【冬物語第四章・・時の井戸⑭】
約束された出会いがある、人間関係が繋いでくれた出会いが。
私は天邪鬼なので、偶然と感じる出会いこそが、大切な出会いだと思っている。
出会いという言葉を感じると、再び琴美が映像で蘇る。
昨年の年末、可愛い3人の少女がダンスのレッスンに戻るのを笑顔で見送った。
「さすが言葉の達人、気付かせたね」と琴美が笑顔で言った。
『持ち上げるなよ・・でも楽しかったよ』と笑顔で返した。
私は琴美と2人で本社ビルに戻った、琴美があと1時間で終わると言ったので、私は喫茶室で雑誌を読んでいた。
窓からはレインボーブリッジの明かりが見えていた。
《レインボーブリッジか、この辺りもあの当時はただの埋立地だったな~》と感慨に耽っていた。
琴美が笑顔で迎えに来て、2人でタクシーで出かけた。
『子供はいないのか?・・夜遊びして』と二ヤで言った。
「1人いるよ・・高校2年生の息子、今は実家にいるから大丈夫」と琴美が笑顔で返してきた。
『そっか・・琴美は東京出身だったね』と笑顔で返した。
琴美が有楽町の小料理屋に案内して、2人で小さな小部屋に入った。
乾杯をして、食事をしながら飲んでいた。
私は料理の注文を琴美に任せて、期待しながら食べていた。
創作料理風の彩の料理が出てきて、美しい盛り付けを見て、板前のセンスを感じていた。
「どうしたのかな?」と琴美が頬を少し染めて言った。
『さすが東京だと感じてね、小料理屋もレベルが違うね』と笑顔で返した。
「まぁそうでないと、未来が暗いよ」と琴美が笑顔で言った。
『琴美は相変わらず、報道を今でもやりたいのか?』と二ヤで返した。
「3月11日までは、そう強く思ってたよ」と琴美はグラスを見ながら言った。
『そっか~・・あの前とあの後で、日本は変わるのかもな』と私は意識して明るく言った。
琴美の顔が淋しそうで、震災で辛い場面を見たのだと思っていた。
「そんな日があったね、あの前とあの後で・・それまでが変わった日が」と琴美は懐かしそうな瞳で言った。
私と琴美はある事件で、同じ思いを共有した事があった。
その時の琴美の瞳と、同じ淋しさの色を映していた。
198○年の私の誕生日が過ぎて、6日後の春の穏やかな日だった。
電話のベルがいつもと違う音に感じた、私は時計を見て受話器を上げた。
「エース・・家にいる?」と琴美が緊迫した声で言った。
『昨日・・店の方が忙しくて、まだ寝てたよ』と眠りから覚醒しきれずに返した。
当時の私はTV局からは給料を貰っておらず、上司に気に入られフリーパスだけ確保していた。
私は夕方にニコニコ顔を出して馬鹿話をしながら、スカウトの為に女性を物色していた。
夕方の生放送で大人気番組をやっていて、局内も活気があった。
大手TV局も曙町にあって、私は蘭と新宿御苑の側のマンションに住んでいた。
「良かった・・四谷○○交差点の○○ビルに行って、誰か飛び降りたみたいなの」と琴美が強く言った。
『飛び降りた?・・自殺なの、報道の仕事だろ』と私は琴美の焦りが理解出来ずに暢気に言った。
当時の琴美はワイドショーの雑用係のADだった、だから私は不思議に思ったのだ。
その場所は私の家からは、走ってでも5分で着ける場所だった。
「デスクからの指令だよ・・そのビルに、○○ミュージックがあるんだよ、タレントかも知れないって情報が入った・・カメラを忘れないでね」と琴美が私を覚醒する為に叫んだ。
『えっ!・・そうなの、了解・・バイクで行くから、すぐに着くよ』と返して、素早く準備して出かけた。
私は現場に向かいながら、嫌な予感に包まれていた。
ユリアの波動も緊張感を纏っていた、現場が見えた時にはもう救急車はいなかった。
