【冬物語第三章・・悪意の門①】
忘年会は節目の最終日が良い、仕事を締めた後が良いのだ。
合理的にその前でやっても、それは反省会になりやすい。
心がある程度仕事から開放された、仕事収め後にやるのが理想だろう。
年末の特有の雰囲気の中、私は北西の風に吹かれていた。
寒さを感じなかったが、リアンが寒いのでないかと思って店を覗いた。
客がまだ来てなかったので、奥のソファーにリアンを寝かせた。
女性達に年末の挨拶をして、タキシードを冷やかされて店を出た。
ゴールドに行くと、女性達に二ヤで見られて、ボーイ頭に年末の挨拶をした。
それから挑戦的にタキシードのまま年末の挨拶回りをして、呼び込みさん達の笑顔に貢献した。
ホノカとヨーコの反応が激しくて、私はウルで対抗していた。
幻海まで挨拶して、PGに戻り着替えて指定席に座った。
PGは満席を記録していた、夏から続く満席記録は翌年に継続された。
私は終演まで指定席で見ていた、その年の最後の幻想の宴を。
終演を迎えて終礼も無く、私は少し疲労の見える蘭を抱いて帰った。
蘭は部屋に入るまで眠っていた、私は化粧を落とさせるのに起こして、蘭は面倒臭そうに洗面所に消えた。
蘭と添い寝をしながら、蘭は嬉しかったのだと確信していた。
久しぶりに洋を見て、蘭の温度は少し高かった。
翌朝、朝食を作っていると、蘭が起きてきた。
その日が靴屋の最終日で、蘭は朝食を食べて早目に出かけた。
この時代は正月というと、ほとんどの店は閉まっていた。
今のようにコンビニも無く、年中無休の店も珍しかった。
デパートもスーパーも初売りは3日が多く、飲食店などは4日からの店が多かった。
だから一人暮らしでも食料を買い込んどかないと、生活に困難な状況が襲ってきたのだ。
私はユリカが午前中は来ないと言ってたので、暇な事もありマリのメモを見た。
その住所は蘭の部屋から、さほど遠くなかった。
私は防寒対策で皮パンツを穿いて、革ジャンを着てロック少年風に出かけた。
年末で学生の影が消えた、寂しげな大学のグランド裏の細い路地を歩いて。
かなり広い区画のマリの示した町に入った、高級な住宅街で年末の大掃除であろう、仕事が休みのオヤジ達が嫌々顔で働かされていた。
私は平和台の塔を視界に捉えながら、住宅街を歩いていた。
感覚的な感じでなかったと思う、【小僧】と呼ばれた気がした。
それも上からだった、聴覚でない部分で音を拾った感じだった。
私は西洋風のお洒落な白い家の2階を見た、その当時では珍しい、出窓にフリフリのレースのカーテンがかかっていた。
そのレースのカーテンの間から、小学生のようなルミが二ヤで手招いていた。
私が玄関を指差すと、ルミが笑顔で頷いた。
私が玄関に歩くと、庭のガレージでルミの父親らしき人がクラウンを洗っていた。
『寒いのに、大変ですね』と私はインターホンを押す前に親父と目が合い、笑顔でそう声をかけた。
「年末位は自分でしないとね、スタンドも混むし」と親父が笑顔で返してきた。
『そうですよね・・でもクラウンなんて高級車は、スタンドで良いですよ』と二ヤで返した。
「スポーツカーに乗りたいんだけど、女房から駄目だしされてね」と親父が私に近寄り笑顔で言った。
『内緒で買えば良いんですよ・・911ターボを』と側に来た親父に笑顔で言った。
「ほう・・カウンタックでもフェラーリでもなく、911が好きなのか」と親父が笑顔で言った。
『スーパーカーブームって言うけど、俺は911が好きです。
地を這うようなスーパーカーは、どっか非現実みたいで。
