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      【冬物語第三章・・悪意の門④】 

一人だと感じると、辛さは倍増するのだろう。

相談できる相手など、そう簡単には現れない。

友人こそが財産である、年齢的な感想なのだろうか、最近は正直にそう思う。


リンダの言葉には辛さがあった、英会話の分からない私でもそれは感じた。

女性達はリンダの前に座り、リンダの表情を真剣に見ていた。


そして蘭が立ち上がり、リンダの前に座った。

女性達も多分リンダも、圧倒的に強い青い炎を感じていただろう。

ナギサも珍しい真顔で、アイコと2人で蘭の隣に座った。


同じ年に産まれたという、それだけで親近感を感じていたのだろう。

そしてリンダを好きになっていたのだろう、国境も言語も文化も超えた行動だった。


「リンダ・・駄目だよ、無力だなんて23歳で口にしたら。

 無力だろ、一人の人間で考えたら・・それは一人だと感じるからだろ。

 失礼だよ、リンダ・・私はリンダを友達だと思ってる。

 リンダの淋しさは・・少しかも知れないけど、感じてるよ。

 リンダ・・言ったら駄目だよ、その言葉は諦めに続いてる。

 無駄だという結論に続いてる・・無駄だと思ったときに、敗北が決まる。

 そう言うリンダでいなよ・・私はそう言うリンダの友になりたい。

 そう強く言うリンダの・・心の戦友になりたいんだよ。

 リンダ・・人は無力じゃない、次の由美子の世界で見せてやるから。

 私達全員で見せてやる・・由美子の世界が、カリーを超える事を。

 私達が見せてやるから・・無力だと言うなよ、リンダ。

 小僧は絶対に言わないよ・・ヒトミがずっと見てるから。

 リンダもそうだろ・・カリーがずっと見てるんだろ、リンダの生き方を」


蘭はリンダの前に座り、リンダの両手を握って強く言葉にした。

シオンは必死でリンダに伝えた、リンダは楽園ブルーを深めて蘭を見ていた。


「そう言う事だよ、リンダ・・私もリンダの心の戦友になるよ・・由美子の次の段階で、それを証明するよ」とナギサが華やか二ヤでリンダを見た。

「当然・・私も見せてやるよ、リンダの心の戦友になれるようにね」とアイコも二ヤで強く言った。


リンダはどれほどの喜びを感じたのだろう、後にリンダは私にこう言った。


【私は生意気に飛び級で進級したから、周りは年上ばかりだった。

 同じ歳の友達と呼べたのは、3人に出会うまではカリーだけだけったのよ。

 同じ年齢の同じ精神状態の仲間、それは本当に大切な存在なんだよね。

 私は限界ファイブにも中1トリオにも、憧れに近い感情すら持ったのよ。

 学問などよりも大切な者がある、それを感じて嬉しかったよ。

 蘭とナギサとアイコは・・大切な存在なんだよ、笑い飛ばしてくれるから。

 それはマチルダにも出来ない、私の悩みを笑い飛ばすのは。

 笑い飛ばして欲しい時もあるよね、その存在が持てただけで嬉しかった。

 同じ年に生を受けた、それは大切な繋がりなんだと思ってるよ】


リンダは嬉しそうにそう言った、私も笑顔で返していた。


リンダ3人を見て楽園ブルーを輝かせ、マチルダを見た。

 

