【冬物語第五章・・間逆の空②】
客足に平日も週末も差が出ない、不思議な時代だった。
家庭を持ってるオヤジ達でも、当たり前のようにアフター5は夜街に向かった。
タクシーが夜の街から消えるのも、当然の事だと思っていた。
時代は拍車をかけるように、大人達を煽っていた。
その日も人の波が、六本木という不夜城に向かい歩いていた。
衝撃的なアイドルの自殺が、人々の話題の中心になっていた。
芸能人の性であろう、無責任な個人の想定が飛び交っていた。
私はその声が琴美の耳に入らないように、面白話を繰り出していた。
私は琴美と腕を組んで、東京PGのビルに入った。
「東京PGのこのビルって、中が円形で珍しい形だよね?」と琴美が少し酔った笑顔で言った。
私はガラス張りのエレベーターに乗って、5階を押して琴美に笑顔を返した。
『うん・・大型店だけのスペースだよ、2階は有名なディスコだし。
3階は有名キャバクラで、4階はワンオーナーの高級クラブ。
1階以外の全てがワンフロアーの区画で、大型店の専門ビルだよ。
だけど最上階の借り手が付かなかった、難しい設計だったからね。
通路が長過ぎるんだよ、エレベーターを降りてから外周を歩くから。
酔った客は遠いと感じるんだ、冷めていくんだよね・・テンションが下がる。
だから借り手は二の足を踏んだんだ、難しいと思ってしまうからね。
そんなに新しいビルでもないんだよ、外観は派手で綺麗だけど。
俺は見た瞬間に気に入ったよ、俺には空間デザイナーが付いてたからね。
夢と幻想の世界に誘う、回廊をデザインできる2人がいたから。
ユリさんと話して、即決して借りた・・今でも同業者が見に来るよ。
回廊の演出の見事さに、感動して帰るよ・・沙紀の描いた世界に』
私は二ヤで言った、琴美も二ヤで返してきた。
「確かに素敵な回廊だよね、ワクワク感が高まっていくよ」と琴美は笑顔で言って、外の景色を見ていた。
エレベーターが5階に付いて、私は回廊の反対側にある、関係者入口の鍵を開けた入った。
東京PGは開店していて、フロアーの音が響いていた。
私は衣装管理担当の、富士子という中年の女性に琴美を預けた。
琴美は嬉しそうな笑顔で、富士子に連れられて女性控え室に入った。
私はフロアーの裏に入って、フロアーの状況を見ていた。
「指名は私じゃなかったね?・・マリだったよね~」と後ろから懐かしい声が聞こえた。
『ルミに決まってるだろ・・俺の指名は』と二ヤで言って振り向いた。
24歳になった美しいルミが二ヤで立っていた、私はルミを見て嬉しくて笑顔で返した。
ルミは高校を卒業して、事務員としてジンの派遣会社に就職した。
ルミはジンの派遣会社の最強のアドバイザーだった、ジンは勝負の決断は先にルミに話した。
ルミは間接的な感想を言って、ジンの迷いを払っていた。
それがどれほど的確なアドバイスだったのか、それを証明したのが。
この時のルミの役職に込められている、当時のルミは企画部長だったのだ。
『ルミ・・感じてたのか、ありがとう』と私は笑顔で礼を言った。
「あんたの事なら感じるさ・・出張は前から決まってたんだよ、明日はローズの宮崎降臨の打ち合わせだよ」とルミが二ヤで言った。
『了解・・ルミ、頼むね・・後で琴美を同調に誘ってよ、フーに会わせたいから』と笑顔で言った。
「もちろん良いよ・・辛い経験したんだろうから」とルミが真顔で言った、私も真顔で頷いた。
ルミが派遣の東京事務所のオヤジと、事務所の方に歩いて行った。
私は視線をフロアーに戻した、セリカの流星が尾を引いて流れていた。
