【冬物語第三章・・悪意の門⑤】
次の世界に何を望むのか、言葉では表現できない。
繋がれたバトンを渡す時、その想いまで託すしかない。
国の方向を決める奴らには、理想という望みはあるのだろうか?
国民が選んだのではない、国民に選択肢が足りないのだ。
選挙に莫大な金がかかるのが、平等の国だと言えるのだろうか。
奴らはいつまで腐臭を撒き散らし、偽りの言葉を並べニタニタと笑うのか。
奴らは今まで摂取した金で何を作ったのだろうか、金で借金を作っただけではないのだろうか。
年の瀬にこんな感情しか持てない国の、未来はどんな方向に進むのだろうか。
久々に東京の地を踏んでも、こんな感想しか持てない事に淋しさを感じています。
話を戻そう、楽しい気分になりたいから。
少なくとも理想を描いている人々の場所に、その大切な時まで戻そう。
年末の空気の中、女性達の笑顔が一人の少年を囲んでいた。
哲夫は集中の中にいた、リンダに触れて開花の時期が来ていた。
私はその成長を感じて、我が事のように嬉しかった。
「そうやって引き継ぐんだね、素敵だよね~」とリリーが静寂を破って笑顔で言った。
「男同士の約束って、良いですよね」とカレンも美少女笑顔で言った。
「それも先輩達が脈々と繋いだものを変化させ、より良くしようとする・・素敵です~」とシオンがニコちゃんで言った。
「そういう文化が途絶えないと良いね・・切実にそう思うよ」と徳野さんが笑顔で言った。
「小僧は小3で豊が繋いだんだよな・・豊は何歳で受け取ったんだ?」とキングが笑顔で聞いた。
「俺も小3です・・6・5・4年の先輩全員に、やれって言われて焦りましたよ」と豊が照れて微笑んだ。
「先輩達も素敵なんだね~・・その冒険に踏み出せるんだから」とリアンが笑顔で言って。
「豊だからでしょう・・見たかったんだよ、最年少記録がどんな世界を作るのか」とユリカが微笑んだ。
「そんな大それた話じゃないですよ、子供の世界の事ですから」と豊が照れた笑顔で返した。
「照れるよね~・・その時の話が聞きたいな~」とナギサが二ヤで私に言った。
『俺には無理だよ~・・その時俺は可愛い年長さんの園児だよ、記憶すら定かでないよ』とウルで返した。
「そっか~・・4つ違いだもんね」と蘭が満開二ヤで限界ファイブを見た。
「マキだろ~・・豊伝説は、女豊が語らないとね~」と恭子が二ヤで言った。
「女豊!・・またもや新発見の称号が出たね~」とネネが二ヤで言った。
「マキ・・話さなければ、女豊伝説を根掘り葉掘り聞くよ」とリアンが極宴ニカで言った、リアンに言われてマキはウルで頷いた。
「私は小学校入学前の3月に、母の入院で宮崎に来ました。
前にも話したように、私は最初母と別れた淋しさで閉じ篭っていました。
小学校の入学式の少し前でした、豊君が部屋に来て私の手を引いてくれた。
そしてシズカと恭子を紹介してくれました、私は最初は驚きました。
2人の個性が強くて、私は東京で幼稚園には通ってたけど。
そこにはそんな個性の強い子はいなかったので、本当に驚きましたね。
シズカは6歳にして理屈屋で、老人達のお気に入りでした。
恭子は納得出来ない事は、先輩の男子とも真っ向勝負する武闘派でしたから。
私にはショックを受けるほどの出会いでした、それから3人で遊びました。
豊君は学校から帰ると、私達の側で男子に囲まれて遊んでましたね。
私は豊君が来ると安心感を感じました、小学2年の豊君で感じてましたね。
その当時は、小僧と沙織は幼稚園の年中さんに上がっていて。
いつも駄菓子屋の中庭で、チサも入れた3人で遊んでました。
チサが幼稚園に入る事が決まっていて、豊君も喜んでいました。
私は豊君がチサを見守る姿を見て、感動した事だけはリアルに覚えています。
シズカも恭子も感じていなかったでしょう、当たり前の事だったから。
2人は3歳から豊君と一緒に育っていました、だから気付かなかった。
贅沢な事ですよね、そんな幼少期を送れただけでも。
豊君はチサに対して何も手出しはしません、小僧か沙織がいる時には。
