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      【冬物語・・螺旋の系譜①】 

深海から伸びる透明の塔、その中にある螺旋の通路。

歴史でも時間でもない、地球が刻んだ鼓動の記録が残ってた。


女性達は深夜まで盛り上がっていた。

私は空母と潜水艦のリアル度を上げて、最終チェックをした。

寒い夜だったので、布団に包まりユリカの香りに包まれて眠りに落ちた。


翌朝起きて、朝食にホットサンドとスクランブルエッグに、厚切りのベーコンを添えた。

レタスとトマトを盛り付けて、卵スープを作った。

リビングのテーブルを片付けていると、女性達が続々と起きて来た。


全員ご機嫌で、洗面所に行き食卓に着いた。


「さすがだね~・・栄養をきちんと取れって事だね」とリアンが極炎ニカで言った。

『今日は、今まで以上に緊張感があるからね・・リンダの設定は』と二ヤで返した。


「リンダは凄いよね~・・どこまで感じてるんだろう」と蘭が食べながら満開笑顔で言った。

「沙紀の世界は相当の段階まで分かってるよね、出会って触れ合ってるから」とユリカが返して。

「リンダさん・・4年前でしたよね、由美子ちゃんと同じ病気の少女に出会ったのが」とシオンが真顔で言った。


「なぁ、エース・・あの病気は女だけなのか?」とリアンが食べながら何気に言った。

私はリアンの瞳を見ていた、その質問こそが本質を突いていたのだ。


「そうなの!・・少女だけしか前例が無いの?」とユリカが私の表情を見て、驚いて言って視線が集まった。


『俺がヒトミの時に調べた時も、今回・・関口先生も院長もそうだと言った。

 ヒトミが日本で報告されてる28例目、由美子が32例目なんだ。

 世界でもそんなに報告例は無い、もちろん先進国だけの話だけど。

 医師も評価にならないから、研究者もいないと聞いた・・実例が少ないからね。

 ほとんどの子は3歳で亡くなっている、でも2歳までに亡くなった子は皆無なんだ。

 一番長く生きたのが・・アメリカの少女で19歳、この子は17歳で言葉が出てる。

 シズカ必死に調べて、この子の両親の住所を探し出し・・手紙を書いたんだ。

 ヒトミの段階の時に、シズカは悔しかったんだろう・・恭子の力を見て。

 感覚的な人間の対応を見て、シズカは出来ることを全てやったよ。

 その情熱は凄まじかった・・全能力をヒトミの病に向けた。

 必死に英文の手紙を書いて、それを教会の外人の牧師さんに見せて手直しした。

 その情熱が響いたんだろう、強い愛情が文面に有ったんだろう。

 そのアメリカの少女の母親から、部厚いレポートのような返事が返ってきた。

 その手紙には・・その子の成長の記録と、段階の時の状況が克明に記載されていた。

 医師の判断と母親の受けた感じまで・・母親は闘病日記を転載してくれたんだ。

 それをシズカが必死に翻訳して、牧師と学校の英語教師も手伝って完成させた。

 46枚の日本語のレポートに纏めて、俺と関口医師に手渡した。

 

 私は今はこれしか出来ない、前例は参考にならないかも知れない。

 でも・・それでも貴重な歴史だと感じた、母親の正直な感情が入ってるから。

 どうして・・なぜ・・女だけなのか・・そこかも知れない、突破口は。

 

 シズカは俺と関口医師に、強くそう言った・・本当に怖いほどの集中したシズカだった。

 関口医師はそのレポートを見て、シズカに真剣に言ったんだ。

 

 シズカ・・選択肢に入れてほしい、将来の道の1つに・・医師という仕事を。

 