「・・・・・・・」リンダは銀河の4人を見て、楽園最強二ヤで言った。

「じゃあ3人で、必ず教えてあげてね・・私ら23歳カルテットの方が上だって、生意気な銀河の奇跡の4人にね」とシオンがニコニコちゃんで通訳した。


「きっちりと教えてあげましょう」とナギサが二ヤで銀河を見て、蘭もアイコも二ヤで見た。


「絶対に引くなよ・・受けてやりましょう、お肌が曲がりそうな4人に」とマチルダが二ヤで返して。

銀河の3人が二ヤで頷いた、私は一人でニヤニヤを出していた。


「エース・・そのニヤニヤは?・・説明せよ」とリリーが二ヤで言った。


『今日・・特訓場所が出来上がった、俺の引き抜いたマキの境界線と。

 ルミが俺の世界に【悪意の門】という、最強の特訓場所を作ってくれた。

 明日・・リクエストに応えて、リンダとマチルダが入る。

 ルミは第一段階は、8人から10人が良いと言ったんだ。

 だから蘭とナギサとアイコ・・それに当然ユリカとリアンが入る。

 どうするリリー・・22歳で割って入るか?・・最初の挑戦者として』


私は二ヤで言った、リリーのリングが高速回転を始めた。


「昼間だろ、もちろん入るよ・・母さんを迎える、ウォーミングアップでね」とリリーが二ヤで返してきた。


『OK・・限界ファイブと中1トリオは、年末か正月だね。

 女性達は仕事が始まったら、予約を受け付けるよ。

 チームを組んで予約をして欲しい、8人から10人だから話し合って。

 当然クリアーした人は、その内容を漏らさないように。

 新年の最初の目標設定はそこにして、難解なルミの試験だよ。

 マリも協力してくれる、多数の参加を待ってま~す』


私は女性達に二ヤで言った、女性達も二ヤで返してくれた。


「ちょっと待ってよ・・マキのあの境界線に挑戦できるの?」と美冬が真顔で聞いた。

『うん・・あのまま抜いたよ・・マキでも行けたんだ、境界線ならすぐクリアー出来るよね~』と私は二ヤで返した。


「やばい煽りが入ってますね~・・相当に難しいですよね、あの境界線だけでも」とセリカが二ヤで言って。

「マキの方法は分かってるけど、自分でそれが出来るのか・・そこが勝負なんだ」とハルカがウルで言って。

「要は自分の命令、自分の設定に身を委ねられるか・・厳しい勝負だね」とミサキが真顔で言った。


『じゃあ・・ここで発表するよ、今回のこの境界線だけには。

 哲夫もエミもミサもレイカも・・そしてミホと沙紀も挑戦する。

 マリアは全く問題無い、元々モモカと同じ内側にいるから。

 この子供達の渡る方法を、俺は何よりも楽しみにしてる。

 多分・・何気に普通に渡るだろう、フーと同じように』


私はニヤニヤで女性達の気持ちを煽った、女性達もニヤニヤで返してきた。

マリが終始ニヤニヤで、やはり楽しみにしてるようだった。


「渡るだろうね・・哲夫とエミが厳しいかもね、他の4人には簡単だよね~」と律子が笑顔で言った。

「エミより哲夫じゃろうね・・哲夫は感じる方が強いからの~」と和尚も二ヤで返した。


「感じるほうが強いと難しい・・和尚様、詳細をお願いします」とミコトが笑顔で言った。


女性達が和尚を見て、和尚はそれで笑顔になった。

大きな円が出来て、和尚を女性達が見ていた。

和尚の横にはツネ婆さんと大ママが座り、反対側にサクラさんと沙紀の母親が座っていた。


「哲夫は持って産まれた感覚じゃない、得た物なんじゃよ。

 全員が知ってる、哲夫のあの事故で目覚めさせられた。

 天涯孤独になった子供には、その鋭い感覚が目覚める事があるんじゃ。