パトカーが3台周りを囲んでいたが、マスコミ関係者は確認できなかった。
《○○ミュージックのタレント・・Sだよな、それと》私は自分の記憶を辿っていた。
福岡出身のトップアイドルSはすぐに出てきたが、他のタレントが思い出せなかった。
《おっと、ハワイからの帰国子女、HのYちゃんがいたな》と私は思い出していた。
大きな交差点の角にあるビルの前は、警察が整理して騒然としていた。
私はビルの横の狭いと通りにバイクを止めて、カメラを隠しながらビルの前を探った。
制服の警察官が現場をブルーシートでガードしていたが、血痕は確認できた。
私はその場の写真を撮って、何とかビルに近づこうとしていた。
その時私の横を蒼白の顔のスーツの若い男が通った、私はそれを見逃さなかった。
私は走って追いついて、その男の腕を掴んだ。
『借りを返してもらおう、誰なんだ?・・お前の名前は出さんよ』と真顔で言った。
「○キコだよ・・○キコだ」とその男は俯いて言って泣いた。
私は衝撃で動けなかった、○キコと聞いて全ての回路が止まった。
そしてその男の涙を見て、それが真実なのだと感じていた。
「今日・・手首を切って、ガス栓を開けて・・それを病院で処置して、事務所に連れて来た・・ほんの一瞬目を離した隙に」とまで泣きながら言って走り去った。
私はユリアの波動に守られながら、必死に自分を鼓舞して電話BOXに入った。
そして考えを整理しながら、電話番号を回した。
『No○○○のエースです、緊急回線で・・○○デスクを頼む』と電話に出た女性に言った。
電話はすぐに繋がった、中年の男の声がした。
「エース・・緊急回線だって、誰なんだ?」とデスクが叫んだ。
『○○○キコらしい、詳しい状況と交換に・・琴美には俺から話させろよ』と私は情報を引き換えに言った。
「良いだろう・・情報は?」と男が即答してきた。
『今日・・・・・』私は事務所の男からの情報を半分ほど教えた。
その時TV局の中継車が裏通りに入ってきた、レポーターの顔も見えた。
『中継車が来た、報告するよ』と言った。
「頼む・・今から琴美に、資料倉庫の仕事をさせるから・・心配するな」と言って回線が切れた。
私は中継車に走り、馴染みの中継班の男にその話をした。
中継車の全員に緊張が走り、バタバタと準備を始めた。
私はバイクに跨りTV局を目指した、○キコの映像を必死に制御しながら。
ユリアの波動が強く連続で続いていて、私が事故を起こさないようにしていた。
私はTV局のビルに飛び込んで、地下の資料倉庫に向かった。
琴美は膨大な資料を探していた、その背中に緊張感があった。
私はそれを確認して、内線電話をかけた。
『デスク・・今から琴美を借りる、明日の朝出勤させるから・・明日からは仕事で忙殺して欲しい』と私は言った。
「交換情報は?」とデスクのオヤジが鋭く返してきた。
私は出し惜しみをした情報を教えて、琴美の件の了解を取った。
私は受話器を置いて、琴美の背中を見ながら近づいた。
『琴美・・少し太ったな?』と二ヤで声をかけた。
琴美はビクッとして、ゆっくりと振り向いた。
「誰だったの?」と琴美は真顔で言った。
『琴美・・何も聞かずに付き合えよ、デスクの許可は取ったから』と必死の笑顔で返した。
「教えてくれるんだよね、最後には」と琴美は目を潤ませて言った。
私は琴美の瞳を見て、琴美が想定できている事を感じた。
『教えるよ、琴美・・行こう、念願のバイクに乗せてやるよ』と笑顔で返した。
琴美はそれで笑顔を出して、そのまま2人で駐車場に向かった。
『荷物は・・良いのか?』と横に並ぶ琴美に二ヤで言った。
「貴重品はロッカーだから、良いよ・・エースと一緒なら、お金はいらないでしょ?」と琴美も落ち着いたのか二ヤで返してきた。