911は公道を走るという設定がありますよね、アウトバーンを走る。
制限速度無しの公道、その時に出ますよね・・あの無茶な設定。
RRのレイアウトが生む、前が浮き上がる感覚・・怖いですよ。
だから911なんですよね、それを受け入れろと言ってる。
ドイツ人は凄いですよ、乗りたい奴だけ乗れって言うから。
大金を使ってでも、これに乗りたい・・そんな奴だけ買えって言うから』
私は親父に玄関に招かて、親父の笑顔を見ながら言った。
「息子は良いな~・・うちは娘だけだから、話をしてて楽しいよ」と親父が笑顔で言って。
『好きですから・・車という機械が』と笑顔で返した。
玄関を開けると、ルミが二ヤで立っていた。
ルミの横に、小学校高学年のであろう可愛い少女が立っていた。
小さなルミと身長が同じ位で、私は笑顔で挨拶した。
ルミに手を引かれて、母親に挨拶して2階のルミの部屋に招かれた。
「ユリアは挑戦的だね~、ユリカさんに黙ってるよね」とルミが同調で言った。
『そうだね~・・ユリア、同調に入ってくるかな?』と二ヤで返した。
「入ってくるよ、開けてるから」とルミが笑顔で言った。
ルミの部屋の可愛いコタツに足を入れて、ルミと向き合って座った。
『ルミ・・ありがとう、本当に助かったよ・・反省してるよ』と言って笑顔で頭を下げた。
「そうだね、反省が必要だったよね・・マリの詩を忘れて。
赤い塔に気持ちを取られた、それじゃあ駄目だよね。
赤いという色と、塔に持つ強いイメージ・・それを逆手に取られた。
でもね・・半分の人数じゃ、島が設定通りなら無理だったよね。
あの問題・・言葉並べが勝負だった、奴はあの問題で勝負した。
あそこで、人質以外の4人を残すのがベストの選択。
潜水艦からは全員が出て、潜水艦を置いておく状況を作る。
そうなれば、奴は扉を閉ざせない・・真っ向勝負になったよ。
まぁ・・小僧がマサル君を連れて来てれば、何の問題も無かったけどね」
ルミは同調で言って、二ヤを出した。
私は楽しんでいた、ルミの同調も気持ちが良かった。
『ルミはアバウトな設定だって言ったよね?・・マリで感じてたの』と私は興味津々光線を発射した。
「まぁね・・マリの集中がいつもと違って、興味を持って読んでみた・・強い感情だったからね」とルミは笑顔で言って。
「小僧・・映像を出せよ、私がプレゼントをしてやる・・その代わり、今日ある人を紹介してね」とルミが笑顔で言った。
『誰を紹介して欲しいのかな~・・楽しみにしとくよ、映像を出すよ』と私は二ヤで返して目を閉じた。
私が管制塔に入ると、ルミは先に来て窓から空母を見ていた。
『さすがに早いな~』とルミの背中に声をかけた。
「スピードなら負けないよ・・私も負けず嫌いなんだから」とルミが笑顔で返していた。
『それで・・何を出そうか?』と二ヤで言った。
「おとぎの国が残ってるんでしょ?・・裏に移動させたでしょ・・フーの為に」とルミが二ヤで返してきた。
『怖いよな~・・ルミは』と笑顔で言って、ルミと手を繋いで管制室の裏に出た。
トランプ柄の道路の先に、おとぎの国の城が見えていた。
「素敵だな~・・沙紀ちゃん、本当に凄いね・・このリアル感」とルミが笑顔で言った。
『凄いよね~・・今度、動物達を入れてもらうんだよ・・フーの為にね』と笑顔で返して、車両の前に立った。
ルミは二ヤで911ターボを指差した、私も二ヤで助手席のドアを開けた。
ルミが乗り込むと、ルミの膝に黄色い熊が飛び乗った。
