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      【冬物語第二章・・未来の記憶⑧】 

伝えたい想い、それは誰に伝えたいのか。

分かって欲しいなどと思うのは、贅沢な事であろう。

それを望んではいけない、ただ伝えたいと純粋に想いたい。


嵐のようなモモカの突然の来襲が去り、女性達も徐々に集まって来ていた。

眠っていた5人も起きて、エミも加えて久美子とフロアーに行った。

フロアーで徳野さんが笑顔で沙紀を抱き上げて、沙紀も嬉しそうに抱かれていた。


ユリさんが薔薇の微笑みのまま戻ってきて、カレンが病院から戻って来た。

ユリカと蘭が戻って、北斗とアンナが来て全員が揃った。

5人娘と沙紀もTVルームに戻り、私は沙紀の事をマリに頼み久美子とPGを出た。


「営業取りに行くの?・・ゴールド、楽しみ~」と久美子が笑顔で言った。

『そうだろうと思ってね、ゴールドのピアノいかすよ~』と二ヤで返した、久美子も期待の笑顔で返してきた。


「エース・・久美子ちゃんまで、デビューさせるんじゃないよね~」と佐々木の爺さんが二ヤで言った。

『それは無理だよ・・塚本と谷田が許しません』と二ヤで返した。

「そりゃ~・・恐ろしい2人が付いてるね、久美子ちゃん」とキャバレーの呼び込みのシュン君が笑顔で言った。

「恐ろしいんですか~・・私には優しいですよ」と久美子が笑顔で返した。


「久美子は宝だって言ってるからね~・・あの塚本でも」と佐々木の爺さんが言って。

「応援してるから、頑張れよ・・久美子」とシュン君が笑顔で言った。

「はい・・ベストは尽くします」と久美子も笑顔で頭を下げて、2人と別れてゴールドのビルに入った。


エレベーターで久美子は少し緊張していた、私は久美子をニヤで見ていた。

ゴールドの受付に歩くと、ボーイ頭が笑顔で歩み寄った。

千鶴はまだだと聞いて、ピアノに久美子を案内した。


「何!・・何?・・初めて見た!・・透明のグランドピアノ」と久美子が声を上げた。

『見た目は素敵だろ~・・音は駄目だって千鶴が言ってたよ・・弾いてみなよ』と笑顔で言った。

「良いの!・・楽しみだ~」と久美子は笑顔で言って、椅子の調整をしていた。


私は嬉しそうな久美子の笑顔を少し離れて見ていた。

久美子は透明のピアノに興味津々のようで、座ってピアノの構造を再確認していた。


そして静かにサマータイムを始めた、静かに柔らかい音で奏でていた。

久美子はピアノの内部が見えるのが楽しいのか、各部分の動きを目で追っていた。


セリカが私の横に笑顔で並んで腕を組んだ、マユもケイコも来て、その他に女性が6人出てきた。

ボーイ達も準備の手を休めて、久美子の音色を聴いていた。

久美子も熱が入りだし、最後はリンダスペシャルで締めた。


女性達とボーイ達の拍手を受けて、久美子は立ち上がり笑顔で一礼した。

そして座り直し、ミコトのリクエストの曲をジャズのアレンジで弾いていた。


「素敵なプレゼントね~・・ありがとう、エース」と言いながら、千鶴が受付から歩いて来た。

『宣伝です・・営業取りに来ました、週1回なら受けますよ・・開店前の1時間』と私は二ヤで言った。

「ほんとに!・・嬉しいね~、もちろん依頼しますよ」と千鶴が笑顔で返してきた。

「やった~・・嬉しいな~、エースありがと」とセリカが流星で微笑んだ、私も笑顔で返した。


『月から木までで、何曜日が良いかな?』と笑顔で千鶴に聞いた。

「中日の水曜日にお願い・・久美子ちゃん、派遣って事なの?」と千鶴が久美子を見ながら言った。

『はい・・久美子を派遣でプロにするよ、音色が今より強くなるよ』と二ヤで返した。

「素敵だな~、久美子」とセリカが流星で微笑んで。

「レイカは幸せだな~・・最初のピアノの先生が、久美子ちゃんで」とマユも微笑んで久美子を見ていた。


久美子が弾き終わり拍手に笑顔で頭を下げて、千鶴に声をかけられ笑顔で頷いていた。

私は久美子と挨拶をして、ゴールドを出て魅宴に寄った。

大ママもミコトも喜んで、月曜でよろしくと言われて、久美子も笑顔で頭を下げた。


久美子と2人でTVルームに帰ると、賑やかな声が響いていた。

シズカと美由紀が来ていて、美由紀が私の面白話を繰り出していた。

沙紀が楽しそうなので一安心して、私は久美子と子供達の側に座った。


沙紀が私に歩み寄り手を出した、私が笑顔で握るとケースと伝えて来た。

