【冬物語第三章・・深海の誓い⑩】
幻想の世界に舞い降りた、リアルな時代の人間。
その現代の人間ならば、何を伝えられるのだろうか。
歴史と経験を背負って、心の言葉が出せるのだろうか。
豪華な伝統芸術で飾られた2階の廊下を、マキとシンデルラは笑顔で話しながら歩いていた。
そして大きな扉が自動的に開かれ、西洋の古い年代物の家具が置けれたゲストルームに入った。
マキとシンデルラは、笑顔で大きなソファーに座った。
「ジャスミンティーでございます~」とマキの前に美しい花柄のカップが置かれた。
マキは置いた女性の方を見て、慌てて立ち上がった。
「すいません、カスミ姉さん・・私がやりますから」とマキは慌てて言った。
「またまた、ご冗談を・・私がメイドですから、私の仕事です・・それに姉さんなんてお付けにならないで下さい」とカスミメイドが微笑んだ。
マキは固まっていた、カスミメイドはエミ位の身長で、小さく可愛い感じだった。
実物よりもかなり小さく、可愛さが主張していた。
「そうだったね・・ご苦労さん・・カスミ」とマキはニヤニヤで言った。
「何かございましたら、そちらのハンドベルでお呼び下さい」とカスミメイドは笑顔で頭を下げた。
「うん・・分かった・・お仕事頑張りなさい・・カスミ」とマキは楽しそうな笑顔で言った。
「ありがたきお言葉です・・頑張ります」とカスミメイドはもう一度頭を下げて部屋を出て行った。
マキがニヤニヤで小さなカスミを見送っていると、隣から声がした。
「ありがとう」とシンデルラの声がした。
マキがその方向を見て、最強二ヤを出した。
可愛いリョウメイドが、シンデルラにお礼を言われていた。
「リョウだね・・1つ聞きたいんだけど、ホノカメイドもいるのか?」とマキが笑顔で聞いた。
「はい・・衣装担当におります」とリョウメイドが笑顔で返した。
リョウメイドも小さくて、魔性の片鱗も無く可愛かった。
「それで・・3人組の呼び名は何?」とマキがニヤニヤで聞いた。
「はい・・奇跡のメイドです」とリョウメイドが可愛い笑顔で答えた。
「素敵な呼び名だね・・頑張りなさい・・リョウ」とマキは必死に笑顔を抑えて言った。
「ありがたきお言葉・・頑張ります」とリョウメイドも笑顔で返して、頭を下げて部屋を出て行った。
「気持ち良い~~・・最高の気分だ~」とマキが天井を見上げて笑顔で叫んだ。
「限界です~・・笑いで戻されそうです~・・パニックになりそうです~」と美由紀が笑いながら言って。
「奇跡のメイド・・正に奇跡だ~」とリリーがカスミを見ながら大爆笑して。
「楽しみだね~・・ホノカメイドが」と蘭がホノカを見ながら笑って。
「メイドなら、まだ良い設定かもですよ~・・可愛いから~」とホノカが二ヤで返した。
その言葉で久々の静寂が訪れた、女性達はそれで緊張した。
「私は・・配役はいらない・・自分でも考えたくない、沙紀の私に対するイメージを」とリアンがウルで言った。
「良かった~・・メイドで」とリョウがネネに二ヤで言った。
「帰りたくなってきた・・絶望する前に」とネネがウルで言って、爆笑が戻ってきた。
「楽しそうですね、マキ姫」とシンデルラが笑顔で言った。
「姫を付けないでよ・・背中が痒くなるから・・マキで良いよ、シンデルラ」とマキは笑顔で返した。
「ありがとう、嬉しいな~・・マキ」とシンデルラは美しい笑顔で返した。
「しかし、本当に綺麗だね~シンデルラ・・ブルーの瞳はリンダ姉さんに近いけど、顔立ちはマチルダ姉さんに近いな~」とマキはシンデルラを見ながら呟いた。
マキに見られるシンデルラの頬が染まり、美しい照れた笑顔でマキを見ていた。
マキはそれに気付かずに、シンデルラの美を盗もうと観察していた。
「最悪の展開です~・・一番恐れた展開です~・・後悔する前に出撃許可を~」と美由紀がウルで叫んだ。
「却下・・シンデルラの大切な出会いを、邪魔はさせないよ~」とユリカが二ヤで言った。
「なぜか・・素敵な物語の予感がしますね~」と小夜子がマキを見ながら呟いた。
女性達が全員笑顔でモニターを見て頷いた、美由紀もウルで頷いた。
