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      【冬物語第二章・・未来の記憶⑯】 

恐怖は快感に繋がっている、それは危険なほど快感も強い。

何が繋げてるのだろう、何かの作為はないのだろうか?


高所恐怖症の原因、色々と諸説有るようだが。

飛び降りるかもしれないという、自分に対する恐怖とも言われる。

意識出来ない部分で、飛び降りないという自信が無いだろうか。


誘われるのだろうか、飛び降りれば楽になると。

楽になる?・・それこそが何かの叫び、楽にしてくれと言う叫びではないのだろうか。


昼食の準備が出来て、私は5人娘と沙紀を迎えに行った。

ピアノの前では、ミホが飽きもせず美由紀と【猫踏んじゃった】の特訓をしていた。

美由紀が楽しそうで、その後ろにシオンがニコちゃんで立っていた。


「カズ君と食事をして来るね、四季は揃うよ・・買い物でも行こうと待ち合わせしてるから」と美冬が笑顔で言った。

『そうなのか~・・さすが四季だけど、千夏以外に練習の必要があるの?』と二ヤで聞いた。

「何事も経験でしょ・・それだけが自信になるんだから」と美冬は笑顔で言って、裏階段に歩いて行った。


私はピアノの方に歩いて、シオンと美由紀とミホを食事に誘った。

ミホが立ち上がり自然な流れで美由紀を押した、美由紀は喜びの笑顔をミホに向けた。

ミホは無表情のままシオンと並び、TVルームに向かった。


その後ろをエミが沙紀と手を繋いで歩き、ミサとレイカもミホの横を笑顔で歩いていた。

私の側には安奈が駆け寄って、私は安奈を抱き上げた。


「楽しそうだね、エース」と安奈が私の顔を見て言った。

『安奈も楽しそうだね』と笑顔で返して、抱いたままTVルームに向かった。

「私も・・駄菓子屋さんに行ってみたいな~」と安奈が笑顔で言った。

『そっか~・・OK安奈、お正月に連れて行くよ・・安奈とお母さんも、俺の実家に遊びに来るからね』と笑顔で返した。


「嬉しい~・・約束なのです」と安奈が小指を立てて笑顔で言った。

私は安奈と指切りをしながら、元旦の約束をしていた。

TVルームに戻ると丸テーブルが出ていて、4人娘と沙紀とハルカとミサキが座っていた。

私は安奈を丸テーブルの空いてる席に降ろして、女性達が座るテーブルのミホの横に座った。


女性達が食べていたので、私が食べようとするとミホの視線に気付いた。

私がミホを見ると、視線を皿に移した。


『おっと~・・邪魔な奴発見、小僧が退治するよ』と笑顔でミホに言って、ミホの皿のトマトを取った。

ミホはそれで納得したのか、久々の病院食以外の昼食を食べていた。

ミホの食欲を感じて、私は一安心してトマトから食べていた。


ミホは体は健康そのもので、成長期の食欲があった。

体自体も11歳の平均よりも大きく、その時でも服のサイズはユリカと同じだった。

沙紀も体の大きな方で、食べるのは大好きだと言っていた。


私はミホの集中を感じながら、昼食を食べ終わりお茶を飲んでいた。


「エース・・ミホは大丈夫なのか、大人数に囲まれても?」とリアンが真顔で聞いた。


『ミホは大丈夫だよ、どんなに人に囲まれてもパニックにならない。

 信頼できる、好きな人が1人でも側に居れば。

 ミホは動揺しない、どんな時も冷静に自分の状況を判断するんだよ。

 だから何も気にしなくて良いよ、ミホがそこに居るという事が。

 ミホには楽しいという事だから、ミホは常に客観的に自分を見てる。

 若手女性にはヒントなんだよね、ミホは閉ざしているけど・・拒絶はしない。

 好きな人や好きな事・・好きな物には、拒絶はしないんだと思ってる。

 赤い食べ物は、今は食べたくないから・・拒絶する。

 昔は同じ皿に赤い食べ物が有ると、手を付けようとしなかった。

 今は赤を避けて食べれるようになった、ミホも成長を続けてるんだね。

 俺はさっき自然に美由紀を押したのを見て、また美由紀の凄さを感じたよ。

 ミホにとって、美由紀は信頼できる大好きな姉なんだよね。

 だからミホも自然に美由紀のフォローをする、それが自分に従う行動だから。

