表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
378/454

      【冬物語第四章・・時の井戸⑫】 

答えの出ない問題を持つ、これが暇潰しの方法である。

絶対に答えの出ない問題がある、世界中には無数にある。


それを心に持っていると、それを引き出して遊べる。

携帯も携帯ゲームも、何も持たない子供時代を過ごした私は、今でも自分のゲームを持っている。


その答えを探しながら、空想の世界に入って行く。

冒険しながら歴史を推理する、それに夢中になることが出来る・・今でも。


私はピラミッドもマチュピチュも、設計から作り上げた。

周辺の環境や資料を読み漁り、全てを想定するのだ。

石を切り積み上げて、人員と時間も計算して作った。

早送りで作業させて、それでも無理だと感じたら、設定を変えて再挑戦した。


先日、羽田の待合室で搭乗を待っていたら、周りの若者達はスマホを触っていた。

5人組が別々にスマホで遊んでいた、私は不思議な光景だと思いながら、自分のゲームを出した。


知らない内に夢中になって、人類誕生の新設定を作っていた。

多分、目を閉じてニヤニヤしてたのだろう、それでなくても怪しいオヤジなのに。

不気味さに拍車がかかっていたのだろう、私は耳元に声をかけられる。


「オジサン・・何のゲームをしてるの?」と隣に座るスマホを触っていた若い女性に声をかけられた。


私はその子の《ゲーム》と言った鋭い感性と、好奇心に逆らえない性格を感じて目を開けた。

可愛い20歳そこそこの女性だった、私を見て二ヤを出していた。


『5歳の時からしてるゲーム・・今日のソフトは、人類誕生だよ』と笑顔で返した。

「面白そう・・イメージで考えるの?」と弾ける若さを振りまいて、笑顔で返してきた。


『イメージを映像化して動かすんだよ、俺のは3Dだよ』と二ヤで返した。

「ほほ~・・それでジャンルは、RPGなの?」と可愛い二ヤで返してきた。


『そう・・3Dの自立型2速歩行の主人公が、存在しない答えを探す、RPGだよ』と笑顔で返した。

「ありがとう、やってみる・・存在しない答えを探す、それは楽しそう」と笑顔で言って瞳を閉じた。


私は搭乗のアナウンスを聞きながら、その子の右手を握って一瞬瞳を閉じて立ち上がった。


「危ないオジサン、ありがとう・・サンプル画像」とその子が大きな声で言った。

『通信機能も持ってるんだよ・・再会できるのを楽しみにしてるよ』と振り返らずに二ヤで言ってゲートを潜った。


私はそれだけで元気になっていた、人間は同じだと思えて。

神殿に入ったあの当時の女性も、現代の女性も同じだと感じられて。


その子の笑顔に見送られ、楽しい心のまま、話を神殿に戻そう。


神殿には緊張感が出ていた、オババも女性達にも。

オババの前にルミが立っていた、私は二ヤでルミの背中を見ていた。


オババはルミの余裕の表情を見て、シワシワを深めて笑顔になった。


「ルミ・・少し休憩させてくれよ、私も歳なんだからね」とオババが笑顔で言って、席を立って映像から消えた。

「都合の良い時だけ、歳だって言って・・小僧と変わらんね~」とルミは二ヤで言って、その場所に座って振り向いた。


ルミはマリに二ヤを送り、マリも二ヤで頷いた。


「小僧、5人娘と誰かを変えよう・・エミ、お外で遊んであげて。

 哲夫、頼んだよ・・あんたが大切なエミを守りな。

 フーを連れて行けば、楽しい場所に案内してくれるよ」


マリは笑顔でエミに言った、エミはマリの意図を瞬時に感じた。

マリは女性達の場面を、子供達に見せたくなかったのだろう。

マリはオババの中立な場所なので、想定できなかったのだ。


「は~い・・行くよ」とエミが笑顔で言って、ミサとレイカと安奈とモモカにフーを連れて出て行った。

哲夫はニコニコちゃんで、妖精達を肩に乗せて、モモカと安奈の後ろを歩いた。

マリアは私の腕の中で深い眠りに入っていた、女性達が笑顔で見送っていた。


ユリさんが薔薇二ヤで升目に入り、ユリカとリアンと北斗が入って、最後に律子が入った。


「最高のワクワク感が止まらない、絶対に選ばれる・・オーディションなら」と私の横にカスミが来て最強不敵で言った。

「私も選ばれたい、次の段階に行ける・・互角の相手との勝負をすれば、行ける気がする」とレンが珍しく熱い言葉で言った。


「そうなんですよね~・・互角の相手だって確信できる事って、リアルでは中々無いですよね・・選ばれたいな~」とハルカも二ヤで言った。


「さすがPGの若手ですね、気付きましたね」と律子がユリさんに二ヤで言った。

「嬉しいですね・・私でもそう思ってました、互角の相手・・滅多に出会えない存在です」とユリさんが薔薇で微笑んだ。


「なぁエース、北斗姉さんの・・母親としての難しさって、何なんだよ?」とリアンが振り向いて私に言った。


