【冬物語第三章・・悪意の門②】
あの時だった・・そう思う時がある。
その時に自分の中で決めたのだと、そう確信的に思える時が。
未来など分からないが、未来の自分にメッセージは残せる。
そのメッセージを受け取ると、なぜだか喜びが溢れ出す。
リンダとマチルダの登場で、全員が楽しそうに話していた。
昼食にユリカが蕎麦をご馳走してくれて、リンダもマチルダも嬉しそうに食べていた。
『マチルダ・・今回はつまでいるの?』と笑顔で聞いた。
「3日に新年パーティーがNYであるから、2日までにはNYに帰りたいから・・明後日の便で帰るね」とマチルダが笑顔で言った。
『了解・・今夜は忘年会で皆揃うから、喜ぶよ・・リンダに明日の夜は2人で海に出ようって言ってね』と笑顔で返した。
「・・・・・・」マチルダが英語でリンダに言った。
「エース!・・サンキュー」とリンダが楽園笑顔で返してくれた。
「夜の海は通訳はいらないの?」とマチルダがウルで言った。
リンダがマチルダのウルを見て、ユリカを二ヤで見た。
「・・・・」ユリカがマチルダのウルの意味を伝えた。
「ノー・サンキュー・マチルダ」とリンダが二ヤで言って、マチルダがウルで頷いた。
「もう、リンダったら・・でも良いや、こんなに寒い時期には・・マンタちゃんはいないから」とマチルダが二ヤで言った。
「でも・・マチルダ姉さん、今はオキゴンドウちゃんがいます・・鯨の」とマリが二ヤで言った。
「オキゴンドウちゃん」とマチルダがウルで言って、全員がマチルダのウルで笑っていた。
『さて・・マチルダ、行ってみる?・・境界線を見に』と二ヤで言った、ユリカもマリもルミも2人に二ヤを出した。
「まさか!・・映像に取り込めたの?」と驚いてマチルダが言った、私は二ヤで頷いた。
ユリカがリンダに通訳して、リンダの驚きの表情を見ていた。
リンダがマチルダとルミの手を繋いで、二ヤで私を見た。
私がテーブルを動かして、ユリカがルミとマリで手を繋いで、私がマチルダとマリと手を繋いだ。
『マリが誘ってね、管制室だよ』と二ヤで言った、マリも二ヤで頷いた。
私が目を閉じると、管制室にルミの背中が見えた。
ルミと2人で話していると、4人が笑顔で入ってきた。
「ヨクデキマシタ・・エース」とリンダが日本語で言った、私は笑顔で返した。
「同調だと・・かなり言葉が進みますね」とマチルダが笑顔で言った。
「能力が開放されますから、真剣に勉強してる事はスムーズに出ますよね」とルミが笑顔で返した。
ユリカがリンダに通訳して、リンダはルミを見て嬉しそうに頷いた。
私は笑顔で5人を連れて、沙紀のおとぎの国のドアを開けた。
ユリカもリンダもマチルダも驚いて、マリは嬉しそうな笑顔で見ていた。
「パーフェクト・・ビューティフー・・サキ」とリンダが笑顔で言って。
「凄いリアリティだね・・凄いよね~、沙紀は」とマチルダが笑顔で言って。
「何も教えない・・意地悪エース」とユリカが二ヤで言った時だった。
「フーー!」と叫んでリンダがフーを抱き上げた、フーは嬉しそうに抱かれていた。
マチルダが交代でフーを抱いて、フーの頬にスリスリをしていた。
私はBMWに4人を乗せて、ユリカが楽しそうにハンドルを握った。
「マリ・・どっちにする?」と二ヤでバイクを見て言った。
「マキ姉さんが乗った、KAWASAKIで」とマリが二ヤで言った。
『それはZⅠだよ・・900㏄のフルチューンだからね』と二ヤで返して、私がCB750に乗った。
マリが先頭を走り私が追走して、その後ろをBMWが付いて来た。
トランプ柄の道をマリは爽快に、前傾姿勢で飛ばしていた。
その横顔が楽しそうで、私は二ヤでマリの後ろを走っていた。
バックミラーから見える、運転席のユリカも助手席のリンダも楽しそうだった。
【眠れる森】を抜けて、直線でマリに離された。
パワーの違いを感じていると、右前方に光の壁が見えてきた。
光の壁はかなり高い位置まで上がり、ルミの門も壁も見えなかった。
マリは速度を落とし、体を起こして光の壁を見ていた。
路肩にマリがバイクを止めて、私が横に止めてユリカがその後ろに止めた。
女性達は沈黙して歩いていた、緊張感を背負って歩いているようだった。
