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      【冬物語第三章・・深海の誓い③】 

点と点を結んで線になる、点の集合体が線だと言われる。

だが視覚的には、線は線という別の物だと感じる。


女性達の準備が出来て、ユリカと蘭は沙紀に化粧をしてもらいご機嫌だった。

美由紀とマリも薄く紅だけ引いてもらい、私は何度も美由紀に【可愛い】を要求された。


快晴の冬の朝、私達は笑顔で出掛けた。

昨日と同じ車に乗って、赤玉駐車場に着いたのが8時少し前だった。

それでも赤玉駐車場は、見慣れた車のオンパレードだった。


私は懐かしい赤いミニクーパーを二ヤで見ていた、縦に入った2本の白線と屋根のユニオンジャックを。

派手なオーバーフェンダーの外装に、ライトの上の付け睫毛のようなカバーが可愛かった。


「おぉ・・ミニクッパの律子スペシャル、可愛いな~」と美由紀が中を覗き込んでた。

「母さんのなの!・・凄いな~、個性を主張してるな~」と蘭も驚いて覗き込んでた。

全員が集まり笑顔でミニを見ていた、マリが一番興味津々だった。


「ミニはオーバーヒートが怖いよね」とミホの手を繋いだ蘭が満開で言った。

確かに当時のミニは、熱的な弱点が解消されていなかった。


『うん、そうみたいだね・・これは豊兄さんの工場の職人さんの手が入ってるから、何とか大丈夫だよ』と私は笑顔で返してビーフシチューを入れた鍋を持った。


「サービス良いな~・・誰の分かな~?」とカレンが私に二ヤで言った。

『朝から準備してくれた、裏方3人衆にね・・もうお腹空く頃だし』と二ヤで返してPGに向かった。


PGのフロアーは8時だと言うのに、かなりの人数が来ていて1行流しで遊んでいた。

銀河も限界ファイブも揃い、沙織と秀美も来ていた。


私は鍋を厨房に持って行き、弱火にかけた。

「エース・・準備は何がいるの?」とハルカが笑顔でやってきた。


『真中に沙紀用の布団を敷くよ、暖房の温度設定を2℃落として。

 暖か過ぎると、緊張感に影響するから・・少し低めでね。

 ハルカとレンとマキの分を持ってきたから、後で食べてね。

 ユリカの買った高級牛肉だから、美味いぞ~』


私はハルカにニヤで言った、ハルカは笑顔で返してくれた。

「ありがとう・・美味しそうだ~、みんなの前で自慢しながら食べよ~」とハルカが鍋を覗き込みながら言った。

『ハルカ・・空母まで辿り着けよ、深海で無茶はするなよ』と真顔で言った。

「うん・・自分のやるべき事を考えるよ、状況に流されないよ」とハルカも真顔で強く返してくれた。

『期待してるよ・・鍋をよろしく、俺は準備してくるよ』と笑顔で返してTVルームに向かった。


フロアーからは、ミホの【猫ふんじゃった】の音色が響いてきた。

ミホの横に美由紀がいて、ミホの後ろに久美子が笑顔で立っていた。


TVルームには大御所が揃っていた、律子もフネも来ていた。


『おっ!・・フネちゃん、お好きですね~』とフネにニヤで言った。

「感じたくてね・・何よりもマリちゃんを」とフネが笑顔で返してきた。

『律子・・マリは違う世界に入ってる、少し注意しといて』とフネに笑顔を返し、律子に真顔で言った。


「入ってるだろうね、マリは最後まで自分を信じてる・・壊れる覚悟を常に持ってるからね、了解・・見とくよ」と律子も真顔で言った。

「マリちゃん・・壊れる覚悟をしてるんですね、それが支えてるんですね」とユリさんが呟いて。

「マリは目的に対して真摯なんだろうね、それは見てて分かるよ・・後悔を無駄にしない、強い人間なんだよ」と北斗が笑顔で言った。

大御所達が笑顔で頷いて、私はフネの笑顔を見ていた。


「ねぇ、エース・・マリちゃんは、加々見さんに何を提示したの?」とフネが興味津々光線を出した。


『御大がずっと心に持っていた、親友の伝言に対するマリの解釈だよ。

 それがチェスボードの上にあった、親友が亡くなる前に残した場面。

 そこにメモがあって、そのメモにはメッセージが残っていた。

 【逆転の手段は無いのか?】と書かれていたらしい、ボードの上のメモにね。

 だから御大は自分に対するメッセージだと思っていた、親友だったから。