 ミホは自分に従うんだ・・無意味な拒絶は無い、自分で見極めてる』


私は女性達に笑顔で言った、女性達も笑顔でミホを見ていた。


「見極めがキーワードだね、ツネさんもそれを暗に教えてくれたね」とカレンが笑顔で言った。

「ツネさんと話したのか、しまった~・・私も行けば良かった」とリアンがウルで言った。

「大丈夫よ、リアン・・ツネさんも、忘年会に来るって言ったよ」とユリカが笑顔で返した。

「それは本当に嬉しいですね~・・大ママには内緒にしましょう」とユリさんが悪戯っ子を出した。

女性達も二ヤで頷いて、マリと美由紀も二ヤを出していた。


「常に自分を客観的に見れる、大切なヒントだな~」とハルカがミホの背中を見ながら微笑んで。

「閉ざしていても、拒絶はしない・・受け入れる心を持つ、素敵なだな~」とミサキも微笑んだ。


「そこなんですよね~・・私もネネ姉さんと話して、互いに感じたんですけど。

 私もネネ姉さんも、前の店の女性達と上手くいかなくて・・浮いていた。

 心のどうしようもない壁を感じて、仕事モードと偽って逃げていた。

 仕事モードの時は閉ざしてしまって、何も受け入れる事をしなかったんです。

 リリー姉さんを見て、私達は自分の未熟さを痛感しました。

 リリー姉さんは、私達よりも過酷な環境にいました・・肉体的にも精神的にも。

 それでも拒絶をしなかった、受け入れる部分を閉ざしてなかったですよね。

 だからリリー姉さんは、今でも幻海の女性達に慕われてます。

 本当に凄い事ですよね、アイコ姉さんとリリー姉さんの信頼関係。

 アイコ姉さんは、本当にリリー姉さんの解放を喜んでいますよね。

 お互いに認め合い、受け入れたんですよね・・あの特殊な状況で。

 私の今のテーマは、そこにあります・・派遣という難しい問題に取り組む為に。

 受け入れる気持ちを持たないと、相手にも受け入れて貰えない。

 悪い部分を探さない、良い部分を探す・・そして感じた事を言葉に出す。

 本人の目の前で、自分の言葉に出す・・これは勇気がいりますよね。

 自分の気持ちを確かめます・・本心なのかと問いかける。

 私はそれに気付けて、本当に良かったと思っています。

 派遣になって、色々な店を経験できて・・自分の成長を感じる事が出来ました」


カレンは流れるような言葉で、笑顔で伝えてくれた。

女性達に笑顔が溢れて、ミホはカレンをずっと見ていた。


「上がりましたね~・・エースの依頼と、沙紀とミホを側に感じて」とユリカがカレンに微笑んだ。

「カレン・・素敵だったよ、私も同じ事を感じてたよ」とシオンがニコちゃんで言った。

「ありがとう・・シオン」とカレンが嬉しそうな笑顔で返した。


19歳同士が認め合い、互いに愛情を込めて呼び捨てにした。

私は2人を見てニヤニヤを出していた、シオンがそれに気付いた。


「エース・・何でしょう?・・悪い二ヤです~」とシオンが二ヤで返してきた。

『シオン、カレン・・来年の幻海のカレンの初日には、シオンを投入するよ・・出来ればセリカもね』と二ヤ継続で返した。

「いよいよ、称号の最終試験だね~」と蘭が満開で微笑んだ。

「そうなの!・・がんばろうね、シオン」とカレンが笑顔で言って、シオンもニコちゃんで頷いた。


「困った時代だよね~」とハルカがミサキにウルで言って。


「ハルカ・・幻海の最初の挑戦者は、私達だってよ。

 見せろって言ったよ、次代を担う力が有るのかと・・ニヤニヤエースが。

 2人で見せ付けるよ・・あの生意気な、16歳コンビに。

 さっき確信したけど、マキは次段階に入ったよね。

 ツネさんと律子母さんの煽りで、覚悟が出来た灼熱の表情だった。

 ヨーコも必ずそうなってる、由美子に出会って次段階に入ってるよね。

 さっき北斗姉さんが二ヤで、ヨーコが変化したって言ったから。

 未来の記憶・・私は、この言葉を少し理解できたよ。

 マキとヨーコが取り戻そうとする姿を見て、確信できたよね。

 私も感じたし、ハルカも感じてるよね・・挑戦者に戻ろう、ハルカ。

 あの時に戻ろう、ケイとマミに・・あの時を絶対に忘れないように。

 肩肘張らずに、自然の流れで伝えよう・・私達の想いを。

