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      【冬物語第三章・・深海の誓い⑨】 

眠りの中で見る夢は、不思議とあまり記憶に残らない。

不鮮明な映像と、脈絡の無いストーリーだからだろうか。


だがそれが、圧倒的な描写力を持つ者が見るのならば。

その世界は鮮明に存在するのではないだろうか、そう思ってしまう。

その世界にはルールは無い、楽しむしかない・・心を開放して。


空母の女性達は出撃準備を整えて、モニターに映る海底の女性達を見ていた。

海底の女性達は集中した表情で、笑顔を出して沙織に頷いた。


「シズカ・・難しいと思う?」とアンナが聞いた。

「1回目の流れを、沙織が心で判断できるか・・その判断に、自分の心を任せられるかですね」とシズカが笑顔で返した。

「そうだよな~・・迷いは次の迷いを生み出すからね」とリアンが真顔で言った。

空母の女性達がモニターを見ながら、真剣な表情で頷いた。


「始めます・・悪意の言葉遊び」沙織は二ヤでそう強く言った。


ステージを取り囲む16人の女性達も、沙織の横に立つエミも二ヤで頷いた。


「よ~い・・ドン」と沙織が言って、スタートボタンを押して瞳を閉じた。


円形ステージの升目に文字が鮮明に浮かび、女性達が自分の担当箇所を覚えて戻った。


「早い!・・短い・・難解だね」とシズカが真顔で言った。

「短いと難解なんだ」とハルカが呟いた。


「良いね・・行くよ」とユリカが女性達を見回して、頷くのを確認した。


ユリカ・・恋が揺れる季節。

ミコト・・新たな始まりは寒さの春。

蘭・・・・人の位を段で示して。

リリー・・緑の小山の波が輝き。

小夜子・・雨に煙る紫陽花の道。

美冬・・・茶色の影に愛を託す。

千夏・・・仰げば遠き我が故郷。

カスミ・・げんぷくの喜びに沸き。

ホノカ・・遠距離の出会いが導く。

ウミ・・・忘れ得ぬ日に刻印を焼付け。

レン・・・老人達を想い暮らし。

ミサキ・・まめに投げ打つ声を響かせ。

恭子・・・働く事に疑問を持たず。

スナックA・・桃の彩りに歩き出す頃。

スナックB・・空駆ける赤い残像を夢に見て。

幻海A・・競う事に走り出す。


スムーズに16人が流した、沙織は瞳を開けた。


「季節のループ・・自分が何月なのか確信できる人は、右手を上げて数字を示して」と沙織が叫んだ。

「うん・・そんな感じ、季節が流れてる」とエミが言った。


何人かの女性達が笑顔で右手を上げて指で数字を示した。


「達人・・感想は?」と哲夫が私に二ヤで言った。


『正解だよ・・沙織は最後に少し躊躇した、確認がしたくなった。

 でも大丈夫だよ・・沙織はマキのくれた30秒を使うんだろう。

 3分30秒以内で導き出すよ・・沙織が理解できなかったのは2つだね。

 最初のユリカの恋が揺れる季節と、リリーの緑の小山の波が輝きだろう。

 大丈夫・・沙織もエミも、かなりの段階まで1回で進んだよ』


私は哲夫に二ヤで言った、哲夫は笑顔で頷いた。


「ちなみに・・2つの答えは?」と北斗が二ヤで言った。


『ユリカの・・恋が揺れる季節は、5月5日だよ。

 簡単な天然変換だけど、【恋】という表現には過度に反応する。

 ここがユリカだったからラッキーだった、ユリカはもう導き出してるよ。

 右手で5を出してるからね、恋愛の【恋】じゃなく、魚の【鯉】だよ。

 鯉が揺れる季節なら・・鯉のぼりが揺れる、5月5日の端午の節句。

 次にリリーの・・緑の小山の波が輝きは、少し違うんだ。

 他の言葉は、祭日とかイベントとか・・歴史的な日に関連してる。

 この言葉が1番の難題、強いイメージの季節じゃないから。

