【冬物語第三章・・悪意の門⑦】
自然の中にも、ルールと言われるものが存在する。
それは完成されていない世界だから、ルールを重要視して守るのだろう。
たとえ人間でも犯してはならない、それが自然界のルールなのだと思う。
人が作ったルールとは、自然が作ったルールの上で成り立っている。
そう感じさせられる場所が、現代でも確かに存在する。
静寂のフロアーに、哲夫を抱くユリカの優しい笑顔があった。
ユリカのこの時に喜びは強かった、哲夫のスピードに感動していたのだろう。
哲夫は徐々にスピードが上がった、自分の気付きで自然に加速したのだ。
「ふ~・・そこまで深いのか~、まいったな~」とリリーが笑顔で言った。
「MAXレベルは、伝えたい想いで流すのですね」とユリさんが薔薇で微笑んだ。
「日本語は素晴らしい・・本当に素敵です」とマチルダが笑顔で言って、リンダも笑顔で頷いた。
「秀美・・良かったな、もう認められたな」と豊が秀美に笑顔で言った、秀美は嬉しそうな笑顔で頷いた。
「そうだよね~・・凄いな~、秀美姉さん」と哲夫が秀美に笑顔で言った。
「哲夫・・独り言は出来ないのよ、凄いの説明をしなさい」とユリカが哲夫の正面で、爽やか二ヤを出した。
哲夫は又もやウルを出した、女性達は恒例行事のように二ヤで返した。
「この限界カルテットの並び順は、答えるの時の並び順だから。
それも小僧が詠み人なのに、この並び順なら・・美由紀姉さんが重要。
沙織姉さんが親であるのと、小僧が詠み人になる事は決まってた。
それなのに限界カルテットは、この並び順で座ったんだ。
あとは美由紀姉さん次第なんだよ、選択権は美由紀姉さんになった。
美由紀姉さんが、沙織姉さんの後・・秀美姉さんの前なら、試験的な感じ。
秀美姉さんのレベルを4人に提示する感じ、美由紀姉さんが何かを問いかける。
秀美姉さんに何かを問う事になるから、限界カルテットは伝達モードに入る。
でも美由紀姉さんは秀美姉さんの後ろに座った、これならば答えるモードなんだ。
秀美姉さんに、限界カルテットと美由紀姉さんの想いを返す感じになる。
秀美姉さんが美由紀姉さんに問いかけるからね、それに美由紀姉さんが答える。
それを絶対に裏の意味まで取って、カルテットは自分の想いも込めて流すんだ。
それが限界カルテットの恐ろしいレベル、美由紀姉さんはそれを望んだ。
その選択が認めているという事なんだよ、美由紀姉さんも沙織姉さんもね。
秀美姉さんを認めて、何が知りたいのかを問いかけた・・沙織姉さんは持ってた。
絶対に2つの設定を持ってたよ、美由紀姉さんの座る位置に対してね。
この位置を美由紀姉さんが選んだから、【知る】を選択したんだよね。
秀美姉さんに、何が知りたいの・・そう問いかけた。
この【知る】は・・絶対に教えてと言う裏の意味に繋がる、沙織姉さんらしいよ。
限界カルテットに挑戦的に振った、限界カルテットの想いを教えてと問うたんだ。
秀美姉さんの知りたい事、それを受けての美由紀姉さんの想いを感じた上で。
限界カルテットの想いを伝えてと、その全てを込めた一言が【知る】だった。
【知る】の設定で流れる限り、絶対に裏の流れは出来るんだ。
美由紀姉さんは絶対に強く返すから、それは全員が知っていたからね。
カルテットでも本気にならないと厳しい、美由紀姉さんは絶対に強い思いを入れる。
そして秀美姉さんが知りたいと言ったのが、【恋】なんだよね。
【恋】だから・・絶対にタブー無し、心の言葉を返さないといけなくなった。
障害と言われる身体的な特徴を持つ2人に、その2人の恋に対する自分の想い。
