【冬物語第四章・・時の井戸⑫】
答えの出ない問題を持つ、これが暇潰しの方法である。
絶対に答えの出ない問題がある、世界中には無数にある。
それを心に持っていると、それを引き出して遊べる。
携帯も携帯ゲームも、何も持たない子供時代を過ごした私は、今でも自分のゲームを持っている。
その答えを探しながら、空想の世界に入って行く。
冒険しながら歴史を推理する、それに夢中になることが出来る・・今でも。
私はピラミッドもマチュピチュも、設計から作り上げた。
周辺の環境や資料を読み漁り、全てを想定するのだ。
石を切り積み上げて、人員と時間も計算して作った。
早送りで作業させて、それでも無理だと感じたら、設定を変えて再挑戦した。
先日、羽田の待合室で搭乗を待っていたら、周りの若者達はスマホを触っていた。
5人組が別々にスマホで遊んでいた、私は不思議な光景だと思いながら、自分のゲームを出した。
知らない内に夢中になって、人類誕生の新設定を作っていた。
多分、目を閉じてニヤニヤしてたのだろう、それでなくても怪しいオヤジなのに。
不気味さに拍車がかかっていたのだろう、私は耳元に声をかけられる。
「オジサン・・何のゲームをしてるの?」と隣に座るスマホを触っていた若い女性に声をかけられた。
私はその子の《ゲーム》と言った鋭い感性と、好奇心に逆らえない性格を感じて目を開けた。
可愛い20歳そこそこの女性だった、私を見て二ヤを出していた。
『5歳の時からしてるゲーム・・今日のソフトは、人類誕生だよ』と笑顔で返した。
「面白そう・・イメージで考えるの?」と弾ける若さを振りまいて、笑顔で返してきた。
『イメージを映像化して動かすんだよ、俺のは3Dだよ』と二ヤで返した。
「ほほ~・・それでジャンルは、RPGなの?」と可愛い二ヤで返してきた。
『そう・・3Dの自立型2速歩行の主人公が、存在しない答えを探す、RPGだよ』と笑顔で返した。
「ありがとう、やってみる・・存在しない答えを探す、それは楽しそう」と笑顔で言って瞳を閉じた。
私は搭乗のアナウンスを聞きながら、その子の右手を握って一瞬瞳を閉じて立ち上がった。
「危ないオジサン、ありがとう・・サンプル画像」とその子が大きな声で言った。
『通信機能も持ってるんだよ・・再会できるのを楽しみにしてるよ』と振り返らずに二ヤで言ってゲートを潜った。
私はそれだけで元気になっていた、人間は同じだと思えて。
神殿に入ったあの当時の女性も、現代の女性も同じだと感じられて。
その子の笑顔に見送られ、楽しい心のまま、話を神殿に戻そう。
神殿には緊張感が出ていた、オババも女性達にも。
オババの前にルミが立っていた、私は二ヤでルミの背中を見ていた。
オババはルミの余裕の表情を見て、シワシワを深めて笑顔になった。
「ルミ・・少し休憩させてくれよ、私も歳なんだからね」とオババが笑顔で言って、席を立って映像から消えた。
「都合の良い時だけ、歳だって言って・・小僧と変わらんね~」とルミは二ヤで言って、その場所に座って振り向いた。
ルミはマリに二ヤを送り、マリも二ヤで頷いた。
「小僧、5人娘と誰かを変えよう・・エミ、お外で遊んであげて。
哲夫、頼んだよ・・あんたが大切なエミを守りな。
フーを連れて行けば、楽しい場所に案内してくれるよ」
マリは笑顔でエミに言った、エミはマリの意図を瞬時に感じた。
マリは女性達の場面を、子供達に見せたくなかったのだろう。
マリはオババの中立な場所なので、想定できなかったのだ。
「は~い・・行くよ」とエミが笑顔で言って、ミサとレイカと安奈とモモカにフーを連れて出て行った。
哲夫はニコニコちゃんで、妖精達を肩に乗せて、モモカと安奈の後ろを歩いた。
マリアは私の腕の中で深い眠りに入っていた、女性達が笑顔で見送っていた。
ユリさんが薔薇二ヤで升目に入り、ユリカとリアンと北斗が入って、最後に律子が入った。