その時画面が引かれて、3人のメイドと白兎がマキを見ながら、廊下で話す背中が映された。
「今更・・足りないのが王子と言われても・・無理だよ」と白兎が3人のメイドに言った。
「いける・・あの人なら、完璧に王子でいける」と可愛いホノカメイドが二ヤで言った。
「ね~・・いけるでしょ、私もそう思うよ」とリョウメイドが二ヤで言って。
「何でだろう・・良い子なのに、生意気だと感じる・・不思議な子だよね」とカスミメイドが二ヤで言って。
リョウメイドとホノカメイドが二ヤで頷いた。
「だがね~・・男装をどうやって頼むんだ・・失礼な事だよ」と白兎が返した。
「お任せを・・ノリノリでやらせますから」とホノカメイドが二ヤで返して。
「プランCだね・・持ち上げれる、最高地点まで持ち上げる」とカスミメイドが二ヤで言って。
「大丈夫・・あの子は単純そうだ」とリョウメイドが二ヤで言った。
「ほぉ・・シナリオが有るのかな?・・最高の展開だね」とミチルが二ヤで言った。
「有りそうな感じですよね、それにシーン割りも凝ってます・・映画みたいなカメラアングルですね」とユリさんが薔薇で微笑んだ。
『それはそうでしょう・・沙紀のイメージの世界ですから。
全てを立体的に捉えていますね、下書きを光に翳して後ろからの動きを見る。
そんな沙紀の世界ですから、完璧な映像を作り出している。
沙紀は多分登場しませんね、沙紀は夢の中では映画監督でしょう。
自分の物語を作り出している、その中に沙紀の動かしていない者が入った。
マキの存在がどんな物語に進行させるのか、沙紀は今は観客になって見てる。
いや・・観客じゃなく、カメラマンでしょうね・・だからアングルにこだわる。
楽しみですね~・・今後の展開が、何かヒントも有りそうだし』
私は大御所達に笑顔で言った、大御所達も笑顔で頷いた。
「マキ姫様・・お着替えの準備が整いました」とシンデルラと話しているマキの背中から声がした。
マキは振り向いて最強二ヤを出した。
「ご苦労、ホノカ・・行こうかね」とマキは笑顔で言って立ち上がった。
「こちらでございます」と言って、ホノカが先に歩いた。
「ちょっと行って来るよ」とマキがシンデルラに笑顔で言った。
「はい・・ここで待ってますね」とシンデルラは頬を染めて笑顔で言った。
そのシンデルラの表情を、カスミメイドは見逃さなかった。
リョウメイドとマキの後ろを歩きながら、小声で言った。
「作戦変更・・プランG・・泣き落としでいくから、私に合わせて」とカスミメイドがリョウメイドに二ヤで言った。
「了解・・ホノカは大丈夫だよ、すぐに合わせるから」とリョウメイドが二ヤで返した。
ホノカメイドに案内されて、マキは豪華な衣装部屋に入った。
数え切れないドレスが用意されていて、マキは少し緊張した表情になって選んでいた。
ドレスを選んでいるマキに話し声が聞こえた、マキはその方向を見た。
「どうにかならないの、シンデルラ姫は嫌がってるのに」とカスミメイドがリョウメイドに言った。
「でも・・あの男爵のお気に入りだから・・誰か素敵な王子様がエスコートすれば、男爵も諦めるけど」とリョウメイドが真顔で返した。
この会話で、ホノカメイドは作戦変更を感じたのだろう。
「駄目よ2人とも・・マキ姫様が、ドレスをお選び中ですよ」とホノカメイドが2人に言った。
「良いのよ・・詳しく話しなさい」とマキは真顔で2人に言った。
「はい・・シンデルラ姫は、今夜初めて招かれました・・でも招いたのは、オヤジ男爵で」とカスミメイドがウルで言って。
「そのオヤジ男爵は、お金で何でも手に入ると思ってる・・いやらしい人なんです」とリョウメイドがウルで言って。
「何とか助けたいんですけど・・今夜初めてのお客様に、王子さまがおられなくて」とカスミメイドが目に涙を溜めて言って。
「初めてのご招待のお客様で、せめて男性の招待客でもいらしてれば・・何とかなったんですけど」リョウメイドも目に涙を溜めた。
