【冬物語・・螺旋の系譜①】
深海から伸びる透明の塔、その中にある螺旋の通路。
歴史でも時間でもない、地球が刻んだ鼓動の記録が残ってた。
女性達は深夜まで盛り上がっていた。
私は空母と潜水艦のリアル度を上げて、最終チェックをした。
寒い夜だったので、布団に包まりユリカの香りに包まれて眠りに落ちた。
翌朝起きて、朝食にホットサンドとスクランブルエッグに、厚切りのベーコンを添えた。
レタスとトマトを盛り付けて、卵スープを作った。
リビングのテーブルを片付けていると、女性達が続々と起きて来た。
全員ご機嫌で、洗面所に行き食卓に着いた。
「さすがだね~・・栄養をきちんと取れって事だね」とリアンが極炎ニカで言った。
『今日は、今まで以上に緊張感があるからね・・リンダの設定は』と二ヤで返した。
「リンダは凄いよね~・・どこまで感じてるんだろう」と蘭が食べながら満開笑顔で言った。
「沙紀の世界は相当の段階まで分かってるよね、出会って触れ合ってるから」とユリカが返して。
「リンダさん・・4年前でしたよね、由美子ちゃんと同じ病気の少女に出会ったのが」とシオンが真顔で言った。
「なぁ、エース・・あの病気は女だけなのか?」とリアンが食べながら何気に言った。
私はリアンの瞳を見ていた、その質問こそが本質を突いていたのだ。
「そうなの!・・少女だけしか前例が無いの?」とユリカが私の表情を見て、驚いて言って視線が集まった。
『俺がヒトミの時に調べた時も、今回・・関口先生も院長もそうだと言った。
ヒトミが日本で報告されてる28例目、由美子が32例目なんだ。
世界でもそんなに報告例は無い、もちろん先進国だけの話だけど。
医師も評価にならないから、研究者もいないと聞いた・・実例が少ないからね。
ほとんどの子は3歳で亡くなっている、でも2歳までに亡くなった子は皆無なんだ。
一番長く生きたのが・・アメリカの少女で19歳、この子は17歳で言葉が出てる。
シズカ必死に調べて、この子の両親の住所を探し出し・・手紙を書いたんだ。
ヒトミの段階の時に、シズカは悔しかったんだろう・・恭子の力を見て。
感覚的な人間の対応を見て、シズカは出来ることを全てやったよ。
その情熱は凄まじかった・・全能力をヒトミの病に向けた。
必死に英文の手紙を書いて、それを教会の外人の牧師さんに見せて手直しした。
その情熱が響いたんだろう、強い愛情が文面に有ったんだろう。
そのアメリカの少女の母親から、部厚いレポートのような返事が返ってきた。
その手紙には・・その子の成長の記録と、段階の時の状況が克明に記載されていた。
医師の判断と母親の受けた感じまで・・母親は闘病日記を転載してくれたんだ。
それをシズカが必死に翻訳して、牧師と学校の英語教師も手伝って完成させた。
46枚の日本語のレポートに纏めて、俺と関口医師に手渡した。
私は今はこれしか出来ない、前例は参考にならないかも知れない。
でも・・それでも貴重な歴史だと感じた、母親の正直な感情が入ってるから。
どうして・・なぜ・・女だけなのか・・そこかも知れない、突破口は。
シズカは俺と関口医師に、強くそう言った・・本当に怖いほどの集中したシズカだった。
関口医師はそのレポートを見て、シズカに真剣に言ったんだ。
シズカ・・選択肢に入れてほしい、将来の道の1つに・・医師という仕事を。
シズカは嬉しそうな笑顔で、強く頷いて背中を向けた。
俺は夢中で読んだよ、その時の医師の判断と、母親の受けた感情を。
そしてシズカの言った通り、母親の感情が一番参考になった。
そのレポートの事は、年が明けたら追々話すよ・・由美子の次の段階までに。
俺は来年の正月が過ぎれば、北斗にこのレポートを渡す・・北斗に読んでもらう。
北斗は大丈夫だと確信してる・・必ず前向きに受け止めると。
シズカレポートには、有言実行の証明書が付いてる。
何も出来ないが、何もしない訳じゃない・・その証明がそこにある。
