【冬物語第三章・・深海の誓い⑤】
静寂の深海に集まった、女性達には笑顔があった。
難解な問題には、難解を意識させる罠が存在した。
文章問題と無限に思える組合せで、難解さを演出していた。
女性達が全員集まり、円を描いて立っていた。
沙紀の暗証番号を導き出す為に、その中で1番小さなエミに笑顔があった。
「じゃあ・・生年月日の、196○0523だね。
それと・・00000054だね、あと1つ決めよう。
こんな時は、やっぱり・・エミだよね・・エミ何かある?」
ユリカはエミの笑顔に笑顔で言った、女性達が笑顔でエミを見た。
「暗証番号って・・沙紀ちゃんが決めたんじゃないですよね~?」とエミが笑顔で言った。
「そう言えばそうだよね~・・奴が決めたんだよね」とミコトが返して。
「でも・・ランダムじゃないから、沙紀の1番強く心に残ってる数字だとか」とリアンが笑顔で言った。
「そっか~・・それなら8桁は罠かも、案外1つの数字かもね」とシズカがエミに二ヤで言った。
「そう思うんです・・沙紀ちゃんの1番心に残ってる、1番好きな数字なら分かるよ」とエミが笑顔で返した。
「それを知ってるの?・・エミその数字と・・理由は?」とアンナが驚いて聞いた。
「沙紀ちゃん・・数字が中々覚えられなくて。
沙紀ちゃんは・・千秋・美冬両先生から、最初漢字を習ったんです。
漢字は図形を文字化したのが多いから、図形なら沙紀ちゃんの専門だから。
文字の意味が理解できて、それから私が一緒に平仮名の勉強をしました。
沙紀ちゃん・・平仮名の方が難しかったんです、平仮名は暗記に近いから。
意味が文字に表れないから、沙紀ちゃんには難しかった。
それ以上に難しかったのが、数字なんです・・それこそ暗記だったから。
だからまず私は、1番画像変換しやすい、【2】を教えたんです。
白鳥の絵を2羽描いて、【2】は白鳥さんみたいでしょって。
大きな【2】を書いて、下に水を描いて浮いてるようにして。
上に目を描いて、羽も描いて・・それでイメージを作ってみたんだよ。
これはエースがヒントをくれたんです・・私がどうしようと聞いたら。
画像なら沙紀は一瞬で覚えるよ、特に動物とかは得意だよ。
エースが二ヤで言ったから、私はヒントだと思って考えました。
その時思ったんです、なぜエースは沙紀ちゃんに勉強を教えないのかって。
多分・・エースは沙紀ちゃんとお話できるから、無理なんだって思ったの。
言葉が伝えられる相手には、沙紀ちゃんは言葉を頼ってしまう。
沙紀ちゃんは言葉が1番欲しいんだから、エースは特別の中の特別。
たった一人の言葉で会話出来る相手だから・・でもそれはマリちゃんと違った。
私はマリちゃんから沢山の話を聞いたよ、言葉と2人だけの同調で。
その時・・マリちゃんが言ったの、言葉よりも活字が欲しかったって。
マリちゃんはエースに伝授したんだから、イメージを鮮明に描けるから。
活字の物語を読みたかったって、活字なら自分の好きなイメージを入れれるから。
人から聞いた話は・・どっかに相手のイメージが入ってくるんだって。
だから言葉か活字かと選択を迫られたら、絶対に活字だったって。
【エミ・・沙紀の本心はどうだろうね?・・あれだけの絵を描けるのに】
これがマリちゃんのイメージの世界で、私にマリちゃんが問いかけた言葉です。
私は沙紀ちゃんも活字を望むと思ったよ、沙紀ちゃんの描写も凄いから。
絶対に活字だって思ったよ、そして今話しながら思い出しました。
マリちゃんのヒントを・・絶対にそれだと確信できたよ。
マリちゃんはこの話の後に、こう言いました・・イメージ画像を出して。
お池の上に仲良く浮かぶ、2羽の白鳥を出して話してくれた。
エミ・・人って間違ってしまうんだよ、それは他人と比べるから。
それは仕方のない事だけど・・今の世界は人間の評価をするからね。