光の壁は拒絶の色を示して、黄色く発光して目の前に立っていた。
マチルダの表情が真剣で、マチルダはフーをルミに渡した。
ルミは笑顔で易々と境界線を歩き、光の壁を通り内側に入った。
「エース・・そこで私達を見てて、最後に来てね」とユリカが真顔で言った。
私は笑顔で頷いた、4人は緊張気味に4m程の間隔を取った。
ほぼ4人同時に1歩目を踏み出した、2歩目が出るまで少しの時間があった。
リンダが最初に踏み出して、ユリカが続いた。
マリもマチルダも、必死に何かと闘っていた。
私は4人の背中を見ていた、リンダが光の壁に入り必死で抜けた。
そしてユリカが入り、マリに続いてマチルダも抜けた。
私はかなりスムーズに抜ける事が出来た、チクチクの痛みは残っていた。
私が光の壁から抜けると、リンダは門に両手を突いて俯いて泣いていた。
その背中が微かに震えていて、ユリカが私を見て促した。
マチルダは門を見て完全に凍結していた、マリも必死のニヤをルミに出していた。
『リンダ・・ルミの試験・・【悪意の門】だよ』とリンダの肩を抱いて優しく囁いた。
「アクイノモン」とリンダは言って、門を見上げた。
その顔はどこか嬉しそうだった、背中はまだ震えていた。
「やっぱり、ルミの製作品だね・・【悪意の門】か~」とマリも巨大な門を見上げた。
「最強の試験場所だね・・ありがとう、ルミ」とユリカが笑顔で言った、ルミも笑顔で頷いた。
「エース・・明日、私を挑ませてくれよ・・この門に」とマチルダが強く叫んだ。
マチルダは真剣だった、リンダに近付きたいとの想いだったのだろう。
ユリカがリンダにマチルダの言葉を伝えた、リンダは私を見た。
「エース・・ワタシモ・・オネガイ」とリンダが美しい真顔で言った。
『OK・・明日、リンダ・マチルダ・蘭・ナギサで挑んでもらう・・もちろん、ユリカも入るよね?』と二ヤで言った。
「当然・・私も入るよ」とユリカが爽やか笑顔で言った。
「ルミ・・解説してよ、この門のクリアー条件を」とマリが笑顔で言った。
ユリカがリンダの横に通訳で立った、リンダもマチルダも真剣な表情だった。
「これは私が感じた世界を克服する為に、ある時に引き抜いた扉です。
それに私なりの設定を加えました、だから開く事から難題にしてあります。
門の扉ですから、当然鍵穴がどこかに有ります。
もちろん鍵も境界線から、この門の間に隠してあります。
鍵を手にすると、敵が登場します・・かなり強力な敵です。
武器を考えて持って入って下さい、そしてその敵の妨害を防いで扉を開くと。
私の考案した練習場があります、そこで精神的な訓練は出来ます。
明日挑戦されたら分かると思いますが、奴の設定を私が想定してます。
段階は3段階です・・1段階をクリアーしたら、自動的に2段階に入ります。
ベストな人数は、第1段階なら8人から10人でしょうね。
最終第3段階だけは、1人での挑戦で設定してあります。
楽しんで下さい・・私はこの境界線内なら、どこからでも見えますから」
ルミは笑顔で言った、その言葉で女性達にも笑顔が戻った。
「・・・・・・」リンダがマチルダを見て、ルミに英語で熱く言った。
「映像を持つ者になら、この門を誰にでも転送させれるの?」とマチルダがリンダの言葉を通訳した。
「それは無理なんです、境界線が必要なんです。
この門を引き抜いた時に、最初は私の世界にも入りませんでした。
私は焦って順番を間違いました、だから次に境界線を抜きました。
その方法は上手く言葉で表現できません、私は今回驚きました。
小僧の策略を感じて、その心の準備を感じて・・驚愕しました。
小僧はマキさんがここまで来た時に、マリに鮮明に入れろと言われました。
その言葉を受けた瞬間に、小僧はこの世界ごと引き抜いた。
小僧と沙紀の信頼関係ですよね、沙紀ならば何度でも描ける。
小僧はそう思って世界ごと引き抜いた、もちろん動く登場人物は抜けません。
それは別の世界にあって、沙紀は色々な世界を持ってるのでしょうね。
それで奴は焦った、だからこそ海底都市の扉を閉ざした。
どうしても失敗させて、境界線を渡したくない・・そう思ったのでしょう。
