【冬物語・・螺旋の系譜⑩】
感じるときの基準、それが大切である。
その基準が狭いものならば、苛立ちや妬みすら生まれる。
全ての基準は地球である、宇宙に浮かぶ小さな星が基準でありたい。
私は女性達の涙を感じながら、天使の微笑を強く抱いていた。
「長かったな、小僧・・それで、突破口は見えたか?」とシズカの声がした。
TVルームの入口を見ると、限界カルテットと美由紀と沙織が二ヤで立っていた。
『少しね・・希望は出てきたよ』と二ヤで返した、6人もニヤで返してきた。
「哲夫・・何泣いてる、失恋を実感したね」と美由紀が二ヤで言った。
「信じない・・あれは小僧の翻訳だから」と哲夫が二ヤで返した。
「哲夫・・哲夫に見せた意味は分かってるね?」と律子が真顔で強く言った。
「うん・・悪意の砂時計だね、ちゃんと見たよ」と哲夫が笑顔で言った。
「悪意の砂時計・・その話だけして欲しい、他の重要な部分は今はいいから。
マリ、エース・・ありがとう、素敵な・・本当に素敵な物語だった。
私は間違ってたね・・由美子には希望がある、確かな希望があるよ。
エースは準備してた、ずっと準備してたんだね・・必ず同じ病の少女に会えるって。
もう一度挑戦すると心に誓って・・その心を限界トリオも美由紀も沙織も哲夫も。
全員が信じて準備していた・・そしてマリも、その準備をしたんだね。
悔しさを忘れなかったんだね・・凄いよ、本当に凄い事だよ。
私は全てを任せる・・由美子のこれからを、今のメンバーに託すよ。
私は礼は言わないよ・・必ず由美子が自分で言う、由美子の言葉で・・由美子の声で。
由美子が・・笑顔に乗せて・・立ち上がって・・歩み寄って。
必ず言うと思ってる・・ヒトミの強さを、優しさを・・その真直ぐな生き方を。
由美子も持てると信じてる・・本当に嬉しかった・・ありがとう、ヒトミ」
北斗はそう言って、俯いて静かに泣いていた。
その言葉で女性達が又涙を見せて、蘭が泣きながら私に満開を出して促した。
『あの砂時計は、虚像なんだ・・手を伸ばしても、触れる事も出来ないんだよ。
俺はヒトミを左手に誘う時に、塔の中で何度もあの砂時計にトライしたけど。
見えるだけで、触れないんだ・・沙紀の世界が終わったら正直に話すけど。
あの砂時計は、ヒトミが左手に行く覚悟を決めた時・・奴が提示した物なんだ。
俺はあの砂時計を見て、時間が欲しかった・・難解だと感じていたから。
だからあの日に会話した、3月3日が頭に残ってて・・その日を指定した。
あの砂時計の意味は、いまだに分からない・・ただの脅しなのか。
それとも本当にヒトミの時間だったのか、それは分からないんだ。
でも・・由美子が同じ設定じゃない事は、確信してるよ。
俺が由美子を左手に誘う時に、最も難しいと感じてるのは・・由美子の時間軸。
それを早くさせない・・その方法が分かれば、遅くも出来ると思ってる。
北斗・・俺が左手に誘うのにこだわるのは、心が左手に有る時がベストなんだ。
左手以外の体は、完璧な健康状態になるんだ・・ヒトミでもそうだった。
動かないけど、全く問題はない・・それは関口先生が言ったんだ。
少しなら医療機器が外せる、その状態が来るんだ。
人間の生命は心が支えてる、俺はそう思ってる・・だから左手に誘う。
心が奴の届かない場所に行けば、奴は動けなくなるんだと思う。
その時の健康な状態の体に、刺激を与えてみたい。
そして由美子を左手から帰した時、どんな変化が出るのか知りたいんだ。
原因不明だから、突破口が無いんだよ・・俺は小さなひび割れでも良い。
どんなに些細な事でも良いんだ・・突破口が欲しいんだ。