大切な妹の真剣な問いに答える言葉、それを全員が瞬時に感じたんだよ。
そして圧倒的な強い想いを込めて、繋ぎきった・・全員が答えて欲しい男に。
小僧の言葉が聞きたかった・・7人全員が・・小僧の想いを聞きたかったんだ。
美由紀姉さんの全裸の愛を受け止めた、たった一人の男だから。
その想いを語れる、そして語らないといけない・・唯一の男だから。
カルテットの本流はそこなんだね、全裸の愛に対する小僧の言葉なんだ。
これぞMAXレベル、【知る】の本流に【恋】の裏流れ・・それにプラスしたんだ。
カルテットは4人でそれにプラスした、小僧に今こそ語れと・・強い要求をした。
それが第3の流れなんだ・・絶対に出来ない、小僧じゃないと。
小僧は完全に3つの流れを感じていた、そして指定文字7つを全て使った。
7人の仲間に・・大切な仲間に、心の戦友である7人の少女に。
自分の想いを強く叫んだ・・だから段階を知るだったんだね、やっと分かったよ。
小僧は全裸の愛を受けて、最初の言葉をこれにしたんだ・・この部分なんだ。
春雨じゃない、春風の部分は・・小僧は段階を踏んでなら辿り着くと言った。
これが小僧の必殺技・・逆取りだったんだね、後ろからも流れる。
小僧の口癖だよね・・出会いに意味は無い、その後の関係で意味が出来る。
だから小僧の詩や句は、後ろからの意味が入る事がある・・上りと下りがある。
小僧のこの詩を逆取りすると、全裸の愛に対する答えが出てくる。
美由紀姉さんの全裸の愛に対して、段階を踏まないと駄目だよと言って。
それには生命を感じよう言って、時が最も貴重だよと優しく囁いていた。
それが俺の考える恋だよと言ったんだね、こじ付けじゃないよ・・こうだよ。
小僧と美由紀姉さんしか分からない、これは2人の遊びだよね・・逆取り遊び。
小僧と美由紀姉さんの、2人のレベル上げの言葉遊びだよね。
俺は聞き耳立てて研究したから知ってる、小僧と美由紀姉さんの特訓だったから。
次の挑戦の時の特訓だったよね、2人はイメージの世界での武器を作ってた。
言葉の武器を2人は作ってた・・難解で誰にも分からない、逆取り遊びを。
小僧はその逆取りまで作り上げたんだ、この答えには自信があるよ。
だって・・小僧が出だしで我が恋と言うのなら、称号に対する言葉だからね。
絶対に誰かを指定してる、そうでないとこんな一般的な出だしは選ばない。
小僧は出だしで強く相手のイメージに残す、それが小僧の作り方だからね。
我が恋と美由紀姉さんを呼んだんだよね・・美由紀姉さんに優しく声をかけた。
我が恋・・そう逆取りで呼びかけた・・確信したよ、今泣いてる美由紀姉さんで。
小僧は美由紀姉さんにだけ逆取りで囁いた・・全裸の愛を提示した大切な人に。
我が恋と呼びかけたんだね・・逆取りの称号・・永遠の片想いに」
哲夫は大切な天敵と呼ばれる姉の、美由紀の涙を感じながら強く言葉にした。
女性達は美由紀の涙で確信した、美由紀は気付いていたんだと。
「それだったのか、間違いないよ・・MAXの後、美由紀が静かだった、噛み締めていたから」とシズカが哲夫に笑顔で言った。
「逆取りか~・・小僧は流れを感じて、1度段階を知るまで流されたのか~」と恭子が私に二ヤで言って。
「それを戻したんだね・・美由紀の為なら、そこまで行けるんだね~」とヨーコが笑顔で言って。
「一人で楽しみやがって・・美由紀は悪い子だ~」とマキが美由紀に二ヤで言った。
「あの時、よく泣かなかったね・・美由紀も凄いよ」と秀美が目を潤ませて言って。
「この位じゃ泣かないよ・・美由紀にとっては、いつもの事だからね~」と沙織が二ヤで言って。