「覚悟を決めて、振り向いて・・今さら私に惚れるなよ」と琴美の声が聞こえた。
『良し・・覚悟ができた、楽しみだ~』と二ヤで言って振り向いた。
23歳の私も想像力の乏しい男だった、琴美は純白のドレスを着ていた。
普段は薄化粧しか出来ない琴美が、本気のメークをされて輝いていた。
琴美は確かに顔立ちが良かったが、真面目過ぎる為であろう、暗く大人しい感じがあった。
それを全て払拭する明るさを出すように、メイクのアーティストが変身をさせていた。
東京PGには私がスカウトした、メイクとヘアーの専属女性が、派遣として4人登録していた。
私がTV局で知り合った、芸能人担当のヘアーとメイク専門家の、助手をスカウトしたのだ。
夜の女性の1人のメークが1000円、ヘアーセットが1000円で始めた。
女性達は大喜びで依頼した、助手と言っても日本のトップの助手なのだから、腕は確かだった。
宮崎から遠征で来る女性達は、その存在が羨ましいと口々に言っていて。
ルミはそれを聞いて、ヘアーとメークの人材を探して、派遣登録して仕事をさせた。
4人の派遣アーティストは、1晩で数万円を稼いでいた。
そのアーティストが、琴美の本質を表現してくれた。
明るい色使いに、目元を強調する表現方法が琴美の心を表していた。
髪はアップにされて、綺麗なうなじを出していた。
23歳になる琴美の、23歳なりの色気が出ていた。
『危なかったよ・・女は魔物だね~』と二ヤで言って、琴美と腕を組んだ。
「今頃気付いたか、スカウトするなよ・・可愛い琴美ちゃんを」と二ヤで返されて、2人で関係者入口から出た。
2人で回廊に入って、玉砂利に囲まれた飛び石の回廊を歩いた。
竹林をイメージした壁側のデザインと、夜景を幻想的に映す桜のデザインが春を表現していた。
私は二ヤで琴美を見ながら、琴美と東京PGの受付に向けて歩いていた。
話を戻そう、砂漠の竜巻の前に。
砂漠に止まった、中型ジープの中で私は二ヤを出していた。
シズカの言葉の通り、マサル君の解答は私にも100点だった。
「マサル先輩・・境界線は何だと思いますか?」とそれまで沈黙していたマリが言った。
「モモカの言った境界線だよね、俺は竜巻の下の赤い線じゃないと思うよ。
この竜巻の中心に走る赤い線は、奴が作り出したダミーだろうね。
俺はモモカが好きだから、今でも会いに施設に行くから。
モモカから聞いたけど・・あの赤い線は、猫の髭が強く反応したんだよね。
それは自然が作り出した物じゃないからだと思う、だから髭が反応した。
リアルに大地に走る境界線と呼ばれる線なら、猫なら自然に受け入れる。
奴が何かを隠すのは境界線だと、モモカが言ったんだよね。
モモカ自身が俺に分からないと言った、境界線がどこなのか分からないとね。
俺は今思ったけど・・そこの赤い線じゃないよ、あれはダミーだよ。
あれを調査しようとすれば、かなりの時間がかかるだろう。
それが奴の狙いだよ・・小僧がこの世界を抜いて、奴はパニックになった。
だが奴に出来ることは限られてる、小僧の世界になったんだからね。
変な演出を入れると、小僧にはそれがヒントになると知ってるから。
だから惑わせる方法にも注意した、そして小僧を誘う為に・・赤い線を出した。
赤い線なら小僧は強く反応する、そう想定したね・・危なかったろ。
奴は応用の利かない回路だから、赤で誘う・・何度も同じ事をする。
あの赤い線を猫が髭で踏んだらいけないと感じたのなら・・危険な罠だろう。
境界線というモモカの言葉を純粋に受け取るなら、重力の変換地点。
上下が変わる場所・・そこが境界線と考えるのが、自然だよ。
