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      【冬物語第三章・・深海の誓い⑪】 

妬みとはなぜ発生するのだろう、差別はそこから始まるのに。

異質なものを受け入れないのは、防御本能なのだろうか。

集団で何を防御するのだろう、その行為こそが異質ではないのだろうか。


マキは笑顔で白兎を抱いて、城の1階の奥に進んだ。


「しかし・・アバウトな地図だな~」とマキは白兎を抱いて歩きながら、地図を見て二ヤで言った。

「時間がなかったものですから」と白兎はウルで返した。


白兎が案内した部屋は、まるで男の隠れ家のような場所だった。

壁には銃や刀や剣が飾られ、その下には改造中の車が置かれて。

床にはオイルが染み込み、作業台には沢山の工具が置かれていた。


「小僧が見たら泣くな・・帰らなくなるな」とマキがフレームが剥き出しの、TOYOTA2000GTの前で二ヤで言った。


マキが白兎を降ろすと、白兎が奥に誘った。

マキはマグナムを壁から取り、弾丸を込めながら二ヤで付いて行った。


「これでございます・・完璧な整備車は、今これしかなくて」と白兎が振り向いて言って、ウルウルを出した。


マキは白兎に向けてマグナムをかまえて、二ヤで立っていた。

蝶ネクタイを外しながら、マキは白兎を見ていた。


「明確な説明をしろよ、そうでないと・・このマグナムが火を吹く」とマキが二ヤで言った、白兎はウルで何度も頷いた。


「ここは・・沙紀お姫様の国だよな、だからリアルな世界だよね。

 シンデルラや奇跡のメイドの登場は、良く分かるよ。

 でも・・2000GTやそのZⅡ・・何より無数の武器がなぜ有る?

 おかしいだろう・・沙紀姫様が、そんな物に興味を持つか?

 絶対に持たないよな・・ならばなぜ有るんだ、姿無き兎の罠か?