『それはもちろんプレッシャーだよ、由美子の未来が賭けなんだ。

 そのノルマが全勝なんだよ、もちろん全員がそのプレッシャーを感じる。

 でも・・北斗のそれは、想像を絶するんだよね。

 奴はそんな部分には鋭く反応する、だから北斗の選ばれる可能性は高い。

 俺は95%・・北斗は6人に選ばれると思ってる、多分1人目か6人目に。

 それが奴の幼稚な考え、母親なら動揺して出来ないと思ってる。

 北斗の内面など考慮しない、俺は1勝は確信してるよ・・北斗の1勝を。

 だからあと6勝だね・・残りの5人と7人目に賭けるよ』


私は笑顔で北斗を見ながら言った、北斗も笑顔で返してくれた。


「策略だったか・・1勝は確定だね」とリアンが極炎ニカで言って、全員が二ヤで頷いた。


「マリの時、ヨーコの相手は軟体生物だったよね・・恭子は何だったの?」と久美子が二ヤで聞いた、全員の興味津々光線が発射された。


「リトル豊・・私と互角の豊が出てきた、それを倒したんだよ」と恭子がニヤニヤで返した。

女性達が驚いていた、私はニヤニヤを出していた。


「恭子・・あれは倒したなんて表現じゃないよ、リトル豊は瀕死の重症だったよ」とヨーコが二ヤで言って。

「あんな恭子初めて見たよ、笑いながらマウントポジションで殴り続ける・・狂った子を」とマキも二ヤで言った。


「あの頃のリアルな中1の豊・・女子からチョコを山ほど貰って、ニコニコしてたんだ・・そのニコニコ顔を思い出しながら、殴ってた」と恭子が二ヤで返した。


この言葉で、女性達に大爆笑が起きた。


「じゃあ・・あんたは何だったの?」と蘭が満開二ヤで私に言った。

『俺は・・互角の設定に落としてくれた・・ヒトミだよ』と二ヤで言った。


「ヒトミを殴ったの?」とユリカが驚いて聞いた。


『まさか!・・奴がヒトミにどんな改良を加えても、殴り合いにはならないよ。

 奴が作ってくるけど、モデルがいるなら・・本質は変えられない。

 それがリアルで存在しない者なら、リアルな設定で出してくる。

 だから相手をリアルに感じる、実は俺は嬉しかった・・ヒトミに会えて。

 ヒトミを感じる事が出来て、俺は奴に感謝したよ・・真向勝負が出来て。

 俺にとっては最高の勝負・・ヒトミ問答・・大切な思い出なんだ』


私は笑顔で返した、全員が嬉しそうな笑顔で返してくれた。


「そっか~・・その人間の1番強い部分に対する、互角だね。

 だからエースは言葉だった、そしてその相手がヒトミちゃん。

 エースの言葉の相手をするのに、ヒトミは能力を落とされた。

 凄いよね~・・ヒトミの伝達の力って・・最強なんだろうね

 リアルでも感じてみたかったな~・・ヒトミの伝達を感じたかった」


リリーが高速リングで言った、私は嬉しくて笑顔で頷いた、女性達も笑顔で頷いた。


「絶対に選ばれる・・どんな事をしても」と蘭が満開笑顔で言って。

「私も必ず選ばれる、どんな相手か知りたい・・自分で想像できないから」とナギサが華やか笑顔で言った。


『想像できないのか~・・後ろにいるのにね』と私はマリに二ヤで言った、マリも二ヤでナギサを見た。

「後ろ?」と言ってナギサが振り向いた、マキが二ヤでナギサを見た。


「なるほどね~・・マキだね」とユリカが最強爽やか二ヤで言って。

「そりゃ~、危ないね~・・また負けるかも」とリアンが極炎ニカで言った。


「えっ!・・なぜ私の相手がマキなのでしょう?」とナギサが華やかウルで聞いた。


「当人はもう、記憶から消してますね」とユリさんが薔薇二ヤで言って。

「本当に良い性格してるよ・・ナギサの相手はリトルマキでしょう・・ホストの」と蘭が満開ニヤニヤで言った。


「あっ!・・そうだった・・私が絶対に選ばれる」とナギサが恐ろしいほどの二ヤで言った。


「私も絶対に選ばれる、相手は確信した・・殴りあう設定も」とカスミが輝きを放出しながら強く言った。


「小僧・・カスミ姉さんの可能性は?」とシズカが二ヤで言った。

『90%だろうね・・奴はそういう部分にも鋭いから』と二ヤで返した、カスミの嬉しそうな笑顔があった。


「1度は愛した相手が出る確率が高いんだよね?・・私は誰だろう」と美由紀が二ヤで言った。


「そうなの!・・1度は愛した人か、忘れられない人・・そんな感じなんだね」と蘭が満開笑顔で言った。


「小僧・・蘭の可能性は?」と律子が二ヤで聞いた。

『北斗と同じ、95%だろうね・・なんせ相手になるであろう人が、また会えるって言ったからね』と二ヤで返した。


「洋が相手なのね!・・姿無き素敵なあなた、私を選んでね・・100%でね、お願い」と蘭が天井を見上げて、祈るようなポーズで言った。


「まずい・・相当にまずい、3人が90%を超えている」と美由紀がウルで言った。


「ヨーコ・・気配を消してるね、触れられたくないの?