2人がいないと時には、ずっとチサの側で遊んでいました、
チサも多分初恋は豊君でしょうね、豊君と遊んでる時は笑顔が違ったから。
豊君がチサの側にいるという事は、3年から6年までの男子にも重要でした。
絶対にチサに対して差別的な気持ちを持てない、そんな感じだったでしょう。
その年のクリスマスにチサを見送って、3月に子ども会のお別れ会がありました。
私達の地区には哲夫の暮らす施設もあって、150人を超える子ども会です。
その当時の子供リーダーの6年生が、学年別で男子を座らせて聞きました。
立候補をしろとそのリーダーが言ったんです、次期4年生以上から出ろと。
子供のリーダーに名乗り出ろ、そうしないと俺は3年の豊に引き継ぐ。
そう宣言しました・・5年生には次期リーダーと呼ばれる子もいました。
その次期リーダーが立って、次期6年に該当者無し・・そう強く宣言しました。
4年生のリーダー各の子も、3年生のリーダー各の子も該当者無しと言った。
それで決定でしたね・・最年少記録を塗り替えた、ニューリーダーの誕生でした。
それからも豊君は何も変わりませんでしたね、先輩に対しては敬意を払い。
後輩に対しては、大切な事だけに口を出すだけでした。
豊君がリーダーの3年間は、本当に楽しい時間でしたね。
子供の世界も変化していって、小僧や沙織も入学してきて。
ヨーコがやって来て、哲夫も加わった・・子供の世界は模索しましたね。
豊君の教えは間接的で、感じて行動しろでしたから・・全員で模索しましたね。
どんな世界が良いのかなって、全員で考えてたような感じです。
小僧が小児病棟に通い始めた時に、私達は驚きました。
小僧は小1で豊君に対して、自分の考えを強く示しましたね。
あの行動を1番喜んだのは、間違いなく豊君でしょうね・・それは確信してます。
自分が出来なかった事を、小僧が1年生で平然とやってのけたから。
あの小僧の小児病棟と施設に対する想いを感じて、豊君は決めたんでしょうね。
小僧にいずれ繋ぐと決めていました、それは小僧なら変化させると感じたから。
今よりも良くすると感じたからでしょうね、豊君と小僧は対極のように違った。
今は凄く近い感じを受けますが、あの当時は完全な対極でしたね。
小僧は1年生で豊君に真っ向勝負をしてましたから、それも生き方と行動で。
豊君もそれを受け止め、小僧をフォローし続けた・・だから小僧は向き合えた。
小児病棟の子供と向き合えました、豊君という後ろ盾があったから。
途中で投げ出す事も、目を逸らす事さえ出来なかったのでしょう。
その道が繋ぎましたね、マサル・美由紀・マリ・ヒトミ・ミホ・沙紀・由美子に。
豊君も自分の卒業の子ども会のお別れ会で、全員を学年で集めた。
男女ともに集めて言いました、男でも女でも良い・・立候補者はいるかと。
それだけでした、その時に誰の名前も出さなかった・・そして男女共でした。
それが豊君が進化させた子供の世界だったのでしょう、男女平等という理想。
そして自主性と主張を重んじる世界、自分は何も言わないという世界です。
去る者は発言するべきでない、お前達が決める事だから。
そう言っていると全員が思っていたでしょう、そして5年のリーダーが立った。
沙織の兄のユウリ君です、誰が考えても・・次はユウリ君だと思っていた。
私と恭子とヨーコは、シズカに手を上げて欲しいと心から思っていた。
女がリーダーになる新しい時代を作って欲しかった、豊君もそう思っていた。
それはシズカにしか出来ない、全員を納得させれるのはシズカだけですから。
でもシズカはユウリ君の気持ちを知っていたから、黙っていました。
それは私達3人も後で気付きました、ユウリ君とシズカは小僧に託したんだと。
立候補はいないのか?・・4年も3年も・・そうユウリ君は聞いたんです。
私達はその言葉に驚きましたね、そしてシズカは二ヤでユウリ君を見ていた。
いないようなので推薦したいと思います、誰か推薦する人はいますか?
