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      【冬物語第三章・・深海の誓い⑧】 

空の青と海の青は違う、水は透明である。

海の青は空を映してるのだろうかと、幼い私は思っていた。

ボードで沖まで出て、遥かなるアメリカをイメージしながら。


管制室の大御所達も、物語の進行が一段落して笑顔で話していた。


「やっぱり・・ここまでは簡単な設定だったね、奴も1つの目標は達成した」とマリが二ヤで言った。

『そうだよね・・女性達を2つに分けたんだから、それも絆の強い者をね』と私も二ヤで返した。


「リンダさんの伝言なんだ・・大切な仲間を失ったって言った、リンダさんの伝言の状況だね」と哲夫がモニターを見ながら呟いた。


「しかし・・さすがにエースの継承者、哲夫も凄いね~」と大ママが笑顔で言った。

「小6でそこまで感じる、凄いですよね?」とユリさんが律子に微笑んだ。


「まだまだ・・ここでの状況なら、哲夫は今解説者だから。

 緊張感が無い・・安心感の中の感覚は、当てにならないんだよ。

 緊張感の中での経験じゃないと、追い詰めれてた場面で自分を信じられない。

 哲夫は自分でも感じてるように、小僧とは経験値が違いすぎてると思ってる。

 それはヒトミの世界に入れなかった後悔が、強過ぎるからなんだ。


 哲夫は本物の愛情を持って、今は由美子と触れ合ってる。

 由美子にとって哲夫の存在は、大切な者だろうね・・小僧よりも近くに感じる。

 由美子の心には・・小僧よりも哲夫の心が近い、だから小僧は今でも短い。

 小僧が由美子と触れ合う時間は、意識して短くしている。

 哲夫や女性達に振り分けてるよね・・大切な由美子の時間を。

 哲夫は感じてるよね、その意味を・・だから集中が上がってきた。

 小僧は由美子の次の段階に、哲夫が重要だと感じている・・だから開花を待つ。


 今回のこの世界・・もう良いだろうから言うけど、もちろん小僧は入れた。

 そして哲夫も入れた・・マリと小僧は、沙紀のこの世界が想定出来なかった。

 だから奴を誘導する為に、自分達の設定を小僧が言葉で強く伝えた。

 それにより奴も乗ってきた・・奴が絶対に分からない事で誘導した。

 それはマリの同調内での全ての事・・奴にはそれは分からない。

 だから奴は必死になる・・奴が読めるのは、多分・・言葉なんだろうね。

 言葉は絶対に脳を経由して出てくるんだ、だから奴は万人の言葉を読める。


 ユリカのこだわる、心の変換速度・・さすが、ユリカだよ。

 そこまで自分1人で辿り着いた、そしてこだわり続けた・・だから出会った。

 小僧に出会ったんだろう・・小僧は心の変換速度が、速いに決まってる。

 小僧はヒトミの相棒なんだ・・そして時の部屋に挑戦したんだから。

 ヒトミの塔でヒトミと話す時には、変換速度で勝負したんだよ。

 奴に読まれるよりも早く、ヒトミに伝える為に・・ヒトミがそれを要求した。

 ヒトミは知ってたよね・・小僧に、変換速度にこだわる出会いがあるって。

 間接的に伝わってたよね、マリの感性はヒトミに伝わっていた。

 マリは1人で戦ったんだから、ヒトミの塔の最深部に入ったんだから。

 10歳で到達したんだよね・・マジシャン婆さんの本家まで。

 何に同調したんだい?・・マリ、もう話せるだろう・・マリは乗り越えた。

 マリ・・どうやってヒトミの塔まで入ったんだい、最深部まで」


律子はマリを見ながら強く言葉にした、マリも律子を真剣な表情で見ていた。

私は驚いていた、律子がマリの覚醒段階をまだ上げろと言ったのだと思って。


「それは・・たった1つの、ヒトミのプレゼント・・小さな木箱」とマリは私を見て微笑んで言った。


『あの、ヒトミの誕生日のお返し・・あれはヒトミの母親がくれたんだよ、マリにって』と私は驚いて言った。


「そう・・お前は間違ってなかった、ヒトミの母親はヒトミの意志を感じてた。

 そしてヒトミの伝言を受け取り、私にあの木箱をプレゼントしてくれた。

 ヒトミに会いに行けない私に、ヒトミが強いアイテムをプレゼントしてくれた。

 だから私は最深部、魔女の館にまで入れた・・あの最強の同調アイテムで。