あの砂時計を出すには、左手に誘う行動に出るしかない・・そうすれば奴が提示する。
だからその前に、時間軸を解明したい・・それは有る、塔の中に【時の部屋】が有る。
でもヒトミの塔の【時の部屋】には、入れなかった・・それはヒトミも分かっていた。
足りなかったんだ・・俺がまだその段階に届いてなかった。
【時の部屋】の入口に5つの空間があって、5人同時に入らないと開かなかった。
それは掟だった、絶対に破れない掟・・奴の作った物じゃない、進化の掟なんだ。
進化の時点で契約した絶対的な掟・・俺は扉に近づく事も出来なかった。
だから律子に頼んで、同行してもらった・・律子が言ったんだ、作為の掟だって。
ヒトミの時は・・俺と律子しか入れなかった、マリですら入れなかったんだ。
限界カルテットも・・美由紀も沙織も哲夫も必死にやったけど、入れなかった。
俺がその映像のイメージを、言葉で上手く伝えられなかった。
ヒトミが亡くなるまでに、その場所に辿り着いたのは・・ヨーコだけだった。
だから残りの限界トリオと美由紀と沙織と哲夫は、強い無力感に襲われた。
そしてマリは・・髪が全て白髪になるほどの、悔しさを背負った。
あと一人で入れたんだ・・和尚が入れたから、あと一人だった。
それからのマリは、覚醒に覚醒を重ねた・・シズカがフォローしながら。
だからこそ今がある・・俺はヒトミの言葉は、全て本心だと思う。
俺は由美子を左手に誘う・・由美子がそれを心から望めば現れる、【時の部屋】が。
それは城の中にある、【時の部屋】の紋章は・・西洋の城だった。
難攻不落の城の中に有るんだ、だから戦士がいるんだ・・最強の戦士が必要なんだ。
そしてどうしてもいる、その地図を描ける者が・・契約の前の記憶を残す画家が。
強い気持ちで自らが望んで、その世界を目指す画家がいないと辿り着けない。
俺は沙紀に出会ってそれが分かった、由美子の段階の時の沙紀を感じて。
俺は確信している・・それが沙紀の望みだと、だからこそメッセージを描くんだと。
今ならやれる、このメンバーならやれる・・リンダもマチルダも絶対に来る。
そして・・必ずやってくる、強い意志と甘い香りを連れて・・モモカも来る。
今・・俺は忘れていた記憶、知らなかった真実を見て嬉しかった。
俺にはヒトミの言葉・・無の半年より、意志を示す半月・・この言葉が強すぎた。
だから他の場面の記憶は出せなかった、マリはそれを見たかったんだね。
そこにこそヒントが有ると思ったんだね、【時の部屋】のヒントが。
俺は少し分かったよ・・来年の成人の日の次の日曜日、その日に全員で行こう。
俺とマリで、成人の日に【時の部屋】までの道を作る・・そしてマリが導く。
間違った契約・・騙された契約を破棄しに行こう・・由美子の分だけでも。
契約書を破棄しよう、由美子には由美子の時がある・・それは体内に刻まれてる。
それならば、由美子はヒトミとは違う・・由美子の体の力は、ヒトミとは違う。
由美子の時の砂は、まだ落ち始めたばかり・・それが由美子の時だと信じてる。
俺は必ず由美子に伝える、今の話を正直に伝える・・俺とマリは見せる。
来年の成人の日に、由美子に見せる・・マリが必ず見せてくれる。
マリはその為にベールを脱いだ、最後の防護服を脱いだ・・由美子に見せる為に。
俺の4年前の成人の日の記憶を・・由美子に見せる為なんだろう。
強い力が重なっても、現実は壊れない・・それを今日、証明したかったんだろう。
俺は嘘無く言えるよ・・必ず由美子には、希望ある未来がある。
