【冬物語第二章・・未来の記憶③】
思い出の詰まる風景には、熱帯の海で泳ぐ鮮やかな色彩の魚達がいる。
居酒屋に変わってしまったその場所で、今でも一人で酒を飲んでしまう。
独り言を言いながら、危ない客になってしまうのだ。
私は久美子の笑顔を見ながら、リラックスしていた。
久美子は楽しそうに、オヤジ達の話をしていた。
私にはこの久美子との水槽の時間は、大切で貴重な時間だった。
久美子が素直な気持ちで話してくれ、私も正直な気持ちを全て言葉にしていた。
久美子の精神がライブ後で高揚していて、私に自由に質問するのがルールだった。
「それじゃあね~・・今夜の話は、遺伝的才能にして」と久美子が得意のテーマ振りをしてきた。
『遺伝的才能ですか~・・どんな感じの方向?』と私は笑顔で聞いた。
ユリカの波動が待ってましたと、ワクワクで吹いて来た。
「例えば・・松さんが言ったんだけど、マキは母親と同じ匂いを持ってる。
それは遺伝的な部分でしょ、夜の世界に選ばれたような母の遺伝子。
継承される家系って有るよね、政治家とかは別として。
芸能や職人の世界には有るでしょ、それは基本的な才能を引き継いでいるから。
それとも職業としての世襲継承であって・・遺伝的才能は必要無いのか?
そんな感じの世界・・継承される家系って、東洋的な考えだよね。
西洋にも有るけど・・それは又違う感じがするよね・・その辺のエース的見解」
久美子は二ヤでそう言った、私は瞳で久美子の気持ちは理解した。
『それか~・・まず芸能や職人、この伝承は技だと思う。
技の継承だよね・・まず商業として考えると、秘密保持的要素が強いよね。
門外不出なんて格好の良い言葉で誤魔化すけど、要するに利益の流出を防ぐ。
今で言う、特許みたいな感じだろうね・・我が家が作り出したんだって感じ。
伝統的な食品関係に多いから、家系内で技を繋ぐ・・従業員にも秘密にする。
これが職業的継承だと思う、才能など関係ない・・遺伝的要素も不必要だよね。
こんな職業的継承を維持するのは、これからは難しいだろうね。
芸能は・・歌舞伎の家系とかの感じだよね、茶道にも花道ににもあるみたいだけど。
歌舞伎は技の継承なんだろう、だから幼い頃から稽古をさせる。
その事実だけで、普通の家の子は追いつけないよね・・それで世襲を守ってる。
歴史的背景なんて、後から付けたのが多いんじゃないの。
茶道や花道は、後で芸術の時にも話すけど・・俺は理解できない。
感性の世界だろうから、その世襲が有るなら・・それは利の継承だと思うよ。
確かに子供の頃から触れ合えば、感性は上がるだろうけど。
俺は・・茶道の指導は分かる、作法を大事にして精神道を説くんだろう。
俺は千利休という名前が好きなんだ・・深い想いが込められてる気がする。
利を休めと示してると、勝手に思ってるよ・・凄い人だったんだと思う。
道を示した名前だと感じてる・・利を外した場所に、目指す世界の扉が有る。
じゃあ、花道は・・確かに作法も有るのかもね。
花を活けるのは、芸術に近い感じだよね・・それは個人の感性の世界だろう。
そこには才能と呼ばれる物が色濃く出るよね、感性の世界ならルールは無い。
俺の基本的考え方はそれ、後で絵画の時に話すよ・・感性に決まり事無し。
次に職人・・まぁ勝也も職人みたいな者だけど、工業的職人も遺伝は不必要。
匠の世界の技の伝承は、基本的に盗むだと思う・・弟子になって近くで見る。
自分がそれを目指すと決めて・・それを選択した事こそが、才能と呼ばれる。
そして必死に盗む・・それしかない、伝承方法はそれだけだろう。
実子はずっと側で見るから、当然盗むのも早いよね・・だから家系継承が多いんだ。
芸術的な分野には、遺伝的才能は絶対に無いよね・・有るのは環境なんだ。
DNAは100%引き継がないよね、極僅かだと思う・・遺伝で継承するのは。