『仕方ないな~・・高給取りのくせに』と笑顔で返して手を繋いだ。
私は琴美をバイクの後ろに乗せて、四谷に向かい坂を下った。
そして狭い通路を入って、文学座の稽古場の前でバイクを降りた。
「文学座?」と琴美が言って私の後ろを歩いてきた。
『ここの桜が好きなんだよ・・姉桜を思い出すから』と笑顔で返した。
「姉桜・・その話は聞いてないよ」と琴美が笑顔で返してきた。
私は文学座の1本桜の、はらはらと散る姿が好きだったのだ。
施設の姉桜の散る姿に似ていたから、季節もベストだと思いそこを告白の場所にした。
1本桜はまさに春風を受けて、はらはらと花びらを散らしていた。
私はそれを見ながら、モモカとマリアを想っていた。
そして由美子を想っていた、由美子に勇気を貰おうとしていた。
琴美は私の手を強く握って、告白の要求をしてきた。
琴美の熱は、知らなければならないと強く伝えてきた。
『琴美・・飛び降りたのは・・○キコだった』と私は強く手を握って、桜の木に向かい言った。
琴美の熱が強烈に流れた、想定し覚悟をしていたのに、現実に言われて動揺していた。
私は手の力を強めて、琴美の顔を見た。
琴美は静かな顔で桜の花びらを見ていた、その表情に感情は無かった。
私も黙って琴美の感情が戻って来るのを待った、少しずつ温度が戻って来ていた。
「人は何の為に出会うんだろう・・。
私はなぜ出会ったのだろう・・。
私はなぜ・・何も出来なかったんだろう・・。
エース・・淋しいね、こんなに淋しいんだね・・友との別れは。
ヒトミちゃんの話で泣いたけど・・私は何も分かってなかったよ」
私はそう言って崩れ落ちる、琴美を抱き上げた。
強く目を閉じた琴美の目蓋に、桜の花びらがそっと舞い降りていた。
今回はここまでにしよう、次回に続きを書きます。
少し感情的になっていて、本題に入れそうにないから。
少し強引に日記を戻そう、快晴の砂漠の空に。
砂煙を舞い上げる2台の大型ジープを追って、私は快調に小型ジープを走らせていた。
砂漠の起伏で揺れる度に、5人の少女は歓声を上げて喜んでいた。
居住区の車庫に小型ジープを駐車して、私はマリアを抱いてジープを降りた。
子供達と居住区に入り、女性達を連れてドアから出て、私は映像を切った。
TVルームに戻っても、私の腕の中でマリアは熟睡していた。
私はマリアをベッドに寝かせた、女性達はユリさんの指示で電話をかけていた。
『哲夫・・ユリカと病院に行くぞ』と私は笑顔で言った。
「了解・・分かってる、由美子は待ってるね」と哲夫が笑顔で返してきた。
『待ってるよ・・哲夫が伝えてくれるのを』と笑顔で返した。
「ナギサ・・早目に食事をしよう、四季とツインズが揃う前に」と蘭が満開で言って、ナギサも華やか笑顔で返した。
『蘭とナギサで・・マユが夕方来るから、四季と一緒の時に話して』と笑顔で言った、蘭が満開で頷いた。
「先生・・セリカちゃんが来るんですけど」と電話を終えたシオンがニコちゃんで言った。
『派遣の事務所は、誰でも使って良いよ』と笑顔で返した、シオンがニコちゃんで頷いた。
「ユリカ・・店の女の子は今日だよね?・・明日、ミコトと千鶴だね」とユリさんと話していたリアンが言った。
「そうだね・・そうしよう」とユリアが笑顔で返した。
「私は今からミサキに会いますけど、明日までは口止めしときますね」とハルカが笑顔で言って、TVルームをヨーコと出て行った。
カスミも待ち合わせが出来たのか、笑顔で出て行き。
蘭とナギサとリリーは、早目の食事を始めていた。
「ネネ・・小夜子はあなたから頼みますね、ここに来るように連絡しましたから」とユリカが微笑んだ。
「ありがとうございます・・引き受けます」とネネが嬉しそうな笑顔で返した。