 リリーの、【緑の小山の波が輝き】が示してるのは・・八十八夜だよ。

 夏も近づく八十八夜・・その隠された意味は茶畑、それが緑の小山。

 俺はそう思うよ・・後は多分、読み切れてると思うよ』


私は笑顔で言った、大御所達は笑顔になって前に出てきた。

そして小型モニターに映されている、16の言葉を見ていた。


空母ではシズカが私と似たような説明をしていた、そして女性達が集まり16の言葉を見ていた。


海底では・・沙織とエミで女性達を並べ、沙織がユリカの解答を聞いて笑顔を出した。

沙織とエミにユリカが加わり、解明できない言葉を聞いていた。


その時点で1分以上が過ぎていた、私は大丈夫だと感じていた。


「面倒だ・・エース・・教えてくれ、1つずつ言うから」と北斗が言った。

『良いよ』と私は海底の映像を見ながら返した。


北斗・・・新たな始まりは寒さの春。

私・・・・元旦・・寒さの春・・新春。

北斗・・・人の位を段で示して。

私・・・・3月3日、ひな祭り、段飾り。

北斗・・・茶色の影に愛を託す。

私・・・・2月14日、バレンタインデー。

北斗・・・仰げば遠き我が故郷。

私・・・・ひな祭りより後の3月、卒業の頃、仰げば尊し。

北斗・・・げんぷくの喜びに沸き。

私・・・・当然1月15日、成人の日。

北斗・・・遠距離の出会いが導く。

私・・・・7月7日、七夕・・織姫と彦星。

北斗・・・忘れ得ぬ日に刻印を焼付け。

私・・・・8月15日、終戦記念日、日焼けだよ。

北斗・・・老人達を想い暮らし。

私・・・・もちろん、9月15日、敬老の日。

北斗・・・まめに投げ打つ声を響かせ。

私・・・・2月2日、お豆の豆だね、節分だよ。

北斗・・・働く事に疑問を持たず。

私・・・・11月23日、勤労感謝の日。

北斗・・・桃の彩りに歩き出す頃。

私・・・・当然4月上旬、入学の頃。

北斗・・・空駆ける赤い残像を夢に見て。

私・・・・12月24日から25日、クリスマス、サンタだね。

北斗・・・最後・・競う事に走り出す。

私・・・・10月10日、体育の日だろうね。


私はモニターの沙織を見ながら言った、大御所達は私を見ていた。


「ダメダメ・・言葉の世界で小僧を感じたら、驚愕の世界だよ」と一人だけ座ってる律子が二ヤで言った。

「まさに、達人」と北斗も私に二ヤで言って、大御所達は笑顔で話しながら座った。


海底の女性達は最後の一人、リリーの【緑の小山の波が輝き】を考えていた。

元旦のミコトから、全員が順番で並びリリーの言葉を考えた。


カウントは2分を過ぎていた、私はリリーを見ていた、集中してリングが高速回転していた。


「私のが、作為的な表現ですね・・他のと違う・・問題は緑の小山ですね」とリリーが言った。

「山じゃないよね、イメージ的な山だよね」とエミ言った。

「そうだね、イメージ的な小山・・小山の波?」と蘭が呟いた。


「お茶だ!・・私、子供の頃・・遠足で静岡に行きました、茶畑は緑の小山の波です」とリリーが笑顔で叫んだ。

「それだ!・茶畑が輝く頃なら・・八十八夜だね」とミコトが言って。

「それなら、入学と5月5日の間ですね」と美冬が笑顔で言った。


ユリカがリリーを自分の前に入れた、沙織は解答板に入力していた。

その横でエミが、経過時間をカウントしていた。


「2分40秒・・1・・2・・3」とエミのカウントする言葉が響いていた。

沙織はその時点で、仕上がっていたが悩んでる振りをしていた。


「自信がないです~」と沙織はウルで言った。

17人の女性達は、そのウルで沙織の意図が分かった。


「2分50秒・・1・・2・・」とエミのカウントは進んだ。


「沙織・・あなたの責任じゃないわ・・押しましょう」とユリカが必死に真顔を作って言った。