 シズカは嬉しそうな笑顔で、強く頷いて背中を向けた。

 俺は夢中で読んだよ、その時の医師の判断と、母親の受けた感情を。

 そしてシズカの言った通り、母親の感情が一番参考になった。

 そのレポートの事は、年が明けたら追々話すよ・・由美子の次の段階までに。

 俺は来年の正月が過ぎれば、北斗にこのレポートを渡す・・北斗に読んでもらう。

 北斗は大丈夫だと確信してる・・必ず前向きに受け止めると。

 シズカレポートには、有言実行の証明書が付いてる。

 何も出来ないが、何もしない訳じゃない・・その証明がそこにある。

 俺とシズカは由美子に対して、第一段階を終えた。

 あのアメリカの少女の願いを叶えた、ヒトミの時に出来なかった事を。

 俺とシズカの強い想いを、ヒトミとマリが感じてくれたから。

 俺は由美子は絶対に行けると信じてる、あのレポートの次の段階に』


私は最後に笑顔で締めた、緊張した雰囲気を作らないように。


「今は1つだけで良い・・教えてくれ、少女の願いを」とリアンが俯いたまま言葉にした。


『その子は17歳で言葉が出て・・最後の場面で母親に感謝を込めてこう言った。

 私は抱いて欲しかった、無理な事とは分かっていたけど。

 でもねママ・・パパとママは抱いてくれたよ、私の心を。

 そう言ったんだ・・その場面の英文の母親の字は、震えて滲んでいた。

 そして母親のその時の感想は・・自分も抱いてやりたかった。

 医療機器を全部外して、抱きしめたかった・・それで娘が死に至ろうとも。

 そう書いてあったよ・・震える字で、強く書いてあった。

 

 俺もシズカも・・互いに話さなかったけど、その部分こだわったと思う。

 でも・・ヒトミの時は無理だと思っていた、俺は現実に負けていた。

 常識という魔物に、俺は負けて・・何もしないで諦めた。

 シズカは律子に言ったんだ・・強烈な言葉で律子に迫った。

 どうにもならないのかと、イメージでリアルに抱けないのかと。

 母親がヒトミを抱きしめて、お互いがそれを感じる方法は無いのかと。

 小僧にそれを伝授出来ないのか・・方法は無いのか・・常識の外側にも。

 シズカは悔しそうにそう言った・・律子はシズカを見ていた、嬉しそうだった。

 

 本当に残念だけど・・今はまだ出来ない、私にもその方法は浮かばない。

 もし出来るとすれば・・あの子が自分を理解して、その力を制御出来れば。

 可能性はあるかも知れないね・・シズカと小僧が本気なら、あの子は到達するよ。

 道を繋げ・・あの子はシズカにも言ってるんだよ、道を繋いで見せろと。

 律子はそう言ったんだ・・シズカは笑顔になって、強く頷いた。

 俺は由美子の段階の時に、久々にマリに会って・・本当に驚いた。

 その覚醒した姿を見て、ユリカに出会い変わっていく姿を見て。

 

 マリは何も言わなくても、俺の想いは読み取ってくれる。

 そしてヒトミもそうだった、ヒトミは自分の気持ちも込めて・・マリに頼んだ。

 俺とシズカの、由美子第一段階はそれで完了した・・由美子の最大の望みは叶えた。

 北斗に抱かれる由美子を見て・・それを感じて、沙紀が贈った。

 いつでもその事を感じれるように、あの北斗が抱く由美子の絵っを贈った。

 沙紀は嬉しいで流れる涙の存在を、その時に理解した・・北斗に抱かれる由美子を見て。

 段階を踏まないと出来ない、ヒトミの時には出来なかった。

 マリも俺も出来なかった・・その悔しさを胸に、俺は由美子の背中を押す。

 俺には最強が付いている、覚醒したマリが・・自分を理解したマリが。

 でも足りない、由美子のシナリオを書き換えるには・・もう一人いる。

 由美子の親友の存在が、絶対に必要なんだ・・覚醒した沙紀が。

 俺は同じ相手に2度の敗北はしない、それが俺とヒトミの約束だから。

 俺は全ての準備をする・・自己満足と言われて良い、非難なら受ける。

 俺は2度と負けない・・現実にも・・常識という魔物にも』

 

