【冬物語・・螺旋の系譜④】
考えて行動してる時は、安定感が増している。
しかし最も大切な場面は、瞬時の判断を要求する。
その決断が出来れば、全ての場面がスローで流れる、時の概念が変わったように。
エミの報告が、エミの心を表現していた。
その言葉で、空の女性にも深海の女性達にも笑顔が咲いた。
「陽が傾いてるね・・夕暮れが近いんだ」とサクラさんが操縦席から、染まる空を見ながら呟いた。
「夜が来るのかな・・時間の進行が早い感じだよね」とアイさんも空を見ながら呟いた。
「確かに・・入った時は、朝だった感じだったよね」とサクラさんが笑顔で返した。
「ムーン・アタッカー・・準備完了」とユリさんが言った。
ユリさんが前方の操縦席に座り、蘭が後部の攻撃席に座っていた。
「空母マリの戦闘機、熱量増加・・発進が近いと思います」とアイさんが報告して。
「ミサリル・・下部熱量増加」と秀美が報告した。
「戦闘機チーム・・頼んだよ・・ムーン・アタッカー・・発射120秒前」とミチルが強く言った。
「了解」と戦闘機の女性達が返した。
その時だった、私達の目の前の河川敷にナギサが現れた。
「寝坊した~・・エース、お願い何か出して~」とナギサがウルで空に叫んだ。
「しょうがないな~・・ナギサの奴~」と私は呟いて、目の前の操作盤のスイッチを押した。
ナギサの目の前の堤防が2つに割れて、尖った三角形のようなピンクの戦闘機が出てきた。
ナギサは最強華やか二ヤ出して、戦闘機の羽に飛び乗って操縦席に入った。
そしてピンクのヘルメットを被って、無線機を付けて二ヤを出した。
「急用で遅れました・・ナギサ、今から飛びます。
状況を教えて下さい・・誰か交信よろしく」
ナギサは焦って言った、その時女性達の笑い声が聞こえた。
「寝坊した~って叫んだのは・・誰なの?」とミチルが笑顔で言った。
「いや~・・昨夜イメージ入れてたら、眠れなくなって」とナギサがウルで返した。
「まぁ、良いよ・・今からユリと蘭が宇宙に飛ぶ、援護の人数が多い方が良いんだ。
あんたはその戦闘機で飛べるなら、ここに来て・・座標は出すから。
その試作機でどうやって飛ぶのか、楽しみにしてるよ」
ミチルが二ヤで言った、ナギサも笑顔で頷いた。
「お前の説明を出せ」とナギサはコックピットのモニターに言った。
ナギサは必死に声を出して説明を読んで、納得して周りを見回した。
「カウント・・60」とアイさんの声が聞こえた。
ナギサはそれで覚悟を決めて、戦闘機を垂直離陸して橘橋の上に降ろした。
「やる気だね、ナギサ・・常識じゃ理解できないあの感性、やるね~」と律子が言って。
「心が自由・・囚われない」とマリがモニターを見ながら笑顔で言った。
「カウント・・30」とアイさんが言った。
その声でナギサがアクセルを全開にした、三角形の裾が広がり羽が大きくなった。
「ナギサ・・発進」とナギサが言って、戦闘機が橘橋の上を加速した。
そのスピードに、空母のレーダー席は凍結していた。
ナギサは大淀川の幅をフルに使って、ギリギリで離陸した。
そして加速装置を押したまま、海に飛び去った。
「速い!・・ナギサ号、全くの別物・・到達まで20秒」と北斗が言った。
「カウントダウン・・10」とアイさんが言って。
「ミサイル・・温度上昇、下部より白煙あり」と秀美が言って。
「戦闘機・・白煙発生」とアイさんが言った。
ユリさんも蘭も戦闘機の女性達も、モニターの数字を見ていた。
【5】・・【4】・・【3】と下がっていき、全員が自分の早い鼓動を感じていた。
【2】・・【1】・・【GO】と出て、ユリさんと蘭は強烈な加速Gでシートに張り付いていた。
「ミサイル発射確認・・ムーンとの距離、2800・・縮まります」と秀美が言って。
「敵戦闘機発進・・撃墜せよ」とアイさんが言った。
空母マリの滑走路を戦闘機がフル加速していた、その戦闘機が滑走路を出た時に入った。
空母マリの滑走路上を滑るように、ネネの戦闘機が飛び去った。