 なぜヨーコは相手が軟体生物なのか、その理由に」


ユリカがヨーコに二ヤで言った、ヨーコはウルウルで頷いた。

女性達がニヤニヤになって、リアンに期待の視線を向けた。


「マキ・・理由を延べよ」とリアンが二ヤで言った。


「あの頃のヨーコは、パー君を見送ったばかりでした。

 潮干狩りに行って捕まえた、パー君を持ち帰って水槽で飼ってて。

 学校から帰るとパー君が浮いてて、ヨーコは泣きながら寺に持って行って。

 ヒトデのパー君を、ウサギのチャッピー側に手厚く葬りました。

 その記憶が鮮明だったのでしょうね、だから奴は作り出した。

 ヨーコの相手は、6本の触手のある軟体生物になったのでしょう」


マキは二ヤで言った、女性達の爆笑が沸き起こった。


「ヒトデちゃんが、パー君・・可愛いよ、ヨーコ」とカレンが笑顔で言って。

「ほんとに、何をやっても可愛いね・・ヨーコは」とネネが笑顔で言った。


「おや~・・もう一人いたね、気配を消してた武闘派の女が」とリアンが二ヤで言った、ネネはウルで返した。


「ネネ姉さん、完璧に6人になるの狙ってます~・・自分の情報が少ないから、気配を消してました~」美由紀がウルで言った。

「そうなんだよね~・・それに超好戦的な人が、純白の姉さんが消してるよね~」と沙織が二ヤで言った。


「沙織ちゃん、言ったら駄目です~・・美由紀が私の作戦を奪ったんだから~」とシオンがニコちゃんウルで返した。


「さすがエースとマリとルミですね・・ベストな人員設定ですね」とユリさんが薔薇で微笑んだ。


「そうですよね~・・このメンバーなら相手を想定が出来る。

 エースもマリもルミも・・だから今にしたんですね。

 エースは多分、ホノカやセリカの相手が想定できない。

 リョウのは誰でも想定できるけど、それは危険な賭けになる。

 PGでも、四季とツインズの相手の想定には自信が持てない。

 策略家ですね~・・マリとルミとは阿吽の呼吸だし」


ユリカが二ヤで言った、私も二ヤで返した。


「エース・・一人の設定だけ教えてよ、ユリカの相手は誰なの?」と北斗が笑顔で言った。


『それはもちろん・・ユリアだと思うよ。

 奴が相手として出せると言っても、その場にいない相手なんだ。

 そしてリアルには、生きていない相手なら・・リアルに作れる。

 オババは審判なんだよね、審判は勝敗の判断もするけど。

 最も大切な仕事は、フェアーかどうか判断する事なんだ。

 だから戦闘的なこのステージの場合は、オーディションをする。

 こっちの資料を作って、奴の作り出した相手も審査するんだろう。

 それが互角以上だったら、オババが駄目出しをすると思うよ。

 奴が誰を選択するか分からないけど、想定も誘導も出来るよ。


 恭子の相手のリトル豊は、どう見てもロボットだったんだ。

 リアルで生きてる相手を作るなら、サイボーグになるんだよ。

 顔は豊兄さんだったけど、体はサイボーグだと誰でも分かった。

 だから恭子は殴る事が出来たんだ、それも楽しんでね。

 ユリアは多分、ステージ決戦が終わるまで入ってこない。

 ユリカを信じてるから、ユリカの可能性を残す為にね』


私は笑顔で言った、強烈なユリアの波動が二ヤで吹いてきた。

ユリカも波動を感じたのだろう、嬉しそうな爽やか笑顔で頷いた。


「楽しすぎるね~・・席は残り3席、絶対に勝ち取るよ」とリアンが二ヤで言った。

「エースが一人だけ、相手の想定が出来ない女が燃えてるね~」ユリカが二ヤでリアンに言った。


「そうだろうね、でもエースとマリとルミは・・私は絶対に勝つと想定してるのさ」とリアンが二ヤで返した。


私もマリもルミも二ヤで頷いた、リアンは嬉しそうに極炎で頷いた。

私にはこの場にリアンがいる事こそが、策略だったのだ。