「最高のワクワク感が止まらない、絶対に選ばれる・・オーディションなら」と私の横にカスミが来て最強不敵で言った。
「私も選ばれたい、次の段階に行ける・・互角の相手との勝負をすれば、行ける気がする」とレンが珍しく熱い言葉で言った。
「そうなんですよね~・・互角の相手だって確信できる事って、リアルでは中々無いですよね・・選ばれたいな~」とハルカも二ヤで言った。
「さすがPGの若手ですね、気付きましたね」と律子がユリさんに二ヤで言った。
「嬉しいですね・・私でもそう思ってました、互角の相手・・滅多に出会えない存在です」とユリさんが薔薇で微笑んだ。
「なぁエース、北斗姉さんの・・母親としての難しさって、何なんだよ?」とリアンが振り向いて私に言った。
『それはもちろんプレッシャーだよ、由美子の未来が賭けなんだ。
そのノルマが全勝なんだよ、もちろん全員がそのプレッシャーを感じる。
でも・・北斗のそれは、想像を絶するんだよね。
奴はそんな部分には鋭く反応する、だから北斗の選ばれる可能性は高い。
俺は95%・・北斗は6人に選ばれると思ってる、多分1人目か6人目に。
それが奴の幼稚な考え、母親なら動揺して出来ないと思ってる。
北斗の内面など考慮しない、俺は1勝は確信してるよ・・北斗の1勝を。
だからあと6勝だね・・残りの5人と7人目に賭けるよ』
私は笑顔で北斗を見ながら言った、北斗も笑顔で返してくれた。
「策略だったか・・1勝は確定だね」とリアンが極炎ニカで言って、全員が二ヤで頷いた。
「マリの時、ヨーコの相手は軟体生物だったよね・・恭子は何だったの?」と久美子が二ヤで聞いた、全員の興味津々光線が発射された。
「リトル豊・・私と互角の豊が出てきた、それを倒したんだよ」と恭子がニヤニヤで返した。
女性達が驚いていた、私はニヤニヤを出していた。
「恭子・・あれは倒したなんて表現じゃないよ、リトル豊は瀕死の重症だったよ」とヨーコが二ヤで言って。
「あんな恭子初めて見たよ、笑いながらマウントポジションで殴り続ける・・狂った子を」とマキも二ヤで言った。
「あの頃のリアルな中1の豊・・女子からチョコを山ほど貰って、ニコニコしてたんだ・・そのニコニコ顔を思い出しながら、殴ってた」と恭子が二ヤで返した。
この言葉で、女性達に大爆笑が起きた。
「じゃあ・・あんたは何だったの?」と蘭が満開二ヤで私に言った。
『俺は・・互角の設定に落としてくれた・・ヒトミだよ』と二ヤで言った。
「ヒトミを殴ったの?」とユリカが驚いて聞いた。
『まさか!・・奴がヒトミにどんな改良を加えても、殴り合いにはならないよ。
奴が作ってくるけど、モデルがいるなら・・本質は変えられない。
それがリアルで存在しない者なら、リアルな設定で出してくる。
だから相手をリアルに感じる、実は俺は嬉しかった・・ヒトミに会えて。
ヒトミを感じる事が出来て、俺は奴に感謝したよ・・真向勝負が出来て。
俺にとっては最高の勝負・・ヒトミ問答・・大切な思い出なんだ』
私は笑顔で返した、全員が嬉しそうな笑顔で返してくれた。
「そっか~・・その人間の1番強い部分に対する、互角だね。
だからエースは言葉だった、そしてその相手がヒトミちゃん。
エースの言葉の相手をするのに、ヒトミは能力を落とされた。
凄いよね~・・ヒトミの伝達の力って・・最強なんだろうね
リアルでも感じてみたかったな~・・ヒトミの伝達を感じたかった」
リリーが高速リングで言った、私は嬉しくて笑顔で頷いた、女性達も笑顔で頷いた。
「絶対に選ばれる・・どんな事をしても」と蘭が満開笑顔で言って。
「私も必ず選ばれる、どんな相手か知りたい・・自分で想像できないから」とナギサが華やか笑顔で言った。
『想像できないのか~・・後ろにいるのにね』と私はマリに二ヤで言った、マリも二ヤでナギサを見た。
「後ろ?」と言ってナギサが振り向いた、マキが二ヤでナギサを見た。
「なるほどね~・・マキだね」とユリカが最強爽やか二ヤで言って。
