回想録 ⅩⅦ 【冬物語第六章・・未踏の舞台①】
少年達のランニングの掛け声が、広い校庭に響いていた。
私は恩師の笑顔を見ていた、未熟な私を支え続けてくれた教師を。
聡子という教師は、ヒトミと私の関係を、最も深く理解してくれた1人だった。
終礼後いつも一緒に教室を出て、病院に向かう私を笑顔で見送ってくれた。
どんな時でも私の意志を尊重してくれて、ヒトミにも何度も会いに来てくれた。
ヒトミは聡子と清次郎で、教師という存在に触れた。
ヒトミは学校という空間に憧れていた、だから映写機のプレゼントの場所を教室にしたのだろう。
私はこだわっていたのだろう、学校という大切な場所に。
沙紀への挑戦の提案も、モモカの由美子と一緒に学校に行くという言葉も、私には大切なものだった。
私は小学生の時は、何よりも学校が好きだった。
もちろん勉強は好きではなかったが、学校という場所が大好きだった。
私は幼稚園から高校を卒業するまで、学校という場所に苦痛を感じた事は無かった。
そして上京した時に、行くべき学校が無い事に1番の淋しさを感じた。
その反動だったのだろうか、東京で最初に作った友人関係は、大学生が多かった。
感じたいと思っていたのだろう、学び舎の懐かしい匂いを。
歴史ある古い校舎を背景に、大切な恩師が沙紀に微笑んでいた。
沙紀の母親が笑顔で礼を言って、私もシオンも笑顔で挨拶をして車に乗り込んだ。
土曜日の賑やかな街に向けて、シオンの車が走っていた。
沙紀は助手席に乗って、シオンの話に頷いて返していた。
病院に到着して、帰宅の準備をしている理沙の母親に挨拶して、私は理沙を連れて屋上に向かった。
シオンは沙紀と、ミホの外泊の準備をしていた。
私は理沙の後ろで、屋上から大淀川を見ていた、理沙は風に吹かれて集中していた。
『理沙・・明日になったから、由美子のステージ』と私は理沙の背中に優しく声をかけた。
「うん・・由美子ちゃんに聞いたよ、理沙は大丈夫だよ・・理沙が選ばれたいよ」と理沙は強く言葉にした。
『そうだよね・・ありがとう、理沙』と私は笑顔で返した。
理沙を駐車場まで送り、母親の車に乗せて車椅子を積み込んだ。
理沙に笑顔で手を振って、母親の車を見送った。
病室に戻ると、ミホの姿が無かったので由美子の病室に行った。
沙紀が由美子の左手を握り、ミホが右手を握ったいた。
ナギサと幸子が来ていて、笑顔でその光景を見ていた。
私がソファーに座ると、幸子が隣に座った。
「いよいよ明日だね、楽しみなんだよ~」と幸子が笑顔で言った。
『実は俺も楽しみなんだ、今回は楽しめると思ってるよ』と笑顔で返した。
「人質確定の人は、高みの見物をしときなよ」と幸子が二ヤで返してきて、私も二ヤで応戦した。
ミホと沙紀が由美子の手を離したので、私は夜来ると由美子に伝えて、4人で病院を出た。
TVルームに入ると、女性達が早々と揃っていた。
ミホと沙紀を見て、5人娘が笑顔で駆け寄った。
マリとルミが来て、シズカと恭子と中1トリオも顔を出した。
銀河が揃い、小夜子とマユとセリカも来た。
ミコトが千鶴と来て、北斗と幸子とナギサが入り、会議だった5天女が戻って来た。
全員でフロアーの絨毯に座った、蘭が駆け込んできて円を描いて座った。
『管制室の会議室に集合願います』とだけ私は言った、女性達は笑顔で頷いた。
私がマリアを抱いて管制室に入ると、ルミとマリが入っていた。
会議室で待っていると子供達が入り、続々と女性達が入って席に着いた。
全員の入場をハルカとミサキが確認してくれ、私は全員の前に小型モニターを出した。
私は蘭にマリアを預けて、楕円形のテーブルの正面に立ち、後ろに大型モニターを出した。
『作戦会議を開きますが、今回は全員が内容を把握してるので・・質問形式にします』と笑顔で言った。
「はい」とミコトが笑顔で手を上げた、私も笑顔で促した。
「まず・・神殿の進入にも、妨害が有ると思ってないといけないの?」とミコトが聞いた。
『それは有ると思ってた方が良いね、奴が手を出せるのは境界線の内側。
重力の変わる竜巻の中心から向こう、神殿側だと思う。
でもクルクル状態の時に、何かやってくる可能性はあるよ。
緊迫した場面での先制攻撃は、奴の得意技だからね』