その手助けを出来る、女性達が存在する・・自分を信じる、美しい女神がいる。
そして同じ相手に2度の敗北はしないと誓って、ずっと準備してた仲間がいる。
全ては揃ってる・・由美子の悪質なシナリオを、書き換える準備は出来た。
あとは実行あるのみ・・沙紀の世界を経由して、由美子に真白な紙を届けよう。
由美子が自分で自分のシナリオを描く為の・・純白の契約書を』
私は強く言葉にした、女性達に笑顔が戻った。
「完璧だよ・・完璧な心の言葉だった・・私達は必ず辿り着く、それだけが望みだよ」とユリカが深海の瞳を輝かせて言った。
「よし・・まずは沙紀、28日の午前9時にフロアーに集合だね・・沙紀は必ず辿り着く」と蘭が青い炎を背負って言った。
女性達が全員笑顔で強く頷いた。
「それまでに、沙紀の世界に行ける若手女性は、全ての準備をしなさい。
裏方兼務の4人も、それに集中しなさい・・店の準備は、ボーイさんに全て任せます。
自分の為に準備しなさい、自分の未来に美しい笑顔が欲しいのなら。
私達も私達の準備をします、由美子の次の時の為に・・楽しんで準備をします。
私は本当に嬉しい、今まで抱えてきた心の疑問に挑戦できるから。
心は支配されない・・時などに支配されない、私はそう信じています」
ユリさんは強く言った、その美しい瞳には厳しさがあった。
「はい」と若手女性も、限界ファイブも中1トリオも強く応えた。
「もちろん魅宴も、多分ゴールドもそうするよ・・エース、何か依頼はあるかい?」と大ママが私を見た。
『まず・・ヨーコを少し貸して下さい、ヨーコが病院に毎日顔を出して欲しい。
初日は哲夫が同行して、由美子に会わせて・・それからはヨーコに任せる。
ヨーコは自分で辿り着いた、その方法をもう一度感じて欲しい。
それが一番、女性達の参考になるから・・ヨーコ頼むね』
私はヨーコに笑顔で言った、ヨーコは嬉しそうに笑った。
「ありがとう、小僧・・やっと会える、嬉しいよ」とヨーコは笑顔で返してきた。
「ヨーコ、頼んだよ・・期待してるよ」と大ママも笑顔で言った、ヨーコは強く頷いた。
「次は・・まだあるんだろ?」と大ママが二ヤで来た。
『うん・・忘年会に幻海の参加を承諾して、そしてゲストでフネを招待したい。
フネ・・お願いしたい、来年の由美子の時には同行して欲しい。
俺は感じたよ、強い力だね・・フネと律子の最強コンビが引っ張って。
そうすれば絶対に辿り着くよね・・その力の意味を、フネは知ってるよね。
お願いします・・サツキ・・麗しの五月と呼ばれし、伝説の女神』
私は真剣に言って、フネに頭を下げた。
「ありがとう、エース・・私は内容は知らなかったけど、感動したよ。
あなたとヒトミちゃんの関係を見ていて、涙が自然に流れたよ。
了解・・私も律子に会いに行って、準備するよ・・それが私の望みだよ。
ありがとう、エース・・誘ってくれて、嬉しかったよ」
フネが嬉しそうな笑顔で言った、私も笑顔で頷いた。
「もちろん、忘年会は了承するよ・・エースが誘うなら、誰でもOKだよ。
私からは、和尚様の招待をお願いしたいね・・よろしくな、エース」
大ママは笑顔で言った、私も笑顔で頷いた。
「律子母さん・・準備のアドバイスを、お願いします」とリリーが真顔で言って頭を下げた。
女性達が律子を見て、全員で頭を下げた、入口の6人も座って律子を見た。
「自分を見つめて・・肩肘張らないで、自然な状況で。
自分の今行きたい場所に行ってみて、そしてその風景を心に描いて。
それが最も大切な事です、自然と溶け込む・・それを意識的にする。
その意識が解ける段階が必ず来ます、人間も地球の自然の一部なのですから。