「仕方ないでしょ・・今夜が初のお客様は、シンデルラ姫様とマキ姫様の2人なんだから・・2人とも、【女性】なんだから」とホノカメイドは、女性を強調して言った。
その言葉を聞いて、カスミメイドとリョウメイドは涙を流して頷いた。
「待って・・私が男の衣装を着れば、誤魔化せると思う?」とマキが真剣に聞いた。
「それは大丈夫ですけど・・そんな事は、命令されないと出来ません」とホノカメイドが返した。
「命令だよ・・王子の衣装を持ってきなっ!」とマキは二ヤで強く言った。
3人のメイドはそれで笑顔になって、部屋の奥に走って行った。
マキの見えない場所まで走り、3人で二ヤを出して互いにタッチをした。
「どうしよう・・私が行きたくなった・・ワクワクが止まらない」とユリカが最強爽やか笑顔で言って。
「却下です・・それは却下です・・アンナ副艦長、却下願います」とミサキが慌てて言った。
「不公平な判断として、私とリアンで却下します」とアンナが二ヤで言って、リアンも二ヤで頷いた。
ユリカはウルウルを出していた、その表情が再び爆笑を連れて来た。
マキの前には、3人が選んだ衣装が3種類置かれていた。
3着全てが、キラキラの派手な装飾品が付いてる服だった。
マキはそれを見てウルを出して、ホノカメイドを見た。
「ホノカ・・こんな派手な衣装しかないの?・・スーツで良いよ、無いの?」とマキが言った。
「そうですか~・・少し残念ですが、タキシードなら有りますが」とホノカメイドが笑顔で返した。
「命令です・・それにして」とマキは二ヤで強く言った。
ホノカが裏に走り、マキの首のサイズをカスミメイドが測った。
「マキ姫様・・その素敵な白い衣装は、脱げないのでしょうか?」とリョウメイドが言った。
「えっ!・・これは、脱げない」とマキがウルで返した。
「問題無いですよ、その上から着ましょう」とホノカが白いタキシードを持ってきて言った。
「白か!・・花婿みたいだな~」とマキが驚いて言った。
「若い男性ですから・・晩餐会なら、白です」とホノカメイドが強く返した、マキはウルで頷いた。
カスミメイドが胸元にヒラヒラのびだが入った、ドレスシャツをマキに着せて。
マキがタキシードのズボンを穿いて、リョウが白い蝶ネクタイを結んだ。
そしてマキがタキシードの上着を着て、鏡の前に立った。
細身の長身の体が引き立ち、長い足が強調されて。
少林寺で鍛えた体が、真直ぐに美しく立たせていた。
女性達は息を呑んでその姿を見ていた、男の私でさえ素敵だと思っていた。
「ここにお座り下さい、髪を整えます」とホノカが化粧台の椅子を示した。
マキは笑顔で鏡の前の椅子に座った、カスミメイドもリョウメイドもマキの姿を見て笑顔を出した。
「晩餐会用に、オールバックにしますね」とホノカメイドが鏡越しに笑顔で言った。
「よろしく」とマキは少し永ちゃん口調で微笑んだ。
ホノカは整髪料を手に付けて、両手でマキのリーゼントを前から後ろに流した。
それだけで、マキは2歳は年上の男になった。
ホノカは櫛を手に取り、ゆっくりと前から後ろに髪を流した。
リーゼントの前髪が全て後ろに流され、マキは真顔で自分の顔を見ていた。
ホノカが櫛を入れる度に、マキは1つずつ歳を重ねてるようだった。
「どうでしょう?」とホノカメイドが仕上がりを見て笑顔で言った。
「良いね~・・さすがホノカだね」とマキは笑顔で返した。
「行きたい・・マキの側に行きたい、シンデルラに嫉妬しそう」とユリカが呟いた。
「私でもそう思った、初めての感覚だよ・・宝塚好きの気持ちが、少し分かった」とリアンが呟いて。
女性達はモニターに釘付けになり、真顔で頷いた。
マキが振り向くと、リョウが胸ポケットにチーフを入れて。
マキが用意された白い靴を履くと、カスミが真白な帽子を差し出した。
「ありがとう・・ジュリーみたいで、イカスね~」とマキがジュリーを真似て少し斜めに被った。
右目が微妙に隠れて目の周りの光が遮られ、危険でセクシーな雰囲気が出た。
「蘭・・私の手を握ってて、バスから飛び出さないように」とユリカが隣の蘭にウルで右手を出した。