俺とシズカは由美子に対して、第一段階を終えた。
あのアメリカの少女の願いを叶えた、ヒトミの時に出来なかった事を。
俺とシズカの強い想いを、ヒトミとマリが感じてくれたから。
俺は由美子は絶対に行けると信じてる、あのレポートの次の段階に』
私は最後に笑顔で締めた、緊張した雰囲気を作らないように。
「今は1つだけで良い・・教えてくれ、少女の願いを」とリアンが俯いたまま言葉にした。
『その子は17歳で言葉が出て・・最後の場面で母親に感謝を込めてこう言った。
私は抱いて欲しかった、無理な事とは分かっていたけど。
でもねママ・・パパとママは抱いてくれたよ、私の心を。
そう言ったんだ・・その場面の英文の母親の字は、震えて滲んでいた。
そして母親のその時の感想は・・自分も抱いてやりたかった。
医療機器を全部外して、抱きしめたかった・・それで娘が死に至ろうとも。
そう書いてあったよ・・震える字で、強く書いてあった。
俺もシズカも・・互いに話さなかったけど、その部分こだわったと思う。
でも・・ヒトミの時は無理だと思っていた、俺は現実に負けていた。
常識という魔物に、俺は負けて・・何もしないで諦めた。
シズカは律子に言ったんだ・・強烈な言葉で律子に迫った。
どうにもならないのかと、イメージでリアルに抱けないのかと。
母親がヒトミを抱きしめて、お互いがそれを感じる方法は無いのかと。
小僧にそれを伝授出来ないのか・・方法は無いのか・・常識の外側にも。
シズカは悔しそうにそう言った・・律子はシズカを見ていた、嬉しそうだった。
本当に残念だけど・・今はまだ出来ない、私にもその方法は浮かばない。
もし出来るとすれば・・あの子が自分を理解して、その力を制御出来れば。
可能性はあるかも知れないね・・シズカと小僧が本気なら、あの子は到達するよ。
道を繋げ・・あの子はシズカにも言ってるんだよ、道を繋いで見せろと。
律子はそう言ったんだ・・シズカは笑顔になって、強く頷いた。
俺は由美子の段階の時に、久々にマリに会って・・本当に驚いた。
その覚醒した姿を見て、ユリカに出会い変わっていく姿を見て。
マリは何も言わなくても、俺の想いは読み取ってくれる。
そしてヒトミもそうだった、ヒトミは自分の気持ちも込めて・・マリに頼んだ。
俺とシズカの、由美子第一段階はそれで完了した・・由美子の最大の望みは叶えた。
北斗に抱かれる由美子を見て・・それを感じて、沙紀が贈った。
いつでもその事を感じれるように、あの北斗が抱く由美子の絵っを贈った。
沙紀は嬉しいで流れる涙の存在を、その時に理解した・・北斗に抱かれる由美子を見て。
段階を踏まないと出来ない、ヒトミの時には出来なかった。
マリも俺も出来なかった・・その悔しさを胸に、俺は由美子の背中を押す。
俺には最強が付いている、覚醒したマリが・・自分を理解したマリが。
でも足りない、由美子のシナリオを書き換えるには・・もう一人いる。
由美子の親友の存在が、絶対に必要なんだ・・覚醒した沙紀が。
俺は同じ相手に2度の敗北はしない、それが俺とヒトミの約束だから。
俺は全ての準備をする・・自己満足と言われて良い、非難なら受ける。
俺は2度と負けない・・現実にも・・常識という魔物にも』
私は誰にでなく、自分に対して強く言った。
4人の視線が優しかった、そして集中を感じていた。
「誰が何と言おうが、ここの4人はお前を絶対に非難なんかしない・・共に戦う」とリアンが言って。
「そう言う事よ・・私たちも何もしない訳じゃない」とユリカが微笑んで。
「行こう・・あんたの想いを感じてるもう一人、リンダが待ってる」と蘭が満開で微笑んだ。
5人でユリカの家を出て、私はシオンの車に乗った。
橘橋を渡り、北詰の交差点で信号待ちで止まった。
私はユリカのワーゲンのテールライトを見ながら、エミの走り出した場所を見ていた。
「リンダさんは、エースとマリちゃんとシズカちゃんの想いを感じてるんだね。