私は誰にでなく、自分に対して強く言った。

4人の視線が優しかった、そして集中を感じていた。


「誰が何と言おうが、ここの4人はお前を絶対に非難なんかしない・・共に戦う」とリアンが言って。

「そう言う事よ・・私たちも何もしない訳じゃない」とユリカが微笑んで。

「行こう・・あんたの想いを感じてるもう一人、リンダが待ってる」と蘭が満開で微笑んだ。

5人でユリカの家を出て、私はシオンの車に乗った。


橘橋を渡り、北詰の交差点で信号待ちで止まった。

私はユリカのワーゲンのテールライトを見ながら、エミの走り出した場所を見ていた。


「リンダさんは、エースとマリちゃんとシズカちゃんの想いを感じてるんだね。

 その成功の為に試験を出した、自分にも出来ることがあるって言ってるんだ。

 その状況を全て感じてる・・モモカちゃんは全てを感じてる・・必ず来るね。

 自分が必要だと感じれば・・春風に乗って、甘い香りを連れて」


シオンがニコちゃんで私を見た、私も笑顔で頷いた。

赤玉駐車場に車を止めると、見馴れた車が数台止まっていた。

PGに向かって歩くと、中1トリオが一番街の方から歩いて来た。

沙織が美由紀を押して、秀美が哲夫と手を繋いでいた。


私達が笑顔を向けると、4人も笑顔で返してきた。

フロアーに行くと、かなりの人数の女性が集まっていて、笑顔で話していた。


限界ファイブも揃い、マリも来ていて、5人娘も揃っていた。

四季は千夏が研修で参加できず、3人で念密な打ち合わせをしていた。

5天女が現れて、その後ろを律子が笑顔で歩いて来た。

律子の横には笑顔のリリーとカレンが付いていて、リリーが楽しそうだった。


「少し時間がありますね・・モモカ話をお願いしましょう、ヨーコに」と大ママがヨーコに二ヤで言った。

全員が大きな円を描いて座り、ヨーコが全員の座ったのを確認した。


「3年前の10月でした・・・・」ヨーコがモモカの話をした、嬉しそうな笑顔で。

全員が笑顔で聞いていた、私は一人一人をチェックしながら見ていた。


ヨーコの話が終わると、自然に拍手が起こった。

「ありがとう、ヨーコ・・それではエース・・お願いします」とユリさんが薔薇で微笑んだ。


『俺はヒトミとの関係で、沢山の後悔があります・・未熟だった事。

 伝えられなかった事、分かってやれなかった事・・でも悲しみは無い。

 ヒトミの思い出に、悲しみなど微塵も無い・・それだけは言えます。

 確かに・・喪失感も挫折も後悔もあるけど、悲しみはありません。

 ヒトミとの全ての場面、全ての思い出・・全ての記憶には、悲しみは無い。

 でも・・ヒトミの話をすると、不思議と悲しい気持ちになるんです。

 俺は気づいたよ・・その訳を・・その理由を、その意味を。

 今回のリンダの試験、それは女性達に問うのでしょう・・本気なのかと。

 沙紀を本気で愛してるのかと、沙紀の自立の道を本気で望んでるのかと。

 私は律子とマリと哲夫・・そしてミサとレイカと安奈とマリア。

 この8人で見せてもらいます、アクション大作の素敵な映画を。

 