ユウリ君は笑顔で言いました、そして手を上げました・・4年のリーダーが。
恭子の弟です・・やはり武闘派の恭子の弟が、強く推薦するのです。
誰も豊君の後だから、立候補出来ないのなら・・一人しかいないと思う。
俺は小僧しかいないと思う・・俺は小僧しかいないと思います。
そう4年のリーダーの恭子の弟が強く言って、全員が2人の気持ちを理解した。
ユウリ君と恭子の弟の気持ちを・・2人はきちんと話したんだと。
そして自分達の気持ちを確認して、豊君に対してその行動を取った。
それで全員が賛成して、小僧に決まりました・・豊君も嬉しそうでした。
豊君は自分では決めなかった、下の世代に任せた・・だからその世界が作れた。
女子は本当に嬉しい気持ちになりました、確かに新時代は作れなかったけど。
同じ位置で話が出来るという現実に触れて、そして男達の決定する姿を見て。
小僧に託すという挑戦を選んだ、男達の選択も嬉しかったですね。
小僧が作り出したのは、主張する世界でした・・話し合い決定する。
小僧はリーダーだったのかの~、そう私の祖母は二ヤ顔で和尚に言いました。
あれがリーダーなら、日本も新時代じゃな・・和尚はそう返しました。
小僧は平等を加速させた、その世界に差別も偏見も無くした。
そして幅を広げた、下に対しては枠を無くした・・小学生という枠を。
小僧はリーダーだったけど、小僧は全員がリーダーだろって言ってました。
今年の3月小僧は自分で哲夫を指名しました、そして哲夫に難題を突きつけた。
必ず女子リーダーが現れる土台を作れと、哲夫に託しました。
俺は女子リーダーが誕生する唯一のチャンスを潰して、リーダーに選ばれた。
シズカが6年生に存在した、唯一無二のチャンスを譲られた。
だからそれを繋ぎたい、哲夫に1年間任せる・・次に段階を上げろ。
お前がその世界を作って、いつか必ず女子で手が上がる世界に繋げ。
女子が手を上げ、それを全員が認める世界に繋いでくれよ。
今後の女子の誰にも出来ないかもしれない、その難しさは分かっている。
でも俺は一人の可能性は確信してる、その道を繋いでくれ。
その時が来た時に、モモカが手を上げれるように。
方向だけは示してくれ・・哲夫にしか出来ないから、俺は哲夫に託す。
これが今年の3月の子ども会で、小僧が全員の前で語った言葉です。
哲夫の喜びも緊張感も感じましたね、そしてシズカの嬉しそうな顔も。
ヨーコの喜びの涙も、廊下から覗く私達4人の中にありました。
枠を外した子ども会の参加者は、200人を越えていました。
その中に・・その中心に存在しましたね、モモカのルンルン笑顔が。
小僧と哲夫を見て嬉しそうに笑っていました、小僧からモモカへの伝言でした。
私達4人はモモカの顔を見て、伝言を受け取ったのだと感じました。
私達はリアルに想像できました、強くまっすぐに手を上げるモモカの姿を。
それを周りの全員が笑顔で拍手をして、満場一致で認める光景を。
リアルに想像できて嬉しかったですね、受け継いで繋いだ世界が求めたのが。
真の意味での平等であると感じて、本当に嬉しかったです・・希望を感じて」
マキは一気に語った、シオンは必死でリンダに繋いだ。
女性達の笑顔に囲まれた、キングも徳野さんも嬉しそうな笑顔だった。
「パーフェクト・・マキ、ステキダヨ・・ユタカ・コゾウ・テツオ・・ウレシカッタ」とリンダは楽園ブルーで微笑んで、隣の哲夫を抱きしめた。
「テツオ・・キタイシテル・・モウスコシダロ・・ガンバレ」とリンダが笑顔で囁いた。
「リンダ姉さんの言葉なら、俺は約束するよ・・最終段階で、ベストを尽くすよ」と哲夫が嬉しそうに返した。
シオンの言葉を聞いて、リンダは哲夫に向かい笑顔で強く頷いた。
「しかしヨーコもだけど、マキも早いよな~・・ユリカ姉さん言う、心の変換速度が」とミコトが笑顔で言った。