敗北は何も得られないという事・・この世の常ですよね、悪意の設定。
勝者と敗者はそれで決定される、小さな子供の世界でも・・戦争でも。
奴はその設定に従順です、枠からはみ出せないただの回路だから。
小僧は沙紀の世界ごと引き抜いた、そしてそれをキープしました。
ここが小僧のしたたかさ、決定しなかったんです。
決定すれば必ず入るという訳じゃないんです、その選択基準が分からない。
でも2つをキープすると、勝者と呼ばれる者ならば1つは得るんです。
そして小僧は驚愕の事をやってしまう、キープは2つしか出来ないんです。
そのどちらを残すかは、奴が選択する・・それは奴が記憶の担当者だから。
小僧は【時の羅針盤】をキープしました、2択の選択のもう1つとして。
これでは境界線を渡すしかない、小僧は絶対にニヤニヤでしたね。
沙紀が戻ってフーを見た時に、小僧にフーをよろしくと笑顔で言いました。
本当に素敵な関係だと思いました、沙紀は喜んでいたんですね。
これだけリアルに仕上げた世界を盗られても、喜びを感じていた。
自分の世界を小僧が好きになってくれた事が、嬉しかったんでようね。
自分はもう一度描けば良いんだから、そう思ったんでしょう。
小僧と沙紀のこの信頼関係が、境界線を引き抜けた・・私はそう思います。
今回は信頼関係が問われる・・小僧が言っていた、この言葉が正解でしたね。
小僧は奴に見せ付けました、奴には想像も出来なかった。
小僧が沙紀の世界ごと引き抜いた時に、沙紀が喜びに溢れたから。
奴はそれで混乱して、最終手段に出ました・・パニックでしたね。
今回の世界の成功は・・沙紀の純粋な心が勝ち取りました。
マサル君も沙紀を見て、喜びを感じて集中が上がった・・全ては沙紀でした。
沙紀の純粋が全てを超えた・・私も本当に嬉しかったです。
同じ病と言われる・・最高の妹に出会えたから、未来に微笑む妹に」
ルミは一気に語った、ユリカが喜びの笑顔でルミを抱きしめた。
マリは嬉しそうに泣いていた、私はその日の夜にマリに聞いた。
マリでも初めて聞いたのだと言った、ルミの心の言葉を聞いたと。
それが嬉しくてマリは泣いていた、マリの足元にフーが来てマリを見上げていた。
マリは喜びの笑顔になって、フーを抱き上げた。
リンダもマチルダも、嬉しそうな笑顔だった。
「私はリンダさんに、受け取って欲しい物があります」とルミが笑顔で言った。
ユリカがルミを笑顔で見て、リンダの前に連れて行った。
リンダはマチルダの通訳で、笑顔になってルミを見た。
ルミはリンダに向けて右手に拳を握り、目を閉じて拳を開いた。
圧倒的な迫力がルミの背中に示され、ルミは強烈な集中に一瞬で入った。
リンダもマチルダも何度目の凍結だったろう、ユリカでさえ凍結していた。
ルミの右手には部厚い古びた本が映像として出でいた、歴史を感じる皮で表装された本だった。
リンダとマチルダは凍結してそれを見ていた、ルミは笑顔になった。
「リンダさん・・私の父は、○○大学の○○です。
私が5歳の時に、父に連れられて南米を旅しました。
その時にある遺跡である事があって、私の感性は開花したんです。
その時にこれを渡されました、いつか繋ぐべき人間に繋いでくれと。
そう言われました・・私にはとても理解不能な難解な本です。
経験を積まないと・・世界をリアルに見ないと理解できない。
そんな本だと思っています、私はこれはリンダさんに繋げと言われた。
そう確信的に思っています・・それは父の話を聞いてからです。
父が嬉しそうに話してくれた、リンダという素敵な女性の話を聞いてから。
これを繋ぐべきは、リンダという女性になのだと感じていました。
そして繋ぐべき男が出会わせてくれた、小僧が道を繋いでくれました。
どうか受け取って下さい・・南米のある遺跡で私が遭遇した。
繋げと言って私の中に入れられた、これが【契約条項の書】だと思います」
ルミは静かに強く言葉にした、通訳するマチルダが震えていた。
リンダはマチルダの言葉を聞いて、震える両手で本を手に取った。
そして1ページ目を開いて、号泣したのだ。
ユリカもマリも凍結しながらリンダを見ていた、ルミはリンダの両手を両手で握った。