右旋回を敵機がした時には、ネネのロックオンの声が聞こえた。
「なるほどね~・・次、千秋行きます」と千秋が言った。
空母マリの滑走路の中央に、次の戦闘機が白煙を上げていた。
敵機が加速を始めた時には、千秋は敵機の真後ろにいた。
早過ぎて衝突するのではと思うほど、近い距離だった。
「奴等を上空には飛ばさないよ、それがやるべき事だろ・・次、千春行きます」と千春が強く言った。
「ムーンとミサイルの差・・1秒毎に40m縮まっています・・衝突まで残り65秒」と秀美が言った。
「ミサイル軌道確認・・セリカ、全速降下するよ」とリアンが言って。
「ラジャー・・全速降下」とセリカが強く言葉にして、加速装置を押した。
リアンとセリカの急降下の映像を、ユリさんも蘭も見ていた。
「ミサイル分解!・・2分割・・4本になりました」と秀美が言った。
「なに~!・・セリカ絶対に2本は落とすよ」とリアンが叫んだ。
「了解」とセリカも叫んだ。
リアンは的確な指示を、限界のスピードの中で決断した。
セリカはその時に笑顔で返した、セリカの流星が激しく流れていた。
セリカがリアンより少し前を飛んでいた、リアンは考えるのをやめていた。
2人にムーン・アタッカーが見えた次の瞬間には、至近距離を交差した。
その直後ミサイルの姿が見えた、セリカはその時スローモーションで見ていたと言った。
ミサイルの頭部を照準機が囲み、ゆっくりとロックしたと言っていた。
「ロック・オン・発射」とセリカが言って。
「発射」とリアンが言った、ミサイル4発は2機をかすめて上昇した。
「失敗か!」とリアンが言った時に、追撃ミサイルが上昇して2発に当り大爆発して消えた。
「なに~!」とセリカが叫んで、その言葉でリアンが前を見た時にかすめた。
ピンクの機体だと分かっただけで、リアンもセリカも何なのか分からなかった。
「ナギサ号、上昇中・・ムーンとミサイルの距離、880」と秀美が叫んだ。
ナギサは目の前を睨んでいた、モニターには【上昇限度・危険】と出ていた。
「ナギサ、来い!」と蘭が叫んだ。
「待ってろよ~・・ロックオン、発射」と言ってナギサが追撃ミサイルを発射した。
目の前で大爆発が起こり、ナギサは炎と白煙に視界を遮られた。
ナギサの視界が戻った時には、最後のミサイルはナギサの真横にあり。
ロックは出来なかった、ナギサの目の前にはムーンの後部が見えていた。
ナギサの機体は真赤になり、今にも溶け出しそうだった。
ナギサは何の躊躇も無く、ムーンとミサイルの間に入った。
戦闘機の操縦席のガラス越しに、ナギサは蘭の顔を肉眼で見ていた。
「蘭・・淋しかったのか~・・私がいなくて」とナギサが無線で言った。
「ナギサ!・・相変わらず、お寝坊さんだね」と蘭がナギサを見上げて、満開で微笑んだ。
「蘭、頑張れよ・・後は任せたよ、私はミサイルを抱いて帰るね」とナギサが二ヤで返して。
アクセルから足を降ろした、蘭の視界からナギサが消えた。
「私は最後まで諦めないよ・・脱出」とナギサが叫んで、脱出レバーを引いた。
ナギサは強力な力で、シートごと飛ばされた。
ナギサは飛ばされながら、ピンクの機体がミサイルと離れて行くのを見ていた。
しかし次の瞬間には、ミサイルはナギサのピンクの機体に方向を変えた。
「やっぱり・・私がNo1だね」とナギサが華やか二ヤで言った。
次の瞬間に大爆発が起こった、ナギサは爆風で上空高く飛ばされた。
空母の女性も、戦闘機の女性も、深海の女性達も沈黙して映像を見ていた。
「ムーン・アタッカー・・無事上昇中・・ナギサ姉さん、確認できません」と秀美が叫んだ。
「ナギサ~」と蘭が叫んだ。
「何?・・今最高の気分だよ、地球を見てる」とナギサが言った。
「うっしゃ~」とリリーが叫んで、女性全員が右手の拳を突き上げた。
「もう・・何で出来るの、馬鹿なんだから~」と蘭が泣きながら叫んだ。
「遅れた分、目立たないとね・・先に空母に帰ってるよ」とナギサが返した。
