【冬物語・・螺旋の系譜⑥】
恋人達の一大イベントが終わり、年の瀬と言われる季節が到来した。
街並みの景色が変わり、足早に歩く人々に年末を意識させていた。
女性達が笑顔で挨拶して解散になった、私は眠そうなマリアを抱いていた。
蘭がナギサとデパートに出かけ、ミコトと千鶴で出かけたようだった。
限界ファイブと中1トリオとマリを、律子が連れて出て行き、哲夫は4人娘と遊んでいた。
楽しそうな裏方4人組と、リリー・ネネ・カレンに片付けを任せて。
私はマリアを抱いて、哲夫と4人娘を連れてTVルームに戻った。
TVルームにはマダムと五天女が揃い、北斗とアンナが座っていた。
北斗が静かにレポートを読んでいた、1枚読み終わる毎に隣のユリさんに渡していた。
ユリさんの次に大ママが受け取り、3人は真剣な顔で読んでいた。
ユリカとリアンとアンナも3人で読んでいて、静かな空間が出来ていた。
「シズカという子は、超えていますね・・文面に、確かな熱がありますね」とユリさんが薔薇で微笑んだ。
『怖かったですから、その時のシズカは』と笑顔で返した。
「レポートを書いた時、シズカ姉さん小6だったんです・・俺は小6になって読み返したけど、凄過ぎる」と哲夫は真顔で言った。
『北斗・・一気に読んだら駄目だよ』と真剣な北斗に言った。
「うん・・今は5歳までにするよ、大丈夫だよエース」と北斗が笑顔で返してきた。
その笑顔に陰りが無く、瞳が澄んでいたので、私は笑顔で返した。
その時松さんが入ってきて、その後ろからフネが笑顔で入ってきた。
フネがユリさんとアンナに挨拶して、驚く大ママと北斗の横に座った。
「飛鳥・・頑張ってるね、誇らしい妹だよ・・会いに行こうと思ってたけど、忙しくてね」とフネが笑顔で大ママの横に座った。
「サツキ姉さん、ご無沙汰しています・・どこかで働いてるのですか?」と大ママが嬉しそうな笑顔で言った。
「マリーのフロアーを見てくれと頼まれてね、加々見社長直々の頼みだから断れなくて」とフネが笑顔で返した。
「嬉しい話です、サツキ姉さんの復活は・・夜街には貴重な事ですよ」と大ママも笑顔で返した。
「さすがですね~、麗しの五月・・相変わらずお美しい」とレポートを片付けて北斗が微笑んだ。
「それはこっちの台詞だよ、北斗がいるとは驚いたよ」とフネが笑顔で返した。
「今は派遣でやっています、エースに口説かれて」と北斗が二ヤで返した。
「そうなの!・・それは派遣に期待できるね~」とフネが笑顔で返した。
「派遣を使う感じになったんですか?」と大ママが笑顔で聞いた。
フネが笑顔で頷いて、女性達も笑顔で返した。
『マイはどう?・・変化があったかな?』と私はマリアをベッドに寝かせて、フネの前に座った。
「あったよ、戻った感じになったね・・他の女性達が、魔法だって騒いでるよ」とフネが二ヤで返してきた。
『そうなんだ・・素直で良い子だよね~』と笑顔で返した。
「それで加々見社長の次の依頼・・来年早々変化を促して、派遣を誰でも受け入れる。
何人でも、自給はそっちの設定を全て飲む・・その代わり接客だけじゃない。
変化を促して欲しい・・それが次の依頼内容だよ、分かってると思うけど」
フネは笑顔で言った、私は二ヤで頷いた。
『了解です・・ある程度の作戦は立ててるよ、最初にレベル差を見せる。
バイトのエースを出すよ、4人組のコンビネーションで見せ付ける。
あの広さでどう動くのか、俺も楽しみなんだよ・・面白いと思う。
そして少し変化が有ったら・・次は俺のベストメンバーを出すよ』
私は二ヤで返した、フネは興味津々になっていた。
「なるほどね~・・ベストメンバーの打順は?」とフネも二ヤで返した。
『1番バッターがユリカ・・2番がリアン、3番ミチル、4番がユリ。
そして5番が北斗、6番アンナ、7番ミコト、8番蘭、9番ナギサ。
このベストメンバーを投入する、そしてマリーの派遣での中心はリリー。
圧倒的な違いを見せ付ける、必ず本物に火を点けるオーダーだよ。