 明確に納得できる説明をしろよ・・私はお前が好きなんだ、撃たせるなよ」


マキは二ヤで言って、丸椅子に腰掛けた。


「沙紀お姫様は・・最近悪い友達が出来まして。

 そいつはこの世界では、サタンコゾウと呼ばれています。

 そのサタンが、極悪な男で・・沙紀お嬢様を誘惑して。

 沙紀お嬢様に、沢山のパンフレットなる本を見せているのです。

 色んな物を見て、その構造まで感じてね・・などと騙して。

 機械も・・武器も、この世にはあるんだから・・覚えないと。

 などと言って・・この世界には元々存在しない物を作らせました。

 純粋な沙紀お嬢様は、言われるがままに作られてしまい。

 それもこんなに精密に、機能まで追及されて・・それも大量に。

 だから私がここで保管しております、安全の為にです。

 存在すら知らぬ、この世界の住人には・・銃だけは見せられません。

 銃だけは・・その存在だけは、見せられないのです」


白兎は真顔で丁寧に言った、私は当然ウルを出していた。


「サタンコゾウか!・・悪そうな奴だ、私が退治してやる。

 だが・・なぜ保管だけしてれば良いのに、手を入れるんだ。

 そのZⅡだって、集合管もオイルクーラーも装着してるよな。

 2000GTだって、かなりの手が入ってるのは分かるよ。

 なぜに・・改造まで施すんだ、矛盾してるだろ」


マキは白兎に二ヤで言った、白兎は少し照れた笑顔になった。


「それは・・私も男ですから・・好きでして」と白兎は二ヤで言った。

「お前、男か?・・まぁ良いよ・・納得できる説明だった」とマキはマグナムの弾を抜いて、作業台に置いた。


そして漆黒のZⅡに近寄り、笑顔で撫でるように触りながら白兎を見た。


「でも・・こんなバイクを出して良いのか?・・この世界の住人に見せて良いのか?」とマキは白兎に言った。

「マキ姫様の設定を・・宇宙人という事にしていただければ・・よろしいかと」と白兎は恐る恐る小声で言った。


マキはそれを聞いて、タキシードを脱いでダイバースーツだけになった。

そして壁にかかる、沢山のサングラスコレクションの中から。

外側から瞳が全く見えない、ミラーレンズのサングラスを取ってかけた。

マキは鏡を見て、サングラスをかけた自分の顔で二ヤを作った。


「これで良いよな?・・宇宙人」とマキは白兎に言った。

「素晴らしいです・・さすが、マキ姫様です」と白兎は笑顔で返した。

「褒めてると聞こえないよ・・それで魔法の解除方法は?」とマキは二ヤで返した。


「それは従来通りの設定になっております・・行かれれば分かります」と白兎は笑顔で言った。

「眠りの魔法を解く、従来通りの設定?・・まぁいいや・・行けば分かるんだろ」とマキも笑顔で返した。


「危険です~・・またもや、危険な設定です~」と美由紀がウルで言って。

「分かったら・・やるよね、あの女は」とシズカが笑って。

「何の迷いも、躊躇もなくね」とヨーコが言って笑った。

女性達もニヤニヤ笑顔で、モニターを見ていた。


マキは少し戻って、日本刀を背中に担いだ。


「これなら持って行って良いだろ?・・剣と同じなんだから」とマキは二ヤで白兎に言った。

「もちろんです・・私も晩餐会が終わりましたら、すぐに後を追いかけます」と白兎が笑顔で返した。


「早く来いよ・・私の事を心配してる人達がいるから、早く姿を見せてやらないと・・泣くんだよ」とマキが笑顔で言って、ZⅡに跨った。

「マキ姫様は、愛されておられるのですね」と白兎が笑顔で返した。


「あぁ・・女性ばかりにね」とマキはウルで返した。

「マキ姫様・・そのサングラスでは、ウルは見えませんよ」と白兎が二ヤで言った。

「そっか・・気を付けるよ・・行って来るよ、早く来いよ」とマキは笑顔で言って、エンジンを始動した。


重厚な排気音が響き渡り、マキは口元にニヤニヤを出した。