 あの木箱の中身は・・【へその緒】だったんだ、ヒトミと母親を繋いでいた。

 ヒトミの原点を感じさせる、たった1つのアイテム・・【へその緒】だった。

 母さん・・私が同調に使用したのは、それです・・だからヒトミにも伝わった。

 私の感性が直接伝わった・・私よりも圧倒的に強い力の、ヒトミでしたから。


 だからヒトミは小僧に伝授した、心の変換速度に執着しました。

 小僧にとって大切な3人の出会いを、ヒトミは望んだと思います。

 蘭姉さんとのベンチでの出会いと、それが導くユリカ姉さんとの出会い。

 そしてユリカ姉さんが導く、リンダとの出会いを・・ヒトミは無意識に望んだ。

 その3つの出会いを繋ぐ為の障害、それが変換速度だったのでしょう。

 水のユリカの開放こそが、最も難しいと感じた・・漠然とそう感じてた。

 小僧の手の届く世界じゃないから、人間的なレベルの壁が高かったから。

 だから変換速度だけ突出させた、その部分で勝負するしかなかった。


 ヒトミを覚悟させたのは、私の間接同調だったのかも知れません。

 ヒトミは私の感性で、唯一鮮明に見えた小僧の出会いがあると感じます。

 それは・・由美子です・・小僧が由美子に出会うのを確信した。

 その道はミホが繋ぐ事まで、ヒトミは理解した・・だから自分で繋いだ。

 ヒトミは由美子で勝負したくて、左手を望んだのでしょう・・時間を削って。

 大切な自分の時間を削って、由美子にメッセージを残したのでしょう。

 それを示した言葉こそが、小僧に伝えた大切な言葉です。


 【あなたには、成すべき事があるのよ】


 この言葉を背負い、挑戦を続けた小僧・・ミホが成すべき事だと信じて。

 そして小僧は導き出した、悪意と戦う方法を・・経験で導き出した。

 それが今の状況です・・確実に進んできた、ヒトミの想定した世界まで。

 ヒトミの想定し望んだ世界の鍵が、この沙紀の世界に有りますよね。

 最後の難関の・・触れてはならない、契約の扉の鍵を沙紀は持っている。

 そしてそれを描ける・・沙紀は描くという力を、奴から奪い取ったんです。

 強引にもぎ取った・・あのメモ用紙を見た時に、強い意志で奪還した。

 あのメモの絵画はそう言っています、小僧はあれを潜水艦に持ち込んだ。

 女性達は必死でしたね、小僧の策略を感じて・・涙をこらえた。

 ミホが握り締めてる、メモの絵画を見て・・集中も覚悟も出来た。

 沙紀ならば地図を描ける、沙紀ならば探し出す・・私もそう思います。

 由美子の契約の扉の場所を、そしてその鍵のありかを・・必ず探し出す。

 私は想定でなく、心で言えます・・沙紀ならば契約を解除出来る。

 だって沙紀は、自分の悪意の契約を破棄したのだから。

 父親に対する愛を表現したくて、奴を越えたのだから・・絶対に探し出す。

 沙紀こそが希望です・・由美子の最後の段階は、沙紀とエミです。

 あの2人が鍵でしょう・・モモカもマリアもそう感じてる。

 境界線の内側にいる、2人の天使が・・そう思ってますから」


強烈な言葉だった、マリは北斗を見ながら強く言葉にした。


「マリ・・よくぞそこまで来ました、本当に嬉しかった・・あなたの言葉と、ミホのあの瞳が・・私は何よりも嬉しいですよ」と律子はマリに言って、一筋の涙を流した。


「母さん・・ありがとう・・母さんの強い教えで、年齢や状況を言い訳にさせない・・強い教えでここまで来ました」とマリは笑顔で言って頭を下げた。


静寂の空間に強い熱が入ってきた、その熱を感じて律子もマリも笑顔になった。


「遅いよ、ヒトミ姉さん・・まぁ今からだけど、楽しいのは」と哲夫が二ヤで言った。


「生意気だよ、哲夫・・私は迎えに行ったから、遅れたのよ。

 だから特等席で見るから・・母さん・・ありがとう、嬉しかった。

 そしてマリちゃん、凄いよね・・マリちゃんはいつまでも、私の憧れだよ。

 小僧・・レベルをもう1つ上げるよ、その為に誘ってきた。

 なんせ沙紀の為だから・・ユリアの我慢が限界で、抑えるのが大変だよ」


管制室のスピーカーに、楽しそうなヒトミの言葉が響いた、管制室の全員が笑顔になった。


『OK・・ヒトミ、楽しみにしてるよ・・ユリアを抑えてろよ』と二ヤで言った。