「は~い・・いつもの事です~、小僧の告白は~」と美由紀が蘭に二ヤで言った。
「そうなの~・・私にはストレートよ、逆取りじゃないわ」と蘭が満開二ヤで返した。
「そういう負けず嫌い返しか~・・レベルが高いな~」とカスミが二ヤで言って。
「このMAXを・・一人で想定したんだよね、マキはフーで感じて」とホノカがマキに二ヤで言って。
「フーで感じる所が凄すぎる・・あの可愛いフーちゃんで」とリョウが二ヤで言った、マキはウルで返していた。
「やはり検証してもらいますか、マキでも感じてない事があるかもね~」とユリカが二ヤでテツオに言った。
「それは俺も聞きたかった、達人の解説が」と哲夫も二ヤで私を見た。
「ヨロシク・・エース」とリンダが楽園笑顔で言ったので、私も笑顔で頷いて色紙を探した。
「下書き用じゃなくて、ちゃんとした色紙に書いてあげて・・リンダとマチルダのお土産に」とユリさんが薔薇で微笑んだ。
リンダとマチルダが笑顔で頭を下げて、私も笑顔で頷いた。
私が6番で書いていると、1行流しのナギサの話で爆笑が起きていた。
リンダとマチルダが爆笑して、リンダがウルのナギサをヨチヨチしていた。
私はマキのシーンを思い出し、映像にマキが赤い線で止まってるのが見えた。
それでマキの言葉を聞きながら書いていた、文字にすることでやはり新発見があった。
【マキ・・・深き森 繋がる道に 夢がある・・深
ヨーコ・・我が心 深層にこそ 真がある・・真
恭子・・・真実の 重みに耐える 明日がある・・耐
シズカ・・忍耐と 思う自分に 欲がある・・欲
久美子・・要望の 流れを映す 罠がある・・罠
ヒトミ・・好物を 仕掛ける罠に 悪がある・・悪
モモカ・・欲望の 悪意の罠に 耐えたけど 深海にこそ 真実がある】
私は書き終わり納得して、先に和尚と勝也に見せた。
女性達はワクワク笑顔で待っていて、和尚と勝也は真剣に読んでいた。
「うむ・・マキよ、取り戻したか・・解除したのか?」と和尚が笑顔でマキに言った。
「自分では実感ないですけど・・そうだろうと思ってます」とマキが笑顔で返した。
私は和尚から色紙を受け取り、リンダの前に置いて座った。
女性達はそのシーンを思い出すように、マキの言葉を読んでいた。
『確かにマキの解答は素晴らしいものだったよね、フルに使うという選択。
フルに使わせる為の指令が、この限界ファイブ完全想定MAXレベルだった。
確かに他の4人の流しの句を想定するのなら、フルに活用しても難しい。
マキの中の奴は焦っただろうね、でもどうしようも無かった。
沙紀の中の奴は仲間を失ったんだ、マキの中の奴が何も出来なくなってね』
私は二ヤで言った、全員がハッとして私を見た。
「又もや疑問が解けた・・そういう考え方で良いんだ~」と北斗が笑顔で言って。
「なるほどね~・・凄く説得力があるよ」とアンナも笑顔で言った。
「互いに交信してると想定してるんだね、回路は回路同士で」とアイコが真顔で言って。
「だから視覚的作為も入れてくる・・なるほどね、理に適ってるね」と蘭が満開で言って。
「テレパシーなんて非現実的じゃない、回路は回路同士で交信してる・・なるほどね~」とナギサが二ヤで言った。
「想定じゃないよな、小僧・・確信だよな?」とシズカが二ヤで言った。
『もちろん確信だよ、だから今ここで言葉にしてる。
そうじゃなければ、イメージの世界になど入れないからね。
要するに・・イメージの世界に入るのが、同調だと仮定したら。
何が同調しないといけないのか、それはやはり周波数だと思ってる。
脳が受け取るのが電気信号みたいな物なら、必ず周波数はある。