「了解・・私はユリ姉さんと、リンダに答えを出してくる」と蘭が返した。
ナギサはゆっくりと降下していた、ナギサの頭上には花が咲いたように、パラシュートが開いていた。
水平線に太陽が沈んで行き、海は幻想的な星と月の輝きに包まれていた。
「よし・・次は私達だね、空ばかりに良いとこ取らせないよ」と神殿に集まった女性達に、ユリカが笑顔で言った。
前線本部の建物からこの神殿までは、ロボットの感覚が開いていて、スムーズに来ていた。
しかし神殿の先のロボットは、密集していた。
「透明の塔の入口に、新たな敵発見・・ロボットと言うより、サイボーグという感じです」と沙織が言った。
シズカがジープからモニターを出して、全員で見ていた。
そこには赤い女性の体系をした、人型のサイボーグが立っていた。
その精巧さは何で出来てるのか想像の出来ない素材で、柔らかくしかも頑丈そうだった。
「精巧ですね・・かなりの戦闘力でしょうね」とシズカが言った。
「いよいよですね、クライマックス」と千鶴が二ヤで言って。
「まだまだ、ナギサなんぞに、ヒーローは譲れないよ」とミコトが二ヤで言った。
「よし・・ここからは、誰かが辿り着く・・全員は無理だろう、でも全員の想いを誰かが繋ごう」とユリカが真顔で言った。
「はい」と全員が真顔で返した。
「作戦は・・塔まで一気に進行する、邪魔する敵は全て消去する」とユリカが二ヤで言って。
「了解」と女性が全員二ヤで応えて、全員で前進の一歩を進めた。
「潜水班、いよいよだね」と北斗が言って。
「やるでしょう、あのメンバーなら」とミチルが笑顔で返した。
深海の女性達は、扇形に広がりながら、ロボットを消していた。
リリーはあまりの敵の多さに、完全に押されていた。
コンビのアイコも、少しパニックになりかけていた。
その時2人の視線に入った、シズカと久美子が素手で敵を倒していた。
シズカは敵のマシンガンを持つ腕を押さえ、パン、パンを赤ボタンを押してる感じだった。
久美子は踊る時にパートナーを変えるように、軽やかなステップで踊っていた。
「そっか~・・あれで良いんだ!」とリリーが言って。
「久美子、リズムは何?」とアイコが叫んだ。
「ワン・トウー・スリーの・・ワルツです~」と久美子が二ヤで返した。
「了解」と沢山の女性からの返事が聞こえた。
「舞踏会みたいだ~・・素敵」とモニターを見てる沙織が言った。
人型ロボットの周りを、女性達がクルクルと回りながら移動していた。
「さぁ・・シオン、私達は正面突破だよ・・私の真後ろを歩いて」とユリカが笑顔で言った。
「了解です」とシオンが笑顔でユリカの後ろに付いた。
ユリカはロボットを無視して、真直ぐに塔を目指して歩いた。
ロボットはユリカに反応しなかった、ユリカは少し俯きがちな姿勢で歩いていた。
シオンが手の届くロボットのボタンを、ニコちゃんで押していた。
「何!・・あの必殺技」とミコトが驚いて言って。
「考えても、理解できないよ・・ユリカ姉さんの集中だから」と千鶴が二ヤで返した。
「辿り着いたね、ユリカ・・リンダの試験を完全に理解したね、水のユリカ」と律子が言った。
「凄いですね・・羊水の揺り篭」とマリがユリカを見て笑顔で言った。
「深海の瞳ですか・・温度じゃ探知出来ませんね」とユリさんが薔薇で微笑んで。
「あ~あ・・完全に次の世界に入ってますね」と蘭が満開ウルを出した。
「羊水の揺り篭か~・・小僧の説は正しいのかな?」と沙織が呟いた。
「沙織・・小僧の説を無線で述べよ」と大ママが笑顔で言った。
「多分、小僧は乳児の言葉を相当に聞いています、そして小僧が立てた仮説。
進化の歴史を人は歩む、受精から出産までで・・そう唱える学者さんも数多くいます。
小僧は海で生まれたという事にこだわっています、原点にこだわっている。
それはヒトミの存在を海で感じるからでしょう、ヒトミを失って以降強くなりました。
小僧は乳児の言葉を聞いて、羊水の意味を感じたのでしょう。