「難しいかも・・爆発しそうで怖いよ・・後で会いに行くね」とヒトミが返してきた。

『了解・・待ってるよ、ヒトミ』と笑顔で返した。


「勝利を確信したよ・・心で確信した」とマリが泣きながら呟いた。

『マリ・・違うよ、ヒトミが目指してるのは・・勝利じゃないよ』と私は意識して笑顔で言った。


「そうだったね・・それがヒトミのこの言葉だったね。

 【勝利者が生まれるから、敗者が生まれる・・絶つべきは、勝利という幻想】

 忘れそうだった・・嬉しくて忘れそうだったよ、大切なこの言葉を」


マリは笑顔で言った、私も笑顔で頷いた。


「それが今回の本題なんだね、その段階に女性戦士を上げるんだね・・ありがとう、ヒトミ」と北斗が泣きながら言って。

「絶つべきは、勝利という幻想・・素晴らしいですね、最良のヒトミの言葉ですね」とユリさんが薔薇で微笑んで。

「それを間接的に表現したのが・・全員が特別の存在なんだね、境界線の内側の言葉」とサクラさんが微笑んで。


「さぁ・・素敵な物語の第二章が幕を上げるよ・・空母が辿り着く」とフネが笑顔で言って、全員がモニターに視線を戻した。


18人の女性達が、形まではっきりと見えてきた空母を見ていた。

ミホの横にはヨーコと美由紀がいて、美由紀がハルカにPGの基本サインを習っていた。

ミホは集中して、そのハルカの手を見ていた。


空母は女性達の300m後方にゆっくりと着水して、女性達の方に進んでいた。

次の瞬間に潜水艦が空母の真横に浮上して、空母と寄り添うように向かってきた。


「シズカ・・潜水艦をどうしよう?」とアンナが言った。


「潜水艦は空母が回収できますから、【モグモグ】だけ海底に戻しましょう。

 【モグモグ】は絶対に出番があるでしょうから、自動操縦で戻しますね」


シズカが笑顔で返した、アンナも笑顔で頷いた。


「秀美・・私が格納庫で準備する、座標を【モグモグ】に入力して。

 座標位置は・・人質のシオン姉さんの横・・30mで良いよ。

 自動操縦の設定をして、私は武器を搭載してくる」


シズカは秀美に笑顔で言った。


「了解です」と秀美が笑顔で返した。


「副艦長・・ありました、空母に収容する方法が」とシノブがアンナに笑顔で言った。


「了解・・【モグモグ】放出して、カプセルの女性達が空母に乗ってから・・潜水艦を空母に収容する、全員準備してね」とアンナが強く指示した。


「了解」と全員笑顔で返した。


空母がプカプカと浮かぶ、カプセルの女性達の真横に来た。

リアンが最初に乗って、ミホの手を取って引き上げて、階段をミホと上っていた。

その後ろを女性達が乗船していた、潜水艦の7人はそれをモニターで確認した。


「シズカ先輩・・入力OKです」と秀美が無線で言った。

「了解・・こっちもOK、出してくれ」とシズカが返した。


「お掃除潜水艦、【モグモグ】・・自動操縦にて、放出します」と秀美が言って、ボタンを押した。


【モグモグ】は潜水艦の上部ハッチから、海に放り出された。

まるで本物のジンベイザメのように、漂うように潜って行った。


その頃、海底の18人は最終ステージの説明を読んでいた。


「言葉を並び替えて、会話にしなさい?・・1行流しかな」とミコトが二ヤで言った。

「そんな感じだよね・・でもスタートを押さないと、文字は読めないね」とユリカがぼやけて読めない、ステージの文字を見て言った。


「升目は・・4×4だから16の言葉ですね」と沙織が笑顔で言った。


「それで設定は・・3分以内が合格で、人質も全員解放。

 それから30秒毎に設定があるんだね~・・厳しいね~」


ユリカが二ヤで言って考えた、女性達も自分の想定をしていた。


その説明板の、時間設定はこうだった。


3分00秒以内・・人質4人と18人の解放。

3分30秒以内・・人質3人と18人の解放。

4分00秒以内・・人質2人と18人の解放。

4分30秒以内・・人質1人と18人の解放。

5分00秒以内・・18人だけの解放。

5分30秒以内・・18人中17人の解放。

6分00秒以内・・18人中16人の解放。


その後30秒毎に、1人ずつ開放人数が減らされる設定だった。