入学試験も就職試験も、人間の評価をする為だよね・・知能的な評価。
そこには人間性はあまり加味されない、日本の入試は面接に重きを置かない。
エミなら良く分かるだろうけど、入試勉強が得意な人間もいるよね。
それが能力が高いとは限らない、本物は違うんだ・・本物は理由に迫る。
シズカ姉さんがそうだよね、シズカ姉さんは・・受験勉強なんてしない。
シズカ姉さんは私にこう言ったんだ、私がまだ言葉も出ない時に。
シズカ姉さんはいつも独り言のように、私に色んな話をしてくれた。
私はそれが本当に嬉しかった、だから全部覚えてるよ。
私は何も返せない悔しさを感じながら、全ての言葉を大切に保管した。
あのシズカ姉さんの独り言が、私の言葉を復活させてくれたんだよ。
シズカ姉さんはこう言った、エミには大切な言葉だと思うからね。
だから・・少し早いけど、私から伝えるね・・大切なシズカのバトンを。
マリちゃんがそう言って、私に教えてくれたシズカちゃんの言葉が。
受験勉強は授業を受けてれば出来る、応用力を問う試験でもないんだ。
俺達が考えた教育をどれだけ受け入れたのか、そう問われてると感じる。
押し付けがましい、エリート意識の強い・・ただ受験勉強が得意だった奴。
そんな奴が自分の評価を守る為に、次世代にもそれを要求してるんだ。
お前達も俺たちのような、こんな受験勉強が出来れば・・合格するよ。
こんな勉強をすれば、良い評価が貰えるよ・・それが将来の為だよ。
そう言われてる気がするよ・・私は最近感じてるんだ、沙紀で感じたんだ。
沙紀に文字を教えてる2人の教師は、漢字から教えたんだよね。
馬鹿なエリートには絶対に導き出せない、そう思ったよ・・素敵だった。
平仮名よりも漢字の方が理解出来る、そんな感性だって存在するんだよ。
それが個性なんだよね・・平仮名からだとこだわったら、前に進まない。
沙紀は一生文字は理解出来なかったかも知れない、私はそう思ったよ。
脱帽だったよ、さすがに教育学部を選考してる人だと感じた。
私がマリに教えてる時に、それを感じる事は出来なかったよね。
未熟だよ・・私は未熟なんだよ・・でもそれが好きになってきたよ。
未熟な自分が好きなんだ・・私も小僧の気持ちが少し分かったよ。
そしてユリカ姉さんがなぜ、【最後の挑戦者】とまで呼んだのかも分かった。
小僧は自分の間違いを楽しんでいる、それは次に挑戦出来るからなんだ。
奴は常に上を見上げてる・・それは挑戦こそが自分の生き方だからなんだね。
失敗なんて恐れる訳が無い・・奴はどっかで、それを望んでるんだ。
0から挑戦できる事を望んでる・・それが準備だからなんだね。
命に向き合う、絶対に敗北が許されない時の準備なんだ。
その時に全ての想定がしたいから、失敗まで知りたいんだね。
私もそんな気持ちが理解出来るようになった、あの沙紀の漢字のスタートで。
沙紀にとって・・1番好きな文字は【山】なんだ、こらからもずっとね。
最初に文字を理解できた、大切な文字・・【山】が1番好きなんだよ。
学ぶという本質がある・・沙紀が愛する【山】の中にこそ。
シズカ姉さんはそう言ったんだよ、凄いよね~・・私も響いたよ。
エミ・・忘れないでね、沙紀が1番好きな数字は【2】なんだよ。
沙紀にとっては絶対に、【2】なんだよ・・それはずっとだよ。
その理由は・・初めて覚えたからじゃない、理解できたからじゃない。
エミが探してくれたからなんだ、沙紀にとってはそれが最も重要なんだ。
エミが伝えたくて、導き出してくれた・・白鳥こそが数字なんだよ。
エミ・・忘れないでね、沙紀の大切で1番好きな文字は・・【2】だよ。
それは大切なエミとの絆だから、憧れの妹の想いを感じた数字だから。
愛情を感じる数字だから・・沙紀には【2】しかないんだよ。
マリちゃんはそう言ってくれました、私は嬉しくて忘れてました。
