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      【冬物語第五章・・間逆の空⑫】 

考えの甘さを突かれる、現代社会でも多く存在する行為。

競争社会とはその方向に走る、ルール内ギリギリでの駆け引きである。


ルールを破ってくる者も存在する、戦う手段は準備しかない。

心の準備が万全でないと、動揺して動けなくなる。


狙われていたと、私はモニターを見ながらそれを確信していた。


生きようとしていたミロに、暗示を示す砂時計が降りてきた。

ミロはそれを見て、心が萎えたのが明白な表情になった。


「これは辛いよね・・話で聞いた時も辛いと思ったけど・・映像で見ると、悪意の提示だよ」と琴美が静かに言った。


『うん・・俺は悔しかった、そして自分の未熟さを痛感したよ。

 あの時・・沙紀まで行かせた事に、それに違和感を感じなかった事にね。

 由美子を奴は解放した、それまで妨害工作をしてたのに。

 その点に気付かないと、なぜ奴が由美子を解放したのかをね。

 絶対に奴は2人を狙った、由美子と沙紀を・・だから誘ったんだ。

 奴にとって、強くなった沙紀の存在が1番邪魔だった。

 だから狙ったんだ・・砂時計を見て、ミロが諦める事で。

 由美子に砂時計を見せる事で、由美子にダメージを与える。

 その事実が沙紀にもダメージになる、沙紀に芽生えた自信が崩れ落ちる。

 それを狙ったんだ・・多分、奴はルールを破ってた・・そこまでした。

 この勝負で由美子の世界を諦めさせようと、1発で決めようとしたんだよ。

 この時はオババも動けなかったらしい、オババが動けたら来ただろうね。

 審判として・・反則を宣言したよ、凍結状態は絶対に反則だった』


私はその時の感情が蘇り、悔しさを思い出していた。


メインモニターには砂時計が、サブモニターにはジープの中の女性達の悔しそうな表情が映っていた。


強烈に回転する光のリングを出したリリーに抱かれた、モモカが瞳を開いた。

ユリさんが抱いている、マリアも瞳を開いた。


モモカはゆっくりと体を起こしてマリアを見た、マリアもモモカを見ていた。


「駄目です、モモカ・・それは出来ないよ」と律子がモモカに強く言った。


モモカが何か言おうとした時、モモカの肩をミホが優しく掴んだ。

ミホはモモカを見てマリアを見た、そしてフネの前まで歩いて右手を出した。

フネはミホを見て、ミホの手を握って立ち上がった。


女性達はミホの行動を沈黙して見ていた、マリとルミだけ震えていた。

マリとルミの表情を見て、ユリカとリアンは笑顔になってミホを見ていた。


「あの状況で動くには、相当の覚悟がいるよ・・行くんだね?・・ミホ」とフネが真顔で聞いた、ミホは強く頷いた。


「やってあげて、フネ・・ミホは大丈夫」と律子もミホを見ながら強く言った。


フネはそれを聞いて、ミホを連れてモニターの前に立った。


「ミホ・・私が送れるのは、あの部屋の入口だよ・・結界の中だからね、何とか動いて入るんだよ」とフネが笑顔で言った。


ミホはモニターの砂時計を見て、フネを見て強く頷いた。


フネはそれを確認して、モニターに右手を付けた。

そしてミホと左手を繋いだまま瞳を閉じた、ミホはそれを見て瞳を閉じた。


女性達はモニターに集中した、モニターに大きな扉が映って、その前に瞳を閉じたミホが現れた。

ミホは真黒なフード付きのマントを着ていた、女性達はそれで緊張した。

ミホはジャックの衣装着て、フードを被って立っていたのだ。


その選択がミホの覚悟を表現してるようで、ミホはジャックに力を貸してと言っているようだった。


『ミホはジャックの何を感じたんだろう?・・ジャックは両手を広げた時に、嬉しそうだったよね?』私は無線を使わずに、隣のフーに問いかけた。