その成功の為に試験を出した、自分にも出来ることがあるって言ってるんだ。
その状況を全て感じてる・・モモカちゃんは全てを感じてる・・必ず来るね。
自分が必要だと感じれば・・春風に乗って、甘い香りを連れて」
シオンがニコちゃんで私を見た、私も笑顔で頷いた。
赤玉駐車場に車を止めると、見馴れた車が数台止まっていた。
PGに向かって歩くと、中1トリオが一番街の方から歩いて来た。
沙織が美由紀を押して、秀美が哲夫と手を繋いでいた。
私達が笑顔を向けると、4人も笑顔で返してきた。
フロアーに行くと、かなりの人数の女性が集まっていて、笑顔で話していた。
限界ファイブも揃い、マリも来ていて、5人娘も揃っていた。
四季は千夏が研修で参加できず、3人で念密な打ち合わせをしていた。
5天女が現れて、その後ろを律子が笑顔で歩いて来た。
律子の横には笑顔のリリーとカレンが付いていて、リリーが楽しそうだった。
「少し時間がありますね・・モモカ話をお願いしましょう、ヨーコに」と大ママがヨーコに二ヤで言った。
全員が大きな円を描いて座り、ヨーコが全員の座ったのを確認した。
「3年前の10月でした・・・・」ヨーコがモモカの話をした、嬉しそうな笑顔で。
全員が笑顔で聞いていた、私は一人一人をチェックしながら見ていた。
ヨーコの話が終わると、自然に拍手が起こった。
「ありがとう、ヨーコ・・それではエース・・お願いします」とユリさんが薔薇で微笑んだ。
『俺はヒトミとの関係で、沢山の後悔があります・・未熟だった事。
伝えられなかった事、分かってやれなかった事・・でも悲しみは無い。
ヒトミの思い出に、悲しみなど微塵も無い・・それだけは言えます。
確かに・・喪失感も挫折も後悔もあるけど、悲しみはありません。
ヒトミとの全ての場面、全ての思い出・・全ての記憶には、悲しみは無い。
でも・・ヒトミの話をすると、不思議と悲しい気持ちになるんです。
俺は気づいたよ・・その訳を・・その理由を、その意味を。
今回のリンダの試験、それは女性達に問うのでしょう・・本気なのかと。
沙紀を本気で愛してるのかと、沙紀の自立の道を本気で望んでるのかと。
私は律子とマリと哲夫・・そしてミサとレイカと安奈とマリア。
この8人で見せてもらいます、アクション大作の素敵な映画を。
橘橋の下、市役所前の河川敷に、潜水艦と空母を用意しました。
設定は・・総司令艦長に・・潜水艦が大ママ、空母がミチル。
そして常時艦内にいる副艦長として、潜水艦にアンナ、空母が北斗。
ユリさんと、リアンとユリカが最前線の司令塔。
エミの側には、ヨーコが青猫で付いて下さい、これだけは私からお願いします。
それ以外は全てお任せします・・今回はダメージを受けると戻される。
その設定の本当の意味を感じて下さい、リンダの込めた想いを。
透明の塔でしょう・・その中の螺旋の通路。
そこにリンダの試験の、解答用紙が有ると思います。
だれが辿り着き・・何と解答するのか、楽しみにしてます。
そろそろ行こうか・・制限時間は、16時まで・・16時になった強制的に切ります。
辿り着き、解答する事を期待する・・俺も・・リンダもマチルダも。
先に行って待ってる・・律子・・一言よろしく』
私は強くそう言って、目を閉じて管制室を出した。
モニターの電源を入れて、肉眼で潜水艦と空母を確認していた。
「一歩ずつしか歩けません、人は飛ぶ事は出来ません・・歩くしかない。
歩幅は関係無いでしょう、歩数が重要です・・一気には飛べない。
でも歩みは止めない、最も大切な場面が来た時に・・後悔したくないのなら。
間に合わなかった、自分では届かない・・そう思いたくないなら。
今日もその一歩を見せてもらいます、大切な一歩を。
イメージは入りましたね・・行きましょう・・瞳を閉じて」
律子が強くそう言って瞳を閉じた、全員が1つになって瞳を閉じた。
管制室に律子とマリに続き、哲夫と4人娘が入って来た。