人間は・・支配者でも開拓者でも、もちろん神でもない。
地球の一部です・・地球を中心に考えれば、人間は細胞の一部ですね。
大きな存在ではない・・でも破滅させる力を持ってます、人間が悪玉細胞になれば。
でも善玉細胞にも成り得る、人間という生命体は・・地球を守る事も出来る。
小さな細胞なのに、重要な力を秘めています・・由美子の世界、それは自然の中にある。
地球という生命の星が育んだ歴史の中に、由美子の未来への扉があると信じます。
人の心は最後にそこに向かう、それが自然な事だから・・シナリオじゃないから。
次の段階は・・自然の意味を感じて欲しい、その全ては生命の為にある。
逆に言うと、生命は自然に合わせて作られている・・それには誰も手を出せない。
自然に対して、時の管理は及ばない・・朽ち果てるのにも、意味を持たせる。
永遠の輪廻・・それこそが螺旋の系譜・・時の管理は、全て終わりの為にある。
終了を知らせる為に作られた・・終わりなど存在しない、次に繋げるだけ。
終了など自然の中には存在しない、絶対に次に繋がっている・・それが螺旋。
終了を感じるのは・・人間だけ、即ちそれを恐れるのも・・人間だけの感性。
人間以外の生命体は、終了と言う言葉を持たない・・次に繋ぐ事しか知らない。
それこそが自然・・自然の成り行き・・永遠に流れを繋ぐ、それこそが意味。
意味に理由など無い・・答えなど存在しない、完成もなければ終了も無い。
ただ流れの一部になるだけ、それを感じる事を・・人は幸せと表現する。
目指すべきは同化、心は常にそれを切望する・・そこに帰ろうと誘ってる。
開放の時は必ず来る・・私もフネ経験した、心の開放の時を。
言葉では表現できない・・開放の時の感情は、表現する事じゃない。
ただ1つだけ感じる・・全ての生命の意味は、生きて繋ぐ事なんだと」
律子は笑顔で言った、女性達に笑顔が咲いた。
「ありがとう、母さん・・今の言葉、本当に嬉しかった」とナギサが笑顔で言った。
「ナギサ・・あなたですよ、若手に道を拓くのは・・あなたと蘭です」と律子が微笑んだ。
「やってみます・・私は生まれて初めて、自分の心の望みを感じています」とナギサが笑顔で返した。
「あなたの心を伝えて・・その自由な心を伝えてね、沙紀にそれを伝えるのよ」と律子は嬉しそうに言った、ナギサも華やかに微笑んで強く頷いた。
「心の開放・・そこまで行く、絶対に」とマリが言葉で強く言った。
「まり・・いく・・ことばでた」とマリアが天使二ヤで言って、マリに駆け寄った。
「マリアに負けない・・言葉も負けない・・私・・14歳」とマリが二ヤで返した。
「まり・・じょうずだね・・ことば・・うまいね」とマリアが天使不敵を出した。
「私に不敵出したね・・良いでしょう・・受けてあげます・・マリアの挑戦」とマリは微笑んで、マリアを抱いた。
「まりあとまり・・あった日・・そこにいく」とマリアが天使で言って、瞳を閉じた。
「まて~・・マリア~」とマリが嬉しそうに言って、瞳を閉じた。
「グラスを持って、リリー時計を押さえて・・壁の物をチェックして。
4人娘を、限界カルテットで抱いて・・早く・・節目の時が来る。
マリの強烈な節目の時が・・全員、気持ちを強く持ってね」
律子が慌てて言って、最後に強烈な二ヤを出した。
女性達が周りをチェックしながら、緊張して静寂が訪れた。
そしてその光景が現れた、マリの肩まで伸びた髪が、先の方からゆっくりと上がってきた。
それは重力に逆らって、無重力を表現してるようだった。