フーはモニターのミホを見ていた、ユリカの強い波動が来ていた。

フーは私を見て二ヤを出して、両手を広げて《駄目だな~》という感じのジェスチャーで返してきた。


『頑張って、修行します』と私はウルで返した、フーは二ヤで私の肩を叩いた。


扉の前のミホは鮮明に現れて瞳を開けたが、動く事は出来ないようだった。

ミホの必死さが伝わってきた、ミホは必死に自分と戦っているようだった。


その時だった、ミホの横から元気な少女の声が聞こえた。


「ねぇ、ねぇ・・どうしたの?」と少女が言った、ミホは黒目だけを動かして少女を見た。


少女は静止状態の結界の中で、動きながら可愛い笑顔を出していた。

ミホの瞳が少女で何かを感じて、強く発光した。


「緊張してるのね、なら良い事教えてあげるね・・あのね~・・ウララが立ったの!・・ウララが立った、ウララが立った~」と少女は喜びを爆発させて飛び跳ねた。


そして廊下の奥に走り出した、ミホはそれを見送りながら自分が動ける事に気付いた。


「神父様~・・どこですか~・・ウララが立ったの・・ウララが立った、ウララが立った~」と少女は叫びながら、廊下の奥に消えた。


ミホは少女の走り去った場所に、微かに微笑を出した、そして勢い良く扉を押した。


扉を開けた瞬間に、《ミホ!》と姿無き男の声が天空から響いた。


ミホの目の前には凍結して動かない世界と、砂時計を見ているミロの姿が見えた。

ミホは口元に二ヤを浮かべて、ゆっくりと前に進んだ。


ミホがヨーセフを追い越した時に、目の前に氷の壁が現れた。

ミホは右手を突き出して氷に当てた、氷は煙を出しながら一気に溶け始めた。


《ミホ・・これ以上進むのは、契約違反だ・・そこで止まれ》と天空の声が強く叫んだ。


その言葉でミロがミホを見た、ミホは二ヤを強めて氷を溶かしながら前に進んだ。


『ユリア、伝えて・・奴の方がルール違反だよ。

 あの状況で・・動けない状況を作っての、砂時計の提示がね。

 お前のほうがルール違反だ、そう言ってやってよ』


私は無線で全員に聞こえるように強く言った。


「そうだよ・・奴が先にルールを破った」と律子が二ヤで言って。

「やっちまいな、ミホ・・卑怯な小心者に、本当の強さを見せ付けろ」と大ママが興奮して叫んで。

「いっけ~、ミホ・・遠慮はいらないよ~」と幸子も叫んだ。


《小僧・・無理だよ、ここには私にはルールは無い・・それがこの物語の、決められた結末だからね》と天空の声が強く言った。


《完全に動揺してるね~・・弱い犬ほどよく吠えるね~》とマキが心に強く言って。

《まったく分かり易い奴だ・・いけ~ミホ、とどめをさせー!》と美由紀が心で叫んで。

《ミホちゃん、がんばれ~》と沙紀と由美子が心で応援した。


女性達は動けずに、何も言えずにミホを見ていた。


《ミホ・・契約違反は、大変な罰が下るぞ・・それでもいいのか?》と天空の声は強く言った。


ミホは二ヤで右手を右耳に開いて付けて、ゆっくりと顔を動かした。

《聞こえんな~》と言ってるよなジェスチャーで、ミホの二ヤは全開になっていた。


ミホはミロにの真横に立って、ミロを無表情で見ていた。

ミロは衰弱を瞳に出して、弱々しくミホを見ていた。


ミホはミロを無視して、砂時計の前まで歩いた。

ミホは目の前の砂時計を見ていた、そして顔を上に上げて最強ミホ二ヤを出した。


そしてミホは両手をゆっくりと伸ばし、2つの砂時計を両手でがっちりと掴んだのだ。

私は完全に凍結した、ミホは両手に1つずつ砂時計を持っていた。

傾けないように、真直ぐと立てたままで持っていた。


《ミホ!》と天空の声も驚きを示して叫んだ。