その時のルミの嬉しそうな笑顔は、少女の強い輝きを連れていた。
「沙紀は凄いね~、本当に素敵だよ・・重みがあるね、フーちゃん」とルミが笑顔で言った。
『俺もそれには驚いたよ』と笑顔で返してエンジンを始動した。
「天文台が有ったあの平原に向かって、境界線が見たいから」とルミが笑顔で言った。
『了解・・フー、悪戯するなよ~』とおとぼけフーに二ヤで言って、走り出した。
私は二ヤでスピードを上げて、トランプ柄の道路を走っていた。
ルミは嬉しそうにフーを抱いて、フーに話しかけていた。
私は【眠れる森】に入って、ログハウスを超えて長い直線に入った。
フル加速を楽しんでいると、フッと前輪の感覚が消えた。
私はそこでアクセルから足を外した、メーター読みの時速235kmだった。
「確かに消えるね、前輪の感覚が・・でも欠陥車じゃないね・・得れば、リスクも付随する・・正直な車なんだね」とルミが笑顔で言った。
『その会話・・親父さんとしてやりなよ、泣くよ』と二ヤで返した。
「それは無理・・照れ臭いし、言葉も流暢に使わないから」とルミが前を見て言った。
『やっぱり・・使わないんだね』と私は二ヤで返した。
「まぁね・・言葉に頼りたくないの、それが私の今のテーマよ・・それを提示してくれたのは、シズカ姉さんだよ」とルミが笑顔で言った。
『なるほど~・・シズカらしいよね』と私は笑顔で返した。
天文台の有った草原が見えてきた、私は車を路肩に止めた。
ルミは笑顔でフーを抱き、私はルミと並んで歩いていた。
真赤な境界線の前でルミは止まった、そして私にフーを預けた。
私はフーを抱いて興味津々で見ていた、ルミは躊躇無く赤線に入った。
ルミが3歩進むと、光の壁が現れた。
ルミはニヤでそのまま進み、光の壁を潜り抜けた。
私はフーを抱いたまま、ルミの後を追った。
境界線は無難にクリアーしたが、光の壁に触れると痛みを感じていた。
小さな針に何度も刺されるような、刺激の強い痛みだった。
私は意を決して歩を進めて、ようやく光の壁を出た。
ルミは二ヤで待っていた、私はウルで対抗した。
「まぁ、さすが小僧だよ・・それが抜けられるのなら、まだ痛みを感じてるね?」とルミが二ヤ継続で言った。
『感じるね・・チクチクする痛みだった』とウルで返した。
「チクチクなら、もう少しだね・・じゃあ、プレゼント・・練習場を3段上げてやるよ」とルミが言って海の方に振り返った。
ルミは瞳を閉じて、右手を開いてゆっくりと上げた。
その動きに合わせるように、黄金の巨大な扉と、扉の両側に続く万里の長城のような壁が現れた。
私は凍結して見ていた、フーは私から降りて木に向かって走っていた。
「これが私がイメージしてる、悪意の門だよ・・これを開ける方法を探して・・そしてこの奥に練習場が有るから」とルミは振り向いて二ヤで言った。
『ありがとう、ルミ・・凄いな~・・楽しみだ~』と笑顔で返した。
「小僧が境界線を引き抜いたから、これが出せたんだよ・・境界線の後ろじゃないと出せないんだ」とルミが黄金の門を見ながら言った。
『ルミは一人で挑んでたんだね?』と私も門を見ながら言った。
芸術的な龍と虎の彫刻が施された、重厚で巨大な門だった。
「中学に上がるまではね・・中学から、マリが現れたから・・2人になったよ」とルミが私に二ヤで言った。
『奇跡だね・・マリとルミの出会いは』と笑顔で返した。
「必然だよ・・互いが求め合ったんだから」とルミは笑顔で言って、フーの元に歩き出した。
私はルミの背中を見送って、黄金の扉に触れてみた。