自然が作り出した事なら、自然に考えれば良い・・罠は存在しない。
奴には手が出せない・・奴は境界線から外には、絶対に出られないんだから」
マサル君はマリに笑顔で言った、マリも笑顔で頷いた。
「重力の境界線なら、そこは無重力・・隠したんじゃない、浮いてるんだね~?」とシズカが二ヤで言った。
『なるほどね・・俺が行って来るから、マサル君がこれを運転して』と私は二ヤで言った。
「どうやる?・・自分の体だけで入るのか?」とマサル君が二ヤで返してきた。
『うん・・その為の青猫だから』と私はヨーコに二ヤで言った。
「もう・・下ネタ銃でしょ」とヨーコはウルで言ってポケットを探った。
「よし・・小僧を降ろしたら、神殿に入ろう・・井戸を見に行こう」とシズカが笑顔で言って、全員が笑顔で頷いた。
私はヨーコから下ネタ銃を受け取って、撮影の為のビデオカメラを背負った。
目の周りを密封するサングラスをかけ、ロープを繋ぐフックを装着して準備を整えた。
マサル君が運転席に座り、シズカが助手席に座った。
私以外がベルトを締めて、マサル君が竜巻の目前までジープを走らせた。
『行って来るよ、祈ってて』とウルで言った、マリも中1トリオもニヤニヤで頷いた。
私はジープの後方から降りて、台車ロボットを出した。
中型ジープは竜巻に入り、舞い上げられて見えなくなった。
私はウルで見送り、轟音が響く竜巻を間近で見ていた。
そして台車のロープに繋がるフックを、自分の胸の前のフックに固定した。
『高度が1200mなら、中心は600m・・最初のロープを止める長さは、500mにしよう』と私は恐怖感を取り除く為に言葉で言っていた。
《怖いんだ~》とユリアのニヤニヤ波動が来た。
『おっ!・・ユリアが戻って来たなら、沙紀は無事神殿に着いたね?』と二ヤで言った。
《うん・・沙紀ちゃん、楽しんでたよ》とユリアは嬉しそうな波動で返してくれた。
『良かった・・勇気出たよ、ユリアが側にいてね・・俺が気絶したら起こしてね』とウルで言った。
《了解・・がんばれ~》と言うユリアの強い波動を受けて、ウル継続で頷いた。
私はロープの乗る台車の重量を、10tにして先に竜巻に入れた。
口と鼻を塞ぐマスクを装着して、気合を入れて竜巻に入った。
竜巻に1歩足を踏み入れた瞬間に、私の体は強力な力で上空に引き上げられた。
私はロープを引っ張りながら、竜巻の外周を猛スピードで流されていた。
『確かに風じゃない、流されてる感じ・・水に流されてる感覚。
砂が体に当たる以外に、違和感は無い・・引っ張られてる』
私は状況をリアルに残す為に、言葉に出して録音していた。
引く力は徐々に弱まり、私は上空を見ていた。
上空に何かが見えた時に、ロープが張って私の体が止まった。
『ロープは台車から直線で張ってる、今の長さが500m・・50m足してみる』と言葉で言って。
フックに付いている装置を押して50m足した、ゆっくりと引っ張られ浮いている物体に近づいた。
『やはり600mで良い、重力の境界線がある・・竜巻の中心にいる、物体も中心で浮いている・・50mプラス』と言って50m足した。
私の体は海面に浮き上がるように上がり、浮遊している物体の真横に来た。
その物体は細長い三角形が向き合って張り付いた金属で、大きな針のような物体だった。
『この形・・方位磁石の針に似てる、半分が赤で出来てるし・・長さは井戸の直径に近いかな』と私は言って腰の自動測量機を出した。
『計測完了・・問題は下ネタ銃が使えるか、やってみる』と言葉で言って、下ネタ銃を出した。