「はい」と沙織は返して決定ボタンに触れた。


その時エミのカウントが。

「3分・・1・・2・・3」に変わった。


沙織は3分3秒で、決定ボタンを押した。

【正解・・3分3秒】とステージ一面に大きな赤文字が現れた。


「やった~」と18人の女性達が笑顔で右腕を突き上げた。


「マキ先輩・・ごめんなさ~い・・怒らないでね」と沙織はウルで言った。

マキはウルを必死に出していた。


「エース・・少しこじつけ的な表現もあったよね、どう思ったの?」とミチルが笑顔で聞いた。


『そう感じるんだよね・・本当に何人かで流したのをバラすとね。

 それを知らずに組もうとすると、こじ付け的な感じを受けるんだ。

 でも違う個性が別々に作るってるから、そうなるんだよ。

 今のが四季の流れ限定でのゲームだったと考えたら、リアルな感じがしたよ。

 どんなジャンルでも得意な人もいれば、苦手な人もいるよね。

 あの・・【緑の小山の波が輝き】を流した人は、得意だったんだよ。

 1年の中の季節のイメージを出そう、そう思うと強い記憶から蘇る。

 元旦とかクリスマスとかね、それを外して別を考えていっても。

 強い方から出てくるんだ・・それなのに、八十八夜が出せた。

 まぁ、お茶に触れながら生活していたのかも知れないけどね。

 そうでないと考えれば、中々のレベルだよ・・八十八夜のイメージを出せたのは。

 こじ付け的な感じを受けると・・逆にリアルだと感じる、案外そんな事も多いよ。

 一人で作ると、綺麗に納得がいくように作ってしまうんだ。

 納得がいかなくて当然・・ギリギリで搾り出したんだから、必死だったんだから。

 今の問題は何人かで、リアルに流して導き出した・・良い問題だったよ』


私はミチルに笑顔で言った、大御所達も笑顔で返してくれた。


メインモニターの映像にカプセルが映し出されて、管制室の全員が視線を戻した。


カレンのカプセルが開き、カレンは笑顔でマキを見た。

マキもカレンに笑顔を向けて、サインを出した。


【必ず】【戻ります】【心配なく】と出して、笑顔で手を振った。

カレンも笑顔で手を振って、大きく開いたドアに向かって歩いた。

そのドアからステージに向けて、急角度のスベリ台が伸びていた。


カレンはその角度と距離を見て、ウルを出して座った。


シオンと久美子の部屋の扉も開き、18人に笑顔で合流した。

20人で話していると、カレンの叫びが聞こえてきた。


「ギャ~~!・・早いよ、早過ぎ~・・止まらない~」とカレンが恐怖の表情で高速で滑って来た。


「戻されなければ良いが・・危ないね~」と蘭が満開二ヤで言って。

「しかし・・カレンファンには見せられない姿だね~」とリリーも二ヤで言った。


カレンはスベリ台を通過して、10m程海底を滑って止まった。

そしてウルウルでお尻を押さえて、ゆっくりと立ち上がった。


「意地悪されました・・絶対に復讐してやる、意地悪してやる」とカレンがウルで言った。

カレンのウルが可愛くて、海底の女性も空母の女性も笑っていた。


その笑い声を切り裂く、秀美の声が響いた。


「レーダーで確認・・空飛ぶ島、左19度・・距離100kmです・・時速10kmで近付いています」と秀美が叫んだ。


「戦闘準備をする・・リアン、上空を任せるよ」とアンナが笑顔で言った。

「もちろん・・お任せあれ~」とリアンが笑顔で返した。


「では・・リアン・ナギサ・ネネ・リョウ・セリカ・ハルカが先発隊。

 今の順番で離陸して、上空にて待機して。

 操縦席は幻海の女性に任せる、攻撃席のリーダーは千鶴。

 攻撃席にアイコ・千春・千秋・マユで上がって。

 他のメンバーも、離陸準備をして待機・・様子を見よう。

