美子とヒノキオで動かせるのだろうか?」と沙織が岩を見ながら言って。

「そこだよね・・それが鍵の設定に繋がるよね、それを想定してからステージに乗らないと」とシズカが笑顔で返した。


「本当に大きな岩ですね・・奴が持ってきたのかな?」とユメが言って。

「持っては来れないでしょう・・奴の得意の飛ばしで、天から降ってきたんだよ」とウミが二ヤで返した。


「ウミ姉さん、それです!・・天から降ってきた岩、天の岩ですね」とシズカが笑顔で言った、ウミは驚いて嬉しそうな笑顔で返した。


「天の岩か~・・小僧の好きな」と美由紀がニヤニヤで言った。

「もしかして、天岩戸なの!」と沙織が返した。


「天岩戸?・・高千穂の?」とホノカがシズカを見て言った。


「はい・・今までもそうでしたが、奴の設定の基準は小僧です。

 奴は当然、小僧を中心に読んでいます・・今までもそうでしたよね。

 小僧が唯一人、由美子と交信できるから・・そして由美子を誘うから。

 奴は小僧を中心に読む・・小僧の好きな事や、こだわっている事。

 不安に感じてる事や、悩んでいる事を読もうとします。

 そしてそれに対するものしか出せない、だから小僧は絶対に人質なんです。

 小僧は天岩戸が好きなんです、高千穂まで1人で汽車で行くほどですから。

 それに小僧の仙人の記憶の映像を、マリが引き出したから。

 小僧の天岩戸への強い想いも引き出したはず、だから奴はドアをこれにした。

 これは天岩戸です・・中からなら開けられる、外の世界に興味を持たせれば。

 外の世界が楽しそうだと門番が感じれば、この扉は開きます。

 ステージの上で門番の笑いを取る、それが出来れば開きます。

 制限時間と出し物が問題ですね・・検討しましょう。

 美由紀・・いよいよ美由紀が主人公の舞台だよ、よろしくね」


シズカは最後に美由紀に二ヤで言った、美由紀は弾ける笑顔で頷いた。


「なるほどね・・確かにエースは、天岩戸が好きだって言ってたよ」とユリカが笑顔で言って。

「じゃあ・・出し物を考えて、報告して」とリアンが二ヤで女性達に言った。

「了解です」と女性達が笑顔で返して、コンビで相談した、四季は4人で集まった。


「楽しくなりそうだね~」と大ママがモニターを見て二ヤで言った。


神殿の安全確認の女性達は、神殿の中部屋の巨大な蛇の大群を、神殿の外の砂漠に追いやって、モニターを見ながら休憩していた。

蘭とシオンが蛇が怖かったのか、ウルウルでモニターを見ていた。


「天岩戸ですか・・楽しみですね~」とユリさんも薔薇の笑顔でモニターを見ていた。

「問題は門番が誰かの想定だよね?」と北斗が無線で言った。


「そうなんです、その想定をしないと」とユリカが無線で返した。

「想定に、そちらも協力願います・・こっちの女性は、出し物を検討中ですから」とリアンが笑顔で返した。


「了解です・・まず今の基本的な状況は、天文台の中にいるのは・・由美子ちゃんとヒノキオですね?」とユリさんが言って。

「現時点で分かっているのは、その2人の存在だけですね」とユリカが返した。


「由美子が門番の可能性は無いですよね?・・ヒノキオは微妙ですけど」と蘭が言って。

「門番だっけ・・天岩戸伝説は、神様が洞窟に閉じこもったのを誘い出す為に・・入口を塞いだ、岩の前で大騒ぎしたんだよね?」とナギサが言った。


「そんな感じだったよ・・でも、門番がいたんだっけ?」と幸子が笑顔で言った。


「門番の想定は・・由美子とヒノキオじゃ、あの岩は動かせないという常識だった・・訂正します、門番の存在は定かでないです」とユリカが二ヤで言った。

「そっか・・あの岩が巨大なのが、誘導的な作為なんだね」とリアンがユリカに笑顔で言った、ユリカも笑顔で頷いた。


「割れば良かったのにだった!・・小僧はそう想定してたよね。

 小僧は天岩戸伝説をモチーフに、紙芝居を作ってるよね?