 それで逆転の手段を探してた、でも逆転の手段は無いんだよ。

 どんなチェスの名人でも、その状況からの逆転は出来ないと言ったんだ。

 それで御大も半ば諦めてたらしい、その難問にマリは自分の答えを出した。

 それが負け方の模索だったんだ、次に繋がる負け方を模索して導き出した。

 御大は本当に喜んだよ・・マリの解答を見てね、少年のようだったよ。

 マリが初めて自分の興味で、自分の意思で動いた・・チェスボードが見たくて。

 マリはその日の帰りに言った、凄く強い想いがボードの上に溢れていたと。

 それを残した人も、その親友の御大も・・凄い人だと嬉しそうに言ったよ。

 それが御大がマリを愛する理由だよ、マリは自分の想いを伝えた。

 マリの解釈を伝えた、それがどんなに響いたかは、皆さんなら分かりますよね。

 御大は嘘偽り無く、14歳の少女を右腕に欲しいと思ってるでしょう。

 それが叶わぬと知りながら・・だから仕事に対して挑戦的になった。

 御大は次を要求する・・俺はそれが楽しみですよ、ワクワクです』


私は笑顔で言った、大御所達も笑顔で返してくれた。


「負け方の模索・・素晴らしい事だね、最も重要な心のあり方だよ」とマダムが笑顔で言って。

「そうですね・・その時に人は問われますね、諦めるのか・・次に踏み出すのか」と大ママも嬉しそうな笑顔で言った。


「飛鳥も北斗も・・そして私も、完敗したよね・・完璧に負けを認めた。

 真希という偉大な女に完敗した、私は真希より年上だったけど完敗したよ。

 だから今が有るんだよね・・あの敗北が背中を押してくれた。

 追いかけないといけない、そうしないと失礼だと律子が言ったよね。

 律子は真希の送別会で言ったんだろ、私にはその日に律子が来てそう言った。

 飛鳥も北斗も・・もちろんマダムも松姉さんも、忘れていない。

 私達はバトンを受け取った、そしてそれを飛鳥が握り締め繋いだ。

 ユリとミチルに繋いでくれた、夜街は絶対に恩には恩で応える。

 小林さんも轟さんも、加々見さんにとっても・・忘れ得ぬ真希の想い。

 夜街が方向性を模索していた頃の、羅針盤である真希の生き方。

 それは女の自立だった、女が女として自立する・・女を武器にして。

 戦争という忌まわしい歴史に、一石を投じたよね・・あの歩く姿で。

 私達は敗北の中から学んだ、真希の敗北に対する想いを感じていた。

 負けを模索できなかった男達に、自立する姿で見せた・・真希。

 次の世界が来る・・ユリカとリアンがいる、最強の2人が。

 宮崎の夜街は大切に繋いで、導き出した・・炎と水の世界を。

 あの2人がどう繋ぐのか、今日見せてもらおう・・次の世界の入口を」


フネは強く言葉にした、経験の重みが乗る言葉だった。

大御所達が全員ニヤで頷いた、私はフネの瞳を見ていた。


『麗しの五月・・その由来を聞いたよ、ツネ婆さんに。

 初夏の温もりを纏うんだよね、夏の熱でも春でも無い・・初夏の熱。

 それを表現した源氏名が、サツキだったんだよね。

 そしてその称号を授与したのは、キングなんだよね。

 キングが宮崎に帰ってきて、真希さんのいない喪失感を支えた。

 大切なサツキというトップの女性に贈った・・麗しの五月。

 素敵だね、さすがフネだね・・俺は思い出したよ、出会った時を。

 フネは俺に言ったんだよね、ヒトミに集中してる俺に。


 勇気って引くときに必要なんだ、前に出るときは・・情熱なんだよ。


 小3の俺には難しかったよ、でも今なら分かるよ。

 ありがとう、フネ・・俺には大切な言葉だったよ。

 だからヒトミの死とも向き合えたよ、フネの言葉とツネ婆さんの言葉で。


 死は覚悟する事じゃない、訪れるのを感じるだけだ・・悲しむ事じゃない。


 このツネ婆さんの言葉で、俺は受け入れたんだよ・・ヒトミの死を。

 死という現実を・・素敵な教えだった、真希さんの言葉だと思ってる。

 俺は絶対に諦めない・・沢山の想いが繋いでくれたから。

 1つずつ、1歩ずつ進むよ・・真希という人を想いながら』


私はそう言って、沙紀のケースから未完成の絵をテーブルに出した。