「そりゃ~、危ないね~・・また負けるかも」とリアンが極炎ニカで言った。
「えっ!・・なぜ私の相手がマキなのでしょう?」とナギサが華やかウルで聞いた。
「当人はもう、記憶から消してますね」とユリさんが薔薇二ヤで言って。
「本当に良い性格してるよ・・ナギサの相手はリトルマキでしょう・・ホストの」と蘭が満開ニヤニヤで言った。
「あっ!・・そうだった・・私が絶対に選ばれる」とナギサが恐ろしいほどの二ヤで言った。
「私も絶対に選ばれる、相手は確信した・・殴りあう設定も」とカスミが輝きを放出しながら強く言った。
「小僧・・カスミ姉さんの可能性は?」とシズカが二ヤで言った。
『90%だろうね・・奴はそういう部分にも鋭いから』と二ヤで返した、カスミの嬉しそうな笑顔があった。
「1度は愛した相手が出る確率が高いんだよね?・・私は誰だろう」と美由紀が二ヤで言った。
「そうなの!・・1度は愛した人か、忘れられない人・・そんな感じなんだね」と蘭が満開笑顔で言った。
「小僧・・蘭の可能性は?」と律子が二ヤで聞いた。
『北斗と同じ、95%だろうね・・なんせ相手になるであろう人が、また会えるって言ったからね』と二ヤで返した。
「洋が相手なのね!・・姿無き素敵なあなた、私を選んでね・・100%でね、お願い」と蘭が天井を見上げて、祈るようなポーズで言った。
「まずい・・相当にまずい、3人が90%を超えている」と美由紀がウルで言った。
「ヨーコ・・気配を消してるね、触れられたくないの?
なぜヨーコは相手が軟体生物なのか、その理由に」
ユリカがヨーコに二ヤで言った、ヨーコはウルウルで頷いた。
女性達がニヤニヤになって、リアンに期待の視線を向けた。
「マキ・・理由を延べよ」とリアンが二ヤで言った。
「あの頃のヨーコは、パー君を見送ったばかりでした。
潮干狩りに行って捕まえた、パー君を持ち帰って水槽で飼ってて。
学校から帰るとパー君が浮いてて、ヨーコは泣きながら寺に持って行って。
ヒトデのパー君を、ウサギのチャッピー側に手厚く葬りました。
その記憶が鮮明だったのでしょうね、だから奴は作り出した。
ヨーコの相手は、6本の触手のある軟体生物になったのでしょう」
マキは二ヤで言った、女性達の爆笑が沸き起こった。
「ヒトデちゃんが、パー君・・可愛いよ、ヨーコ」とカレンが笑顔で言って。
「ほんとに、何をやっても可愛いね・・ヨーコは」とネネが笑顔で言った。
「おや~・・もう一人いたね、気配を消してた武闘派の女が」とリアンが二ヤで言った、ネネはウルで返した。
「ネネ姉さん、完璧に6人になるの狙ってます~・・自分の情報が少ないから、気配を消してました~」美由紀がウルで言った。
「そうなんだよね~・・それに超好戦的な人が、純白の姉さんが消してるよね~」と沙織が二ヤで言った。
「沙織ちゃん、言ったら駄目です~・・美由紀が私の作戦を奪ったんだから~」とシオンがニコちゃんウルで返した。
「さすがエースとマリとルミですね・・ベストな人員設定ですね」とユリさんが薔薇で微笑んだ。
「そうですよね~・・このメンバーなら相手を想定が出来る。
エースもマリもルミも・・だから今にしたんですね。
エースは多分、ホノカやセリカの相手が想定できない。
リョウのは誰でも想定できるけど、それは危険な賭けになる。
PGでも、四季とツインズの相手の想定には自信が持てない。
策略家ですね~・・マリとルミとは阿吽の呼吸だし」
ユリカが二ヤで言った、私も二ヤで返した。
「エース・・一人の設定だけ教えてよ、ユリカの相手は誰なの?」と北斗が笑顔で言った。
『それはもちろん・・ユリアだと思うよ。
奴が相手として出せると言っても、その場にいない相手なんだ。
そしてリアルには、生きていない相手なら・・リアルに作れる。
オババは審判なんだよね、審判は勝敗の判断もするけど。
最も大切な仕事は、フェアーかどうか判断する事なんだ。