「掴んだ!・・ミホは砂時計を掴んだ」とマリが叫んだ。

「なんて子なの・・ミホは完全に奴を凌駕してる、奴の弱さを笑ってる」とルミが一筋の涙を流して叫んだ。


「やれ、ミホ・・好きなように、やっちまいな!」と北斗が強烈に叫んだ。

「それをどうするの、ミホ・・心に従うのよ」とユリさんも叫んだ。


ミホは右手に握った砂時計を、ミロに差し出した。

その距離は、ミロが手を伸ばせば届くギリギリの距離だった。


ミロは虚ろな瞳で、ミホが差し出した砂時計を見ていた。


「ミロ・・手を伸ばして!」と蘭が叫んで。

「ルーベンスが見てるよ、ミロ」とセリカが泣きながら叫んだ。

「やるんだ、ミロ・・手を伸ばせ」とリリーが高速リングで叫んだ。


「ミロ・・手を伸ばせ~」と女性達が叫んだ、子供達も叫んでいた。


ミサはシオンに抱かれて泣きながら叫んでいた、ミロに届くように。


ミホは無表情で諦めかけてるミロを見て、左手の砂時計を見せた。

左手の砂時計の方が上部の砂が少なくて、もうほとんど残っていなかった。

ミホは左手の砂時計を見て、パトリッシュを淋しげに見た。


ミロはそれで理解した、自分よりパトリッシュの方が少ない事に。

そしてパトリッシュの死を感じて、死という現実を実感した。


ミロは淋しさを実感した、パトリッシュが存在しない淋しさを。

ミホはそれを伝えた、家族を失う淋しさを砂時計で伝えた。


奴が悪意として出した砂時計が、生命の価値をミロに伝えた。


ミロはミホを睨んだ、そしてパトリッシュを見た。

ミロの瞳には生命力が溢れていた、そしてミロは言葉を出す。



   「パトリッシュ・・僕は・・僕は・・僕が助けるよ」



ミロはそう強く言って、力を振り絞り砂時計に手を伸ばした。

ミホは右手の砂時計を差し出した、ミロはそれを強く掴んだ。


そして懇親の力を込めて反転させて、床に向かって叩き付けた。


《バン》という強い音が響いて、反転された砂時計が立っていた。


それを見てミホは笑顔になって、左手の砂時計をミロに向けた。

そして砂時計を反転させて、そのままパトリッシュの顔の前の床に叩き付けた。


《バン》という音が響いて、反転した砂時計が立っていた。


完全な静寂が神殿を包んでいた、女性達は感動が強過ぎて、泣く事すら出来なかった。


ミロはパトリッシュの反転された砂時計を見て、笑顔を出してパトリッシュに抱きついた。

ミホはそれを見て、扉を目指して歩き出した。


凍結した空間はまだ動けなかった、ミホは扉の前で振り向いて、マントの背中から抜き出した。

ミホの右手には、ゴールドのロケットランチャーが握られていた。


《ミホ・・何をする気だ!》と天空の声が動揺を示した。


「ミホちゃん、見せて!・・そこにある不必要な存在を、私に見せて」とエミが叫んだ。

この状況になり、女性達は涙を流した。


ミホはランチャーを前に向けて構えた、そして引き金に右手の人差し指を添えた。


《ミホーー!》と天空の声が悔しそうに叫んで遠ざかった、その叫びでミホは二ヤを出した。


ミホは二ヤのまま、引き金を引いた。

ゴールドのロケットが、正面のルーベンスの絵に向かって飛んだ。

そしてルーベンスの絵に吸い込まれ、何も起こらずに消えた。


その瞬間に、全員の凍結が解けた。

ミホはそれを確認して、扉の外に出て扉を閉めた。


「ミホ~」と叫んだ美由紀の声を聞きながら。


モニターの前のミホが崩れるように倒れた、それを後ろで待っていたリアンが受け止めた。


「お前が最強だよ・・お前に出会えて、本当に良かった・・ミホ」とリアンが泣きながら言って、ミホを抱き上げた。

「お帰り、ミホ・・ありがとう、ミホ」とユリカが笑顔で眠っているミホに言った。


「よっしゃ~」とネネが叫んで両手を突き上げた。


