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      【冬物語第三章・・悪意の門⑤】 

次の世界に何を望むのか、言葉では表現できない。

繋がれたバトンを渡す時、その想いまで託すしかない。


国の方向を決める奴らには、理想という望みはあるのだろうか?

国民が選んだのではない、国民に選択肢が足りないのだ。

選挙に莫大な金がかかるのが、平等の国だと言えるのだろうか。

奴らはいつまで腐臭を撒き散らし、偽りの言葉を並べニタニタと笑うのか。

奴らは今まで摂取した金で何を作ったのだろうか、金で借金を作っただけではないのだろうか。

年の瀬にこんな感情しか持てない国の、未来はどんな方向に進むのだろうか。


久々に東京の地を踏んでも、こんな感想しか持てない事に淋しさを感じています。


話を戻そう、楽しい気分になりたいから。

少なくとも理想を描いている人々の場所に、その大切な時まで戻そう。


年末の空気の中、女性達の笑顔が一人の少年を囲んでいた。


哲夫は集中の中にいた、リンダに触れて開花の時期が来ていた。

私はその成長を感じて、我が事のように嬉しかった。


「そうやって引き継ぐんだね、素敵だよね~」とリリーが静寂を破って笑顔で言った。

「男同士の約束って、良いですよね」とカレンも美少女笑顔で言った。

「それも先輩達が脈々と繋いだものを変化させ、より良くしようとする・・素敵です~」とシオンがニコちゃんで言った。


「そういう文化が途絶えないと良いね・・切実にそう思うよ」と徳野さんが笑顔で言った。

「小僧は小3で豊が繋いだんだよな・・豊は何歳で受け取ったんだ?」とキングが笑顔で聞いた。


「俺も小3です・・6・5・4年の先輩全員に、やれって言われて焦りましたよ」と豊が照れて微笑んだ。

「先輩達も素敵なんだね~・・その冒険に踏み出せるんだから」とリアンが笑顔で言って。

「豊だからでしょう・・見たかったんだよ、最年少記録がどんな世界を作るのか」とユリカが微笑んだ。


「そんな大それた話じゃないですよ、子供の世界の事ですから」と豊が照れた笑顔で返した。

「照れるよね~・・その時の話が聞きたいな~」とナギサが二ヤで私に言った。


『俺には無理だよ~・・その時俺は可愛い年長さんの園児だよ、記憶すら定かでないよ』とウルで返した。

「そっか~・・4つ違いだもんね」と蘭が満開二ヤで限界ファイブを見た。


「マキだろ~・・豊伝説は、女豊が語らないとね~」と恭子が二ヤで言った。

「女豊!・・またもや新発見の称号が出たね~」とネネが二ヤで言った。

「マキ・・話さなければ、女豊伝説を根掘り葉掘り聞くよ」とリアンが極宴ニカで言った、リアンに言われてマキはウルで頷いた。


「私は小学校入学前の3月に、母の入院で宮崎に来ました。

 前にも話したように、私は最初母と別れた淋しさで閉じ篭っていました。

 小学校の入学式の少し前でした、豊君が部屋に来て私の手を引いてくれた。

 そしてシズカと恭子を紹介してくれました、私は最初は驚きました。

 2人の個性が強くて、私は東京で幼稚園には通ってたけど。

 そこにはそんな個性の強い子はいなかったので、本当に驚きましたね。

 シズカは6歳にして理屈屋で、老人達のお気に入りでした。

 恭子は納得出来ない事は、先輩の男子とも真っ向勝負する武闘派でしたから。

 私にはショックを受けるほどの出会いでした、それから3人で遊びました。

 豊君は学校から帰ると、私達の側で男子に囲まれて遊んでましたね。

 私は豊君が来ると安心感を感じました、小学2年の豊君で感じてましたね。


 その当時は、小僧と沙織は幼稚園の年中さんに上がっていて。

 いつも駄菓子屋の中庭で、チサも入れた3人で遊んでました。

 チサが幼稚園に入る事が決まっていて、豊君も喜んでいました。

 私は豊君がチサを見守る姿を見て、感動した事だけはリアルに覚えています。

 シズカも恭子も感じていなかったでしょう、当たり前の事だったから。

 2人は3歳から豊君と一緒に育っていました、だから気付かなかった。

 贅沢な事ですよね、そんな幼少期を送れただけでも。