その絵を見てフネが大粒の涙を流した、律子も号泣していた。


沙紀の真希親子の絵の背景には、西橘通りの雑踏が描かれていた。

名物の柳の並木が全て桜に変わり、満開の桜が強烈な桜吹雪を起こしていた。

マキを抱く真紀さんは、美しい微笑で立っていた。

その全体から輝きが溢れていた、それを幼子のマキが笑顔で見ていた。

色が入っていない、美しい下書きにも存在した。

真希と言う偉大な先駆者の、強い想いが溢れ出していた。


「沙紀はどこまで行くのでしょう・・私には想像も出来ません」とミチルが泣きながら言って。

「揺れていない・・どんな強風でも揺れない、それが私には大切な教えだった」と北斗が俯いて泣いて。

「完成が待ち遠しいね・・これはマキに描いてるの?」と律子が笑顔に戻り言った。


『そうだよ・・真希の覚醒を促したんだ、母親の真希さんが。

 それをヒトミがユリアに繋ぎ、ユリアが沙紀に真希さんを見せた。

 そして沙紀が想いを込めた・・マキに春を教えてくれと。

 マキは取り戻す、絶対にそうする・・母親の願いだから。

 そして大切な絵を描いてくれた、沙紀のメッセージを受け取ったから。

 今日は大作が見れるよ、俺は不安は無くなった・・今は楽しんでる。

 待ちに待った、灼熱の季節の到来と・・みなしごの子守唄が聴けるから。

 そしてミホの挑戦のステージが見れるからね、何も不安は無い』


私は自分に言い聞かせるように、律子に向かい強く言葉にした。


「最強がステージに上がったのか・・私も何の不安も無くなったよ」と律子も笑顔で返してくれた。

私は笑顔で頷いて、布団を持ってフロアーに向かった。


絨毯の真中に布団を敷くと、女性達が少し緊張した。

沙紀はミホの側で、ミホのピアノを弾くのを見ていた。


「エース・・始める?」とユリカが笑顔で来た。

『うん・・そうだね』とマリを探すと、マリが沙紀を抱き上げていた。


『シオン・・来て、マリと一緒に入って』とシオンを呼んだ。

シオンは驚いた表情を出して、慌てて私の場所に駆け寄った。


「先生・・一緒に入るって、シオンがですか?」とシオンが真顔で言った。


『シオン・・辛いかもしれないけど、シオンしかいない。

 マリは沙紀の世界と同調しないといけない、俺の映像に転送する為に。

 だから沙紀の側にはシオンがいて、沙紀を安心させてね。

 もし赤い塔が見えたら、そこで待っててと沙紀に伝えて。

 必ず迎えに行くから、TVを見ててと伝えてね・・よろしく、シオン』


私は真剣な表情のシオンに、意識して笑顔で伝えた。

「先生・・ありがとう、シオンは必ず赤い塔を見てくるよ」とシオンがニコちゃんに戻って言った。

私が笑顔で頷いた時に、マリが沙紀を連れて来た。


私は沙紀の右手を握った、その強い温度に驚いていた。

《小僧ちゃん、ありがとう・・沙紀は知ってるよ、待ってればいいんでしょ?》と沙紀が強く伝えてきた。

『そうだよ、沙紀・・必ず女性の誰かが迎えに行く、絶対に行くから・・沙紀はTVを見ててね』と笑顔で伝えた。


私の言葉で女性達が全員笑顔で、沙紀を見て頷いた。

沙紀は女性達を見回して、最後に私に強く頷いた。

私は沙紀の頬にキスをして、沙紀を布団に寝かせた。

沙紀の右手をマリが握り、左手をユリカが握った。

そしてユリカとマリが、シオンと手を繋いだ。


ユリカが深海のヒトミで2人を見た、2人は強く頷いた。


「どうして沙紀は、それが出来ないと思うの?」


強烈だった、強い揺り篭が揺られていた。

3人も沙紀も瞳を閉じていた、シオンの背中が微かに震えていた。


私は立ち上がり、ミホを迎えに行った。

ミホはピアノに座り、ユリカの表情を見ていた。


『ミホ、エミ・・久美子と美由紀もちょっと』と私は4人を6番に誘った。

『少し説明したい事があるんだ、だから管制室に入ろう』と私は笑顔で言った。


3人がニヤで頷いて、ミホが私の顔を見ていた。

ミホと右手を繋ぎ、エミと左手を繋いだ。

久美子と美由紀が円で繋げて、私はミホを見て瞳を閉じた。


管制室に4人はすぐに入って来た、私は会議室に誘った。

会議室の大きな丸テーブルには、沢山の武器が置いてあった。