イメージを描くのは心だと仮定しても、絶対にそれまでの経験が必要だよね。
経験は当然記憶の中にある、そしてイメージの世界を保存するのも記憶だよね。
だからこそ奴は介入できる、映像として当人に見せられる。
それだけが奴の心への伝達方法、俺は眠って見る夢もそれだと思ってるよ。
正夢も霊感も、それの応用編だと思ってる・・だから勝負になるんだ。
侵入方法が有るからね、相手のイメージの周波数に合わせれば入れる。
人間の脳波は周波数以外は同じだろうから、そう思ってるよ。
これはある詐欺師の実話本で読んだんだけど、その人は信号を合わせるって言った。
読みたい相手の信号に、自分のチャンネルを合わせると・・心の声が聞こえる。
そう表現したんだよ・・俺は半信半疑だったけど、好奇心で試してみたんだ。
ミホが遠ざけられて、モモカが現れて・・自傷の女神で戻った時に。
ある少女が入院してきた、検査入院だったんだけど。
その子は脳性麻痺だった、俺はその前に何人かの脳性麻痺の子を知っていた。
伝達は出来なかったんだよ、脳性麻痺の子は脳の機能障害だったから。
一度も伝達出来た事は無かった、温度でも駄目だったんだ。
でもヒトミの言葉を思い出した、自分には温度の伝達を残してくれたって。
ヒトミはそう言った、だから俺は思ったんだ・・動けるんだから。
脳性麻痺という脳の障害だとしても、全てが機能しない事は無いはずだ。
そう思ったんだよ・・全てが機能しないなら、何も動かない。
そう思った、その子の意思通りか分からないけど・・体は動くんだから。
個人個人で違うけど・・視点は合わなくても、瞳が動いたり。
腕が動く子も、頭や首が動く子もいる・・完全に停止してるんじゃない。
そう確信して・・もしかしたら、自分の世界を持ってるかも。
俺はそう思って、その子にトライしたんだよ・・持ってたよ。
それも素敵な世界だった、でもその子には会えなかった。
かなり探したけど・・隠れてたんだろうね、なんせ経験が無いからね。
誰かと話すなんて、イメージにも無かっただろうから・・無理だった。
でも素敵な美しい世界は持ってたよ、目は見えてるんだと思った。
周波数の合わせ方は表現できない、それだけは全く表現できないんだ。
目を閉じて・・その後どうするのか、言葉では表現できないんだよ。
自分の描くイメージの世界なら、どんな機能障害でも存在する。
植物人間と言われる人は別だろうけど、少しでも機能してるのなら。
絶対にその世界が描ける力は残る、ただ表現が出来ないだけ。
俺はこの結論に到達した、そして交信できると感じたんだ。
その結論で想定した、回路は回路同士で交信してるのだと。
だから他人を拒絶するし、妨害工作も出来るんだと感じたんだ。
そうでないとヒトミの世界での、妨害工作の方法が分からない。
説明が出来ないんだよ、回路は周波数を合わせると交信ができる。
勝手に交信してる・・それには自分も気付かない、これが基本だよ。
相手の世界に入った時に、回路同士も交信してる。
だから敵と思われる奴の武器は、持ち込んだ武器と同等のレベルなんだ。
それ以上は出せない、塔までの妨害工作は自分の中の奴も仕組んでる。
俺はヒトミとミホとその後の経験で、それを確信していたんだ。
だから俺は由美子の段階の時には、全員に何も教えなかったよね。
自分のイメージで入れる事も、変身や武器を持てる事もね。
全員が初めてだったから、リスクが大きいから・・それを話さなかった。
ヨーコだけがそれを知っていたから、ヨーコは青猫で入ったんだ。
俺も由美子の段階の時は、豊兄さんになっただけで・・武器は何も持ってないよ。
