【冬物語第二章・・未来の記憶⑲】
大空を閉ざされている心が飛行していた、表情が動く事のない顔が。
しかし心は閉ざされていない、許容量は常人を遥かに超えている。
戦艦の上空をミホは大きく旋回していた、その瞳は静かだった。
ミホの真後ろにヨーコが入り、ヨーコも戦艦を見ていた。
ユリカは連打で攻撃ボタンを押しながら、静かにミホを見ていた。
ネネが空母と戦艦の間に入り、千秋と千春がその後に入って迎撃していた。
『ネネも撃墜したか~・・ネネのが1番強かったんだけど。
それじゃあ・・ミコトと千鶴で、シュミレーターに乗ってよ』
私は2人にニヤで言った、2人は驚いて私を見た。
「シュミレーターって何だよ?」とミコトが余裕ニヤで返してきた。
『その右奥の部屋に有るよ、操縦席がね・・全面モニターで覆われてる。
そこにリアルな映像が映る、飛んでる気分になるよ。
椅子もリアルな動きで反応する、Gまで感じる設計だよ。
練習しとくだろ、戦闘機を・・そして落としてきて。
リョウとセリカを、撃墜して・・こんな段階で立ち止まらせない。
自信など持たせない・・天狗の鼻をへし折ってきて。
もちろん、2人にハンディを付けてるよ・・戦闘機の性能も上だよ。
そして相手の思考が、先にモニターに矢印で表示される。
これはマリの作った読み取り装置だから、このマリの同調の世界では。
正解率95%はあると思うよ・・挑戦者を落として来い。
自分に迫ろうとする、大切な挑戦者の未来の為に・・撃墜して来い』
私は最後にニヤを出した、2人は恐ろしい程のニヤで返してきた。
「楽しそうだね~・・やりましょう」と千鶴がニヤで言って。
「美由紀・・付いて来て、アドバイスよろしく」とミコトが美由紀を連れて、3人で部屋に入って行った。
「やるよね~・・どこまでも」と大ママが私に笑顔で言って。
「リョウとセリカが、戦闘機では重要なんだね」とサクラさんがニヤで言って。
「2人が目指してる、ミコトと千鶴に落させる・・怖いよお前が」と北斗が笑顔で言った。
『実は銀河の敵は、1番楽な設定だったんだ・・銀河のトリオとしての、集中力を上げたくてね』と大御所達にニヤで返して。
私はユリカにニヤを出して、空母の滑走路の炎を消した。
ユリカもマリもエミもニヤを出し、モニターに視線を移した。
「空母の滑走路・・炎が消えました!」とハルカが上空から叫んだ。
空母の管制室の3人は、消火の状況を肉眼で確認した。
「罠だよね~・・シズカ」とアンナがニヤで言って。
「もちろん罠ですけど、乗るしかないですね」とシズカがニヤで返した。
「誘いに乗ろう・・ネネと千春と千秋以外のAチーム、ハルカから帰還せよ」とリアンが無線で指示を出した。
「了解A」とAチームが返した。
「小僧・・2人、準備OKだよ~」と美由紀が無線で言った。
メインモニターにシュミレーターに座る、ミコトと千鶴の笑顔が見えた。
『同時に発進して良いよ、離陸だけはリアルな場面で出す。
上空に上がって加速したら、すぐに空母が見えると思うから。
ニヤニヤで誘えば、必ず出て来るよ・・簡単に撃墜しないで。
ゆっくり時間をかけて、2人に感じる時間を与えたい。
ロック状態で張り付いて、追い回して・・俺が撃墜指示を出すよ。
可愛い妹なら、心を鬼にして・・ミコト・千鶴・・発進せよ』
私は強く言った、2人のニヤの返事を聞きながらモニターを見ていた。
先にミコトが加速して、そのスピードに驚きながらも舞い上がり。
千鶴は好きなのであろう、終始ニヤニヤで美しく舞い上がった。
それを見てマリが管制室の、左端の席にニヤで座った。