私は笑顔で返した、女性達も二ヤで頷いた。
「神殿の入口や、天文台の側にも・・敵が出る可能性も有るんだね?」と大ママが二ヤで聞いた。
『もちろんそれは有るよ、ジープを降りたら臨戦態勢だろうね』と笑顔で返した。
「コンビを確認しないといけないよね、それからだよね?」とナギサが二ヤで言った。
『そうだね・・まずは2班に分ける、その前に人員配置だね。
今回の由美子の世界は強力だから、いよいよ責任者になってもらう。
総司令責任者は、ユリさん・・最後の判断はユリさんに任せます。
副指令兼本部作戦本部長が大ママとミチル、作戦本部に律子とフネとシズカ。
最前線をリアンとユリカに任せます、今回は第一の門の奥です。
ジープを門の入口まで入れて、沙紀に前線本部を作ってもらいます。
連絡員で残るのは、無線交信を切られる想定と最後の切り札でユリア。
そして作戦本部と連絡係の兼務として、アンナに残ってもらいます。
そしてもう1人の切り札として、連絡員で幸子を残します。
これは幸子に受けてもらいます、幸子の大切な経験としても。
由美子には今後も勝負の時が何度も来る、その為にも幸子に経験を積んで欲しい。
そして今回の最後の切り札として、準備をして欲しいと思っています。
7人のステージは、門の開錠いう設定でしかないでしょう。
オババはそこで何を要求するかと聞く、もちろん由美子の【言葉の羅針盤】です。
それを要求するけど、多分・・羅針盤の有る場所の開放をになる。
それが第一の門の中だと、俺もマリもルミも想定しています。
7人が全勝すれば、第一の門が開くでしょう。
そして第一の門と第二の門までの空間が、中立な場所になると思います。
しかし門の中は、奴の方が強い場所です・・奴が今でも作っている場所だから。
奴が有利だと思って下さい・・だからかなり強力な妨害がある。
今回は地上戦です、ジープは入れるかもしれないけど・・基本はゲリラ戦。
由美子の【言葉の羅針盤】は、絶対に2つ目の門の前・・最深部でしょう。
そこに沙紀とエミと由美子、その3人を安全に到達させないといけない。
その為の道を作るのが、最強の女性達の使命です。
最後の1人はその時の状況になります、奴が4人設定に乗ってくるのか。
それも不明ですから、ステージに上がれる3人・・それを到達させる。
人質は・・俺とマリとルミ、そして99%の確立で・・ミホでしょう。
今の奴はミホが最も怖い、マリやルミよりも怖いでしょうね。
今回はかなりの人数が戻されます、その覚悟をして欲しいのです。
突入第1班のリーダーは、リアンとユリカに任せます。
そして第2班は、ミコトと千鶴に任せます・・人選は女性達でお願いします。
当然・・子供達が突入するなら、第2班ですから重要です。
私からの指定は、北斗と哲夫のコンビが第2班。
ユリさんが入る状況になったら、ミチルがコンビになって下さい。
他のコンビ指定は、ホノカとセリカ・・由美子にはヨーコ。
沙紀には恭子、モモカと安奈・・幸子が突入する時はシズカ。
そしてマリアにはハチ公、マサル君にはヒノキオを同行させます。
俺は人質になる想定で、コンビはやはり人質のミホにします。
武器は自分で持って入って下さい、慣れた武器が良いでしょうから。
今回は武器が必要です、奴は自分での想定も出してくるから。
当然ですか、赤丸を胸に付けるリスクも負います。
そうしないと敵も赤丸を付けないでしょうから。
突入第1班が厳しいでしょうね、何も分からない現状ですから。
今回はジャングルだと思います、由美子の段階の時もそうでしたから。
奴は基本的な設定は変えません、でも・・広大だと思って下さい。
神殿の広さでイメージしないで、奴は広さなら無限に広げられます。
多分・・あの湖があるでしょう、由美子を地下に誘拐した湖が。
そこに出せると思います、由美子の【言葉の羅針盤】を出させる想定です。
まずは班編成の打ち合わせをしましょう、ユリさんよろしく』
私は意識して笑顔で言って、ユリさんを見た。
ユリさんが薔薇で歩いて来て私の隣に立ったので、私は椅子に座った。
「小僧・・私のコンビは~?」と美由紀がウルウルで言った。