俺の感じで言うと、DNAで引き継ぐのは・・5%位じゃないのかな。
当然・・美的感覚もセンスも親とは違う、俺には芸術の良さがよく分からないけど。
ピカソの絵が素晴らしいと言われても、俺にはただの不思議な絵なんだ。
それは個人個人の嗜好だと思う、だから絵画コンクールなんて理解できない。
絵画に優劣や順位を付けれる、そんな人間が存在するとは思えない。
そいつはただのナルシストだろう、自分の感性で他人を評価出来るなんて。
この線が強く表現されてて、この描写に熱があってとかよく言えるよ。
それはお前の感想だろうって思う、伝える想いに正しいなんて無いんだよ。
緻密性を評価するのなら、それは工業製品だよ・・芸術じゃない。
細くヒョウロヒョロの線に込めた想いも、有るのかも知れないよね。
それを見て響く心もあるだろう・・人それぞれに響く物は違う。
評価なんて、結局・・販売品としての、価値を高める為の策略だよ。
付加価値を付けたい、経済的な策略が・・評価をする行為だろうと思う。
俺は好きで書を書くけど、もちろんコンクールなんかに出したことは無い。
俺は書道家の字を見ても、分からない部分が多い・・もちろん力強いとは思うけど。
これは良い字だとか、これは素晴らしいなんて思えない・・未熟だからだろうけど。
この人はこう表現するのか~・・この人は熱いな~って思うだけ。
刺激は受けるけど、影響は受けない・・自分を表現する事だからね。
沙紀の絵を見ててそう思った、絵を描く基礎ってなんの為に有るんだろうって。
確かにピアノみたいな楽器は、音を外すと作品自体が壊れるから。
基礎訓練は重要だよね、でも絵画の基礎って・・必要なのかな~。
ピカソの絵を素晴らしいと思う人がいれば、嫌いな人もいるよね。
絵画に込める想いって、視覚に訴える物だから・・各自の表現で良いだと思う。
下手に基礎を重要視すると、その基礎に囚われる・・こんな場面はこう描こうとか。
遠近法を使ってとか、色はこれとこれを混ぜるとか・・邪魔になるだけだよ。
それはただの人真似で、自分らしい表現じゃない・・新しい何かも生み出さない。
上手い下手なんてレベルで語るなら、基礎は重要だろうけど。
何かを表現したい、何かを伝えたいなら・・基礎に囚われる心は邪魔だ。
コンクールに出す人が、多くの人に見て欲しいと思ってるなら理解できる。
でも勝ちたいとか、認められたいなら・・俺には理解できないよ。
成功とはなんだ、画家の成功ってなんだろう・・絶対に経済的な事じゃない。
自分の想いを全て表現出来た、そう思える瞬間こそが・・成功だと思う。
画家を目指す人って、パリに行くよね・・それは何故なのかって思った。
やっぱり刺激を受けたいんだ、競う世界じゃないから・・何か刺激が欲しい。
だから画家を目指す人間が集まる、パリを目指すんだと思う。
そこまで到達するのが難しい、他人の絵を見て衝撃を受けても・・影響は受けない。
画家の才能って、自分の想いをどこまで描けるか・・それだけだと思う。
だから絶対に無い、何代も画家が続く家系など存在しない。
日本画の狩○派だって、ただの派だろう・・才能ある人々が集まった。
その才能が技術を継承したのが、狩○って名前なんだろう。
俺は狩○派の絵を美しいと思うけど、どっか工業製品に見えてしまう。
匠が技術の継承で受け継いだ、素晴らしい工業製品に見えてしまう。
それが俺の感性であって、人の感性は各々違うんだから・・評価する事じゃない。
音楽もそうだよね、基本は大切だけど・・その先は感性だから。
自分を表現する時に、ここはこんな感情でとか・・そう思う気持ちはいらない。
その時々で違うんだろう・・自分が成長すれば、経験を積めば感じ方も変化する。
感じ方が変われば、表現方法も変わる・・それが自分らしさだろう。
自分の心の流れに身を任せる、自然との同化を目指すように。