「はい・・私でも飛び出しそうです、あのマキの横を歩きたい」と蘭が満開で微笑んだ。
ユリカも笑顔で頷いて、モニターに視線を戻した。
「どうだい?」とマキはクルッと1回転して、帽子を押さえて斜に構えた。
まるで歌い終わった、男のアイドルのようにポーズをつけた。
3人のメイドは自然に拍手をしていた、3人とも嬉しそうな笑顔だった。
「合格だね・・可愛いシンデルラを、エスコートしてくるよ」とマキは3人に微笑んで部屋を出て行った。
「やばかった~・・私、ドキッとした」とカスミメイドが笑顔で言って。
「私も・・見惚れてたよ」とリョウメイドが笑顔で言って。
「私なんて・・キュンとしてしまった」とホノカメイドが笑顔で言った。
「急ごう・・見たいから、社交界に鮮烈にデビューする・・ミスター・マキを」とホノカメイドが言って、2人が笑顔で頷いて走り出した。
マキは受け入れていたのだろう、生まれて初めてそれを望んだのだろう。
友になったシンデルラの為に、マキは颯爽と歩きゲストルーム目指していた。
途中廊下ですれ違う、ドレスの女性達がマキを見て頬を染めて軽く会釈をした。
マキも男らしく微笑みの会釈で返して、女性達の頬を色濃く染めていた。
マキはゲストルームの入口に立ち、シンデルラを見て微笑んだ。
「行こうか・・シンデルラ」とマキはシンデルラに笑顔で声をかけた。
振り向いてマキを見たシンデルラは、完全な凍結でマキを見ていた。
「そんなに見るなよ~、照れ臭いだろ・・ドレスが似合わなくてね。
同伴してくれよ、ばれないように側にいてくれよ・・シンデルラ。
私で良いかな?・・美しいシンデルラ姫のエスコートは」
マキは美しい微笑で言った、その言葉でシンデルラは立ち上がった。
「ありがとう・・私の緊張感を感じてそうしたんでしょ、マキ・・本当に嬉しいよ」とシンデルラはマキの腕を組んだ。
「割と大きいな、シンデルラ」とマキは真横のシンデルラに、私を真似て二ヤで言った。
「そうよ・・惚れても良いよ、マキ」とシンデルラは初めて美しい二ヤを出した。
「よし・・少し緊張が解けたね、二ヤも綺麗だよ」とマキは笑顔で言って歩き出した。
「来て良かった・・望んで・・願って・・良かった」とシンデルラは美しい笑顔で静かに囁いた。
映像は仲良く腕を組み廊下を歩く、2人の背中を見送るように映していた。
静寂の空間が3ヶ所に出来ていた、空母とバスと管制室の3ヶ所に。
女性達はワクワクしながら見ていたのだろう、女心を理解する理想の男を。
安心感さえ与える、最高の男装の麗人を沈黙して見ていた。
大広間の前で、白兎が笑顔で待っていた。
「これは素敵なお2人の登場ですね、最高の席をご用意しています・・こちらです」と白兎が歩き。
その後ろを楽しそうな、マキとシンデルラが腕を組み歩いていた。
着飾った人混みの後ろを通り、2階のテーブルに白兎が招いた。
白兎が手を出したので、マキは帽子を脱ぎ白兎に渡した。
マキとシンデルラは、1階の大きなフロアーが見渡せる席に、向き合って座った。
マキはオーケストラの後ろの壁に有る、大きな時計を見ていた。
「お食事を運ばせます・・何かありますか?」と白兎が言った。
マキは二ヤで白兎を手招きした、白兎はマキの側に寄った。
「男装のお礼して・・あの時計を10分進めて・・よろしく」とマキは白兎の大きな耳元に二ヤで言った。
白兎はウルウルで頷いた、マキはニヤニヤで頷いて白兎を見送った。
「駄目・・そんなに素敵な話にしたら・・駄目だよ」と美由紀は静かに呟いて泣いていた。
「10分に込めるんだね・・灼熱の想いを」とナギサが涙を流し静かに言って。
「ありがとう、マキ・・本当に素敵だよ」とシオンが泣きながらモニターに囁いた。
マキとシンデルラが笑顔で乾杯をすると、オーケストラの音楽が響いた。
沢山の紳士と淑女がフロアーに出て、クルクルと回りながら踊っていた。
「私ね・・ダンスも出来ないの・・私・・何も持ってないのよ」とシンデルラがフロアーを見ながら言った。
「持ってるよ、シンデルラ・・あのダンスをしてる人達って、楽しいの?