それが終われば、何人かが出てきてると思う・・その時を狙う。
銀河の奇跡3人を出す、そして最強19歳トリオを出すよ』
私は女性達を見回して、ニヤで言った。
「冗談にしか聞こえないメンバーだよ、本気なのかい?」とフネが驚いて言った。
『もちろん・・ユリカは了承済みだし、誰も断らないと思ってる。
この打順で俺が想定出来ないのが、7番のミコト・・魅宴の現役No1。
俺はミコトに対しては、慎重になるんだよ・・大切な存在なんだ。
四天女を投入して、派遣のベテラン2人を投入。
衝撃の後に安定感を出して、その次のミコトで更なる衝撃を与える。
そして同世代のエース、蘭・ナギサ・リリーで点火するよ。
俺は【麗しの5月】に、1つの解答を見せるよ・・女帝飛鳥の解答を。
飛鳥が育てた3人で・・魅宴の伝説、ユリカとミコトとナギサでね。
それが飛鳥の望みだと思ってるから、解答書を提出するよ・・フネという人に。
御大でなく、フネという伝説の女性にね・・お楽しみに。
俺はマリーに有ると思ってる、次の世界のヒントが・・それが知りたい。
あの大型店が成功すれば、必ず何かが生まれると信じてるよ』
私は笑顔でフネを見て、強く言葉にして伝えた。
フネの驚き顔を楽しんで、大ママの嬉しそうな笑顔を見ていた。
「怖い男を育てましたね~、マダム」とフネはマダムに二ヤで言った。
「放し飼いじゃよ、勝手に育っていくよ」とマダムが二ヤで返して。
「サツキ・・今の幻海を見に行ってみなよ、驚くと思うよ」と松さんが二ヤで返した。
「それは轟さんからも言われましたよ、エースの解答を一度見に来いと」とフネが笑顔で返した。
「今のサツキは、マリーのご意見番なのかい?・・現役でもいけそうだけどね」と松さんが二ヤで突っ込んだ。
「2ヶ月前からですけど、加々見社長に頼まれて・・大き過ぎて難しいですよ」とフネが笑顔で返した。
「マリーレインのあの区画・・前はダンスホールでしたよね、広いですよね」とユリさんが微笑んで。
「その前はストリップだったよ、かなり広いよね」と大ママが笑顔で言って。
「小林さんも検討したらしいけど、諦めたと言ったのを聞いた事があります」とアンナが笑顔で言った。
「ダンスホールの初期は、生バンドも入って流行ってたよ。
塚本も谷田も少年の頃バイトで弾いてた、娯楽の無い時代だったからの。
若者が集結してたよ・・だが時代の波に乗れなかった、変化の時を見過ごした。
時代はディスコという横文字になり、意味の分からん英語の歌で踊るようになった。
若者達に文化の壁が無くなった、それを戦時派の経営者が認められなかったんじゃ。
文化は押し付ける事じゃないよな、選択肢が多用でなければならん。
衰退は認められない心が選択した、狭い心が衰退を招いたんじゃよ。
次の世界を求める、それが大切じゃよな・・それに対する変化を求める。
確かにマリーレインの成功には、次の何かが見えるかもな・・面白いよ。
夜街に会社組織が誕生すれば、必ず変化は現れる・・それが次の世界ならばね」
マダムは笑顔で私を見ながら言った、笑顔とは裏腹の真剣な迫力を感じていた。
「確かにどんな選択にも弊害はありますね、個人経営の弊害も大きくなってます。
戦後復興の為と国が守ってきた既得権益も、開放される話が出てきましたね。
今の話の流れだと、まずは酒類販売がそうなるでしょう。
酒類に関しては、国は高い税金を掛ければ良いだけですから。
製造してるのは、全て民間の酒造会社ですからね・・タバコとは違います。
販売制限を緩和して、販売量を拡大したいでしょうね・・そうすれば出てきます。
安売り店が出現しますよね、そして大きな会社組織のチェーン店が出てくるでしょう。
その時に既存の酒屋さんがどう変化するのか、そこが勝負になりますね。
お酒は確実に値下がりします、為替レートも今は円高安定で推移してますから。
輸入酒は今でも下がっていますね、そうなれば末端まで普及します。
お酒を楽しむ人も選択肢も増えますね、洋酒が焼酎並みの価格になれば。