マリの前には2台の小型モニターがあり、無人の戦闘機の操縦席が映されていた。
「新たな敵!・・空母に向かってくる、戦闘機2機・・後から来る!」とシズカが叫んだ。
全員がモニターを見た、空母の攻撃席は肉眼でゴールドの機体を捉えた。
2機の機体の尾翼には【魔性】と【流星】と書かれていた。
2機は空母の攻撃席の目前を、並んでかすめながら飛んだ。
「ミコト姉さん!」とリョウが叫んで。
「千鶴ママ!」とセリカが叫んだ。
全員がモニターに映る、ミコトと千鶴のニヤ顔を確認した。
「そこまでやるのか!」と蘭が満開ニヤで言って。
「難しい試験を・・色々と考え出すな~」とナギサが空母の操縦席に入りニヤで言った。
「行かせよう、リアン・・ナギサ・恭子、攻撃席に上がって、ハルカが空母の操縦席をお願い」とアンナがニヤで言って。
「了解」と3人がニヤで返した。
「許可を出す・・遠慮は何もいらない、リョウ・セリカ・・ミコト・千鶴を撃墜しろ・・私、リアンがその許可を出す」とリアンが強く言った。
「了解・・落とします」とリョウが魔性ニヤで返して。
「了解・・撃墜します」とセリカが流星を流してニヤを出した。
「カモ~ン・・ベイビ~」とミコトが余裕ニヤで誘って、右サイドの空に消えて。
「流星って、流れ落ちる運命よ~」と千鶴がニヤニヤで言って、左サイドの空に消えた。
「戦闘機・・セリカ!」とセリカがその映像を睨んで叫んで。
「戦闘機・・リョウ!」とリョウも強く叫んだ。
2人は目の前のレールに押し出され、猛スピードで格納庫に入った。
真赤な戦闘機の【セリカ】と【涼】の操縦席に、2人はシートごと収まった。
2人の座っていた攻撃席が下がり、ナギサと恭子の目の前で、1度床の下に沈み込んだ。
そして上がってくると、攻撃席が完成されていた。
「狂ってる・・あの馬鹿は」と恭子がニヤで言って攻撃席に座り。
「楽しいな~」と華やか笑顔で言って、ナギサが攻撃席に座った。
2人が屋上に押し上げられると、攻撃席の3人はモニターを見ていた。
「探して・・今は迎撃チームがいるから、あの赤丸を撃ち抜く方法を」と蘭がナギサと恭子に言った。
2人は強く頷いて、モニターに空母の装備表を出していた。
ミホとヨーコは戦艦から距離をとり、大きく旋回しながら戦艦を観察していた。
「経験者の私から行きますね~」とセリカが無線で言った。
「了解・・見本見せろよ、セリカ」とリョウが魔性ニヤで返した。
「セリカ・・発進」とセリカが叫んで、滑走路の下の格納庫出口から飛び出した。
セリカは海面すれすれで上昇し、レーダーを見て千鶴を追いかけた。
「リョウ・・発進」とリョウも叫んで、美しく舞い上がってミコトを追いかけた。
「そうなんですね!」とユリさんの興奮した声が聞こえた。
ユリさんはマリの後に立っていた、私以外の全員がマリの後に駆け寄った。
マリの目の前の2つ映像には、リョウとセリカの操縦席が映し出されていた。
マリは小型モニターに接続されてる、小さなレバー2本を両手で握っていた。
大ママがニヤで無線機を外して、全員が無線機を外した。
「そう言う事か~、マリが2人の次の行動を読むんだね」と大ママがニヤで言って。
「それをミコトと千鶴のモニターに出すのか~」とミチルが妖艶ニヤで言って。
「それに気付け、挑戦しろと言うのですか?」とユリさんが薔薇ニヤで言った。
『内容は教えますよ、対処法を考えて欲しい・・何か新しい方法を、導き出すかも知れないから』と私はニヤで返した。
「なるほどね~・・それを期待するのか~」とユリカが爽やかニヤで、主砲の発射ボタンを押しながらニヤで言った。