「お願いします・・マキ姫様」と白兎は頭を下げて、ボタンを押した。


マキの正面のシャッターが上がって、カード柄の道路が見えた。

月光に照らされる道が幻想的で、マキは二ヤで白兎に頷いて走り出した。

白兎は美しいライディングフォームで走る、マキの背中に手を振っていた。


マキは快調に飛ばしていた、取り締まる警察も対向車もいない世界を。


「やっぱ・・絶対・・ナナハンだ~・・最高だ~」とマキは叫んで、燃料タンクの上に胸を付けた。


マキはタコメーターのレブカウンターだけを意識して、フルスロットルで走っていた。

幻想的な森を抜ける、カード柄の道を湖に向かって。

ミラーサングラスが周りの景色を流して、そのスピードを映し出していた。


私の横のマリは、その光景を羨ましそうに見ていた。


『マリも好きだよね~・・バイクが』と私は二ヤで言った。

「うるさいよ・・サタンコゾウ」とマリが二ヤで返してきた、私はウルで対抗した。


大御所達の笑い声が響いて、哲夫も笑っていた。


マキは速度を落として、小道を入って行った。

そして湖の畔に着いて、バイクを降りてサングラスを外した。

マキはゆっくりと歩いて、湖との境界の手前まで行った。


「素敵な場所だな~・・さすが沙紀姫様の国だね~」と呟いて、マキは月光に照らされる幻想的な湖を見ていた。


そしてバイクに戻ろうとして、その小さな存在に気付いた。

マキは湖の上に浮かぶ、小さな白い水鳥の雛を見ていた。

その白い雛は、確実にウルウルを出して淋しそうだった。


「やばい!・・絶対にマキの知らない設定が来た」と恭子が叫んだ。

「傷つけるよ・・絶対にストレートな言葉で、灼熱の言葉で焼き鳥にする」とヨーコが焦って言って。

「可愛いのに・・あんなに可愛いのに」と秀美がウルで言って。

「なぜあの子が・・みにくいと思うんだろう?」と美由紀が二ヤで言った。


「みにくい○ヒルの子!・・それで、あの子はウルなの」と久美子が叫んで。

「駄目よマキ・・その子には、灼熱の言葉は」とユリカが優しく言って。

「無理だろ~・・今のマキは止められない、焼き鳥は確実だよ」とリアンがウルで言って。

女性達が水鳥の雛を見ながら、ウルウルを出した。


「お前もウルか・・全く男ってのは、どいつもこいつも」とマキは水鳥に二ヤで言った。

水鳥は驚いてマキを見た、その瞳は潤んでいた。

マキは水鳥を笑顔で見て、畔に屈んで間近に見える水鳥の瞳を見ていた。


「良いな~・・綺麗な白い体だね」と水鳥は少し笑顔を出して言った。

「宇宙人だからね・・綺麗だろ~、最近自分でもそう思うよ」とマキは笑顔で返した。

マキは湖と大地の境界線ギリギリに、体育座りで座った。


「宇宙って何?・・どこの国なの?」と水鳥は興味を持ったのか、マキのすぐ側まで泳いできた。


「空を見ろよ・・あの光る大きなのが月でね、小さく輝くのが星なんだ。

 それを包んでる、黒い空間が・・宇宙って言うんだよ。

 誰かが勝手に命名したんだろうけど・・宇宙は広いんだよ~。

 あの星の光ってね、ずっっっっと前・・すご~く昔。

 そんな頃に旅立ったんだ、そして今・・ここに辿り着いたんだよ。

 でもね・・ここがゴールじゃない、旅は続くんだよね。

 素敵だよね~・・ウルウルして見上げたら、失礼なんだよ。

 永い永い旅の途中の旅人は、笑顔で見送らないと・・失礼なんだ。

 それで・・何をいじけてるんだ?・・白い鳥君」


マキは夜空を見上げて、最後に水鳥に笑顔を向けた。

水鳥は夜空を見上げていた、その表情は笑顔だった。


「俺・・みんなと違うんだ、俺だけ兄弟と全然違うんだよ」と水鳥は真剣な表情でマキに言った。

「やるね~・・お前、中々やるね~・・素敵な奴だな~」とマキが笑顔で返した。


「素敵なの!・・みんなと違うんだよ、それが素敵なの?