 今は速度が遅いし・・何も放出してないから」


アンナが強く言った、女性達の集中が増した。


「了解」と女性達が返した。


アンナの前に、ミホが立ってアンナを見た。


「ミホ・・分かったよ・・ミホも離陸せよ・・離陸して待機」とアンナは笑顔でミホに言った。

ミホはそれを聞いて、無表情で操縦室を出て行った。

リアンが走ってミホに追いついて、並んで階段を下りて行った。


海底のステージには、間の抜けたクラクションが響いていた。

《フォン・フォン》と何度も鳴らし近付いてきた。

古びたタイヤの無い黄色いバスが、浮きながら女性達に近付いていた。


「ケチったね・・こんなんで上がれるの」とユリカがウルで言って。

「バスなのか~・・遅そうだ・・策略だね~」と蘭が二ヤで言って、最初にバスに乗った。


バスの前には、5台のモニターが備えられていた。

21人の女性が乗り込むと、モニターに空母とマキが映し出された。


「発車しま~す・・終点、海上に到着予定は・・45分後です」と機械的な男の声が響いた。

「45分!・・遅すぎだよ、もう少し早くならないの?」と恭子が運転席に向かい強く言った。

「なんせ・・古いバスですから」と運転席のオヤジ形ロボットが振り向いて言った。


その出来の悪い滑稽さに、女性達は呆然とロボットオヤジを見ていた。

バスはゆっくりと上昇して、深海との境に着いた。

バスが透明なシールドで囲まれ、海水が注入された。


「水漏れは無いね・・ふ~、一安心」とミコトが笑顔で言った。

バスの上部シールドが開き、バスはゆっくりと上昇していた。


「カスミ・・何とかして、オヤジだからあんただろ」と蘭が二ヤで言った。

「メカ・エロ・美由紀じゃないんですから・・無理ですよ~」とカスミがウルで返した。

その言葉でバスの中に笑い声が溢れた、美由紀は空母のモニター前でウルを出していた。


「ん!・・止まってるぞ、こらオヤジ・・さぼるなよ」とリリーが言ったがオヤジロボットは反応しなかった。

「何だろう・・故障したように、全てが止まってるね」とユリカが言った。


バスの女性達は真顔で頷いた、その時無線が入る。


「ユリカ・・こっちもだよ、時間が止まった感じだよ・・空の島も止まってる」とアンナが笑顔で言った。

「アンナ姉さん・・やっと無線が入りましたね・・この状況、シズカはどう思う?」とユリカが嬉しそうに言った。


「不可解ですね・・ヨーコ、どう思う?」とシズカが聞いた。


「眠ったんじゃないですか・・沙紀ちゃんが熟睡状態になったとか。

 作為的な感じはないですよね、ならば・・そんな感じですか」


ヨーコは自信無さげにそう言った、女性達も頷いていた。


「そんな感じだよね~・・まぁ様子を見よう、それしか出来ないから」とユリカが笑顔で言って。

「了解」と女性達が笑顔で返した。


「さてと・・私は出る方法から考えないと」とマキの声が無線で響いた。

「マキ!・・無線が入りだしたね」と蘭が嬉しそうな満開二ヤで言った。

だがマキには聞こえてなかった。


「無線交信が出来ない?・・マキに何かが迫ってるのかな」とユリカが真顔で言った。

「多分・・退屈が迫ってますね~」とホノカが二ヤで言って、全員が笑っていた。


その時だった、マキの目の前を小さな白い影が横切った。

マキは慌てて、カプセルを叩いて知らせた。


白い影はゆっくりと戻ってきた。

その白い影は、白兎だった。

2本足で立ち上半身だけに燕尾服を着て、右手に懐中時計を持っていた。


「なんだ・・ウサギか~」とマキは残念そうに言った。

「失礼ですぞ・・これでも・ラービット・ピヨン・3世という名前があります」と白兎は真顔で返した。