だから戦闘的なこのステージの場合は、オーディションをする。
こっちの資料を作って、奴の作り出した相手も審査するんだろう。
それが互角以上だったら、オババが駄目出しをすると思うよ。
奴が誰を選択するか分からないけど、想定も誘導も出来るよ。
恭子の相手のリトル豊は、どう見てもロボットだったんだ。
リアルで生きてる相手を作るなら、サイボーグになるんだよ。
顔は豊兄さんだったけど、体はサイボーグだと誰でも分かった。
だから恭子は殴る事が出来たんだ、それも楽しんでね。
ユリアは多分、ステージ決戦が終わるまで入ってこない。
ユリカを信じてるから、ユリカの可能性を残す為にね』
私は笑顔で言った、強烈なユリアの波動が二ヤで吹いてきた。
ユリカも波動を感じたのだろう、嬉しそうな爽やか笑顔で頷いた。
「楽しすぎるね~・・席は残り3席、絶対に勝ち取るよ」とリアンが二ヤで言った。
「エースが一人だけ、相手の想定が出来ない女が燃えてるね~」ユリカが二ヤでリアンに言った。
「そうだろうね、でもエースとマリとルミは・・私は絶対に勝つと想定してるのさ」とリアンが二ヤで返した。
私もマリもルミも二ヤで頷いた、リアンは嬉しそうに極炎で頷いた。
私にはこの場にリアンがいる事こそが、策略だったのだ。
奴を惑わす作戦だった、リアンの心とは本物の最強だったから。
「エース・・リアルな今の時間が分かる?」とハルカが心配して言った。
感覚的には、3時間以上は経過した感じだった。
『もちろん・・じゃあ、全員目を閉じて・・感じてみてね』と私は二ヤで言った。
女性達が私の二ヤを見て、不思議そうに目を閉じた。
『ユリア・・今、そっちは何時?』と私は言葉で言った。
《3時・・40分》というユリアの最強の波動が返ってきた。
「うっそ!・・今のなの」とリリーが驚いて言って。
「嬉しい~・・リアルに感じた~」とシズカが叫んだ。
シズカは嬉しかったのだろう、感覚的な部分に響いてきたのだから。
「でも・・言葉の内容は分からない」と蘭がウルで言って、ナギサもウルで頷いた。
『このテストは、ある人を試したかったんだ。
この世界なら、俺はユリアの波動の言葉が分かるんだよ。
女性達も無の集中をすれば、波動は感じるんだよね。
これは武器になるんだよ、結界の中は無理だけど・・連絡できる。
前回はユリアが1発だけ使える波動で、マキに俺の言葉を伝えた。
マキはマリが同調で、波動を感じる特訓をしたからね。
その特訓があの時に役立った、マリもユリアも喜んでたよ。
今のユリアの波動、強烈だったから全員が感じたと思う。
目を閉じていたからね、それを感じる事が出来た。
当然・・律子とユリカ、それに美由紀はこの世界では常に感じてる。
常に感じてるならば、集中すれば言葉が読めると思う。
俺は武器を持ちたいんだ、次回は本部連絡係の一人で。
ユリアにも居てもらう、管制室にね・・切り札としても。
それが強力な武器になるには、ある人に波動の言葉を感じて欲しかった。
意識してない部分で、常に波動を感じてる・・シオンに。
シオンがそれが出来るようになれば、シオンの武器になる。
シオンが言葉の分からない国に行った時の、武器になるって提案してくれた。
ユリアがマリとルミに相談して、俺にそう言ってくれたんだ。
シオン・・今、何時何分なの?・・ニコちゃんだから分かってるよね』
「3時40分・・ありがとう、ユリアちゃん・・シオン、嬉しいよ」とシオンが瞳を潤ませて言った。
強く優しい波動が返ってきた、それでシオンもニコちゃんになった。
「喜んでますね」とユリさんが瞳を閉じて言った。
「これがユリ達の凄い所だよ、あなた達は感じるべきだね。
シオンが答えれば、当然ユリアは返してくる・・それを感じれる。
ユリは小僧の話の途中で瞳を閉じた、北斗もリアンも蘭もナギサも。
そしてリリーまではね、小僧の話の流れでそれを感じたんだよ。
それが大切だと思う、今の状況なら・・目を閉じても問題ない。