 豊君はチサに対して何も手出しはしません、小僧か沙織がいる時には。

 2人がいないと時には、ずっとチサの側で遊んでいました、

 チサも多分初恋は豊君でしょうね、豊君と遊んでる時は笑顔が違ったから。

 豊君がチサの側にいるという事は、3年から6年までの男子にも重要でした。

 絶対にチサに対して差別的な気持ちを持てない、そんな感じだったでしょう。

 その年のクリスマスにチサを見送って、3月に子ども会のお別れ会がありました。

 私達の地区には哲夫の暮らす施設もあって、150人を超える子ども会です。

 その当時の子供リーダーの6年生が、学年別で男子を座らせて聞きました。

 立候補をしろとそのリーダーが言ったんです、次期4年生以上から出ろと。

 子供のリーダーに名乗り出ろ、そうしないと俺は3年の豊に引き継ぐ。

 そう宣言しました・・5年生には次期リーダーと呼ばれる子もいました。

 その次期リーダーが立って、次期6年に該当者無し・・そう強く宣言しました。

 4年生のリーダー各の子も、3年生のリーダー各の子も該当者無しと言った。

 それで決定でしたね・・最年少記録を塗り替えた、ニューリーダーの誕生でした。


 それからも豊君は何も変わりませんでしたね、先輩に対しては敬意を払い。

 後輩に対しては、大切な事だけに口を出すだけでした。

 豊君がリーダーの3年間は、本当に楽しい時間でしたね。

 子供の世界も変化していって、小僧や沙織も入学してきて。

 ヨーコがやって来て、哲夫も加わった・・子供の世界は模索しましたね。

 豊君の教えは間接的で、感じて行動しろでしたから・・全員で模索しましたね。

 どんな世界が良いのかなって、全員で考えてたような感じです。

 

 小僧が小児病棟に通い始めた時に、私達は驚きました。

 小僧は小1で豊君に対して、自分の考えを強く示しましたね。

 あの行動を1番喜んだのは、間違いなく豊君でしょうね・・それは確信してます。

 自分が出来なかった事を、小僧が1年生で平然とやってのけたから。

 あの小僧の小児病棟と施設に対する想いを感じて、豊君は決めたんでしょうね。

 小僧にいずれ繋ぐと決めていました、それは小僧なら変化させると感じたから。

 今よりも良くすると感じたからでしょうね、豊君と小僧は対極のように違った。

 今は凄く近い感じを受けますが、あの当時は完全な対極でしたね。

 小僧は1年生で豊君に真っ向勝負をしてましたから、それも生き方と行動で。

 豊君もそれを受け止め、小僧をフォローし続けた・・だから小僧は向き合えた。

 小児病棟の子供と向き合えました、豊君という後ろ盾があったから。

 途中で投げ出す事も、目を逸らす事さえ出来なかったのでしょう。

 その道が繋ぎましたね、マサル・美由紀・マリ・ヒトミ・ミホ・沙紀・由美子に。


 豊君も自分の卒業の子ども会のお別れ会で、全員を学年で集めた。

 男女ともに集めて言いました、男でも女でも良い・・立候補者はいるかと。

 それだけでした、その時に誰の名前も出さなかった・・そして男女共でした。

 それが豊君が進化させた子供の世界だったのでしょう、男女平等という理想。

 そして自主性と主張を重んじる世界、自分は何も言わないという世界です。

 去る者は発言するべきでない、お前達が決める事だから。

 そう言っていると全員が思っていたでしょう、そして5年のリーダーが立った。

 沙織の兄のユウリ君です、誰が考えても・・次はユウリ君だと思っていた。

 私と恭子とヨーコは、シズカに手を上げて欲しいと心から思っていた。

 女がリーダーになる新しい時代を作って欲しかった、豊君もそう思っていた。

 それはシズカにしか出来ない、全員を納得させれるのはシズカだけですから。

 でもシズカはユウリ君の気持ちを知っていたから、黙っていました。

 それは私達3人も後で気付きました、ユウリ君とシズカは小僧に託したんだと。


 立候補はいないのか?・・4年も3年も・・そうユウリ君は聞いたんです。

 私達はその言葉に驚きましたね、そしてシズカは二ヤでユウリ君を見ていた。

 いないようなので推薦したいと思います、誰か推薦する人はいますか?