「うん・・素敵じゃない・・楽しめそうだね~」と律子が二ヤで言って。
「すげ~・・プールもあるね、あそこに戻されるんだ~」と哲夫がワクワク笑顔で言った。
4人娘が嬉しそうに、最前列の子供用の椅子に座り、マリアの横に哲夫が座った。
「4人とも・・行く気満々だね~」と哲夫が4人娘に二ヤで言った。
ミサがガッチャマン、レイカがゴクウ、安奈がウルトラ安奈。
マリアは当然のように、スーパーマリアマンだった。
4人娘が笑顔で哲夫に頷いて、モニターを見ていた。
快晴の空の下、女性達が続々と集合していた。
その衣装は完成度が高く、潜水チームの衣装がピッチリでセクシーだった。
「幻海、揃いました」とアイコが笑顔で報告して、全員が揃った。
「了解・・シズカ、よろしく」と大ママがシズカに微笑んだ。
「無線機と赤丸を全員に配ります・・胸の中心に着けて下さい。
この赤丸は服を脱いでも外れません、たとえ全裸になっても。
もちろんエミにも装着します、ダメージを受けると戻されます」
シズカが説明して、中1トリオが受け取り全員に配った。
全員が無線機を装着して、緊張気味に赤丸を着けた時だった。
下流の海のほうから、轟音が響いてきた。
女性達の真上をかすめる様に、3機の黒い戦闘機が編隊飛行で飛び去った。
「全員・・大至急乗り込むよ・・慌てずにね・・ヨーコ、エミを頼むよ」と大ママが空を見上げて言った。
「了解です」と青猫ヨーコが返して、エミの手を握った。
全員が列を作って、小走りになった。
その時、戦闘機が戻ってきて、ミサイルを潜水艦に向けて発射した。
潜水艦の少し手前で、大きな爆発が起こり、潜水艦が揺れていた。
ヨーコはエミの顔を笑顔で見ていた、エミも笑顔で返していた。
「リンダ~・・OK・・本気で行くよ~」とカスミが不敵で空に言った。
「3機だね、蘭」とミチルが空母の階段を上りながら言った。
「はい・・3機です」と蘭が返した。
「蘭・ネネ・リョウ・セリカ・・4人で行ってくれるね」とミチルが振り向いて微笑んだ。
「もちろん」と蘭が笑顔で返して。
「待ってました~」とセリカが流星を流して、甲板を小部屋に走った。
「こら~・・セリカ・・私が1番だよ~」とリョウが慌てて追いかけた。
「私でしょ~・・1番は~」とネネが言って追いかけて。
「勘違いは駄目よ~・・私だよ~」と蘭が慌てて走り出した。
「チームワークは問題ないね、あの感じなら」と北斗が二ヤで言って。
「さぁ・・こっちも作戦を立てましょう」とユリさんが薔薇で微笑んで、操縦室を目指した。
潜水班は経験者が多かったので、全員席に付いていた。
操縦席の真中にカスミが座り、左にホノカが座って、ナビ席にユリカが着いた。
レーダー席にシズカが座り、海図席にミコトが座った。
「ミチル・・空母が安定したら、海に出る作戦を立てよう」と大ママが無線で言った。
「了解です・・今から4機飛ばします、少し待って下さい」とミチルが返した。
潜水艦のモニターに、空母が映されていた。
ユリさんが空母の操縦席の真中に座って、リアンがナビ席に着いた。
「これですね・・ほい」とリアンが蘭と書いてあるスイッチを押した。
空母の後部ハッチが開き、台車に乗った真赤な戦闘機が出てきた。
尾翼には【蘭】とゴールドの漢字で書かれていた。
「ほら~・・私からでしょ」と蘭が満開二ヤで言って、戦闘機に走った。
「マキ・秀美・・レーダーをお願い、敵機を探して」とミチルが言った。
「了解」とマキが返して、秀美とレーダー席に走った。
蘭が満開笑顔継続で、戦闘機に乗り込みヘルメットを被った。
「蘭・・敵機の位置を確認する、エンジンを点火して待て」とリアンが言った。
「了解・・エンジン点火」と蘭が真顔で言って、エンジンを点火した。
「駄目だ~・・ワクワクでどうにかなりそう」とリリーが潜水艦でモニターを見て言った。
「リリーは経験したんでしょ、凄いよね~・・戦闘機」とアイコが微笑んだ。