その瞬間に本が消えて、リンダは最強楽園笑顔でルミを抱きしめた。
「私やマリの力の理由・・その意味を私達は探します。
本当は私よりも強い力のマリと、最強の妹の沙紀で探します。
それは由美子の世界にヒントがある、私はマリのお尻を叩いてでも。
その本来の力を出させます、それが私とマリの絆だから。
由美子の世界を見てて下さいね、リンダさん・・その本を読みながら。
来年の1月には・・必ず到達させます、由美子をカリーさんの場所まで。
私はやっと肩の荷が降りて、今が人生で一番の充実感を感じています。
重たい荷物ですけど・・リンダさんが持つべき物だから。
繋げた事が嬉しいです・・リンダの答えを、楽しみに待っていますね」
ルミはリンダの両手を握って笑顔で言った、マリがその横でフーを抱いて号泣していた。
「・・・・・」リンダはスコールのような涙を流しルミに強く言った。
「1つめの鍵をやっと見つけたよ・・ありがとう、ルミ・・ありがとう、エース」とマチルダがリンダの言葉を泣きながら伝えた。
ユリカが喜びの笑顔で私に抱きついた、私にはその笑顔が何よりも嬉しかった。
号泣するマリの背景に、巨大な黄金の門が建っていた。
挑戦者を歓迎するように、その扉は拒絶を示していた。
草原を6人で笑顔で話しながら歩いた、5人の笑顔が私には嬉しかった。
ルミがマリのバイクの後ろに二ヤで乗って、マチルダが私の後ろに二ヤで乗った。
BMWの運転席にリンダが乗って、ユリカが助手席に笑顔で乗って走り出した。
私は背中に当たる、マチルダの豊満な胸の感触を楽しんでいた。
トランプ柄の道で前を走る、マリとルミは笑顔だった。
「ありがとう、エース・・リンダの喜びが、嬉しかった」とマチルダが私の耳元に囁いた。
『俺もだよ・・リンダとマチルダの喜びが、嬉しかったよ』と返してスピードを上げた。
ログハウスの横を抜け湖沿いを走り、大きなおとぎの国のお城を右手に見て扉の前に着いた。
6人でおとぎの国を出て、管制室に入り映像を切った。
ルミが父親に電話して迎えを頼んだ、そしてリンダと2人で通りに出た。
父親が迎えに来て、驚いて車を降りてリンダに駆け寄った。
リンダは最強楽園笑顔で父親に抱きついた、ルミも嬉しそうだった。
暫くリンダは父親と話して、父親の車を笑顔で見送った。
車が去ったリアンの店のビルの前に、シオンが凍結してリンダを見ていた。
リンダはシオンを見つけて、笑顔で駆け寄り抱きしめた。
シオンの最強ニコニコちゃんを、私達はビルの上から笑顔で見ていた。
リンダとシオンは笑顔で話しながら、ユリカの店に入ってきた。
シオンのニコニコちゃんが止まらずに、シオンはマチルダと抱き合って再会を喜んだ。
「・・・・・」リンダが笑顔でシオンに言った、シオンは笑顔で強く頷いた。
英会話を理解できなかった、マリと私はウルでユリカを見た。
「今夜はリンダの側にシオンがいてって、マチルダを楽しませたいから。
リンダも楽しみたいから、シオンが側にいて通訳してって言ったんだよ」
ユリカが爽やか笑顔で言った、私とマリは笑顔で頷いた。
シオンのニコニコちゃんが咲き乱れていた、シオンにとっては最高のリンダの依頼だった。
リンダはこの時には決めていたと言った、シオンと旅をしようと決めていたと。
【契約条項の書】を解読できる、白い弾丸を感じていた。
リンダはその夜白い弾丸に撃たれる、シオンは弾丸を込めていた。
シオンは無理をしてるリンダの心を感じて、ターゲットに狙いを定めた。
炸裂する弾丸は白い言葉、歌のように心地よく入ってくる・・シオンの心の詩だった。
リンダはルミのプレゼントの【契約条項の書】を、本当に大切にしていた。
何度も読み直し、経験により解釈も変化させていたのだろう。
私は何度もリンダの話を聞いた、その度に解釈の深さに驚かされた。
私はリンダと2人で旅をしたのは、3度しかない。
蘭はリンダかマチルダとの旅だけは、喜んで私の背中を押してくれた。
蘭は私よりリンダと2人で旅をした経験が多い、蘭はこれから1年後の年末に靴屋を辞める。
東京PGの精神的な準備と、リンダに2人旅に誘われたのが原因だった。