 ユウリ君は笑顔で言いました、そして手を上げました・・4年のリーダーが。

 恭子の弟です・・やはり武闘派の恭子の弟が、強く推薦するのです。


 誰も豊君の後だから、立候補出来ないのなら・・一人しかいないと思う。

 俺は小僧しかいないと思う・・俺は小僧しかいないと思います。


 そう4年のリーダーの恭子の弟が強く言って、全員が2人の気持ちを理解した。

 ユウリ君と恭子の弟の気持ちを・・2人はきちんと話したんだと。

 そして自分達の気持ちを確認して、豊君に対してその行動を取った。

 それで全員が賛成して、小僧に決まりました・・豊君も嬉しそうでした。

 豊君は自分では決めなかった、下の世代に任せた・・だからその世界が作れた。

 女子は本当に嬉しい気持ちになりました、確かに新時代は作れなかったけど。

 同じ位置で話が出来るという現実に触れて、そして男達の決定する姿を見て。

 小僧に託すという挑戦を選んだ、男達の選択も嬉しかったですね。


 小僧が作り出したのは、主張する世界でした・・話し合い決定する。

 小僧はリーダーだったのかの~、そう私の祖母は二ヤ顔で和尚に言いました。

 あれがリーダーなら、日本も新時代じゃな・・和尚はそう返しました。

 小僧は平等を加速させた、その世界に差別も偏見も無くした。

 そして幅を広げた、下に対しては枠を無くした・・小学生という枠を。

 小僧はリーダーだったけど、小僧は全員がリーダーだろって言ってました。

 今年の3月小僧は自分で哲夫を指名しました、そして哲夫に難題を突きつけた。

 必ず女子リーダーが現れる土台を作れと、哲夫に託しました。


 俺は女子リーダーが誕生する唯一のチャンスを潰して、リーダーに選ばれた。

 シズカが6年生に存在した、唯一無二のチャンスを譲られた。

 だからそれを繋ぎたい、哲夫に1年間任せる・・次に段階を上げろ。

 お前がその世界を作って、いつか必ず女子で手が上がる世界に繋げ。

 女子が手を上げ、それを全員が認める世界に繋いでくれよ。

 今後の女子の誰にも出来ないかもしれない、その難しさは分かっている。

 でも俺は一人の可能性は確信してる、その道を繋いでくれ。

 その時が来た時に、モモカが手を上げれるように。

 方向だけは示してくれ・・哲夫にしか出来ないから、俺は哲夫に託す。


 これが今年の3月の子ども会で、小僧が全員の前で語った言葉です。

 哲夫の喜びも緊張感も感じましたね、そしてシズカの嬉しそうな顔も。

 ヨーコの喜びの涙も、廊下から覗く私達4人の中にありました。

 枠を外した子ども会の参加者は、200人を越えていました。

 その中に・・その中心に存在しましたね、モモカのルンルン笑顔が。

 小僧と哲夫を見て嬉しそうに笑っていました、小僧からモモカへの伝言でした。

 私達4人はモモカの顔を見て、伝言を受け取ったのだと感じました。

 私達はリアルに想像できました、強くまっすぐに手を上げるモモカの姿を。

 それを周りの全員が笑顔で拍手をして、満場一致で認める光景を。

 リアルに想像できて嬉しかったですね、受け継いで繋いだ世界が求めたのが。

 真の意味での平等であると感じて、本当に嬉しかったです・・希望を感じて」


マキは一気に語った、シオンは必死でリンダに繋いだ。

女性達の笑顔に囲まれた、キングも徳野さんも嬉しそうな笑顔だった。


「パーフェクト・・マキ、ステキダヨ・・ユタカ・コゾウ・テツオ・・ウレシカッタ」とリンダは楽園ブルーで微笑んで、隣の哲夫を抱きしめた。


「テツオ・・キタイシテル・・モウスコシダロ・・ガンバレ」とリンダが笑顔で囁いた。

「リンダ姉さんの言葉なら、俺は約束するよ・・最終段階で、ベストを尽くすよ」と哲夫が嬉しそうに返した。

シオンの言葉を聞いて、リンダは哲夫に向かい笑顔で強く頷いた。


「しかしヨーコもだけど、マキも早いよな~・・ユリカ姉さん言う、心の変換速度が」とミコトが笑顔で言った。

「その速さが誘ってくれるよね、物語の世界に誘ってくれる・・映像を連れて来る感じ、久美子の演奏もそうなったよね」と千鶴が笑顔で返した。