 遺伝子の中の何かが、危機を感じて目覚めさせるようにな。

 哲夫は小僧がいなかったら、それを制御することは出来なかっただろう。

 小僧は哲夫と出会って、あの口癖を使うようになった。

 感じたら伝えろ・・これは小僧が哲夫に言い続けた言葉なんじゃよ。

 他の者に言う時と、哲夫に言う時は意味が違うんじゃよ。


 哲夫は事故で目覚めた感覚が、強過ぎたんじゃよ。

 防御的な感覚・・聴覚や嗅覚が研ぎ澄まされた、視力も両眼2.0以上ある。

 だから感覚が強すぎて、生活の上では邪魔だったんじゃ。

 強過ぎる感覚は・・人を萎縮にさせたり、積極性を奪ったりする。

 ユリカもマリも、子供の頃は大変じゃったろうね。

 小僧は哲夫で向き合った・・小僧は小児病棟で、沢山の経験をしたからの。

 そして哲夫に言い続けた、感じたら伝えろと・・そう言って取り組んだ。

 哲夫は伝え続けた・・例えば、遠くの音が聞こえると言うと。

 小僧は何時と決めて、自分の部屋から哲夫に話しかけた。

 それを哲夫が集中して、施設の部屋で受け止めて書き残す。

 そんな実験を重ねたんじゃよ・・そしてその結果で、小僧は判断した。

 持ってて良いんだと判断したんじゃ、それから哲夫は寺に通った。

 毎日小僧と瞑想した・・その期間3ヶ月、それで到達するんじゃ。

 制御できる世界に感覚を入れる、普段は普通レベルで過ごすんじゃ。


 哲夫は今でもすぐに使える、例えば今ここにモモカがいて泣いたら。

 哲夫はすぐに飛んでくるよ・・哲夫はその感覚のスイッチを悲しみにした。

 境界線では感覚は開放されるじゃろう、鋭いというのはマイナスなんじゃ。

 だからユリカとマリは苦労したじゃろ、リンダもマチルダもそうだよな。

 エミも当然鋭い感覚を持っている、だが・・他の4人の少女。

 それは鋭いとか、鈍いとかで判断できる世界にいない。

 沙紀は視覚で捉える物を、全て自分の描写に出来るじゃろう。

 だから偽りに気づく、それに沙紀には映像的な介入は出来んじゃろう。

 ミサとレイカは純粋な好奇心でしか、境界線を見ないじゃろうから。

 自分に興味が無ければ、あっさりと渡ってしまうだろう。

 そして小僧が最も楽しみにしてるのが、ミホじゃろうな。

 ミホは絶対に境界線を否定する、無き物だと言って渡るじゃろう。

 ワシも楽しみじゃよ・・一人一人のやり方が知りたいからの~」

 

和尚は笑顔で言った、女性達は笑顔で頷いた。


「・・・・・・」リンダは和尚を見ながら笑顔で聞いた。

「和尚様は境界線を、どう解釈されていますか?」とシオンも和尚を見てニコちゃんで、リンダの言葉を伝えた。


「それが問題なんじゃよな、ワシと小僧とシズカは見解が違うんじゃよ。

 ワシは経験と仙人和尚との話で、生命の何かしらの境界線だと思っておる。

 それを感じさせる為に、奴が見える映像として出したのが光の壁。

 これ以上は踏み出してはいけない・・そう伝える為にな。


 【ただ視覚的効果を狙ってる】・・この部分は3人とも同じ見解なんじゃ。


 シズカは契約を表現してる、進化の歴史の契約の境界を表現してる。

 そう思っておるよの~・・作為の契約、騙されて奪われた能力。

 【詐欺師の契約書】と表現した、律子の言葉を深めておるよの。

 確かにその部分があるんじゃよ、マリや沙紀を見るとそう感じる。

 ヒトミは凄い力やった・・何がどうとは説明できぬが。

 感じさせる力は強烈だったよ、動かないヒトミがね。

 由美子も凄いんじゃろう・・リンダ・・カリーも凄かったじゃろう?