 美由紀・・隠してたね、想定できてるくせに」


マキが思い出して、無線で美由紀に二ヤで言った。


「はい・・作ってますよ、お姫様が洞窟に閉じこもる紙芝居を」と美由紀がニヤニヤで返した。


「出し惜しみしたね、美由紀・・その物語を述べよ」とリアンが極炎二ヤで言った。


「えへ、出し惜しみしました~・・私はあの岩を見た時に、想定しました。

 絶対に天岩戸の設定だと、それは瞬時に感じました。

 小僧の【洞窟姫】という紙芝居を思い出したからです。

 このお話は幼児向けですから、限界カルテットも知らないと思ってました。

 でもさすが駄菓子屋のお嬢様の、マキ先輩ですね~・・知ってましたか。


 【洞窟姫】の物語の設定は、幼い少女を対象にしてます・・モモカ用です。

 内容は、遠い国に美しいお姫様がいて、そのお姫様が結婚を迫られます。

 父親である国王が、国の為に政略結婚をお姫様に無理やりさせようとして。

 お姫様はその相手がどうしても嫌で、城から抜け出して森に逃げ込みます。

 そして森の妖精に出会い、追っ手を振り切って洞窟に逃げ込みます。

 森の妖精は洞窟の入口を、大きな岩で塞いでお姫様を守りました。

 それを聞いてやって来た、国王や城の人間達に言うんです。


 岩をどかし姫を出したければ、姫が出たいと思うような話をしろ。

 そう妖精は天からの声で伝えます、それを聞いて国王は提案します。

 その岩を開けた者には、何でも好きなものを与えると言うんです。

 実は城の人間の中に、お姫様と愛を誓った青年兵がいました。

 でも身分の差を感じてる青年は、お姫様を諦めようとしていました。

 その青年にとって、人生最大で最後のチャンスが巡って来ました。


 城の男達も、金や名誉や権力が欲しくて・・必死でお姫様の気を引いた。

 岩の前で語りかけた、人生は楽しいんだと・・生きる事は素晴らしいと。

 だから外の世界に出ようと、お姫様に必死で語り掛けました。

 だけど誰の言葉も、姫の心には届かなかった・・それは言葉だけだったから。

 言葉だけでは・・洞窟の姫の心には届きませんでした。

 そしてあの男性が岩の前に立つんです、そしてこう強く叫びます。

 青年は全ての欲を捨てて、ただ姫に会いたい一心で叫びます。


 《姫が外に出ないのなら、私はこの岩を砕く・・たとえ何年かかろうが。

  老人になろうが、私はやり通してみせる・・姫に再会したいから。

  姫の素敵な笑顔が見たいから、私は1人でやりきってみせる。

  姫のいないこの世界など、私には無意味な場所だから。

  私は岩を砕いて、洞窟の中で暮らします・・暗黒の世界でお側にいます。

  私には何よりも姫が大切だから・・絶対にこの岩を砕いてみせる。

  姫が存在しなければ・・私には楽しいも、嬉しいも存在しないのだから》


 青年はそう言って、ノミを岩に突き付けて、ハンマーで打つんです。

 その音が・・ハンマーがノミの頭を打つ音が、姫の心に響き渡る。

 姫は涙を流してその音を聞く、音は止まる事無く響いている。

 青年が108回目のハンマーを打った時に、岩が消えて無くなります。

 そして姫が駆け出してくる、青年は笑顔で姫を抱き上げる。

 国王も喜んで男性に欲しいものを聞く、青年は姫を抱っこしてこう言います。


 《何でもと言われましたね・・姫を頂きたい、必ず幸せにします》


 青年がそう言うと、姫も笑顔で父親を見た・・父親はその笑顔で理解した。

 娘にとっての幸せを理解して許すんです、そして青年は姫と結婚します。

 そして国王になり、素晴らしい国を作るんです。

 差別も偏見も無い、争いも生活の格差も無い・・素晴らしい国を作ります。

 国王が亡くなった時に、国民がある話を姫様に捧げます。


 国民にはずっとあのハンマーの音が響いていたと、人の心に響く音だったと。

 無欲である人間が奏でた、素晴らしい響きを持った音だったと。

 108回目で途絶えた時に、人間の欲を全て払ったと感じたと言うんです。

 人の欲は108有って、それを払う為に今でも大晦日に鐘を突く。

 あの青年のように・・ただ愛だけを残して、欲を捨てる為に。

 【洞窟姫】はこの台詞で終わります、モモカの春風の問いかけ。

 人間の欲とは何なのかと問いかけた、モモカに対する小僧の解答です」


美由紀は流れるように言葉にした、美由紀は確かな集中の中にいた。


前回の忘れえぬ後悔を背負い、ウララに出会えなかった。


ウララに伝える事が出来なかった、未熟さを自分で受け止めて。


美由紀は別世界に存在していた、フーがその美由紀を二ヤで見ていた。


最強コンビが走り出す、ブレーキなど最初から設定していない。


愛で作られたフーと、愛を感じ続けた美由紀のコンビには。


奴の悪意など、無意味なものでしかなかった・・。

 








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