それは海水だと言っています、確かに科学的にも海水に近いらしいんです。
でもその近いという言葉で、小僧は確信したのでしょう。
人類が知り得ない海水だと・・それは深海しかありません、深海こそが故郷。
細胞が生まれた場所、そこに行けば必ず何かを感じると思っていますね。
ユリカ姉さんの事を、小僧は深海と表現する・・それは羊水の揺り篭を表現してる。
私は小僧の特訓の時に分かりました、リンダさんの隠してる事実に気付いた。
それは小僧のこの世界には、基本的に自然現象は含まれていません。
温度は一定で、風も無風です・・それなのに、リンダさんの世界の周りだけ違った。
水度が少し温かかったんです、深海の水温が・・それが変だと感じました。
リンダさんは水温まで自分で設定した、それならば重要ですね。
その重要な意味は私には分かりません、多分ユリカ姉さんにしか分かりませんね。
でもユリカ姉さんを、ロボットが気付かない理由は分かります・・同じなんでしょう。
深海の温度と、ユリカ姉さんの心の温度が・・ロボットは、体温に反応してません。
それはシズカ先輩も分かってました、あのロボットの内部温度は36.5度です。
人間とほぼ同じ・・ならば反応してるのは、心の温度。
リンダさんは知っている・・ヒトミと同じ病の子を見送ってるから。
その子は・・19歳まで生きました、17歳で言葉が出た。
その言葉を導き出したのは・・リンダという同じ17歳の少女です。
そのリンダという女性が言いました、その病の子の母親に対して。
伝えてくるのは、温度だと・・その温度は生命の、故郷の温度だと思うと。
リンダさんが4年前に出会ったと言ったのが、4年前に見送ったのならば計算は合います。
アメリカにリンダという女性は、途方も無いほどの人数がいるでしょう。
でも温度の言葉に気付ける可能性のあるリンダは、極僅かでしょう・・あの人しかいない。
あのリンダさんしかいない・・私はそう確信しています、出会った時に感じたから。
リンダさんが小僧と重なった・・ミホの手を握るリンダさんが、完璧に重なった。
小僧の双子と言われる私はそう感じました、今までで2度目の感覚でした。
1度目はモモカです・・この2人は全く同じ、温度を持ってる人間だと思います。
この試験を受ける前、私達中1トリオは確認しあいました。
そしてこの試験を、少し離れて見ようと決めました・・3人が同じ答えだったからです。
多分・・限界ファイブもそうだと思います、このリンダの試験の意味を気付いてる。
それは2度目だからです・・聞いた事があるからです、今はそれしか言えません。
私達も感じたのは初めてです・・この世界は、小僧とヨーコ先輩しか知らない。
その2人しか、この場所で戦った事がないんです」
沙織の言葉を女性達が聞いていた、私は沙織の笑顔を見ていた。
「今はそこまでだよ、沙織・・大切な問題がある。
今空母マリの下に、その問題が提示されようとしてる。
螺旋の塔・・螺旋の系譜から伸びてきた、詐欺師の契約書を破棄する場所が」
恭子が戦闘機の操縦席から、無線で全員に言った。
「詐欺師の契約書ですか・・そうなんですね」とユリさんが呟いた。
「恭子、誰の言葉なの・・詐欺師の契約書?」と北斗が強く無線で言った。
「律子母さんが、ヒトミの世界を表現した言葉です」と恭子が静かに返した。
「確認しました、透明の塔より何かが伸びています・・海面上です、モニターに出します」アイさんが言ってモニターに出した。
そこには透明の塔から伸びる、透明の通路が映っていた。
それは薄い透明の板で、真直ぐに海上を伸びていた。
「透明の通路・・3000mジャストで停止」と秀美が言った。
「透明の塔からしか行けないよ、上からか下からかだね」とミチルが言った。
深海の女性達は塔の入口が肉眼で見えていた、その方向にユリカとシオンの姿が見えた。
「やはりそうでした・・深海の入口にもあります、沙紀の洞窟の上にあった文字が」とユリカが言った。