ユリアの波動がワクワクで来ていて、私はユリアが側にいるので恐怖感は無かった。
『小さくな~れ』と私は言いながら水を噴射したが、無重力で水はかからなかった。
水は水滴になって、私の周りを浮遊していた。
『無重力で無理か~・・準備して出直そう、今からロープを外す・・ユリア、見ててね』とウルで言った。
《怪我するなよ》と言ったユリアのニヤニヤな波動が来た。
『そっか~・・怪我はしないよ、俺の映像だぜ』と二ヤで言葉で返して、ロープのフックを外した。
私は宇宙遊泳のように浮遊して、少しずつ神殿の方に引かれて行った。
足の方から引かれるので、上下の感覚が逆になっていた。
『なるほど~・・上下の感覚が自然に逆になる、自然に補正をされる』と言葉で言って、浮遊の気持ち良さを楽しんでいた。
神殿が眼下に見えきて、井戸の周りと屋根の無いステージの周りに、多くの人影があった。
私はゆっくりと優しく神殿の前に降ろされた、ユリアの波動が拍手をしていた。
『サンキュー、ユリア・・ユリアがいて心強かったよ』と笑顔で言って、井戸に向かって歩いていた。
井戸の周りには、オーディションを受けたメンバーと、沙紀を抱いた笑顔の幸子がいた。
幸子が嬉しそうな笑顔で、沙紀が全員に向かって話している顔を見ていた。
「小僧・・正解だったよ、この上に天文台が乗る・・沙紀が教えてくれた」と美由紀が二ヤで言った。
「でも足りない物は沙紀でも分からないらしい、何か有ったか?」とシズカが二ヤで言った。
『1つは見つけた、方位磁石の針のような物体・・この井戸の直径と近い大きさ』と二ヤで返して、モニターを出した。
全員がモニターの前に集まり、私の映像を二ヤで見ていた。
私は沙紀を幸子から受け取り、沙紀には映像を見せずに井戸に歩いた。
6人娘はフーを連れて、小さな木で出来た遊具で遊んでいた。
私はその時に感じた、木で出来た遊具に神殿との違和感を感じた。
『あの木で出来た遊ぶ遊具は、沙紀が作ったの?』と笑顔で沙紀に聞いた。
「そうだよ・・天文台に由美子ちゃんが来た時に、一緒に遊ぼうと思って」と沙紀が笑顔で返してきた。
『そっか~・・由美子を迎えに行けるのは、フーだけなの?』と笑顔で聞いた。
「やっと聞いてくれたね、もう一人いるよ・・その子は天文台を出せば現れるの。
お婆さんがそうじゃないと出ないって、教えてくれたよ。
その子は自然の力で体が出来てるから、内側に現れるんだって。
沙紀はお婆さんの言ってる事が分からないから、小僧ちゃんに話したかった。
小僧ちゃんなら分かるでしょ?・・内側の天文台が出ないと出れないの。
その意味が分かるでしょ・・マキちゃんの時もその子はいたのよ。
フーが蜂蜜を採りに行った、あの木の影に隠れてたの。
恥ずかしがりやさんで、マキちゃんを見て恥ずかしかったんだよ。
でも・・マキちゃんを好きになったから、会いたがってるよね」
沙紀はオババとの話が私に出来て、嬉しそうに笑顔で言った。
強烈なユリアの喜びの波動が何度も来て、女性達がハッとして私を見た。
「ユリアちゃん・・嬉しそうでしたね」とユリさんが私に薔薇二ヤで言った。
『さすがユリさん、かなり感覚が上がりましたね・・正解です』と二ヤで返した。
「ユリアって、誰なの?」と幸子が隣の美由紀に聞いた。
「それはユリカ姉さんの誕生の物語です・・・・」美由紀は物語り調でユリアの話をした、幸子は笑顔で聞いていた。
「ありがとう、美由紀・・しかし凄いね~、中1トリオ・・感動的だよ」と幸子が笑顔で言った。
「幸子姉さんって、感覚の女ですか!・・贅沢です~・・欲張りです~・・我がままです~」と美由紀言葉でウルで返した、幸子は二ヤで返していた。