「で?・・その・・ラーピヨン・ベッド・3世は・・何してるんだい?」とマキが二ヤで言った。


「ラービット・ピヨン・3世です、人の名前を間違うのは・・失礼ですぞ」と少し怒りを表して返した。

「ごめんよ・・でも長いし難しいから・・ラピヨン3世で良いか?」とマキは笑顔で言った。


「まぁ・・良いでしょう」と白兎は納得してる表情で言った。


この時点で、空母もバスの中も爆笑の渦に包まれていた。

美由紀は脇腹を押さえ涙を流し、シズカも涙を流して笑っていた。


「それで・・ラピヨン3世は、時計見て何してるの?」とマキは笑顔で聞いた。

「あっ!・・晩餐会がありまして、ゲストの方が1人キャンセルされまして・・マーガレット女王様をお誘いしようと思いまして」と白兎が言った。


「マーガレット!・・あの婆さんが・・マーガレット女王だと」とマキが返して、一人で爆笑した。

「失礼ですぞ・・500年も生きておられる、素晴らしいお方ですぞ」と白兎が真顔で返した。


「良い事教えてやる・・マーガレットは488歳だよ、凄くこだわってるから・・絶対に500歳と言うなよ」とマキは二ヤで言った。

「それはありがとうございます、あのお方は難しくて・・対応に苦慮してました・・良い事を聞きました、お礼に何かしたいのですが」と白兎が頭を下げた。


「ウサギにお礼と言われてもね~・・人参貰っても、生じゃ食えないし・・お前じゃこのカプセル開けられないよな~」とマキがウルで言った。

「おや・・出たいのですか」と白兎が言って、胸のポケットからペンを出した。


そしてそのペンで、透明のカプセルにドアノブを描いた。

そして白兎はドアノブを回し、マキのカプセルを開けた。


マキは凍結して立っていた、そして我に返り笑顔でカプセルから出た。


「ラーベット・ボヨン・3世・・やるじゃないか~・・見直したよ~」とマキは白兎を笑顔で抱き上げた。

「ラピヨン3世で良いですよ・・間違うから」と白兎がウルで返した。

「それで・・何の晩餐会なの?」とマキが二ヤで聞いた。


「久々に、沙紀お姫様が帰られたので、ゲストを招いて晩餐会でもてなします」と白兎が笑顔で返した。

「沙紀お姫様がいるの!」とマキが驚いて聞いた。

「はい・・人数が一人足りなくて、困っております」と白兎が二ヤで言った。


「二ヤか~・・お前はどっちだ、悪意の兎か・・それとも使者の兎なのか?」とマキが二ヤで返した。

「私は沙紀お嬢様の執事です・・悪意はありません」と白兎はきっぱりと言った。


「OK・・私が行くよ・・晩餐会に」とマキが笑顔で言って、白兎を降ろした。

「それはありがたい・・お名前は?」と白兎が聞いた。

「マキ」とマキが笑顔で返した。


「マキ様ですね・・ファーストネームとミドルネームは?」と白兎が手帳を出して書きながら言った。

「野球か?・・ファーストとかセカンドとか」とマキは笑顔で返した。

「いえ・・私の場合・3つに名前が分かれてますよね・・マキさんの別の2つの部分です」と白兎が真顔で返した。


「いるのか?」とマキがウルで聞いた、白兎は何度も頷いた。


「じゃあ・・マキ・ユーリカ・ラントワネット・・だよ」とマキが二ヤで言った。

「それは素敵なお名前ですね・・北欧系ですかな・・ロシア系でしょうかね」と白兎が手帳に書きながら言った。

「まぁその辺だよ・・近いよ・・やるね~」とマキは笑顔で言って、白兎の手を繋ぎ笑顔で歩いて行った。


「やばいです~・・絶対にやばいです~・・ヒロインじゃ済まないです~。

 マキ・ユーリカ・ラントワネット姫です~・・不思議の国のマキです~」


美由紀がウルウルで言って、爆笑を煽っていた。


「しかしまずいよ、美由紀・・マキは知らないよ、絵本なんて絶対に読まない子だったから」とシズカが二ヤで言った。