 橘橋の下、市役所前の河川敷に、潜水艦と空母を用意しました。

 設定は・・総司令艦長に・・潜水艦が大ママ、空母がミチル。

 そして常時艦内にいる副艦長として、潜水艦にアンナ、空母が北斗。

 ユリさんと、リアンとユリカが最前線の司令塔。

 エミの側には、ヨーコが青猫で付いて下さい、これだけは私からお願いします。

 それ以外は全てお任せします・・今回はダメージを受けると戻される。

 その設定の本当の意味を感じて下さい、リンダの込めた想いを。

 透明の塔でしょう・・その中の螺旋の通路。

 そこにリンダの試験の、解答用紙が有ると思います。

 だれが辿り着き・・何と解答するのか、楽しみにしてます。

 そろそろ行こうか・・制限時間は、16時まで・・16時になった強制的に切ります。

 辿り着き、解答する事を期待する・・俺も・・リンダもマチルダも。

 先に行って待ってる・・律子・・一言よろしく』


私は強くそう言って、目を閉じて管制室を出した。

モニターの電源を入れて、肉眼で潜水艦と空母を確認していた。


「一歩ずつしか歩けません、人は飛ぶ事は出来ません・・歩くしかない。

 歩幅は関係無いでしょう、歩数が重要です・・一気には飛べない。

 でも歩みは止めない、最も大切な場面が来た時に・・後悔したくないのなら。

 間に合わなかった、自分では届かない・・そう思いたくないなら。

 今日もその一歩を見せてもらいます、大切な一歩を。

 イメージは入りましたね・・行きましょう・・瞳を閉じて」


律子が強くそう言って瞳を閉じた、全員が1つになって瞳を閉じた。


管制室に律子とマリに続き、哲夫と4人娘が入って来た。


「うん・・素敵じゃない・・楽しめそうだね~」と律子が二ヤで言って。

「すげ~・・プールもあるね、あそこに戻されるんだ~」と哲夫がワクワク笑顔で言った。

4人娘が嬉しそうに、最前列の子供用の椅子に座り、マリアの横に哲夫が座った。


「4人とも・・行く気満々だね~」と哲夫が4人娘に二ヤで言った。

ミサがガッチャマン、レイカがゴクウ、安奈がウルトラ安奈。

マリアは当然のように、スーパーマリアマンだった。

4人娘が笑顔で哲夫に頷いて、モニターを見ていた。


快晴の空の下、女性達が続々と集合していた。

その衣装は完成度が高く、潜水チームの衣装がピッチリでセクシーだった。


「幻海、揃いました」とアイコが笑顔で報告して、全員が揃った。

「了解・・シズカ、よろしく」と大ママがシズカに微笑んだ。


「無線機と赤丸を全員に配ります・・胸の中心に着けて下さい。

 この赤丸は服を脱いでも外れません、たとえ全裸になっても。

 もちろんエミにも装着します、ダメージを受けると戻されます」


シズカが説明して、中1トリオが受け取り全員に配った。

全員が無線機を装着して、緊張気味に赤丸を着けた時だった。


下流の海のほうから、轟音が響いてきた。

女性達の真上をかすめる様に、3機の黒い戦闘機が編隊飛行で飛び去った。


「全員・・大至急乗り込むよ・・慌てずにね・・ヨーコ、エミを頼むよ」と大ママが空を見上げて言った。

「了解です」と青猫ヨーコが返して、エミの手を握った。


全員が列を作って、小走りになった。

その時、戦闘機が戻ってきて、ミサイルを潜水艦に向けて発射した。

潜水艦の少し手前で、大きな爆発が起こり、潜水艦が揺れていた。


ヨーコはエミの顔を笑顔で見ていた、エミも笑顔で返していた。

「リンダ~・・OK・・本気で行くよ~」とカスミが不敵で空に言った。


「3機だね、蘭」とミチルが空母の階段を上りながら言った。

「はい・・3機です」と蘭が返した。


「蘭・ネネ・リョウ・セリカ・・4人で行ってくれるね」とミチルが振り向いて微笑んだ。

「もちろん」と蘭が笑顔で返して。

「待ってました~」とセリカが流星を流して、甲板を小部屋に走った。


「こら~・・セリカ・・私が1番だよ~」とリョウが慌てて追いかけた。

「私でしょ~・・1番は~」とネネが言って追いかけて。

「勘違いは駄目よ~・・私だよ~」と蘭が慌てて走り出した。


「チームワークは問題ないね、あの感じなら」と北斗が二ヤで言って。

「さぁ・・こっちも作戦を立てましょう」とユリさんが薔薇で微笑んで、操縦室を目指した。


潜水班は経験者が多かったので、全員席に付いていた。

操縦席の真中にカスミが座り、左にホノカが座って、ナビ席にユリカが着いた。

レーダー席にシズカが座り、海図席にミコトが座った。


「ミチル・・空母が安定したら、海に出る作戦を立てよう」と大ママが無線で言った。