小僧が話をしてただけだから、上を目指したのなら・・目を閉じた。
あなた達なら流れを読めたでしょう、話の流れは途中で読めたはず。
どんな状況でも同じ部分で、自己判断をする・・それが次段階ですね。
自分の感じた事に身を委ねる、それがあなた達の次の扉です。
追い詰められても、崖っぷちでも・・判断する部分は変わらない。
自分が判断する場所は常にそこに置く、絶対に変えないと強く誓う。
そうでないと緊迫した場面では、迷いますよ・・それが課題です」
律子は強く言葉にした、若手の女性達がハッとして律子を見た。
「律子母さん、ありがとうございます・・最高のヒントでした、やってみます」とカスミが笑顔で言って、頭を下げた。
若手女性も限界ファイブも中1トリオも、笑顔で頭を下げた。
「小僧・・由美子の世界までに時間が無いんだから、許せよ」と律子が二ヤで言った、私も二ヤで返した。
「あなた達は、恵まれていますよ・・感謝して取り組みなさい」とユリさんが美しい真顔で強く言った。
「はい・・必ず到達します」とネネが言って、全員で頷いた。
『さて・・シズカ、どう思う・・リアルではまだ30分しか経ってない事実を』と私が二ヤで言った。
「そうなんだよね~・・この神殿は、時間がゆっくりと流れるよね」と蘭が満開笑顔で言った。
「沙紀のおとぎの国も、少し遅い感じだけど・・この神殿はかなり遅いよね?」とユリカが二ヤでシズカに言った。
「はい・・この神殿は、リアルな時間の10倍の遅さで流れてます。
私は地下室の測量をするのに、相当の時間をここで過ごしました。
そして入っている時間を、ストップウォッチで計って。
リアルに戻って換算してみました、きっちり10倍で流れてます。
おとぎの国は約2倍だと思います、中立な場所が10倍。
その意味はまだ分かりません、マサルが竜巻を感じて・・次元を感じたら。
何かヒントをくれるでしょう、それから考えようと思います。
小僧・・何かに気付いたのか?・・それとも思い出したのか?」
シズカが私の表情を読み取って言った、私はシズカの鋭さに二ヤを出した。
『沙織が記憶を引き出してくれた、中立な場所だから言うよ。
奴には聞かれないから、あの井戸の装置・・あれは循環装置だよ。
そう教えてくれた、今シズカに聞かれたから、言葉に出来たよ。
なるほどね~・・確かに聞かれないと言葉に出来ない』
私は不思議な感覚を楽しみながら、二ヤで言った。
私はこの前に何度もオババのメッセージを、言葉にしようとしていた。
それが出来なかったのだ、シズカの質問で言葉に出す事が出来ていた。
「循環装置か!・・それは大ヒントだね、それも聞かれないと答えられない人のヒントなら」とシズカが笑顔で言った。
「探し出せって言ったよね?・・仲間を集めて循環の意味を探し出せって」と沙織が真顔で言った。
『さすが沙織・・記憶を引き出す達人、そう言ったよ』と笑顔で返した。
「循環の意味ですか・・それは門の奥ですね?」とユリさんが真顔で言った。
「そうだと思います・・循環なら、水源がありますよね」ユリカが笑顔で返した。
「純水の水源があるんだね、そこに行く為の鍵が・・純粋な心なのか、そんな感じだね」と律子が二ヤで言った。
『律子・・二ヤだけじゃずるいぞ』と私も二ヤで返した。
「感じたんだよ、活躍の場面をね・・フネの活躍の場面を」と律子が二ヤで返してきた。
「来たよ~」とルミの声が響いて、全員でモニターに視線を戻した。
オババが机に座りながら、子供達がいないのを見て二ヤを出した。
「やりやすくなったよ、ありがとな・・ルミ・マリ」とオババが二ヤで言った。
「やりますかね~」と二ヤで返してルミが立ち上がった。
「ルミ・・あの遺跡での出来事、今はどう感じてるんだい?」とオババが真顔で聞いた。
「幼かったから、記憶の曖昧な部分が多いけど。
強く残されたメッセージだと思ってる、空間がねじれたから。