美由紀の父親の政治が迎えに来て、中1トリオも帰って行った。
『それじゃあ・・律子、モモカをよろしく・・モモカありがとね』と笑顔で言った。
「コジョ・・お友達をありがとでした、モモカも嬉しかったですよ」とルンルン笑顔で返してきた。
『うん・・モモカ、沙紀を誘う日に迎えに行くよ』と笑顔で言って立ち上がった。
「はい・・魔法の絵筆の仕上げですね、楽しみです~」とモモカが嬉しそうに返してきた、私は笑顔で頷いてTVルームを出た。
マリとルミで、哲夫を挟んで歩いていた。
私はその後ろを、ユリカと腕を組んで二ヤで歩いていた。
3人を後部座席に乗せて、私が助手席に乗り込んだ。
ユリカが笑顔で出発した、少し暗い夕暮れの迫る冬空だった。
「ミホの事じゃないよね・・7人目に選ばれる可能性が強いのは?」とユリカが真顔で聞いた。
『違うよ・・ミホなら何にも心配しないよ、1人いるんだよ。
最近感性が上がって、マリとの同調も絶対に出来る子がね。
自分の病気を感じて、感性が鋭くなってきた・・理沙がいるんだ。
だから同調を経験させて、話とかないといけないんだよ。
突然連れて行かれたら、100%パニッックになるからね。
理沙が選ばれる可能性は高い、由美子とお友達になってるから。
奴の想定では、理沙より沙紀の方が弱いと判断するだろうけど。
理沙が何も知らなかったら、絶対に狙われるからね。
やっとかないといけないんだ、マリもルミもそう思ってるよ』
私は意識して笑顔で返した、ユリカは前を見ていた。
「そうだよね~・・理沙は絶対に同調できるよね、それを全て想定しないといけないんだね」とユリカが真顔で前に向かって言った。
『誰なら出来るのか想定するのはマリだよ・・今はルミという2重のチェックがあるから、大丈夫だよ』と笑顔で返した。
「小僧・・一人心配な人がいるんだよ」とマリが真剣な言葉で言った。
『誰?』と私はその言葉に緊張を感じて、振り向いて聞いた。
「自称の女神・・あの時、女神と私は絡んだから・・その時に同調しかかった」とマリが真剣に返してきた。
『了解・・年末偶然会ったよ、ジンに言って会えるようにセットしてもらうよ』と笑顔で返した。
「受験前じゃないの?・・医学部の」とルミが心配げに言った。
『大丈夫みたいだよ、年末もジンと食事に行くって楽しんでたし。
成績は優秀なんだって、シズカが驚いたって言ってたから相当だよ。
余裕がある感じだったよ、地元の大学を受けるって言ってたから』
私は笑顔で返した、マリもルミも笑顔で頷いた。
「楽しみだね~・・自称の女神が見れるのは」とユリカが爽やか二ヤで言った。
『二ヤで言わないの、ユリカ』と二ヤで返した。
哲夫はマリとルミに挟まれて、ウルを出していた。
マリとルミが二ヤで哲夫をからかって、哲夫の無駄な肩の力を抜いていた。
病院に着いてユリカと哲夫と別れて、ミホの病室に入った。
理沙はミホのキーボードの演奏を、ヘッドホーンで聴いていた。
マリとルミが2人に笑顔で近づいた、ミホはそれで状況を感じた。
「大切な事があるのね?」と理沙の母親が私に笑顔で言った。
『はい・・理沙を借ります』と笑顔で返した。
「ありがとう・・私は洗濯してくるね」と母親が笑顔で言って、病室を出て行った。
私は理沙のベッドの横にある椅子を持って、ミホのベッドに進んだ。
仕切りのカーテンを閉めて、廊下から見えないようにした。
ミホがベッドに座って、その横にマリが座った。
車椅子の理沙を挟んで、ルミと私が椅子に座った。
「楽しい事をするんだね?」と理沙が私に笑顔で言った。
『うん・・理沙にお話がある、その前に熊のフーさんに会いに行こう。
理沙は目を閉じて、白い部屋を自分で作ってね。
立って歩けると思ってね、そうすれば歩けるから。