 シズカは得た事に対する、リスク・・契約条件だと思っておるね。

 本来ならもう持てない能力を、得たまま産まれたので・・機能が制御された。

 マリや沙紀は・・言葉や文字の理解、伝える手段を奪われた。

 ヒトミや由美子は・・全てを奪われた、そう解釈している。


 この裏付けはシズカと小僧は取っている、小児病棟で確信できるまでやった。

 本当の機能障害の子と触れ合ってる、真剣にリハビリにも付き合った。

 そして2人が出した答えは・・【マリは機能障害じゃない】なんじゃ。

 この言葉が・・今の場所にマリを連れ出した、マリが重要じゃったから。

 シズカはカリーの母親の言葉を感じ、ヒトミを母親に抱かせたかった。

 しかしその時にはまだ出来んかった、リアルなイメージで抱かせる事が。

 それは律子にも小僧にも出来なかった、律子はその時シズカに言った。

 マリが成長して自分の力を制御できれば、イメージでリアルに抱けるかも。

 律子のこの言葉で、シズカは本気になった・・マリと向き合った。

 そしてマリを好きになり・・愛した、自分の考えも文字も教えた。

 その強い愛情が連れて来た・・この段階に、マリを連れ出した。

 マリは凄い少女じゃよ、自分で自分と戦った・・その戦術はミホで感じた。

 マリならリアルに感じたじゃろう・・ミホの強さを感じていたよの~。

 マリが大切な姉が言葉にしない、悔しさを感じん訳はないよの~。

 その姉の悔しさに出した答えが、シズカの愛情に返したマリの愛こそが。

 沙紀の世界に登場した由美子なんじゃよ、北斗に抱かせた由美子なんじゃろう。


 そして小僧の見解は、まるで違う・・それは空想の世界に近い。

 しかし小僧の感じる空想の根源は、モモカとマリアの存在なんじゃ。

 ワシでもそれは分からない、小僧はワシに隠し事を出来るからの。

 その力は律子対策で始めて、ワシを経由して・・マリで上げて。

 ユリカで完成させた・・しかしまた上げようとしとる、ルミを感じてね。

 小僧の口癖・・先入観になるから、俺は言わなかった。

 それこそが本質かもしれんね、人は強くイメージさせられてる。

 満足も幸せも、本来は心が感じる事よの・・しかし物質的な満足を感じさせる。

 そして無力感も絶望も同じじゃよ・・リンダが小僧に出会った意味。

 それはそこに有るんじゃろうね、リンダと小僧は収め方が違う。

 リンダがカリーを自分の中に収めた方法と、小僧がヒトミを収めた方法がね。

 もちろん・・どちらが良いとか悪いとかの話じゃない。

 ただ・・小僧はリンダに伝えたいんじゃろう、無力感を感じる意味をね。

 小僧こそがそれを感じ続けてきた、小児病棟で仲間達を見送る度に感じた。

 無力感を感じてきて、小僧は辿り着いた・・それが小僧の想定の根源。

 脳の策略・・そう表現した言葉じゃろう、そしてそれを理解できない人間。

 心に従う2人の女・・蘭とナギサの心の言葉こそが、小僧の本心じゃろうね。

 一人だと感じるから、無力感を感じる・・正にそうなんじゃよ。


 リンダ・・次の段階に入れ、リンダは一人じゃない・・マチルダもいる。

 そしてここの女性達も、リンダを信じてる・・それは感じてるよの。

 リンダよ、もうお前は一人じゃない・・カリーの時に感じた無力感。

 それと同じ物を・・小僧も美由紀も沙織も、限界カルテットも。

 律子も哲夫も・・そして誰よりもマリは感じておる、しかし次を睨んでる。

 次こそはチームで戦うと誓っておる・・女性達も今回で感じただろう。

 自分の無力感を痛感して、限界カルテットと美由紀と沙織の気持ちも感じた。

 そして全員が感じた・・リンダのカリーに対する後悔と無力感を。