『シズカがどこまで読んで、どんな指示を出すのか・・そこが勝負だよ』と私は楽しくて自然に笑顔が出ていた。
「不思議な姉弟だよね~・・ライバルに近いよね~」とサクラさんがニヤで言って。
全員がニヤで無線機を装着して、メインモニターの前に戻った。
セリカが千鶴の機影を肉眼で捉えていた、セリカは海上2mの低空飛行で加速装置を押していた。
千鶴の左の画面の下に、セリカの機体とセリカの表情が映し出されていた。
「こりゃ~・・絶対勝てないよな~」と美由紀がニヤで言った、千鶴もモニターを見ながらニヤで頷いた。
《やれる・・気付いてない、急上昇してロックする》セリカがそう思ってハンドルを引いた。
その瞬間に千鶴のモニターの前面に、黄色い矢印が出て右にカーブを描いた。
千鶴はニヤでその矢印の方向に、ハンドルを切るだけで良かった。
「なに~!」と急上昇したセリカは叫んで、慌てて上昇しながら右旋回をした。
千鶴が矢印通りに操縦すると、照準機が現れてロック率85%と出た。
千鶴はニヤニヤで、ロック状態のセリカの機体を見ていた。
メインモニターには、リョウがミコトに簡単に後を取らる映像が流れていた。
リョウとセリカは蛇行を繰り返し、後から来る憧れの姉の影に脅えていた。
どんな操縦をしても、余裕で付いて来られるので焦っていた。
機内はずっと警告音が鳴り響き、モニターはずっと真赤なままだった。
私はニヤで目の前のマイクを握り、マイクのスイッチ【姿無き男】を押してモニターを見た。
『お前の心は読まれてる・・諦めろ』とマイクに向かって言った。
私の声は無線機を付けてる全員に、不気味に響いた。
その声は無線機からでなく、全体から響くような声だった。
管制室にいる全員が私を真顔で見た、マリだけが小型モニターにニヤを出していた。
私は視線を感じながらも、大型モニターを見ていた。
「聞こえたか・・セリカ」とリョウが前を見ながら静かに言って。
「聞こえました、心を読まれてる」とセリカが高速で流れる景色の中で静かに言った。
「策略です!、今のは小僧の言葉です・・次の場面を読まれてるだけ、読んでるのは・・マリ!」とシズカが叫んだ。
「そうなのか!・・なるほどね~」とリアンが笑顔で言って。
「マリは誰でも読めるの?」とアンナが聞いた。
「ここにはマリの同調で入ってますから、マリは全員が読めます。
読めると言うのは、思考自体じゃないと思います。
多分・・信号・・脳が各部位に伝える、指令の信号です。
だから次の行動を読まれる、それだから心を読まれると思ってしまう。
そう確信したのは、まだ落さないからです・・ずっとロックしてるのに。
奴は大きな難問を出した、リョウ姉さんとセリカ姉さんに。
脳が指令するレベルでは駄目です、絶対に振り切れません。
2人とも話しを聞いてますよね、私は仙人の結界がヒントだと思います」
シズカはニヤで強く言った、リョウもセリカもそれでハッとした。
『ミコト・千鶴・・いつでも撃墜できる体制でいてね』と私はミコトと千鶴だけに無線で言った。
「了解」と2人はニヤで返してきた。
「サンキュー、シズカ・・やってみる」とリョウが真顔で言って。
「サンキュ~で~す・・もう少しで、シリアスになるとこだった」とセリカが流星ニヤで言った。
「1つ乗り越えたね、セリカ・・流星か~・・本当に素敵だよね~」と北斗が笑顔で言った。
全員がモニターを見ながら笑顔で頷いた。
「そっか!・・シズカ、あの戦艦のミサイルは、熱感知だよね?」と蘭が満開笑顔で聞いた。
「確信は出来ませんが、そうだと思います」とシズカが返した。