最後の言葉の意味を聞かなかった・・しかないんだよって言った言葉を。
今の沙紀ちゃんは全ての数字を持っています、でもマリちゃんは強く言った。
《2しかないんだよ》って・・強く言ったんです、強かったんです。
これが私の受け取った、大切なマリちゃんのヒントです」
エミは潤む瞳のシズカに笑顔で言った、私はエミの変換スピードの速さに驚いていた。
千秋と美冬も嬉しそうに笑顔を向けていた、エミを見る女性達に笑顔が戻った。
私の横のマリは、両手の拳を握り少し震えていた。
その震える背中をサクラさんが抱きしめた、マリは嬉しそうに抱かれていた。
「マリ・・ありがとう、エミは幸せだよ・・沢山の想いに囲まれて」とサクラさんが笑顔で言った。
「それは私です・・私はエミに出会えて、自分の心を話せるようになりました」とマリも笑顔で返した。
サクラさんが笑顔で頷いて、マリも笑顔で返していた。
マリの背中から溢れる物に熱が加わっていて、マリの覚醒を提示していた。
律子はマリを見ながら微笑んで頷いた、マリは真顔で律子を見て頷いた。
「最高の解答だったよ・・2しかない、沙紀にはそれしかないね」とリアンが微笑んで、女性達が笑顔で頷いた。
「問題は・・誰かがあれを、押しに行かないといけない・・指でないと押せないよね?」とユリカがシズカに言った。
「そうでしょうね・・その設定こそが、奴の策略でしょうね」とシズカが真顔で返した。
「当然・・私が押しに行く、フォローに自信がある者は、手を上げてくれ・・当然、自分の成すべき事を考えてから」とリアンが強く言った。
「私が行きます・・軟体生物なら問題ないです」と小夜子が笑顔で手を上げて。
「私も・・その関係は大丈夫で~す」とホノカが華麗な笑顔で手を上げた。
このホノカの立候補は、私も女性達にも意外だった。
「それじゃあ・・私も行きます、得意ですから」とヨーコが青い手を上げた。
「了解・・3人でリアンを囲んで、絶対に何かが来ると思ってね」とユリカが笑顔で言った。
「了解」と3人が笑顔で返した。
「蘭・・ギリギリまで船を寄せよう、下のハッチから出すから」とユリカが言った。
「了解です」と蘭が満開で返して、ネネとリョウを連れて操縦席に戻った。
「それと・・敵の艦内への進入を阻むために、スナックの女性達でハッチを守って」とユリカが笑顔で言った。
「了解」と6人が返して、部屋を出て行った。
シズカも武器の説明の為に、下部の格納庫に向かった。
「手裏剣ドロリは罠だよね・・あんな雑魚じゃないよね?」と哲夫がモニターを見ながら言った。
『そうだろうな・・でもヨーコがいるから大丈夫だろう』と私は哲夫に二ヤで返した。
「まぁね・・なんせ軟体動物や、爬虫類が好きだからね~・・変態だよ」と哲夫も二ヤで返してきた。
「そうなのかい!・・又ヨーコの新たな一面を知ったよ」と大ママが嬉しそうな笑顔で言った。
「飛鳥もユリも楽しいよ~・・ヨーコとマキは、多面性だからね~」と律子が二ヤで言って。
「血縁ってのは、凄いんだよね~・・真希の多面性を受け継いでるよね~・・あのマキも」とフネが笑顔で言った。
「やはり真希さんは、多面性だったんですね?」とユリさんが薔薇で微笑んだ。
「惜しいよね~・・ユリが真希に出会えなかった事が、真希は多面的だった・・その全てが真希だったよ」とフネが笑顔で返した。
「おや~・・見つけた顔をしてるね~・・どこまでも満足しないよね~、エースの飼い主は」とミチルがユリさんに二ヤで言った。
「満足なんてしたら、捨てられるから・・多面的で全てが自分ですか、本当に素敵ですね」とユリさんは薔薇の笑顔で返した。
「それ以上は怖いよ、ユリ・・エース、あの4人で鍵を握るのは?」と大ママがユリさんに二ヤで言って、私にも二ヤを出した。
『出だしの状況を重要だと感じてる、小夜子とホノカのコンビネーション。