 時代を背負う覚悟を見せよう、大切な16歳の挑戦者に。

 銀河の奇跡にも、19歳トリオにも・・笑顔で挑もうよ。

 私とハルカは秘蔵子だって・・夜街の秘蔵子だって笑ってやろう。

 18歳で挑むと宣言しようね・・伝説の真希さんは、16歳で挑んだんだ。

 ミホも沙紀も由美子も見てるよね・・私達は未熟を武器にしよう。

 エースの表現を借りるよ・・未熟という武器に、挑戦という弾丸を込めよう。

 それが大切な5人娘と、ミホと沙紀と由美子に響くと思ってる。

 私達は今日確信したよね・・ツネさんという、偉大なる先人の言葉で。

 踏み出すよ、ハルカ・・レーザー照準を合わせて。

 蘭姉さんとナギサ姉さんとリリー姉さんの、ハートに合わせて。

 ボロボロになっても前に進む、私達は道を作りたい・・それだけが望みだよね。

 夜街に対する感謝の証・・私達は道を作る、自分達で歩いて残す。

 求めるべき、心に誓った未来図の・・地図を描こうね。

 道を繋ぐよ、ハルカ・・次世代の挑戦者が、入口で迷わないように」


ミサキはハルカに笑顔で言った、ハルカも真剣な強い瞳で頷いた。


「必ず道を示すよ・・自分の心に偽りの無い、次世代の道標を」とハルカもミサキに笑顔で返した。

この2人の言葉で、女性達に喜びの笑顔が溢れた。


「来ますか~・・いよいよ出撃です~、夜街に愛される最強コンビが」とシオンがニコニコちゃんで2人に言った。

「立候補の言葉だったね、ハルカとミサキ・・見せてもらうよ、偽りない覚悟を」とリアンが強く言った。

「覚悟は出来てるでしょう、蘭・ナギサ・リリーに挑むと言ったのよ・・エースが豊に挑むと言ったのに等しいわ」とユリカが静かに言葉にした。

深海の言葉で静寂が訪れて、ハルカとミサキは強く頷いた。


「エース・・ニヤニヤは良いから、1つだけ教えて・・輝きのチキンランに込めた想いを」とハルカが二ヤで言った。

「それはどうしても聞きたい・・挑戦者である為に」とミサキも二ヤで言った。


『そうだね~・・ハルカもミサキも点火しそうだから、完全なる点火をしてやるよ・・美由紀、よろしく』と私は美由紀に二ヤで言った。

女性全員がハッとして美由紀を見た、美由紀はマリのように少し俯いて二ヤを出していた。


「待って、美由紀・・主人公の2人が来るから」とナギサが笑顔でそう言って、挨拶しながら入って来た。

エミが沙紀と3人娘を連れて、笑顔でフロアーに向かって出て行った。

ナギサは沙紀の手を取って、笑顔で話して見送った。

ミホは美由紀を見ていた、美由紀の集中を感じているようだった。


リリーとカスミが入って来て、笑顔で挨拶した。

ネネとレンが続いて入り、女性達が小さな円になった。


「美由紀・・よろしく」とナギサが華やか笑顔で促した。


「チキンラン・・私が小僧のこの表現を聞いたのは、2度目なんです。

 誰にも話していませんが、小僧はチキンランと表現した事があります。

 それは自傷の女神の時です、あの小僧の解決方法を私は問いただした。

 沙織と2人で、小僧と向き合って座って・・小僧の瞳を見ながら。

 無茶過ぎると小僧に言って、真意を問うたんです。

 寺の本堂で・・3人で向き合って、私達は初めて小僧に問答を挑んだ。

 和尚だけが知っています、私達はブルブル震えながら・・小僧の伝達を受けた。

 私がこう口火を切りました・・何故に自傷行為を選択したのかと。


 小僧・・・それしか考え付かなかった。

 沙織・・・違う・・それは嘘だよ、小僧・・隠せないよ。

 美由紀・・そうだよ、沙織がいるんだ・・瞳で嘘は分かるよ。

 小僧・・・理解しようなんて思わないなら・・話すよ。

 沙織・・・今更お前の考えを、理解できると思っていないよ。

 美由紀・・そりゃそうだ・・はなから理解など出来ないから。

 小僧・・・俺は女神はまだやると思っていた、それが怖かった。

      俺は理解出来なかったんだ、女神の心が。

      女神の瞳に出ていたのは、愛されたいと言っていた。

      でも・・誰にとか、何にじゃなかったんだよ。

      ただ愛されたい・・そう出てたんだ。

 沙織・・・漠然となの!・・理由無しになの?