私がロッカーのケースを出して沙紀に渡すと、1枚の絵を出した。


私は一瞬見ただけで感動した、私が沙紀に退院前に依頼した【KUMIKO NIGHT】のポスターだった。

私が谷田との話の中で、KUMIKO NIGHTを強く印象付けるポスターが欲しいと言われて。

沙織に装飾文字を書いてもらい、それを沙紀に渡していたのだ。


沙紀は久美子の前に歩き、久美子にその絵を差し出した。

久美子は沙紀を見て驚いた表情で、絵を受け取って大きく震えた。

久美子は完全に凍結して見ていた、そして泣きながらテーブルに絵を置いて沙紀を抱きしめた。

テーブルに置かれた絵で、TVルームは静寂に包まれて、美由紀が号泣した。


沙紀の絵は熱い想いに溢れていた、ステージを後ろから照明の逆光で描いていた。

ステージを裏から見る視点で描き、黒いグランドピアノが照明の光に照らされていた。

久美子は最後の音を奏でたのだろう、上を向いて後ろに立つ少女に微笑んでいた。

久美子の額の汗が輝き、充実感の漂う16歳の笑顔だった。

そして後ろに立つ少女の左腕が、久美子の座る椅子の背もたれを握っていた。

その左腕はメタルの義手で、ステージ照明に照らされて妖しく輝いていた。

秀美は感動の笑顔を向けて、久美子の輝く瞳を見ていた。

【KUMIKO NIGHT】の文字以外の部分は、全て色を塗られていた。

全体的に暗い背景の中に、確かな輝きを表現していた。


「素敵すぎるよ、沙紀・・秀美が見たら、嬉しいで泣くよ」と美由紀が笑顔に戻って言って。

「どうしてそこまで行けるの、本当に素敵だよ・・沙紀」とユリカが泣きながら言って。

「ありがとう、沙紀・・明日、見せてあげるね・・ステージの私を」と久美子が沙紀を抱きしめながら言った、沙紀は久美子を見て強く頷いた。


谷田はこの絵を大切に扱い、KUMIKO NIGHTの時だけ店の入口に出した。

そして久美子がNYに発つと、オヤジバンド全員でリッチの通路に掲げた。

沙紀の強い想いを乗せたポスターは、その後のリッチのステージに立つ若者達を見守った。

リッチが店を閉める15年後まで、この絵はリッチの通路の1番奥の1番上に飾られていた。

音楽を目指す女子の守り神と言われ、ステージに立つ前には女子達が見上げていた。

この絵は今でも色褪せる事無く見守り続けている、夢を追う若者達を・・ある場所で。


暖かい空間に笑顔が溢れて、女性達は食事の準備に入った。

その年の最後の土曜日と、沙紀のポスターで女性達の集中が強まった。

久美子が立って、マリと5人娘と沙紀が久美子に付いてフロアーに向かった。

私はマジックミラーからその様子を見ていた、沙紀は楽しそうにエミと手を繋いでいた。


「仙人が蘇ったんだって・・夢じゃなかったね~」と美由紀が私の横に来て笑顔で言った。

『うん・・嬉しかったよ、美由紀の予想通りだったよ』と二ヤで返した。

「小僧・・どう思ってるんだ、沙紀の覚醒って・・必要なのか?」とシズカも来て真顔で言った。

『分からない・・でも、沙紀自身が望んでると確信してる、沙紀の依頼だからね』と真顔で返した。


「そっか~・・今で足りない、沙紀はそう感じてるのか」とシズカが考えた。

「やばい・・シズカタイムに入ったよ、小僧・・何とかして~」と美由紀が二ヤで言った。

『美由紀・・無駄だよ、何を言ってもシズカの集中は解けないよ』と二ヤで美由紀に返した。


「そこ・・また不思議な話を3人でして、ここでしなさい」とユリカが夕食を食べながら、爽やか二ヤで言った。

女性達が二ヤで私達を見て、目でおいでと呼んでいた。


「もう、小僧がもう一人の小僧じゃないから~」と美由紀がウルで言った。

私と美由紀は女性達の近くに座った、シズカは動かずに集中していた。


「で・・何のシズカタイムなの?」とマキが二ヤで美由紀に言った。

「シズカタイムですか~・・マリちゃんみたいです~」とシオンがニコちゃんで言って。

「確かに集中してる背中が、マリみたいだね~」とカスミが二ヤで言った。


「シズカ先輩は、真剣に考える時には全てを忘れます・・あんな風に。

 そして子供の頃から、時間に関する事には・・すご~くこだわります。

 多分・・自分の永遠のテーマと思ってる感じですね。

 そんな時に、聞いてしまった・・ヒトミの悪意の砂時計の事を。

 それからずっと追いかけてると思います、悪意の砂時計の正体を。

 私は何度もシズカ先輩と話しました、悪意の砂時計の対策を。

 