「赤丸を取囲むミサイルも熱感知なら、その方向で考えれば良いんだよ」と蘭が満開笑顔で言った。
「そっか!・・主砲で守られてるけど、主砲は真上は向けない」とホノカが華麗な笑顔で言って。
「熱を感じさせないで、真上からの攻撃ね~?」とナギサが考えて。
全員が沈黙して考えた、私はその言葉を聞きながらミホを見て凍結していた。
私の表情で察して、全員がミホの映るモニターを見た。
ミホは上空で制止して、頭上のシールドを開けていた。
そしてヘルメット脱いで、それを海に投げ捨てた。
解放された髪形を戻すように、ミホは無表情で首を何度も振った。
「ミホ!・・何するの?」とヨーコがそれに気付き叫んだ。
それで全員がミホの映像を見て、凍結した。
ミホは4点式ベルトを外し、足元に潜るように頭を入れていた。
ごぞごぞと何かを取り出し、頭を上げた両手には真赤なロケットランチャーが握られていた。
ミホは私のやり方を見て覚えてたのだろう、ランチャーの安全装置を解除した。
そして空母に向かい、手を大きく動かして高さを示した。
「シズカにサインだよな・・何が知りたいんだ?」とリアンがシズカに言った。
「ミホ・・了解、待ってね」とシズカは言って、スパイカメラのモニターを切り換えた。
リアンもアンナもシズカの横顔を見ていた、シズカの瞳は潤んでいた。
「ミホ・・赤丸を囲むミサイル、ロック照準最高距離・・1000mだよ」とシズカはそう伝えた。
ミホはそれを聞くと、空母に向けて右手の親指を立てて突き出した。
シズカは何も言わずに、ミホの方向に右手の親指を立てて突き出した。
ミホはヨーコの顔を見て、そのまま操縦性に座った。
「ミホ!・・駄目だよ」とヨーコがハッとして叫んで。
「シズカ!・・どうして?・・どうして行かせるの!」とヨーコは声の限りに叫んだ。
「それが私の言われた・・小僧からの挑戦状、犠牲を覚悟しろなんだよ・・ミホ、犠牲になるなよ」とシズカは強く返した。
ミホの機体はゆっくりと上昇して、戦艦の方向に飛んだ。
「そこまで・・そこまでやるのか、実の姉に」とユリカが静かに言った。
『俺は・・誰も特別視しない・・同じ世界にいれば、ミホも同じだ』と私は静かに全員に向けて無線で言った。
後悔するぞと自分に言いながら、ミホの顔をモニターで見ていた。
『ミコト・千鶴・・2人は気付いた、簡単な答えは出させない・・撃墜せよ』と私は静かに無線で全員に言った。
「了解・・発射」とミコトが静かに言って、躊躇無く発射して。
「発射」と千鶴が言って、リョウとセリカの機体は消えた。
『ミコト、千鶴・・お疲れさん、加速装置を10秒以上押すと・・ゲームオーバーになる』と無理やり笑顔を作って言った。
2人は返答を返さずに、加速装置を押していた。
「お疲れさまでした・・クライマックスを見に行きましょう」と美由紀がミコトと千鶴に笑顔で言った。
「なぁ、美由紀・・奴はどこまで強いんだ?」とミコトが真顔で言った。
「ミホは・・飛び降りるんだろ、1000mから」と千鶴も真顔で言った。
「そうですね、ミホちゃんはそれを選択したのでしょう。
小僧が1番怖いはずですよ・・これまでが水の泡になるかも知れない。
ミホちゃんは、やっと微かな温度変化が出だしたのに。
それが消え去り・・強固な壁がまた閉ざすかもしれないのに。
ミホを信じて、ミホに賭ける・・それが小僧ですね」
美由紀は笑顔でそう言って、3人でモニターの前に立った。
プールから上がってきた、リョウをミコトが抱きしめて。
千鶴も笑顔でセリカを抱きしめた、それを周りの全員が優しい瞳で見ていた。