「全てを忘れますよ・・あのスピード感・・私には向いてなかったけど」とリリーが笑顔で返した。
マキと秀美はレーダーを見ていた、そしてハッとして気付いた。
「敵機、3機・・橘通りに並んで止まっています・・3丁目交差点」とマキが言った。
「了解・・蘭、聞いたね・・一人で行くなよ」とリアンが言った。
「了解・・蘭・・発進します」と言って、蘭はアクセルを踏み込んだ。
そして前を睨んで、赤ボタンを押した、戦闘機は猛スピードで滑走路を駆け抜けた。
蘭が少しも下がらずに、綺麗に舞い上がり海の方に飛んだ。
リアンはそれを見て、ネネのスイッチを押した。
潜水艦では拍手が起こっていた、全員が笑顔で蘭の満開笑顔を見ていた。
ネネは尾翼の自分の名前を見て、二ヤで走って飛び乗った。
見事な動きでスムーズに準備を終了した。
「ネネ・・GO」とリアンが言って。
「ラジャー・・ネネ、発進」と言って、綺麗に加速して舞い上がった。
「敵機、2機離陸・・ネネ号を追っています」と秀美が言った。
「了解・・海に連れ出します」とネネが返して。
「了解・・待ってる」と蘭が返した。
リアンはリョウのスイッチを押した、リョウは走り出して飛び乗った。
「最後の敵機、エンジンスタートしました」とマキがモニターを見て言った、モニターに黒い機体が映っていた。
「にゃろ~・・行けるね、リョウ」とリアンが聞いた。
「もちのロンです・・かわして見せますよ~」とリョウが魔性二ヤで返した。
「よし・・リョウ、発進」とリアンが言った。
「ラジャー・・リョウ、発進します」と言って、リョウも綺麗に舞い上がった。
「敵機離陸・・リョウ号の後ろ、1100m」と秀美が叫んだ。
「OK・・セリカ急げよ」とリョウが左に旋回しながら言った。
その言葉でリアンがセリカを押した、セリカは既にハッチの横に来ていた。
セリカが飛び乗って、準備をしてる時に聞こえた。
「敵機、リョウ号の後ろ・・300m、ロック率68%」とマキが叫んだ。
潜水艦の女性達は沈黙して、モニターの映像に見入っていた。
「チッ・・マキ、タイミングをセリカに知らせろ、橘橋を潜る。
セリカ・・取れるね、離陸と同時に奴の後ろが」
リョウが蛇行で飛行しながら言った。
「お任せを~・・私は流星のセリカです」とセリカが強く答えた。
「了解・・マキ、頼む」とリョウが言って、左に反転した。
「了解です・・秀美、敵機との距離を教えてね」とマキが秀美に言った、秀美は強く頷いた。
「よし・・セリカ、エンジン全開で待て」とリアンが言った。
「了解・・エンジン全開」とセリカが言って、アクセルを踏み込んだ。
「リョウ・・沖合い18000で旋回、こっちに向かっています」とマキが言って。
「敵機・・距離390mで旋回、ロック率・・53%」と秀美が言った。
「マキ・・加速状態で潜る・・タイミングを計れよ」とリョウが言った。
「了解です」とマキが返した。
ミチルと北斗と作戦を立てていた、ユリさんがその言葉でモニターを見た。
「加速状態で、橘橋を潜るんですか!」とユリさんが言って。
「さすが魔性の女・・銀河の奇跡だね~」とミチルが言った。
「出来るだろ、リョウなら・・やるさ」と北斗が言って3人もモニターを見ていた。
「無理だよ~・・私には無理だ」とホノカが潜水艦のモニターに言った。
「やれ・・見せてやれ・・リョウ」とカスミが不敵で呟いた。
「リョウ・・加速・・距離13000」とマキが言って。
「敵機加速・・距離260m、ロック率危険状態・・78%」と秀美が言った。
リョウの操縦席は警告音が鳴り響き、モニターは赤い危険信号が出ていた。
リョウはそれを無視して、目の前に見えてきた大淀川の河口を見ていた。
「リョウ、到達・15秒前」とマキが叫んで。
「敵機、ミサイル発射」と秀美が叫んだ。
リアンはモニターでなく、肉眼で橘橋を睨んでいた。
「到達10秒前・・9・・8・・7」のマキの声がした時だった。