 反転方法を探すな、遅らせる方法が先だ・・これが今のシズカ先輩の段階です。

 その意志は怖いですよ~・・そのこだわりは半端じゃないですから。

 出来る計算は全てしてると思います、そしてそれを全部消去してるでしょう。

 書いて残すと囚われる・・そう私に教えてくれましたから、自分もそうしてる。

 シズカ先輩は本気でやりきるつもりです、今まで誰にも解けない難問に挑戦する。

 イメージの世界は抽象的な表現でしょう、皆さんもそう感じていると思います。

 だから全ては目で見えない何かを表現してる、その何かこそが突き詰めるべき物。

 悪意の砂時計・・律子母さんでさえ無理だった難問、だからこそ挑戦しますね。

 私は・・シズカ先輩は、律子母さんに認められたいのではないと思います。

 小僧に対して律子母さんよりも、自分の方が理解者でありたい。

 小僧の1番の理解者でいたい・・そう思ってると、私は感じています。

 それが姉弟関係を抹消した、自分の言葉に対する責任だと感じてるんじゃないかと」


美由紀は真剣な瞳で女性達に言った、女性達が笑顔で頷いた。


「美由紀・・聞こえてるよ、恥ずかしいだろ」とシズカが後ろから二ヤで言った。

「おりょ・・今回は早かったですね~、シズカタイム」と美由紀は振り向いてウルで返した。


「美由紀が勝手に付けたんだろ、シズカタイムって・・何なの、そのタイム」とシズカがニヤニヤで美由紀の横に座った。

「問答!・・やるんですか、姉弟問答?」と美由紀がシズカを間近で見て驚いて言った。


「やるの!シズカ」と蘭が驚いて言った。

「ご期待に応えられなくて残念ですが・・今は、そこまでは必要無いです」とシズカが二ヤで返した。

「え~~・・残念、リアルに見たかった~」とリリーがウルで言った。


「リリー姉さんの内包する探究心って、本当に小僧と瓜二つですね」とシズカが笑顔で返した。

「褒め言葉と取っとくよ、ありがとう・・シズカ」とリリーが笑顔で返して、シズカも笑顔で頷いた。

「さぁ、シズカちゃん・・質問攻撃出して良いですよ」とユリさんが薔薇で微笑んだ、シズカはユリさんの表情を見ていた。


「ユリさんに何をした?・・駄目だろ~、あれ以上登らせると・・女性達が登頂を諦めるぞ」とシズカが私に二ヤで言った。

『俺じゃないよ・・モモカが問いかけに来たんだ・・花の言葉が聞きたいって』と私は二ヤで返した、シズカは驚いてユリさんを見た。

「素敵な問いかけでした、再確認が出来ましたよ・・そして自信が持てました」とユリさんが薔薇で微笑んだ。


「か~・・困ったね~、蘭」とナギサが華やかウルで言って。

「うん・・モモカの意地悪」と蘭が満開ウルで返した。

「カスミ、そのニヤニヤは・・今の蘭とナギサには危険だよ」とアンナが二ヤで言った。

「おっと~・・まずいな、引っ込めよ」とカスミが二ヤで言った、蘭とナギサが二ヤで返していた。


「良いよ、シズカ・・早く発射しなさい」とユリカが二ヤで促した。

シズカもニヤで頷いて私を見た、私は当然のようにウルウルで返していた。


「第1問・・小僧、ヒトミは気付いてたよな・・私はどう考えてもそう思う。

 悪意の砂時計の何かに気付いてたよね、絶対に大切な事に気付いてたよ。

 あの時の小僧が話してくれた内容から考えると、ヒトミは気付いた。

 お前にヒントを出してないのか?・・出してないなら、誰かに出しただろ。

 ヒトミだぞ、あの聡明なヒトミだぞ・・誰にも託さない訳がないよな。

 誰に託したんだ?・・それは知ってるだろ、もう白状しても良いだろ。

 それとも読まれたくないから、言葉では白状出来ないのか?」


シズカはニヤニヤで私に言った、私も必死に二ヤで対抗した。


『俺にはヒントは無かったよ・・確かにヒトミは、何かに気付いていた。

 もちろん、それを託してる・・俺はここで言葉で言えるよ。