 兄弟たちはそれでいじめるし・・母さんも冷たいし。

 母さんも・・俺だけに厳しいんだ、俺がみんなと違うから。

 俺が素敵じゃないからだよ!・・みにくいからなんだ」


水鳥は強く言った、言ってはならない言葉を灼熱の女に向かって。


「ダメ!・・マキ・・その瞳は」とヨーコが叫んだが、届くはずも無かった。


しかしマキはその時には、封印を解いていた。

吹き荒れるのは、熱風・・乾いた世界から届く熱風だった。


「素敵じゃないか・・みんなと違うって、私は素敵だと思うよ。

 違っても良いじゃないか、お前まだ子供だろ・・雛なんだろ。

 雛の時から、兄弟と・・周りのみんなと違う、素敵な事だよ。

 私の大切な妹はね、雛の時に両足を失ったんだよ。

 それでも・・みんなと違っても、その違いを楽しんでる。

 強く生きてる・・違いなど笑い飛ばす、それがどうしたと叫ぶ。

 本当に素敵な妹なんだ・・お前が言ってるのは、たかが見た目だろ。

 見た目なんて、あまり意味なんてないんだよ・・お前がいじけてるのは。

 自分の弱さを見たくないから、それを見たくないから・・ウルで曇らす。

 それはウルの使い方じゃない、私の弟はウルの達人だから分かる。

 お前は使用方法を間違ってる、ウルは周りの人の笑顔の為に出すんだ。

 自分の心を見るのが怖いから、曇らす為に出すんじゃない。


 お前は・・仲間外れにされてるとか、いじめらてるとか思ってるだろ。

 思ってるだけだろ・・変化を望んでないだろう、怖いだけだろう。

 変化を望んで踏み出して、それをみんなに叩かれる・・それが怖いんだ。

 お前は・・自分の弱さを知るのが怖いんだ・・だから待つんだ。

 じっとウルウルを出してれば、誰かが助けてくれる・・そんな妄想をしてる。

 誰が助けるかよ・・自分を見ない奴を、誰が助けるんだ・・偽る奴を。


 母親まで冷たいって、ふざけるな!

 お前をそこまで大きくしたのは、食べ物を与えて来たのは・・誰なんだ。

 甘えるなよ・・お前は待ってるだけだろ、いつまでそうするんだ。

 いつまで母親の持ってくる食事を待つ・・いつまで助けてくれる奴を待つ。

 どうして考えないんだ・・なぜ母親が、お前に厳しく接するのか。

 なぜ分からないんだ・・愛情って何かって、どうして考えないんだ。

 失ってからじゃ間に合わないんだぞ・・どんなに後悔しても。

 今の時間には戻れない・・お前がウルで無駄にした時間は戻らない。

 どうして気付かなかったんだ・・どうして・・どうして・・。

 どうして・・人と違うのが、悪いんだよ・・説明しろ!