 由美子で果たす・・それが全員の強い意志じゃよ、ミホも沙紀も含めて。

 カリーとヒトミの想いは、必ず由美子に繋ぐ・・その橋渡しをする。

 それがこの最強チームの願いなんじゃよ、求めるべきは結果ではない。

 小僧が求めるのは、どんな時でも1つじゃよ・・それを全員が感じておる。

 小僧の求めるのは・・由美子の楽しいだけなんじゃよ・・リンダ」


和尚と律子は、リンダの精神的な疲労を感じていたのだろう。

和尚の言葉には問答と同じ熱があった、その瞳は経験を映して強かった。

シオンは必死で伝えた、リンダは楽園ブルーに最強の輝きを湛えて、美しい笑顔を見せた。


女性達もそれで笑顔になった、蘭の満開とナギサの華やかが咲き乱れた。

リンダは女性達を笑顔で見た、女性達もリンダに笑顔を向けた。


「アリガトウ・・ワタシモ・・トモニタタカウ」とリンダは笑顔で強く言った。

「そうこなくっちゃ、楽しくないよね~」と蘭が満開二ヤで言って、女性達が笑顔で頷いた。


「リンダ・・いらないものは、置いて帰りなさい・・重たい本を持ったのだから」とユリカが日本語で言った、完璧な深海の言葉だった。

ユリカの言葉が静寂を連れて来て、リンダは一筋の涙を流して頷いた。


「さっ・・リンダ、飲もうよ・・楽しく・・今年に感謝して、素敵な出会いに感謝してね」とリアンが極炎笑顔でリンダの肩を抱いて言った。


最強の炎と水のコンビネーションで、一気に宴会の熱が上がった。

リンダも笑顔でグラスを飲み干して、リアンがニヤで注ぎ足した。

マチルダもマリの隣で、嬉しそうに限界ファイブに囲まれていた。


通路の方から、哲夫が笑顔でやって来た。

私は哲夫を手招きして、リンダの横に座らせた。


「小僧・・マダムと松さんが来たから、4人は寝たし・・これ沙紀から」と笑顔で紙のケースを渡した。

『サンキュー・・助かったよ、哲夫』と笑顔で受け取って。


『シオン・・リンダに哲夫を紹介してね』と笑顔で言って立ち上がった。


「リンダ・・テツオボーイだよ・・ウルのスペシャリストだよ~」とリアンが紹介した、哲夫は当然ウルを出していた。

「オ~・・ウルボ~イ・・カワイイネ~」とリンダが笑顔で哲夫を抱きしめた。


「人生最良の日じゃ~」と哲夫がリンダに抱かれて叫んだ、それで大爆笑が起こった。


私は笑い声を聞きながら、沙紀の絵を見て人を集めた。


律子とツネ婆さんと大ママに、勝也にキングに徳野さん。

それに北斗にミチルとマキを集めて、マキに紙のケースを手渡した。

ユリさんもユリカも来て、限界ファイブも中1トリオも揃って、ワクワク笑顔で待っていた。


マキは緊張しながらケースから絵を出した、ツネ婆さんだけマキの表情を不思議そうに見ていた。

マキは凍結して大粒の涙を流し、その絵をツネ婆さんの前に置いた。


圧倒的な迫力の伝説の真希さんが、美しい笑顔で幼いマキを抱いて立っていた。

少し時代が戻った西橘通りであろう、背景にはぼんやりとネオンサインが描かれていた。

そして名物の柳の木が、全て満開の桜に変わり、桜の花びらが雪のように降っていた。


真希さんの美しさは絶品で、溢れ出す輝きまで表現されていた。

幼子のマキは母親を笑顔で見ていた、その喜びが鮮明に表現されていた。


私は初めて沙紀の絵に強い迫力を感じていた、その想いの強さに感動していた。

沙紀はマキに感謝していたのだろう、マキの物語が嬉しかったのだろう。

その溢れ出す想いを、全て描写と色彩で表現した。


ツネ婆さんは完全に凍結して、絵から離れられなくなっていた。


「本物だよ・・これぞ真希・・ありがとう、沙紀」と律子が言って泣いていた。