 別に奴に読まれても、それは平気だから・・絶対に奴は手が出せないからね。

 さぁ全員に問題です・・それは誰でしょう?・・全員が知ってる子です』


私が二ヤ二ヤで女性達を見回すと、強烈なニヤに囲まれていた。


「初めに報告しますが・・私と沙織と哲夫は違います」と美由紀が笑顔で言った。

「残るのは・・限界カルテット?」とハルカがマキを見て言った。

「それならば・・ヨーコか恭子でしょうけど、違うと思いますよ・・ねぇシズカ?」とマキがシズカに言った。

「無いよね~・・それは無いと思います」とシズカが真顔で全員に言った。


「じゃあ、母さんでしょ~」と蘭が満開笑顔で言った。

「その可能性が強いよね~・・どうなの?」と北斗が私に二ヤで言った。

『ブ~~』と私は二ヤで不正解を知らせた。


「他の人で、ここの全員が知ってる人で・・ヒトミと関わったのは・・」とカレンが考えた。

「1号だね!・・生臭1号」とカスミが嬉しそうな笑顔で言って、全員が私を見た。


『ブ~~』と私は楽しくて、ニヤニヤ不正解を出した。

「なんかむかつく・・可愛くない」とネネが私を笑顔で睨んで。

「やっちゃいな、ネネ・・私が許すよ」とナギサが華やか二ヤで言って、私はウルにチェンジしていた。


「エース・・笑いませんか?・・言おうかしら」とユリさんが私に薔薇二ヤで言った。

『ユリ・・駄目だろ、ミサから話術を盗んだら』と私も二ヤで返した。

「あら、ばれました・・笑いませんね?」とユリさんが薔薇ウルで言った、女性達がその表情に驚いていた。

『笑わないよ、ユリ・・さぁ、言ってごらん』と私は笑顔で渋く言ってみた。


「ヒトミちゃんが、最後まで誰に託すのか考えたとすれば・・その子だと思います。

 そうであるのなら、私は今までもそう思ってましたが・・本当に残念です。

 現世でヒトミちゃんに出会えなかった事が・・残念でなりません。

 聡明なその心の表現を感じたかった、真直ぐな生き方を感じたかったと思います。

 ヒトミちゃんは、エースに最後にこう言っていますよね。

 あなたには成すべき事があると・・その成すべき事の深い意味。

 ヒトミちゃんはミホちゃんに託した、成人の日にミホちゃんは入院してますよね。

 出会っていたのではないでしょうか・・ヒトミちゃんとミホちゃんは。

 エースがヒトミちゃんと最後に話す前に、2人は出会っていた。

 そう確信したのは・・エースが言った、奴には絶対に手が出せないという台詞。

 そう言えるのは、ミホちゃんしかいないでしょう。

 ヒトミちゃんは託したんですね、自分が気付いた大切な事を・・ミホちゃんに。

 エースは自分で気付かないといけない、ヒトミちゃんはそう思ったのでしょう。

 そして限界カルテットや、美由紀ちゃんや沙織ちゃん・・哲夫君には託せなかった。

 それが大きな負担になると感じたから・・だから最強の心に託した。

 ミホという最強の少女に、自分を信じ続ける強い心に託した。

 そうなんですよね、エース・・ヒトミは素晴らしい、本当に素敵な人間ですね」


ユリさんは嬉しそうな薔薇の笑顔で言った、女性全員が私を見た。


『正解です・・さすがユリさん、今まででそれを感じたのは・・律子だけです』と私も笑顔で返した。

最高の薔薇が咲き誇り、女性達の笑顔が溢れ、美由紀はシズカに抱かれて泣いていた。


「本当に残念です・・現世でも、ヒトミに会いたかった」とユリカが俯いて泣いていた。

「ありがとう、ヒトミ・・本当にありがとう」と北斗が涙を見せて呟いた。

「そうなのか~・・またヒトミに敗北した・・意地悪だよ、ヒトミ・・私はいつまでも勝てないじゃないか」と美由紀を抱きながらシズカが呟いた。

その言葉が優しく響いていた、女性達は美由紀を抱くシズカを見ていた。


「時間無いよ、シズカ・・第2問」と雰囲気を変えるのに、マキが二ヤで言った。


「OK・・第2問・・小僧、お前は絶対挑戦したよな?