 私に説明してみろ・・私の父親に説明しろ、私の記憶に説明しろ。

 今ここで・・説明しろ・・お前のウルの意味を・・お願いだから」


マキは自分に強く問いかけた、最後の封印していた部分を燃やし尽くした。

マキの言葉には確かに有った、父の葛藤とそれに対する母の愛情が。

マキは水鳥を睨んだまま、大粒の涙を止め処なく流していた。


律子が号泣してるのを、私は背中に感じていた。

大ママと北斗とミチルの涙も、そしてフネが律子を抱いて号泣するのも。

私はそれを感じて嬉しかった、灼熱の本質に久々に触れていた。


女性達はモニターに吸い付けられて、マキの灼熱を浴びて泣いていた。


水鳥は完全凍結だったが、瞳の力が増していた。


「ごめんなさい、宇宙人さん・・泣かないで、ねぇ泣かないで。

 俺は間違いが分かったから・・弱いけど、戦うから。

 だからお願いだから、もう泣かないで・・俺はもう泣かないから。

 俺が馬鹿だったから・・だから泣かないで、戦うから。

 弱い自分と戦うから・・絶対に笑い飛ばすから。

 みんなと違う事を・・絶対に楽しんでみせるから・・約束するから。

 だから・・もう泣かないで・・宇宙人さんが泣くと。

 俺も悲しくなるから・・だから・・もう泣かないで」


水鳥は必死でマキに向かってそう言って、飛び上がってマキの膝に乗った。


「誓え・・小僧・・今ここで誓え・・絶対に諦めないと・・誓うんだ、小僧」とマキは目の前にある水鳥の瞳を睨んで静かに言った。


私は震えていた、鮮明に5歳の時の記憶が蘇っていた。

チサを見送った時に、マキに誓ったシーンが鮮明に蘇った。

自分が言われたのと同じ言葉を聞いて、私の記憶の扉が開いていた。


「誓うよ・・何に誓えば良いの?」と水鳥が強く言った、それでマキは笑顔に戻った。


「旅人に誓え・・いつでもお前を空から見ている・・宇宙から来る・・旅人に誓うんだ」とマキは優しい声で静かに言った。


「誓います・・俺は自分と戦います・・空にいるから・・空からいつも見ててくれる、大好きな宇宙人さんに・・誓います」と水鳥は強く言葉にした。


「やれば出来るじゃないか~」とマキは言って、水鳥を両手で抱き上げ立ち上がった。


「もう・・いじけ男のせいで、遅くなった・・行かないといけないんだ」とマキは笑顔で言って、水鳥を優しく降ろした。


「ありがとう・・宇宙人さん」と水鳥がマキを見上げて笑顔で言った。

「お前がみにくいって・・そうなのか?・・お前は何て鳥なんだ?」とマキが可愛い水鳥を見て、不思議そうに言った。


「人間はアヒルって呼ぶよ」と水鳥は笑顔で返した。

「お前・・それは間違ってる・・アヒルってのはこんな口だよ」とマキは上手にアヒル口を作った。


そこで大爆笑が久々に女性達に戻った、私は俯いて号泣する美由紀を見ていた。

《嬉しかったね、美由紀・・良かったね》と私は心に囁いた、波動の来ない寂しさを感じながら。


「良いな~・・その口になりたいんだ」と水鳥が笑顔で言った。

「持ってないからって欲しがるな・・持ってる物で勝負しな」とマキは笑顔で言ってサングラスをかけた。


「うん・・そうするよ、俺にはいつも空から見てくれる・・お友達の宇宙人さんを持ってるから・・それで勝負する」と水鳥は強く言った。


「これ以上、泣かすなよ・・転んで怪我するだろ・・またなアヒル君・・空から見てるぞ、戦う姿を」とマキは唇で笑顔を示して、エンジンを始動した。


そして水鳥を見てサインを出した、【ありがとう】とPGのサインを出して走り出した。

1度も振り向かずに、淋しさを振り払うように速度を上げた。

美しい幻想の森を縫うように走る、カード柄の道で体を傾けて膝を擦りながら。

カーブを楽しむように走っていた、沙紀の眠る【眠りの森】に向かって。


「誰かが作り出している、何かのヒントを提示する為に。

 マキは・・【お前、男か?】って言った・・あんな男の服を着てる兎に。

 見逃したらいけない、絶対に大切なヒントが潜んでいる。

 沙紀を眠らせた誰かが・・私達の間違いに、ヒントを出そうとしてる。

 【不思議の国のマキ】という素敵な物語の中に・・大切なヒントがある」


シズカは笑顔でそう言った、女性達がその言葉でハッとした。


「そうだろうね・・絶対にそうだね、マキがヒントを探し出すね」とユリカが微笑んで。