それこそがヒトミの左手の動き、あの動きは心を表現していたんだ。
想いが全員に伝わる事は、絶対にないだろう・・それを求めるのは、愚かな行為だ。
俺の考える遺伝的才能とは、環境だと思う・・その環境に産まれた。
幼い時からそれに触れ合っていた、だからこそ開花が早かった。
それを称するのが、遺伝的才能だと思ってるよ。
それで・・久美子の本当の疑問にも、俺の考えを言わないといけないの?』
私は二ヤで久美子に言った、久美子も二ヤで返してきた。
ユリカの楽しそうな波動が、連続して来ていた。
「うん・・お願いしたいな~・・ねぇエースはなぜ、私には言葉で直接伝えてくれるの?」と久美子が微笑んだ。
『それは・・第一に俺は音楽に対しての、経験が浅いから。
生の音を聞き始めたのは、久美子が来てからだし・・音楽は好きだったけど。
まだ経験的に全く自信が持てないから、久美子と話す事にしてるんだ。
そして2番目は・・時間的制限だよ、あと2年3ヶ月後には旅立つから。
久美子は最低でも、東京には旅立つと思ってるから。
その時間設定が、俺の久美子に対する基本だよ・・俺の最もこだわる部分。
俺は久美子との今の状況を、ある経験に置き換えている。
気分悪くしたらごめんね、俺は後悔も反省も込めてこの設定をしてる。
久美子は知ってるだろうけど、俺は蘭にもユリカにも・・エミにさえ。
直接的な言葉は使わない、それは俺自身の挑戦も含まれてるから。
でも久美子との時間設定は、俺には特別なんだ。
俺は久美子とのこれから、2年3ヶ月を・・ヒトミと同じ設定をしている。
ヒトミに伝えられなかった気持ち、伝える勇気がなかった言葉。
そんな全ての反省を込めて、俺は大切な久美子との時間を設定をしてる。
ベストを尽くそうと誓ってる、全てを言葉にして伝えようと思ってる。
俺にはそれほど大切な存在なんだよ、久美子はヒトミと同じ存在なんだ。
だから自分の後悔を残さない、久美子には全ての想いを直接伝える。
そう勝手に決めたんだ・・ごめんね、久美子』
私は真顔で久美子に伝えた、久美子は真剣な瞳で私を見ていた。
「私がなぜ怒るの!・・あんたはなぜ謝るの?・・私には最高の告白だったのに。
どうして謝るの・・私は幸せを感じてるのに、これ以上ない愛情表現だから」
久美子はそう言って、私を見ながら涙を流した。
しかし視線を私から外さなかった、私は10月の終わりには気付いていた。
久美子が瞳を読み取ろうと、ずっと私と5人娘で研究してる事を。
私はそれを知って以降、久美子には瞳で強く伝えていた。
優しく強い波動が、微かに震える久美子の背中を包んでいた。
『ありがとう、久美子・・もう少しだね、瞳の伝達』と笑顔で言った。
「うっそ!・・今の本心だったね、それだけは分かるようになったよ」と久美子が嬉しそうに笑った。
『本心だよ・・俺は久美子にも嘘はつかないよ』と笑顔で返した。
「じゃあ教えて・・私の今の疑問・・あなたならどう設定するのか?」と久美子が二ヤで言った。
『了解・・これは俺の基準だよ、変な影響を受けるなよ。
実は意外かも知れないけど・・まぁ意外と思われて仕方ないんだけど。
俺の一番嫌いな言葉は・・命を賭けるって言葉なんだよ。
命は賭ける物じゃないと思ってる、人は俺の行動をそう言う時があるけど。
俺自身の心の中には、絶対に命を賭けるという設定は無いんだ。
久美子は今、模索してるんだよね・・自分の基準変更をしようとしてる。
秀美のあの言葉が響いてるね、久美子は段階を上がる時だったから強く響いたね。
生と死に基準を変えたと言った、そして俺の基準が分からないと言った、秀美の言葉。
久美子には響いたよね、久美子は次の段階に入ってる。
その段階はリアルに感じさせる、旅立つ事実をリアルに感じるよね。
久美子はそれを感じると、レンを想ってしまう・・そして今の環境を想う。