そうしてるとルミ姉さんが迎えに来るから、絶対に出来るよ。
おとぎの国に招待するよ、理沙の大好きな沙紀が描いた国にね。
ミホも行くから大丈夫だよ、楽しいから行こうね』
私は笑顔で言った、理沙は可愛い笑顔で頷いた。
5人で手を繋いで、私は理沙の嬉しそうな笑顔を見ていた。
『ルミ、理沙をよろしく・・理沙、白い部屋だよ。
マリ、ミホはドアを知らないから・・迎えに行ってね。
ミホは待ってて、管制室に入らなくていいからね』
私は笑顔で言った、手を繋ぐミホには温度で伝えた。
理沙が笑顔で頷いて、ミホは理解したと感じていた。
『それでは行きます、目を閉じて』と笑顔で言って、目を閉じた。
私がドアから入ると、ハチ公が迎えてくれた。
フーは私が出たドアの前で待っていた、妖精達もボンビもワクワクな感じだった。
マリがミホと手を繋いで現れて、フーがミホに駆け寄った。
ミホはフーを抱き上げて、微かに笑顔を見せてくれた。
ボンビとミホが触れ合ってると、ドアが開いてルミと理沙が手を繋いで出てきた。
「何!・・何!・・素敵~」と理沙が叫んだ、理沙は自分で立って歩いていた。
フーが理沙に駆け寄った、理沙は涙を流してフーを抱きしめた。
フーは理沙の涙を右手で拭いていた、私は笑顔でそれを見ていた。
理沙とミホを芝生の上に座らせて、2人を遊ばせていた。
2頭の白馬とボンビの母親に、ハチ公も揃って2人の側にいた。
私とマリとルミは庭のテーブルの椅子に座り、その楽しげな光景を笑顔で見ていた。
理沙は嬉しかったのだろう、辛い事が多かったのだから。
私はフーの圧倒的な癒しを見て、沙紀の凄さを再確認していた。
由美子の為に作り出したフーには、圧倒的な癒しの力が備わっていた。
それが沙紀が込めた想いなんだろう、沙紀はそれを描く事が出来るのだ。
私はそう思って、沙紀の描く時の集中を思い出していた。
かなりの時間と感じるほど、2人を遊ばせた。
『そろそろ帰ろう・・理沙、この扉を覚えてね・・何度でも連れて来るから』と笑顔で言った。
「は~い・・ありがとう、小僧ちゃん」と理沙が笑顔で返してくれた。
私達は笑顔で手を振って、ドアから出て映像を切った。
病室に戻るとユリカと哲夫が来ていて、理沙の母親と話していた。
『ユリカ・・哲夫とマリとルミを送ってね、俺は歩いて帰るから』と笑顔で言った。
「了解・・帰ろうかね」とユリカが笑顔で言って、4人で理沙の母親に挨拶して出て行った。
私は母親に断って、理沙に暖かい上着を着せて膝掛けをかけた。
理沙の車椅子を押して、エレベーターで屋上に上がった。
冬の夕焼けが空を真赤に染めていて、私は理沙を押して西の空を見ていた。
「小僧ちゃん・・理沙は大丈夫だよ、教えて?」と理沙は夕焼けを見ながら言った。
『理沙・・由美子の病気でね、俺はある事に挑戦してる・・・・』私は正直に自分の想いを話した。
そして由美子の世界と、次のステージの話をした。
理沙が7人目に選ばれる可能性がある事と、それが辛い事かも知れないと話した。
私は思っていたのだ、奴は理沙の未来を告白する可能性があると。
それを感じて、理沙には正直に話そうと感じていた。
「小僧ちゃん、私は大丈夫だよ・・7人目に選ばれたい。
由美子ちゃんの為なら、理沙が戦いたいよ。
理沙は負けないよ・・どんな相手でも、どんな病気でも」
理沙は私を見て笑顔で強く言った、私も嬉しくて笑顔で頷いた。
強烈なユリアの波動が何度も来た、赤く染まる西の綾町の方向から。
理沙はその方向を見て、笑顔を出した。
「ありがとう、ユリアちゃん・・理沙も頑張るよ」と理沙は夕焼けに向かって言った。
制御の利かない波動に、理沙は包まれて笑顔になっていた。