「エースは絶対に二ヤしてるね・・全員見逃すなよ、自分で感じろ」とリアンが言って。

「そう・・自分で感じてね、答え合わせはこの世界じゃ出来ないよ・・その答えこそが、由美子に続く道なんだから」とアンナが強く言った。


「了解」と女性達が笑顔で返して、モニターを見た。


「良かったな、小僧・・アンナさんが入れて。

 道を繋いだな、小僧・・お前が安奈を愛したから、全てを賭けたから。

 心のテーブルに、蘭姉さんとユリカ姉さんを乗せて。

 その2人を賭けて、安奈を愛したから・・アンナさんはあそこに居る。

 沙紀を探し出してくれる・・それがあの素敵な、アンナさんの後悔。

 自分で言葉を封印した、安奈にこそあるんだよね。

 封印解除の鍵が・・沙紀の氷を融かす方法が・・あるんだろうね」


マリは私に笑顔で言った、大御所達が沈黙して私を見ていた。


「やはりそうでしたね・・だからエースは最初から、アンナにこだわりましたね」とユリさんが薔薇で微笑んだ。


『そうです・・俺は安奈の時に感じたんです。

 安奈がすぐに言葉を取り戻したから、そして沙紀の言葉に触れて。

 沙紀が安奈に言った・・安奈は覚えてて良かったね。

 笑顔も言葉も覚えてて、良かったねと言った言葉で。

 俺はミホの突破口を確信して、沙紀の言葉の復活もイメージ出来た。

 でもその方法は分からない、安奈は無意識にやっていたから。

 俺にはその封印の方法も、解除の方法も分からなかった。

 でも・・母親のアンナは何かを感じた、それは瞳の変化で分かりました。

 それは言葉で表現出来ない事でしょう、でもその場面が来たら気付く。

 そう思ったんです・・だから今回、俺はアンナにこだわった。

 アンナの進入こそが、成功率を確実に上げる・・難解な問題の解答に近付く。

 氷に閉ざされた沙紀の言葉・・その氷の融かし方を導き出せる。

 アンナなら導き出す・・それがアンナにとっての、母としての後悔だから』


私はモニターに映る、アンナの集中した顔を見て言った。

女性達の笑顔を背中に感じていた、マリも笑顔でアンナを見ていた。


「ここだよな~・・罠の看板があるから」と言ったマキの声で、私はメインモニターに視線を移した。


マキは鬱蒼と茂る森の入り口で、看板を見て止まっていた。

その古びた木の看板には、【眠れる森】と書かれてあった。


「行くしかないね・・看板に書いてあるんだから」とマキは口元で二ヤを示して。

森の奥に続く小道を、ゆっくりとZⅡで走っていた。


かなり奥に入り、マキは慌ててブレーキをかけてエンジンを切った。

マキの前方50m先に、小さな人間が1列で歩いていた。

その身長は20cmほどで、何かを歌いながら歩いていた。


「出たね・・小人こびと・・7人だろうね~・・それは知ってる」とマキは二ヤで言って、バイクを降りた。

そしてサングラスをかけたまま、足早に小人の後ろに追いついた。


「ハイホ~・・ハイホ~・・ハイホ~」と楽しそうに小人達は歌っていた。


「その歌詞しかないのか?・・どうして6人なんだ?」とマキは後ろから声をかけた。


小人達が驚いて振り向いた、その小人の顔を見てマキが地面に膝を着いた。

そして右手の拳で、地面を叩きながら爆笑した。


小人は限界カルテットと中1トリオだった、全員がコントのような髭を付けていた。

可愛い小人達は、爆笑するマキをウルで見ていた。


「可愛い~!・・可愛いです~・・特に美由紀小人ちゃんが~」と美由紀が笑顔で叫んで。

「欲しい・・ヨーコ小人ちゃん」とヨーコが笑顔で言って。

「私もマスコットに欲しいな~」とシズカが笑顔で言った。

恭子も沙織も秀美もニコニコちゃんになっていた。


「変な服着た・・性格の悪そうな生物だね」とシズカ小人が二ヤで言って。

「目が変だった・・夜の湖面みたいな目だった、きっと盲目よ」と恭子小人が言って。

「男なの?・・でも胸が少し・・ほんの微かに・・ちょびっとだけ出てたよ」とヨーコ小人が言って。

「男だよ~・・あんな髪型、女じゃないよ~」と沙織小人が言って。

「なら・・もしかして・・眠りを覚ましに来たの?」と秀美小人が言って。

「お腹空いた~・・ねぇお腹空いたよ~」と美由紀小人がウルで言った。