リアンは全く問題無いよね、多分・・一人で行っても自信があるよ。
だからこそ、自己申告をさせたんだ・・女性達の気持ちを高めたかった。
それに瞬時に反応した、小夜子は状況を瞬時に呼んだんだ。
そして自信が有ったし、戦闘機での自分の重要性まで判断した。
小夜子のコンビはネネだからね、ネネは戦闘機乗りに絶対必要だから。
適応力の小夜子だよね・・多面性で無い、適応性を見せたよね。
そしてその小夜子の判断を理解して、自分の役割を感じたホノカ。
銀河が同行しない訳にはいかない、そのプライドと自信。
リョウが戦闘機に必要と思い、カスミには軟体生物は危険だと判断した。
ホノカは自分の分析が出来ている、だから大丈夫だと思った。
リアンの同行者なんだ・・銀河は絶対に誰かが同行するよ。
ホノカが手を上げなければ、絶対にカスミが手を上げた。
それが銀河のリアンとユリカに対する、強い意志なんだよね。
大丈夫でしょう・・小夜子とホノカなら、パニックにはならない』
私は準備をしている、小夜子とホノカを見ながら言った。
「なるほどね~・・今回も、一石何鳥狙うのやら」と大ママが二ヤで返してきて。
「銀河は仕上がって来たから・・又壊すんだよ、小僧は仕上がりを実感させないんだ」と律子が二ヤで言った。
「なるほどね~・・それは分かるな~、久美子の凄まじい成長を見るたびに」と北斗が私に二ヤを出した。
「昨日の久美子・・見てて怖かったよ、そして残念だった・・PGのフロアーに立つ、久美子が見れない事がね」とミチルがユリさんに微笑んだ。
「私は・・喪失感さえ感じました、久美子を諦める事で」とユリさんは薔薇ウルで返した。
「さぁ・・行くようだね~」とサクラさんが笑顔で言って、全員がモニターに視線を戻した。
潜水艦の下部格納庫の黄色い丸の上に、リアン達4人が立っていた。
「この黄色い円が下がります、透明の強化プラスティックで囲まれます。
その中に海水を注ぎ込んで、海水の温度に慣れて下さい。
海水注入2分後に、正面が開きます・・光の壁までの距離は4mです。
腰の命綱は潜水艦と繋がっています、万が一の場合は外して下さい。
最初は照明で照らしません・・無用な敵を呼び込みますから。
さっきの小型手裏剣ドロリは、雑魚だと思います。
それに扉が開けば・・あの巨大ウツボも出てくると思います。
検討を祈ります・・照明が必要な時は、無線で連絡下さい」
武器の説明が終わったシズカが、最後にそう言った。
「了解」と4人は笑顔で返した。
スナックの6人の女性が、円を取り囲み二ヤでマシンガンをかまえた。
「それでは・・始めますね」とシズカが操作盤の前で笑顔で言った。
「良いよ・・やってくれ」とリアンが笑顔で返した。
その時だった、無線からナギサの声が響いた。
「光の壁の外側・・潜水艦に向けて上昇する敵発見・・モニターに出す」とナギサが叫んだ。
リアン達4人も、スナックの女性達も操作盤のモニターに駆け寄った。
モニターには大量の、赤く発光するクラゲが映し出されていた。
頭の傘の下が赤く発光する、不思議な光を出す小さなクラゲだった。
その量と足の長さの不気味さに、沈黙が訪れた。
「クラゲに電気反応有り・・微弱電流を放出してます・・でも、可愛いです~」と美由紀が笑顔で言った。
「電気クラゲか~・・微弱でもあの量なら、厳しいね~」とリアンが二ヤで言って。
「電気を感じるんでしょうね・・感覚的に感じさせられる」と小夜子が真顔で言った。
「あれは・・もしかして、ベニクラゲ!」とミコトが叫んだ。
「ベニクラゲ!・・そうなんですか?」とシズカが驚いて返した。
「ベニクラゲ?・・ミコト、詳細を述べよ」とユリカが二ヤで言った。
「ベニクラゲとは、生物的に極めて稀な特徴を持っています。
簡単に言うと・・細胞が若返るという、機能を持っているんです。