《明けぬ夜はない》私には和尚のこの言葉が響いていた。
《理沙も明日を考えてない、今だけを考えてる・・凄いよ、理沙も》と心に囁いた。
ユリアの波動は、理沙を暖かく包み込んでいた。
私は笑顔で理沙を押して、理沙のアイドル話を聞いていた。
病室に入ると夕食が揃っていて、私は理沙を抱き上げてベッドに座らせた。
ミホのチェックをして、ミホと理沙にさよならをして病室を出た。
その日は由美子に会わなかった、由美子に時間を持たせた、考える時間を。
私は薄暗い通りを、夜街に向かって歩いていた。
途中でホストクラブに寄って、ジンを呼んでもらい概要を話した。
ジンは快く段取りすると言ってくれた、私は礼を言ってジンと別れた。
PGに向かって歩いていると、後ろから声をかけられた。
「夕食まだなんだろ?」と大ママの声がした、振り向くと大ママとヨーコが立っていた。
『まだ・・お腹空いた』とウルウルで返した。
「お前はいても問題無いんだろ、今からユリとマキと食事するんだよ」と大ママが二ヤで言った。
『ラッキー・・お世話になります』と二ヤで返して、大ママと並んで歩いた。
「深刻な話なのかい?」と大ママが探りを入れてきた。
『深刻じゃないよ、楽しい話です・・大ママにはね、若手には緊張する話だけど』と二ヤで返した。
「そうなんだね~・・楽しみだね~」と言った大ママとヨーコと有名な日本料理屋に入った。
個室が用意されていて、大ママが1人追加と言って、店の人が素早く対応した。
私は新しく用意された、向かい合う席を挟む場所に座った。
ユリさんとマキはすぐに来た、私を見て薔薇で微笑んでくれた。
コース料理が運ばれて、大ママとユリさんがビール、私とマキとヨーコがウーロンで乾杯した。
「食べながら、先にお話をしますね」とユリさんが大ママに薔薇で微笑んだ。
「よろしく、楽しみだよ」と大ママが笑顔で返した。
「今日、次回の由美子の設定が少し決まりました・・内容は・・・・」ユリさんは笑顔を交えて話していた。
マキもヨーコもその流れるような言葉を、必死に盗むように聞いていた。
「当然・・大ママの可能性も0ではありません、ですから準備をお願いします」とユリさんが薔薇の微笑で締めた。
「なるほどね~、面白いね・・エース、7人目のリョウの可能性は大きいんだね?」と大ママが二ヤで言った。
『二ヤで言わないの、期待して・・リョウが覚醒すると思って。
それは確かに大きいと思うよ、リョウの経験は激烈だから。
それにリョウは、その事から目を背けていないからね。
俺も大ママと同じで、リョウに関しては何も心配してない。
リョウは自分でかなりの部分は、女性達に告白してるし。
今更何を言われても、何を知られても・・動じる事は無いだろう。
リョウは望むだろうね、心から・・7人目に選ばれる事を』
私も笑顔で返した、正直な気持ちだった。
「だろうね・・なぜお前は、カスミを連れて入ったんだ?・・7人目の、カスミの選択肢も残して良かっただろう?」と大ママが二ヤ継続で返してきた。
『カスミとリョウなら、間違いなくリョウだよ。
だからカスミは7人目にはならない、だから想定できる方に入れた。。
カスミを6人設定に入れれば、それで確定が一人出来るからね。
今のカスミにとっては、ストレス解消程度の事だろうね。
俺は気持ち的には、リョウの戦いは避けている・・必要無いから。
7人目になれば・・リョウは覚醒して、次の段階に間違いなく入るだろうけど。
そんな行為は必要ない、近い内にリョウは入ると思ってる。
リョウもカスミも入るよ、4月にヨーコとマキがデビューすればね』
私は最後にマキとヨーコにニヤニヤを出した、2人も二ヤで返してくれた。
「なるほどね・・まぁ、お前の誘導なら・・9割がた沙紀だね」と大ママが笑顔で言った。