「例えば、1行流しの設定だとして・・16言葉の順番、製作者の沙織ならどう思う?」と蘭が満開二ヤで聞いた。


「多分・・ありありの全てありの設定ですから、3分以内は厳しいですね。

 始まりの言葉なんて、探す暇は無いですから・・繋げるだけ繋ぐ。

 ランダムに繋がる言葉だけを繋いで、最後にその繋いだ言葉を1本にする。

 その方法しか無いですね、ですから・・16の言葉ですよね。

 担当の場所を決めて、その升目を担当者が覚える。

 そして一度回して読み上げる・・そして繋がると気づいた人に寄り添う。

 16言葉ですから、2人余ります・・その2人で繋げるしかない。

 全員が全体を感じようとしたら、奴の思う壺でしょう。

 天然返しも有ると思います・・ただ激しい下ネタは無いでしょう。

 マジシャン婆さんは、それでは面白くないと言った。

 エミに対して、簡単に勝利しても面白くないと言いました。

 だからエミの理解できる言葉ですね、それを繋ぐ・・問題は時間。

 時間に対する、プレッシャーこそが・・最大の難関です」 


秀美は自分の想定を、強く言葉にした。


「なるほどね~・・問題は全体を読む2人、沙織は決定だとして・・誰がなるのかだね」とユリカが笑顔で言った。

「当然・・ユリカ姉さんと言いたいですけど、奴は絶対にそれを設定してる」とミコトが言って。

「ならば・・ミコト姉さんも、蘭姉さんの設定もある・・当然、沙織の設定も」とカスミが言った。


「沙紀ちゃんの暗黒の世界で、エースが使った技・・絶対に奴の設定してない・・ミホを使った行為こそがヒントだね」と蘭が満開で微笑んだ。

「なら・・エミですね、もう1人はエミ・・沙織は外せない、絶対に奴は設定してるけど」と小夜子が笑顔で言った。


「そうしようね・・そして気持ちは楽に持とう、そうしないと時間に負ける。

 最低でこの18人の解放を目指そう、ハズレを引いたのが悲運だと思って。

 目標が3分以内・・最低ラインは5分以内・・駄目なら1人でも多く。

 この2つの世界に奴が分けたのは、絶対に空は今の人数じゃ厳しいから。

 1人でも多く、海上に上がる・・残された人間で、自力で脱出する。

 絶対にその方法は有る・・そう信じて挑もうね、焦らないで」 


ユリカが笑顔で言った、全員笑顔で頷いた。


「脱出の方法が、1つ降りてきましたよ・・【モグモグ】ちゃん」とリリーが上を見上げて笑顔で言った。

「なるほどね~・・マリのリクエストなら、絶対に使用場面が有るんだね」と蘭も見上げて満開二ヤで言った。


「それじゃあ・・担当場所を決めましょう」とミコトが言って、16人で打ち合わせを始めた。


「エミ・・流れだけ感じよう、それしか方法は無いよ・・小僧のMAXレベルをイメージしようね」と沙織が笑顔で言った。

「はい・・エースなら、30秒で答えを出すかな~?」とエミが笑顔で返した。

「多分・・16の言葉を聞いて、10秒後だろうね」と沙織が笑顔で返した。

「そうだよね・・少しでも近づく、私も負けたくない・・ニヤニヤ男に」とエミは二ヤで言って、沙織も二ヤで頷いた。


私がウルウルを出していると、マリが私の肩を叩いた。


「がんばれ、小僧・・お前があんな、モンスター小学生1年生を作ったんだろ」とマリが二ヤで言った。

その言葉で大御所達が笑っていた。


「良いね?・・自分の場所を覚えたね?」とユリカが笑顔で言った。

17人も笑顔で頷いて、沙織とエミの場所に集まった。


「沙織・・作戦と注意事項を教えて」とユリカが言った。


「これは小僧から聞いた事があるんですけど。

 騙しの言葉は同じ言葉を使うんです、同じ言葉を何度も使う。

 それで相手の記憶に植えつけて、イメージを操作する。

 そう言いました・・かなり高いレベルの話ですよね。

 この言葉で感じるのは、同じ言葉が入っていても流れに無い。

 その可能性も有ると言う事です、言葉の同意で判断しない。

 流れを感じる事が大切ですよね、それが基本的な作戦です。


 各自が覚えた言葉を、最初に円を描いてユリカ姉さんから流して下さい。

 そして自分の言葉を持って、流れを感じて下さい。

 それで繋がると思った人の側に行き、もう一度それで全体を流す。

 これで1分は超えるでしょう、2度目で新しく感じた人で集まって。