「小僧・・ごめん・・ミホは想定外だったよね」とヨーコが真顔で言った。
『うん・・想定外だよ・・俺の想定は、それをやるのなら・・ヨーコだった』と無線で強く返した。
ヨーコはそれを聞いて、脱出レバーを引いた。
ヨーコは空に投げ出され、パラシュートで海面に着水して、戦艦を目指し泳ぎはじめた。
Bチームも全員終結して、戦艦を取囲んだ。
主砲はユリカが押し続けていた、ヨーコは必死で戦艦に向けて泳いでいた。
「落下しながら、ロケットランチャーが撃てるのか?」とナギサが呟いた。
「それに・・撃てたとしても、戦艦が消える前に到達したら・・激突する」と蘭がモニターに呟いて。
「怖がりなんだろ!・・だから閉ざしてるんだろ!・・違うのかよ~」とリリーがモニターを両手で掴んで叫んだ。
女性達は沈黙して、ミホが映るモニターを見ていた。
「やるよな~、ミホ・・それがお前の笑顔の記憶、7歳の時の未来の記憶だろ」と恭子が強く言った。
モニターに映る恭子は、完璧な【狂子】だった。
攻撃席のシールドを開き、屋上に立ち戦艦の上空を見ていた。
「恭子先輩!」と美由紀が叫んで、涙を流した。
攻撃席の他の4人はシールドを開けて、全員が屋上に立ってミホの機影を見ていた。
ミホは高度計1010mを維持して、戦艦の真上に入った。
そこで停止して、操縦席を出て羽に乗って端まで歩いた。
下を見ると、豆粒のように小さい戦艦が見えた。
「無理だよ!・・赤丸なんて見えないじゃないか!」と小夜子が叫んで。
「駄目だよ・・ミホ・・やめろよ」とネネが叫んだ。
ミホはロケットランチャーを担いで、そのまま前に倒れこむように飛び降りた。
「ミホ~!」と何人もの女性が叫んだ。
ミホは顔を戦艦の方に向け、戦艦を睨んでいた。
落下による強烈な風に、ミホの全身は包まれていた。
「ミホ・・ランチャー射程突入まで・・・10・・9・・8」とシズカがカウントした。
ミホはそれでロケットランチャーを肩に担ぎ、照準機を覗いた。
「4・・3・・2・・」と女性全員がカウントダウンをしていた。
ヨーコは戦艦の真横に浮いて、空を睨んでいた。
「1・・GO」とシズカが言った瞬間に、ミホのランチャーから白煙が上がった。
ミホはロケットランチャーを投げ捨てて、戦艦の赤丸を睨んでいた。
女性達も落下する、ミホの映像を睨んでいた。
戦艦の赤丸に爆発が起きて、戦艦が消える瞬間にミホは爆発の白煙の中に落ちた。
静寂が流れていた、ヨーコは海に潜った。
「ヨーコ先輩・・プールには帰ってない!」と美由紀が叫んだ。
「行くよ~!」とマキが叫んで脱出レバーを引いた。
それを受けてBチームと全員と、ネネと千春と千秋がレバーを引いた。
ヨーコは1度確認の為に海上に上がった、ミホを海中で見つけられなかったのだ。
ヨーコがもう一度潜ろうとすると、暖かい風が頬に当たった。
「お空にお花が咲いてますね~・・どこに行くんでしょう~・・それとも、どこかに帰るんでしょうかね~」と可愛い声が後から聞こえた。
ヨーコが振向くと、小さな小島の真中に満開の桜の木があった。
緊迫感から遠く離れた、コントのセットのような小島だった。
満開の桜の木の下にルンルン笑顔のモモカが座っていて、その横にミホが眠っていた。
小島はユラユラと流れているようで、泣いているヨーコの方に近付いた。
「モモカ~」とカスミが叫んで大きく手を振って。
「きた~」と蘭が満開で叫んで両手を振って。
「ありがとう、モモカ」と美由紀が呟いた。
「ヨコ!・・駄目ですね~・・コジョなんかに負けて。
ヨコ・・忘れるの?・・時間が過ぎると忘れるの?