それを感じると、旅立つ寂しさが押し寄せるよね・・誰でもそうだよ。
だから久美子は基準を変えようとしてる、俺は凄い事だと思ってるよ。
多くの人間は辛い事だから、先送りにしてしまう・・誤魔化して過ごす。
自分の心を誤魔化したまま、時だけが過ぎて行く事が多いと思う。
久美子は向き合いたいんだね、その寂しいと思う・・現実に向き合いたい。
そして向き合う為には、心の基準変更が必要だと気付いたんだね。
久美子・・俺の生き方に対する基準はね、自分の心のテーブルの上に置いている。
俺に何かがあって、決断を迫られた時に・・イメージとして現れる。
俺が自分の生き方を貫く時には、それを賭けてる。
俺の心のテーブルには・・常に蘭とユリカが立っている。
その2人を賭けてでも出来るのかと、自分に確認するんだ。
最も大切な者を賭ける・・それを失う事を想定するんだ、リアルにイメージする。
その時の自分の感情まで、リアルにイメージして・・それを映像化する。
それでも決断できるのかと、自分に問いかける・・それが俺の基準だよ。
久美子・・基準を上げろ・・俺が久美子なら、絶対にそれにする。
久美子・・基準を鍵盤にしろ、音楽を賭けろ・・決断の時、音楽を賭けろ。
そうすれば変わる・・自分の心が見えてくる、もうそうするしかない。
久美子はその段階まで来た、次の段階からは・・それがいると思うよ』
私は想いを強く言葉にした、強烈な波動に少し押された。
久美子は私の瞳を見ていた、そして美しく微笑んだ。
「そうだよね・・そうするよ、全ての決断に音楽を賭ける」と久美子は笑顔で言った。
『うん・・良い表情だよ、瞳で誓いは受け取ったよ』と笑顔で返した、久美子は嬉しそうな笑顔で頷いた。
私は久美子と腕を組み、水槽を出てPGに歩いていた。
クリスマスが走り抜け、いよいよ年末の足音が強く響いていた。
私は半日後には沙紀に会えると、ワクワクしながら歩いていた。
久美子をTVルームに送り、指定席で状況確認した。
満席の熱の中に、強く青い炎が溢れ、その前を輝きながらカスミが歩いていた。
リリーがカスミの動きをチェックして、カスミもリリーに輝きを見せ付けていた。
リリーのリングが綺麗に出ていた、私はその状況を二ヤで見て席を離れた。
通りに出ると人で溢れていた、その年最後の週末が到来していた。
私は足早に通りを歩いて、ユリカのビルのエレべーターを待っていた。
案の定ユリカは爽やか笑顔で降りて来て、私を階段に引っ張った。
『やっぱり・・気付いてるね、ユリカ』とウルで言った。
「気付くでしょ・・私はユリカよ、あなたとマリの準備完了は気付くわよ」と爽やか二ヤで返された。
私も二ヤでユリカを抱き上げた、ユリカは私を見ていた。
『挑戦的だね、ユリカ・・試してないから、どんな事になるか分からないよ』と二ヤで言った。
「読まれるよ、言葉にしないの・・私で実験して」とユリカが笑顔で返してきた。
《ユリカ・・瞳を閉じて、星空だけをイメージして》と心に囁いた、ユリカは真顔で頷いて瞳を閉じた。
私は階段をゆっくり上り始めた、私は足元を確かめながら映像を出した。
その映像は視界の右上に小さく現れた、私はその映像に夜の海を映し出した。
私は映像をそのままにして、最上階まで慎重にユリカを運んだ。
そして瞳を閉じて、映像だけの世界に入った。
私が映し出す映像の夜の海の海面に、ユリカが服を着たままゆっくりと上がって来た。
仰向けれ現れたユリカは、海中から上がって来たのに濡れてなかった。
ユリカは星空を見上げて、嬉しそうな笑顔を出していた。
《ユリカ・・星空が綺麗だね》とマリの同調で囁いた。
《うそ!・・どこにいるの?・・あっ!海に入ってる》とユリカが同調で慌てて返してきた。
《真後ろにいるよ、ユリカが溺れないように》と笑顔で言った、ユリカが私を見て凍結していた。
《凄いね!・・遠隔同調の進化なの?》とユリカが私を見て最強爽やか笑顔で言った。