 3度目を流す・・ここが勝負のポイントです、3度目が勝負。

 小僧はこう言いました・・5回で入る、人間は5回で植えつける。

 だから3度目が勝負・・そして4度目までに答えを導き出す。

 5度目が予備です・・6度目にはいらないイメージが入ってしまう。

 そうなったら、それが大きな障害になります・・それが記憶です。

 単純こそ難解でしょう・・絶対に単純な言葉が出ます。

 焦らずに・・1度目は流れを感じましょう。

 仕上がったら・・そこの回答板に、順番に並んで下さい。

 そして自分の場所を教えて下さい、私が順番を入力します」


沙織は意識して出したのだろう、微妙な笑顔で言った。


「了解・・1つだけ言っとくよ・・沙織、エミ。

 あなた達に責任は何も無いわ・・それだけは忘れないでね。

 あなた達が出来なければ、誰にも出来なかったのよ。

 エースにしか出来なかったの・・それは悔しいけどね。

 ベストを尽くしましょう、ニヤニヤを出されないように」


ユリカは最高の言葉で、17人の気持ちを高めた。

17人が全員笑顔で頷いた、人質の4人も笑顔で見ていた。


17人の女性達が、円形のステージの周りに円を描いて立った。

その時に、ステージに4つのモニターが映し出されて、人質4人の顔が映っていた。


そして文字が現れた、【優先順位を入力せよ】と赤い文字が表示された。


「沙織・・ごめんね、私達は動けない・・あなたが優先順位を入力して」とまでユリカが言った時に無線が切れた。

17人の女性達が悔しそうな顔になった、沙織は目の前の小型モニターに映る4人を見ていた。


「分かりました・・まず、沙紀の為に・・シオン姉さんが1番。

 カレン姉さんが2番で・・ライフル射撃の腕で、久美子姉さんが3番。

 だから・・あらら~・・1番に残されるのが、マキ先輩です。

 ドンマイです~・・マキ先輩なら、1人でも上がって来ますよね。

 灼熱のマキから、ここに残ります・・それが私の設定です。

 あんたも成長しろよ・・こんな状況くらいで、誰の心も揺れないよ。

 上空で待ってろ・・必ずあんたを笑いに行くから。

 灼熱のマキが・・あんたの場所に行くから、その設定はあんたが入れた。

 後悔しなよ・・自分が復活に導いた、灼熱のマキの本当の姿を見て」


沙織は天に向かい二ヤで叫んだ、17人の女性達に笑顔が戻った。

マキは強烈な二ヤを出して、強く頷いた。


そしてマキはPGのサインを出した、【私】【残る】と出したのだ。


「まさか!・・何考えてるの?・・マキ」とハルカが空母の操縦席で叫んだ。

「残るってサイン出したね・・灼熱の女」とリアンが二ヤで言った。


「まずいです~・・又もや来ました、嫌な予感が~」と美由紀がウルウルで言った。

「マキにヒロインを取られる、嫌な予感だね?」とナギサが二ヤで言った、美由紀はウル継続で頷いた。

美由紀のウルで、空母の女性達に笑顔が戻った。


透明のステージを囲む17人は、全員がユリカを見ていた。

ユリカはマキの映像を見ながら、優しい笑顔になり強く頷いた。

それで17人も笑顔で頷いて、沙織を見た。


「エース・・マキは何かに気付いたのかな?」と北斗が言った。

『うん・・多分、【モグモグ】を置いて行けない・・それが自分の、成すべき事だと感じたんだろうね』と振り向いて笑顔で返した。

「それでですね・・あなたは最初から、マキの戦闘機にこだわらなかったですよね・・あれだけの操縦技術があるマキの」とユリさんが薔薇二ヤを出した。


『はい・・第2幕までが俺の策略です、狙いはマキとヨーコ・・ロックしました、灼熱の心に』と笑顔で返した。


「使者が来ると思ってるのか?・・あの場所にも」とマリが二ヤで聞いた。

『来るよ・・マリは100点だった?・・人質の選択』と二ヤで返した。


「実は50点・・シオン姉さんとカレン姉さんは当たったけど。

 最後まで悩んだよ、マキ・久美子コンビとリアン・ユリカコンビを。

 それでやっぱり、最も重要な・・リアン・ユリカコンビにしたよ。

 小僧は100点だったね・・そんな二ヤ顔だよ」


マリも二ヤで返してくれた、私も二ヤで頷いた。


「もちろん、俺は100点だよ・・マリが誘導したんなら。