 小僧・・・そうなんだ・・理由無く、愛されたいと願っていた。

 美由紀・・何だそれ・・それは理解できないよね~。

 小僧・・・2人に問う・・愛されるとは何ぞ?

 強い言葉でした、小僧の瞳は私達を睨んでいた。


 沙織・・・一番簡単なのは、親の愛情だよね・・無償と言われる。

 美由紀・・そうだよね、それなら今の私達でも感じるね。

 小僧・・・親の無償の愛って何だよ・・金で買えないって事なのか?

 沙織・・・少し違うよね、なんて言うか・・植え付けられた愛みたいな。

 美由紀・・そうそう、歴史が・・進化が繋いだ決まり事みたいな。

 小僧・・・なぜそう決まったの・・その進化の選択理由は?

 沙織・・・もちろん、繋ぐためだよね・・命を繋ぐ為。

 美由紀・・そうだよ・・子孫を繋ぐ為に、無償の愛が生まれた。

 小僧・・・なら逆は・・なんて言うのか分からないけど、無償じゃない愛は?

 沙織・・・それは私達子供には難しいよね・・異性を愛する事だろ。

 美由紀・・難しい・・まぁ好きな人は出来るけど、好きのレベルが違うよね。

 小僧・・・それは大人の恋は、結婚とかに結びつくからなの?

 沙織・・・そうだろうね、だからドラマとかでも真剣に悩むよね。

 美由紀・・あるある・・不倫なんて、どうして別れないのかと思うよね。

 沙織・・・そうだよね~・・打算って言うの、お金の事とか絡むよね。

 美由紀・・うん・・分からないよね、安定した生活って言うよね。

      でも・・裏切った許せない人間と暮らして、安定するのかな~?

 沙織・・・絶対にしないよね、許せない限り・・心は安定しないよね。

 小僧・・・なら・・何の安定と心の安定を、天秤にかけるの?

 沙織・・・それは・・生活って言うか、お金の事だろう。

 美由紀・・そうだよ~・・食べないと死ぬよ、食べるにはお金がいるよ。

 小僧・・・餓死する人が、今の日本にそんなにいるのかな~?

 沙織・・・それはいないよ、ニュースにもならないし。

 美由紀・・オトンが言ってた、最後には生活保護ってのが有るんだって。

      ご飯が食べれなくなったら、国が助けてくれるんだよ。

      次の仕事が決まるまで、餓死しないようにだよね。

 小僧・・・なぜそこまで守るんだろうね、その生活保護に隠された意味は?

 小僧はここで二ヤ顔になりました、私も沙織もいよいよ佳境だと思っていました。


 沙織・・・隠された意味って、ヒトミがよく言ってた。

 美由紀・・目で見て、音で聞いても信じるな・・見極めろだった。

 小僧・・・確かに生活保護の基本は、餓死者を出さないだろうけど。

      絶対に裏の意味が有るよね、秩序を守る為の大きな意味がね。

 沙織・・・秩序を守る?・・そっか、刑務所を目指させない。

 美由紀・・なるほど~・・確かに食べれなくなると、刑務所が一番良いよね。

      ご飯は食べさせてくれるし、部屋の中で布団で寝れるから。

 沙織・・・そう考えるよね・・空腹で動けなくなったら。

 美由紀・・うん・・絶対に選ぶよね、犯罪を選択するよね。

 小僧・・・話がそれたけど、生活の安定って・・食べるのが基本なのかな?

 沙織・・・それは違う気がする、食べるだけなら・・女でも出来るよね。

 美由紀・・出来るよ・・母子家庭の家だって、沢山あるよ。

 沙織・・・じゃあ・・生活の安定を天秤にかける時は、何をかけるの?

      子供がいない夫婦だとして、愛情が冷めたのにそれでも別れない訳は?

 美由紀・・面倒だから・・働くのが面倒で、それよりは今の生活が楽だからとか。

 沙織・・・それに贅沢をしたいとか、自分で働いても今のように贅沢が出来ない。

 小僧・・・それが愛情なの?・・無償じゃない、愛なの?