 触れない位で諦める人間じゃないよな、悪意の砂時計に挑戦しただろ。

 どんな挑戦をしてみたんだ・・それだけは教えろ、対抗策を確定出来ないから」


シズカは真顔で私に言った、シズカの強い言葉で美由紀も体を起こして私を見た。


『もちろんやったよ・・必死に考えて1度だけトライした。

 美由紀が言ったように、あの世界に出てくる物は抽象的表現なんだ。

 何かを提示してる物だから、砂時計の提示は何だろうと考えた。

 そして一応信じたんだ・・あれがヒトミの残り時間だと、信じる事にした。

 シズカが教えてくれたよね、美由紀がさっき言ったシズカの言葉で。

 反転を考えるな、まず遅らせる事を考えろ・・それを受けて考えたんだ。

 ヒトミがトライ出来るのは、1回だけだと思うと言ったから、それに決めたんだよ。

 砂時計の砂が落ちる穴には触れられないし、砂時計自体にも触れない。

 だから・・砂の落ちる速度に挑んだ、あの塔を月に飛ばしたんだよ。

 無重力の場所に移したんだ、そうすれば落ちるのが止まるかもって思った。

 結局・・周りが全て無重力でも、落ちるスピードは変わらなかった。

 それをヒトミと2人で見て、その時にヒトミが言ったんだよ。

 悪意に満ちているね・・これは悪意の砂時計だねって言ったんだ。

 そのヒトミの言葉で、命名されたんだよ・・悪意の砂時計って』


私は真顔でシズカに言った、シズカも真顔で私を見ていた。


「重力は使えないのか・・難題だな、悪意を超えるのは」とシズカが呟いた。

「その為に行くんだよね~、小僧・・沙紀の世界には、その一石二鳥が有るんだよな?」と美由紀が二ヤで言った。


「そうなんだね~・・それを必死で隠してたよね~」とユリカが二ヤで言った。

「そうでしょうね~・・だから私達が楽しめるように、映写室を作ったんでしょうから」とユリさんが薔薇二ヤで言った。

「よし・・今日はここまでで良いよ、沙紀の世界が成功しないと・・悪意に辿り着けないから」とシズカが二ヤでアンナを見た。


「シズカちゃん、そうなの?」とアンナが驚いて言った。

「私の考えではそうです・・入れると信じていますね、アンナさん」とシズカが笑顔で返した。

「必ず入るよ・・私は沙紀も由美子も愛してるから」とアンナが美しく微笑んだ。


「準備完了・・覚悟も完了・・悪意に乗り込もう」とナギサが二ヤで立って。

「よし・・今年最後の土曜日を、楽しみますかね~」と蘭が満開二ヤで立って、女性達が笑顔で立った。


PGの女性達が先に出て、北斗とアンナとユリカで出て行った。

マダムと松さんが、子供達の食事の準備を始めたので。

私は美由紀を抱き上げて車椅子に乗せ、シズカが押して3人でフロアーに向かった。


フロアーから力強いピアノの音が響いていた、沙紀の為に久美子が初めから飛ばしていた。

シズカが子供達の横に車椅子を押して行き、久美子の表情を見ながら聴いていた。


私は指定席に座り、少女達の楽しそうな背中を見ていた。

四季が出て、千夏が駆け寄った沙紀を笑顔で抱き上げた。

女性達が続々と登場して、久美子も熱が上がってきた。


《完璧に久美子の段階を上げたよ、沙紀のポスターが》と心に囁いた。

強烈な波動が同意を示し、沙紀に向かって吹いていた。


私はフロアーを出て、人の多い通りを足早に歩いて、デパートで鉄製の額を買った。

店員が頑丈で密封性が高いと言ったので、夜の店に出すのだからそれにしたのだ。