最初に視覚的な空間がねじれて、私は怖くて父の側に行こうとした。
でも浮いてる感じだった、境界線の上だったんだろうね。
あれはマヤ文明の遺跡と言われてるけど、私に語りかけたのは違う。
マヤじゃないと思ってる、そんな新しい時代だと感じなかった。
私の前に立った老人は、現代人よりかなり体毛が多かった。
顔にも頬以外は体毛に覆われてた、だからマヤよりも前だと思う。
文明の匂いをあまり感じなかった、原始に近い感じだった。
その老人が出したのが本だったから、私は驚いたんだよ。
私の記憶には歴史的知識が豊富に入ってたから、違和感を感じたんだよね。
原始に近いと思う人間が、紙で出来てる本を出したから。
時代的な背景の違和感を感じた、それだけははっきりと覚えてるよ。
でも・・本を見た時に大切な物だとは思った、だから条件を飲んだんだ。
それを繋いだ事には・・何の不安も無いよ、私は依頼を完了した。
そう自信を持ってるよ・・だから今からが私の戦い、もちろん由美子で。
姿無き奴は待ってるんだろ、私が来る事を・・奴の期待に応えるよ。
由美子に出会ってそう思えるようになったよ、そう伝えてよ。
ルミが本を繋いだから、あんたの側に行くからって・・覚悟しなって。
人質の拘束方法を考えなってね、私とマリと小僧を拘束する方法をね。
応用の利かない奴に・・出来るのやら・・楽しみだよ」
ルミは楽しそうに語った、女性達は二ヤを出していた。
「なるほどね・・実は私も楽しみなのさ、ルミとマリのコンビの誕生はね・・ありがとう、もう良いよ」とオババは笑顔で言った。
ルミも笑顔で返して、元の位置に戻った。
そしてマリが二ヤで立ち上がり、前に歩いてオババを見た。
「マリに聞く事は無いよ・・お前は私の館に来た、96年ぶりの来客だったからね」とオババが二ヤで言った。
「96年前は、女の子だったのか?」とマリが逆に質問した。
「あぁ・・ブロンドの可愛い少女だったよ、7歳のね」とオババが二ヤで返した。
「7歳か~・・人間の可能性は無限だよね?」とマリが返した。
「またその話題か、お前は追い続けるんだね?・・無限の意味を」とオババが二ヤ継続で言った。
「オババがそれをしつこく言ったんだろ、無限の中だって」とマリが二ヤで返した。
「マリ、また力を上げたね・・私を誘導したのか、質問させる為に・・言葉に出す為に」とオババが笑顔で言った、嬉しそうな笑顔だった。
「オババは無限と言い、ヒトミは矛盾と言った・・無限こそが矛盾なんだろうね」とマリが二ヤで返した。
「そこまでだよ、マリ・・それ以上言うと、ステージの設定が上がるよ」とオババが真顔で言った。
「そうだね・・フェアーの基準が上がるね」とマリは二ヤで言って、振り向いて元の位置に戻った。
綺麗な姿勢で久美子が前に歩いた、オババは久美子を見ていた。
「久美子か・・会いたかったよ」とオババが笑顔で言った。
「私は2度目の感覚だけどね、ライフルのスコープ越しに見たから」と久美子が笑顔で返した。
「あの時の歌は、何のリズムに合わせたんだい?」とオババが笑顔で聞いた。
「空間の容量かな、波のリズムは一定じゃないからね。
合わせようと思っても、無理だと感じたんだ・・だから全体を感じた。
全体の空間の容量の、流れのリズムを探した感じかな。
全体の流れに影響を受けて、波も起こるし・・ステージも揺れる。
あの的を中心に、私のいる地点までの直線で円を描く。
その空間の容量を感じて、その流れを掴む感じ・・風が無いからね。
風の設定が無いから出来たよ、リズムは一定に流れてたから」
久美子はスムーズな言葉で表現した、オババは久美子を見ていた。
「なるほどね~・・久美子は吸収するんだね。
今の話はシズカ言葉だった、お前は計れないよ。
今までの3回で、最も成長してる女だろうね・・楽しみにしてるよ。
久美子の将来をね・・私も音楽は好きなんだ、頑張れ」
オババは嬉しそうな笑顔で言った、久美子も笑顔で頷いた。