「アンナ副艦長・・日本の名誉の為に、このエリザベス美由紀に・・潜水艦を貸してくだちゃい」と美由紀がアンナにウルで言った。


「日本の名誉を守る為に・・却下」とアンナが二ヤで返した。

「ひどいです~・・あんまりです~・・ご機嫌をそこないます~、ディズ○ー様が怒ります~」と美由紀がウルウルで言って、女性達の爆笑が止まらなくなった。


「エース・・この状況を述べよ」と北斗が笑いながら聞いた。


『非常にまずい状況だよ・・沙紀が熟睡に入った。

 あの世界のどこかで、熟睡状態になったんだ。

 沙紀は字が読めなかったから、絵本が大好きだったんだ。

 特にディズ○ー系の絵本は、挿絵が綺麗だからお気に入りなんだよ。

 沙紀は多分・・夢の中ではお姫様なんだよ、沙紀姫なんだね。

 誰でも知ってる登場人物が続々と出てくるよ、沙紀の夢なんだから。

 かなりリアルな映像で、登場してくる・・絶対にまずい。

 シズカが言ったように、マキは絵本なんて読む少女じゃなかった。

 誰でも知ってるけど・・マキは知らないから、平気で入って行くよ。

 笑い過ぎて戻される女性が出ないと良いけど、この想定はマリでもしてない。

 想定外の夢物語・・その主人公が、マキ・ユーリカ・ラントワネットだよ』


私は二ヤで返した、大御所達もマリも哲夫も爆笑していた。


マキは白兎に案内されて透明の世界を出て、トランプ柄の道路を歩いていた。


「カード柄の道って・・派手だな~」とマキは手を繋づ白兎に二ヤで言った。

「リアル感を追求してますから」と白兎は笑顔で返した。


トランプ柄の道路の先に、おとぎの国のお城が見えてきた。

尖った屋根が何本も立ち、その屋根の上に三角の赤い旗が靡いていた。


「あの城にいるのか?・・沙紀姫様は」とマキが笑顔で聞いた。

「今は外出されておりますが、すぐにお戻りになります」と白兎が返した時に、2人の横を馬車が走り去った。


「変な馬車だね~・・あれじゃ、かぼちゃだよ・・センスが無いね~」とマキが二ヤで言った。

「私も初めて見ました・・どなたでしょうかね~」と白兎が手帳を見ていた。


「どっかの田舎の、農家のお姫様だよ・・北欧の隣の、そのまた隣辺りの」とマキが二ヤで言った。

「お名前を確認しましょう・・マキ様も、お城でドレスにお着替え下さい」と白兎が返した。


「ドレスか!・・いよいよドレスデビューか・・か~、緊張するな~」とマキが笑顔で言った。


「もう勘弁してください~・・沙紀お姫様~・・脇腹が痛いです~」と美由紀が笑いながら言って。

「第二幕は・・マジで凄いな~」とハルカが笑いながら言って。

「しかし・・かぼちゃの馬車も知らないのか~・・男だな・・やっぱり」と恭子が二ヤで言った。


恭子の言葉で再び爆笑の波が訪れた、深海で待機するバスは爆笑で揺れていた。


マキは白兎に連れられて、城の前のロータリーに着いた。

かぼちゃの馬車が城の正面に止まっていて、白兎が馬車の扉を開けた。


純白のドレスを着た、美しいブロンドの女性が降りてきた。

マキはその美しさを間近で見て固まっていた、ブロンドの姫はマキを見て笑顔を出した。


「こちらは、はるばる遠い国からお越しになりました・・マキ・ユーリカ・ラントワネット姫です・・失礼ですが、あなた様のお名前は?」と白兎が聞いた。


「えっ!・・シンデルラです」と美しい笑顔で返して、正式な名前を告げた。

マキはその名前を聞いて、笑顔が溢れた。


「シンデルラ姫ですね・・初めてのご招待ですので、大変失礼ですが・・身分を証明できる物をお持ちでしょうか?」と白兎が丁寧に言った。

シンデルラは困った顔をして、白兎を見ていた。