蘭がリンダと最初に旅をしたのは、ヨーロッパだった。
蘭は期待の満開笑顔で、自分のピンクのリュックを用意して満開で出かけた。
私は宮崎空港で、ニヤニヤユリカに腕を組まれてウルで見送った。
リンダは地下に潜る覚悟が出来た時に、蘭とナギサを誘って旅に出た。
その旅でリンダが何を伝え、何を話したのか・・私はそれを知らない。
ただ帰国した2人は、完全にステージが上がっていた。
ナギサには大きな責任感が芽生え、蘭は迷い無く東京を視界に入れていた。
それほどに強い想いをリンダは伝えたのだろう、リンダは私にこう言った。
【友人と心から呼べるのは、蘭とナギサだけなんだよ。
2人は私を感じてくれて、自分の心を話してくれる。
同じ年に生を受けたその存在に出会えて、私は幸せなんだよ】
リンダは嬉しそうな楽園笑顔でそう言った、忘れられないリンダの笑顔だった。
私がリンダと最初に2人旅をしたのは、私が高校に合格した2年後の冬だった。
私は特別推薦《何の特別枠か今でも謎》で、中3の年末には合格通知が来た。
私はニヤニヤで女性達に自慢して、私立高校だったので親父にウルで報告した。
私はシズカの留学で出費が多いのを知っていたので、生活費は中学の時と同じで良いと言った。
親父はプライドもあり考えたが、私は強く自分のプライドを示した。
《ありがと~・・さすが長男だね~》と律子が私と親父の沈黙に切り込んで、ニヤニヤで言ってその話は終わった。
私はジンの派遣会社がすでに設立されていて、ジンもその年の年末で引退が決まっていた。
私は中3で平均月収が、派遣と重鎮3人の特別報酬で20万を越えたのだ。
バブルが始まっていたのだろう、そういう面では・・良い時代だったと言えるのかもしれない。
私は子供でそれほど金の使い道が無く、サーフボードと衣類だけ買って、毎月10万を蘭に渡していた。
蘭はそれを全て貯金してくれていた、私は自分でも貯金していて。
高校入学の時にそれをはたいて、免許を取りKAWASAKIのFX400を新車で購入したのだ。
この話は後に詳しく出てくるが、年明けの七草の日に、リンダは突然私を誘いに来た。
私はパスポートは作っていたが、リンダの提案で喜びが強すぎて錯乱していた。
半日で準備しろと言われて、私は何を準備して良いのか分からずに、下着だけをリュックに入れた。
リンダは太いパイプを持っていたのだろう、私のビザ申請も簡単に通していた。
1月8日の始業式の翌日に、私はリンダと手を繋いで、飛行機に乗ったのだ。
清次郎には、【世界が俺を必要としてるので行ってきます】と書いた手紙を美由紀に託して。
なぜだか急に自分のリュックに荷物を積める、受験間近の美由紀をなだめて二ヤで出かけた。
リンダと2人で何本もの飛行機を乗り継いで、南米のとある都市に降り立った。
私はそれだけで泣きそうなほど興奮していた、その空気の密度の違いを感じて。
私はそれまでに豊兄さんと1度、蘭とマチルダと1度海外に出ていた。
だがそれはアジアだったので、日本との気候の違いをそれほど感じなかった。
確かに建物や文化の違いは感じたが、根本的な部分は同じだと思っていた。
リンダは夏の時期の南米の、ある乾いた都市の病院に私を案内した。
私はそこで巡り会ったのだ、忘れ得ぬ少女・・【空のイオラ】に。
全く表情も言葉も持たない6歳の少女だったが、私は遠くからでも感じた。
呼んでいると感じたのだ、その少女は私をこう呼んだのだ・・【コジョ】と。
私は3日間、イオラという少女と触れ合った・・その心は空に存在した。
私は恋が浦でヒトミに話した、ナスカの地上絵の想定を変更した。
イオラを感じて人間の可能性を上げた、イオラは別世界にいた。
その瞳が捉えるのは、宇宙から見た地球であり・・空から見た人間なのだ。
イオラの素敵な話は後に記します、その時にリンダが話してくれた。
【契約条項の書】には絶対に記載されていると、それを探し出したいんだとリンダは強く言った。
ルミが感性の開花と引き換えに、【契約条項の書】を託されたと言った遺跡で。
リンダは石碑を見ながら、強く言葉にしたのだ。
リンダは多分探していた、欲による策略だけじゃないと私に強く言った。