 沙織・・・それは違うよ~・・これは愛じゃないよね。

 美由紀・・絶対に違うよ、愛とはかけ離れた場所に有るよ。

 小僧・・・まぁ、子供の俺達には、その位しか感じないよね。

      大人の恋愛には、難しい何かが沢山あるんだろうね。

      じゃあ・・子供がいる夫婦が、愛が冷めたのに分かれない理由は?

      今の・・仕事が面倒とか、贅沢をしたいを別として。

 沙織・・・それは子供の為でしょう、それなら感覚的に分かるよ。

 美由紀・・うん・・子供に淋しい思いをさせたくない、だから離婚しない。

 小僧・・・それが子供の為なの?・・偽ってる両親に育てられて。

      それが幸せな事なの?・・子供は感じないの、偽りの愛を。

      その影響は出ないの、子供の感性に・・純粋な子供の心に。

 強かったです、小児病棟に通い・・施設の子供と触れ合い続ける。

 小僧の言葉だから強く響いて、私達は沈黙して考えました。


 沙織・・・出るよね、絶対に悪影響が出るよね。

 美由紀・・両親が偽って、自分の為に我慢してる・・それは嫌だよ。

 沙織・・・うん・・別れて欲しいかも、淋しいけど・・そうして欲しい。

 美由紀・・そうだよね、絶対にそうだよ・・修復出来ない愛なら。

 沙織・・・親が楽しくないと、子供は絶対に楽しくないよね。

 美由紀・・それが大好きな両親なら、絶対にそうだよね。

 小僧・・・子供は感じてるよね、両親に幸せでいて欲しいと。

      親が子供に幸せになって欲しいと思う位に、そう思ってる。

      俺はそれが分かったよ・・あの母親の言葉と、子供の行動で。

      優しい人になってね、哲夫・・死を覚悟した母親の言葉。

      施設の全ての子供の支えが、この母の最後の言葉なんだよ。

      愛情とは何か・・それが凝縮されている、この言葉に。

 沙織・・・そうだよね、間違いなくそれなんだよね・・愛の言葉は。

 美由紀・・それを背負って探す、両親の幸せを探してる。

      哲夫は優しさの意味を探すんだ、両親に幸せでいて欲しいから。

      無償の愛の意味が、少し分かったね・・嬉しかった。


 小僧・・・2人に問う・・愛されたいと思う心の求める物は?

 沙織・・・お互いなんだね、両親も子供も・・互いの事を想う。

 美由紀・・偽り無く、自分の心に正直でいて欲しいと願う。

      親は子供に・・そしてどんなに幼くても、子供も親に。

      それを望んでいる・・それを感じるんだ、親の偽りの愛で。

 沙織・・・自傷の女神はそれに気付いていた、だから愛されたいと願ったんだ。

 美由紀・・サインだったんだ、両親に対する・・警告のサイン。

 沙織・・・自分が自傷行為をする事で気付かせたい、だから始めた。

 美由紀・・始めたら止まらなくなった、その行為がどんなに危険でも。

 沙織・・・小僧に問う、自傷を止める為の自傷行為・・その真意は?