「了解です・・今から4機飛ばします、少し待って下さい」とミチルが返した。

潜水艦のモニターに、空母が映されていた。


ユリさんが空母の操縦席の真中に座って、リアンがナビ席に着いた。

「これですね・・ほい」とリアンが蘭と書いてあるスイッチを押した。


空母の後部ハッチが開き、台車に乗った真赤な戦闘機が出てきた。

尾翼には【蘭】とゴールドの漢字で書かれていた。


「ほら~・・私からでしょ」と蘭が満開二ヤで言って、戦闘機に走った。


「マキ・秀美・・レーダーをお願い、敵機を探して」とミチルが言った。

「了解」とマキが返して、秀美とレーダー席に走った。


蘭が満開笑顔継続で、戦闘機に乗り込みヘルメットを被った。

「蘭・・敵機の位置を確認する、エンジンを点火して待て」とリアンが言った。

「了解・・エンジン点火」と蘭が真顔で言って、エンジンを点火した。


「駄目だ~・・ワクワクでどうにかなりそう」とリリーが潜水艦でモニターを見て言った。

「リリーは経験したんでしょ、凄いよね~・・戦闘機」とアイコが微笑んだ。

「全てを忘れますよ・・あのスピード感・・私には向いてなかったけど」とリリーが笑顔で返した。


マキと秀美はレーダーを見ていた、そしてハッとして気付いた。

「敵機、3機・・橘通りに並んで止まっています・・3丁目交差点」とマキが言った。

「了解・・蘭、聞いたね・・一人で行くなよ」とリアンが言った。


「了解・・蘭・・発進します」と言って、蘭はアクセルを踏み込んだ。

そして前を睨んで、赤ボタンを押した、戦闘機は猛スピードで滑走路を駆け抜けた。


蘭が少しも下がらずに、綺麗に舞い上がり海の方に飛んだ。

リアンはそれを見て、ネネのスイッチを押した。


潜水艦では拍手が起こっていた、全員が笑顔で蘭の満開笑顔を見ていた。

ネネは尾翼の自分の名前を見て、二ヤで走って飛び乗った。

見事な動きでスムーズに準備を終了した。


「ネネ・・GO」とリアンが言って。

「ラジャー・・ネネ、発進」と言って、綺麗に加速して舞い上がった。


「敵機、2機離陸・・ネネ号を追っています」と秀美が言った。

「了解・・海に連れ出します」とネネが返して。

「了解・・待ってる」と蘭が返した。


リアンはリョウのスイッチを押した、リョウは走り出して飛び乗った。

「最後の敵機、エンジンスタートしました」とマキがモニターを見て言った、モニターに黒い機体が映っていた。


「にゃろ~・・行けるね、リョウ」とリアンが聞いた。

「もちのロンです・・かわして見せますよ~」とリョウが魔性二ヤで返した。

「よし・・リョウ、発進」とリアンが言った。

「ラジャー・・リョウ、発進します」と言って、リョウも綺麗に舞い上がった。


「敵機離陸・・リョウ号の後ろ、1100m」と秀美が叫んだ。

「OK・・セリカ急げよ」とリョウが左に旋回しながら言った。

その言葉でリアンがセリカを押した、セリカは既にハッチの横に来ていた。


セリカが飛び乗って、準備をしてる時に聞こえた。

「敵機、リョウ号の後ろ・・300m、ロック率68%」とマキが叫んだ。


潜水艦の女性達は沈黙して、モニターの映像に見入っていた。


「チッ・・マキ、タイミングをセリカに知らせろ、橘橋を潜る。

 セリカ・・取れるね、離陸と同時に奴の後ろが」


リョウが蛇行で飛行しながら言った。

「お任せを~・・私は流星のセリカです」とセリカが強く答えた。

「了解・・マキ、頼む」とリョウが言って、左に反転した。


「了解です・・秀美、敵機との距離を教えてね」とマキが秀美に言った、秀美は強く頷いた。

「よし・・セリカ、エンジン全開で待て」とリアンが言った。

「了解・・エンジン全開」とセリカが言って、アクセルを踏み込んだ。


「リョウ・・沖合い18000で旋回、こっちに向かっています」とマキが言って。

「敵機・・距離390mで旋回、ロック率・・53%」と秀美が言った。


「マキ・・加速状態で潜る・・タイミングを計れよ」とリョウが言った。

「了解です」とマキが返した。


ミチルと北斗と作戦を立てていた、ユリさんがその言葉でモニターを見た。


「加速状態で、橘橋を潜るんですか!」とユリさんが言って。

「さすが魔性の女・・銀河の奇跡だね~」とミチルが言った。

「出来るだろ、リョウなら・・やるさ」と北斗が言って3人もモニターを見ていた。


「無理だよ~・・私には無理だ」とホノカが潜水艦のモニターに言った。

「やれ・・見せてやれ・・リョウ」とカスミが不敵で呟いた。


「リョウ・・加速・・距離13000」とマキが言って。

「敵機加速・・距離260m、ロック率危険状態・・78%」と秀美が言った。