砂時計は止まったの・・ヨコの心の砂時計は・・もう止まったの?」
モモカは島の端に屈んで、海面から泣顔だけ出てるヨーコに囁いた。
「ごめんね・・モモカ・・止まってないよ・・動いてるよ」とヨーコが泣きながら言った。
「良かった~・・ヨコ・・深海のお魚は、光を見ないのです。
そこには本当の事が無いからです・・光は嘘を隠す物だからです
だから・・沙紀ちゃんも見ないんだよね・・氷の中ですね。
春になれば解けるよね~・・そうだよね~・・マ~リ」
モモカはルンルン笑顔で強く言った、モニターにはモモカの純粋な瞳が映されていた。
強い春風が吹いたのだろう、満開の桜の花吹雪でモモカが見えなくなった。
花吹雪が去った後には、モモカの姿は無かった。
マリがモニターの前で凍結していた、私はマリの凍結を初めて見ていた。
「マリ」とユリカが優しく声をかけると。
「1番美味しいとこを、またもモモカに取られました~」とマリがウルで返した。
その言葉で管制室にも、女性達にも笑い声が戻った。
ヨーコは島に上がり、ミホを抱きしめていた。
その島の周りに、女性達の笑顔があった。
「小僧・・ミホが寝たよ」とマリが笑顔で言った。
『了解・・全員、特訓お疲れさまでした~・・戻ったの3人なら、まぁまぁだね』とニヤで言った。
「火に油を注いだな~・・追求するから、映像を切れ」とリアンが極炎ニカで言って、私はウルウルで映像を切った。
私は目を開けて、女性達のニヤに囲まれたので。
ニヤを返してミホを抱き上げTVルームに向かった、TVルームにはマダムと松さんの笑顔があった。
松さんが簡易ベッドを整えてくれて、私は優しくミホを寝かせた。
「大丈夫やから、はよ行かんと・・怖いぞ~」と松さんがニヤで言った。
『よろしくです』とウルで返し、沙紀の寝顔を見てフロアーに戻った。
女性達が間接的な感想を話して、盛り上がっていた。
私はシズカの横に座らされた、女性達のニヤの視線に囲まれた。
「今は追及出来ないよね・・罰として、言葉遊び上級レベルを見せて」とユリカが爽やかニヤで言った。
「覚悟しろよ、小僧」とシズカがニヤで言った。
『生意気を・・MAXでやるんだね?』とニヤで返した。
「MAXなの!・・カルテット相手に・・8人だよ!」と沙織が驚いてウルで言った。
「沙織・・ウルは良いから、1度やってみせて・・それで対策を考える」と蘭が満開ニヤで言った。
「沙織・・大丈夫、1発で終わるよ・・MAXレベルは、プロでもいきなりは無理だよ~」と美由紀がニヤで女性達を見回して言った。
女性達がその言葉で、強烈なニヤニヤを出した。
「私からですね・・限定解除、下ネタ封印・・一句流し、575の下流し、57577下受け・・全7文字、完全版です」と沙織がウルで言った。
限界カルテットと美由紀と秀美がニヤで私を見て頷いた、私もニヤで返して頷いた。
「一句流し・・面白そうですね」とユリさんがワクワク薔薇で微笑んだ、沙織はウルで頷いて前を見た。
「制限時間2呼吸・・行きます」と沙織が真顔で言って頭を下げて。
「お願い致します~」と私も含めた7人で言って頭を下げた。
沙織・・・「冬の日は~、息の白さに、寒さ知る~・・息」
秀美・・・「吐く息に~、鼓動を感じ、恋を知る~・・恋」
美由紀・・「知る恋の~、上がれぬ段に、時を知る~・・段」