重みも素材もリアルに感じられた、ルミの力の強さに触れていた。
ルミがフーを抱いて帰ってきて、フーは蜂蜜が無かったのかウルを出していた。
私とルミはフーの表情を見て笑って、911に乗り管制塔に戻った。
フーに蜂蜜を出してやり、ルミが少しフーと遊んで映像を切った。
私が目を開けるとルミの横に妹が座り、私を不思議そうに見ていた。
ルミも目を開けて、妹を見て二ヤを出した。
「楽しい事してた・・オネェ楽しい事してたよね、笑ってた」と妹が笑顔で言った。
「今度教えてやるから、練習しな・・動く熊のプーさんに会いたければね」とルミは言葉で言った。
「うん・・頑張る~」と妹は笑顔で言って、部屋を出て行った。
『妹には、流暢な言葉だね』と私は二ヤで言って、妹の持ってきたジュースを飲んだ。
「妹にだけね・・私を分かってくれる数少ない人だから・・マリと妹と小僧・・そして誰よりも、ユリカという素敵な人がね」とルミが笑顔で言った。
『やっぱり、ユリカに会いたいの?』と笑顔で返した。
「お昼で約束してるんだよね、連れてってね・・会いたいんだよ、3人に」とルミが笑顔で返してジュースを飲んだ。
『3人か~・・誰が来るのか楽しみだ~』と私は二ヤで言った。
「マリ以外で初めてだよ・・こんな会話が出来るのは」とルミも二ヤで返してきた。
『それは、気持ち悪がらないなの?・・それとも説明の必要がいらないなの?』と私は真顔で聞いた。
「両方だよ・・心配するな、小僧・・私は乗り越えたから」とルミが笑顔で言った、私も笑顔で頷いた。
『それにしても、凄い家だね・・親父さん、仕事は何してるの?』とお菓子を食べながら聞いた。
ルミの家は高級住宅街の一等地に建つ、お洒落な豪邸だった。
「公務員・・大学教授、母さんもそうだから・・2馬力だから、お金が有るんでしょ」とルミが笑顔で言った。
『そっか~・・だからここなんだね』と笑顔で返した。
「変わってるのよ、母さんは研究職だし・・父さんは、考古学が専門だから」とルミが二ヤで言った。
『考古学か~・・素敵だね、憧れるよ』と笑顔で返した。
「小僧の感じてる、遺跡や恐竜の骨を捜す・・冒険的な方じゃないよ・・人類の文化の歴史みたいなのだよ」とルミが笑顔で言った。
『どっちにしろ、過去を探る事だよね・・興味あるよ、仲良くなろう』と笑顔で言った。
「父さんは、もう小僧に興味津々だよ・・私を初めて訪ねて来た男だし・・出会いのあの会話だったからね」とルミが笑顔で言った。
『それはラッキー・・ちょくちょく遊びに来よう』と笑顔で返した。
「それは私からも頼みたい・・妹とも仲良くなってくれよ」とルミが真顔で言った。
『もちろん・・大変なんだよ、あの年代は・・今は必死な時期だね、俺は良いと思ったよ・・自分を曲げないのは好きだよ』と私は笑顔で言った。
私はルミの妹を見た時に感じていた、友達関係で悩んでいると。
「その部分は本当に凄いよね~・・私なんか足元に及ばないよ、経験値が違うよ」とルミは笑顔で言った。
『経験しかないからね、俺の武器は』と笑顔で返した、ルミも笑顔で頷いた。
ルミが着替えると言ったので私は1階に降りた、ルミの親父と母親にリビングに招かれた。
『尋問ですか・・何もしてません、手も握ってません』と親父にウルで言った。
「なんだ、手ぐらい握ってやれよ~」と親父が笑顔で言った。
「心と裏腹の言葉を言わないの、心配してたくせに」と母親が笑顔で突っ込んだ。
『心配ですよね、ルミ姉さんは可愛いから』と私はソファーに座りながら言った。