私はこの千鶴の表現が嬉しかった、さすが千鶴だと感じていた。


「それなんですよね~・・かなり取り組んでるけど、難しい世界です」とミサキが笑顔で言って。

「最近驚きの世界を感じて・・本当に目指したくなりました、エミの変換速度を感じて」とハルカが笑顔で言った。

「エミには何か、アドバイスしたの?」と久美子が私に言った。


『基本的な事を少しだけだよ、俺はエミにも間接的にしか伝えない。

 俺も限界カルテットも中1トリオも、シーンで話すって教えただけだよ。

 久美子はもう分かってるけど、その時の流れを感じてシーンで話す。

 静止画でない映像的な感覚かな、思い出の場面だけじゃない。

 伝えたい話は・・俺は客観的な視点で話す、その時をシーンにするんだ。

 やり方は全員違うよ、自分のやり方を探せば良いんだと思う。

 素直に言葉に出来ないのは、何かに囚われているからだよね。

 普段の会話や仕事の会話なら、相手を考えながら話すよね。

 女性同士の話でも、互いに傷つかないような配慮は必要だよね。

 でも伝えたい事ならば、俺はタブーは無いと思ってる。

 それが正直な気持ちなら、何にも囚われないのが正直だと感じてる。

 俺は自分のやり方は表現できない、でもエミのやり方は少し分かった。


 驚いたよ・・エミは吸収する能力に優れてると思ってたけど。

 それほど強いとは想像してなかったから、俺はシーンで話すって言っただけ。

 エミはシオンから心の描き方は得ていた、そして圧倒的な描写力を得ていた。

 当然沙紀だよ・・沙紀を感じてそれを自分の世界で応用した。

 沙紀ほどは無理だから、沙紀は圧倒的なスピードと緻密性を持っている。

 でもエミも早いと思うよ・・多分俺よりも早い、心に何かを描くスピードは。

 俺やは新しい物を描くのは遅いんだよ、無駄にこだわるから。

 例えば実在する車なんて、その解説書や整備説明書まで読むんだ。

 リアルな感覚で動かしたいから、好きな物にはこだわってしまう。

 エミはとりあえず見た目の概要を描ける、それから時間をかけて内側を作る。

 だからエミの言葉はかなりのスピードで流れ出した、描くスピードなんだよね。

 自分の心にそれを描くスピードが増すと、会話の流れが出来てくる。

 早ければ良いと言う訳じゃないから、流れが大切なんだよね。


 さすがミコトと千鶴だよ、映像を連れて来ると言った千鶴の表現。

 俺は感動したよ、俺もそう感じていたから・・久美子の今の世界をね。

 久美子は今回の段階で、流れに身を任す事に挑戦したんだろう。

 自分を信じて身を任せる、流れだけを感じて・・技術的には自分を信じる。

 その時には次はどこを押すとか、ここは強くとかの感情は入らない。

 そんな感情は、たかだか脳が感じる世界だから・・その世界を超えた。

 俺は自分を表現する時には、その感情はは現れないと思っている。

 それが現れた段階で、良く思われたいとか、認めて欲しいとかの感情が入る。

 それが入った段階で絶対に流れは乱れる、会話でも演奏でもそうだと思う。

 乱れた流れでは映像は浮かばない、相手には伝わらないと思うよ。


 視覚を重要視して進化した人間なら、言葉も音も映像化を目指す。

 会話も演奏も自分のイメージを表現する、相手に伝えたいイメージをね。

 その互いのイメージの世界が近づけば、お互いに気持ち良いんだろうね。

 そこにこそ突破口があると俺は考えた、言葉を持たない多くの仲間の影響で。

 どうやれば自分の気持ちを表現できるのか、そこに1つの答えがあったよ。

 ミホが教えてくれた、マリの同調で俺の映像に入ったミホが。

 ミホのあの二ヤ顔が、俺に自信をくれたよ・・共有するイメージなら伝わる。

 ミホはまだ同調の中でしか笑顔は出せない、でも同調で出せるなら絶対に出来る。

 俺は今までの経験で、それは確信してる・・だから絶対に出来る。

 沙紀が会話をするのも、笑顔を見せるのも・・必ず出来る。

 そして由美子が笑うのも、言葉を持つのも・・立ち、歩き、走るのも。