奴を惑わす作戦だった、リアンの心とは本物の最強だったから。


「エース・・リアルな今の時間が分かる?」とハルカが心配して言った。

感覚的には、3時間以上は経過した感じだった。


『もちろん・・じゃあ、全員目を閉じて・・感じてみてね』と私は二ヤで言った。


女性達が私の二ヤを見て、不思議そうに目を閉じた。


『ユリア・・今、そっちは何時?』と私は言葉で言った。


《3時・・40分》というユリアの最強の波動が返ってきた。


「うっそ!・・今のなの」とリリーが驚いて言って。

「嬉しい~・・リアルに感じた~」とシズカが叫んだ。


シズカは嬉しかったのだろう、感覚的な部分に響いてきたのだから。


「でも・・言葉の内容は分からない」と蘭がウルで言って、ナギサもウルで頷いた。


『このテストは、ある人を試したかったんだ。

 この世界なら、俺はユリアの波動の言葉が分かるんだよ。

 女性達も無の集中をすれば、波動は感じるんだよね。

 これは武器になるんだよ、結界の中は無理だけど・・連絡できる。

 前回はユリアが1発だけ使える波動で、マキに俺の言葉を伝えた。

 マキはマリが同調で、波動を感じる特訓をしたからね。

 その特訓があの時に役立った、マリもユリアも喜んでたよ。


 今のユリアの波動、強烈だったから全員が感じたと思う。

 目を閉じていたからね、それを感じる事が出来た。

 当然・・律子とユリカ、それに美由紀はこの世界では常に感じてる。

 常に感じてるならば、集中すれば言葉が読めると思う。

 俺は武器を持ちたいんだ、次回は本部連絡係の一人で。

 ユリアにも居てもらう、管制室にね・・切り札としても。

 それが強力な武器になるには、ある人に波動の言葉を感じて欲しかった。

 意識してない部分で、常に波動を感じてる・・シオンに。

 シオンがそれが出来るようになれば、シオンの武器になる。

 シオンが言葉の分からない国に行った時の、武器になるって提案してくれた。

 ユリアがマリとルミに相談して、俺にそう言ってくれたんだ。

 シオン・・今、何時何分なの?・・ニコちゃんだから分かってるよね』


「3時40分・・ありがとう、ユリアちゃん・・シオン、嬉しいよ」とシオンが瞳を潤ませて言った。

強く優しい波動が返ってきた、それでシオンもニコちゃんになった。


「喜んでますね」とユリさんが瞳を閉じて言った。


「これがユリ達の凄い所だよ、あなた達は感じるべきだね。

 シオンが答えれば、当然ユリアは返してくる・・それを感じれる。

 ユリは小僧の話の途中で瞳を閉じた、北斗もリアンも蘭もナギサも。

 そしてリリーまではね、小僧の話の流れでそれを感じたんだよ。

 それが大切だと思う、今の状況なら・・目を閉じても問題ない。

 小僧が話をしてただけだから、上を目指したのなら・・目を閉じた。

 あなた達なら流れを読めたでしょう、話の流れは途中で読めたはず。

 どんな状況でも同じ部分で、自己判断をする・・それが次段階ですね。

 自分の感じた事に身を委ねる、それがあなた達の次の扉です。

 追い詰められても、崖っぷちでも・・判断する部分は変わらない。

 自分が判断する場所は常にそこに置く、絶対に変えないと強く誓う。

 そうでないと緊迫した場面では、迷いますよ・・それが課題です」


律子は強く言葉にした、若手の女性達がハッとして律子を見た。


「律子母さん、ありがとうございます・・最高のヒントでした、やってみます」とカスミが笑顔で言って、頭を下げた。

若手女性も限界ファイブも中1トリオも、笑顔で頭を下げた。


「小僧・・由美子の世界までに時間が無いんだから、許せよ」と律子が二ヤで言った、私も二ヤで返した。