「その速さが誘ってくれるよね、物語の世界に誘ってくれる・・映像を連れて来る感じ、久美子の演奏もそうなったよね」と千鶴が笑顔で返した。
私はこの千鶴の表現が嬉しかった、さすが千鶴だと感じていた。
「それなんですよね~・・かなり取り組んでるけど、難しい世界です」とミサキが笑顔で言って。
「最近驚きの世界を感じて・・本当に目指したくなりました、エミの変換速度を感じて」とハルカが笑顔で言った。
「エミには何か、アドバイスしたの?」と久美子が私に言った。
『基本的な事を少しだけだよ、俺はエミにも間接的にしか伝えない。
俺も限界カルテットも中1トリオも、シーンで話すって教えただけだよ。
久美子はもう分かってるけど、その時の流れを感じてシーンで話す。
静止画でない映像的な感覚かな、思い出の場面だけじゃない。
伝えたい話は・・俺は客観的な視点で話す、その時をシーンにするんだ。
やり方は全員違うよ、自分のやり方を探せば良いんだと思う。
素直に言葉に出来ないのは、何かに囚われているからだよね。
普段の会話や仕事の会話なら、相手を考えながら話すよね。
女性同士の話でも、互いに傷つかないような配慮は必要だよね。
でも伝えたい事ならば、俺はタブーは無いと思ってる。
それが正直な気持ちなら、何にも囚われないのが正直だと感じてる。
俺は自分のやり方は表現できない、でもエミのやり方は少し分かった。
驚いたよ・・エミは吸収する能力に優れてると思ってたけど。
それほど強いとは想像してなかったから、俺はシーンで話すって言っただけ。
エミはシオンから心の描き方は得ていた、そして圧倒的な描写力を得ていた。
当然沙紀だよ・・沙紀を感じてそれを自分の世界で応用した。
沙紀ほどは無理だから、沙紀は圧倒的なスピードと緻密性を持っている。
でもエミも早いと思うよ・・多分俺よりも早い、心に何かを描くスピードは。
俺やは新しい物を描くのは遅いんだよ、無駄にこだわるから。
例えば実在する車なんて、その解説書や整備説明書まで読むんだ。
リアルな感覚で動かしたいから、好きな物にはこだわってしまう。
エミはとりあえず見た目の概要を描ける、それから時間をかけて内側を作る。
だからエミの言葉はかなりのスピードで流れ出した、描くスピードなんだよね。
自分の心にそれを描くスピードが増すと、会話の流れが出来てくる。
早ければ良いと言う訳じゃないから、流れが大切なんだよね。
さすがミコトと千鶴だよ、映像を連れて来ると言った千鶴の表現。
俺は感動したよ、俺もそう感じていたから・・久美子の今の世界をね。
久美子は今回の段階で、流れに身を任す事に挑戦したんだろう。
自分を信じて身を任せる、流れだけを感じて・・技術的には自分を信じる。
その時には次はどこを押すとか、ここは強くとかの感情は入らない。
そんな感情は、たかだか脳が感じる世界だから・・その世界を超えた。
俺は自分を表現する時には、その感情はは現れないと思っている。
それが現れた段階で、良く思われたいとか、認めて欲しいとかの感情が入る。
それが入った段階で絶対に流れは乱れる、会話でも演奏でもそうだと思う。
乱れた流れでは映像は浮かばない、相手には伝わらないと思うよ。
視覚を重要視して進化した人間なら、言葉も音も映像化を目指す。
会話も演奏も自分のイメージを表現する、相手に伝えたいイメージをね。
その互いのイメージの世界が近づけば、お互いに気持ち良いんだろうね。
そこにこそ突破口があると俺は考えた、言葉を持たない多くの仲間の影響で。
どうやれば自分の気持ちを表現できるのか、そこに1つの答えがあったよ。
ミホが教えてくれた、マリの同調で俺の映像に入ったミホが。
ミホのあの二ヤ顔が、俺に自信をくれたよ・・共有するイメージなら伝わる。
ミホはまだ同調の中でしか笑顔は出せない、でも同調で出せるなら絶対に出来る。
俺は今までの経験で、それは確信してる・・だから絶対に出来る。
沙紀が会話をするのも、笑顔を見せるのも・・必ず出来る。