「沙紀なのかい!・・沙紀が描いてくれたのかい・・ありがとう、沙紀」とツネ婆さんは震えながら泣いていた。

号泣する大ママがツネ婆さんを抱いて、絵の真希さんを見ていた。


「素晴らしい娘さんだね・・本当に素晴らしい、内側から肉付けしてる・・輝きまで描いて・・見てもないのに」と勝也が沙紀の父親に笑顔で言った。

沙紀の父親も笑顔で頷いて、沙紀の絵を見ていた。


「完璧ですよね・・真希そのものです、嬉しかった」とキングが俯いて泣いていた。

北斗もミチルも徳野さんも頷いて、嬉しそうに泣いていた。


「民子と松に見せてくるよ・・小僧、これは貰っていいのかいの~」とツネ婆さんが笑顔で言った。

『もちろん・・沙紀にお礼を言って、マキとツネ婆さんに贈ったんだよ』と笑顔で返した。


ツネ婆さんが笑顔で立ち上がり、私はケースに絵を戻してマキに渡した。

マキがツネ婆さんを案内して、TVルームに向かった。


「さぁ飲むぞ・・今夜は最高の気分だからな」と勝也が笑顔で言って、オヤジ達が笑顔で返した。


宴会は盛り上がり、私は1行流し決戦を延期すると若手女性に伝えた。

女性達も笑顔で頷いて、大きな円になってジンと豊も入れて話していた。

その円に限界ファイブとマリと中1トリオが加わって、爆笑モードに入っていた。


私は嬉しそうな北斗と沙紀の母親の間に座った、北斗は笑顔で返してくれた。


「小僧ちゃん・・私と主人に話してよ、今回の沙紀に対する本題は何だったの?」と沙紀の母親が微笑んだ。

「それは聞きたいね~・・凄い変化が来るとは、昨日感じたよ」と沙紀の父親が笑顔で言った。


『2人に期待されると、沙紀の重圧になるから言わなかったけど。

 もう大丈夫だから、自信があるから言いますね。

 でも過度な期待を沙紀に対しては持たないで下さい、沙紀が焦るから。

 両親の嬉しいを感じるのが、沙紀の1番の嬉しいですから。

 今からの沙紀は自然な流れが重要です、俺はそう思ってますから』


私は2人に笑顔で言った、2人も笑顔で頷いた。


『今回は少し冒険してでもやりたかった、それほど重要な事でした。

 それは・・沙紀の言葉の復活です、今のマリのような。 

 必ず沙紀は取り戻します・・だからお2人も準備をお願いします。

 あの時の約束の準備を・・来年の春を目指してやりましょう。

 沙紀を学校に通わせましょう、俺は絶対に大丈夫だと思ってる。

 それも普通のクラスで大丈夫、沙紀なら絶対に乗り越えると思います。

 沙紀に友達を沢山作って欲しい、それで傷つく事もあるでしょう。

 でも・・それでも学校を感じて欲しい、沢山の思い出を作って欲しい。

 今そう思いました・・リンダとすぐに打ち解けた、同じ歳の3人を感じて。

 沙紀は必ずそのレベルに到達する、マリが常に沙紀の心の側にいる。

 大丈夫です・・沙紀の心には寄り添っています、愛する両親がいます。

 そして最強の姉が2人・・マリとミホが、沙紀の心には存在しますから』


私は笑顔で強く言った、沙紀の両親の喜びの笑顔が嬉しかった。


「ありがとう、小僧・・了解だよ、俺も沙紀を信じて背中を押すよ」と沙紀の父親が笑顔で言った、母親も笑顔で頷いた。


「小僧・・アドバイスしなよ、しないと時期が遅れるよ」と律子が二ヤで言った。

『律子がすれば良いのに・・俺に言わせて、楽しもうと思って~』と二ヤで返した。


「何かな~・・沙紀の言葉を加速させる方法でも有るの?」と北斗が笑顔で言った。


『加速させるんじゃなくて、沙紀の望みを叶えれば良いんだよ。

 沙紀の望みは・・兄弟が欲しいんだ、弟か妹がね。

 それが最大の望みなんだよ、美由紀でもそうなんだけど。