 俺は絶対に可能だと確信してる・・機能的な問題じゃないから。

 あの沙紀の暗黒の世界に、マリが連れて来た由美子を見たから。

 その由美子には、理想の設定など何も無い・・ありのままの由美子だったから』


私は笑顔で言った、隣の北斗が私に抱きついた、沙紀の母親の笑顔が嬉しかった。

リンダの強いブルーと、マチルダの輝くグリーンが私を見ていた。

久美子が嬉しそうに微笑んで、私は笑顔で返した。


「エース・・1つ教えて欲しいんですけど、沙紀の描写の方法を」とユリさんが薔薇で微笑んだ、私は笑顔で頷いた。


『まぁ・・聞くだけにして下さい、目指したら迷宮に入ります。

 沙紀の描写力・・今度のルミの試験でも感じるけど。

 俺は前回・・沙紀から貰ったのは、フーだけじゃないからね。

 それはお楽しみに・・きっと感動するよ、そのリアルさに。

 実は俺は沙紀と添い寝した朝、沙紀と映像に入っていたんだ。

 そして沙紀にアフロの絵を見せたんだよ、俺が描いたら間に合わないと思って。

 沙紀に見せてみた、その日の夜にある出来事があって。

 まぁ隠さずに言うけど・・ユリアを実像化したんだ、沙紀が描いてね。

 ユリカの無意識で持っていた、ユリアのイメージを実像化した。

 マリも手伝ってくれて、沙紀の描いた絵をプールに浮かべてね。

 ユリアがプールから浮き上がってきた時は、本当に感動したよ。

 生命の誕生のような感じだった、俺はそれで試したくてアフロを提案した。


 永井先生の公式本に載ってた、アフロの全体図と解剖図を見せた。

 永井先生のイメージを描いた、アフロの内側の絵まで見せたんだ。

 そして沙紀に俺の世界で実像化して動かしたいって、沙紀に言ったんだ。

 沙紀は笑顔で頷いて、2人でプールサイドに行った。

 沙紀がプールの天井を高くしてと言ったので、俺は高くしたんだよ。


 そして沙紀は解剖図を見て、俺にこう言ったんだよ。

 これを全部組み込めば、動くんだよね・・凄い人が描いたんだな~。

 沙紀はそう嬉しそうな笑顔で言って、瞳を閉じたんだよ。

 その時にはアフロの全体図も解剖図も、沙紀の中には入っていた。


 そしてゆっくりと浮かび上がってきた、巨大な実物大アフロの骨格がね。

 リアルな金属感のある骨格が、プールの中から浮かび上がってきた。

 そして全身が現れると、凄いスピードで内側が描かれていった。

 そのスピードに驚いて、俺は凍結して見てたよ。

 永井先生がイメージした内側が、実物大で立体的に描かれていった。

 素材感もリアルで、その輝きもリアルだったよ。

 沙紀は内側を描ききって止まった、確認したかったんだよね。

 沙紀はチェックをしたんだろう、逆光に翳して見たんだろうね。

 それで納得したのか・・外側を一気に描いた、本当に見事だったよ。

 そこまでの時間は約3分だったと思う、自分の世界を描くことがね。

 緻密で精密なアフロの内側を、リアルに描ききった。


 俺は永井先生に見せたいと思ったよ、絶対に喜んでくれると思って。

 沙紀は最後にアフロの肩にサインを入れた、そして笑顔でこう言った。

 偽者だって印を入れといた・・素敵な人の作品だから。

 沙紀は嬉しそうにそう言ったんだ、俺も嬉しかったよ。


 それを潜水艦に収納して、美由紀に託した・・美由紀は本当に喜んだ。

 心が躍っただろうね、沙紀の描いたリアルなアフロだったから。

 でも俺と美由紀の最大の驚きは、あのアフロ発進の時なんだ。

 アフロは自分で立ち上がる設定だった、その立ち上がる動きはゆっくりだった。

 内側を完璧に描いたから、動きまでリアルになった・・立ち上がる時間までね。

 美由紀は淋しかっただろうね、アフロを深海に沈ませる時は。

 でもね、美由紀・・沙紀はそんな美由紀の気持ちも分かっていたよ。

 この事は俺とマリと沙紀しか知らない、沙紀はマキがフーを送ってる時に。

 プールに出してくれたよ・・美由紀の為に、アフロⅡを描いてくれた。

 そのリアル感は深海に沈めたのを超えていた、俺はそれを潜水艦に収めたよ。