ヨーコ・・「石段の~、重きを感じ、汗を知る~・・重」
マキ・・・「身重なら~、足元を見て、道を知る~・・足」
恭子・・・「足早に~、過ぎ行く時で、今を知る~・・時」
シズカ・・「刻まれる~、時に刻んで、我を知る~・・我・・何を知る~」
私・・・・「我が恋は~、重き時にて、足もとの、息吹の中に、段階を知る~」
私は自分の出来栄えに自分で感動して、完全な静寂の中、ニコちゃんを出した。
「やばい・・入ったの!漏れは?」とマキがウルで言った。
「全員入ったの?」と恭子が言って6人がウルで頷いた、私はニヤニヤで7人を見ていた。
「五天女の皆さんにお聞きします、最後の小僧の詩・・【知る】で意味的に、成立してましたか?」とシズカがウルで聞いた。
「私的には、成立だったよ・・好きな感じの詩だったよ」と大ママが笑顔で言って。
「成立です、素敵でしたよ・・どんなルールでやっているのか、聞くのが楽しみですわ」とユリさんが薔薇で微笑んで。
「もちろん、成立です・・毛筆で掛け軸にして欲しいほど、好きな詩でした」とミチルが妖艶笑顔で言って。
「私も成立だよ・・エースに対する全てを外しても、成立だよ」とリアンが獄炎で微笑んで。
「満場一致だよ、成立です・・少し背中に汗が流れたけど」とユリカが爽やかニヤで言った。
『よっしゃ~・・100点だね、まだやるの?・・さっきレベルで、プロ達と修行を積みなさい』と私は7人にニヤで言った。
7人は悔しそうなウルを出していた。
「その前に、ルールの説明を・・シズカ」とナギサが華やかウルで言った。
「聞くのが・・怖い気がする」とリリーがウル呟いて。
「そうでありませんように」とカスミがウルで言った。
「MAXレベルは・・575の句で流します、季語は入りません。
最初の人を親と呼ぶんですけど、その親の最後の言葉で作ります。
今のは【知る】でした、だからパスを受けたら何かを知る句で流します。
そして前の人が一語を指定します・・今の【息】・【恋】・【段】と言うように。
それを絡めて、次の人が何かを知る句を詠んで流します。
各自が成立させれないと、その人の負けです。
そして最後の人を、【詠み人】と呼びます・・その詠み人は指定された全て。
全ての言葉を入れた、57577の詩を詠みます。
もちろん何かを【知る】詩を・・それが出来れば、詠み人の勝ちです。
今は8人でやりましたから、相当難解な問題でした。
美由紀の【段】・・ヨーコの【重】・・そしてマキの【足】。
この3つだけでも難解ですよね、悔しいですが・・素晴らしかったです。
さすがプロと呼ばれる小僧です・・私が一番関心したのは。
我が恋と始まった部分・・【我】は私が最後に指定した言葉です。
それを頭に持ってきて完成させた、何も準備しなかったんですね。
流れに身を任せて、全員の句を感じた・・それで瞬時に完成させた。
これが言葉の達人、会話のプロと呼ばれる・・小僧レベルです」
シズカが久しぶりに褒めてくれて、私は嬉しくて笑顔で返していた。
女性達の息を飲む静寂が嬉しくて、私はニコニコ全開だった。
私はこの時にも感じていなかった、これから始まる言葉遊びの重要性を。
沙紀の氷を溶かす突破口、その方法が隠されてるとも知らず。
ただニコニコと楽しんでいた・・。