『分からなかったのか~・・美由紀のコンビは、全員が分かってるよ・・フーだろ』と二ヤ二ヤで返した。
「そうなんだね~・・私に厳しい設定を要求するんだね」と美由紀がウルで返してきた。
『頼むよ、美由紀・・緊張の緩和は任せたよ』と笑顔で返した、美由紀も笑顔で頷いた。
「美由紀・・大切な事ですよ、よろしくね」とユリさんが美由紀に薔薇で微笑んだ。
「了解しました~」と美由紀は嬉しそうな笑顔で返した。
ユリさんは薔薇で頷いて、薔薇の微笑みのまま女性達を見回した。
「まずは、書記として・・シオンとカレンで、この会議の議事録をとって下さい」とユリさんが言った。
「了解です」と2人が笑顔で返した。
「では・・マリちゃんとルミちゃんから、想定を話して下さいね」とユリさんが2人に言った。
マリとルミが笑顔で返して、ルミが目の前のモニターに右手を添えた。
各自の小型モニターと大型モニターに、ジャングルを上から映す映像が映った。
「確かに小僧が言ったように、門の中はジャングルでしょうね。
奴がジャングルでの戦いを想定するのなら、その基本は歴史から拾います。
間違いなく・・ベトナム戦争を参考に作るでしょう。
あの強力なアメリカ軍でさえ、過酷な戦闘を強いられた歴史ですから。
地上の何かを守るなら、ジャングルがベストだと思っていますね。
ジャングル戦の難しさは、まず慣れにあるでしょう・・慣れないと厳しい。
視界が緑で遮られて、音も反響して聞こえてきますから。
五感が恐怖を演出しますね、それに気味の悪い生物も登場させやすい。
周りは隠れる場所だらけですから、緊張感の連続になりますね。
アメリカ軍もそれで苦労して、枯葉剤を撒くなどという馬鹿げた行為をしました。
それほどに難しい、敵はそこに暮らして・・庭のように動けるのだから。
こちらは手探りで進むしかない、視界の利かない緑の道を。
スコープに温度探知機を追加しました、人の体温以外に反応する物です。
それで少しは気分的に楽になります、衣装はダイバースーツの改良型です。
体全体を包み込む安心感が欲しいので、動き易く柔軟性に優れた物にします。
これはシズカ先輩に依頼してありますから、小僧が用意するでしょう。
敵の想定はマリに任せますが、私からはもう1つだけ。
落とし穴が危険です、これはスコープでも反応しません。
機械的な地雷には反応しますが、手作りの金属でない罠には反応しません。
絶対に各種の罠があると思います、奴は目指す設定を変えました。
今まではパニックを狙って、女性達をリアルの世界に戻そうとしていた。
でもそれが難しい事だと感じたから、罠を多く使ってくるでしょう。
深い落とし穴や、隔離できる罠を多様に使用します。
出られない・・戦闘に復帰できない状況を作るでしょう。
この部分に細心の注意が必要です、5人以上での行動が望ましいでしょね。
全員が落ちなければ、助ける事も出来るでしょうから・・縦に1列に並ぶ。
それが基本的な体制になると思います、そこが最初の勝負ですね」
ルミは最後に二ヤを出した、女性達は真顔で頷いた。
「エース・・準備は出来ますね?」とユリさんが薔薇で微笑んだ。
『出来てますから、後で試着して自分の体にフィットさせて・・自分のイメージに入れて下さい』と笑顔で返した。
「了解です・・それではマリちゃん、お願いします」とユリさんが指名した。
マリも右手をモニターに伸ばした、モニターには緑色の猿のサイボーグが現れた。
大きな猿で腕も足も長く、木にぶら下がっていた。
「敵の主力は彼です、それだけは想定できました。
色は変化してくるかも知れません、彼らの最大の武器は運動能力です。
木々を飛び回り、走る速度も速い・・かなりやっかいな相手です。
運動能力を与えた為に、武器は接近戦用の物しか持ってません。
銃で戦うしかないですが、動きが早く知能も高いと思われます。
赤丸がどこに有るのかも分かりませんが、倒すのは難しい相手です。
この猿のサイボーグ、通称サルボーグが敵の兵隊です。
かなりの数がいると思います、それ以外は軟体生物でしょうね。
ジャングルにいそうな、リアリティーのある軟体生物です。
毒蛇とかヒルとか・・足がいっぱいも出るでしょう。
今回の作戦は、奴の作戦を応用する・・罠を仕掛ける作戦です。