そして全員が凍結した、マリが抱いたマリアが3cmほど浮かんでいたのだ。
マリアは瞳を閉じたまま、両手を上げてマリの両頬に触れた。
頬に触れた時にマリアは瞳を開けた、そして最強天使全開でマリを見た。
「おかえり~~・・まり」とマリアが叫んだ、その声の強さに全員が驚いた。
その声を聞いてマリが瞳を開けた、その瞬間にマリアとマリの髪の毛が落ちた。
「まだいま、マリア・・ありがとう、マリア・・あの時だったのね」とマリが笑顔で言った。
「あい・・まり・・ねんね」とマリアは微笑んで、瞳を閉じた。
完全な静寂の中、暖かい空間で天使が眠りについた。
『マリア・・ありがとう、完璧な突破口が見えたよ』私は嬉しくてマリアにそう言った。
「小僧・・行ける、やれるね・・私はやるよ」とマリが二ヤで言った、私も二ヤで頷いた。
「よし・・解散にしましょう・・私はフネ達と、楽しい昔話をして来ます」と律子が笑顔で立って。
「嬉しいね~・・行こう、飛鳥と北斗とユリとミチルも来るだろ?」とフネが二ヤで言った。
「もちろん」と大ママが笑顔で立って、3人も笑顔で立った。
6人を笑顔で見送って、裏方4人組が準備に向かった。
「哲夫・・明日、12時に魅宴に迎えに来て・・お昼はご馳走するよ」とヨーコが笑顔で言って立った。
「了解・・肉ね」と哲夫が笑顔で返した、ヨーコも笑顔で頷いた。
ヨーコがシズカと恭子と出て行った、節子が迎えに来て中1トリオも笑顔で帰った。
私はマリからマリアを受け取り、ベッドに寝かせて4人娘の遊ぶのを見ていた。
「ねぇ、ナギサとリリーとカスミは・・今見たい風景が、宮崎にあるのかな?」とリアンが二ヤで聞いた。
「私は有りますよ~・・もう宮崎に来て、5年になりますから~」とナギサが華やか二ヤで返した。
「私もあります・・見たこと無いけど、どうしても見たい景色が」とリリーが笑顔で言った。
「私もです・・そこに行って見ようと思ってます」とカスミが輝く笑顔で言った。
「そっか・・明日、私も久々に遠出しよう・・シオンとドライブするかな」とリアンが嬉しそうに言った。
「蘭・・エースを明日借りるね、いつもの事だけど」とユリカが爽やか二ヤで言った。
「ユリカ姉さんの見たい景色だけは、聞きたいですね~」と蘭が満開二ヤで返した。
「それもエースを連れて行くのか、ユリカのは場所じゃないね」とアンナが二ヤで言った。
「沙紀の住む風景が見たいんです、その環境が・・きっと素敵だと思って、あれだけの描写力を与えた環境ですから」とユリカが笑顔で言った。
『ありがとう、ユリカ・・嬉しいな~』と私は嬉しくて笑顔で返した。
「カレンも行くでしょ、あなたもそうよね?」とユリカがカレンに微笑んだ。
「良いんですか!・・ありがとうございます・・私もそう思ってました」とカレンが嬉しそうに笑顔で言って頭を下げた。
「あと足が無いのは・・リリー、自分で行けるの?」と蘭が笑顔で聞いた。
「はい・・私は大丈夫です」とリリーも笑顔で返した。
「うん・・じゃあレンと久美子だね?」と蘭が4人娘と遊ぶ久美子を見た。
「レンも私も大丈夫です」と久美子が笑顔で返した。
「よし・・私は日曜の午前中、ハルカとミサキと行って来る」と蘭が私に満開二ヤで言った。
『そっか~・・そこだよね、あの2人は』と私も二ヤで返した。
「ミサキの源氏名の場所だね、そうだよね・・あの2人は」とユリカが爽やか笑顔で言った、蘭も満開で頷いた。
「マリはどこかな~?」とリョウがマリに二ヤで聞いた。
「病院の屋上です・・私にはそこしかないんです」とマリが笑顔で返した。
『常に原点に戻る・・マリは強いね』と私は笑顔で言った、マリも笑顔で返してくれた。