「そうでしょうね、宇宙の入口にもあります・・同じ文字が」とユリさんが言った。
「潜水班・・カスミ・ホノカ・シオン・レン・ケイコ・ミサキ。
それにシノブ・・ユリカの場所に集合。
他の女性がそのメンバーを援護・・不要なロボットは無視しろ。
あの入口の扉を誰が開けるのか、それが分からない・・全員で入口を目指せ」
大ママが強く言った、女性達が周りの状況確認をした。
「了解」と女性達が返した。
「宇宙はどうする?・・2人じゃ入れないだろ」と北斗が言った。
「ムーン・アタッカー・・もう1機あります」とアイさんが言った。
「よし・・戦闘機、ハルカを帰還させる・・全員ハルカの安全を確保して」とミチルが言った。
「了解」と戦闘機の女性達が、空母マリの上空を旋回しながら返した。
「秀美・・ムーンの離陸は相当の体力がいる、戦闘した人間には厳しいだろう。
ムーンの操縦を頼めるね・・天空の入口まで」
ミチルが秀美を見ながら、無線で言った。
「もちろん・・ムーンの説明も読みました、行って来ます」と秀美が笑顔で言って立ち上がった。
「ハルカが帰還します、戦闘機収納後・・ムーンを出します」とサクラさんが言った。
「ハルカ・・すぐに行けるね?」と北斗が言った。
「はい、大丈夫です・・必ず辿り着きます」とハルカが言って、空母に着陸した。
ハルカが小部屋に駆け込むと、秀美が小部屋に入ってきた。
ハルカは笑顔で右手を出した、秀美も笑顔で右手で握った。
滑走路の後部が開いて、【ムーン・アタッカーⅡ】が姿を現した。
「マキ・・空母マリの変化ないよね?」と恭子が二ヤで聞いた。
「無いね・・やるかね~」とマキも二ヤで言った。
「艦長・・マキと私、空母マリに降りて・・エミとヨーコの場所を確認します、許可願います」と恭子が言った。
「降りるの!・・リアン、どうする?」とミチルが言った。
「リョウが一緒に降りな・・3人なら許可する」とリアンが二ヤで言った。
「了解・・待ってました~」とリョウが魔性二ヤで返した。
「全機・・空母マリ上空で援護、空母マリに着陸を許可する・・頼むよ」とミチルが言った。
「了解」と全員が返した。
その頃潜水班は、ユリカの後ろに全員が集まっていた。
「あのサイボーグ女が、本当の相手だったんですね・・番人ですか」とミコトがユリカに言った。
「そうだろうね・・あの静けさ、怖いね」とユリカが爽やか二ヤで返した。
「武器を持ってませんね、手袋をしてるから・・肉弾戦でしょうね」と千鶴が言った。
「リアン・蘭・ネネ・リョウ・マキ・・それに恭子・・肉弾戦のプロがいないね~」と北斗が二ヤで言った。
サイボーグは円を描くように、12体が立っていた。
その円の場所に地下から、円形のステージがせり上がってきた。
そのステージの真中に、古びた椅子があり、大きな鎖に繋がれたリングが床に固定されていた。
「そこまでするのか・・リンダ」とユリカが呟いた。
「誰かを出せと・・神話の通りに、生け贄を差し出せと言うのか」とミコトが言った。
女性達は沈黙して、その椅子を見ていた。
「透明の通路に、円形ステージが上がりました・・そこに12体のサイボーグ。
それに透明の女性型サイボーグが現れました・・ステージのセンターに数字。
今・・9:52・・下がってます・・制限時間と思われます」
サクラさんがそう叫んだ、全員がそれを無線で確認した。
「ムーン・アタッカー・・発射60秒前・・行けるね?」とアイさんが言った。
「大丈夫です・・準備出来ました」と秀美が操縦席から返した。
「秀美・・よろしく」とハルカが笑顔で言った。
「任せて下さい」と秀美も笑顔で返した。
「サイボーグ女を倒す時間は無いね・・私が生け贄になるよ・・後はミコトと千鶴に任せる」とユリカが静かに言った時だった。
ユリカの前を美由紀が歩き出した、全員がその後姿にハッとした。
「私でしょう・・リンダさんはそう言ってる、足枷だから」と美由紀は振り向いて二ヤで言った。