あの笑顔って、心から楽しいから出てると思う?
同じ踊りを必死に覚えて、それを間違わないように必死に踊って。
楽しくないよね・・踊るって・・もっと違う事だと思うのよ。
私に基本中の基本を、ダンスの基本を教えてくれた親友がね。
久美子って言うんだけど、ピアニストなの・・素敵なピアニスト。
その子が言ったのよ・・楽しまないと駄目だって。
それが踊るとか、音楽とか、絵を描くとか・・その基本なんだって。
元々は多分・・神事なんだよね、大昔の人が神に祈った。
天災を避けたくて、豊作を祈りたくて・・音を鳴らし、踊ったんだよ。
その時は・・笑顔だったよね、笑顔じゃないと届かないよね。
それが大切なんだと思うよ・・シンデルラ、何が欲しいの?
何かが欲しくて生きてるの?・・どうして人と比べるの?
あなたは持ってるでしょ・・健康な体を、それ以上の何が欲しいの。
教えて、シンデルラ・・交換してあげる、その健康な体と」
マキの真剣な瞳が、シンデルラの凍結して涙を流す顔を映していた。
その瞳に微塵も嘘は無かった、シンデルラもマキから目を逸らす事はなかった。
「ごめんね、マキ・・何も無いよ、それに変わる望みなんて」とシンデルラはそう言って笑顔に戻った。
「だいたい・・そんなに綺麗なんだから、贅沢だぞ・・シンデルラ」とマキが笑顔で言った。
「だから・・ごめんなさ~い」とシンデルラはウルで言った。
それから楽しい話を2人はしていた、フロアーのダンスが止まって。
オーケストラが休憩に入った、マキが時間を確認した時に目に入った。
ピアノに座る久美子が見えたのだ、マキはそれで笑顔になった。
そして立ち上がり、シンデルラに右手を出した。
シンデルラはそれを握って、笑顔で立ち上がった。
「間違ってるダンスを教えてやるよ・・笑いを取りに行こう」とマキが二ヤで言った。
「良いね~・・笑顔で笑顔を取ってやろう」とシンデルラが二ヤで返した。
マキも二ヤで頷いて、帽子を被って1階に降りた。
そして笑顔のシンデルラを、誰もいないフロアーのセンターに引っ張った。
そしてシンデルラを抱き寄せて、形を作って久美子を二ヤで見た。
久美子は2人を不思議そうに見ていたが、マキの二ヤでニヤを返した。
そしてゆっくりとワルツを弾いた、マキはシンデルラを笑顔で見た。
「ワン・・トウー・・スリー・・そうそう・・ワン・・トウー・・スリー・・上手い上手い」とマキは笑顔で足元を見て言った。
「ちょっと・・マキ・・もう少し、ゆっくり」とシンデルラは笑顔で言った。
「ここまでしか知らないって言ったら・・笑う?」とマキは間近にあるシンデルラの美しい笑顔に二ヤで言った。
「もう・・笑ってる」とシンデルラは楽しそうに笑った。
「にゃろ~・・スピードを上げてやる」とマキは二ヤで言って、腕の力を強めて引き寄せた。
「割と大きいだろう・・惚れろよ」とシンデルラは笑顔で言った。
「忘れるなよ・・私は女だよ」とマキは二ヤで返して踊っていた。
会場にいる誰の顔にも、そのダンスを馬鹿にするような笑顔は無かった。
自然に手拍子が沸き起こり、2人のダンスを賞賛しているようだった。
3人の奇跡のメイドが、本当に楽しそうに手拍子の先導をしていた。
「忘れてた・・忘れさせてくれた・・そして教えてくれた・・ありがとう、マキ・・時間が来たの」とシンデルラはマキの腕を振りほどき、泣きながら駆け出した。
マキは時計を見て、久美子に笑顔を送り、シンデルラを追って駆け出した。
久美子は立ってマキを見送った、瞳を潤ませて笑顔を向けて。
「ストップ・・シンデルラ・・大丈夫、あの時計は10分進んでる」と正面の階段の前で、マキは追いついてシンデルラの腕を掴んだ。
「そうなの!・・なぜ知ってるの、マキ」とシンデルラは驚いて言った。
「そんな事、どうでも良いさ・・シンデルラ、ガラスのハイヒールを脱いで・・抱っこしてやるから」とマキが笑顔で言った。
シンデルラは最高の喜びの笑顔を出して、ガラスのハイヒールを脱いだ。
それを右手に持って、マキに笑顔を向けた。
マキは笑顔でシンデルラを抱き上げて、階段をゆっくりと降りはじめた。
シンデルラはお腹にハイヒールを置き、両手をマキの首に回してしがみついていた。
静寂の空母とバスから、すすり泣く女性達の声が無線で響いていた。
「シンデルラ・・自分の望みを感じて、そしてそれを追うんだ。
あの場所には無い・・シンデルラが心から笑える場所は。
シンデルラ・・私もそうするから、親友のシンデルラもそうして。
自分の心に正直に生きるって・・自分の望みに向き合うって。
シンデルラなら出来るよ・・シンデルラなら成れるよ・・何にでも。
だから・・自分に正直に選んで・・女でも選ばれる人間を望むな!