 沙織が強く問いました、小僧の双子の妹と言われる沙織。

 その瞳でも強く問うたのでしょう、小僧は真剣な瞳で沙織を見ていた。


 小僧・・・俺は女神が止まらなくなってる行動を、こう考えたんだ。

      ジェームス・ディーンの映画に出てた、チキンランってのが有る。

      崖の上で車が2台並んで、断崖に向かってアクセルを踏み込む。   

      先に恐怖に負けて、アクセルを戻した方が負けなんだ。

      そして勝者に待っているのは、止まれないかもしれないという恐怖。

      何の意味も無い、度胸試し・・誰にも理解できない行為。

      でも一度やると、求めてしまうんじゃないかって思ったんだ。

      映画を見ながら、俺はそう思ってたんだ・・好奇心が動いていた。

      それをシズカが感じて俺に言った、恐怖をこう表現した。


      一度やると癖になるよね、人間の恐怖は快感と繋がってる。

      だからジェットコースターなんて物に、こぞって乗りたがる。

      安全が約束されてる恐怖でも快感を得る、ならば次の段階は。

      絶対に安全が約束されてない恐怖、それを知ると止まらなくなるよね。

      お前が言った脳の暴走・・脳は飽きている、だから消滅を願う。

      確かに有るかもね・・恐怖を快感に繋げてるのなら。


      シズカはそう言ったんだ、俺もそうだと思っていた。

      そして自傷の女神でそれを思い出す、恐怖が快感になってる。

      そう思ったんだ・・だから解決方法を考えてた。

      そしてモモカが強く問いかけてくれた、悩んでる振りをする俺に。

      俺は1つの解決策は出来ていた、チキンランで考え付いた。

      でもあまりに無謀で、非難を受けると思って封印した。

      俺らしくもなく、他人の評価を気にしてしまった。

      その偽る心を狙い撃ちされた、透明な弾丸に・・心を狙われた。

      モモカはこう言った・・強い透明な弾丸を発射した、偽る俺の心に。


      コジョの嘘つき・・モモカはお馬鹿なコジョが好きなのに。


      この言葉で・・俺ははっきりと理解したよ、自分を偽っていたと。

      モモカの透明の弾丸で覚悟が出来た、ルンルン笑顔に癒されながら。

      自分らしい馬鹿な解決をする覚悟が・・誰にも理解されない方法。

      自傷の女神とのチキンラン、俺がアクセルを緩めなければ届く。

      自傷の女神が恐怖に負けてアクセルを抜く、そして敗北を認める。

      そうすれば終わる、恐怖に快感を得ているという誤解が解ける。

      その誤解に気付くと思ったんだ、アクセルを緩めれば景色を見るから。

      両親がどうのこうのなんて、甘い悩みに溺れてる。

      溺れてる自分を愛してる、そんな偽りの心だから・・恐怖に負ける。

      俺は自傷の女神の心に勝負を挑んだ、自傷行為のチキンランでね。


      意味の無い事だから届くんだよ、次の世界の入口に。


      ヒトミの言葉だよね、沙織も美由紀も強く覚えてるよね。

      この言葉の深い意味を少し感じたよ、俺は解かないといけない。

      ヒトミの沢山の大切な言葉の、深い意味まで解かないと届かない。

      次にヒトミと同じ病の少女に出会った時に、その心を誘えない。

      時を賭けるチキンランに、誘う事が出来ないからね。


      小僧はそう笑顔で言って締めました、私も沙織も笑顔で返した。

      これが私と沙織の、未来の記憶です・・少し忘れかけてた。

      今話しながら、不思議に細部まで思い出しました。

      あの時の本堂のシーンが、リアルに蘇って・・自然な流れで話せた。

      嬉しかったです・・受け取りました、過去からの提案を」


美由紀は笑顔で話した、流れる言葉のスピードは全てを追い抜いていた。


「素晴らしいですね、さすが美由紀です・・未来の記憶と過去からの提案、響きましたよ」とユリさんが薔薇で微笑んだ。

「無意味な事だから届く、次の世界の入口に・・素晴らしいですね、ヒトミも」とユリカが静かに言葉にした。

「輝きのチキンラン、本当に素敵な表現だった・・そしてその真意は、深い愛情に溢れてたね」とリアンが笑顔で言った。


「その言葉を受けて、マキが発した言葉が凄いんです。

 残った1人と勝負する、想いという弾丸を込めた、ロシアンルーレットで。

 そうマキは言いました、エースと・・リリーとカスミの背中に向かって。

 私はその時に震えました・・そして今の話を聞いて、また震えています。

 限界カルテットも覚悟が違う、ヒトミの言葉を持っているんですね。

 あの子達、久美子も含めた限界ファイブはやります・・躊躇無く自分に賭ける。

 中1トリオに見せる為に、次の世代に道標を作る為に」


ユリカの言葉が静寂を連れて、女性達はマキの言葉に驚いていた。


ミホの真剣な瞳が、ユリカを見ていた。


ユリカは到達していた、自分の求める世界を明確にイメージしていた。


この物語の回想録、東京物語に続く物語の主演女優は・・ユリカである。


ユリカはこれからの4年で繋ぐ、託すべき次の世代に。


ユリカの求める世界・・それは想像などの外側に有った。


奇跡の道を歩む者・・羊水の揺り篭、そこに響く母の子守唄。


深海の静けさに包まれる、透明の女神・・その選ばれし感性。


切り立った断崖に咲く一輪の花・・今も愛され続ける名前・・百合香。

      

      

           

 

 

 





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