だから伝説的な表現として、不老不死と言われています。
もちろん、生物ですから不老不死ではありません・・細胞が若返る。
老化した細胞を復活させる事が出来ます、だから何度も若返る。
それは同種の別の固体に変化する感じだと、大学教授に聞いた事があります。
ベニクラゲは天敵が多く、その種を繋ぐ為に得たんだと考えられてます。
細胞を復活する能力を得た、それにより固体自体の存続をさせる。
一部の人間が追い求める永遠のテーマ、不老不死を連想させる。
そのベニクラゲを大量に出してきた、作為的ですね~」
ミコトは二ヤで無線で伝えた、私も驚きながら聞いていた。
「不老不死・・確かに憧れる人が多いよね~」とユリカが笑顔で言った。
「不死は絶対にいらないが・・不老は欲しいよな~」とリアンがウルで言って。
「駄目よリアン、怒られるよ・・大御所達が見てるのよ、28でウルを出したら駄目よ」とアンナが二ヤで言った。
「あっ!・・ごめんなさ~い、律子姉さん」とリアンが二ヤで言った。
律子はウルを出してモニターを見ていた、フネも当然ウルを出していた。
「リアン・・途中で戻されると、殺されるかもよ~」とユリカが二ヤで言って。
「ご愁傷様で~す」と美由紀が二ヤで突っ込んだ。
リアンが極炎ウルウルを出して、全員が笑っていた。
「先に掃除しましょう・・あります、お掃除潜水艦・・【モグモグ】
吸引装置で吸い取って、海上にまで一気に放出できるようです。
相手が不老不死ならば、退治じゃなく掃除ですね・・邪魔だから。
操作は分かりました・・私も行きます、クラゲ掃除に」
沙織は笑顔でユリカに言って、モニターに【モグモグ】を出した。
ジンベイザメのイメージでデザインされた、大きな口を持つ潜水艦だった。
「今回どんだけ時間をかけたんだ、デザインにこだわるね~」とアンナが笑顔で言って。
女性達が笑顔でモニターを見ていた。
女性達がその説明を読んでいると、クラゲの第一陣が潜水艦に到達した。
クラゲの赤い光に照らされて、深海が明るくなっていた。
潜水艦は周りを全てクラゲに囲まれ、クラゲからバチバチと小さな火花が散っていた。
「確かに不気味だけど、美しい」とセリカが窓の外を見ながら言って。
「可愛いね~・・赤い光も素敵だ~」とリリーが笑顔で言った。
女性達はクラゲを見ていた、幻想的な世界があった。
「OK・・掃除しよう、6人乗りだから・・私が行くよ。
操縦者は・・四季から出して、そしてリリーとシオンが同行して。
マユもお願い・・それと沙織だね」
ユリカが笑顔で言って、女性達が頷いた。
「ここは・・四季では運転技術No1の、私が行きましょう」と千春が笑顔で言った。
6人が揃い、ユリカがアンナを見た。
「アンナ姉さん・・後はよろしく」とユリカが微笑んで。
「了解・・頼むね」とアンナも笑顔で返した。
6人が格納庫に向かい、アンナは集中した表情になった。
「操縦席の3人は待機・・あの上の階に攻撃席があるようだから。
アイコがリーダーで、カスミ・ユメ・セリカ・恭子で上がって。
後部に機銃が5本有るから、幻海の女性でお願い。
全員大至急配置に付いて、武器の説明を読んでおいて。
ミコトと千鶴はセンターに集まって、状況で作戦を練ろう。
四季の3人は、格納庫に行って不測の事態に備えて。
そしてマキと久美子で、屋上の攻撃席に上がって。
射程距離の長い、固定水中ライフルがある・・久美子、頼むよ。
残りの全員で作戦会議・・センターに集合」
アンナは的確な指示を強く出した。
「了解」と女性達が返して、足早に動いた。
その頃、小型潜水艦は止まって、クラゲ達が去った後の深海を見ていた。
「何でしょうね?・・あれ」とウミが光の壁の外側に光る、6つの赤い光を見て言った。
「電気的な光じゃないですね・・生物的な感じです」とミサキが呟いた。