「ひどいです~・・あんまりです~・・私だけ設定が違います~」と美由紀がウルウルで言って。

「リアルな設定だね~」とリアンが二ヤで美由紀に言って、女性達が二ヤで頷いた。

美由紀は必死にウルウルで抵抗して、大爆笑を呼び覚ました。


「ふ~・・脇腹が痛い・・ねぇ・・1番可愛い小人ちゃんは?」とマキが笑顔で小人に言った。


「1番可愛い?」と6人の小人が、腕組みをして考えた。

その表情が可愛くて、マキは楽しそうに笑っていた。


「まさかね~」とヨーコ小人が二ヤで言って。

「やめてヨーコ・・それ以上言うと、笑うよ」とシズカ小人が二ヤで返した。

「ほんとだよ・・笑わせないでね」と恭子小人が二ヤで言った。


「ヨーコ・・言いなさい」とマキが二ヤで言った。

「もう一人はマキだよ・・でも1番可愛いって・・間違ってるよ~」とヨーコ小人が二ヤで言った。


「その二ヤは自分だと思ってるね・・まぁ良いでしょう、で・・マキは?」とマキが言った。

「王子様を探しに行きました・・姫が悪い魔女の、眠りの魔法にかけられて」とシズカ小人がウルで言った。


「沙紀姫?」とマキが驚いて言った。

「沙紀姫は・・まだずっと深い、森の奥だよ・・ここにはグリーン姫がいるの、森の入口だから」と秀美小人が言った。

「ほう・・それで、眠りの魔法を解く方法は?」とマキが二ヤで言った。

「それはね」と沙織小人が言った時に、馬の走る蹄の音が聞こえた。


小人達が慌てて木陰に隠れたので、マキも一緒に木陰に隠れた。

王子らしき男が乗る白馬が駆けてきて、王子の胸にしがみ付いた小人のマキが見えた。


「可愛い~・・なんて可愛いの~・・小人のマキ」とマキが笑顔で呟いた。


「見つけて来たんだ!・・マキ」とシズカ小人が叫んで。

「どうしよう・・起きるとこが、見たいな~」と恭子小人がウルで言って。

「お腹空いたよ・・ねぇお腹空いたよ~」と美由紀小人が言った。


「馬に乗るかい?・・魔法を解く方法を見せてくれるなら、乗せて行くよ」とマキが二ヤで言った。

ミラーサングラスに映る、6人の小人は笑顔で頷いた。


マキの走る後ろを、小人が可愛く走って。

マキがバイクに跨ると、マキの後ろに一列になって、小人が背中を掴んで乗った。


「掴まってろよ、離すなよ」とマキは二ヤで言って、小人達が緊張気味に頷くのを確認した。

マキはゆっくりと走り出し、王子に追いつく為に少しスピードを上げた。


小人達はその速さに目を見開いて、鼻を垂らしてしがみ付いていた。

その表情があまりにも可愛くて、女性達は楽しそうな笑顔で見ていた。


マキは小さなログハウスのような家の前で、白馬から降りる王子を確認してエンジンを切った。

そのまま惰性で進みながら、王子の顔を見て笑顔になった。


「まさに王子だね~・・さすが小人のマキ、凄いの見つけて来たね~」とマキは木陰にバイクを止めて言った。


その王子が小人のマキを抱き上げて、笑顔で小人のマキを見た。

その時に王子の顔がアップになった、それは豊だった。


「ダッメ~・・ぜっっっっったいに、駄目~・・沙紀になら良いけど、他の女にはダメ~」と恭子が叫んだ。

「諦めな、恭子・・沙紀の王子のイメージは、豊しかいないんだから」とカスミが恭子に二ヤで言って、恭子がウルを出した。。


「カスミ・・あんたはもう登場したよ、だからグリーン姫じゃないよ」とホノカが二ヤで言って、今度はカスミがウルを出した。


「あの小窓から見て下さい・・助かりました、ありがとう」とシズカ小人が言って、6人の小人がマキに頭を下げた。

「ありがとう・・元気で暮らせよ・・いつまでも7人で仲良くな」とマキは笑顔で言った。


6人の小人も笑顔になって、ログハウスに駆け出した。

マキは嬉しそうに、その小さな背中を見送った。


「仲良く暮らせるよな・・お前達なら」とマキは小さな背中に囁いた。


優しい瞳はミラーに隠されていたが、映像を見る全員の心には見えていた。


マキの優しさの根源が、そしてなぜマキが選ばれたのか。


全員がそれを感じていた、マキの後ろには白兎が立っていた。


俯いて泣いているような、白兎の背中が映像に映されていた・・。




 





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