サルボーグの設定上の弱点を探し、それに対する効果的な罠を仕掛ける。
それが1番安全で効率的な作戦でしょう、絶対に応用は利きませんから。
知能が高いと言っても、入力された知能です・・応用は利かない。
人間は状況や経験で応用できますが、サルボーグは出来ません。
同じ罠に掛かってしまうでしょう、それがサルボーグ最大の弱点です。
1班の最初の仕事は、奴の設定を探す・・何に興味を持ち、何を恐れるか。
それを探る事です、それが判明すれば2班が罠を作り突入する。
今回は沙紀がいますから、罠の製作は簡単に出来ます。
それがこちらの強みですね、サルボーグとの知恵比べが第一段階です」
マリは二ヤで言った、女性達も二ヤで返した。
「それでは、今の話を踏まえて・・ユリカとリアン、突入第1班の人員要求を出して」とユリさんが2人に言った。
「私からは、サルボーグの設定を探る為に・・知恵比べの代表として。
総合的な知識者として千春、身体を学ぶ者として千夏。
発想力のネネと小夜子、物理的な判断としてのセリカとホノカ。
軟体生物に強い、ツインズとマサルとヒノキオのコンビ。
最後に柔軟な思考を持つ、中1トリオの2人、秀美と沙織。
そして緊張緩和の最強コンビ、美由紀とフー。
このメンバーの第1班を要請します」
ユリカは笑顔で言った、リアンも笑顔で頷いた。
「それに・・軟体生物に対して、自信がある者の立候補だね」とリアンが付け足した。
「分かりました・・指名された人は大丈夫ですね?」とユリさんが全員を見た。
「了解」と指名されたメンバーが笑顔で返した。
「それでは、第2班・・ミコトと千鶴の人員要望を出して下さい」とユリさんが笑顔で言った。
「まず・・罠を運び設置するのですから、段取りが重要ですね。
段取りをスムーズにする為に、スナックと幻海の女性を全員。
いつも一緒に仕事をしているので、スムーズに動く事が出来るでしょう。
罠を設置するのに、警備的な人員が必要でしょうから。
好戦的な蘭とナギサにカスミとリョウ、視野の広さでマキと久美子。
それと子供達の精神的な支えとして、シオンとカレン。
この人員を第2班は要請します」
ミコトも笑顔で言った、千鶴も笑顔で頷いた。
「それでは、指名されたメンバーは大丈夫ですね?」とユリさんが笑顔で言った。
「了解」と指名されたメンバーが笑顔で返した。
「決まっていないメンバーは、1班に入りましょう・・2班は人員的には足りるでしょうから」とユリさんが言って。
「了解」と残りのメンバーが返した。
「ここまでの想定しか出来ないでしょうから、あとは各自で想定して下さい。
班で分かれて座って、打ち合わせをしましょう。
マリちゃんとルミちゃんが、分かれてアドバイザーとして入ってね。
本部のメンバーは、窓際のあの小さなテーブルに集まりましょう」
ユリさんが薔薇で言った、全員笑顔で頷いた。
『それじゃ~・・子供達は馬車が来てるから、遊びに行っておいで・・ミホお姉ちゃん、沙紀お姉ちゃん・・よろしくね』と私は2人に笑顔で言った。
「はい・・沙紀はお姉ちゃんだから、任せて下さい」と沙紀が笑顔で返してきて、ミホがマリアを抱いた。
私は子供達を見送って、新しい衣装とスコープを持って、各班の前に置いて本部班の机に座った。
「エース・・今回は相当に厳しいんだね?」と大ママが二ヤで言った。
『うん・・問題は羅針盤までの道のり、それを作れるかだね・・羅針盤自体は想定できないから』と笑顔で返した。
「敵も強力だよね?・・サルボーグ」とシズカが二ヤで言った。
『嫌な相手だね・・それに数が凄いだろうし』と二ヤで返した。
「そうだけど・・最大の敵は何だと思ってるんだい?」とミチルが二ヤで聞いた。
『まず環境だろうね・・奴は気温も湿度も調整できる、体力は奪われないけど・・集中力には影響が出るよ』と真顔で返した。
「なるほどね~・・確かに高温多湿は、脳の判断を遅らせるよね」と幸子が真顔で返してきた。
『その部分の指示が重要だろうね、本部はまず環境を考慮しないといけない』と二ヤで返した。
「客観的に判断できる本部が、環境を考慮するのですね?」とユリさんが言った。
「そうなりますね、当事者はその世界にいますから・・判断は難しいですね」とシズカが返した。