それによる夜の世界も多様化が進むでしょう、安価競争も出てきますから。
夜の世界は付加価値の勝負になりますね、時間にどう付加価値を付けるのか。
次の時代は裾野を広げる、安価競争で選択肢を広げる・・その時に問題になりますね。
レベルの満たない人への対応が、裾野を広げた事で現れるでしょうから。
金を払えば何でも有りと言う人が、ルールを無視する人が現れるでしょう。
エースはそこまでの設定をしてるのでしょう、だからマリーにベストメンバーを出す。
感じろと言ってるんでしょうね、五天女などと言われて調子に乗ってる私達に。
次の難しい時代を感じろと・・その為に最強の派遣メンバーを揃えてる。
エースの言う底辺のレベルを上げる、私もその底辺にいると言われてる。
私はそう思ってます、まだ上がれと煽られてると・・全国的に見れば、私も底辺だと。
私もそう実感しています、マリーレイン楽しみです・・私には問題も出されてますから」
ユリさんは私を見て薔薇二ヤで言った、私もニヤで返した。
「聞かせてもらおう、エースの次の方向性を・・私もマリーに行くんだから」とミチルが妖艶二ヤで言って。
「話してくれ、エース・・次の取り組みを」と大ママが笑顔で言った。
その時、片付けをしていた7人と、銀河の3人が入って来た。
10人は大ママに手招かれ、笑顔でフネに挨拶をしていた。
「凄いメンバーだね、見ただけで分かるよ・・銀河の奇跡、噂以上だね~」とフネが笑顔で言った。
銀河の嬉しそうな笑顔が咲いて、10人が私の側に座った。
「じゃあやってくれ、エースの次の方向性を・・話してもらおう」とリアンが極炎ニカで催促した。
『これはドン・小林に聞いて、新聞で読んだんだけど・・東京には次の提案が出てる。
キャバクラと言って、六本木と新宿に出てきてる。
概要はクラブよりも安く、キャバレーよりソフト・・その中間的な感じだと思う。
接客の主流も若い女性で、接待よりも内輪やプライベートを主に狙う。
銀座のクラブ関係者は、あれは接客じゃないと言ってるらしいけど。
それこそが馬鹿な意見だと思う、不必要なプライドが認める事を許さない。
確かに危ない経営方針の店も多いらしい、後ろに黒い影も付き纏う。
そんなのは夜の常識だよね、世間はそれを大きく扱うけど、客には関係無い話だよ。
まともに遊んでるなら、その世界と関わることは無いのに、影の存在に極度に脅える。
今は出始めで、手探りの状態なんだろうね・・でも必ず成功する店は出てくる。
若い女性を多く扱うなら、経営側も会社組織じゃないと難しいと思う。
引抜じゃなくスカウトをしなければならない、東京にはゴロゴロいるだろうし。
それに夢を描いて、夜に挑戦する女性も沢山いるだろうから。
今の宮崎でキャバクラに最も近いのは、俺の知る限り・・ゴールドだと思う。
そしてユリさんがフロアーを離れた状態の、PGがその方向に走るだろうね。
この2店が接待に対しては、幻海や魅宴に及ばないのは周知の事実だし。
ユリさんの存在が薄まれば、その方向を求められないPGが現れるだろう。
日本が今の勢いで成長すれば、客は次々と湧いて出てくる。
既存の客を奪い合う必要は無いし、店側の狙いも定めやすい。
取り込めるキャパは同じだから、方向性を店が示して・・客が選択する。
もちろん景気が下がらなければの話だけど、まだ大丈夫そうだよね。
その時に間違わない、簡単に遊べる店だと提示しない・・問題は一人で来る客。
そのレベルを客に間接的に問う、レベルに達していない客に甘さを見せない。
店は客を選べない・・夜の世界の常識としてそう言われるけど、試験は出せるよ。
拒絶は出来ないだろうけど、不合格の通知は出来る・・しなければならない。
俺はそれが付加価値だと思ってるし、お客のステータスになると思ってる。
夜遊びにも段階があると提示する、だから上のレベルは到達した人間に付いて行く。
そして少しずつ経験して、その世界を知る事で楽しめる・・その人が次の世代に繋ぐ。