「ルミの方が姉さんなんだね・・聞いて良いのかな?・・今日は何の用事だったのか?」と親父は向かいに座りながら言った。
母親が親父の横に座り、妹が右サイドの椅子に座った。
『お礼と、アドバイスを貰いに・・ルミ姉さんにしか貰えない、大切なアドバイスを』と笑顔で返した。
「君は分かるんだね・・ルミの事が」と親父が真剣な顔で言った、母親は笑顔で興味津々だった。
『感じる事は出来ます、ルミ姉さんが誘ってくれるので。
同調というか、周波数みたいなのを合わせてくれるから。
鮮明な世界で、明瞭な言葉で会話が出来ます・・表現出来ないけど。
俺の今やってる挑戦にとって、最も貴重で大切なアドバイスを貰えます。
素敵ですよ・・ルミ姉さん、一人でいることを恐れない。
無理に誰かに合わせない・・素敵な姉さんだね、無理はしてないよね?』
私は最後に妹に笑顔で言った、妹は驚いた顔をした。
私は妹の瞳を見ながら、意識して笑顔を作った。
「分かるんだ~・・家族は誰も知らないのに」と妹が少し笑顔を出した。
『知ってるよ、何となく感じてるんだよ。
お父さんもお母さんも、お姉ちゃんも感じてるよ。
何も言わないのは、君が自分で解決するべき事だからだよ。
君はもうそのレベルに来た、そう認められたんだよ。
段階が1つ上がった、だから君から話すまで誰も何も言わない。
だから君は自分に正直にやれば良いんだ、良い悪いなんて考えないで。
自分の思ったままに表現してみて、家族にも友達に対してもね。
全員に好かれる事は出来ないんだ、それが人間なんだろうね。
でもね・・辛くても怖くても、話さないと駄目だよ。
嫌いと思うなら、キチンと自分の中で何が嫌いかを分からないとね。
嫌いになるのが一番難しいんだ、それは好きになるよりずっとね。
正直に自分に話すんだよ、何が嫌いなのかをね』
私は笑顔で出来るだけ優しく言った、エミに語りかけるように。
「好きになるより、嫌いになる方が難しいの?」と妹が真剣に聞いた。
『俺に聞いてるの・・良く考えてごらん・・誰に聞いたの?』と私は笑顔で返した。
「あっ!・・自分に聞いていた・・ありがとう、少し分かってきた」と妹が笑顔で言った。
『君は素敵な女性になるよ・・それが分かるんだからね』と笑顔で返した。
「ありがとう、オネェもやるな~・・素敵な人だね~」と妹が笑顔で言った。
『俺に惚れるなよ・・火傷するぜ』と二ヤで言った。
「ぶっ!」と吹いて妹は楽しそうに笑っていた。
父親も母親も、妹の成長が嬉しいような笑顔だった。
「もう・・調子にのって・・出かけてきます」とルミが笑顔で言った。
「お昼は?」と母親が言った。
「デート・・だからご馳走になる」とルミが返した。
「デートか・・何だか嬉しいような淋しいような、複雑な気持ちだよ」と親父が笑顔で言った。
「大切な出会い・・してきます・・父さんの話してた人・・会ってくる」とルミが真剣な表情で言った。
「そうなんだね、帰ってから話を聞くのを楽しみにしてるよ・・電話をくれ、迎えに行くよ」と親父が笑顔で言った。
「ありがとう・・お願いします」とルミが返して頭を下げた。
「また来てくれる、お話聞いてくれる?・・んっと~」と妹が言って考えた。
『必ず来るよ、その時の話を楽しみにしてる・・俺は小僧と呼ばれてる』と笑顔で言って立ち上がった。
「小僧ちゃんだね・・私はクコって呼ばれてる」と妹が笑顔で言った。
『素敵だね、クコか~・・無理だけは駄目だよ、クコ』と笑顔で言った、クコは笑顔で頷いた。