「あなた達は、恵まれていますよ・・感謝して取り組みなさい」とユリさんが美しい真顔で強く言った。

「はい・・必ず到達します」とネネが言って、全員で頷いた。


『さて・・シズカ、どう思う・・リアルではまだ30分しか経ってない事実を』と私が二ヤで言った。

「そうなんだよね~・・この神殿は、時間がゆっくりと流れるよね」と蘭が満開笑顔で言った。


「沙紀のおとぎの国も、少し遅い感じだけど・・この神殿はかなり遅いよね?」とユリカが二ヤでシズカに言った。


「はい・・この神殿は、リアルな時間の10倍の遅さで流れてます。

 私は地下室の測量をするのに、相当の時間をここで過ごしました。

 そして入っている時間を、ストップウォッチで計って。

 リアルに戻って換算してみました、きっちり10倍で流れてます。

 おとぎの国は約2倍だと思います、中立な場所が10倍。

 その意味はまだ分かりません、マサルが竜巻を感じて・・次元を感じたら。

 何かヒントをくれるでしょう、それから考えようと思います。

 小僧・・何かに気付いたのか?・・それとも思い出したのか?」


シズカが私の表情を読み取って言った、私はシズカの鋭さに二ヤを出した。


『沙織が記憶を引き出してくれた、中立な場所だから言うよ。

 奴には聞かれないから、あの井戸の装置・・あれは循環装置だよ。

 そう教えてくれた、今シズカに聞かれたから、言葉に出来たよ。

 なるほどね~・・確かに聞かれないと言葉に出来ない』


私は不思議な感覚を楽しみながら、二ヤで言った。

私はこの前に何度もオババのメッセージを、言葉にしようとしていた。

それが出来なかったのだ、シズカの質問で言葉に出す事が出来ていた。


「循環装置か!・・それは大ヒントだね、それも聞かれないと答えられない人のヒントなら」とシズカが笑顔で言った。


「探し出せって言ったよね?・・仲間を集めて循環の意味を探し出せって」と沙織が真顔で言った。

『さすが沙織・・記憶を引き出す達人、そう言ったよ』と笑顔で返した。


「循環の意味ですか・・それは門の奥ですね?」とユリさんが真顔で言った。

「そうだと思います・・循環なら、水源がありますよね」ユリカが笑顔で返した。


「純水の水源があるんだね、そこに行く為の鍵が・・純粋な心なのか、そんな感じだね」と律子が二ヤで言った。

『律子・・二ヤだけじゃずるいぞ』と私も二ヤで返した。


「感じたんだよ、活躍の場面をね・・フネの活躍の場面を」と律子が二ヤで返してきた。


「来たよ~」とルミの声が響いて、全員でモニターに視線を戻した。


オババが机に座りながら、子供達がいないのを見て二ヤを出した。


「やりやすくなったよ、ありがとな・・ルミ・マリ」とオババが二ヤで言った。

「やりますかね~」と二ヤで返してルミが立ち上がった。


「ルミ・・あの遺跡での出来事、今はどう感じてるんだい?」とオババが真顔で聞いた。


「幼かったから、記憶の曖昧な部分が多いけど。

 強く残されたメッセージだと思ってる、空間がねじれたから。

 最初に視覚的な空間がねじれて、私は怖くて父の側に行こうとした。

 でも浮いてる感じだった、境界線の上だったんだろうね。

 あれはマヤ文明の遺跡と言われてるけど、私に語りかけたのは違う。

 マヤじゃないと思ってる、そんな新しい時代だと感じなかった。

 私の前に立った老人は、現代人よりかなり体毛が多かった。

 顔にも頬以外は体毛に覆われてた、だからマヤよりも前だと思う。

 文明の匂いをあまり感じなかった、原始に近い感じだった。

 その老人が出したのが本だったから、私は驚いたんだよ。


 私の記憶には歴史的知識が豊富に入ってたから、違和感を感じたんだよね。

 原始に近いと思う人間が、紙で出来てる本を出したから。