強力な武器を持って入れば、それと同等の敵が現れる・・そう思ってる。
それを実証したのが、沙紀の暗黒の世界なんだ・・だから敵も強力だった。
そして今回は、沙紀の世界を俺の映像に入れた・・これはマリの力だよね。
沙紀の世界を入れるとなると、相手の対応も変わってくる。
俺はそう思って準備をしたんだ、2つの世界が現れると思ってたから。
沙紀が自分で描いた世界と、沙紀が見せられてる世界・・この2つがね。
だから武器を揃えた、そしてその全ての武器に設定を入れた。
それが得る事はリスクを伴うという設定、そうすれば奴も入れざる得ない。
奴にその設定が出来るのか、それが知りたかったんだ。
奴は入れてきたけど、それに自信が無かったね・・だから慌てたんだよ。
それで安全策に走った・・応用の利かない回路だよ、不安に勝てない。
得るという事は何らかのリスクが付随する、俺は今回でこの設定を確立したよ。
周波数を合わせて誰かの世界に入るなら、自分の回路が一人歩きする覚悟がいる。
何かを得るなら、そのレベルに応じて・・リスクも付随してくる。
これが契約の基本だろう、そう想定する段階までは来たよ。
他人の奴との勝負に持ち込むには、こっちもその設定を入れないと無理なんだ。
基本的に奴の世界だから、最初からこっちは不利なんだと感じたんだよ。
その経験をヒトミがさせてくれた、ヒトミと2人で何度もトライした。
時の部屋の前に立った時に感じたんだ、そうだったんだって確信した。
ヨーコが外側から必死に入ってきて、ウルでさっきの話をしてくれたから。
俺はヨーコの話で確信したんだよ、そして俺は絶望もしたんだ。
ヒトミには残されてない、それを表現したのが・・あの悪意の砂時計だと思った。
ヒトミには賭けに出すものが無い、時間も能力も何も残ってない。
それを表示してやがる・・そう思ったんだよ、この話はヒトミにはしたよ。
ヒトミは気付いていたんだ、砂時計の意味に気付いていたんだよ。
だからこそ俺はヒトミの、【時の部屋】も【言葉の羅針盤】も諦めたんだ。
ヒトミの願いを叶えて、ヒトミを左手に収容した・・それがヒトミの願いだから。
俺は無力感と悔しさの中で、それでも大きな物を得たと思っていた。
悪意の砂時計は・・奴が表現できる限界ギリギリだったんだと、強い提示なんだと。
時間さえ間に合えば、希望の道は存在する・・奴はそう提示したんだと思った。
リスクに対し差し出す物があれば、時の部屋にも挑める・・リスクに賭ける。
俺は由美子の時は失うリスクを提示する、まず由美子の離脱の力を賭ける。
俺は由美子の能力を、まだ3つしか分かっていない、その1つを提示する。
由美子の世界の戦いは、敗者は何かを失う・・そういう設定なんだ。
マリや沙紀が言葉を取り戻すのとは大きく違う、由美子の設定はレベルが違う。
由美子が何かを失うかも知れない、賭けれる何かを探し出さないといけない。
そんな厳しい設定だから・・そうであるから、希望が有るんだと思ってる。
北斗・・俺は由美子の【生体離脱】を賭けるよ、由美子の時を守る為に。
マリ・・そう思うだろう、由美子は離脱が出来るんだよね。
自分で離脱が出来ると思う・・それはユリアが教えたんだろう。
由美子は自由に浮遊できる、何も伝えられないけど・・浮遊する能力を持つ。
幽体離脱なんて伝説的な表現じゃない・・生体離脱が出来るんだよ。
そうじゃないと説明が出来ないよね・・俺は気付いたよ、その存在を。
ヒトミの言葉は忘れてない・・最大の問題は、【気付くのか】だったよね。
本人では絶対に表現できない、ヒトミもそうだった・・最大の難関はそれ。
誰かが気付いてやれるのか、そうだったよね・・マリも探してたよね。