《制限時間・・24時間なんだって、マリと別れて24時間以内は使えるんだよ》と笑顔で返した。
《マリちゃんは残せるの、あなたの中に同調を?》とユリカが興味津々で聞いてきた。
《うん・・これが俺とマリが欲しかった世界、マリの覚醒が必要だったんだ。
マリは自分で覚醒したよね、律子が少しだけフォローして。
俺の記憶を引き出し、マリはその行為でこの方法を感じたんだろう。
俺には全く分からなかった、マリが制限時間24時間だよって言っただけだった。
映像に同調の記憶を残したって、マリの家の玄関で二ヤで言われた。
久美子で試そうと思ったけど・・やっぱり最初はユリカだと思ってね》
私は二ヤで返した、ユリカも二ヤで返してきた。
その時映像が乱れた、私は練習不足だと感じていた。
《まだ、この短時間が限界だよ・・映像を切るよ》とユリカに微笑んだ。
《頑張ってね・・最強の武器になるんだから》とユリカが笑顔で言って、私も笑顔で頷いて映像を切った。
「マリちゃん・・本気なんだね、マリちゃんの基準って何だろうね」とユリカが優しく囁いた。
『0に戻るだよ・・そう思う、マリはシズカの教え子だから・・俺は0だと思ってるよ』と笑顔で返した。
「0か~・・本当に素敵だな~」とユリカが星空に呟いた、私も星空を見ていた。
ユリカを優しく降ろし、翌日の時間を決めた。
私は笑顔のユリカに見送られ、エレベーターに乗って手を振った。
PGに戻ると、終演前で一段落の状態だった。
私がマキと話していると、終演を迎えた、10番にいつものメンバーが集結した。
「カスミの状況を述べよ」と美冬が私に二ヤで言った。
『カスミはステージが上がった、次のステージは難しいだろうね。
まぁ・・今は最強達に囲まれてるから、選択肢は相当に有るね。
でも、まさかリリーに行くとは思わなかった・・素敵だよ、カスミ。
俺は今夜その姿を見て、嬉しかった・・満足など求めない姿が。
だから素敵な勝負をイメージしたよ、楽しませてもらいます』
私はリリーとカスミを見て、二ヤで言った。
「楽しんで良いよ・・私も楽しみだから、下の世代の最強の挑戦者が」とリリーがカスミに二ヤで言った。
「やらせてもらいます・・高速回転のリングに挑戦します」とカスミがリリーに二ヤで返した。
「エースの設定した、勝負のイメージを述べよ」とナギサが二ヤで言った。
『チキンラン・・2台が並んで、断崖に向かってフルスロットルで突っ込む勝負。
先に恐怖でアクセルを抜いた方が敗者、それは自分自身で感じると思う。
そして勝者に贈られるのは、断崖が待つという事実・・ただそれだけ。
無意味な・・誰にも理解されない、常識じゃ理解など出来ない勝負。
輝きのチキンラン・・それをリリーとカスミはやるんだ。
自分の想いと言うアクセルを踏み込んで、生き方という断崖を目指す。
視覚で捉えるのは・・常に恐怖、全てを失うという恐怖を連れている。
誰かに認められる事など、絶対に無い行為・・認められる事を拒絶する心。
その先にしかないと感じてる・・自分の感性を2人は信じてる。
そこまで行かないと、自分の目指す場所の入口は見えないと思ってる。
カスミはそのステージに、自らの意志で登った・・そこにいたんだ。
もう一台が来るのを待っていた、リリーが・・やるしかないと2人は確信した。
2人は今夜互いに確信した・・互いを信頼し、それが自分達のシナリオだと。
まぁ・・俺のイメージはこんな感じ・・かっけ~だろ~』
私は最後に蘭とナギサに二ヤで言った、2人は強い二ヤで返してきた。
「よし・・最終ヒントは貰ったよ・・2人とも整備してから始めろよ」と蘭が二ヤで言った。
「オイル交換しとけよ・・長い道のりかも知れないからね」とナギサが二ヤで立って、蘭と控え室に向かった。
全員が立って、リリーとカスミに二ヤを出して控え室に向かった。