『ミホとエミに武器の説明をしとくね・・・・』

私は笑顔で言って、ミホとエミ専用の武器の説明をしていた。

ミホもエミも武器を手にとって、真剣に聞いていた。


『それと久美子・・これが久美子専用の弾丸だよ、5発しかない・・射程距離3000m、5発だからね・・潜水艦に置いてある』と私は真顔で言った。

「了解・・最後まで持って行くよ」と久美子が笑顔で返してくれた。


『最後に美由紀・・車椅子にこれを装備しろ、潜水艦に入れておくから・・使用方法は、美由紀に任せる』と二ヤで言った。

「く~・・楽しいな~、私が主役を取る」と美由紀は手に取って見ながら、二ヤで言った。


『よし・・4人に期待してるから、楽しんでね・・映像を切るよ』と笑顔で言った。

3人が笑顔で頷いて、ミホが私を見たのを確認して映像を切った。


絨毯の真中の3人は、まだ瞳を閉じていた。

沙紀の顔が穏やかだったので、私は安心してミホを絨毯に座らせた。

大御所も揃い、大きな女性達の円が出来ていた。


ユリカとマリが瞳を開けて、続いてシオンが瞳を開いた。

シオンがニコちゃんだったので、私も笑顔で返した。

マリが私の横に来て、私の手を握り瞳を閉じた、私は何もしなかった。


そしてマリが瞳を開いて、笑顔になって頷いた。

その時、哲夫が全力疾走で入ってきた。


「ふ~・・上映に間に合った~」と哲夫が笑顔で言って、女性達の緊張が和らいだ。


『哲夫・・遠隔で入れるだろ、管制室だから・・哲夫、沙紀の手を握っててくれ』と私は笑顔で言った。

「了解・・温度を診てれば良いんだね?」と哲夫が笑顔で返してきたので、私も笑顔で頷いた。


『俺は何も言う事は無い・・これは女性達の世界だから。

 最高責任者の艦長がユリカ、作戦指令がリアン・・これが前線。

 副艦長がアンナ、総合作戦本部長がシズカ・・レーダー担当が秀美。

 そして女性達は配られた、AとBの自分の振り分けを確認をして。

 そしてコンビを決めといて・・俺からのコンビ指定がある。

 銀河も19歳トリオも3人だから、カスミとセリカがコンビ。

 エミのコンビは、当然ヨーコ・・そしてミホには恭子が付いて。

 だからマキは久美子だね、後は当人同士で出来るよね。

 今回は・・絆が試される、全体の絆から2人の絆まで。

 正直にやって欲しい・・沙紀が見てるから、沙紀が待ってるから。

 今回だけは、俺の映像で入れるから・・戻されるのも管制室だよ。

 だから戻されても、その後の状況は見れる・・経験を積んで。

 特に幻海の女性達は、経験を重要視して・・おれが俺のお願いです。

 制限時間は、17時まで・・目標時間は12時にするよ。

 素敵な物語が見れると思ってる、女性全員に期待する・・以上』


私は笑顔で強く言葉にした、女性が全員笑顔で頷いた。

私はユリカに笑顔を向けて、目を閉じて管制室を出した。


「それじゃあ、出発しよう・・市役所前、河川敷に集合」とユリカが笑顔で言って瞳を閉じた。

「了解」と女性達が返して、全員が瞳を閉じた。


すぐに律子・フネ・大ママ・北斗にユリさんと、ミチルとマリと哲夫が管制室に入って来た。


「凄いな~・・話には聞いてたけど、こんな事が出来るんだ~」とフネが楽しそうに言った。

『時間かけて作ったからね・・上出来でしょう』と私は二ヤで返した。


河川敷には、女性達が終結していた。

今回は全員チームで色分けした、シズカデザインの近未来的な、ダイバータイプのピッチリスーツを着ていた。

体のラインが映し出されて、セクシーだった。


「またも足してるね~・・好きだね~」とナギサが二ヤで蘭に言って。

「正真正銘の本物です」と蘭が満開ウルで返して、女性達のニヤの視線を集めていた。


次の瞬間に、ミホが蘭の両胸を両手で掴んで感触を確かめた。

その行動で大爆笑が起こり、緊張感が解けていた。

蘭はミホをウルウルで見ていた、ミホは真剣に感触を確かめていた。


「コンビ毎の確認をして、相棒が来てない人は報告して」とユリカが笑顔で言った。


私はアンナの笑顔を見て、入れたのを確認して嬉しかった。


シズカが赤丸と無線機とガムを配って、女性達は再び緊張した。


「店別の人数確認もOKだよ」とリアンがユリカに言った。