「セリカ発進」とセリカが言った、私は早いと思っていた。
セリカが赤ボタンを押した時に、マキのカウントは3だった。
セリカが滑走路を走り出して、マキの声は2を刻んだ。
セリカが滑走路を離れた時に、マキの1が聞こえた。
セリカの目前をリョウの戦闘機が飛び去り、セリカが機首を向けた時にミサイルがセリカの目の前に入った。
「くっそっ~・・とどけ~」とセリカは加速状態のまま機首を急旋回した。
その時セリカのシールドに、ターゲットの文字と照準枠が表示された。
「リョウ姉さんの追っかけ、ロックオン・・衝撃注意」とセリカが叫んでミサイルを発射した。
セリカのミサイルは、敵のミサイルを追いかけて撃墜した。
空母の全員が拳を上げて、歓喜に沸いた。
潜水艦からも歓喜の声と、大きな拍手が沸き起こった。
「サンキュー・セリカ・・敵機を追うよ、マキ・・座標指示よろしく」とリョウが言って。
「了解」とセリカとマキが返した。
「瞬時の判断で、ミサイルを撃墜しに行った・・勇気を持って」と北斗が言って。
「下手すると・・リョウとの激突も有り得た、信じたねリョウを」とミチルが言って。
「流星のセリカ・・正に最新型のエンジンですね」とユリさんが薔薇で微笑んだ。
「なるほど~・・流星のセリカ、楽しみだね~」と律子が私に二ヤで言った。
『感覚が先に動くだろ・・脳で処理をする前に、秘密兵器だよ』と二ヤで返した。
「敵機・・リョウ号の右17度、距離45000・・向かって来てます」とマキが言って。
「ネネ号の敵・・距離450m、ロック準備に入りそうです」と秀美が言った。
「了解・・ネネ、上空より肉眼で捕らえた・・右の敵から落とす」と蘭が言って。
「了解、左旋回します」とネネが返した。
蘭は加速装置を使い、ネネの後ろの敵の後方に付いた。
その時に左の敵機がスピードを急激に落とした、蘭はそれを無視して右をロックした。
「ロックオン・・発射・・ネネ、フォロー頼む」と蘭がミサイルを発射して言って、右に急旋回した。
操縦席のモニターは、赤い画面の中に【危険・ロック率79%】と出ていた。
「了解・・下から捕らえます」とネネが返して加速装置を押した。
ネネの飛行は見事だった、機種は完全に裏返った状態だった。
ネネの頭上には青い海が映っていた、その背面の加速状態でネネは照準を合わせた。
「ロックオン・・発射」とネネが叫んで、背面飛行のままミサイルを発射した。
ミサイルは綺麗な放物線を描き、敵機に命中した。
そして同時にリョウのロックオンの声が響き、敵機の姿は無くなった。
「お見事・・全機、大淀川河口の上空で旋回して待て」とリアンが言った。
「ラジャー」と4機からの返事が木霊した。
「大ママ・・潜水艦は、海まで潜れませんから・・空母で潜水艦の上を飛びます。
この空母は飛べるようなので、海までは上空を守りますね」
ミチルが無線でそう言った。
「了解・・よろしく・・エンジン点火」と大ママが言った。
「エンジン点火します」と少し緊張気味にカスミが返した。
「よし・・こっちも行くよ、4人がいないから・・ユリ、操縦よろしく」とミチルが言った。
「了解・・離陸します」とユリさんが返して、ゆっくりとハンドルを引いた。
空母がゆっくりと浮き上がり、潜水艦の上空に入った。
「よし・・出発しよう、太平洋に向けて」と大ママが言った。
「了解・・太平洋に向け、発進します」とカスミが返して、ゆっくりとアクセルを踏んだ。
私はその光景をモニターで見ながら、マリの表情を見ていた。
律子と話しながら、楽しそうな笑顔をマリは出していた。
「小僧・・リンダさんの設定って、あれに近いの?」と哲夫が真顔で囁いた。
『そうだと思う・・多分、リンダも経験してる・・だから試験を出したんだ』と真顔で返した。
「がんばれ・・エミ」と哲夫はモニターを見ながら、静かに呟いた。
モニターには、海の煌きに向かう影が映っていた。
透明の螺旋を目指して・・螺旋の系譜の意味を探しながら・・。