「輝きのチキンラン・・良いね~、ワクワクするね~」とリリーがカスミと歩きながら二ヤで言って。
「最高でしょう・・試されるのは、想いの強さですから」とカスミも二ヤで返した。
私は2人の美しい背中を見ながら、ニヤニヤを出していた、私の横にはマキがニヤニヤで立っていた。
『楽しそうだな、マキ』と私は二ヤでマキに言った。
「残った1台に挑戦する・・想いと言う弾丸を込めた、ロシアンルーレットで」とマキは二ヤで返してきた。
私はその表現と強い瞳に震えた、強烈な波動も震えていた。
私は楽しそうなマキとTVルームに戻った、マキは久美子を二ヤで見た。
「速過ぎだよ、久美子・・負けず嫌いだな~」とマキが二ヤ二ヤで言って、久美子の横に座った。
「マキほどじゃないよ・・寒いから、もっと側に来て」と久美子がニヤで返した。
マダムも松さんも、楽しそうな笑顔で2人を見ていた。
私はミサを抱き、サクラさんを見送って。
マリアを抱いて、ユリさんを見送って、蘭とタクシーに乗った。
蘭は疲れてるようで、私の肩に顔を乗せて瞳を閉じていた。
タクシーを降りて抱き上げて部屋に帰り、蘭の支度を着替えて待っていた。
「何?・・楽しい事があるの?」と蘭が戻ってきて、私を見て微笑んだ。
『蘭・・何も考えずに、星空をイメージしながら眠って・・それだけで良いから』と私は笑顔で返した。
「了解・・楽しそ~」と蘭が満開笑顔で、私の手を引いた。
ユリカの波動が頑張ってと言うように、優しく吹いていた。
蘭は私の胸に額を付けて、瞳を閉じていた。
そして得意技を見せて、すぐに深い眠りに入った。
私はそれを感じて、瞳を閉じて夜の海の映像を出した。
蘭を想っていると、海水から蘭の姿が上がってきた。
蘭は瞳を閉じて眠っていた、背中が海面に付いていて、穏やかな表情だった。
私は蘭を見ていた、それだけしかしなかった、時間的な訓練をしていた。
蘭は微かに波に揺られて、気持ち良さそうな微笑みを出していた。
私は時を忘れて見ていた、そして知らぬ間に眠りに落ちていた。
目が覚めると映像が消えていた、私は爽快な気分だった。
朝食を作って日記を書いていると、蘭が起きて来た。
「すっごく、爽快なんだけど・・あとで詳細を教えるように」と満開で微笑んで、洗面所に向かった。
私は朝食をテーブルに用意して、新聞を読みながら蘭を待っていた。
蘭はワクワク満開で座り、2人で朝食を食べた。
蘭が待ち切れないのか、食べながら質問をしてきた。
私は朝準備した、マリの同調を残す話を書いたメモを渡した。
「了解・・素敵だね~・・嬉しいな~」と蘭はメモを読み、嬉しそうに笑っていた。
私は蘭を見送り、朝の仕事をしてトレーニングをしていた。
ワーゲンのクラクションが聞こえて、私は窓から笑顔で手を振った。
助手席から出た、カレンが美少女笑顔で手を振ってくれた。
私は鍵をかけて、車に走り後部座席に乗り込んだ。
「正確な住所は?」とユリカが爽やか笑顔で言った。
『3人で勝負しよう・・近くまで行けば感じるはず、最初に誰が沙紀の家を感じるか』と二ヤで言った。
「良いでしょう・・そんな分野で、私に挑戦するのね・・生意気です」とユリカが最強爽やか二ヤで返した。
「もし勝てたら・・私、次の段階に上がれそうです」とカレンがユリカに微笑んだ。
『もしなんて言うなよ、カレン・・俺もユリカも、カレンが1番怖いんだよ』と二ヤで言った。
「正解です・・沙紀の家を感じる勝負なら、カレンが最大のライバルだよ」とユリカが笑顔で返した。
「最高です・・ご期待に応えますね」とカレンが嬉しそうな笑顔で返した。
ユリカも楽しそうな笑顔で頷いて、ワーゲンを走らせた。
南国の冬の青空が出ていて、車の中は春のような温度だった。
私は2人の楽しそうな会話を聞きながら、沙紀の映像を見ていた。
そして青空に映し出された・・名作・・メモの絵画が・・。