そして由美子が笑うのも、言葉を持つのも・・立ち、歩き、走るのも。
俺は絶対に可能だと確信してる・・機能的な問題じゃないから。
あの沙紀の暗黒の世界に、マリが連れて来た由美子を見たから。
その由美子には、理想の設定など何も無い・・ありのままの由美子だったから』
私は笑顔で言った、隣の北斗が私に抱きついた、沙紀の母親の笑顔が嬉しかった。
リンダの強いブルーと、マチルダの輝くグリーンが私を見ていた。
久美子が嬉しそうに微笑んで、私は笑顔で返した。
「エース・・1つ教えて欲しいんですけど、沙紀の描写の方法を」とユリさんが薔薇で微笑んだ、私は笑顔で頷いた。
『まぁ・・聞くだけにして下さい、目指したら迷宮に入ります。
沙紀の描写力・・今度のルミの試験でも感じるけど。
俺は前回・・沙紀から貰ったのは、フーだけじゃないからね。
それはお楽しみに・・きっと感動するよ、そのリアルさに。
実は俺は沙紀と添い寝した朝、沙紀と映像に入っていたんだ。
そして沙紀にアフロの絵を見せたんだよ、俺が描いたら間に合わないと思って。
沙紀に見せてみた、その日の夜にある出来事があって。
まぁ隠さずに言うけど・・ユリアを実像化したんだ、沙紀が描いてね。
ユリカの無意識で持っていた、ユリアのイメージを実像化した。
マリも手伝ってくれて、沙紀の描いた絵をプールに浮かべてね。
ユリアがプールから浮き上がってきた時は、本当に感動したよ。
生命の誕生のような感じだった、俺はそれで試したくてアフロを提案した。
永井先生の公式本に載ってた、アフロの全体図と解剖図を見せた。
永井先生のイメージを描いた、アフロの内側の絵まで見せたんだ。
そして沙紀に俺の世界で実像化して動かしたいって、沙紀に言ったんだ。
沙紀は笑顔で頷いて、2人でプールサイドに行った。
沙紀がプールの天井を高くしてと言ったので、俺は高くしたんだよ。
そして沙紀は解剖図を見て、俺にこう言ったんだよ。
これを全部組み込めば、動くんだよね・・凄い人が描いたんだな~。
沙紀はそう嬉しそうな笑顔で言って、瞳を閉じたんだよ。
その時にはアフロの全体図も解剖図も、沙紀の中には入っていた。
そしてゆっくりと浮かび上がってきた、巨大な実物大アフロの骨格がね。
リアルな金属感のある骨格が、プールの中から浮かび上がってきた。
そして全身が現れると、凄いスピードで内側が描かれていった。
そのスピードに驚いて、俺は凍結して見てたよ。
永井先生がイメージした内側が、実物大で立体的に描かれていった。
素材感もリアルで、その輝きもリアルだったよ。
沙紀は内側を描ききって止まった、確認したかったんだよね。
沙紀はチェックをしたんだろう、逆光に翳して見たんだろうね。
それで納得したのか・・外側を一気に描いた、本当に見事だったよ。
そこまでの時間は約3分だったと思う、自分の世界を描くことがね。
緻密で精密なアフロの内側を、リアルに描ききった。
俺は永井先生に見せたいと思ったよ、絶対に喜んでくれると思って。
沙紀は最後にアフロの肩にサインを入れた、そして笑顔でこう言った。
偽者だって印を入れといた・・素敵な人の作品だから。
沙紀は嬉しそうにそう言ったんだ、俺も嬉しかったよ。
それを潜水艦に収納して、美由紀に託した・・美由紀は本当に喜んだ。
心が躍っただろうね、沙紀の描いたリアルなアフロだったから。
でも俺と美由紀の最大の驚きは、あのアフロ発進の時なんだ。
アフロは自分で立ち上がる設定だった、その立ち上がる動きはゆっくりだった。
内側を完璧に描いたから、動きまでリアルになった・・立ち上がる時間までね。
美由紀は淋しかっただろうね、アフロを深海に沈ませる時は。
でもね、美由紀・・沙紀はそんな美由紀の気持ちも分かっていたよ。
この事は俺とマリと沙紀しか知らない、沙紀はマキがフーを送ってる時に。