私がその少し重量感の有る額を持って歩いていると、後ろから声をかけられた。


「忙しそうだな、エ~ス」と懐かしい男の声がした。

振り向くと、勝也と和尚と律子に政治と節子が笑顔で立っていた。

『忙しいんだよ、エースだからね・・今夜は酒癖悪い5人組で、忘年会だね』と二ヤで親父に返した。


「おう、PGの後に行くから・・ユリカ、5人よろしく」と親父が二ヤで私に言った。

強烈な波動が了解と言っていた、それで律子が笑顔になった。


「良かったね~・・あんたの声もユリカに届いたよ」と律子が二ヤで言って。

「和尚、ほんとか?・・律子、何かおねだりで・・ご機嫌取りかも知れんから」と勝也が二ヤで言った。

「本当じゃよ・・良かったの~」と和尚も二ヤで言った。


6人でエレベーターに乗って、私は政治に二ヤを出した。

『政治父さん・・節子からおねだりあったのかな~?』とニヤニヤで言った。

「ニヤニヤするな、未経験の子供が・・あったよ」と政治が二ヤで言った。

「お前、まだ未経験なのか~・・よく我慢できるな~、さすが俺の息子だ」と勝也が二ヤで言って。


「勝也の子とは思えんよな~・・律子」と和尚が二ヤで言った。

「本当ですよ・・純な私をあの時に・・あんな事や、あんな事までして・・悪い男です」と律子が二ヤで勝也に言った。

爆笑の波動が吹き荒れて、和尚と律子はニヤ出し、勝也はウルを出していた。


「怖い家族だよな~、節子・・俺達は夫婦円満だよな」と政治が笑顔で節子に言った。

「リンとミナミを話してなかったよね~・・後ろめたかったんでしょ、遊び人の政治さん」と節子が二ヤで突っ込んだ。

政治がウルで返して、私達はその顔で笑っていた。


4人で笑いながらエレベーターを降りて、勝也と政治がウルを出しながら降りた。

受付に歩くと、久美子が最後の盛り上がりを見せていた。


「素敵だね・・あれが久美子ちゃん」と節子が笑顔で言って。

「凄い子だな~・・継続してきた力が、はっきりと音に出てる」と勝也が久美子を見ながら笑顔で言って。

「美由紀がピアノに挑戦する訳だね、本当に素晴らしい」と政治が笑顔で言った。

和尚と律子は充実感を漂わす、久美子の表情を笑顔で見ていた。


5人を見て、徳野さんが慌てて飛んできて挨拶をした。

律子が笑顔で応えて、親父はマリを見ていた、マリは親父に気付いて駆け寄った。

親父はマリを抱き止めて、マリは親父にスリスリを発動した。


「マリ・・良く頑張ったな、素敵だぞ」と親父は笑顔で言った。

「はい・・ありがとう、父さん」とマリは笑顔で返した。

その光景を女性達が笑顔で見ていた、全員優しい瞳だった。


カズ君が来て、5人を3番に案内した。

その時、ユリさんが和服で入り、3番を見て嬉しそうな薔薇の微笑で頭を下げた。

女性達が円を描くのを、銀の扉の前で6人の少女とマキとシズカと久美子と美由紀が見ていた。

私の横にマリが立ち、その女性達の円を見ていた。


「もう一度言います、私は今が一番充実している。

 挑むべき世界を感じているから、その意義に確信が持てるからです。

 そして集まってくれたから、同じ想いを共有できる仲間が集ってくれました。

 戦友と呼ばれたい・・哲夫はエースとの関係を、こう表現しましたね。

 命ギリギリで戦った、戦友と呼ばれたい・・命と向き合い続ける男に。