若者の集まる店はそれが如実に現れてる、特に大学生・・18で初めて酒を飲む。
そして夜の世界を経験していく、先輩に連れられて・・安価な若者相手の店から。
その時に感じさせたい、妖しく素敵な世界が有るんだと・・五感を刺激したい。
女性達が歩く姿を街で見るだけで、それを感じさせたい・・それで養殖する。
客を養殖するんだ、そのレベルの人間を目指せと煽る。
歩くだけ、すれ違うだけで感じさせて欲しい・・上級な空間が存在する事を。
金だけでは楽しめない空間を感じさせて、それが試験になると思うから。
確かに金を出せば、何でもOKな危ない店も多く存在するよね。
でもそんな店の客は続くとは思えない、それにのめり込むような客はいらない。
そんな経験もして、仕事を始めて自由になる金も出来る。
上司という存在が連れて来る、夜の世界が段階を踏んで養殖した次の世代を。
それで繋ぐしかない、夜の世界が存在し続けるには・・全てのジャンルが必要なんだ。
危ない店も風俗店も、手の届かない高級な店も、自分の存在が小さく感じる大型店も。
養殖する為に、経験させる為に・・そして飽きさせない為に。
俺はその考えのモデル店として、マリーレインの改革に取り組む。
あの広さでの安定を目指す、その為には女性達の意識改革が必要になる。
ユリさんに探し出してもらう、四天女見つけ出してもらうよ。
マリーを背負う女性を・・その子が決まれば、リリーをぶつける。
派遣の秘密兵器で勝負をかける、そして銀河を投入する・・銀河の真価を問う。
銀河には言い訳は許さない、次の世代が手薬煉引いて待ってるから。
カレンには、幻海のアイコに勝負を挑ませる・・そしてゴールドのエース、セリカ。
それに・・比類なき存在、シオンが後ろに控えてる。
銀河がリリーを狙わないのなら、俺はカレンとセリカに狙わせる。
俺は全ての想定をする、蘭もナギサも存在しなくなる設定もする。
それが出来るようになった、派遣にリリーが存在する事で・・それが出来る。
俺は必ず煽り続け、挑戦させ続けてみせる・・レンとケイコにも。
ハルカとミサキにも・・そしてマキとヨーコにも、歩みを止めさせない。
五天女を感じ、北斗とアンナを感じ・・同じ土俵で働いた、最後の世代。
俺が幼い時から知る、マキとヨーコで1つの答えを出したい。
俺はマキかヨーコで作り出す、無意味な称号を持てる女性を。
誰も今まで手に出来なかった、その価値の無い称号・・女王を作り出す。
その時に次の時代が来る、俺の考える次の時代が・・その時にどうなってるのか。
ハルカとミサキ、その選ばれし2人がどう存在するのか・・それが楽しみだよ。
そして今から出てくる最新型も楽しみだね、違うエンジンに出会えるのが。
その未来の為には、銀河の奇跡こそが道標なんだ・・その選ばれし3人で勝負する。
やってくれるだろう、宮崎の夜街の若手を抑えて・・東京のオープニングリーダーを。
俺は経験する場所は用意する、女帝3人が育てた3人に期待する。
蘭とナギサとアイコとリリー・・この4人に挑め、そしてネネと小夜子に。
この6人を感じて、必要な部分は全て取り込め・・そして最強のバトンを繋げ。
タイムリミットは4年・・4年後に見せてもらう、銀河の奇跡と呼ばれた理由を』
私は銀河3人を見ながら、その下の世代の女性達に二ヤを出した。
「やるよ、必ず最強のバトンを繋いでやるよ」とカスミが最強不敵で言って。
「良いだろう、その位の期待はしてもらうよ」とリョウが魔性で微笑んで。
「4年で良いんだね、十分だよ・・常に最新型を提示してね」とホノカが華麗に微笑んだ。
「ユリ姉さんは・・いよいよ望んだ段階に入ったんですか?」とユリカが真顔で言った。
「ユリ・・フロアーに距離を置くの?」とミチルが真顔で聞いて。
「そうらしいね~・・噂になりそうだよね」と大ママが二ヤでユリさんを見た。
「そうします・・この12月から、指名以外は接客を抑えています。
私は必死にPGの世界を作ってきました、でもそれは狭い世界になってしまった。