 肩にアフロⅡとSAKIと書いてある、大切な美由紀のアフロⅡをね』


私は最後に美由紀に笑顔で言った、美由紀は嬉しそうな笑顔で強く頷いた。


「やっぱり・・沙紀は解剖図から入れてたよね・・ヨーコのアフロとは別物だった」とシズカが笑顔で言って。

「前回のアフロは、ヨーコのアフロだったの!」とリョウが驚いて言った。


「自白しな、ヨーコ・・なぜヨーコが青猫なのかを」と恭子が二ヤで言った。

「楽しいな~・・本当に楽しい、色んな自白・・真実が出てきて」とホノカが二ヤでヨーコに言って、全員がヨーコに二ヤで言った。


ヨーコはウルウルで返していた、可愛い清楚ウルだった。


「私がヒトミの時に開発した技があって、その開発でヒトミの塔に入れました。

 それは相手のイメージに、自分のイメージを足せるというものです。

 もちろん、沙紀のようなリアルな描写はできません。

 その代わり、能力の設定は出来ます・・もちろん、限度はありますが。

 その限度の基準が今でも分からないから、破棄した失敗作も無数にあります。

 それをどう表現しようと考えてました、由美子の段階の時を感じて。

 私なりの自然な表現でと思って、辿り着いた答えが・・青猫のポケットです。

 今でも試行錯誤の状況で、成功例はあの下ネタ銃と言われる物だけです。

 能力の制限は奴が決めるんでしょう、下ネタ銃がOKだったのが不思議です。

 だから私はポケットに手を入れて設定します、自分の設定を。

 それが無理な物であれば、ポケットの中に現れません。

 だから玩具のドアとか、ホースとかを出して・・下ネタ銃頼みですね。


 小僧が私に覚醒を迫るのは、このポケットなんです。

 凄い力だよって、ニヤニヤで煽るんです・・でも本当に難しい。

 私は贅沢な能力を求めてしまって、ほとんどが却下されます。

 今・・必死に勉強中です、内側の勉強をしてます・・機械でも何でも。

 なぜ動くのかを知らなければ、私の道具の力は上げられないから。

 私が出したあのスプレー缶で現れたアフロは、私がTVで見たアフロです。

 だから平面的でしたね・・今凄く反省中です、沙紀に教えられたから」


ヨーコはウルの反省顔で言った、女性達は驚きながら二ヤを出していた。


「でも凄いよ、ヨーコ・・その力があるだけで」とミコトが笑顔で言って、ヨーコがパッと輝いた。

「ほら・・すぐそうやって、ポジティブヨーコを出す~・・それじゃあ進歩しないよ」とシズカが二ヤで言って、ヨーコはウルの反省顔に戻った。


女性達がヨーコの表情で笑っていたが、リンダだけは真剣なブルーの瞳でヨーコを見ていた。

私にはリンダの気持ちは分かっていた、私にもヨーコの力は貴重だった。

だからこそヨーコ覚醒にこだわったのだ、リンダは嬉しかったのだろう。

新たなる可能性を感じて、ヨーコの力に1つの希望を感じてるようだった。


年末の笑顔の中にある、深く輝くブルーを見ていた。


復活を示す楽園ブルーに、私は自分の復活を込めていた。


70年代はまた1歩進もうとしていた、その列車は加速していた。


時代という名の列車は後戻りは出来ない、上りだと偽って進む。


終着駅は後悔と崩壊という駅だった、それは下り列車だったのだ。


価値というレールは、歪みを正すこともなく走らせた。


それに乗るしかなかった、それが時代という列車なのだろう・・。


2011年も暮れようとしています、今年も大変な年でした。


大震災と原発事故という、大きな歴史の節目だったのでしょう。


皆さんはどんな年でしたか、来年はきっと良い年でしょう。


本年も私の拙い文章をご愛読いただき、本当にありがとうございました。


2012年が皆様に幸ある1年で有る事をお祈りして、2011年のUPを終了します。


暖かく楽しい年越しと、新年をお迎え下さい。


雪を懐かしく感じる、南国より・・感謝を込めて。






 

 


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