私とルミは母親とクコに見送られて、家を出てバス停に向かった。
「ユリア・・ワクワクだね」とルミが二ヤで言った。
『我慢してるよね~・・可愛い奴だ』と私も二ヤで返した。
その頃ユリカはマリの家にいた、マリを迎えに行き、マリの父親に家に招かれていた。
「もうあなたは、綺麗な人が来て・・嬉しそうに」とマリの母親が二ヤで言った。
「これだけ綺麗な人を見たら、笑顔も出るよ」と親父が楽しそうに返した。
ユリカは笑顔で対処して、マリも楽しそうだったのだろう。
ユリカは夜の忘年会の話もして、責任を持って家まで送ると約束した。
そしてマリと家を出て、店に向かっていた。
「ユリカ姉さん、今小僧を感じてますか?」とマリが笑顔で聞いた。
「朝御飯食べてから、気配が無いんだよね・・ユリアの気配も無い、多分2人で映像に入ってるじゃないのかな?」とユリカが笑顔で聞き返した。
「そうだと思いますよ・・確かに気配が無いですよね」とマリが笑顔で返した。
「マリちゃん・・楽しそうだね」とユリカが爽やか笑顔で言った。
「はい・・再開できるのが楽しみで、少し怒られそうだけど」とマリは前を見ながら言った。
「聞かないで、楽しみにしてよう」とユリカも楽しそうな笑顔で運転していた。
私とルミは3丁目のバス停で降りて、ユリカの店に向かっていた。
快晴の冬の日で、ルミは可愛い赤いコートを着ていた。
私はルミの手を繋いで、夜街に入り面白話をしていた。
突然爆発的な波動が来た、私は驚いてその場に止まった。
「後ろから来たのね・・気付かなかった、マリの奴も隠してたね」とルミが私に二ヤで言った。
『ルミでも気付かなかったのか、マリもやるね~』と二ヤで返して二人で振り向いた。
ユリカはマリと手を繋ぎ、ルミを見て凍結していた。
その時に確かに有った、ルミの内包する何かが喜びで溢れ出していた。
マリがユリカを笑顔で引っ張って、ルミの前に連れて来た。
「ルミ・・この人がユリカさんだよ・・ユリカ姉さん、ルミです」とマリが紹介した。
ユリカは爽やか笑顔になって、ルミを優しく抱いた。
「初めまして、ユリカさん・・よろしくお願いします」とルミは流暢な言葉で言った。
「こちらこそ、よろしくね・・本当に会えて嬉しいよ」とユリカが笑顔で返した。
「私もです・・マリが意地悪して会わせてくれないから」とルミはマリに二ヤで言った。
「また~・・ルミはすぐにそんな事言って~、小僧の気配が消えてたから・・そうじゃないかと思ってたよ」とマリが笑顔で返した。
「マリも気配消してたでしょ・・私は探したのに分からなかったよ、上がりすぎだよ・・マリ」とルミが笑顔で返した。
ユリカが楽しそうな笑顔で2人を誘い、ユリカの店に入った。
ユリカは店の空調を入れ、暖かい冬の日差しが入るBOXに誘った。
ルミが座り隣にマリが座った、私が対面の奥に座り、私の隣にユリカが座った。
「まず・・ルミちゃん本当にありがとう、沙紀は喜んでたよ」とユリカが笑顔で言った。
「たいした事はしてません・・あれはマサル君の力です」とルミが笑顔で返した。
『そう言えば・・ルミもマリもマサル君を知ってるよね?』と私は笑顔で聞いた。
「マリも私も障害者として暮らしてたから、障害者同士って・・知り合う機会が多いのよ」とルミが笑顔で言って。
「それにマサル君は有名人なんだよ、私達の世界では一目置かれる存在なんだよ」とマリが笑顔で言った。
「それで私が父に頼んで会いに行って、マサル君に小僧の話をしたら。
来てくれるって言ってくました、小僧の為ならどこでも行くって。