ワンマンの弊害ですね、私が女性達に強要してた部分も強かったです。
一人一人に素晴らしい個性が有るのに、私の考えを押し付けていました。
私は共同体の5店に出て気付きました、正解など無いんだと。
答えを探すべき事ではなかった、私もどこかで満足する心を求めていた。
そう実感しましたね、そして気付きました・・エースが共同体に込めた想いを。
それは今は言えません・・私は出会いたいんです、最新型の女性達に。
新しい感覚と価値観で挑戦してくる、次の世代の女性達に。
満足とは所詮、金で買う物の事だよ・・私はこの言葉で、エースに賭けました。
お金で買えない物を作り上げたい、マダム・松さん・フネさん・北斗姉さんと。
出会えなかった、真希さんに提出します・・私とミチルでが受け取ったバトンを。
そのバトンに対する解答を、提出したいと思っています。
リアンとユリカに繋ぐバトンで・・その解答を出したいと思っています」
ユリさんは真剣に言葉にした、私は俯いているマダムと松さんを見ていた。
15年の時を2人は感じているのだろう、そして真希さんを思い出しているんだろう。
私はそう思っていた、フネの強い瞳がユリさんを見ていた。
「私はユリを見た時に、最新型だと衝撃を受けたよ。
私は引退していて、飛鳥に連れて来てもらった・・このPGにね。
北斗とユリと、デビューしたてのリアンがいた・・恐ろしい風景だった。
サクラが結婚引退して、その穴をリアンが18で埋めていた。
22歳のアイが必死になっていて、それを北斗が煽っていたよ。
そして君臨していた、23歳のユリ・・圧倒的だった、その存在自体が。
しかし今の話を聞いて、ユリは別物だと確信したよ。
エース・・来年楽しみにしてるよ、社長も楽しみにしてると思うよ」
フネが私に笑顔で言った、私が笑顔で返すと、フネは私の後ろを見て固まっていた。
私が振り向くと、律子とマリが立っていた。
「フネ!・・金をかければ、若さは維持出来るのね」と律子の声がした。
「律子・・金じゃないよ、才能だよ」とフネが二ヤで返した。
律子も二ヤで返して、私の横にマリと座った。
「怖いから、帰ろうかな~」と大ママがウルで言った。
『大ママのウル、初めて見たよ』と私は二ヤで言った。
「飛鳥は怖いよの~・・律子とフネの絡みは」とマダムが二ヤで言って。
「嫌ですよ~、マダム・・ユリカの興味津々が怖いですよ、最近変化が激しいよ・・ユリカ」と律子が二ヤでユリカに言った。
「律子姉さん、少し注意して下さい・・あなたの息子は、ユリカをひいきしてます」と北斗が二ヤで言った。
「ちょっと待って・・律子の息子なの?」とフネが驚いて聞いた。
「残念ながらね・・当然だけど、父親は勝也だよ」と律子が二ヤで返した。
「じゃあ・・あの時の少年がエースなの?」とフネが笑顔で言った、律子も笑顔で頷いた。
「勝也の息子が、加々見さんに次の世界を提案する・・それが男のバトンなのね?」とフネが律子に笑顔で言った。
「そうよ・・そしてこの子がマリ、加々見君の問題を解いた子よ」と律子が笑顔で言って、マリが頭を下げた。
「あなたがマリちゃん、私はフネです・・加々見社長が誰よりも、マリちゃんを右腕に欲しいと言ってたよ」とフネが嬉しそうな笑顔で言った。
「ありがとうございます・・嬉しいです」とマリがゆっくりと言葉で返した。
「フネも見ておいてね、あんたならすぐに感じるから。
五天女に見せますね、マリの本当の姿を・・それが大切だと、私は思ったから。
私は小僧の本心を唯一分かってる母親として、小僧に3度目の援護をします。
私は今まで・・ヒトミの段階の時と左手に誘う時、その2回だけ援護しました。
それは困難な事だったから、私も経験して感じてたからです。
小僧は次に沙紀に取り組む、今回の沙紀の世界は困難な道です。
私は小僧の準備を感じて、リンダの素晴らしい試験も見ました。
それでも小僧もマリは足りないと思ってる、それはマリが脱いでいない。
自分を守る為に作り出した、防御のためのベールを脱げない。