リョウの操縦席は警告音が鳴り響き、モニターは赤い危険信号が出ていた。

リョウはそれを無視して、目の前に見えてきた大淀川の河口を見ていた。


「リョウ、到達・15秒前」とマキが叫んで。

「敵機、ミサイル発射」と秀美が叫んだ。

リアンはモニターでなく、肉眼で橘橋を睨んでいた。


「到達10秒前・・9・・8・・7」のマキの声がした時だった。

「セリカ発進」とセリカが言った、私は早いと思っていた。


セリカが赤ボタンを押した時に、マキのカウントは3だった。

セリカが滑走路を走り出して、マキの声は2を刻んだ。

セリカが滑走路を離れた時に、マキの1が聞こえた。


セリカの目前をリョウの戦闘機が飛び去り、セリカが機首を向けた時にミサイルがセリカの目の前に入った。


「くっそっ~・・とどけ~」とセリカは加速状態のまま機首を急旋回した。

その時セリカのシールドに、ターゲットの文字と照準枠が表示された。


「リョウ姉さんの追っかけ、ロックオン・・衝撃注意」とセリカが叫んでミサイルを発射した。

セリカのミサイルは、敵のミサイルを追いかけて撃墜した。


空母の全員が拳を上げて、歓喜に沸いた。

潜水艦からも歓喜の声と、大きな拍手が沸き起こった。


「サンキュー・セリカ・・敵機を追うよ、マキ・・座標指示よろしく」とリョウが言って。

「了解」とセリカとマキが返した。


「瞬時の判断で、ミサイルを撃墜しに行った・・勇気を持って」と北斗が言って。

「下手すると・・リョウとの激突も有り得た、信じたねリョウを」とミチルが言って。

「流星のセリカ・・正に最新型のエンジンですね」とユリさんが薔薇で微笑んだ。 


「なるほど~・・流星のセリカ、楽しみだね~」と律子が私に二ヤで言った。

『感覚が先に動くだろ・・脳で処理をする前に、秘密兵器だよ』と二ヤで返した。


「敵機・・リョウ号の右17度、距離45000・・向かって来てます」とマキが言って。

「ネネ号の敵・・距離450m、ロック準備に入りそうです」と秀美が言った。


「了解・・ネネ、上空より肉眼で捕らえた・・右の敵から落とす」と蘭が言って。

「了解、左旋回します」とネネが返した。


蘭は加速装置を使い、ネネの後ろの敵の後方に付いた。

その時に左の敵機がスピードを急激に落とした、蘭はそれを無視して右をロックした。


「ロックオン・・発射・・ネネ、フォロー頼む」と蘭がミサイルを発射して言って、右に急旋回した。

操縦席のモニターは、赤い画面の中に【危険・ロック率79%】と出ていた。


「了解・・下から捕らえます」とネネが返して加速装置を押した。


ネネの飛行は見事だった、機種は完全に裏返った状態だった。

ネネの頭上には青い海が映っていた、その背面の加速状態でネネは照準を合わせた。

「ロックオン・・発射」とネネが叫んで、背面飛行のままミサイルを発射した。


ミサイルは綺麗な放物線を描き、敵機に命中した。

そして同時にリョウのロックオンの声が響き、敵機の姿は無くなった。


「お見事・・全機、大淀川河口の上空で旋回して待て」とリアンが言った。

「ラジャー」と4機からの返事が木霊した。


「大ママ・・潜水艦は、海まで潜れませんから・・空母で潜水艦の上を飛びます。

 この空母は飛べるようなので、海までは上空を守りますね」


ミチルが無線でそう言った。

「了解・・よろしく・・エンジン点火」と大ママが言った。

「エンジン点火します」と少し緊張気味にカスミが返した。


「よし・・こっちも行くよ、4人がいないから・・ユリ、操縦よろしく」とミチルが言った。

「了解・・離陸します」とユリさんが返して、ゆっくりとハンドルを引いた。


空母がゆっくりと浮き上がり、潜水艦の上空に入った。


「よし・・出発しよう、太平洋に向けて」と大ママが言った。

「了解・・太平洋に向け、発進します」とカスミが返して、ゆっくりとアクセルを踏んだ。


私はその光景をモニターで見ながら、マリの表情を見ていた。

律子と話しながら、楽しそうな笑顔をマリは出していた。


「小僧・・リンダさんの設定って、あれに近いの?」と哲夫が真顔で囁いた。

『そうだと思う・・多分、リンダも経験してる・・だから試験を出したんだ』と真顔で返した。


「がんばれ・・エミ」と哲夫はモニターを見ながら、静かに呟いた。


モニターには、海の煌きに向かう影が映っていた。


透明の螺旋を目指して・・螺旋の系譜の意味を探しながら・・。


 

 




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