女性達が歓喜の声を上げて、両手を天に突き上げた。


私もフーと抱き合って、喜びを分かち合った。

私にはミホの対応が何よりも嬉しかった、ミロに未来を選ばせた事が。


「砂時計が溶けてる・・不必要だと、意味など無いと・・ミホが言ってる」と言ったマキの声で全員がモニターを見た。


2つの砂時計がドロドロと溶けていた。

ミロはアルコに抱き上げられて立ち上がった、パトリッシュもミロの横に寄り添うように立っていた。


由美子がヨーセフに抱きついて、ヨーセフも優しく由美子を暖めていた。

沙紀に抱かれたロッキーとホリーが、嬉しそうな笑顔を爆発させていた。


美由紀はミロを見ていた、強い美由紀の瞳だった。

アルコはマキを見て、嬉しそうな笑顔で頷いた。

マキも笑顔で返して、アルコとミロに向かって手を振った。


「よし・・もう大丈夫だね、帰ろう」とマキが笑顔で言った、全員笑顔で頷いた。


マキが美由紀にヒノキオを渡し、由美子を抱き上げた。

そして美由紀が沙紀と手を繋いで、聖母大聖堂を後にした。


ヨーセフの上にロッキーとホリーが乗り、楽しそうな笑顔で沙紀と由美子と話していた。

後方からから映される後姿は、楽しそうに希望の道へ歩いてるようだった。


女性達は互いに抱き合って、喜びを伝え合っていた。

モモカもマリアも起きていて、ミホの寝顔を見ながら笑っていた。

私は居住区の北斗を見ていた、ボンビを抱いて号泣していた。


マキ達一行は、由美子を連れて駅に向かいながら、笑顔で話し歩いていた。

由美子に駅の場所を教えていた、駅のホームには可愛い蒸気機関車が止まっていた。


「分かりました、今度の日曜ですね・・必ず天文台に行きますね」と由美子が笑顔で言った。

「うん・・必ず外に出してやるからね」と美由紀が笑顔で返して。

「次の物語も、きっと楽しいよ」とマキも笑顔で言った。


「由美子ちゃん・・ありがとう、この世界に優しくしてくれて。

 ミロちゃんが手を伸ばしたとき、沙紀も嬉しいがいっぱい出たよ。

 動物達も成長して、優しくなってて・・嬉しかったよ」


沙紀が由美子の両手を取って、笑顔で強く伝えた。


「私のほうが、ありがとうだよ~・・こんな素敵な世界を作ってくれて・・ありがとう、沙紀ちゃん」と由美子が笑顔で返して2人は抱き合った。


マキにも美由紀にヒノキオにも、女性達全員に嬉しそうな笑顔が溢れた。


由美子肩にラシカルが乗り、その周りをヨーセフとロッキーとホリーが囲んで、森に向かって歩いていた。

マキと美由紀と沙紀とヒノキオは、由美子の背中が見えなくなるまで見送っていた。


「それで・・いつまで人形の振りをして、美由紀姫に抱かれてるんだ・・ヒノキオ」と美由紀が二ヤで言った。

「焦ったくせに・・笑いを取れなくて、焦ってウルしたくせに~」とヒノキオが二ヤで返した。


「言ったね~・・言ってはならない事を・・私の傷口に塩を塗りこんだね~」と美由紀はウルで返した。


マキは笑いながら沙紀を抱き上げて、可愛い蒸気機関車の客車に乗り込んだ。

美由紀はヒノキオと話しながら、手を繋いで客車に乗り込んだ。


蒸気機関車はゆっくりと走り出した、アントワープの町の中を、透明のトンネルに包まれて。

丘に上がった時に、遠くに海が見えてきた。

海から朝日が上がってきていて、手前の港に大きな帆船が停泊していた。


「アルコ、ありがとう・・必ず母さんに会えるよ、アルコなら」とマキは帆船に向かって囁いた。

「会えるよね・・マキ姉さん」と向かいに座る沙紀が笑顔でマキに言った、マキも笑顔で頷いた。


美由紀とヒノキオは、過激な突っ込み合いをして笑っていた。

ヒノキオの鼻がかなり伸びて、美由紀はニヤニヤでそれを見ていた。