その原因は、理解されない事に対する恐怖・・理解されたいと思う心です。
マリがそれを脱ぐ決心をしました、理解を求めないと私に言ってくれました。
マリはユリカに出会って気付いた、自分の間違いに気付いたのでしょう。
そしてミホと沙紀を感じて、自分も強くなりたいと思ったのでしょう。
マリと小僧は戦いを挑みます・・由美子に対する、悪質なシナリオに。
フネがここに居るのにも、実は大きな意味があります。
小僧は覚えてないでしょうが、小僧はフネに会っています・・4年前に。
小児病棟でフネに会っています、フネの妹と一緒に出会いました。
フネの妹が早産で、未熟児を出産した時です。
私は小僧と、ヒトミに会いに病院に行って・・偶然フネに再会しました。
私はフネと話して、小僧を連れて新生児室を覗きに行きました。
出産から1ヶ月が経過していて、その乳児も体が大きくなっていて。
保育器からも出て、順調に成長して・・退院も出来そうだと言われてた頃でした。
私がフネの妹と挨拶していると、小僧が何気に言ったんです。
あの子の事なの、あの子は強いんだよ・・言葉が強いよ。
小僧は母親にそう言ったんです、フネと妹は驚いて小僧を見ていました。
その言葉を婦長が聞いていて、乳児を抱いて出てきて、小僧に抱かせました。
小僧は乳児を抱いて、笑顔で話しかけて・・そして母親にこう言ったんです。
お母さん、心配性だね・・この子は大丈夫、健常者だよ・・素敵な子だよ。
小僧はそう言いました、母親は泣いていて・・フネが聞いたんです。
どうして分かるのかと、フネは小僧に真剣に聞きました。
小僧は笑顔で答えました・・温度だよ、この子は強く伝えてくるよ。
その言葉でフネは笑顔になりました・・フネは一瞬で分かった、感覚的な女だから。
私がフネに出会ったのは、まだ20歳そこそこの頃です・・和尚に紹介されました。
その頃の私は、今のマリと同じで悩んでいた、フネも同じ悩みで和尚を尋ねた。
それで出会って、すぐに意気投合しました・・私はフネを真希に紹介した。
フネは真希を知って、夜の世界に踏み出しました・・出来たばかりの幻海に入店した。
フネは千花を選ばなかった、真希に挑戦を挑んだんです。
フネは真希と同じ場所にいる事を恐れました、2つの力が重なる事を恐れた。
それから麗しの五月と呼ばれ、真希と肩を並べる存在になった。
フネは避けていました、真希を避けていた・・真希は会いたかったでしょう。
そして真希が引退して、フネは後悔しました・・真希と触れ合わなかった事を。
だからこそ魅宴が開店する時に、勝也がフネを飛鳥に紹介したんでしょうね。
勝也はその時こう言っています・・飛鳥で感じろ、真希の想いを飛鳥で感じろ。
フネはそれから飛鳥を育てたのね、自分の想いを全て飛鳥に託したのでしょう。
私は今日のマリの言葉が本当に嬉しかった、本当の勇気を持てた言葉が。
マリはヒトミに会わなかった・・それは恐れたんです、2つの力が重なる事を。
マリは全て自分で克服してきた、それは私やフネやユリカを完全に超えています。
マリは幼くして気付いた、自分の力の意味も・・そして悪質なシナリオも。
マリが踏み出そうとするその力を、ここにいる全員で感じて欲しい。
見解や感想などいりません、感じてくれればそれで良いと思います。
マリは到達しました、その最後の背中を押したのが・・リンダです。
あの空母の名前はMARIでした、強いリンダのメッセージですね。
マリは母艦に成る為に、今からベールを脱ぎます・・感じてもらえますか?」
律子は強い言葉で言った、マリは律子の横で俯いて集中していた。
「感じたい・・私は感じてみたい、マリちゃんを」とエミが笑顔で言った。
「エミ・・ありがとう」とマリがエミを見て微笑んだ。
「マリ・・全裸の心でね」とユリカがマリに微笑んだ、マリも強く頷いた。
暖かい集中の中で、マリはユリカを見ていた・・自分を表現する為に。
マリは恐怖に気付いていた、その強い心が求めたのは・・螺旋に描かれた鼓動だった・・。