「そうでしょうね・・沙紀ちゃんのその時の対応が、今から楽しみですね」とユリさんが薔薇で微笑んで。
「今日の映像を見せて、次の全体的な準備は何でしょう?」とユリさんが私に言った。
『ヨーコの思い出、カンナの子守唄に込めた想い・・それを見てもらいます、素敵なヒントになるから』と私はヨーコを見て笑顔で言った。
「大丈夫だよ・・実は私も楽しみにしてるよ」とヨーコが清楚笑顔で返してくれた。
「そっか~・・楽しみに出来るとこまで来たか~・・焦らせるなよ、ヨーコ」とマキが笑顔で言った。
「焦らせるよ、マキ・・あんただろ、今回の鍵も・・物語は終わってない、不思議な国のマキは」とヨーコが二ヤで返した、マキも二ヤで頷いた。
「楽しみだね~、ユリ」と大ママが笑顔で言った。
「本当ですね~・・自分でやるべき事も、はっきりとしてるし」とユリさんが薔薇で返した。
『マキ・・マキの今日の面接場面は、女性達には見せない。
先入観になるといけないからね、だから大ママにだけ今話しといて。
ミチルにも、マキから話してね・・よろしく』
私はマキに笑顔で言った、マキも笑顔で頷いた。
「大ママ・・私はヒントポイントと言って・・・・」マキは自分の言葉を大ママに伝えた。
「マキ・・選ばれておくれよ、16歳の真希姉さんが見れるなんて・・最高だよ」と大ママが目を潤ませて言った。
「奴次第ですけど・・可能性は相当に高いと感じてます」とマキが笑顔で返した。
「99%だろうね、絶対にそれで来るよ」とヨーコが二ヤで言った。
『大ママ・・俺からも大切な話があるんだ、派遣の事で』と真顔で大ママに言った。
「何だよ・・怖いだろ、言ってみな」と大ママが真顔で返してきた。
『大ママには単刀直入で言うよ、1番理解してる人だから。
リッチの従業員の、キヌという女性から依頼があったんだ。
経験者を面接して欲しいって、復帰を望んでるらしいんだ。
前向きになって、音楽を再開する為に・・仕事復帰を望んでる。
でも・・まだ専属で働くのは、自信が無いみたいなんだよ。
だから派遣の面接を頼まれた・・今年25歳なんだ。
実力も折り紙つきで、年齢的にも1番欲しい年代なんだよ。
ユリさんもユリカもリアンも蘭も、賛成してくれた。
だから大ママの許可が欲しいんだよ、元魅宴だからね。
その人の源氏名は・・幸子という、元魅宴のNo2だよね。
ミコトと競って、何度かミコトに指名で勝っている。
俺は幸子と関わるよ・・大ママ、その許可願います』
私は真顔でそう言って、大ママに向かって深々と頭を下げた。
大ママは驚いて、私を真剣な瞳で見ていた。
「許可するよ・・と言うより、お願いするよ。
幸子の復帰なら、エース・・お前しか出来ない。
ユリカを愛し、マリとルミと上手くやれるお前しか。
私はこんなに嬉しい事はないよ、幸子の復活が見れる。
乗り越えた、次の幸子が見れるんだね・・想像も出来ないよ。
幸子の変化は、私には想像できない・・それほど別世界に棲む。
やってくれ、エース・・幸子の覚醒を」
大ママは嬉しそうな笑顔で返してくれた、私も笑顔で頷いた。
「また復活劇か~・・それも相当に凄そうだね」とマキがウルでヨーコに言って。
「絶対凄いよ、だってミコト姉さんと互角だったんだよ・・その時のNo1は、ユリカ姉さんだよ」とヨーコもウルで返した。
「互角だよ・・それはミコトが認めた、1歳下の幸子の事を・・あのミコトがね」と大ママが2人に二ヤで言った。
マキとヨーコはウルウルで頷いた、私達は3人でその表情を見て笑っていた。
『採用が決まってから、ミコトとナギサには話します。
過度な期待をされても困るから、でも採用すると楽しみです。