「確かに・・炎も纏ってるから、贅沢な感じですね~」と沙織が笑顔で言って。
「それに有名な女性ギタリストなんだよ・・叫びの幸子姉さんですよね?・・初めて幸子姉さんの、ステージを見たときに感動しました」と秀美が笑顔で言った。
「ありがとう、後で久美子とセッションするから・・聴いててね」と幸子が笑顔で言った、中1トリオも嬉しそうな笑顔で頷いた。
「叫びの幸子姉さんが、ギターの先生か~・・俺も有名になるな~」と哲夫が二ヤで呟いた。
「哲夫・・また心が言葉に変換されてるよ、そんなんで由美子の世界は大丈夫?」と久美子が哲夫に二ヤで言って。
「困ったもんですね~・・子供だから、下の毛は3本しか無いし」とハチ公がニヤニヤで言って、哲夫がウルウルを出した。
女性達が哲夫のウルで大爆笑して、哲夫は涙目でウルウルを継続した。
「ハチ公は生まれた時から、モジャ男だからね~」とリアンが二ヤで言って。
「でも最近のハチ公は、猫背だよね~」とユリカが二ヤで言って。
「それで鳩胸だし・・生物的な一貫性が無いよ、ハチ」とカスミが最強不敵で言った。
ハチ公はウルウルを出して、女性達の爆笑を煽っていた。
「ハチ公ちゃん、哲夫君に似てきたね・・可愛くなりました」と沙紀が笑顔で言って、ハチ公は嬉しそうな笑顔で照れていた。
女性達は沙紀とハチ公の関係を、嬉しそうな笑顔で見ていた。
「小僧ちゃん・・井戸に台座を作ってね、そうしたら沙紀が天文台を作れるから」と沙紀が私に笑顔で言った。
女性達が驚いて沙紀を見た、シズカの視線が強かった。
『この井戸の上に、台座が乗るんだね・・それを作れば、その上に天文台が作れるだね?』と笑顔で聞いた。
「うん・・そうだけど、ドアは私じゃないの。
由美子ちゃんが入ると・・ドアだけは、誰かが作るの。
この前のマキちゃんの時の天文台は、普通のドアだったけど。
フーちゃんがね、固いドアで開けるのが難しい事もあったって言ったから。
どんなドアになるか分からないの、それを開ける方法も。
でも・・由美子ちゃんなら来れるよ・・マサルさんもいるし」
沙紀は笑顔で言った、私も笑顔で頷いた、マサル君はずっと井戸を覗いていた。
「さて・・準備しよう、全てのドアの想定を3人で始めるよ」と沙織が笑顔で言って。
「開かない設定には出来ないのなら、私達が必ず開ける」と秀美が笑顔で言って。
「そして私がステージに立って、ヒロインになるの・・美しい美由紀伝説の始まりだわ」と美由紀が笑顔で言った。
「美由紀、吉本の舞台に立つのか?・・フーとのコンビで」と蘭が満開二ヤで言って。
「落ちは、腹黒い以外にしてね・・あれは反則よ」とユリカが爽やか二ヤで言って。
「爆笑の美由紀伝説の始まりだね・・メカ・エロ・美由紀」とリアンが二ヤで言って、女性達が笑っていた、美由紀はウルウルで返した。
「美由紀ちゃん・・もう一人の生命でない子が出るから、その子もよろしくです」と沙紀が笑顔で言った。
「もう1人いるの!・・生命体以外に、生命を吹き込んだ子が?」とマキが驚いて言った。
「はい・・その子が由美子ちゃんの道案内です、フーがお迎えさんですから」と沙紀が笑顔で返した。
北斗が私に笑顔で近づいて、私は沙紀を北斗に渡した。
北斗は沙紀を笑顔で抱いて、嬉しそうな沙紀を抱いたまま歩いて行った。
「よし・・限界ファイブは、台座製作に集中する・・境界線の部品以外にも何か有る」とシズカが言って。
「成人の日に、天文台の完成を目指すんだよね?」と久美子が笑顔で聞いた。