だからハイヒールは持って帰るんだ、シンデルラ・・自分で選んで。
私は約束するから・・自分の道は自分で選ぶって、誓うからね。
シンデルラ・・今夜はゆっくりお休み、また会おうね。
いつの日か、また会おう・・シンデルラ」
マキがそう言い終った時に、かぼちゃの馬車の前に着いた。
シンデルラはマキの顔を見た、マキはシンデルラの泣き顔を笑顔で見ていた。
「うん・・マキ、誓うよ・・親友のマキに」とシンデルラも笑顔に戻り強く言った。
「よし・・約束だよ~」とマキは笑顔で言って、かぼちゃの馬車にシンデルラを座らせた。
「マキ!・・また会えるよね?・・絶対に会えるよね」とシンデルラが窓から顔を出し叫んだ。
「シンデルラ・・忘れなければ、絶対に会える・・私の大切な人の言葉だよ・・絶対に会えるさ、私は忘れないからね」とマキは笑顔で返した。
かぼちゃの馬車は、ゆっくりと走り出した。
「私も忘れない・・絶対に忘れないから~」とシンデルラは身を乗り出して叫びながら、いつまでも手を振っていた。
「素敵な女王になれよ・・・・・シンデルラ~」とマキも笑顔で手を振っていた。
月光が照らすカード柄の道を、シンデルラを乗せた馬車は走って行った。
マキはその方向を見ていた、そして笑顔に戻り月を見ていた。
「忘れないよ・・シンデルラ・・深海の誓いだけは」とマキは月に囁いて。
「沙紀は・・ここには来ないな・・【モグモグ】で探しに行くかな」とマキは自分に向けて言葉にした。
「ありがとう、マキ・・本当に・・本当に素敵な物語だった」とユリカが泣きながら囁いて。
「どこまでも、愛情に溢れてたよ・・よくそこまで伝えたね」と蘭が泣きながら囁いた。
「差し上げます・・第二幕のヒロイン称号を・・灼熱のマキ・ユーリカ・ラントワネットに」と美由紀も泣きながら言った。
「あ~どうしよう・・あ~困った」と言う白兎の声が、モニターに視線を戻させた。
マキの前で、挙動不審の白兎がウロウロと走っていた。
「わざとらしいぞ・・ラピヨン3世」とマキが二ヤで言った。
「これは失礼しました・・マキお姫様」と白兎が返した。
「それで・・困ってる原因は?」とマキが二ヤで言った。
「沙紀お嬢様が・・悪い魔法で眠らされて・・私は今忙しくて・・どうしようかと」と白兎はウルで言った。
「それで・・その右手に持ってるのが、地図なのか?」とマキは白兎から地図を奪い取った。
「そうでございます」と白兎はウル継続で言った。
「ウルの進歩が、奴みたいで・・どうもお前は信用できん」とマキが二ヤで言って。
「でも・・沙紀がいるんなら、私が行って来るよ・・馬はある?」とマキが笑顔で言った。
「今・・馬が出払ってまして・・ZⅡしかありません」と白兎が二ヤで言った。
「良い二ヤだ・・KAWASAKIのZⅡだね」とマキが二ヤで言った、白兎も二ヤで頷いた。
「案内しな・・3世」とマキが白兎を抱き上げた、白兎は城の奥を指差した。
「なぜですか~・・どうしてですか~・・第2幕は完結じゃないのですか~・・つづくですか~」と美由紀がウルで言った。
「違うよ、美由紀・・第三幕の幕開けだよ」とリアンが二ヤで言って。
女性達はワクワク笑顔でモニターを見た、マキは白兎を抱いて城に入って行った。
マキは最後の封印を解く、白兎の策略で・・白兎の中身は二ヤを出していた・・。