久美子は笑顔のまま振り向いて、美しい姿勢で歩いて来た。
シズカが久美子と二ヤですれ違い、オババの前に歩いた。
「来たね~・・シズカ、待ってたよ」とオババが笑顔で言った。
「初めまして、シズカだよ・・私も出会うのを、楽しみにしてたよ」とシズカは二ヤで返した。
「地下室の測量は終わったかい?」とオババが二ヤで言った。
「外側はね・・内側が見えない、意地悪な設定だよ」と二ヤで返した。
「私に言っても無駄だよ、私が作ったんじゃないからね・・シズカ、地下室で見つけた物は何だい?」とオババが二ヤ継続で言った。
「4つの文字と2つの線だね・・その意味を考えてるよ。
アルファベットの小文字のcとm、センチって訳じゃないよね。
そして大文字のEに、数字の2・・それに横線が2本だったね」
シズカは自分の言葉でハッとした、そしてニヤニヤを出した。
「しまったね~・・何か気付いたね、答えは美由紀に聞こうかね~」とオババが二ヤで言った。
美由紀はニヤニヤしてたが、ハッとしてウルウルを出し顔を覆った。
そして足をガタガタと振るわせた、女性達は美由紀を見て二ヤを出した。
だが美由紀は自慢したかったのだろう、答えてしまうのだ。
理数系に優れた美由紀は気付いていた、シズカの言葉を組み合わせていた。
「E=mc2乗・・アインシュタインの、特殊相対性理論。
エネルギー【E】=質量【m】×光速度【c】の2乗」
美由紀はガタガタを強めて、顔を覆い俯きながら言った。
「震えてる人間が導き出すかね~」とシズカが二ヤで美由紀に言って、オババの方を向いた。
「サンキュー、オババ・・私も気付いたよ」とシズカが二ヤで言った。
「礼はいらんよ、罠かもしれんしな・・シズカの考える、時を作った作り方は?」とオババが二ヤで聞いた。
「そこは色々難しく考えたりもしたよ、でも最近は単純に考えてる。
文献を読んでも始まりの歴史も分からないし、どうせ答えは分からないから。
太陽と地球と月の関係で割り出して、1年を導き出したんだろう。
今の暦は12ヶ月が世界標準だけど、文化によっても暦はあるよね。
どれでも良いんだよ、使う人の好きなのでね。
ただ統制やビジネスの為に、基準となる暦が欲しいんだろうね。
時は暦の1年から、365日を割り出して・・それを割っただけさ。
24という数字で1日を割った、これは納得出来る数字だよ。
24というのは、日本人でもそうだけど、西洋人でも違和感が無いらしい。
12の倍数だからね、12の倍数は不思議に違和感がないんだよね。
そして1時間を60で割った、60も当然12の倍数だよね。
12の5倍、それが60なんだから・・24で割った物を60で割った。
ここまでは納得出来る・・そして秒、これも60なんだよね。
秒の60には違和感を感じる、なぜ分と秒は同じ設定なのかとね。
私なら120にしたはず、そう思ったんだよ・・今の倍の速さにした。
確かに速過ぎる感じがするけど、それは60の秒に慣れたからだよ。
分割方式で時を設定したのなら、秒は速いと感じさせるべきなんだよ。
1時間が60分なら、1分は120秒であるべきだと思うよ。
それが人間の感性に違和感無く入ってくる、分割方式だよ思う。
今はこんな感じかな・・秒の設定に、違和感を感じてるよ」
シズカは大好きな問題なので、楽しそうに話した。
私はシズカの考えに触れ、自分との違いを感じていた。
私は60という数字に違和感を感じた、確かに12の倍数であるが。
100で良いだろう、私はこの時も今もそう思ってる。
60の植え付けじゃないのか?・・私はそう思ってしまうのだ。
解答など出ない問題を、私もシズカも今も考えている。
それが私の暇潰しなのだ、待ち時間などに引き出して考える。
皆さんが携帯でゲームをするように、私は60という数字を引き出してくる。
そして時間の作り方を考えるのだ、これが意外に楽しいのである。
答えが出ない問題は、終わりの無いRPGなのだから・・。