俺は由美子の心の塔でそれを提示する、今回は【生体離脱】だとね。
奴に【言葉の羅針盤】を出させるのに、俺は由美子の生体離脱を出すよ。
絶対にその設定があるよね・・そうでないと、あんなに拒絶はしない。
由美子は強い力を得たまま産まれた、だから体が動かないリスクを背負った。
それが契約の条件なら、その契約違反を賭けれるんだよ・・一方的じゃない。
絶対に心と脳は選択で熟慮した、進化の過程の選択で・・熟慮して選んだ。
何を捨て何を得るのか・・キャパが限られてるから、捨てないと得られない。
より良き人間の進化を望んだ・・だけど進化した人間は、その行動で絶望させた。
知能に付随した【欲】に負けた、そしてここまで歩んできた・・殺し合いながら。
だから進化の契約は厳しい罰を設定した、俺はそう思ってるよ。
これは得るためのリスクじゃない、期待に応えなかった罰だった。
絶望させた罰で与えられたんだろう、【猜疑心】という設定を・・進化が与えた。
同種族を疑うという設定を、罰として与えられた・・心にも脳にも。
創造主などいない・・いるとしても、もう手は離れた・・人間という生命は。
知能を得た事で次の段階に入った、そして失敗を繰り返したんだね。
だから罰として、【猜疑心】が備わった・・それを克服する為に進化した。
それが言葉なんだろうね・・言葉を得ることで、何を持たされたのか。
その答えがあの場所にある、【言葉の羅針盤】とカリーが表現した場所に。
由美子から言葉を奪った、それが由美子の1つの契約違反。
俺がその復活を最初に求めるのは、言葉の復活が本来の目的を果たすから。
【猜疑心】を取り除く事に繋がると信じてるから、最初の契約破棄はそれ。
言葉を信じられなくなった人間では入れない、【猜疑心】を持ったままでは。
由美子の羅針盤で選択するのは・・4つの道なんだろう、その設定が分からない。
カリーは何かを選んで、言葉を得た・・それを選ぶのに何かを差し出した。
そう想定しないといけない・・だから俺は最終段階から想定する。
由美子の羅針盤には・・そのステージには、由美子しか上がれないと想定する。
由美子には差し出す物がある、今なら時間じゃない物が無数にあるんだ。
勝負は・・導けるのか、由美子を【言葉の羅針盤】の場所まで。
導くには捨ててないといけない、そうしないと塔には辿り着けない。
【猜疑心】を抱えたままじゃ、その場所には入れないだろう。
これが・・由美子の次の段階に対する俺の設定だよ、それは伝えてる。
俺の中の奴に、次はそれで挑むと・・全員がそう設定して欲しい。
俺と美由紀が作り出した言葉の武器は、カリーのヒントで出来ている。
【言葉の羅針盤】と言った時の、カリーのヒントで作り出したんだよ。
契約破棄の勝負に持ち込むには、罰を破棄する関係が必要なんだ。
罰を乗り越えてこそ、勝負の場所に届く・・【猜疑心】を外そう』
私は意識して二ヤで言った、女性達は沈黙して私を見ていた。
「エース・・教えて欲しい、あなたのカリーの想定を?」とユリカが真顔で言った。
私はユリカと蘭を見て、リンダを見た。
リンダは美しく微笑んで、強く頷いて私を促した。
『もちろん・・これは俺の想定だよ、だから正解じゃない。
カリーはリンダと【時の羅針盤】を見た、それは沙紀の世界と同じ物だと思う。
秀美はあの時に計測したよね、正確に方向を示していると言った。
秀美・・何の方向を示してたの?・・レーダは何の方向を示してたの?』
私は秀美に二ヤで言った、秀美はハッとして私を見た。
「方位じゃないの?・・レーダーでは正確に、東西南北を指してたよ」と秀美が真顔で答えた。