車窓からアルプスの山並みが見えてきて、丸太小屋の前に3人の子供の姿が見えた。

美由紀は窓際に駆け寄って、その姿を見て笑顔になった。


「ウララ~・・負けるなよ~、頑張れよ~・・ウララには足が有るんだろ~」と美由紀が叫んだ。


ウララは見えない蒸気機関車に向かって、美由紀の声に笑顔になって手を振った。

美由紀も笑顔で両手を大きく振った、美由紀は充実感を示す笑顔だった。


【天文台】と看板が出ている駅に着き、4人で列車を降りた。


改札に大きな黒い体が見えた、駅員のような衣装を着た山猫ヒートが立っていた。

美由紀がそれを見て、二ヤで先頭を歩いた。


「切符を拝見・・持ってなければ、銀貨1枚で~す」とヒートが二ヤで美由紀に言った。

「中古車販売から、転職したのか?」と美由紀が二ヤで返した。


「ヒートちゃん・・また悪い事してるのね」と美由紀の後ろから、沙紀が強い口調で言った。

「沙紀姫様!・・滅相も無い、悪い事なんて・・これは安全を守ってるのです・・はい」とヒートは驚いて必死に誤魔化した。


「どうもお前は小僧に似てるから、信用できんね~・・ヒート、手をだしな」とマキが二ヤで言った、ヒートはウルで右手を出した。


マキはヒートの大きな肉球のある手に、銀貨9枚を落とした。


「それは由美子姫の警護料だからね・・お前が守ってくれよ、そして必ずあの天文台に案内してくれよ」とマキが笑顔で言った。

「任せて下さい・・由美子姫の為なら、この命捧げます」とヒートが真顔で返した。

「表現が大袈裟過ぎると、信頼性が下がるよ」とマキが二ヤで返して、4人で駅舎を出た。


朝陽に輝く草原の階段を上り、天文台の扉の前に立つと、扉がゆっくりと開いた。

フーが笑顔で迎えた、私は入ってきた沙紀を抱き上げた。


「小僧ちゃん・・沙紀は嬉しいがいっぱい出たよ、由美子ちゃんにも・・ミホちゃんにも」と沙紀が笑顔で言った。

『俺も嬉しいが出たよ・・沙紀の絵筆の演出も、嬉しかったよ』と笑顔で返した。


私が沙紀を抱いて先頭で天文台を出た、女性達が笑顔で囲んで迎えてくれた。

私は沙紀をユリカに渡した、女性達は沙紀を囲んでいた。


マキと美由紀は照れた笑顔を出して、笑顔の女性達に囲まれていた。


モモカとマリアが私に駆けて来て、私は2人を抱き上げてジープに歩いた。

リアンがミホを抱いていて、ミホは静かに眠っていた。


『ごめんね、ミホ・・俺も頑張るよ・・ありがとう、ミホ』と私はミホの寝顔に囁いた。


ミホは可愛い寝顔で眠っていた、リアンが優しい瞳で抱いていた。


砂漠を走って居住区に戻り、全員で扉から出て映像を切った。

私は準備完了を確信できて、少しの疲労を感じていた。

ミホを抱き上げて、TVルームの簡易ベッドに寝かせた。


女性達は興奮が冷めぬようで、笑顔で思い出話をしていた。

成人5人組が戻って来て、ウルで限界ファイブに内容を聞いていた。


私は起きて来たミホの手を繋いで、2人で歩いて病院に向かった。

ミホは無表情だったが、温度は集中を示していた。


私はミホと水槽でチョコパフェを食べながら、ミホの無表情に独り言を話していた。

ミホは水槽に囲まれて、嬉しそうだと思っていた。


ミホを病室に送り、元気な理沙と話して由美子の部屋に行った。

由美子は穏やかな温度で、深い眠りに入っていた。


私は祖母に挨拶をして、病室を出て夜街を目指して歩いていた。

晴着を着た美しい女性達が、自慢げな笑顔でぎこちなく歩いていた。


私は祭日で少し静かな夜街を抜けて、TVルームに戻った。

沙紀は迎えが来て帰っていて、律子もフネも中1トリオも哲夫もモモカもいなかった。

マリアは蛙状態で熟睡して、サクラさんとマユが娘を連れて帰っていた。


しかし女性達は元気で、笑いながら盛り上がっていた。