「それじゃあ・・乗り込もうかね、チームで固まって座ってね」とユリカが笑顔で言って、全員が笑顔で頷いた。


潜水艦に入ると、蘭が操縦席の真中に座り、ネネが右・リョウが左に座った。

レーダー席にシズカと秀美が座り、海図席にミコトと千鶴が座った。


「小僧・・どっからが、沙紀の世界なんだ?」とシズカが無線で言った。


『海だろうね・・絶対にその場所を示す何かが有るよ、多分水温の違い。

 全ての探知機を付けたから、それで探してよ。

 海に出ると、管制室とは連絡がとれないと思うから』


私はモニターに映るシズカの顔を見ながら、笑顔で言った。


「空母はどうやって呼び寄せるんだ?」とシズカがニヤで聞いた。


『生体に反応する・・最初に海上に上がった人間を探知する。

 そして自動操縦でその場所まで行くよ、だから待ってて』


私もシズカにニヤで返した、シズカもニヤ継続だった。


「了解・・艦長準備OKです」とシズカが笑顔で報告した。

「それでは・・海に向けて発進せよ」とユリカが指示を出した。

「了解・・海に向けて発進します」と蘭が返してアクセルを踏んだ。


私はゆっくりと進み始めた、真赤な潜水艦を見ていた。

空は澄んだ青を浮かべて、快晴無風中を河口を目指し進んでいた。


「小僧・・沙紀の世界は熱いと思うか?・・寒いと思うか?」とマリがニヤで言った。

『冷たいんだろうね、多分・・それからの全てが罠に感じるよね』とニヤで返した。

「罠が罠を呼込むんだね・・混乱するよね、開き直らないと」と哲夫も私の横でニヤで言った。


『そうだろうな、前回までと全然違う設定だからな・・恐怖感が違うよ』と私はモニターを見ながら言った。

「最初の段階が、暗闇だね・・それをどう克服するのかだね」とマリもモニターを見ながら呟いた。


潜水艦は河口から波を乗り越え、外洋に出ようとしていた。

私はモニターでミホの顔を見ていた、ミホは集中して落ち着いた顔だった。


「シズカ先輩・・これでしょうか?」と秀美が真顔で言った。

「間違いないね・・水温が5℃も低い、その海域だね・・秀美、大きさを測って」とシズカが言って、秀美が頷いた。


「艦長・・目的地の座標が出ました、右19度・・距離8900mです」とシズカが言った。

「了解・・右19度に進路修正、10m潜り全速航行」とユリカが言った。

「了解」と操縦席の3人が返した。


海図席にユリカとリアンに、アンナとシズカが揃った。

「水温なの?」とユリカがシズカに聞いた。

『はい・・周りより5℃も低いです』とシズカが返した。


「この世界設定は、中間の季節だよね・・春と言うより、秋って感じだよね」とリアンが言って。

「そうだよね、秋に入った頃の気温だよね・・それより5℃低いんだね」とアンナが言った。


「そこが問題なんです、小僧の世界じゃないから・・自然環境が変化します」とシズカが言って。

「確かに温度の変化は、体にもろに感じるよね」とミコトが笑顔で返した。


「今回は相当に厳しい世界だろうね・・エースのあのこだわりは」とユリカがニヤで言った。

「そうだと思います・・でも直接的なヒントは出せません、設定を変えられるから」とシズカがニヤで返した。

「そうなんだろうね~・・マリとエースは、言葉にしてきたから・・誘導が有ったんだろう」とリアンがニヤで言って。

「だから最後にプレッシャーを外した、幻海の女性達に・・経験を重視しろと言ったよね」とアンナもニヤで言った。

5人はニヤで頷いた。


「シズカ先輩・・計測終わりました・・沙紀の世界は正円です、半径2500mです」と秀美が無線で言った。

「直径5000mか・・でかいな~」とシズカが言って、ミコトがコンパスで円を描くのを見ていた。


「シズカの深海の予想は?」とユリカが聞いた。


「多分・・選択の場所ですね、何らかの選択を迫られる。

 当然・・人質もそこで取られるのでしょうね、深海までは辿り着く。

 奴もそれは考えてるでしょう、最終目的地が空ならば。

 深海は何らかの選択の場所、それをクリアーしないと駄目なんでしょう。

 だから小僧は、リョウ姉さんとセリカ姉さんを離したと思います。