 リアン・ユリカコンビは残す、俺はそう想定した。

 奴は勝利を望んでないが、簡単に負ける事はそれ以上に望まない。

 だからベストな設定をしてくるよね、そこがマリの狙う事だけど。

 リアン・ユリカは、確かに最も重要な2人だけど、奴はリアンが怖くない。

 リアンの事は読みやすいから、奴はあまり恐れていない。

 ユリカの事は嫌だけど、それでもプラスマイナス0だった。

 シオン・カレンコンビは決定事項だよね、奴は何よりシオンが怖い。

 裏表の無いシオンが読めない、奴はマリの次に・・シオンが怖いんだ。

 それにコンビは、沙紀が友達と思う・・大切なカレンだから。

 この2人は決定事項だった、それは人質の設定を聞いてすぐに分かったよ。

 

 そしてもう一組・・それが問題だった。

 深海が選択の場所になるのなら、絆を裂いてくる・・それがリンダのヒント。

 ならば・・次に奴が読めない相手、それを外したいんだよね。

 ミコトと千鶴、蘭とナギサの可能性は無い、ミコトは嫌だろうけど。

 千鶴と蘭とナギサは嫌じゃない、読めると勘違いしてるからね。

 他の夜の女性達も、今回の設定では・・かなり難しい状況だから。

 奴にはそう邪魔じゃない・・そうなれば絶対にシズカなんだよ。

 奴はシズカを人質にしたい、シズカは邪魔でしょうがないんだ。

 なんせ奴は自分の設定を何度も読まれ、稚拙な策略を看破されたから。

 だがシズカは人質にならない設定になった、それはユリカの判断だよ。

 さすがユリカ・・無意識に感じ取ったね、奴の想いまで感じた。

 

 そうなれば・・ヨーコと恭子が邪魔なんだ・・でもヨーコのコンビはエミ。

 奴はまだ理解してない、今からの言葉並べもそうだろうけど。

 エミの能力の設定を上げてない、上げたとしても小3位にかな。

 幼い=未熟という、自分の考えが捨てられない・・奴の最大の弱点だね。

 だからヨーコの人質もない・・エミがコンビだから。

 次に恭子・・恭子のコンビはミホだよね、全く読めないミホ。

 だけどさっきの婆さんの言葉のように、ミホの事も分かってない。

 ミホは何も出来ない、障害のある臆病な子供だと思ってる。

 その考えこそが大間違いなんだ・・ミホは障害なんて何も無い。

 そしてその心は臆病と最も遠い場所に有る、それが奴には理解出来ない。

 だから恭子も人質にならない・・ミホがコンビだから。


 それならば・・残った中でも、全員を考えても・・マキなんだ。

 そしてマキのコンビは、前回の最も大切な場面で登場した久美子。

 沙紀の心にも強く存在する久美子、それは想定できないから怖い。

 そして奴はマキの怖さを知っている、だからマキに霊感を意識させた。

 幼いマキに、霊感という恐怖の世界を見せて・・封印させた。

 それ程に恐れたんだ・・ヒトミの時にマキを感じて。

 これで決定・・マキと久美子のコンビになった、2組目の人質は。


 この俺の設定を読みきった・・さすがに沙織は読み切っていた。

 だから優先順位が、瞬時に出てきた・・当然、最後はマキだった。

 そしてマキはその設定を超えてきた、自分は残るとサインを出した。

 沙織はサインは分からなかったけど、何かを感じただろう。

 マキは封印を解く・・美由紀が正解だよ、さすが美由紀だね。

 第二幕のヒロインは・・マキなんだよ、マキが封印を解く。

 その力こそが・・灼熱の大地から吹き荒れる、伝説の真希の娘のマキ。

 だがそのDNAに強く残るのは、12.5%の西洋の血なのかも。

 灼熱のマキには、どこか日本人と違う熱がある・・血が繋いだ歴史がある。

 だから奴は恐れ続ける・・自分の後悔を狙われるから。

 忘れる事が許されない、理不尽な自分の役割を・・再確認させられるから』


私は大御所達を見ながら、二ヤで言った。


大御所達も二ヤで返してくれた、マリも二ヤで頷いた。


哲夫は律子の言葉を受けて、集中の中に入っていた。


モニターを全て見回しながら探していた、大切な初恋の相手を。


忘れる事など絶対に出来ない、ヒトミの姿を探していた・・。









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