「そうだよ・・成人の日に、銀河とツインズの美しい晴れ姿を見て・・それで元気を貰って、天文台を完成する」とシズカがカスミに笑顔で言った。
「最強の元気を分けてやるよ・・限界ファイブで、絶対に台座を作れよ」とカスミが最強不敵で返した。
シズカもマキもヨーコも久美子も、笑顔で強く頷いた。
「私達の手伝える事と、準備は?」とナギサが私に笑顔で言った。
『ユリさんとユリカとリアンが、北斗の精神的なフォロー。
それに大ママとミチルと千鶴にも、今夜お願いするけど。
自分の店の女性の、無駄な肩の力を抜いて欲しい。
これは派遣のメンバーにも頼むけど、蘭とナギサにも頼みたい。
だから蘭とナギサに、幻海に出てもらうから・・よろしく。
若手は精神的な自分の準備、それに人手が必要な時は台座製作の補助。
裏方4人組は、6人に選ばれる可能性が強く残るからね。
四季とツインズは、ネネが中心で引っ張って欲しい。
アンナと幸子とリリーで、他店の女性の気持ちを安定させる。
3人が楽しんで仕事をする姿で、若手の女性は精神的に安定する。
カレンはリアルでの由美子のフォロー、ハルカとミサキもフォローして。
カスミは当然、リョウの精神状態を感じててね・・攻撃的になり過ぎないように。
シオンも同じ、セリカを感じてて欲しい・・先走らないようにね。
そして哲夫・・由美子の心を守りぬけよ、前向きでいさせろ。
それが最も重要な事だよ、細かくチェックしろよ・・頼んだぞ』
私は意識して笑顔で言って、最後に哲夫に二ヤを出した。
「了解・・任せて」と哲夫が強く返してきて。
「全員、OKですね?」とユリさんが真顔で言った。
「はい」と全員で返して、心を1つにした。
「良い準備が出来そうだね」と律子が私に二ヤで言った。
『律子もフネを頼むよ・・成人の日に誘っておいてね』と二ヤで返した。
「分かってるよ・・フネの力を試したいんだろ」と律子が二ヤで返してきた、私も二ヤ継続で頷いた。
「小僧・・無重力に有る羅針盤の針は、お前とヨーコでやれるか?」とシズカが二ヤで言った。
『大丈夫・・なんとかするよ、青猫だから』と私はヨーコに二ヤで言った。
「あのクルクルを、経験しないといけないの?」とヨーコがウルで言った、私は二ヤで頷いた。
女性達がヨーコに二ヤを出して、井戸の方に歩いた。
私はヨーコの手を引いて、井戸に向かって歩いていた。
「マサル・・どう思った?」とシズカが井戸を覗いていたマサル君に言った。
「シズカ・・計測の仕方が違うよ、これは井戸じゃないだろ。
満たされた循環してる純水ならば、井戸というカテゴリーじゃないよな。
これは距離で感じたら駄目なんだよ、深さ・・深度で測るんだろ。
シズカ・・この世界はどうなってるの?・・それが意味だろ」
マサル君は二ヤで言った、女性達はその言葉の意味を考えていた。
「ここは逆転してる世界なんでしょ?・・重力補正されている、引き離された世界」とユリカが笑顔で言って。
「上が下で、下が上なんですよね・・この世界に、地下ってどこまであるんだろう?」と蘭が真顔で考えた。
「さすがユリカさんと蘭さん・・小僧が好きになる人ですね」とマサル君が笑顔で言った、蘭は嬉しそうな満開笑顔で返した。
「褒められて、蘭が嬉しそうだね~・・マサル、井戸の想定を述べよ」とナギサが笑顔で言った。
「前回の沙紀の世界は、深海まで有りましたよね。
ならば地下も深く存在するでしょう、この神殿は強引に引き離された。
地下も浅い地点でもぎ取られてる、だから地下の深い場所は無い。
この井戸の装置を作ったのは、間違いなく奴でしょう。