プールに出してくれたよ・・美由紀の為に、アフロⅡを描いてくれた。
そのリアル感は深海に沈めたのを超えていた、俺はそれを潜水艦に収めたよ。
肩にアフロⅡとSAKIと書いてある、大切な美由紀のアフロⅡをね』
私は最後に美由紀に笑顔で言った、美由紀は嬉しそうな笑顔で強く頷いた。
「やっぱり・・沙紀は解剖図から入れてたよね・・ヨーコのアフロとは別物だった」とシズカが笑顔で言って。
「前回のアフロは、ヨーコのアフロだったの!」とリョウが驚いて言った。
「自白しな、ヨーコ・・なぜヨーコが青猫なのかを」と恭子が二ヤで言った。
「楽しいな~・・本当に楽しい、色んな自白・・真実が出てきて」とホノカが二ヤでヨーコに言って、全員がヨーコに二ヤで言った。
ヨーコはウルウルで返していた、可愛い清楚ウルだった。
「私がヒトミの時に開発した技があって、その開発でヒトミの塔に入れました。
それは相手のイメージに、自分のイメージを足せるというものです。
もちろん、沙紀のようなリアルな描写はできません。
その代わり、能力の設定は出来ます・・もちろん、限度はありますが。
その限度の基準が今でも分からないから、破棄した失敗作も無数にあります。
それをどう表現しようと考えてました、由美子の段階の時を感じて。
私なりの自然な表現でと思って、辿り着いた答えが・・青猫のポケットです。
今でも試行錯誤の状況で、成功例はあの下ネタ銃と言われる物だけです。
能力の制限は奴が決めるんでしょう、下ネタ銃がOKだったのが不思議です。
だから私はポケットに手を入れて設定します、自分の設定を。
それが無理な物であれば、ポケットの中に現れません。
だから玩具のドアとか、ホースとかを出して・・下ネタ銃頼みですね。
小僧が私に覚醒を迫るのは、このポケットなんです。
凄い力だよって、ニヤニヤで煽るんです・・でも本当に難しい。
私は贅沢な能力を求めてしまって、ほとんどが却下されます。
今・・必死に勉強中です、内側の勉強をしてます・・機械でも何でも。
なぜ動くのかを知らなければ、私の道具の力は上げられないから。
私が出したあのスプレー缶で現れたアフロは、私がTVで見たアフロです。
だから平面的でしたね・・今凄く反省中です、沙紀に教えられたから」
ヨーコはウルの反省顔で言った、女性達は驚きながら二ヤを出していた。
「でも凄いよ、ヨーコ・・その力があるだけで」とミコトが笑顔で言って、ヨーコがパッと輝いた。
「ほら・・すぐそうやって、ポジティブヨーコを出す~・・それじゃあ進歩しないよ」とシズカが二ヤで言って、ヨーコはウルの反省顔に戻った。
女性達がヨーコの表情で笑っていたが、リンダだけは真剣なブルーの瞳でヨーコを見ていた。
私にはリンダの気持ちは分かっていた、私にもヨーコの力は貴重だった。
だからこそヨーコ覚醒にこだわったのだ、リンダは嬉しかったのだろう。
新たなる可能性を感じて、ヨーコの力に1つの希望を感じてるようだった。
年末の笑顔の中にある、深く輝くブルーを見ていた。
復活を示す楽園ブルーに、私は自分の復活を込めていた。
70年代はまた1歩進もうとしていた、その列車は加速していた。
時代という名の列車は後戻りは出来ない、上りだと偽って進む。
終着駅は後悔と崩壊という駅だった、それは下り列車だったのだ。
価値というレールは、歪みを正すこともなく走らせた。
それに乗るしかなかった、それが時代という列車なのだろう・・。
2011年も暮れようとしています、今年も大変な年でした。
大震災と原発事故という、大きな歴史の節目だったのでしょう。
皆さんはどんな年でしたか、来年はきっと良い年でしょう。
本年も私の拙い文章をご愛読いただき、本当にありがとうございました。
2012年が皆様に幸ある1年で有る事をお祈りして、2011年のUPを終了します。
暖かく楽しい年越しと、新年をお迎え下さい。
雪を懐かしく感じる、南国より・・感謝を込めて。