 哲夫、また手伝ってくれよ・・そう呼ばれる人間でいたい。

 小6の少年の言葉です・・響きました、私には今でも強く響いています。

 私達も同じだと示したい・・命と向き合って、戦友と呼ばれたい。

 私は今が一番楽しいのです・・戦友と呼ばれたい女性達に囲まれて。

 いつか必ず呼ばせましょう、そして心で呼び合いましょう・・戦友だと。

 あの変な少年を育てた2人と、強い心で生きる少女を育てた2人と。

 あの2人を見守り続けた、1号と呼ばれる偉大なる先人の前で誓いましょう。

 私達も絶対に諦めません・・そう誓いましょう・・誓えますね?」


ユリさんの強い言葉が響いた、女性達が集中の中に入った。


「はい」と心を1つにして答えて、強烈な【はい】の波動が吹き荒れた。

「それでは、今夜も開演しましょう」の薔薇の言葉に、「はい」のブザーを鳴らした。


女性達を見る沙紀の瞳が強かった、マリは嬉しそうな笑顔で見ていた。

久美子とシズカとマリで、子供達を連れてTVルームに向かった。

私は指定席に座り様子を見ていた、そして3番を見て凍結した。


ユリさんとサクラさんとアイさんに、蘭とナギサが入ったのだ。

和尚と勝也と政治の嬉しそうな笑顔を見ながら、律子と節子が二ヤを出していた。

私は二ヤでマキを見て、楽しそうなワクワク波動に背中を押されて、TVルームに戻った。


TVルームでは、シズカと久美子と美由紀が、交互に子供達を挟んで座っていた。

私は空いている、マリアと沙紀の間に笑顔で座った。

エミがいただきますの号令をかけて、全員でいただきますをして食べ始めた。

沙紀が終始楽しそうで食欲も有り、私は笑顔で面白話をしながら食べていた。


「エース・・終わったら何をして遊ぶの?」とエミが笑顔で言った。

『戦闘機に乗るんだよ、シズカと久美子と美由紀とマリが乗せてくれるからね』と私は笑顔で言った。

「うっそ・・嬉しい~」とエミが笑顔で言って、ミサとレイカが笑顔になった。

シズカと美由紀がハッとして私を見て、久美子とマリが2人に二ヤを出した。


『安奈とマリアは、自分で飛ぶよね?』と二ヤで聞いた。

「もちのロンです」と安奈が笑顔でリョウの台詞を真似て。

「もちのろん」とマリアが天使全開で言った。


「垂直離陸で良いよね?」とシズカがウルで言って、美由紀が何度も頷いた。


『1番の久美子がエミを乗せて離陸して、2番でマリが沙紀を乗せて離陸する。

 さて・・ミサとレイカがその後で、垂直離陸で納得するのやら』


私は2人に二ヤで言った、ミサとレイカは何も分からずに、期待の笑顔を2人に向けた。


「大丈夫よ・・久美子でも、マリでも出来るなら」とシズカがウルで言って。

「私も大丈夫よ・・スピードなら任せなさい」と美由紀もウルで言った。

「なんで、ウルなの?」とレイカが笑顔で聞いて。

「きっと楽しくて、嬉しいのよ~」とミサが笑顔で返した。


マダムと松さんと久美子が爆笑して、マリが二ヤで2人を見ていた。


私はマリアを見ながら、その不思議な集中を感じていた。


《マリアが集中してる・・何を感じてるんだろうね?》と心に囁いた。


驚きの強い波動が来た、マリアはその波動に向けて天使二ヤを出した。


楽しい時間は刻まれていた、少し早いと感じさせながら・・。


 



 



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