「美由紀・・あんたは全て分かってたね・・だから深海に来たんだね」とシズカが真顔で言った。
「私の憧れは、シズカという人ですから・・必ず近い将来、その背中にタッチする」と美由紀も笑顔で返した。
「生意気だよ・・美由紀」とシズカは二ヤで返した。
「美由紀・・生け贄になるなよ、必ず生還しろ・・奴の二ヤ顔が見たくないなら」とユリカが二ヤで言った。
「美由紀ちゃんの姿で感動して、ウルウルを出させます・・じゃあ、後はよろしく」と美由紀は二ヤで言って、ステージを見て歩き始めた。
「よし・・着陸するよ」とリョウが言った。
2人の返事を聞いて空母マリの滑走路の右端に、垂直で降下して着陸した。
マキと恭子も着陸して、武器を装備して戦闘機を降りた。
「一気に行くよ・・あの外階段で」とリョウが二ヤで言って、2人が二ヤで頷いて駆け出した。
その走る姿を戦闘機の女性達が見ていた。
「全機・・空母マリの上空を旋回して警戒態勢」とリアンが言って。
「了解」と戦闘機の女性達が返した。
「ムーン・アタッカー・・発射10秒前・・9・・8・・7」
アイさんのカウントダウンを聞きながら、美由紀は円のステージの前に立った。
サイボーグ女が2体で美由紀の両腕を掴んだ、そして美由紀は椅子に座らされた。
2体のサイボーグが、鎖で固定された2本のリングを、美由紀の両足首に装着した。
そして12体で美由紀を囲んだ、美由紀はニヤでサイボーグ女の目を見ていた。
「入口まで走るよ」とユリカが言って、女性の返事を聞いた。
「GO」とユリカが叫んで、全員が塔の入口を目指して走り出した。
サイボーグ女は美由紀を囲んで、反応はしなかった。
「ムーン・アタッカー・・現在高度80000・・順調です」とアイさんが言った。
サクラさんは操縦室から夜空を見ていた、エミの事を想いながら。
空母マリの外階段を駆け上がる3人には、何の妨害も無かった。
3人は操縦席の屋上に辿り着いて、ガラス越しにエミとヨーコの座る席を確認した。
「そこにいろよ、ヨーコ・・2人でマシンガンで、このガラスを撃ってみて」とリョウが笑顔で言った。
マキと恭子も笑顔で返して、ガラスに向けてマシンガンを乱射した。
3人で撃った場所を確認すると、亀裂が入っていた。
「リアン姉さん・・この屋上のガラスを、戦闘機の機銃で撃って壊して下さい。
エミとヨーコは手前のセンター、隔離された席に座っています」
リョウがそう言って、3人で屋上を離れて建物の影に隠れた。
「了解・・一番近いのは、小夜子だね・・よろしく」とリアンが言った。
「了解・・ヨーコ、動かないでね」と小夜子が言って、空母マリの操縦席の右側面まで降りた。
そして機種を屋上のガラスに向けた、戦闘機の全員が沈黙して見ていた。
「空母マリの拉致場所を破壊する」と小夜子が言って、機銃のボタンを押した。
轟音が響き渡り、無数の弾丸が発射された。
右側面のガラスが粉々に砕け、それを確認して小夜子は止まった。
「粉砕確認・・ヨーコとエミの安全も確認しました」と小夜子が言って、機種を上げて旋回に戻った。
3人が屋上に駆け寄ると、ヨーコとエミが笑顔で立って、戦闘機に手を振っていた。
恭子とマキは屋上からステージのカウントを見ていた、その時間の少なさに沈黙していた。
「制限時間・・6分30秒・・それまでに、到達しないと」とマキが言って。
「深海から約5000、宇宙からは101000あるんだよ・・どうやって来るんだ」と恭子が言った。
「ムーン・アタッカーⅡ・・今、宇宙の入口に到達」と蘭が言った。
「扉が封印されてます・・封印の書は・・【絶滅】ですね」とユリさんが言った。
「深海の入口も封印あり・・封印の書は・・【誕生】です」とユリカが言った。
制限時間は刻み続けていた、それが絶滅へのカウントダウンのように。
リンダは提示した・・絶滅のカウントダウンを止める方法を出せと。
エミは海上のステージ上の、透明なサイボーグを見ていた。
夜空には満天の星が瞬き、月光の道がステージから伸びているようだった・・。