 時代的な背景の違和感を感じた、それだけははっきりと覚えてるよ。

 でも・・本を見た時に大切な物だとは思った、だから条件を飲んだんだ。

 それを繋いだ事には・・何の不安も無いよ、私は依頼を完了した。

 そう自信を持ってるよ・・だから今からが私の戦い、もちろん由美子で。

 姿無き奴は待ってるんだろ、私が来る事を・・奴の期待に応えるよ。

 由美子に出会ってそう思えるようになったよ、そう伝えてよ。

 ルミが本を繋いだから、あんたの側に行くからって・・覚悟しなって。

 人質の拘束方法を考えなってね、私とマリと小僧を拘束する方法をね。

 応用の利かない奴に・・出来るのやら・・楽しみだよ」


ルミは楽しそうに語った、女性達は二ヤを出していた。


「なるほどね・・実は私も楽しみなのさ、ルミとマリのコンビの誕生はね・・ありがとう、もう良いよ」とオババは笑顔で言った。

ルミも笑顔で返して、元の位置に戻った。


そしてマリが二ヤで立ち上がり、前に歩いてオババを見た。


「マリに聞く事は無いよ・・お前は私の館に来た、96年ぶりの来客だったからね」とオババが二ヤで言った。

「96年前は、女の子だったのか?」とマリが逆に質問した。


「あぁ・・ブロンドの可愛い少女だったよ、7歳のね」とオババが二ヤで返した。

「7歳か~・・人間の可能性は無限だよね?」とマリが返した。


「またその話題か、お前は追い続けるんだね?・・無限の意味を」とオババが二ヤ継続で言った。

「オババがそれをしつこく言ったんだろ、無限の中だって」とマリが二ヤで返した。


「マリ、また力を上げたね・・私を誘導したのか、質問させる為に・・言葉に出す為に」とオババが笑顔で言った、嬉しそうな笑顔だった。


「オババは無限と言い、ヒトミは矛盾と言った・・無限こそが矛盾なんだろうね」とマリが二ヤで返した。

「そこまでだよ、マリ・・それ以上言うと、ステージの設定が上がるよ」とオババが真顔で言った。

「そうだね・・フェアーの基準が上がるね」とマリは二ヤで言って、振り向いて元の位置に戻った。


綺麗な姿勢で久美子が前に歩いた、オババは久美子を見ていた。


「久美子か・・会いたかったよ」とオババが笑顔で言った。

「私は2度目の感覚だけどね、ライフルのスコープ越しに見たから」と久美子が笑顔で返した。


「あの時の歌は、何のリズムに合わせたんだい?」とオババが笑顔で聞いた。


「空間の容量かな、波のリズムは一定じゃないからね。

 合わせようと思っても、無理だと感じたんだ・・だから全体を感じた。

 全体の空間の容量の、流れのリズムを探した感じかな。

 全体の流れに影響を受けて、波も起こるし・・ステージも揺れる。

 あの的を中心に、私のいる地点までの直線で円を描く。

 その空間の容量を感じて、その流れを掴む感じ・・風が無いからね。

 風の設定が無いから出来たよ、リズムは一定に流れてたから」


久美子はスムーズな言葉で表現した、オババは久美子を見ていた。


「なるほどね~・・久美子は吸収するんだね。

 今の話はシズカ言葉だった、お前は計れないよ。

 今までの3回で、最も成長してる女だろうね・・楽しみにしてるよ。

 久美子の将来をね・・私も音楽は好きなんだ、頑張れ」


オババは嬉しそうな笑顔で言った、久美子も笑顔で頷いた。

久美子は笑顔のまま振り向いて、美しい姿勢で歩いて来た。


シズカが久美子と二ヤですれ違い、オババの前に歩いた。


「来たね~・・シズカ、待ってたよ」とオババが笑顔で言った。

「初めまして、シズカだよ・・私も出会うのを、楽しみにしてたよ」とシズカは二ヤで返した。


「地下室の測量は終わったかい?」とオババが二ヤで言った。

「外側はね・・内側が見えない、意地悪な設定だよ」と二ヤで返した。