「そこなのか・・確かに違和感が有るよね、方位を探知するのは磁力だからね・・あの世界に磁力が示されるのかだね~」とシズカが私に二ヤで言った。
『そうなんだ・・俺は無いと思ってる、レーダーで見てるのは目安だよ。
最初の俺の映像には、出来るだけ正確に方位を入れてる。
俺がやれるだけの入れ方で、俺の映像の地球はマチルダのプレゼントだから。
かなりリアルな物が入ってる、その地球の全体図で方位を入れたんだ。
極の磁力なんて、映像には入らないからね・・だから不思議なんだ。
沙紀の世界で秀美は空母のレーダーで、正確に方向を指してると言った。
でもね俺の映像の基本は、全て管制室にある・・それは完成してる。
管制室のレーダーで測ったら・・指してなかった、ずれていた。
これはマリと2人で確認した、確かに俺の入力も正確じゃないかも。
でも相当のずれだった、あそこまでは絶対にずれてないよ。
羅針盤は何を指してたのかな、マリ・・マリは記憶したよね。
マリのイメージの世界に、あのレーダーの指した位置を記憶させたよね。
興味を持ったんだろ・・何かを指してるんじゃないかって』
私は二ヤでマリに言った、女性達も二ヤでマリを見た。
「確かに記憶しました」とマリも二ヤで言って、美由紀に手を出した。
美由紀は笑顔でマリの手を握り、マリを促した。
「私は確かにあの【言葉の羅針盤】の、指した方向に興味を持ちました。
管制室のレーダーには空母の向きも、羅針盤の指す方向も出てました。
空母のレーダーと管制室のレーダーの方位も、かなり違ってました。
私はその羅針盤の位置と方向を記録して、私の世界の地球儀の上に置いてみた。
沙紀の世界の中心は、リアルな世界でも・・もちろん太平洋です。
別に特殊な・・海溝とかプレートとかじゃない、普通の海です。
そして羅針盤が示した延長線上にも、何も無いんです。
歴史的な場所や特徴的な自然も存在しない、私は少し拍子抜けしました。
何かを指してる・・冒険小説のような、宝のありかを示してる。
なんてワクワクで調べましたから、何も無くて残念でした。
自分の世界の地球儀を消そうと思って、赤いステージを見て気付きました。
赤いステージに何かが彫られてる事を、私は小僧の不鮮明な画像から抜き取った。
ステージには何かが彫られてる、そう思って今日エミに聞きました。
エミは円状に18の何かが彫られてたと言いました、それが何の絵か分からない。
不思議な絵が彫られてて、その数は18だったと教えてくれました。
エミはそれを数えて、内側の円の枠を数えた・・それが13です。
13が18に分類されてる・・そんな感じだったよ。
エミはそう教えてくれました・・私には今の段階で、何もイメージできない。
13と18の組み合わせのイメージが持てません、誰か何かを感じますか?」
マリは笑顔で、それを伝える美由紀も笑顔だった。
現代のような携帯電話も無く、もちろんインターネットも無かったのだから、調べるのは難しいのだ。
女性達は自分のイメージの中で探していた、静寂が支配していた。
「・・・・・・」リンダが真剣な表情でマリに英語で言った。
「謎の遺跡・・占いの石碑と言われる、円形遺跡・・13×18」とシオンが真顔で言った。
リンダは少し震えながら、私に最強楽園二ヤを出した。
私はルミの言葉を思い出していた、南米のとある遺跡で貰ったと。
そう言ったルミの言葉が蘇り、ヒトミの時に見た円の映像が現れた。
円の本質に迫る想定が始まる、正円の描く方法に隠されている。
完璧な円は存在するのか・・私は好奇心の羅針盤を信じて舵を切る・・。