 コンビにさせなかった、奴はそう想定してるのでしょう」


シズカは二ヤ継続で言った、ユリカは笑顔で頷いた。

後ろの席の女性達は、窓から見える魚達を笑顔で見ていた。


「座標・・肉眼で確認、海上に光の壁です」と蘭が無線で言って。

全員が正面の大型モニターを見た、海の上に銀色に発光する光の壁が映されていた。


「赤い正方形の時の、光の壁と同じ感じだね・・結界か~」とユリカが呟いて。

「あれを消さないと、空母は到達できないね」とリアンがニヤで言った。


「秀美・・光の壁は深海まで続いてるの?」とシズカが聞いた。

「はい・・でも水深2000mの地点に、亀裂らしい罠の入口があります」と秀美が返した。

「罠に誘われよう・・それしかないんだろうから」とユリカがニヤで言って、リアンが操縦席に歩いた。


「潜行するから、不測の事態に備えて・・ここからは、恐怖との戦いだからね」とユリカが強く言って。

「了解」と女性が全員で強く返した。


「今です・・この真下に入口が有ります」と秀美が言って。

「了解・・蘭、まっすぐに潜ろう」とリアンが言って。

「了解・・罠に向けて潜行します」と蘭が満開ニヤで返した。


潜水艦はゆっくりと潜航を始めた、女性達は下がっていく深度計を見ていた。

水深1000mを超えた時に、秀美の見るレーダーに影が映った。


「入口から何かが出てきました、金属です・・多分・・潜水艦。

 カメラで追ってますが、暗くてまだ映像で捉えられません。

 全部で・・7艦です、正面を向いてます・・船首は上げてません」


秀美は強く叫んだ、シズカが秀美の席に駆け寄った。


「確かに金属だね・・潜水艦でしょう、それも旧型の・・第二次世界大戦で活躍したような」とシズカがユリカに言った。

「シズカ・・その頃の潜水艦に、真上を狙う武器は有るの?」とユリカが返した。


「蘭・・1度止まろう」とリアンが言って。

「了解」と返して、蘭はアクセルから足を外した。


「有ります・・確か存在したと思います」とシズカが返して。

「有るだろうね・・エースの設定にも、上下に向けての迎撃ミサイルが有る」と千鶴がモニターの説明を見ながら言った。

「そうなんだね・・偵察用の小型潜水艦は有るの?」とアンナが聞いた。


「有ります・・偵察用小型潜水艦、【竜宮の使者】」と千鶴がニヤで返した。

「【竜宮の使者】・・名前だけにはこだわるよね~、無駄な事を」とナギサが華やかニヤで言った。

「メインモニターに出します・・【竜宮の使者】」と秀美が言って、メインモニターに映しだされた。


「4人乗り小型潜水艦・・最高潜水5000m、魚雷装備。

 カメラとレーダーにトイレ完備・・スパイカメラ【小判シャーク】装備?」


ユリカが説明を読みながら笑った。


「スパイカメラにも名前を付けたのか~・・それも、【小判シャーク】って・・馬鹿だな~」と言って美由紀が笑って、女性達にも久々に笑いが起こった。


「誰かが偵察に行こう・・世代別に一人づつ」とユリカが言って、その瞬間に美由紀が手を上げた。


「主役は貰います~・・膳は急げです~」と美由紀が笑顔で言った。

「ならば・・私が次の世代で~」とミサキが笑顔で手を上げて。

「深海ですから、私が行きます~・・運転も任せて下さい」とウミが笑顔で手を上げて。

「じゃあ・・まとめ役で私が行きましょう」とナギサが華やかニヤで言った。


「OK・・許可します・・ナギサ、頼んだよ」とユリカが爽やか笑顔で言った。

「任せて下さい・・私は戦闘機にも乗りますから」とナギサが笑顔で返して、4人で部屋を後にした。


管制室のモニターには映されていた、幽霊船のような潜水艦が。


その側面の国を示す国旗は、6カ国の国旗だった。


精神的に追い詰める、悪意に満ちた物語の幕開けだった。


その物語は女性達の恐怖の表情を望んでいた、対抗策は1つしかない。


笑い飛ばすしか方法はない、開幕の主役を美由紀が奪い取ろうとしていた。


健常者では想像もできない覚悟を背負い、美由紀が笑い飛ばす時が迫っていた。






 

 




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