絶対にナギサが覚醒してくる、今はまだ蘭に押されがちなナギサが。
挑戦開始の合図を、幸子に鳴らしてもらいます。
蘭とナギサの関係が、リアンとユリカの関係に迫れるのか。
その試験開始の合図を・・幸子に鳴らしてもらいましょう』
私はニヤニヤで言った、大ママとユリさんが二ヤで返してくれた。
それから楽しい話題で盛り上がり、大ママが私の分を支払ってくれた。
ユリさんとマキとPGに戻りながら、私は通りで小夜子に声をかけられた。
「私の可能性も、0じゃないよね?」と小夜子が美しい笑顔で言った。
『もちろん・・俺は小夜子の、激しい過去を知らないからね』と二ヤで返した。
「激しい過去なんて無いよ、でも準備はするよ・・楽しみだよ~」と笑顔で言った小夜子を、手を振って見送った。
ユリさんとマキはフロアーに向かった、私はTVルームを覗いた。
『マリ・・どうしたの?』と私はマリがいたので驚いて言った。
「ルミと話して、私が残る事にしたよ。
私とルミの話を聞いてた、ユリカ姉さんが両親に話してくれた。
今夜は、私一人でユリカ姉さんの家に泊まるよ」
マリは同調で一気に言って最強マリ二ヤを出した、その時派遣の事務所の電話が鳴った。
「電話だよ・・小僧」とマリが二ヤ継続で言葉で言った。
私は不思議に感じながら、事務所に入って電話を取った。
「エース・・キヌだよ、今夜空いてる?」とキヌの声が、大きな音楽に包まれながら響いてきた。
『空いてるよ・・盛り上がってるね?』と聞こえるように大声で返した。
「うん・・今夜は10時で仕事が終わるから、10時半にそこに行くよ・・幸子を連れて」とキヌが大音響に負けない大声で言った。
強いユリカの波動が来た、私はマリの来た意味を感じていた。
『了解・・楽しみに待ってるよ』と私も大声で言って、受話器を置いた。
TVルームに戻ると、マリが私を二ヤで見ていた、私も二ヤで返した。
3人娘が遊んでいてマリアは眠っていた、エミは1人で勉強をしていた。
『エミ・・派遣の事務所の、俺の机をいつでも使って良いよ』とエミに笑顔で言った。
「うそ・・ありがとう」と笑顔で言って、勉強道具を持って事務所に入った。
『マリ・・ゴールドに久美子を迎えに行ってくるよ、娘達をよろしく』とマリに二ヤで言った。
「任せなさい・・大切な出会いだね」とマリも二ヤで返してくれた。
『出会うと決められていた出会いも、大切なものだよね?』と真顔で返した。
私は幸子との出会いは、決められていたと感じていた。
「そう取るなよ・・繋いだ証と取るんだよ」とマリが笑顔で返してくれた。
『そうだね・・繋いだ証で、今夜出会うんだね』と笑顔で返してTVルームを出た。
強いユリカの波動が、マリの言葉の同意を示した。
私はそれで幸子に興味が増して、ワクワク気分で歩き出した。
冬の闇は訪れが早く、人工的な照明が必死に対抗していた。
《出会った事に意味は無い、意味はその後に出来る》
自分の決め台詞を、心に呟いて歩いていた。
鏡の幸子が私に近づいていた、鮮明に相手を映す鏡の幸子が。
私は幸子のイメージを、この時は180度間違えていた。
大人しく静かなイメージを持っていた、ユリカの延長線上に存在する。
光を全て反射して輝く、乱反射の心を持った感性がニヤニヤで近づいてきた。
私の意地悪リストの新記録を打ち立てる、意地悪サッちゃんが二ヤを出していた。
私はウルで鼻歌を歌う、その替え歌だけが・・私の唯一の抵抗だった。
《サッちゃんはね、幸子って言うんだ・・ほんとかな?
だけど幸薄いから、自分の事サッちゃんて呼ぶんだよ。
名前負けだね・・サッちゃん》
私はテーマソングのように、この字余りの替え歌をウルで口ずさむ。
炎を纏う感覚の女、贅沢な設定で生きる・・幸子が登場する・・。