『今を感じる・・今の他の場所も感じる、そんな感性があれば良いんだけどね~』と私は二ヤで言った。
「策略だったね~・・なるほどね~、煽りだったか」と大ママが二ヤで言って。
「煽れば伸びますからね~・・なんせ伝説の負けず嫌いですから」とミチルが二ヤで言って。
「既に煽られて、次の段階を探してますね~」とユリさんも二ヤで言った。
「やりましょう・・私も自分の力と、向き合って見せましょう」と幸子が二ヤで応戦した。
『ならその部分はクリアーという事で、次の問題は・・奴の手作りの罠対策です』と私は笑顔で言った。
「その部分は難しいですよね、慣れない場所での事ですし」とユリさんが言って。
「それに自然の中で、木や草で作られたら・・違和感は感じ難いよね~」と大ママが言った。
「違和感!・・問題だったのか?・・小僧」とシズカが二ヤで言った。
「そうだったのですね、エース・・ごめんなさい、私も覚悟が足りませんでした」とユリさんが真顔で言った。
「問題だった?・・違和感対策が?・・説明して、シズカ」と幸子が驚いてシズカに言った。
「はい・・小僧は絶対に対策も考えた、それを決断できるかと問題を出した。
それも決断すべき・・ユリさんとユリカ姉さんに向かって、難問を出しました。
罠の違和感を感じる方法はあります、それはハチ公の髭です。
でもそれを検討しなかった、誰も検討すら出来なかった。
私達はなぜハチ公の存在を消去したのか、そこが小僧の出した問題です。
それはハチ公のコンビがマリアだから、1班に入れる考えを消去してたんです。
罠対策ならば、絶対にハチ公を1番前に歩かせるのが最善策です。
ハチ公なら髭で感じます、どんなに精巧に作られた罠でも。
それに対し違和感を感じます、ジャングルでも感じるでしょうね。
それに気付けるか、検討できるか・・小僧はそう問題を出しました。
どんな時でも、判断する場所は同じ場所でする・・律子の言葉の次段階。
その問題を出したんですね・・少なくとも、ハチ公の可能性は出せた。
マリアとのコンビ解消も検討できたはずなのに・・先に消去してた。
それが全ての判断を任された、本部の私達に出した問題でしょう。
そしてユリさんとユリカ姉さんに、覚悟を問うた問題でした。
マリアすら特別視するな、小僧はそう言ってるんですよ。
小僧なら絶対にしません、それは確信できます・・事実そうしてますから。
小僧はモモカに制限をかけない、これはモモカが1歳の時からです。
小僧ならマリアにも制限をかけないでしょう、判断する時に年齢制限をかけない。
それを言いたかったんですよ・・特にユリさんに対してでしょうね。
それだけの覚悟をして欲しい、そう言ってるんですね。
小僧にとっても、何よりも大切なマリアで・・それを伝えたんですね」
シズカは真顔で言った、ユリさんも真顔で頷いた。
強烈なユリカの波動が、《ごめんね》と言って吹いてきた。
『遊びじゃないから・・もちろん、子供達には楽しんで欲しい。
でも判断をする大人は、子供だからという判断はしないで欲しい。
それがたとえマリアでも、それをしてはいけない。
マリアが1番それを望んでるし、同じでいたいと思ってる。
だからスーパーマリアマンにこだわる、それがマリアの想いだから。
今回の由美子の世界は、強烈な悪意で演出されるでしょう。
通路の段階で砂時計を出したんだから、どんな演出が出るか分からない。
大人の常識は捨てて欲しい、子供達は望んで行くのだから。
多分・・子供達は全員覚悟が出来てる、純粋に・・自然に覚悟をしてる。
自分が何が怖いのかを探しに行こうとしてます、当然マリアも。
成長したい、感じたいと思っている・・だから連れて行くんです。
ユリさん・・外して下さい、判断する時に年齢は。
全てを外した場所で判断する、それが希望に繋がると思っています』
私はユリさんを見ながら、真顔で強く伝えた。
「そうだったですね、エースは由美子の10年構想を発表した。
そうであるのなら、由美子の最後の10年後の勝負は子供達ですね。
成長した子供達が勝負の鍵なんですね、私も甘かったです。
マリアを2歳の何も出来ない子供だと、無意識に判断してました。