「うん・・私も原点、そこの景色を自分に入れよう」とホノカが嬉しそうに言った。
「エース・・私、景色じゃないよ・・ほろ穴から見える空が見たいんだ」とリョウが真顔で言った。
『それも原点だろ、今はそう思える・・それが大切なんだと、俺は思うよ』と笑顔で返した。
「うん、ありがと・・じゃあ勇気を出したいから、エースの場所だけ教えて」とリョウが笑顔で返してきた。
『俺はそこしかないよ、27日のライブの後に行く・・俺には夜の海しかない』と笑顔で返した。
「いつか・・必ず連れて行ってくれよ」とリョウが笑顔で言った。
『約束するよ・・全員一度は連れて行くよ』と笑顔で返した、女性達が笑顔で返してくれた。
ホノカとリョウが準備に帰り、女性達がリンダの試験の思い出話で盛り上がっていた。
『カスミ・・久々にデートしようよ、病院まで』と私は笑顔で言った。
「嬉しいね~・・このメンバーが揃う中での、私の指名は」とカスミが笑顔で言って立ち上がった。
『カスミが良いの、今はカスミが良いんだよ』と笑顔で返した。
「マネージャー・・今夜はリッチの前座だからね、忘れないでね」と久美子が笑顔で言った。
『もちろん行くよ・・有名なプロの前座だろ、1曲に全てを賭けろよ』と二ヤで返した。
「任せなさい・・プロを主食にしてるのよ、久美子ちゃん」と久美子が二ヤで返してきた。
『それで栄養が足りなくて、胸が出ないんだな』と二ヤ二ヤで返した。
「怒るよ・・生まれて初めて、本気で怒るよ・・久美子ちゃん」と久美子がヒトミの台詞で優しく言った。
私は久美子の笑顔を見ていた、美しい16歳が新しい輝きを手に入れていた。
『ありがとう、久美子・・最強戦士の称号、守りきれよ』と笑顔で返して、カスミと腕を組んでTVルームを出た。
「どこまでも上がる、久美子には限界は無いな」とカスミが笑顔で言った。
『カスミを見てるんだ、限界は無いよ・・久美子もマキも』と笑顔で返した。
「それで・・その集中で私に何を提案する、私は大丈夫だよ」とカスミが二ヤで言った。
私はカスミと強く腕を組んで、一番街の西口を出た。
北西から冬の風が吹いていた、ケーキ屋の前に特売のケーキが並んでいた。
街を歩く人々の心は、完全に年末モードに移行しようとしていた。
私はカスミの陰りの無い笑顔を見ていた、カスミは強い意志を瞳に映していた。
『カスミ・・対極を見せて欲しいんだ、明日からヨーコが由美子を訪ねる。
カスミはアパートが近いから、今までも病院に行ってたよね。
明日からは全力の状態のカスミで、由美子に会いに行ってくれないかな。
ヨーコが由美子に何かを伝える、由美子の性格を考えると。
外見的にはヨーコに憧れると思う、でもそれに執着させたくない。
由美子の心のイメージを、何事に対しても1つにしたくないんだ。
選択肢を2つ以上持たせたいんだ・・全ての由美子の想いに。
カスミしかいない、ヨーコの対極を見せれるのは・・その輝きしかない。
出来るよね、カスミ・・次の段階は、輝きで伝える。
輝くことで伝達する、美しさも多様なんだと・・由美子に伝えて。
由美子のイメージに選択肢を持たせて、それが俺のお願いだよ。
カスミなら出来る・・カスミにしか出来ない、今のカスミにしか』
私は真横の美しいカスミを見て、言葉と温度で強く伝えた。
強烈な波動が来て、ユリカとユリアの同意を感じていた。
「うし・・絶対にやってやる、それが私の継続して目指した世界だよ。
ありがとう、最高の言葉だった・・輝きで伝達する。
最強の伝達者が、輝きも伝達能力だと言ってくれて・・嬉しかったよ。