その夜は5人の成人祝いと称して、居酒屋で大宴会を繰り広げて。

その後でローズで盛り上がり、私はリャンを抱いて、ご近所のヨーコと部屋まで歩いた。


それからリャンと二ヤで添い寝して、翌朝二日酔いの蘭に二ヤを送って登校した。

女性達は準備を徹底的にやり、私は成人ファイブに映像を見せた。

それで5人の準備も完了したようで、カスミの輝きが違う次元を示した。


その日が金曜日で、夜街は活気が有った。

成人の祝い気分が残っていて、大学生であろう若者達のテンションが高かった。


PGは開店から閉店まで満席が続き、蘭は幻海に出て満開を振り撒いた。

リリーが魅宴に入っていて、リョウの負けず嫌いが噴出していた。


私はニヤニヤで巡回をして、最後に谷田の店のKUMIKO NIGHTに久美子を迎えに行った。

久美子は完全なる集中に入っていて、私は二ヤで久美子と腕を組んでPGに戻った。

金曜の夜で女性達が疲れていて、蘭も部屋に帰るとすぐに熟睡した。


翌日の土曜日に、放課後に中1トリオが二ヤで揃った。

私はお好み焼きやの【まんぼう】に拉致されて、恐ろしいほどの注文を聞いていた。


鉄板の上で大きな3枚のお好み焼きを焼きながら、中1トリオは盛り上がっていた。


「明日は何時からなの?」と秀美が私に二ヤで聞いた。

『日曜だから、ゆっくりと・・11時からだよ』と私は焼きそばを食べながら笑顔で返した。


「小僧・・天文台のドア・・難しいと思うか?」と沙織が二ヤで言った。


『難しく考えれば、難しいだろうね・・基本設定を間違えればね』と二ヤで返した。

「基本設定ね~・・内側からしか開かないって事だろ?」と美由紀が二ヤで返してきた。


『そうだよ・・天文台の内側には、由美子とヒノキオしかいないからね。

 フーは扉を開けて、そのまま出ないといけないらしいから。

 フーが中にいるのなら、かなり重い扉でも開くよね。

 フーのパワーは凄いからね、でもヒノキオにはパワーは無いよ。

 ならばおのずと設定は限られるよね、それならば読みやすいよ』


私はお好み焼きを切りながら、笑顔で言った。


「そうなんだよね~・・誘導しようか」と沙織が2人に二ヤで言った、2人は二ヤで頷いた。


「私は暗証番号だと思うよ、だから由美子の数字はチェックしたよ」と秀美が笑顔で言って。

「私はパズルの鍵だと思う、それなら絶対に開くよ・・シズカ先輩もいるし、女性達がいるからね」と沙織も笑顔で言って。

「私は神殿で鍵を探すゲームだと思うよ、それなら金属探知機もあるし・・OKだよ」と美由紀も笑顔で言った。


中1トリオが食べながら、ワイワイと想定を出し合っていた。

私も笑顔で食べながら、想定のフォローをしていた。


私はお好み焼き屋の支払いとは思えない金額を、ウルで全額支払った。


「ウルするなよ・・お好み焼き程度で、社会人が」と美由紀に二ヤで言われて、3人と手を振って別れた。


私はマンションに歩いて帰り、シャワーを浴びて着替えて出かけると。

シオンの車が正面玄関に止まっていた、私は笑顔で駆け寄った。


「沙紀ちゃんのお迎え行きましょう・・嬉しくて、早く来ました~」とシオンがニコニコちゃんで言った。

『ありがとう、シオン・・行こうか』と笑顔で返して助手席に乗り込んだ。


午後に飲食業協会の会議のある、ユリカの波動が残念そうなウルで吹いていた。

シオンはニコニコ全開で、快晴の冬空の下を綾に向かって走っていた。


「沙紀ちゃんのお迎えは、家で良いんですか?」とシオンが笑顔で聞いた。


『家の近くに小学校があるから、そこで待ち合わせしてるよ』と笑顔で返した。

「意図がありますね~・・なんでしょう?」とシオンが二ヤで返してきた。


強烈な波動が、《何?》と叫んで吹き荒れた。

私はユリアが戻ったと感じて、二ヤを出していた。