エースがハチ公にマリアを託すと言った時に、気付くべきでした。
それがエースの強い想いであると、全員に提示した覚悟なんだから。
やりましょう・・エース、最前線をハチ公とマリアで。
マリアは最高の喜びを表現しますね、私にもそれは分かります」
ユリさんは最後に薔薇で微笑んだ、私も笑顔で頷いた。
1班でユリカがマリアとハチ公の話をしていた、リアンの炎が上がっていた。
女性達が集中して、強く頷いていた。
「マリアはそれを望んでいる・・そして3人が前人未踏の地に到達する・・未踏の到達」とマリは1班の輪の中で俯きがちの集中で言った。
「前人未到に到達するんだね・・3人が」と千春が笑顔で言って。
「私達はそれが見れるんですね、未踏の地が」とウミが笑顔で言った。
「最後にして最も重要な、マリの提示・・それが未踏の到達ですね」とユリカがマリを見ながら笑顔で言った。
「未踏の地、それは・・カリーを越える場所だと信じよう」とリアンが強く言葉にして、全員が強く頷いた。
「それじゃあ・・サルボーグの弱点探しの方法を検討しよう」とユリカが笑顔で言った。
「ユリカ姉さん、ありました・・新しい装備表に有ります。
超小型スパイカメラ、銃で撃って相手に装着できます。
そのデーターと映像がモニターに送られる、これですね」
沙織が装備一覧表を全員の前に出し、笑顔で言った。
「ほほ~、これだね~・・問題は当てないといけないね、動きが早いサルボーグに」とリアンが二ヤで言った。
「罠をかけますか・・オトリを使って」と美由紀が二ヤで言った。
「それがベストだろうね・・ただ最初のオトリの役は危険だよ~」と恭子が二ヤで返した。
「サルボーグが何に反応するのかですね・・多分温度だろうけど」と秀美が言って。
「でも・・高温多湿の世界なら、人間の体温と変わらないよね?」と千夏が返した。
「そこですね~・・サルボーグは奴の入力ですよね。
奴は応用は利かないんだから、現時点での人間の設定。
もちろん体温に反応する可能性が強いけど、他には匂い。
体臭は完全に抑える事は不可能です、嗅覚が鋭いなら探知できる。
サルボーグには無い人間との違いですから、色々と考えられる。
それを探るのが先ですね、そうしないとオトリが危険です」
セリカが笑顔で言った、全員が笑顔で頷いた。
「私が探ります・・私の相棒はフーですから。
フーに反応するのかで、ある程度は判明します、フーを最初のオトリにします。
フーは体温も匂いも人間と違うから、それに反応するかで探ります。
フーは大丈夫ですよ、絶対にサルボーグなんかに負けません」
美由紀は二ヤで言った、女性達も二ヤで返した。
「そして美由紀が撃ち込むんだね、小型スパイカメラを」とユメが笑顔で言った、美由紀が二ヤで頷いた。
「了解・・良いでしょう、今回の幕開けは美由紀とフーに任せるよ・・全員でフォローしよう」とユリカが笑顔で言って、全員が頷いた。
「次がサルボーグの基本行動、組織的な動きも探る必要がありますね・・罠をかけるのに」と千秋が笑顔で言った。
「前線基地があるだろうね、奴らが軍隊なら・・組織的に統率されてるのなら」とネネが二ヤで言って。
「基地を探らないといけないね、それが1班の次の重要な仕事だね」と美冬が笑顔で言った。
「サルボーグの固体的な弱点を報告して、2班が罠を作る間に基地を探す。
基地の位置と組織的な行動パターンを探り、それを考慮して2班が罠を仕掛ける。
そして1班は基地を壊滅して、先に進む・・それを繰り返して道を作る。
子供達を歩かせる道を・・そこまでが想定できる作戦ですね」
小夜子が1度作戦の整理をした、全員が笑顔で頷いた。
「まじで楽しいな~・・大丈夫だよ、私達にはマリアが付いてる」とリアンが嬉しそうな笑顔で言って。
「そうだよ・・楽しもうね」とユリカも笑顔で言った。
女性達の笑顔の中に、少しの緊張とワクワク感があった。
私は本部の話を聞きながら、1班の女性達を見ていた。
美由紀の集中が異次元で、知能と発想と経験が融合してると思っていた。
未踏の大地に向かい、全員が前を見て進む。
全員がミホのメッセージを心に持って、反転された砂時計を感じながら。
心の準備を楽しんでいた、未踏の地を想定しながら・・。