「私に言っても無駄だよ、私が作ったんじゃないからね・・シズカ、地下室で見つけた物は何だい?」とオババが二ヤ継続で言った。


「4つの文字と2つの線だね・・その意味を考えてるよ。

 アルファベットの小文字のcとm、センチって訳じゃないよね。

 そして大文字のEに、数字の2・・それに横線が2本だったね」


シズカは自分の言葉でハッとした、そしてニヤニヤを出した。


「しまったね~・・何か気付いたね、答えは美由紀に聞こうかね~」とオババが二ヤで言った。


美由紀はニヤニヤしてたが、ハッとしてウルウルを出し顔を覆った。

そして足をガタガタと振るわせた、女性達は美由紀を見て二ヤを出した。

だが美由紀は自慢したかったのだろう、答えてしまうのだ。

理数系に優れた美由紀は気付いていた、シズカの言葉を組み合わせていた。


「E=mc2乗・・アインシュタインの、特殊相対性理論。

 エネルギー【E】=質量【m】×光速度【c】の2乗」


美由紀はガタガタを強めて、顔を覆い俯きながら言った。


「震えてる人間が導き出すかね~」とシズカが二ヤで美由紀に言って、オババの方を向いた。

「サンキュー、オババ・・私も気付いたよ」とシズカが二ヤで言った。


「礼はいらんよ、罠かもしれんしな・・シズカの考える、時を作った作り方は?」とオババが二ヤで聞いた。


「そこは色々難しく考えたりもしたよ、でも最近は単純に考えてる。

 文献を読んでも始まりの歴史も分からないし、どうせ答えは分からないから。

 太陽と地球と月の関係で割り出して、1年を導き出したんだろう。

 今の暦は12ヶ月が世界標準だけど、文化によっても暦はあるよね。

 どれでも良いんだよ、使う人の好きなのでね。

 ただ統制やビジネスの為に、基準となる暦が欲しいんだろうね。

 時は暦の1年から、365日を割り出して・・それを割っただけさ。


 24という数字で1日を割った、これは納得出来る数字だよ。

 24というのは、日本人でもそうだけど、西洋人でも違和感が無いらしい。

 12の倍数だからね、12の倍数は不思議に違和感がないんだよね。

 そして1時間を60で割った、60も当然12の倍数だよね。

 12の5倍、それが60なんだから・・24で割った物を60で割った。

 ここまでは納得出来る・・そして秒、これも60なんだよね。

 秒の60には違和感を感じる、なぜ分と秒は同じ設定なのかとね。


 私なら120にしたはず、そう思ったんだよ・・今の倍の速さにした。

 確かに速過ぎる感じがするけど、それは60の秒に慣れたからだよ。

 分割方式で時を設定したのなら、秒は速いと感じさせるべきなんだよ。

 1時間が60分なら、1分は120秒であるべきだと思うよ。

 それが人間の感性に違和感無く入ってくる、分割方式だよ思う。

 今はこんな感じかな・・秒の設定に、違和感を感じてるよ」


シズカは大好きな問題なので、楽しそうに話した。


私はシズカの考えに触れ、自分との違いを感じていた。


私は60という数字に違和感を感じた、確かに12の倍数であるが。


100で良いだろう、私はこの時も今もそう思ってる。


60の植え付けじゃないのか?・・私はそう思ってしまうのだ。


解答など出ない問題を、私もシズカも今も考えている。


それが私の暇潰しなのだ、待ち時間などに引き出して考える。


皆さんが携帯でゲームをするように、私は60という数字を引き出してくる。


そして時間の作り方を考えるのだ、これが意外に楽しいのである。


答えが出ない問題は、終わりの無いRPGなのだから・・。









 




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