さすが小僧だと思ったよ、友達なんだよね・・マサル君にとって。
大切な健常者の友達なんだね、少し見直したよ・・小僧をね」
ルミは笑顔で言った、私も嬉しくて笑顔で頷いた。
ユリカも楽しそうな笑顔だった、マリとルミに囲まれてユリカが輝いていた。
「近いね」とルミが座り直してマリに笑顔で言った。
「エレベーターに乗ったね・・緊張するよね」とマリが笑顔で返した。
ユリカはワクワク笑顔だった、ユリアはニヤニヤな波動だった。
私はマリに促され、店内側のドアの前で立っていた。
小さく《コンコン》とノックの音がした。
『どうぞ・・開いてますよ』と私が言うと扉が開いた。
そしてブルーが笑顔で駆け寄り、私に強く抱きついた。
私がリンダを抱いていると、その後ろからマチルダが現れてウルを出した。
『リンダ・・いらっしゃい』と私がリンダに笑顔で言った。
「RUMI」とリンダは凍結するBOXの3人を見て、楽園笑顔で歩き出した。
私はマチルダに笑顔で手を広げた、マチルダも輝く笑顔で私に抱きついた。
私は久々にマチルダの香りを感じて、嬉しくて強く抱いていた。
そして2人のピンクのリュックを抱えて、マチルダを奥に誘った。
ユリカがルミを英語で紹介していた、ルミは緊張気味に立って笑顔で挨拶した。
リンダとマチルダでルミを抱くと、2人はハッとした顔になった。
マリがその横でニヤニヤを出していた、リンダもマチルダもマリに二ヤを返した。
《ルミは同調に誘ったな、2人はすぐに入れたんだね》
私はそう思って心に囁いた、ユリカが嬉しそうな笑顔で頷いた。
私はユリカを奥に座らせて、マリを隣に座らせた。
3人は2分ほど同調していた、私は小さな椅子を持ってきて手前に座った。
ルミの横にリンダが座り、その横にマチルダが座った。
「・・・・・・」リンダが英語で話し始めた、楽しそうな楽園ブルーだった。
「こんにちは、お言葉に甘えて・・2人で帰って来ました。
昨日の沙紀の世界、本当に素敵な物語でした・・感動しました。
マチルダの話してくれた、マキの事がとても好きになりました。
ユリカ姉さんもマリちゃんも・・そしてエースも反省してるでしょう。
でも・・あそこまで行けた事を評価すべきです、エース以外は。
あの境界線を経験してたのは、エースだけでしょうから。
私も最初は突破出来なかった、1度目のトライは1歩も進めなかった。
それを・・話に聞いてたとはいえ、見事でした・・マキのあの結論は。
そしてルミちゃん・・素敵でした、あなたの登場と準備は。
感動的でしたよ・・私は本当に嬉しかった、私の試験で気付いてくれた。
私の忘れられない親友、カリーの事を想ってくれて。
全員が心にカリーを持っていて、それを感じて嬉しかったんです。
ありがとう・・本当に嬉しかった、あの世界に触れてみたいと感じました」
リンダは興奮気味に早口の英語で言った、マチルダが笑顔で通訳してくれた。
リンダは興奮すると、瞳にも言葉にも身振りにも強く出る。
その喜びを伝えようと、夢中で話す素敵な女性だった。
ユリカもマリもルミも嬉しそうな笑顔だった、私はニコニコちゃんで2人を見ていた。
年末の昼下がり、美しいブルーとグリーンに囲まれていた。
そして私とルミは二ヤで誘うのだ、ユリカとマリとリンダとマチルダを。
リンダとマチルダは、境界線を見て震えた。
そして4人が凍結する、ルミの門の前に立ち・・リンダは号泣する。
リンダの悔しさを受け止める、【悪意の門】が静かに立っていた・・。