 美由紀は自分の存在で、両親が自分以外の子供を持たない。

 そう思ってたんだよ・・事実はそうじゃなかったんだけど。

 美由紀は5歳で事故にあった・・それでもそう思ってしまう。

 それが当事者の気持ちなんだよ、ヒトミや由美子は違うけど。

 沙紀は本当はそれを望んでる、俺にも何も言わないけど分かるよ。


 もしそれが産まれたら、沙紀は愛情を注ぎ込むだろうね。

 それにより沙紀は自然に変化する、愛する幼い存在に触れて。

 待望の弟か妹の誕生だからね・・まぁこれは授かり者だから。

 出来るかどうかは分からないけど、無理に出来ない方法をとらないで。

 俺的にはそんな表現かな・・沙紀の心の代弁としては。

 自然に任せて欲しい・・それが沙紀の想いだと思います。

 沙紀は絶対に何かを感じるから、それだけで嬉しいと思いますよ』


私は沙紀の両親に二ヤで言った、周りの全員が二ヤを出した。


「簡潔で良い説明だったですね・・さすがエースですわ」とユリさんが薔薇で微笑んで。

「中1でそこまでの表現をする、怖い息子だよ」と勝也が二ヤで言って。

「美由紀の母親には、もっとストレートに言ったよ・・怖い奴だよ」と言って律子が笑った。


「ありがとう、小僧ちゃん・・そうしてみるよ、沙紀も感じてくれると思うから」と沙紀の母親が笑顔で返してくれた。

父親は照れた笑顔を出し、全員の二ヤに拍車をかけていた。


「エース・・ヒトミと由美子は何が違うと思うの?」と北斗が真剣に聞いた。


『ヒトミのは確信してる・・由美子も同じだと感じてる。

 ヒトミも由美子も、追求してるんだよ・・時間が有り余ってるから。

 体が動かせないんだから、起きてる時間はそれに費やすんだ。

 それは・・なぜ自分の体が動かないのか、その追求に没頭してる。

 ヒトミは確信的にそうだと言ったんだけど、動く指令は脳から出てる。

 体を動かす指令はね・・それを確認する段階まで、突き詰めていた。

 何かがその指令を遮る、その何かが分からないんだ。

 医学的には指令を出してるのかも分からない、でもヒトミは出せると言った。


 ヒトミや由美子は怖いんだよ、遺伝子じゃないかと思ってるから。

 弟や妹が出来たときに、同じだった時に・・自分は何もしてやれない。

 そう思ってる・・俺はそれは違うとヒトミには言ったけど。

 ヒトミの心はそうだったよ、もちろん誰にも話さなかったけど。

 北斗の問いかけだから話すんだ、ヒトミが自分の時を削って挑戦したのは。

 次に産まれるかもしれない、自分の弟か妹に対する姉の想いだった。

 ヒトミの母親にこの話をしたのは、ヒトミの葬儀の翌日。

 母親が俺を訪ねて来て、俺は色々と自分の感じた事を話した。


 小3だったから、自分の思ってる事をあまり言葉に出来なかった。

 俺は純粋にそう思ってたんだ・・今でもそうだけど。

 ヒトミや由美子は選ばれた人間だと思う、それを克服できる強さを持つ。

 遺伝子なんかじゃない、原因不明なんかじゃない。

 原因という考えこそがずれている、あの病の根源から離れている。

 俺はそう思ってる・・俺は由美子がそれを捨てて、何かを戻せるなら。

 力など捨てて良いと思ってる、おいおい北斗には話すけど。

 俺は由美子に対しての想いは1つだよ、微かな1歩で良い。

 健常者と呼ばれる人間からすれば、感じないほどの変化で良い。

 小さな変化を積み重ねる・・それがいつか大きな変化になると信じてる。


 これはミホにも設定してるけど、俺は由美子にも設定してる。

 ミホには15歳までに自我を取りも出させる、これは目標じゃない。

 俺の中の強固な設定として、そうしてるんだよ。