それが上下を逆にする為の条件だった、そう考えるのが自然だと思います。
でなければ、こんな意味深な装置を作らないですよ。
井戸の深さが、この世界の深さなんです、その下は無の世界でしょう。
距離的な感覚で感じたら駄目です、この下は無の世界・・無限だから。
人はリアルで生きてて、全てに終わりが有ると思ってますよね。
地球上の全ての物に・・宇宙にさえ、終点が有ると思ってます。
それは距離を自分で感じたいという、そんな想いだと思うんです。
マリがよく言うけど・・人間の感じてる無限は、無限じゃない。
俺もこの言葉は理解できるし、好きな言葉なんです。
俺は深さは距離じゃないと考えています、平面にこだわってきたから。
線路を走らせて列車を走らせる、それを好きでやってきました。
でも・・小僧と出会って、それから退院して・・秋に変化があった。
俺の線路を妨害する何かが現れて、そいつが色々と妨害工作を出した。
俺は不思議に思って、小僧に話したくて会いに行きました。
小僧しか俺の話を聞けないから、それに小僧の感想が聞きたかったからです。
小児病棟に小僧に会いに行ったんです、そこで出会いました・・ヒトミに。
そしてマリに出会いました、嬉しかったです・・強い力に出会えて。
そして俺の遊びに対する、妨害の意味を感じました・・ヒトミに触れて。
だから誰にも言わずに、自分で妨害と向き合いました。
楽しかったですよ、クリアーすると妨害のレベルも上がるから。
俺は前回の沙紀の世界に、ルミに誘われて感じました。
俺の妨害は由美子の為の訓練だったと、天文台を見た時に感じました。
この井戸は条件として出された、自然という偉大な力が出した条件。
大地から引き抜く事で支障をきたす、水の浄化装置を作れ。
それが自然が奴に出した条件でしょうね、それだけリアルな世界だった。
沙紀の描いたこの世界は、条件を出されるほどリアルだったんです。
生命を維持するのに、最も大切な水の存在を譲らなかった。
奴はその水を作り出すのに、この井戸の装置を作り出した。
そして周りは砂漠で囲んで、乾いた世界にしたんでしょう。
ここは沙紀が描いた由美子の生命の源、だから絶対条件の水が有る。
その水の上に天文台が乗る、それならば台座は何か。
分かってくるよね、シズカなら・・感じてくるよね、マキならば。
俺は台座の想定は言わない、それは限界ファイブが感じるべき事だから。
俺も成人の日にまた来るよ・・5人の解答を楽しみにしてるよ」
マサル君は4人を見て笑顔で言った、4人も笑顔で頷いた。
「マサル君は、学力が高いのですね・・今の言葉で分かりましたよ」とユリさんが薔薇で微笑んだ。
「たいした事ないですよ、今は工業高校に行ってます」とマサル君は笑顔で返した。
「マサル先輩が、健常者として高校に行ったから・・私達も挑戦できます、合格してみせます」とマリが笑顔で言った。
「楽しみにしてるよ、マリ・・マリとルミが、健常者として高校に行くのをね」とマサル君が笑顔で返した、マリも笑顔で頷いた。
この会話は忘れられない、同じ病と診断された、闘う者同士の会話だった。
マサル君の想定の根拠は、イメージの世界の妨害工作が基軸だった。
平地に線路を引く、トンネルも地下も掘って線路を通した。
その作業は設計から始まり、段階を踏んで完成させていた。
人間関係で感じる距離、表現できないが確かにあると思う。
マサル君は言った、それは距離じゃないんだと。
人と人の関係は、距離で測るのでなく・・深さで測るのだと言った。
深い言葉だった・・その言葉の表現に、大切なヒントが隠されていた・・。