「人はそれが本能だと言い訳する・・そう思わされてるよね。
欲だけじゃここまでの世界にならない、私は確かにそう思う。
本能ならば、生命に最も重きを置くよね・・食べる以外で殺さない。
私は今・・違和感を感じてる、知能を持った意味に・・違和感がある」
リンダは石碑の古代の文字を見ながら、強く言葉にした。
中東から帰ったばかりのリンダだった、リンダのブールーに淋しさが映っていた。
私はリンダの手を引いて、どうしても行ってみたいと強く誘った。
リンダは笑顔で頷いて、その旅の最後に連れて行ってくれた。
日本時間の1月15日だった、私はガタガタと震えながらマチュピチュを見ていた。
強烈なユリカとユリアの波動に押されて歩いた、ヒトミの熱を追いかけるように歩いた。
私は夢中で何をしていたのかも、記憶としてはっきりしない。
その日の日記に、私はこう書いている。
【俺はヒトミと鬼ごっこをしていた、それしか思い出せない。
俺が鬼でずっとヒトミの熱を追いかけていた、心の開放を感じながら。
イオラの楽しそうな声と、モモカとマリアの笑い声を追いかけながら。
映像でない4人を追いかけていた・・でも今はまだ・・何も探し出せなかった】
そう走り書きで書いている、その文字は楽しそうなのだ。
リンダはマチュピチュで、私の行動を笑顔で見ていた。
リンダは私との初めての2人旅を、その場所にしてくれた。
【契約条項の書】の受け取りの地と、天空の少女イオラの住む場所と、遥かなるマチュピチュに誘ってくれた。
それをこの時に決めたと、リンダは帰りの飛行機の中で教えてくれた。
ルミに出会った日に、最初はこの場所にしようと決めていたと。
「見せたかったんだよ・・感じて欲しかった・・観光地化されそうで、その前にね」とリンダは笑顔で言って。
「【契約条項の書】なのかどうかも分からない、結局解明できないだろうね。
でも・・それでも良いんだよ、私は繋ぐべき物を得たんだから。
これを持つ限り、私には諦めは許されない・・それが最も貴重な事なんだ。
私には大切な1つ目の鍵だから・・それだけで良いんだよ」
リンダは静かに言って瞳を閉じて、私の肩に頭を乗せてきた。
私はリンダの疲労を感じて、リンダの手を握っていた。
南米の大地に消えてゆく、夕日に包まれてリンダは静かに眠りに落ちていた。
リンダの強い意志と、マチルダの強い意志が交差する時が近づいた。
ユリカにも蘭にもナギサにも、大切なリンダとマチルダと過す時が迫っていた。
シオンには重要な出来事になり、リリーにも強く影響を与える時が迫っていた。
私はリンダとマチルダと準備してくる言った、ニコニコユリカを駐車場まで見送って。
マリと手を繋いで、PGを目指していた。
『マリ・・嬉しそうだね、マリの方が強いんだよ・・出し惜しみしてるな』と二ヤで言った。
「自分じゃ分からないよ・・でも・・ルミ、本気だったよ」とマリが真顔で返してきた。
『俺達は未熟だから・・少しずつしか進めないよね、未熟を楽しもう・・マリ』と笑顔で返した。
「そうだね・・私より未熟な男がいるから、安心できるよ」とマリが二ヤで返してきた。
私がウルで返していると、PGのビルの前でクラクションの音がした。
私とマリがその方向を見ると、政治が車から二ヤを出していた。
私はトランクから車椅子を出して、お洒落した美由紀を抱き上げて乗せた。
やはりお洒落した沙織と秀美が笑顔で降りてきて、5人で政治に手を振って見送った。
マリが美由紀を押して、エレベーターに向かった。
「マリちゃん・・何があったの?・・楽しそうだね~」と美由紀が二ヤで言った。
「内緒だよ・・素敵なスペシャルゲストが来るよ」とマリが笑顔で返した、中1トリオに期待の笑顔が咲いた。
私は4人の笑顔を見ながら、心は弾んでいた。
リンダと海に出る期待感と、マチルダと話せる喜びで。
蘭のとんでもない覚醒の時が近づいた、勝者も敗者も存在しない戦いの舞台。
それが完成されていた、ルミの想いは強すぎる敵で示された。
その頃、ルミはいつもより流暢な言葉で、両親と妹に笑顔で話していた。
興奮気味に・・リンダとマチルダの話を・・楽しそうに・・。