 そして俺は由美子にも15歳を設定してる、必ず15歳までに。

 あと10年で・・由美子の伝達を何か復活させる、言葉でも文字でも。

 ゼスチャーでも何でも良い、俺はそれを復活させると設定してる。

 もちろん来年の1月に勝負するのは・・言葉の復活の第一段階。

 俺は10年という設定で挑んでるよ、俺が23歳になるまで。

 北斗が律子の歳になる頃、蘭がユリさんの歳になる頃までに。

 そう設定してるよ・・俺は自分の決め事は守る。


 だから由美子の運動部位にも刺激を与える、その時が来るんだから。

 筋肉が足りなくて動かないなんて、そんな結果にはさせない。

 車椅子でも良い、這うだけしか出来なくても良いんだ。

 俺は由美子自身で体を移動する・・その夢に挑戦させたい。

 ヒトミと由美子の同じ夢・・移動するという行為を感じさせたい。

 医療機器なんて、全部外せる・・自分で食べて、トイレにも行ける。

 俺はそれを明確に映像化してる、誰にも見せないけどその映像はある。


 その映像を描いてくれたのは・・沙紀なんだよ、北斗。

 沙紀は一気に描いてくれた、1枚目だと言って・・ハイハイする由美子を。

 それがどういう事かは分かってるよね、俺は沙紀が描けるのなら。

 無条件に信じる・・そしてモモカの言葉も、無条件に信じる。

 モモカは由美子と一緒に学校に行くと言った、完璧な春風の囁きで。

 俺はこの言葉に何ら疑問を持たない、疑問の入る余地が無い。

 俺は今までモモカの言葉に、疑問を持った事など1度も無い。

 モモカの言葉で・・真実でなかった言葉は、何一つ無いんだから。


 あと10年だよ、北斗・・楽しい10年を過ごそうね。

 それまでは絶対に由美子に諦めを許さない、その責任者は・・哲夫だぞ。

 分かってるな、哲夫・・あと10年だ、10年しかないんだぞ。

 10年後に見せてもらう・・お前が探し出した、優しさの意味を。

 俺は由美子の状況は、哲夫の意見を尊重する・・段階の勝負も。

 俺は一人では出来ない・・哲夫、よろしく頼む。

 4月から・・子供の世界を引き継いだら、今度は由美子が優しさの意味だよ。

 感覚を全て使えよ、哲夫・・俺は2度目の引き継ぎを、お前にする。

 今回はこう言うよ・・俺を助けてくれよ、哲夫・・俺一人じゃ無理なんだ。

 お前の助けが必要なんだ、心の戦友である・・哲夫の助けが』


私は哲夫を見ながら強く言葉にした、哲夫はリンダの横で私を睨んでいた。


「テツオ・・ドウスル?」とシオンの通訳を聞いたリンダが優しく囁いた。


「しょうがね~な~・・小僧一人じゃ心配だから、俺が手伝うよ」と哲夫は必死で二ヤを出した。


「よし・・俺が聞いた・・哲夫は俺に誓ったんだよな」と豊が真顔で哲夫に言った。


哲夫は喜びの笑顔を出して、豊に向かい深々と頭を下げた。


「哲夫、良かったな・・小学校の卒業証書を貰えて」と勝也が笑顔で言って。

「豊の卒業証書だから、絶対に汚すなよ」と律子が強く言った。


「はい・・父さんと母さんに、約束します・・小僧の実弟の、哲夫として」と哲夫は強く言って2人に頭を下げた。


静寂の中、私はヨーコの喜びの涙が嬉しかった。


感覚の男、哲夫・・その鋭すぎる感覚が復活する。


哲夫が制御の方法を見つけた時に誓った、誓いの日が来ていた。


ヒトミの想いに挑戦する時に復活させる、そう哲夫が強く言った。


復活の誓いの日だった、女性達は沈黙して哲夫の強い瞳を見ていた・・。



 

 

 

 

   



 

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