私はマチルダの親友として、あのマチルダの輝きに挑戦する。
輝く笑顔の伝達者に肩を並べてみせるよ、永遠の憧れに恥じぬように」
カスミは前を見て強く言葉にした、カスミの言葉が病院に向かって響いていた。
私とカスミは西日に輝く、逆光に映る病院を見ていた。
その影に不安など存在しなかった、私は西日の輝きすら突破口に見えていた。
クリスマスに別れを告げて、冬物語は第二章に入った。
温もりの冬が到来した、寒さを凌駕して燃える季節が、北西の風に乗りやってきた。
私はカスミと病院に入った、さすがにカスミも腕を組むのをやめた。
病院の1階の受付は、最後の外来患者が座っていた。
私はカスミと受付の長椅子の後ろを歩いていた、その時エレベーターから降りてきた。
中年の女性に手を引かれた、可愛い少女が私を見つけて駆け出した。
私はその姿を見て、自然に笑顔になって屈んで待った。
嬉しそうな笑顔で駆け寄ってきた、春風が先に来た、甘い香りを漂わせながら。
私はモモカを抱きとめて抱き上げた、モモカは私に笑顔で抱かれカスミを見ていた。
「カスミだよ・・こんにちは」とカスミがモモカに笑顔で言った。
「こんにちは、モモカです・・早く歩くと、転ぶの・・モモカは早く歩くと、転ぶんだよ・・なぜかな~?」とモモカは可愛い笑顔でカスミに言った。
強烈な波動が受付に吹き荒れた、カスミは眩しいほどの輝きを放出して笑顔になった。
私はモモカをカスミに抱かせた、笑顔のカスミが笑顔のモモカを抱いていた。
カスミは嬉しそうに長椅子に歩いて、モモカを抱いたまま座って話していた。
私は顔馴染みの施設の女性、寿子と挨拶を交わして、カスミの嬉しそうな顔を見ていた。
「この病院なのね、今の小僧の挑戦場所は」と寿子が言った。
『うん・・楽しんでるよ、モモカどうしたの?』と笑顔で返した。
「今・・新生児室にいる子が、母親が出産で亡くなってね。
孤児になりそうなの、父親が誰か分からなくて・・母親は天涯孤独らしい。
それで呼ばれて来たのよ、今から会議があるの・・モモカが珍しく来たがってね。
退屈してるみたいだから、今からジュースでも飲ませようと思ってね」
寿子はモモカを見ながらそう言った、私も楽しそうに話す2人を見ていた。
『モモカ、会いに来たんだね・・寿子、俺がモモカを預かるよ・・終わったら、小児病棟に来て』と笑顔で返した。
「どうやら、そうみたいね・・よろしく、終わったら迎えに行くよ」と寿子も笑顔で言って、エレベーターに乗った。
『カスミ行こうか、モモカと一緒に・・モモカは由美子に会いに来たみたいだから』と笑顔で言った。
「そうなの!・・モモカ、由美子が喜ぶよ~」とカスミが笑顔で言って、モモカを抱いたまま立った。
「ゆみこちゃんですね、楽しみです・・モモカといつか一緒に学校に行く、友達だから」とモモカが可愛い笑顔で言った。
私もカスミも凍結してモモカの顔を見ていた、モモカは無垢な笑顔で笑っていた。
制御の利かない波動が、入口から押し寄せた、その波動にヒトミの熱が確かにあった。
第二章の幕開けをモモカが告げた、それが必然だと言うように。
このモモカの言葉こそが、これ以降の私の原動力になる。
そして由美子の奇跡の道に繋げる、春風という最終兵器がセットされた。
私はモモカの笑顔を見ながら、無意識に心に呟いた。
《モモカ・・準備してたのか、あの12月25日から・・産まれる前から》
炸裂するヒトミの乗った波動爆弾を受けて、モモカは私を見て笑っていた。
輝きが抱く、純粋な微笑が・・未来への道を照らしてるようだった・・。