『意図は無いよ・・ただ少しずつ、沙紀に学校に慣れて欲しいだけだよ』と笑顔で返した。

「まぁ・・そういう事にしときましょう」とシオン二ヤで返されて、波動も二ヤだった。


美しい照葉樹林の山々を遠くに見ながら、畑から漂う独特の匂いの中を走っていた。

小学校も大きな木が校庭を囲んでいて、緑豊かな学び舎だった。


私はシオンと校庭に入り、鉄棒の後ろで沙紀を待っていた。

1年生であろう、小さな子供達が3人で遊んでいた。


「素敵な学校です~・・木造校舎も素敵ですね」とシオンがニコちゃんで言った。

『うん・・町の学校には無い、温もりがあるね』と笑顔で返した。


野球のユニホームを着た少年達が、続々と登場して。

全員が美しいシオンを興味津々で見ていた、シオンはニコちゃんで返していた。


沙紀がシオンに駆け寄り抱きついた、シオンもニコニコちゃんで沙紀を抱き上げた。

野球少年達はその光景を見て、笑顔になってランニングを始めた。

私は沙紀の母親から、リュックと紙のケースを受け取った。


私が沙紀の母親と、翌日の由美子の概要を話していると声をかけられた。


「小僧だよね?・・大きくなったね」と女性の声がした。


振り向くと聡子としこ先生が笑顔で立っていた、中年の貫禄ある教師の姿で。


『聡子・・貫禄でたな』と笑顔で返した、聡子先生は笑顔で歩み寄った。


私は聡子先生に沙紀を紹介して、沙紀の母親とシオンを紹介した。

シオンは沙紀を降ろして、自己紹介をしていた。

聡子は屈んで沙紀に笑顔で話しかけて、沙紀は頷いて返事していた。


『聡子・・沙紀はこの学校の校区内に住んでて、病気も良くなったから。

 春から学校に通わせたい、もちろん医師の許可は出てるから。

 それに今度、清次郎と一緒に来ようと話してたんだ。

 清次郎は校長も知ってるようだし、沙紀のお願いをしようとね。

 聡子・・俺は今、ヒトミと同じ病の少女と関わってる。

 その挑戦を沙紀が手助けしてくれてる、沙紀なら絶対に大丈夫。

 同級生にも必ず良い経験になり、良い影響を与えると信じてる。

 清次郎と正式にお願いに来るけど、聡子先生・・よろしくお願いします』


私は真顔で強く言葉にして頭を下げた、沙紀の母親もシオンも頭を下げた。

沙紀も私の話が理解できたのだろう、深々と頭を下げた。


「分かりました、校長には私からも話しますね・・小僧がその状況なら。

 ヒトミと同じ病の少女と関わってる、その段階での言葉なら。

 私は無条件で信じる事が出来ます・・楽しみになりました。

 沙紀ちゃんの入学を楽しみに待ってます、きっと子供達も喜びます。

 私は本当に嬉しいです、再び命と向き合える子供の教師になれて。

 今・・小僧の姿を遠くから見て、本当に嬉しかった。

 あの頃・・ヒトミと過ごしていた、素敵な時間を思い出せて。

 お母さん、沙紀ちゃんは大丈夫ですよ・・必ず何かを探し出します。

 大切な何かを、学校という場所で・・見つけてくれると思います」


聡子先生は笑顔で言って、最後に沙紀に笑顔を向けた。

沙紀の母親は何も言えずに、涙を流して頭を下げた。


強烈な波動が吹き荒れて、沙紀を包んでいた。


沙紀は聡子先生の笑顔越しの、木造校舎を見ていた。


沙紀の挑戦の全てを見守る、子供達の思い出が詰まった木造校舎。


沙紀が笑顔で登校する日も間近に迫っていた、沙紀が笑顔で・・。


沙紀はこの時点で取り戻していた、魔法で抑えられていた笑顔を。


ミホが【黄金の雷】で、不要だと溶かしていた。


沙紀にかけられた魔法を、ミホの心が溶かしていた・・。











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