「さすが沙紀・・実名を使うのを失礼と感じてる、凄い子だね~」とリアンが笑顔で言って。

「自分の描写は、ディズ○ーにまだまだ及ばない・・そう言ってるんですね」と千鶴が笑顔で言って、女性達が笑顔で頷いた。


「こら・・ラピヨン、失礼だぞ・・有名な姫に向かって・・シンデルラを知らないのか、無知な奴め」とマキが近寄り白兎に二ヤで言った。

「そうでございましたか・・これは大変失礼しました・・どうぞ城の中に」と白兎が言って、城に招いた。


豪華なレッドカーペットの上を、マキはシンデルラと並んで歩いた。

1階の豪華な装飾の見事さに、マキもシンデルラも笑顔で見回していた。


「そこの階段を上られると、ゲストルームが有りますから・・そこでおくつろぎ下さい」と白兎が言った。

マキとシンデルラは笑顔で頷いた、白兎は懐中時計を見て慌てて奥の部屋に走った。


マキとシンデルラは白兎を笑顔で見送った。


「行きましょうか・・お言葉に甘えて」とマキはシンデルラに笑顔で言った。

「そうですね・・行きましょう」とシンデルラは笑顔で返した。


2人は赤い絨毯が敷き詰められた、緩やかにカーブする大きな階段を上がっていた。


「先程はありがとう・・助かりました、初めてのお城の晩餐会で・・緊張してました」とシンデルラはマキに笑顔で言った。

「そうなの?・・そうだったんだ・・名前しか知らないから」とマキは笑顔で返した。


「あれは助けて頂く、作戦だったのでは?」とシンデルラが笑顔で聞いた。

「そうでもないよ・・ガラスのハイヒールで思い出したんだ・・あなたが素敵な人だって」とマキは笑顔で返した。

「嬉しいです・・実は私・・姫でも」とまでシンデルラが言った時に。

「そんな事・・気にするなよ、美しいんだから・・私より全然この場所にマッチしてるよ」とマキが話を遮って笑顔で言った。


シンデルラはマキを見ていた、マキの横顔は楽しそうだった。


「まずいです~・・あのシンデルラの瞳は、後輩女子の瞳です~。

 異性として、マキ先輩に憧れる・・宝塚好きの、少女の瞳です~。

 今・・物語がいけない方向に走り出しました~、怒られます~。

 ダズニーさんが怒ります~・・ストーリーを戻せる最終兵器。

 エリザベス美由紀の出撃です~・・ユリカ艦長、指示をくだちゃい」


美由紀はウルウルで強く主張した、ユリカは二ヤでモニターを見ていた。

女性達はこれでもかと来る、爆笑の波を受けていた。


「実名を避けた、ダズニーは評価する・・だが危険な最終兵器は、物語が大混乱するので・・却下」とユリカが二ヤで強く言った。


「ひどいです~・・あんまりです~・・沙織が悪い、ハズレを引かないから~・・くじ運の無い、幸薄い女です~」と美由紀はウル継続で言った。

「なんですって、美由紀・・ハズレを引くなよって言ったのは・・あ・な・た・よ」と沙織は二ヤで返した。


「だって・・だって・・こんなに素敵な設定があるなんて・・想定出来なかった~」と美由紀は最後に涙を流した。


「残念だったね・・美由紀、想定が足りなかったね」とシズカが二ヤで言って、美由紀は泣きながら笑っていた。


沙紀の夢の世界に隠されていた、大切な沙紀の宝物が。


マキはただ自分の心で楽しんでいた、だからこそ探し出す。


灼熱の風をおとぎの国に吹き流す、マキはどんな相手でも萎縮しない。


その言葉は自分に語りかける、自分の心に語りかけるのだから。


第二幕のブザーが鳴った、白兎がニヤで鳴らした。


後に神話と言われる・・【不思議の国のマキ】の物語がスタートした。


沙紀の卒業証書を持って、マキは晩餐会の開宴を楽しみに待っていた・・。









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