「だとしたら・・かなりでかいよ~」とナギサが呟いた、美由紀はレーダーを見ていた。
「生物です・・生物反応あり、全長約・・25m!・・3頭います」と美由紀が静かに言った。
「25m!」とミサキが叫んで。
「まだ動いてないよね?」とナギサが美由紀に聞いた。
「上昇はしていません・・首だけ動いてます」と美由紀が返した。
「ウミ・・もう少し潜ろう・・奴をカメラで捉えれるまで」とナギサが言って。
「了解・・ゆっくりと潜ります」とウミが返した。
小型潜水艦は、光の壁の中をゆっくりと降りていった。
「シズカ・・今回は早いよね、敵の対応が」とホノカが言った。
「早いですね・・多分、出来るだけ人数を分けたい・・そんな感じですか」とシズカが二ヤで返した。
「だろうね・・その意図をどう読むんだい?」とリアンが二ヤで言った。
「今回・・マリちゃんは2つだけ、小僧に注文しました。
あの【もぐもぐ】と、屋上の固定水中ライフルです。
必要と感じたんでしょうね、それを探し出した・・沙織が。
沙織は小僧の双子ですから、挑戦者なんです・・それもマリちゃんに対して。
マリちゃんの想定を自分で読むのを、今の楽しみにしてます。
だから乗船してからずっと、徹底的に装備の説明を読んでいた。
小僧は異常者だからリアル感を求める、装備の正式名称も付けています。
この潜水艦はSSD-3400型です、こんな正式名称が全てに付いてる。
そして【もぐもぐ】がM-UH-330型。
屋上の固定水中ライフルが、M-RK-4000型です。
Mが頭に使用されてるのが、この2つだけです・・マリのMでしょう。
私も正式名称だけ見て、それだけは確認しました・・もちろん沙織も。
沙織はこの2つを重要だと想定して、徹底的にその内容を解読した。
それをユリカ姉さんと、アンナ姉さんにだけ報告しました。
マリちゃんは想定してる、この状況は完全に想定してます。
エミへのヒントも、この2つの装備でも・・それは分かる。
だから搭乗人数も制限した、【竜宮の使者】が4人乗り。
【もぐもぐ】が6人乗りですよね、それがベストな配置なんでしょう。
私もマリの想定を読んでいますが・・今はまだ難しいですね」
シズカは笑顔で言った、取り囲む女性達に笑顔が咲いた。
「なるほどね~・・今の段階は、マリちゃんを読めば良いんだね」とリアンの店の女性が言って。
「楽しいな~・・本当に楽しい」と小夜子が笑った。
その時、無線のナギサの声が静寂を連れてくる。
「報告します・・巨大な水中トカゲが、絡まって遊んでます。
映像を送ります・・潜水艦より下、1800mにいます。
かなり凶暴な性質と思われる・・全長約25mのトカゲです」
ナギサの声が響いて、全員がモニターに注目した。
3頭の巨大トカゲが、遊ぶように絡み合っていた。
真赤な目が光り、口を開くと肉食恐竜のそうな牙が密集して生えていた。
「光の壁の内側に入らないと、無駄な戦闘が増えるんだね」とアンナが無線で言った。
「そのようですね・・ナギサ、そこに待機して、トカゲの様子を見といて・・まずクラゲを掃除しよう」とユリが無線で返した。
「了解・・状況報告します」とナギサが返した。
「では・・出発しよう・ベニちゃんをお掃除に」とユリカが笑顔で言って。
「了解」と5人の女性達が笑顔で返した。
静寂の支配する深海の中に、掃除機が入ろうとしていた。
私とマリはトカゲを見ていた、マリはその登場を驚いていた。
私はマリの驚きを感じて、緊張していた。
こんな初期の段階で、マリが想定できなかった事実に触れて。
マリには想定出来なかった、トカゲは作られたものじゃなかった。
復活した生物だったのだ、それは自然現象に近い事象だった。
自然の摂理が凍結保存した生命を、自然の摂理が復活させたような。
マリには届かない世界の片鱗を、強く提示したのだった。